(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6403373
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】フロート
(51)【国際特許分類】
G01F 23/30 20060101AFI20181001BHJP
G01F 23/64 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
G01F23/30 Z
G01F23/64 Z
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-231141(P2013-231141)
(22)【出願日】2013年11月7日
(65)【公開番号】特開2015-90343(P2015-90343A)
(43)【公開日】2015年5月11日
【審査請求日】2016年9月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000178675
【氏名又は名称】ヤマシンフィルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170070
【弁理士】
【氏名又は名称】坂田 ゆかり
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】特許業務法人湘洋内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中岡 英雄
(72)【発明者】
【氏名】納冨 洋一
【審査官】
岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第4876888(US,A)
【文献】
実開昭61−193329(JP,U)
【文献】
実開昭58−116633(JP,U)
【文献】
実開昭54−161633(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F23/30−23/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が貯蓄される容器内において、前記流体の上面に浮かべて使用するフロートであって、
略円板形状の本体部と、
前記本体部の上側及び下側の略円形の面に設けられた、前記本体部の板厚の略半分以上の高さの凸部であって、前記本体部に3個程度配置可能な大きさで前記本体部の中心軸上に設けられた凸部と、
を有し、
前記凸部は、先端に円弧形状を有し、前記円弧形状は、前記凸部と前記本体部の端とが前記容器と当接する場合に、エッジが前記容器と当たらないような大きさで形成されることを特徴とするフロート。
【請求項2】
請求項1に記載のフロートであって、
前記凸部は、先端が略球形である
ことを特徴とするフロート。
【請求項3】
請求項1に記載のフロートであって、
前記本体部は、側面から見たときに両端の厚みより中央部の厚みが厚くなるように前記両端に向けて厚みが薄くなっていき、
側面からみて前記本体部の周縁は曲面である
ことを特徴とするフロート。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のフロートであって、
前記凸部は、前記本体部の上側及び下側にそれぞれ3個設けられる
ことを特徴とするフロート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、パイプ内のフロートの上部及び下部に突起を設け、水位低下時に水位指示板とフロートとを分離しやすくすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−193025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、パイプ等の容器内の流体の高さを視認可能とするため、容器内にフロートを浮かべている。このような場合には、フロートと容器の側面とが貼りつくという不具合が発生する恐れがある。
【0005】
図7に、フロートと容器の側面とが貼りつく場合を例示する。
図7は、容器を上から見た図である。容器10の側面は円弧形状であるため、例えばフロート11の端面が円弧形状等で形成されているとすると、容器10の側面の曲率と、フロート11の端面の曲率とが近くなり、流体の表面張力、粘性等によりフロートと容器の側面とが貼りついて離れなくなってしまう。
【0006】
フロートと容器の側面とが貼りついてしまうと、フロートが流体の表面に浮かばず、容器内に貯蓄された流体の高さを認識することができない。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の発明は、フロートの径をパイプの径とほぼ同一に形成しているため、フロートとパイプの側面とが貼りつくという問題は発生しない。したがって、特許文献1には、フロートとパイプの側面とを分離しやすくする点については開示されていない。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、容器の側面に貼りつくことを防ぐことができるフロートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係るフロートは、例えば、流体が貯蓄される容器内において、前記流体の上面に浮かべて使用するフロートであって、略円板形状の本体部と、前記本体部の上側及び下側の略円形の面に設けられた、前記本体部の板厚の略半分以上の高さの凸部であって、前記本体部に3個程度配置可能な大きさで前記本体部の中心軸上に設けられた凸部と、を有し、前記凸部は、先端に円弧形状を有し、前記円弧形状は、前記凸部と前記本体部の端とが前記容器と当接する場合に、
エッジが前記容器と当たらないような大きさで形成されることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るフロートによれば、略円板形状の本体部の上側及び下側の略円形の端面に、本体部の板厚の略半分以上の高さの凸部が設けられる。したがって、凸部と容器とが当接し、本体部と容器とが面で接触しない。これにより、容器の側面に貼りつくことを防ぐことができる。
【0011】
ここで、前記凸部は、先端が略球形であってもよい。これにより、容器にエッジが当たって容器が破損等することを防止することができる。
【0012】
ここで、前記本体部は、側面から見たときに両端の厚みより中央部の厚みが厚くなるように前記両端
に向けて厚みが薄くなっていき、側面からみて
前記本体部の周縁は
曲面であってもよい。これにより、本体部の両端から外側へ向けて流体が流れやすくなる。
【0013】
ここで、前記凸部は、
前記本体部の上側及び下側にそれぞれ3個設けられてもよい
。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、フロートが容器の側面に貼りつくことを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一例である油水分離装置100の主要部分の概略を示す図である。
【
図2】フロート3の詳細を示す図であり、(A)は側面図であり、(B)は平面図である。
【
図3】
図3は、フロート3の上側の面が横向きとなった場合における、フロート3と容器1との位置関係を示す図である。
【
図7】従来例であり、フロートと容器の側面とが貼りつく場合を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、ディーゼルエンジンに供給される油に混入した水を分離するための油水分離装置100の主要部分の概略を示す図である。
【0017】
油水分離装置100は、
図1に示すように、透明材料で形成された有底筒状の容器1を有する。容器1の内部には、水、油等の流体が貯蓄される。容器1の底面には、容器1に貯蓄された液体を排出する排出口2が設けられる。
【0018】
容器1の内部には、フロート3が入れられる。フロート3は、比重が水より小さく、かつ油より大きくなるように、樹脂、例えばポリエチレンで形成される。容器1の底部に貯留された流体の高さを視認可能とするために、フロート3は流体の表面(
図1一点鎖線参照)に浮かべて使用される。
【0019】
図2は、本発明の一例であるフロート3の詳細を示す図であり、(A)は側面図であり、(B)は平面図である。なお、
図2(A)における上方向及び下方向を、本発明におけるフロート3の上方向及び下方向とする。したがって、
図2(B)の平面図は、フロート3を上から見た図となる。
【0020】
フロート3は、上側及び下側の面が略円形の略円板形状の部材である。フロート3は、主として、本体部31と、本体部31に設けられた凸部32とを有する。
【0021】
本体部31は、両端面31aが略円形であり、凸部32は本体部31の中心軸31b上に設けられる。
【0022】
凸部32は、先端が略球形の略円筒形である。凸部32の高さhは、本体部31の板厚tの略半分以上の高さである。
図2に示すフロート3は、高さhと板厚tとが略同一に形成される。例えば、
図2に示す本体部31の板厚は略5mmであり、凸部32の高さは略5mmである。
【0023】
また、凸部32の直径dは、本体部31に凸部32が3個程度配置可能な大きさで形成される。例えば、
図2に示す本体部31の直径は略35mmであり、凸部32の直径dは略6mmである。
【0024】
通常は、フロート3が、本体部31の上側の面又は下側の面が上向き(凸部32が
図1における+z方向に突出する向き)となった姿勢で流体の表面に浮かぶ。しかしながら、振動等によりフロート3の姿勢が変わり、本体部31の上側の面が上向きでない姿勢(例えば、上側の面が横向き(凸部32が
図1におけるxy平面にある向き))になって流体の表面に浮かぶ場合がある。
【0025】
図3は、フロート3の上側の面が横向きとなった場合における、フロート3と容器1との位置関係を示す図である。
図3は、
図1における+z方向からフロート3及び容器1を見た図である。
【0026】
フロート3が横向きとなった場合には、
図3(A)に示すように、凸部32が容器1と当接する。または、
図3(B)に示すように、凸部32及び本体部31との端が容器1と当接する。したがって、本体部31と容器1とが面で接することはない。
【0027】
本実施の形態によれば、本体部31と容器1とが面で接しないため、フロート3が容器1に貼りつくことを防止することができる。また、凸部32が本体部31の中心軸上に設けられているため、各端面31aに1個だけ凸部32を設けるだけで済む。
【0028】
なお、容器1に貼りつくことを防止可能なフロート3の形状はこれに限られない。
図4及び
図5は、フロート3の変形例を示す図である。
【0029】
図4(A)((A)は(A−1)、(A−2)を含む、以下同じ)は、凸部32Aの先端の形状が略球形でない例である。
図4(A−1)は側面図であり、(A−2)は平面図である。凸部32Aは、円柱形状であり、先端の周囲のみが円弧形状に形成されているため、先端に平面を有する。ただし、凸部32Aの円弧形状は、フロートが
図3(B)に示す姿勢、すなわち凸部32Aと本体部31との端とが容器1と当接する場合に、尖った形状の部分(エッジ)が容器1と当たらないような大きさで形成される。したがって、凸部32Aと本体部31との端とが容器1と当接するときにエッジが容器1と当たらず、容器1が破損等することを防止することができる。
【0030】
なお、
図4(A)では、凸部32Aの先端の周囲は、円弧形状に形成されたが、容器1にエッジが当たらないような形状であればよい。例えば、凸部の先端の周囲に面取りが行われていてもよい。
【0031】
図4(B)((B)は(B−1)、(B−2)を含む、以下同じ)は、本体部31Bの厚さと凸部32Bの厚さが異なる例である。
図4(B−1)は側面図であり、(B−2)は平面図である。凸部32Bの高さは、本体部31Bの板厚の半分と略同一の高さである。例えば、本体部31Bは、直径が略35mm、板厚は略7mmであり、凸部32の高さは略4mmである。このように、凸部の高さは、凸部及び本体部の端が容器1と当接するときに、本体部と収容部材とが面で接しないような高さ、すなわち本体部31の板厚の略半分以上の高さであればよい。
【0032】
図5(A)、(B)は、本体部31C、31Dの形状が異なる例である。
図5(A−1)、(B−1)は側面図であり、(A−2)、(B−2)は平面図である。本体部31C、31Dは、両端より中央部の厚みが厚くなっている。このような形状とすることで、本体部31C、31Dの両端から外側へ向けて流体が流れやすくなる。なお、本体部を側面から見たときの両端面は、本体部31Cに示すように、主として平面で構成されていてもよいし、本体部31Dに示すように、主として曲面で構成されていてもよい。
【0033】
さらに、フロート3の変形例としては、凸部の数が異なる形態も考えられる。
図6は、フロート3Dの中心を通る平面Aにおいて凸部32が3個形成された例である。本実施の形態では、凸部32の直径dは、本体部31に凸部32が3個程度配置可能な大きさで形成される。したがって、
図5に示すように、平面Aにおいて、凸部32を略均等に配置することができる。
図4(B)に示すフロート3Bは、フロート3に比べて直径が大きいため、隣接する凸部32B同士の間隔が凸部32Aの直径より小さくなるが、フロート3Bの中心を通る平面において凸部32Bを3個形成することが可能である。
【0034】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0035】
1:容器、2:排出口、3、3A、3B、3C、3D、3E:フロート、31、31B、31C、31D:本体部、31a:端面、31b:中心軸、32、32A、32B:凸部、100:油水分離装置