(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6403367
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】軸受密封装置
(51)【国際特許分類】
F16C 33/78 20060101AFI20181001BHJP
B60B 35/02 20060101ALI20181001BHJP
B60B 35/18 20060101ALI20181001BHJP
F16J 15/3204 20160101ALI20181001BHJP
F16C 19/18 20060101ALN20181001BHJP
【FI】
F16C33/78 Z
F16C33/78 E
B60B35/02 L
B60B35/18 B
B60B35/18 C
F16J15/3204
!F16C19/18
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-174128(P2013-174128)
(22)【出願日】2013年8月26日
(65)【公開番号】特開2015-42879(P2015-42879A)
(43)【公開日】2015年3月5日
【審査請求日】2016年8月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000225359
【氏名又は名称】内山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100087664
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 宏行
(74)【代理人】
【識別番号】100143926
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 公敏
(74)【代理人】
【識別番号】100149504
【弁理士】
【氏名又は名称】沖本 周子
(72)【発明者】
【氏名】柴山 昌範
【審査官】
中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−281013(JP,A)
【文献】
特開2005−188668(JP,A)
【文献】
特開2010−060127(JP,A)
【文献】
特開2010−121645(JP,A)
【文献】
特開2013−047527(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第10163068(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 21/00 −31/06
B60B 35/00 −37/12
F16C 19/00 −19/56
F16C 33/30 −33/66
F16C 33/72 −33/82
F16J 15/3204−15/3236
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受装置の外輪の内径部に嵌合される円筒部、前記円筒部の軸受空間とは反対側の一端部より外径方向に延出された外径側フランジ部、及び、前記円筒部の軸受空間側の他端部より内径方向に延出された内径側フランジ部を有する芯金と、前記芯金に固着され前記内径側フランジ部より軸受空間とは反対側に張出す少なくとも1個のアキシャルリップを含む弾性体製シールリップ部材とを備えた軸受密封装置であって、
前記芯金における前記内径側フランジ部は、前記円筒部の他端部より湾曲形状部を介して内径側に屈曲するよう延出され、
前記外径側フランジ部における前記軸受空間とは反対側の面は前記シールリップ部材を構成するシールリップ基部によって覆われており、
前記湾曲形状部に軸受空間側に延びる弾性体製の突起形状部が設けられ、
前記突起形状部は、断面が略台形状の基台部と、該略台形状の上辺部に相当する平坦な突端部とを有し、該突端部には小突起が形成され、当該軸受密封装置の複数を軸方向に同心的に重ねた際、隣接する軸受密封装置における前記外径側フランジ部の前記シールリップ基部で覆われている部位に当接し、隣接する軸受密封装置の他の部位が互いに接触しないよう機能するものであることを特徴とする軸受密封装置。
【請求項2】
請求項1に記載の軸受密封装置において、
前記内径側フランジ部における前記湾曲形状部の内径側部分は、径方向に見て前記円筒部と重なる位置に形成されていることを特徴とする軸受密封装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の軸受密封装置において、
前記内径側フランジ部の軸受空間とは反対側の面及び前記円筒部の内径面は前記シールリップ部材を構成するシールリップ基部で覆われ、前記アキシャルリップは当該シールリップ基部より張出すように形成されていることを特徴とする軸受密封装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の軸受密封装置において、
前記突起形状部は、前記芯金の周方向に沿って連続的に設けられていることを特徴とする軸受密封装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の軸受密封装置において、
前記突起形状部は、前記芯金の周方向に沿って断続的に設けられていることを特徴とする軸受密封装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の軸受密封装置において、
前記突起形状部は、軸方向に見て前記円筒部と重なる位置に設けられていることを特徴とする軸受密封装置。
【請求項7】
請求項3に記載の軸受密封装置において、
前記突起形状部は、軸方向に見て前記円筒部の内径面を覆うシールリップ基部と重なる位置に設けられていることを特徴とする軸受密封装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の軸受密封装置において、
前記内径側フランジ部の軸受空間側の面は、前記シールリップ部材を構成するシールリップ基部で覆われ、前記突起形状部は、当該シールリップ基部と一体に形成されていることを特徴とする軸受密封装置。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の軸受密封装置において、
前記突起形状部が前記隣接する軸受密封装置に当接する部位は、前記外径側フランジ部の形成部位であることを特徴とする軸受密封装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車等の車輪支持部の軸受装置に用いられる軸受密封装置に関し、さらに詳しくは、外輪に対してハブフランジ付内輪が軸回転可能に支持される軸受装置のハブフランジ側内輪と外輪との間に装着される軸受密封装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、自動車等の車輪支持部の軸受装置としては、ハブベアリングが多く用いられるようになった(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。このハブベアリングは、車体に固定される外輪に対して、車輪が取付けられるハブフランジ付内輪が軸回転可能に支持されるよう構成される。外輪と内輪との軸方向両端部には、軸受空間への汚泥等の浸入を防止し、或いは軸受空間に充填されるグリース等の漏出を防止するための軸受密封装置が装着される。特許文献1及び特許文献2に示される車輪用軸受装置におけるハブフランジ側(アウター側)の軸受密封装置は、外輪の内径部に嵌合される芯金と、該芯金に固着され、ハブ輪及びハブフランジの立上面を含むフランジ面に弾接する複数のシールリップを有する弾性部材(シールリップ部材)とからなる。これら特許文献には、前記芯金として、外輪の内径部に嵌合される円筒部と、前記円筒部の軸受空間とは反対側の一端部より外径方向に延出された外径側フランジ部と、前記円筒部の軸受空間側の他端部より内径方向に延出された内径側フランジ部とを有する芯金が示されている。
【0003】
このような軸受密封装置は、複数が軸方向に同心的に重ねられて梱包され、保管及び出荷・搬送される。この時、シールリップ(特に、アキシャルリップ)が隣接する軸受密封装置に接触した状態で重ねられて梱包されると、保管中や搬送中にシールリップが変形を来すことがある。また、シールリップにはグリース等の潤滑剤が塗布された状態で梱包されることが多く、前記接触によりグリースが隣接する密封装置に付着して転移し、シールリップに対するグリースの必要塗布量が確保されなくなることも生じる。そのため、特許文献1及び特許文献2では、複数の密封装置を前記のように重ねた時、シールリップが隣接する密封装置に接触、或いは、干渉しないような構造の例が示されている。即ち、特許文献1及び特許文献2において、芯金の内径側フランジ部が円筒部の他端部より折り返すように形成された湾曲形状部(特許文献1では反転部2b、特許文献2では先端部33)を有している。この湾曲形状部の内径側部分(特許文献1では第2筒状部、特許文献2では折れ曲がり部)が、円筒部(特許文献1では筒状部、特許文献2では嵌合筒部)と径方向にみて大きく重なるように形成されている。そして、前記のように軸受密封装置を重ねた際に、湾曲形状部の突端部のみが、隣接する密封装置に当接し、前記湾曲形状部の内径側部分により、隣接する軸受密封装置間に大きな空間部が確保され、この空間部にシールリップが位置するようになされている。これによって、シールリップが隣接する軸受密封装置に接触、或いは、干渉しないように複数の軸受密封装置を軸方向に沿って積重ねることができる(特許文献1では
図2、特許文献2では
図6を、それぞれ参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5170369号公報
【特許文献2】特開2012−131452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記のように、芯金における内径側フランジ部は、前記のような空間部を確保するため湾曲形状部の深い折り曲げ加工を伴って形成される。そのため、芯金の製造上、外輪の内径部に嵌合される円筒部の寸法精度を出すことが難しく、半製品としての芯金の歩留りが低下する要因ともなる。特に、円筒部は、外輪の内径部に嵌合されて一体とされるものであるから、嵌合強度にばらつきが生じると、外輪に対する組付性や、嵌合安定性、或いは、軸受密封装置としてのシール機能に影響を及ぼすことになる。また、軸受密封装置を前記湾曲形状部の突端部を隣接する密封装置に当接するよう構成するため、円筒部の軸受空間とは反対側の一端部の内径側部分、さらには軸方向側部分を前記シールリップ部材の構成材料(例えば、ゴム材)で肉盛りして、前記突端部を当接させるための部位を確保する必要がある。特に、前記湾曲形状部は前記円筒部から連続して内径側に屈曲して形成されているから、前記当接に直接関与する突端部は、前記円筒部の軸方向に沿った延長部より内径側に位置する。そのため、このような肉盛りによる当接部(以下、肉盛り部と言う)の確保が不可避となる。このように肉盛り部を確保すると、密封装置を軸受装置に装着した際に、シールリップ(アキシャルリップ)がハブフランジ等に弾接して外径方向に変形し、この肉盛り部に接近する。そのため、アキシャルリップがこの肉盛り部に干渉しないように、アキシャルリップの形成部位を内径側にシフトさせる必要があるが、内径側はスペース的に制約があるため、それだけアキシャルリップの設計自由度が狭められることになる。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、芯金の外輪に対する嵌合精度を維持し、設計自由度も確保されながら、複数を軸方向に重ねた際におけるシールリップ等による互いの干渉が生じない軸受密封装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る軸受密封装置は、軸受装置の外輪の内径部に嵌合される円筒部、前記円筒部の軸受空間とは反対側の一端部より外径方向に延出された外径側フランジ部、及び、前記円筒部の軸受空間側の他端部より内径方向に延出された内径側フランジ部を有する芯金と、前記芯金に固着され前記内径側フランジ部より軸受空間とは反対側に張出す少なくとも1個のアキシャルリップを含む弾性体製シールリップ部材とを備えた軸受密封装置であって、前記芯金における前記内径側フランジ部は、前記円筒部の他端部より湾曲形状部を介して内径側に屈曲するよう延出され、前記外径側フランジ部における前記軸受空間とは反対側の面は前記シールリップ部材を構成するシールリップ基部によって覆われており、前記湾曲形状部に軸受空間側に延びる弾性体製の突起形状部が設けられ、前記突起形状部は、
断面が略台形状の基台部と、該略台形状の上辺部に相当する平坦な突端部とを有し、該突端部に
は小突起が形成され、当該軸受密封装置の複数を軸方向に同心的に重ねた際、隣接する軸受密封装置における前記外径側フランジ部の前記シールリップ基部で覆われている部位に当接し、隣接する軸受密封装置の他の部位が互いに接触しないよう機能するものであることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、本発明に係る軸受密封装置の複数を軸方向に同心的に重ねた際、突起形状部が、隣接する軸受密封装置に当接し、隣接する軸受密封装置の他の部位が互いに接触しないよう機能する。このスペーサ的機能によって、当該軸受密封装置の複数を重ねた状態での保管中や輸送中において、アキシャルリップが隣接する軸受密封装置に接触して変形したりすることがない。また、アキシャルリップにグリース等が塗布されていても、隣接する軸受密封装置にグリース等が付着することがなく、当該軸受密封装置を汚したりグリース等の所期の塗布量が減退したりすることもない。そして、突起形状部は、芯金における内径側フランジ部の湾曲形状部に軸受空間側に延びるように形成されているから、内径側フランジ部から外径側フランジ部にかけての軸受空間とは反対側部分にアキシャルリップの形成部位が広く確保される。特に、この種の芯金の場合、内径側フランジ部と円筒部との間の限られたスペースがアキシャルリップの形成部位とされるが、スペーサ的機能を持たせる突起形状部がこのスペースに存在しないから、これによってアキシャルリップの形成部位が狭められることがない。これによって、シール設計自由度、とりわけアキシャルリップの設計自由度が拡大する。また、当該軸受密封装置を軸受装置に組付けた際、前述のとおりアキシャルリップが外径側に変形して芯金の円筒部側に接近するが、この変形スペースも大きく確保され、変形によって円筒部等に接触しないような設計自由度も拡大する。さらに、突起形状部は、弾性体によって形成されるから、前記従来技術のように芯金を屈曲形成して同様のスペーサ的機能を持たせる場合に比べて、容易に最適な形状とすることができる。特に、突起形状部の隣接する当該軸受密封装置に対する当接部位を可能な限り外径側に位置付けることができ、これによっても、前記アキシャルリップの形成スペースの確保がし易くなる。
【0009】
本発明において、前記内径側フランジ部における前記湾曲形状部の内径側部分は、径方向に見て前記円筒部と重なる位置に形成されているものとしても良い。
本発明によれば、前記のようなスペーサ的機能は、前記突起形状部の軸受空間側への延び幅と、前記湾曲形状部の内径側部分と円筒部との径方向の重なり部分の長さ(曲げ深さ)との合計によって有効に発揮される。したがって、突起形状部が存在することにより、芯金を強度及び円筒部の外輪内径部に対する嵌合力のみを考慮して設計することができ、この重なり部分の長さを小さくすることができる。これによって、円筒部の外輪内径部に対する強い嵌合力が得られる。因みに、重なり部分の長さが大きいと、この部分でばね変形が生じ易く、円筒部に対する内径側フランジ部の突っ張り力が弱くなり、円筒部の外輪内径部に対する嵌合力が弱くなる。
【0010】
本発明において、前記内径側フランジ部の軸受空間とは反対側の面及び前記円筒部の内径面は前記シールリップ部材を構成するシールリップ基部で覆われ、前記アキシャルリップは当該シールリップ基部より張出すように形成されているものとしても良い。
本発明によれば、内径側フランジ部の軸受空間とは反対側の面及び前記円筒部の内径面がシールリップ基部で覆われるから、この部分が保護されるとともに、アキシャルリップの形成部位が広められる。さらに、シールリップ基部が外径側フランジ部の軸受空間とは反対側の面をも覆うようにすれば、芯金の保護がより的確になされ、アキシャルリップの形成部位もより広められる。この場合でも、突起形状部の延び幅の調整によって前記スペーサ的機能を発揮させることができるから、外径側フランジ部の軸受空間とは反対側の面をも覆うシールリップ基部の厚みを厚くする必要がない。
【0011】
本発明において、前記突起形状部は、前記芯金の周方向に沿って連続的に設けられているもの、或いは、前記芯金の周方向に沿って断続的に設けられているものであっても良い。
本発明によれば、突起形状部が連続的に形成されている場合は、突起形状部が環状となり、当該軸受密封装置の軸方向に沿った重ね合わせ状態が安定する。また、突起形状部が断続的に形成されている場合は、弾性体の使用量が少なくなり、軸受密封装置の軽量化、低コスト化に寄与する。
【0012】
本発明において、前記突起形状部は、軸方向に見て前記円筒部と重なる位置に設けられているものとしても良い。
本発明によれば、突起形状部が湾曲形状部における最も外径側に設けられるから、内径側のスペースが大きく確保され、アキシャルリップの設計自由度が拡大する。
【0013】
本発明において、前記突起形状部は、軸方向に見て前記円筒部の内径面を覆うシールリップ基部と重なる位置に設けられているものとしても良い。
本発明によれば、突起形状部が芯金の円筒部より内径側に寄ることになるから、円筒部の外輪内径部に対する嵌合の際、突起形状部が嵌合の邪魔になり難く、嵌合の円滑化が図られる。
【0014】
本発明において、前記内径側フランジ部の軸受空間側面は、前記シールリップ部材を構成するシールリップ基部で覆われ、前記突起形状部は、当該シールリップ基部と一体に形成されているものとしても良い。
本発明によれば、突起形状部が、シールリップ部材を構成するシールリップ基部と一体に形成されるから、シールリップ部材と共に、突起形状部を成型により一括して形成することができ、当該軸受密封装置が、容易且つ効率的に製造される。
【0015】
本発明において、前記突起形状部が前記隣接する軸受密封装置に当接する部位は、前記外径側フランジ部の形成部位であるものとしても良い。
本発明によれば、当該軸受密封装置の複数を軸方向に沿って重ねた際、突起形状部が隣接する軸受密封装置に対して安定的に当接され、そのスペーサ的機能が効果的に発揮される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、芯金の外輪に対する嵌合精度を維持し、設計自由度も確保されながら、複数を軸方向に重ねた際におけるシールリップ等による互いの干渉が生じない軸受密封装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る軸受密封装置が適用される軸受装置の一例を示す概略的縦断面図である。
【
図2】
図1のX部の拡大図であって、本発明に係る密封装置の一実施形態を示す図である。
【
図3】同実施形態の軸受密封装置を軸方向に沿って重ねた状態を示す縦断面図である。
【
図4】本発明に係る軸受密封装置における突起形状部の一例を示す概略的斜視図であって、
図3における軸受密封装置を紙面下方から見上げた状態の突起形状部のみを示している。
【
図5】同突起形状部の別例を示す
図4と同様図である。
【
図6】本発明に係る軸受密封装置の他の実施形態を示す
図3と同様図である。
【
図7】本発明に係る軸受密封装置のさらに他の実施形態を示す
図3と同様図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1は、自動車の車輪(不図示)を軸回転可能に支持する軸受装置1を示す。この軸受装置1は、大略的に、外側部材としての外輪2と、ハブ輪3と、ハブ輪3の車体側に嵌合一体とされる内輪部材4と、外輪2とハブ輪3及び内輪部材4との間に介装される2列の転動体(ボール)6…とを含んで構成される。この例では、ハブ輪3及び内輪部材4が内側部材としての内輪5を構成する。外輪2は、自動車の車体(不図示)に固定される。また、ハブ輪3にはドライブシャフト(不図示)が同軸的にスプライン嵌合される。内輪5(ハブ輪3及び内輪部材4)は、外輪2に対して、軸L回りに回転可能とされ、外輪2と、内輪5とにより、相対的に回転する2部材が構成され、該2部材間に環状空間Sが形成される。環状空間S内には、2列の転動体6…が、リテーナ6aに保持された状態で、外輪2の軌道輪2a、ハブ輪3及び内輪部材4の軌道輪3a,4aを転動可能に介装されている。ハブ輪3は、円筒状のハブ輪本体30と、ハブ輪本体30より立上基部31を介して径方向外側に延出するよう形成されたハブフランジ32を有し、ハブフランジ32にボルト33及び不図示のナットによって車輪が取付固定される。以下において、軸L方向に沿って車輪に向く側(
図1において右側を向く側)を車輪側、車体に向く側(同左側を向く側)を車体側と言う。
【0019】
環状空間Sは、軸受空間を形成し、この環状空間(以下、軸受空間と言う)Sの軸L方向に沿った両端部であって、外輪2とハブ輪3との間、及び外輪2と内輪部材4との間には、ベアリングシール7,8が装着され、軸受空間Sの軸L方向に沿った両端部が密封される。これによって、軸受空間S内への汚泥等の浸入や軸受空間S内に充填される潤滑剤(グリース等)の外部への漏出が防止される。
【0020】
ベアリングシール7,8のうち、車輪側のベアリングシール8が本発明に係る軸受密封装置に相当する。このベアリングシール(軸受密封装置)8の一実施形態について、
図2〜
図5をも参照して説明する。図例のベアリングシール8は、外輪2の内径部2bに嵌合される芯金9と、芯金9に固着されたゴム製(弾性体製)のシールリップ部材10とを含む。芯金9は、外輪2の内径部2bに嵌合される円筒部9aと、円筒部9aの軸受空間Sとは反対側(車輪側)の一端部9aaより外径方向に延出された外径側フランジ部9bと、円筒部9aの軸受空間S側(車体側)の他端部9abより折り返すように屈曲された湾曲形状部9cを介して内径側に屈曲するよう延出された内径側フランジ部9dとを有する。湾曲形状部9cの内径側部分9caは、径方向(軸Lに直交する方向)に見て円筒部9aと重なる位置に形成されている。
【0021】
シールリップ部材10は、芯金9に固着されるシールリップ基部11と、このシールリップ基部11から張出すように設けられる後記する複数のシールリップとを含んで構成される。シールリップ基部11は、外径側フランジ部9bの軸受空間Sとは反対側の面9ba、円筒部9aの内径面9ac及び内径側フランジ部9dの軸受空間Sとは反対側の面(湾曲形状部9cの軸受空間Sとは反対側の面も含む)9daを覆う。シールリップ基部11は、さらに、内径側フランジ部9dの内径側端縁部9dbを回り込んで軸受空間S側の面9dc及び湾曲形状部9cの軸受空間S側の面9cbを覆っている。シールリップ基部11には、ハブ輪3の外周面(軸受空間S側に向く面)に弾接するよう張出されたシールリップ12,13,14が形成されている。これらシールリップ12,13,14のうち、シールリップ12は円筒形のハブ輪本体30の外周面に弾接するラジアルリップであり、シールリップ13,14は立上基部31からハブフランジ32にかけての軸受空間S側の面に弾接するアキシャルリップ(サイドリップ)である。
図2において、2点鎖線で示すこれらシールリップ12,13,14は、ハブ輪3の外周面に弾接して変形した状態を示している。
なお、シールリップ12は、立上基部31に弾接させるものであっても良い。
【0022】
また、シールリップ基部11には、外径側フランジ部9bの外径側端縁部9bbを回り込んで軸受空間S側の面9bcの一部を覆う回り込み部11aが形成されている。さらに、この回り込み部11aに至る部分には、ハブ輪3のハブフランジ32に近接するよう拡径状に延びる庇状リップ11bが形成されている。また、外径側フランジ部9bを覆うシールリップ基部11には、後記するように当該ベアリングシール8の複数を軸L方向に沿って同心的に重ねた際に、後記する突起形状部15が係止して、互いに径方向にずれることを防止するための突部11cが形成されている。図例の突部11cは、軸Lの回りに連続する環状に形成されているが、軸Lの回りに断続的に形成されたものであっても良い。この突部11cの内周側部分に沿った所定幅のシールリップ基部11の表面が、ベアリングシール8を重ねた際に、隣接するベアリングシール8の突起形状部15が当接する部位(当接部位)11dである。したがって、ここでの所定幅は、突起形状部15が当接するに必要な幅とされる。
【0023】
内径側フランジ部9dの軸受空間S側の面
9dcを覆うシールリップ基部11は、湾曲形状部9cの軸受空間S側の面9cbにまで及んでこの部分をも覆うように固着されている。この湾曲形状部9cの軸受空間S側の面9cbを覆う部分に軸L方向に沿って軸受空間S側に延びる突起形状部15が、当該シールリップ基部11と一体に設けられている。この突起形状部15は、シールリップ部材10と共に同じゴム材によって一体に成型される。具体的には、芯金9を所定の金型のキャビティ(いずれも不図示)内に配置し、未加硫のゴム材をキャビティ内で加圧・加硫成型(コンプレッション成型)することによって、或いは、未加硫のゴム材をキャビティ内に射出して加硫成型(インジェクション成型)することによって、所定形状のシールリップ部材10が芯金9に一体に固着された状態で成型される。図例のシールリップ基部11は凹部11eを有しているが、この凹部11eは、芯金9をキャビティ内の所定位置に保持するために金型に形成された突部(不図示)に対応して形成されたものであり、周方向の複数個所に設けられる。
【0024】
本実施形態のベアリングシール8における突起形状部15は、
図3及び
図4に示すように芯金9の周方向に沿って連続的(環状)に形成されている。突起形状部15は、芯金9の湾曲形状部9cにシールリップ基部11と共に固着される断面が略台形状の基台部15aと、その台形状の上辺部に相当する平坦な突端部15bとからなり、この突端部15bには断面三角形状の小突起15cが形成されている。
図3及び
図4では、この小突起15cは、突端部15bに沿って周方向に連続して環状に形成されたものとしているが、周方向に断続的に形成されたものであっても良い。本実施形態における突起形状部15の小突起15cは、芯金9の円筒部9aの軸L方向に沿った延長上に位置し、突起形状部15が実質的に軸L方向に見て円筒部9aと重なる位置に形成されている(
図2参照)。
図5は、突起形状部15の別例を示し、突起形状部15が、芯金9の同周方向に沿って断続的に形成されたものであることを示している。
【0025】
前記のような構成のベアリングシール8は、複数が軸L方向に沿って同心的に重ねられ、梱包されて保管される。そして、逐次、軸受装置1の組立工場に出荷・搬送される。
図3は、このように重ねられた状態の一部を示している。図例では、アキシャルリップ14の先側内径側部、及びアキシャルリップ13からラジアルリップ12にかけての内径側部分にグリースgが塗布されている。この状態でベアリングシール8を互いに重ねる際、隣接するベアリングシール8の当接部位11dに突起形状部15の突端部15bが当接するように重ねる。このように、突起形状部15の突端部15bが当接部位11dに当接するよう順次重ねてゆくと、突起形状部15がスペーサ的機能を奏して、複数のベアリングシール8が、当接部位11d以外の部位が互いに接触しない状態で重ねられる。このように、突起形状部15がスペーサ的機能を奏するので、前記先行技術に示される例のように、芯金自体にスペーサ的機能を持たせる場合に比べて芯金に深い折り曲げ加工を施す必要がない。ここに、突起形状部15の湾曲形状部9cからの軸L方向に沿った突出高さH1が、軸受空間Sとは反対側への出張り量が最も大きいアキシャルリップ14の突出高さH2より大であることが望ましい。ここでの突出高さH2は、アキシャルリップ14の先端と、外径側フランジ部9bの軸受空間Sとは反対側の面を覆うシールリップ基部11の表面との軸L方向に沿った距離を意味する。このように、H1をH2より大とすることにより、湾曲形状部9cの内径側部分9caと円筒部9aとの軸L方向に沿った重なり部分の長さH3を、前記先行技術に示される例より小さくすることができる。したがって、湾曲形状部9cの形成が深い折り曲げ加工を伴わず、そのため、芯金9の製造上、外輪2の内径部2bに嵌合される円筒部9aの寸法精度が確保され、加工半製品としての芯金9のばらつきが少なく歩留りが向上する。また、H3(湾曲形状部9cの内径側部分9caと円筒部9aとの軸方向に沿った重なり部分の長さ)を小さくすることができるので、その分、円筒部9aの長さも小さくすることができる。これによって、円筒部9aの外輪内径部2bに対する強い嵌合力が得られる。因みに、重なり部分の長さH3が大きいと、この部分でばね変形が生じ易く、円筒部9aに対する内径側フランジ部9dの突っ張り力が弱くなり、円筒部9aの外輪内径部2bに対する嵌合力が弱くなる。さらに、H3を小さくすることができることにより、その分、円筒部9aの長さも小さくすることができるので、これによって、鋼板から芯金9の原形を打抜く際の外径を小さくすることができるので、所定鋼板からの取れ数(材料歩留り)を向上させることができる。これらにより、円筒部9aの外輪2の内径部2bに対する嵌合強度にばらつきが生じ難くなり、
図1に示すような軸受装置1に対するベアリングシール8の組付性や、嵌合安定性、或いは、密封装置としてのシール機能が良好に維持される。
なお、H1がH2より小さくても、H3を大きくすることにより、突起形状部15の前記スペーサ的機能を発揮させることができるが、この場合でも、前記先行技術の例のように、芯金に深い折り曲げ加工を施す必要がない。
【0026】
突起形状部15に形成された小突起15cは、前記
のようにベアリングシール8を重ねる際に、突起形状部15の突端部15bと当接部位11dとの間に圧縮状態で介在する。本実施形態のように当接がゴム材同士でなされると、特に、上下方向に積重ねた場合、複数のベアリングシール8の累積重量がこの当接部に負荷され、ゴム同士のブロッキング(癒着)が生じ、ベアリングシール8を個々にばらす作業が煩雑となる。そのため、小突起15cを介在させて当接面積を小さくし、ブロッキング力を緩和するようにしている。また、当接部位11dが突部11cの内周側部分に沿った所定幅に形成されているから、突起形状部15の当接部位11dに対する当接が的確になされる。加えて、この当接状態で、突起形状部15の外径側に突部11cが存在することになるから、突起形状部15の突部11cに対する係止による突部11cの規制作用によってベアリングシール8の径方向に沿った互いの位置ずれも防止される。そして、突起形状部15が、
図3及び
図4に示す例のように、芯金9の周方向に沿って連続的に形成されている場合は、ベアリングシール8の軸L方向に沿った重ね合わせ状態が安定する。また、
図5の例に示すように、突起形状部15が、周方向に沿って断続的に形成されている場合は、ゴムの使用量を少なくすることができ、軽量化及び低コスト化に有利となることに加え、前記のようなゴム同士のブロキングの緩和にも有効である。
【0027】
そして、本実施形態においては、突起形状部15のようにスペーサ的機能を奏する突起物を、外径側フランジ部9b側に設けていないので、
図1に示すような軸受装置1に装着した時の弾性変形によって、アキシャルリップ14がこの突起物に接触することがない。したがって、アキシャルリップ14,13の形成スペースが大きく確保され、弾性変形を見越したアキシャルリップ14,13の設計自由度が広がる。因みに、本実施形態の芯金9の場合、内径側フランジ部9dと円筒部9aとの間の限られたスペースがアキシャルリップ14の形成部位とされる。しかし、スペーサ的機能を持たせる突起形状部15がこのスペースに存在しないから、アキシャルリップ14の形成部位が狭められることがない。これによって、シール設計自由度、とりわけアキシャルリップ14,13の設計自由度が拡大する。また、本実施形態では、突起形状部15が軸L方向に見て円筒部9aと重なる位置に形成されているから、突起形状部15の当接部位11dを円筒部9aの軸L方向に沿った位置に設けることができる。これによって、円筒部9aの内径側にシールリップ基部11による肉盛部を形成してこれに当接部位11dを設ける必要がなく、したがって、このような肉盛部によってアキシャルリップ14の形成スペースが狭められる懸念もない。さらに、突起形状部15は、ゴム材によってシールリップ部材10と一体に形成されるから、前記従来技術のように芯金を屈曲形成して同様のスペーサ的機能を持たせる場合に比べて、容易に最適な形状とすることができる。特に、芯金を屈曲形成して同様のスペーサ的機能を持たせる場合は、湾曲形状部の突端部が円弧状であるため、当接部位の中心が円筒部より内径側になることは不可避であるが、突起形状部15の隣接する当該ベアリングシール8に対する当接部位を可能な限り外径側に位置付けることができ、これによっても、前記アキシャルリップの形成スペースの確保がし易くなる。加えて、図例では、各シールリップ13,14,15にグリースgを塗布しているが、複数のベアリングシール8を重ねた状態で、グリースgが隣接するベアリングシール8に付着することがない。これによって、グリースgの所期の必要塗布量が減退する懸念もない上に、グリースgが隣接するベアリングシール8を汚すこともない。
【0028】
前記のように重ねられ梱包された複数のベアリングシール8は、軸受装置の組立工場に搬送され、開梱されて、1個ずつばらされる。そして、ベアリングシール8が
図1及び
図2に示すような軸受装置1に組付けられる。この組付けに際し、先ず、外輪2の車輪側開口部より、外径側フランジ部9bを覆うシールリップ基部11に冶具(不図示)を宛がい、芯金9の円筒部9aを突起形状部15が先側となるよう外輪2の内径部2bに嵌合させる(
図2の白抜矢印参照)。この嵌合は、シールリップ基部11の回り込み部11aが外輪2の車輪側端面2cに当接するようになされる。次いで、外輪2の軌道輪2aに転動体6…をリテーナ6aで保持した状態で配置し、ハブ輪3を所定の位置に嵌合させ、内輪部材4及び車体側ベアリングシール7を所定の位置に装着することによって、ベアリングシール8が組付けられた軸受装置1の組立が完了する。このベアリングシール8の組付け状態では、回り込み部11aが、外輪2の車輪側端面2cと、芯金9における外径側フランジ部9bの軸受空間S側の面9bcとの間に圧縮状態で介在される。これによって、外輪2の内径部2bと芯金9の円筒部9aとの嵌合部に泥水等の浸入が阻止され、金属嵌合部の錆の発生が防止されると共にこの嵌合部を通じた軸受空間S内への汚泥等の浸入が防止される。また、各シールリップ(ラジアルリップ12、アキシャルリップ13,14)が、ハブ輪3の外周面に
図2の2点鎖線で示すように変形して弾接する。また、庇状リップ11bは、ハブフランジ32に近接してラビリンスrを形成する。したがって、内輪5(ハブ輪3及び内輪部材4)が軸Lの回りに回転する稼働状態において、ハブフランジ32のフランジ面を伝う汚泥等のベアリングシール8内への浸入がラビリンスrによって阻止される。このラビリンスrから汚泥の一部がベアリングシール8内へ浸入しても、アキシャルリップ14,13がハブフランジ32のフランジ面に弾接した状態で摺接するから、この摺接部分でそれ以上の浸入が阻止される。そして、ラジアルリップ12もハブ輪本体30に弾接した状態で摺接するから、軸受空間S内に充填されたグリース(不図示)の漏出も阻止される。前記のように、事前に各シールリップ12,13,14にグリースgが塗布されている場合は、これらシールリップ12,13,14によるシール機能がより効果的に発揮されると共に、摺接抵抗が緩和され回転トルクが低減化される。
【0029】
図6は、本発明に係る軸受密封装置の他の実施形態を示している。この実施形態のベアリングシール(軸受密封装置)8Aでは、突起形状部15が前記実施形態のベアリングシール8より少し内径側に寄った位置に設けられている。即ち、本実施形態においては、突起形状部15が実質的に軸L方向に見て前記シールリップ基部11が芯金9における円筒部9aの内径面9acを覆う部分と重なる位置に形成されている。この場合、突起形状部15の小突起15cが、シールリップ基部11が円筒部9aの内径面9acを覆う部分の軸L方向に沿った延長上に位置する。これに伴い、径方向への位置ずれを防止するための前記と同様の突部11c及び当接部位11dも、少し内径側に寄った位置に設けられることになる。
【0030】
本実施形態では、突起形状部15が少し内径側に寄っていることから、アキシャルリップ14等の形成スペースが若干狭められることになるが、突起形状部15の径方向の厚みを小さくすることによって、前記実施形態と同様にアキシャルリップを形成するためのスペースを確保することができる。一方、突起形状部15が少し内径側に寄っていることから、本実施形態のベアリングシール8Aを
図1に示すような軸受装置1の外輪2に前記と同様に嵌合する際、突起形状部15を外輪2の内径部2bに接触させることなく嵌合させることができる。これによって、突起形状部15が嵌合の邪魔になり難く、嵌合の円滑性が図られるというメリットが得られる。その他の構成及び作用・効果は前記実施形態と同様であるので、共通部分に同一の符号を付しその説明を省略する。
【0031】
図7は、本発明に係る軸受密封装置のさらに他の実施形態を示している。この実施形態のベアリングシール(軸受密封装置)8Bでは、芯金9における円筒部9aの内周面9acから外径側フランジ部9bの軸受空間Sとは反対側の面9baに至る部分がシールリップ基部11で覆われていない点で、前記各実施形態と異なる。従って、シールリップ基部11には、前記実施形態のような回り込み部11a、庇状リップ11b、突部11c及び当接部11dは存在しない。この実施形態のベアリングシール8Bにおける突起形状部15は、軸L方向に見て芯金9の円筒部9aと重なる位置に設けられている。複数のベアリングシール8Bを軸L方向に同心的に重ねた時には、突起形状部15の突端部15bが、隣接するベアリングシール8Bにおける芯金9の円筒部9aの一端部9aaに当接する。この当接部は、円筒部9aの一端部9aaであって、外径側フランジ部9bに連なり軸受空間Sとは反対側の面9baの一部をなすR形状面である。この当接状態では、前記各実施形態と同様に、他の部位が隣接するベアリングシール8Bに接触しないように構成されている。この実施形態において、前記実施形態における庇状リップ11bを、回り込み部11aと共に、シールリップ基部11とは別に、設けるようにしても良い。
その他の構成は、前記実施形態と同様であるから共通部分に同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0032】
なお、前記実施形態では、シールリップとして、1個のラジアルリップ12と、2個のアキシャルリップ13,14を備えた例を示したが、これに限らず、少なくとも1個のアキシャルリップを含むものであれば、本発明が適用される。また、庇状リップ11bがハブフランジ32に近接してラビリンスrを形成するものとしたが、これをアキシャルリップ13,14と同様にハブフランジ32に弾接するものとしても良い。また、芯金9として、外径側フランジ部9bを更に延長して、外輪2の外径部側に屈曲させたものであっても良い。これらは、求められる製品仕様に基づき適宜選択採用される。
さらに、突起形状部15の断面形状や全体形状としては、図例のものに限らず、スペーサ的機能が充分に発揮されるものであれば、他の形状であっても良い。例えば、小突起15cが存在しないものや、
図5に示すように周方向に断続的に形成されるものの場合、周方向の突起形状部15の間隔及び個数もスペーサ的機能を勘案して適宜採択される。
軸受装置1も図例のものに限らず、従動輪用の軸受装置や、他の同タイプの軸受装置にも本発明の軸受密封装置が適用可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 軸受装置
2 外輪
2b 内径部
8 ベアリングシール(軸受密封装置)
9 芯金
9a 円筒部
9aa 円筒部の一端部
9ab 円筒部の他端部
9ac 円筒部の内径面
9b 外径側フランジ部
9c 湾曲形状部
9ca 湾曲形状部の内径側部分
9d 内径側フランジ部
9da 内径側フランジ部の軸受空間Sとは反対側の面
9dc 内径側フランジ部の軸受空間側の面
10 シールリップ部材
11 シールリップ基部
11d 当接部位(当接する部位)
14 アキシャルリップ
15 突起形状部
S 軸受空間
L 軸