特許第6403374号(P6403374)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6403374-非酸化染毛2剤型染毛剤 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6403374
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】非酸化染毛2剤型染毛剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/898 20060101AFI20181001BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20181001BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20181001BHJP
   A61K 8/368 20060101ALI20181001BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20181001BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   A61K8/898
   A61K8/891
   A61K8/81
   A61K8/368
   A61K8/19
   A61Q5/10
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-232486(P2013-232486)
(22)【出願日】2013年11月8日
(65)【公開番号】特開2015-93837(P2015-93837A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2016年10月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113274
【氏名又は名称】ホーユー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】橋本 和典
(72)【発明者】
【氏名】今井 陽介
(72)【発明者】
【氏名】太田 周子
【審査官】 進士 千尋
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−170629(JP,A)
【文献】 特開平04−164017(JP,A)
【文献】 特開平01−090117(JP,A)
【文献】 特開2005−220048(JP,A)
【文献】 特開2003−095902(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/064598(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/107771(WO,A1)
【文献】 特開2011−126845(JP,A)
【文献】 特開2013−193968(JP,A)
【文献】 特開2012−246284(JP,A)
【文献】 特開平07−165542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛髪に対してまず塗布する第1剤(2−ヒドロキシベンゾフェノン骨格を有する紫外線吸収剤を含有する第1剤を除く)、第1剤の塗布後しばらく放置してから第1剤と混合するように塗布する第2剤とを含む2剤式染毛剤において、前記第1剤がアルカリ性であって、多価フェノールの1種以上と、シリコーン化合物の1種以上を含有し、前記第2剤が酸性であって、多価金属塩の1種以上と、シリコーン化合物及びカチオン化ポリマーから選ばれる1種以上を含有する2剤式染毛剤であって、第2剤におけるシリコーン化合物及びカチオン化ポリマーから選ばれる1種以上の合計含有量(S2,C2)に対する第1剤におけるシリコーン化合物の1種以上の合計含有量(S1)の質量比S1/(S2,C2)が0.2〜5の範囲内であることを特徴とする2剤式染毛剤。
【請求項2】
前記シリコーン化合物が以下の(1)の1種以上であり、カチオン化ポリマーが以下の(2)の1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の2剤式染毛剤。
(1)アミノ変性シリコーンであるアミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体。
(2)塩化ジメチルジアリルアンモニウムをモノマーとして含むカチオン化ポリマー。
【請求項3】
前記アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体が、窒素原子含有量が0.2%以上のものであることを特徴とする請求項2に記載の2剤式染毛剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非酸化染毛2剤型染毛剤に関し、更に詳しくは、多価フェノール類と多価金属塩との反応を利用して染毛する、金属染毛剤とも呼ばれる非酸化染毛2剤型染毛剤に関する。
【背景技術】
【0002】
染毛剤は一時染毛料、半永久染毛料、永久染毛剤に大きく分類される。これらの内、永久染毛剤は、毛髪を膨潤させたもとで毛髪内部で染料成分を発色させるため、染毛効果が長期にわたり持続する。
【0003】
永久染毛剤として一般に広く利用されているものは、パラフェニレンジアミン等を主体とした酸化染料及びアルカリ剤を配合した第1剤と、酸化剤(主に過酸化水素)を配合した第2剤とを混合して使用する酸化型染毛剤である。しかし酸化型染毛剤は、アルカリ剤及び過酸化水素水の作用により毛髪にダメージを与えることがある。
【0004】
これに対して、フェノール類(特に多価フェノール類)と金属塩(特に第1鉄塩等の多価金属塩)との反応を利用して染毛する非酸化染毛2剤型染毛剤では、毛髪に対するダメージが少ないと言う利点がある。非酸化染毛2剤型染毛剤ではフェノール類と金属塩との反応性が高いことから、一般的にはフェノール類と金属塩を別々の剤に配合した2剤式として提供されることが多い。
【0005】
下記の特許文献1に開示された染毛剤組成物は、没食子酸又はその誘導体やサリチル酸又はその誘導体、更に好ましくは多価フェノールを含有する第1剤と、鉄塩、好ましくは第1鉄塩を含む第2剤からなり、又、これらの剤の内の少なくとも一方が尿素を含む。そして、第1剤は好ましくは弱アルカリ性、第2剤は好ましくはpH2.5〜3.5程度の酸性に調整される。又、尿素の配合により、染毛・白髪かくし効果がより高くなる、としている。
【0006】
下記の特許文献2に開示された二液型染毛剤組成物は、第1鉄塩を含むアルカリ性の第1剤と、没食子酸プロピル、アスコルビン酸類、植物抽出物から選ばれる少なくとも1種を含有する第2剤からなる。そしてシリコン油、特に好ましくはジメチルシリコンやアミノ変性シリコンの配合により染毛・白髪かくし効果が高くなるとして、それらの好ましい粘度や含有量を規定するが、アミノ変性シリコンについては具体的な種類の記載がない。
【0007】
下記の特許文献3に開示された染毛料は、還元剤であるL−システイン及びその誘導体の少なくとも1種を含有するアルカリ性の第1液で毛髪を膨潤させてから、多価フェノール及び鉄塩(特に、第1鉄塩)を含有する酸性の第2液を塗布して、pHの変化に基づき多価フェノールと鉄塩を反応させ発色させる。即ち、フェノール類と鉄塩を同一の剤に配合している。このタイプのものは、フェノール類と金属塩との反応性が高く毛髪表面付近で起こるため、染色性と染毛の堅牢性が特に劣ると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−273869号公報
【特許文献2】特開平5−170629号公報
【特許文献3】特開昭53−148548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、従来の非酸化染毛2剤型染毛剤(非酸化型の2剤式染毛剤)は、特許文献3のタイプの染毛剤はもちろんであるが、特許文献1、2のタイプの染毛剤でも、必ずしも十分な染色性及び堅牢性を実現できていなかった。又、更に重要な問題として次の点を指摘できる。この点は、特許文献1〜3では取り上げていない。
【0010】
即ち、金属染毛剤は一般的に、アルカリ性の第1剤/第1液の使用あるいは還元剤の配合により毛髪を膨潤させ、毛髪の内部でフェノール類と鉄塩を発色反応させようとするものであり、その意味では「永久染毛剤」のカテゴリーに属する。しかし実際には、毛髪表面においても発色反応が起こり、発色体である不溶性金属塩の被膜を毛髪表面に生成することを回避できない。そのため、金属染毛剤で染毛を行った毛髪がゴワつくと言う問題があった。この毛髪のゴワつきは、発色体である不溶性金属塩に起因する、金属染毛剤を使用した毛髪に独特のものであって、例えば酸化型の2剤式染毛剤等で指摘される「ダメージ毛の手触りの悪さ」や、染毛剤におけるキレート剤の使用目的として言及される「金属除去による毛髪の感触の維持」とも異なる。
【0011】
そこで本発明は、十分な染色性及び堅牢性を実現し、かつ金属染毛剤に独特のゴワつきを解消した非酸化染毛2剤型染毛剤を提供することを、解決すべき課題とする。
【0012】
本願発明者は、金属染毛剤で染毛した毛髪におけるゴワつきの問題を分析・検討した結果、その現象の要因が、「毛髪表面のザラつき」と「毛髪の硬さ」にあることを突き止めた。そして更に研究を進めた結果、これらの「毛髪表面のザラつき」と「毛髪の硬さ」を有効に防止できる手段を特定するに至り、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(第1発明)
本願第1発明の構成は、第1剤が多価フェノールの1種以上と、シリコーン化合物の1種以上を含有し、第2剤が多価金属塩の1種以上と、シリコーン化合物及びカチオン化ポリマーから選ばれる1種以上を含有する、非酸化染毛2剤型染毛剤である。
【0014】
(第2発明)
本願第2発明の構成は、前記第1発明に係る非酸化染毛2剤型染毛剤において、シリコーン化合物が以下の(1)の1種以上であり、カチオン化ポリマーが以下の(2)の1種以上である、非酸化染毛2剤型染毛剤である。
【0015】
(1)アミノ変性シリコーンであるアミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体。
【0016】
(2)塩化ジメチルジアリルアンモニウムをモノマーとして含むカチオン化ポリマー。
【0017】
(第3発明)
本願第3発明の構成は、多価フェノールの1種以上を含有する第1剤と、多価金属塩の1種以上を含有する第2剤とを、それぞれ薄い金属材を用いたチューブ状容器に収容しており、かつ、前記第2剤が更に緩衝能を持つpH調整剤を含有し、pH4.5以上に調整されている、非酸化染毛2剤型染毛剤用品である。
【発明の効果】
【0018】
(第1発明及び第2発明の効果)
第1発明の非酸化染毛2剤型染毛剤は、第1剤が多価フェノールを、第2剤が鉄塩のような多価金属塩を含有し、通常、第1剤をpH7〜11程度のアルカリ性に調整し、第2剤をpH3〜7程度の酸性に調整している。そして、まず毛髪に対して第1剤を塗布後、しばらく放置して毛髪に浸透させてから第2剤を第1剤と良く混合するように塗布すると、毛髪内で第1鉄塩(Fe2+)と多価フェノールの錯体が形成され、その後酸化されて第2鉄塩(Fe3+)と多価フェノールの錯体が形成され黒色系の発色体を生成する。この発色反応は、主として膨潤させた毛髪の内部で起こるため、十分な染色性及び堅牢性を伴う染毛が可能となる。染毛色調は基本的に黒色系であり、例えば白髪を徐々に黒く染めることができ、かつ白髪かくし効果を有する。このような作用・効果自体は、前記した特許文献1に開示する染毛剤組成物等の場合と同様のものである。
【0019】
しかし、特許文献1〜特許文献3では述べていないが、上記の作用の過程では同時に毛髪の表面でも発色反応が起こり、毛髪表面に不溶性金属塩の被膜を生成することを完全には回避できない。そのため、金属染毛剤独特の毛髪のゴワつきを生じる。
【0020】
これに対して、第1発明の非酸化染毛2剤型染毛剤は、シリコーン化合物とカチオン化ポリマーを含有する。シリコーン化合物は第1剤の必須成分であるが、第2剤にも好ましく配合できる。カチオン化ポリマーは酸性の第2剤に配合される。
【0021】
本願発明者の研究により、金属染毛剤に独特の毛髪のゴワつきの一方の要因である「毛髪表面のザラつき」に対しては、シリコーン化合物、特にアミノ変性シリコーンが有効であることが分かった。但し、無作為に選択したアミノ変性シリコーンを配合すると、毛髪表面のザラつきが抑制される反面、染毛剤の染毛力が低下する場合が多いことも判明した。そしてその理由は、一般的にカチオン性であるアミノ変性シリコーンが多価フェノールと結合するためであると考えられた。そこで本願発明者が更に研究を進めた結果、アミノ変性シリコーンであるアミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体を配合した場合には、多価フェノールとの結合性が小さいため、毛髪表面のザラつきが抑制されると共に染毛剤の染毛力も低下しないことを突き止めた。
【0022】
シリコーン化合物の主たる配合効果は以上の通りであるが、第1剤と第2剤の双方にシリコーン化合物を配合すると染毛力と堅牢性が更に向上する。その理由は、毛髪表面にシリコーン化合物の皮膜がより強固に形成されるためであると考えられる。
【0023】
更に、毛髪のゴワつきのもう一方の要因である「毛髪の硬さ」に対しては、カチオン化ポリマー、特に塩化ジメチルジアリルアンモニウムをモノマーとして含むカチオン化ポリマー、とりわけポリ塩化ジメチルジアリルアンモニウム(マーコート100)が有効であることが分かった。なお、カチオン化ポリマーを弱アルカリ性の第1剤に配合することは好ましくない。
【0024】
更に、第2剤におけるシリコーン化合物及びカチオン化ポリマーから選ばれる1種以上の合計含有量(S2,C2)に対する第1剤におけるシリコーン化合物の1種以上の合計含有量(S1)の質量比S1/(S2,C2)が、実施形態欄で後述するように、一定の範囲内であると、特に染毛力・堅牢性が向上し、かつ毛髪のゴワつきを抑制できる。
【0025】
(第3発明の効果)
例えば酸化染毛剤のような酸化型の2剤式染毛剤と同様、非酸化染毛2剤型染毛剤においても、第1剤と第2剤を同量ずつ使用する設定となっていることが多い。そのため、第1剤と第2剤をそれぞれ使用上簡便なチューブ状容器に収容して非酸化染毛2剤型染毛剤用品を構成する場合、弾性的に変形するプラスチック製ラミネートチューブのようなチューブ状容器よりも、塑性変形する薄い金属材(例えば、アルミニウム材)を用いたチューブ状容器が好ましい。
【0026】
なぜなら、内容物が充填された図1(a)に示す容器1(キャップ2を閉めた状態で示す)がプラスチック製チューブ状容器である場合、図1(b)に示すようにキャップ2を取って後端部から絞り、開口部3より一定量を絞り出した場合でも、容器1を絞っていた手を離すと、図1(c)に示すように容器1の外形が弾性的に復元し、残量が分からなくなる。しかし、容器1が塑性変形する薄い金属材を用いたチューブ状容器の場合、容器1を絞っていた手を離しても図1(b)に示す外形を維持するので残量を明確に把握でき、使用の都度、第1剤と第2剤を同量ずつ絞り出して混合することが容易である。
【0027】
ところが、非酸化染毛2剤型染毛剤の多価フェノールを含有する第1剤、多価金属塩を含有する第2剤をそれぞれ薄い金属材を用いたチューブ状容器に収容すると、第2剤のチューブ状容器が多価金属塩によって腐食し、チューブ状容器及び内容物の保存安定性を保てないことが判明した。チューブ状容器を構成する薄い金属材の内側面に軟質プラスチック製のフィルムを内張りしたラミネート材になっている場合にも、このような不具合が起こる。軟質プラスチック製のフィルムをある程度以上に厚くすると不具合を回避できるが、その場合には、チューブ状容器の塑性変形性が失われる。
【0028】
この問題については、第2剤に緩衝能を持つpH調整剤を配合し、pH4.5以上に調整しておくと、上記の腐食を防止できることが分かった。その理由は明確には判明していないが、酸化還元反応による自由電子のやりとりがなくなると言う理由が推定される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1(a)〜図1(c)はチューブ状容器の使用状態を示す。
【符号の説明】
【0030】
1 容器
2 キャップ
3 開口部
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に本発明の実施形態を、その最良の形態を含めて説明する。本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されない。
非酸化染毛2剤型染毛剤の実施形態
〔非酸化染毛2剤型染毛剤〕
本発明の非酸化染毛2剤型染毛剤は金属染毛剤とも呼ばれるものであって、第1剤が多価フェノールの1種以上と、シリコーン化合物の1種以上を含有し、第2剤が多価金属塩の1種以上と、シリコーン化合物及びカチオン化ポリマーから選ばれる1種以上を含有する。
【0032】
第1剤はpH7〜11程度のアルカリ性に調整されていることが好ましい。そのためのpH調整剤として、例えば、アンモニア、炭酸アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の無機アルカリや、モノエタノールアミン、イソプロパノールアミン等の有機アルカリを配合することができる。
【0033】
一方、第2剤はpH3〜7程度の酸性に調整されていることが好ましい。そのことにより、第2剤中の金属塩、例えば鉄塩が安定な第1鉄塩(Fe2+)として存在する。そのためのpH調整剤として、例えば、クエン酸、アスコルビン酸、乳酸、レブリン酸、グリコール酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸等の有機酸や、リン酸、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸を配合することができる。緩衝能を目的として、これらの酸の塩を配合することも好ましい。
【0034】
なお、第1剤と第2剤との使用形態としては、毛髪に対して、まず第1剤を塗布後、しばらく放置して毛髪を膨潤させてから第2剤を第1剤と良く混合するように塗布する形態が好ましいが、第1剤と第2剤を設定された量比で混合してから毛髪に塗布する形態も可能である。
【0035】
第1剤及び第2剤の剤型は特段に限定されないが、各々、液状、クリーム状、泡状、スプレー状等とすることができる。又、第1剤及び第2剤は、ヘアリキッド、トニック、ヘアセット剤、ヘアクリーム、ヘアローション、枝毛コート剤、ヘアスタイリングフォーム、ヘアミスト、ヘアカラー等の使用形態に調製することができる。
【0036】
〔多価フェノール〕
多価フェノールとは、2以上のフェノール性水酸基を備えた芳香族化合物を言い、第1鉄塩等の金属塩と反応して発色するものである。多価フェノールとしては、単核の芳香環に2以上のフェノール性水酸基を備えたものや、縮合し又は縮合していない複数の芳香環に合計2以上のフェノール性水酸基を備えたものが包含される。具体的には、タンニン酸、没食子酸及びその誘導体、五倍子、ピロガロール、ログウッド、ヘマテイン、カテコール、サリチル酸及びその誘導体、フタル酸、オイゲノール、イソオイゲノール、ニコチン酸アミド、デヒドロ酢酸、ピリドキシン、エラグ酸、コウジ酸、マルトール、フェルラ酸等が例示される。以上の内でも、タンニン酸、没食子酸及びその誘導体、ログウッド、ヘマテイン、サリチル酸及びその誘導体等が特に好ましい。
【0037】
第1剤における多価フェノールの1種以上の合計含有量は限定されないが、混合時における第2剤との設定された混合量比、第2剤中における多価金属塩の含有量等を勘案したもとで、適宜に決定することができる。多価フェノールの1種以上の合計含有量は、第1剤と第2剤との混合液中において、例えば0.1〜5質量%とすることができる。
【0038】
〔多価金属塩〕
多価金属塩とは、2価以上の金属の塩である。具体的には特に鉄塩即ち第1鉄塩が好ましく、例えば硫酸第一鉄、塩化第一鉄、酢酸第一鉄、リン酸第一鉄、シュウ酸第一鉄等を挙げることができる。銅塩、銀塩、亜鉛塩、鉛塩等も用いることができる。
【0039】
第2剤における多価金属塩の1種以上の合計含有量は限定されないが、混合時における第1剤との設定された混合量比、第1剤中におけるフェノールの含有量等を勘案したもとで、適宜に決定することができる。第2剤中の多価金属塩の1種以上の合計含有量は、第1剤と第2剤との混合液中において、例えば0.1〜5質量%とすることができる。
【0040】
〔シリコーン化合物〕
シリコーン化合物は非酸化染毛2剤型染毛剤の第1剤に配合される。第1剤に配合することにより、長時間毛髪へ接触して、吸着力が上がることにより毛髪のゴワつきを抑制することができる。又、非酸化染毛2剤型染毛剤の第2剤にも好ましく配合される。
【0041】
シリコーン化合物の種類は限定されないが、「発明の効果」欄で述べた理由から、特にアミノ変性シリコーンが好ましく、とりわけアミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体が好ましい。その中でも、末端がトリメチル型のものが更に好ましい。更にその中でも窒素原子含有量が0.5%以上のものが好ましく、かつ、窒素原子含有量が高い程好ましい。ここに「窒素原子含有量」とは、シリコーン化合物全体を構成する各種原子の原子数の合計値に対する窒素原子数のパーセンテージを言う。
【0042】
アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体としては、上記した末端がトリメチル型のものの他に、末端がヒドロキシ基含有型のもの等が挙げられる。アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(INCI名:トリメチルシリルアモジメチコン)以外のアミノ変性シリコーンとして、アミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(INCI名:アミノプロピルジメチコン)、アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(INCI名:アモジメチコン)、(ビスイソブチルPEG-14/アモジメチコン)コポリマー等が挙げられる。
【0043】
又、アミノ変性シリコーン以外のシリコーン化合物としては、ジメチルポリシロキサン(INCI名:ジメチコン)、ヒドロキシ末端基を有するジメチルポリシロキサン(INCI名:ジメチコノール)、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の他に、ポリエーテル変性シリコーン、平均重合度が650〜10000の高重合シリコーン、ベタイン変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等が挙げられる。
【0044】
2剤式染毛剤におけるシリコーン化合物、あるいはアミノ変性シリコーン、あるいはアミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体の合計含有量は、第1剤と第2剤との混合液中において、例えば0.1〜5質量%とすることができる。
【0045】
〔カチオン化ポリマー〕
カチオン化ポリマーは、シリコーン化合物と併用で、あるいはシリコーン化合物との二者択一の成分として、非酸化染毛2剤型染毛剤の第2剤に配合される。
【0046】
カチオン化ポリマーの種類は限定されないが、「発明の効果」欄で前記した理由から、特に塩化ジメチルジアリルアンモニウムをモノマーとして含むカチオン化ポリマーが好ましく、とりわけポリ塩化ジメチルジアリルアンモニウム(マーコート100)が好ましい。
【0047】
塩化ジメチルジアリルアンモニウムをモノマーとして含むカチオン化ポリマーとしては、マーコート100(MERQUAT100、ルーブリゾール社)以外に、例えば、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体、アクリルアミド・アクリル酸・塩化ジメチルジアリルアンモニウム共重合体等を挙げることができる。その中でも、カチオン化度が25質量%以上、更には80質量%以上のものが好ましい。ここに「カチオン化度」とは、ポリマーを構成する全モノマーの合計質量に対する、カチオン性解離基を含むモノマーの合計質量のパーセンテージを言う。
【0048】
非酸化染毛2剤型染毛剤におけるカチオン化ポリマー、あるいは塩化ジメチルジアリルアンモニウムをモノマーとして含むカチオン化ポリマー、あるいはポリ塩化ジメチルジアリルアンモニウム(マーコート100)の合計含有量は、第1剤と第2剤との混合液中において、例えば0.1〜5質量%とすることができる。
【0049】
なお、「第1発明及び第2発明の効果」欄で述べた質量比S1/(S2,C2)が0.2〜5の範囲内、より好ましくは0.8〜1.2の範囲内であると、非酸化染毛2剤型染毛剤の染毛力・堅牢性が一層向上し、かつ毛髪のゴワつきも一層抑制できる。
【0050】
〔溶剤〕
非酸化染毛2剤型染毛剤の第1剤及び第2剤は、基材あるいは成分の溶解剤として水等の溶剤を含有する。第1剤及び第2剤における溶剤の含有量は必要に応じて適宜に決定すれば良い。溶剤としては、水の他に、多価フェノール等を溶解させるためのプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン等も例示される。
【0051】
〔その他の成分〕
本発明の非酸化染毛2剤型染毛剤の第1剤及び/又は第2剤には、上記の各成分の他に、下記のような任意的配合成分を、本発明の効果を損なわない範囲で配合することもできる。但し、任意的配合成分の種類によっては、第1剤及び第2剤のpHと上記の主要配合成分を考慮して、第1剤に配合するか第2剤に配合するかを決定することが好ましい。
【0052】
任意的配合成分として、還元剤、シリコーン化合物以外の油性成分、界面活性剤、カチオン性ポリマー以外の高分子化合物、ペプチドあるいはアミノ酸系成分、防腐剤、セラミド類、ビタミン類等が挙げられる。
【0053】
(還元剤)
還元剤としては、L−システイン、N−アセチルシステイン、チオ乳酸、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2−メルカプトエタノール、ジチオスレイトール、ジチオエリスリトール、トリプロピルホスフィン等が例示される。
【0054】
(油性成分)
シリコーン化合物以外の油性成分として、油脂、ロウ類、高級アルコール、高級脂肪酸、アルキルグリセリルエーテル、エステル類等が挙げられる。
【0055】
油脂としては、オリーブ油、ローズヒップ油、ツバキ油、シア脂、マカデミアナッツ油、アーモンド油、茶実油、サザンカ油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、ゴマ油、牛脂、カカオ脂、トウモロコシ油、落花生油、ナタネ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、小麦胚芽油、ハトムギ油、ブドウ種子油、アボカド油、カロット油、マカダミアナッツ油、ヒマシ油、アマニ油、ヤシ油、ミンク油、卵黄油等が挙げられる。
【0056】
ロウ類としては、ミツロウ(蜜蝋)、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ホホバ油、ラノリン、鯨ロウ、コメヌカロウ、パームロウ、モンタンロウ、綿ロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、カポックロウ、セラックロウ等が挙げられる。
【0057】
高級アルコールとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール(セタノール)、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、2−ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、ラノリンアルコール等が挙げられる。
【0058】
高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、ウンデシレン酸、リノール酸、リシノール酸、ラノリン脂肪酸等が挙げられる。
【0059】
アルキルグリセリルエーテルとしては、バチルアルコール(モノステアリルグリセリルエーテル)、キミルアルコール(モノセチルグリセリルエーテル)、セラキルアルコール(モノオレイルグリセリルエーテル)、イソステアリルグリセリルエーテル等が挙げられる。
【0060】
エステル類としては、アジピン酸ジイソプロピル、オクタン酸セチル、イソオクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、セバシン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、パルミチン酸2−エチルへキシル、リシノール酸オクチルドデシル、乳酸ラウリル、乳酸セチル、酢酸ラノリン、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、カプリン酸セチル、ラノリン誘導体等が挙げられる。
【0061】
炭化水素としては、α−オレフィンオリゴマー、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、流動イソパラフィン、流動パラフィン、スクワラン、ポリブテン、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等が挙げられる。
【0062】
(界面活性剤)
界面活性剤として、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤が挙げられる。
【0063】
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレン(以下、POEという)セチルエーテル、POEステアリルエーテル、POEオレイルエーテル、POEラウリルエーテル、POEオクチルドデシルエーテル、POEノニルフェニルエーテル、POEオクチルフェニルエーテル、モノオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEグリセリン、テトラオレイン酸POEソルビット、POEソルビットミツロウ、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、親油型モノオレイン酸グリセリン等が例示される。
【0064】
カチオン性界面活性剤としては、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム(ステアルトリモニウムクロリド)、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム(ベヘントリモニウムクロリド)、臭化セチルトリメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウムサッカリン、セチルトリメチルアンモニウムサッカリン、メチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウム等が例示される。
【0065】
アニオン界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、POEラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン、POEステアリルエーテル硫酸ナトリウム、ステアロイルメチルタウリンナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、テトラデセンスルホン酸ナトリウム、POEラウリルエーテルリン酸及びその塩等が例示される。
【0066】
両性界面活性剤としては、ラウリルベタイン、イミダゾリン、アミドベタイン、カルボベタイン、スルホベタイン、ヒドロキシスルホベタイン、アミドスルホベタイン、2−ウンデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム、ココアミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等が例示される。
【0067】
(高分子化合物)
カチオン性ポリマー以外の高分子化合物として、カルボキシビニルポリマー等のアニオン性ポリマー、ジアリル4級アンモニウム塩/アクリル酸共重合体等の両性ポリマーの他、水溶性ポリマーも挙げられる。
【0068】
水溶性ポリマーとしては、アラビアガム、カラヤガム、トラガントガム、キサンタンガム、カラギーナン、ペクチン、寒天、デンプン等の植物性高分子が例示される。デキストラン、プルラン等の微生物系高分子も例示される。コラーゲン、カゼイン、ゼラチン:デキストラン、プルラン等の動物性高分子も例示される。更に、カルボキシメチルデンプン等のデンプン系高分子や、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロース系高分子も例示される。
【0069】
(ペプチドあるいはアミノ酸系成分)
ペプチドあるいはアミノ酸系成分として、コラーゲン、ケラチン、エラスチン、フィブロイン、エッグ、シルク、コンキオリン、カゼイン、ゼラチン等の蛋白質の他、コメ、コムギ、オオムギ、カラスムギ、ダイズ、エンドウ、アーモンド、ブラジルナッツ、ジャガイモなどの植物から得られるタンパク質が挙げられる。
非酸化染毛2剤型染毛剤用品の実施形態
〔非酸化染毛2剤型染毛剤用品〕
本発明の非酸化染毛2剤型染毛剤用品においては、多価フェノールの1種以上を含有する第1剤と、多価金属塩の1種以上を含有する第2剤からなる非酸化染毛2剤型染毛剤の当該第1剤及び第2剤をそれぞれ薄い金属材を用いたチューブ状容器に収容している。そして、第2剤が更に緩衝能を持つpH調整剤を含有し、pH4.5以上に調整されている。
【0070】
〔チューブ状容器〕
第1剤及び第2剤をそれぞれ収容しているチューブ状容器は、例えば図1に示すような形状の容器であって、通常は互いに同形状かつ同容量である。チューブ状容器の容量は限定されないが、通常は20〜100ml程度である。「薄い金属材」としては、例えば厚さが0.1〜0.2μm程度の、可塑的変形性に富むアルミニウムが好ましい。このアルミニウム材の内面側及び/又は外面側にフィルム状の軟質プラスチックをラミネートさせても良いが、チューブ状容器の可塑的変形性を維持するために、そのラミネートフィルムの厚さは0.5μm以下であることが好ましい。
【0071】
〔第1剤と第2剤〕
第1剤は多価フェノールの1種以上を含有するが、そのpH、剤型、多価フェノール以外の含有成分については、前記した「非酸化染毛2剤型染毛剤の実施形態」で述べた第1剤の記述がそのまま当てはまる。又、第2剤は、多価金属塩の1種以上を含有し、緩衝能を持つpH調整剤を含有し、pH4.5以上に調整されている点を除けば、前記した「非酸化染毛2剤型染毛剤の実施形態」で述べた第2剤の記述がそのまま当てはまる。更に、そして第1剤と第2剤の使用形態も、前記した「非酸化染毛2剤型染毛剤の実施形態」で述べた処と同様である。
【0072】
〔第2剤のpHと、緩衝能を持つpH調整剤〕
第2剤はpH4.5以上に調整されている。第2剤がpH4.5よりも低いと染毛力及び堅牢性が悪化し、チューブ安定性が悪化すると言う問題がある。
【0073】
このようなpHとするためのpH調整剤として、例えば、クエン酸、アスコルビン酸、乳酸、レブリン酸、グリコール酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸等の有機酸や、リン酸、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸を配合することができる。pH調整剤としては、特に有機酸の塩、例えばクエン酸、アスコルビン酸等のナトリウム塩、カリウム塩等が好ましく、とりわけ、還元力にも優れると言う理由から、アスコルビン酸のナトリウム塩が好ましい。
【0074】
〔多価金属塩〕
多価金属塩については、「非酸化染毛2剤型染毛剤の実施形態」で述べた多価金属塩の記述が、その含有量も含めて、そのまま当てはまる。
【実施例】
【0075】
次に本発明の実施例及び比較例を説明する。本発明の技術的範囲は以下の実施例及び比較例によって限定されない。
【0076】
〔非酸化染毛2剤型染毛剤の調製〕
末尾の表1及び表2にそれぞれ「例1」〜「例18」として表示する実施例1〜実施例18、末尾の表3にそれぞれ「比1」〜「比5」として表示する比較例1〜比較例5に係る組成の非酸化染毛2剤型染毛剤の第1剤及び第2剤を調製した。
【0077】
なお「実施例」、「比較例」とはいずれも本願第1発明(及び第2発明)から見た実施例、比較例の区分である。なお、本願第3発明から見た場合は「比5」のみが比較例であり、他の例はいずれも実施例である。
【0078】
以上の各実施例、比較例に係る組成物を、常法に従い、それぞれクリーム状に調製した。これらの各例に係る第1剤及び第2剤は、使用時においては、いずれも質量比1:1で使用するように設定されている。
【0079】
各表中における成分の含有量を示す数値は、該当する第1剤又は第2剤中における質量%を示す。なお、成分名の欄に「特定アミノ変性シリコーン」と記載したものは、「アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体」である。これらの特定アミノ変性シリコーン及びその他のシリコーン化合物については、成分名の右隣りの「N%」の欄に、前記した窒素原子含有量の数値(%)を付記した。又、第2剤に配合したカチオン化ポリマーについては、上記「N%」の欄の更に右隣りの「カチオン化度(mass%)」の欄に、前記したカチオン化度の数値(質量%)を付記した。
【0080】
又、各例に係る第1剤及び第2剤のpHは「1剤pH」、「2剤pH」の欄にそれぞれ表記した。更に、各例に係る第1剤と第2剤の混合時のpHは「混合時pH」の欄に表記した。
【0081】
〔非酸化染毛2剤型染毛剤の評価〕
以上の各実施例、比較例に係る非酸化染毛2剤型染毛剤の第1剤及び第2剤を用いて、以下のように「染毛力」、「堅牢性」、「感触」、「チューブ安定性」を評価した。
【0082】
(染毛力)
長さ10cmの評価用の白毛混じりの毛束サンプル(以下、単に毛束サンプルと称する)に対し、実施例1〜実施例18及び比較例1〜比較例5に係る非酸化染毛2剤型染毛剤を用いて染毛処理した。具体的には、各例に係る第1剤を2g均一に塗布し、15分放置後、各例に係る第2剤を2g均一に塗布し、15分放置した。その後、毛束サンプルをシャンプーにて洗浄し、乾燥を行った後、非酸化染毛2剤型染毛剤の染毛力を評価した。
【0083】
染毛処理を施した毛束サンプルについて、パネラー20名が標準光源下で目視にて発色度合いを評価することにより、この種の非酸化染毛2剤型染毛剤において一般的に「染毛力が良い」とされる場合を基準として、染毛力が良いか否かについて判断した。パネラー20人中「良い」と答えた人が、それぞれ、17名以上である場合は評価「5」、13〜16名である場合は評価「4」、9〜12名である場合は評価「3」、8〜5名である場合は評価「2」、4名以下である場合は評価「1」とした。その評価結果を各表の「染毛力」欄に示す。
【0084】
(堅牢性)
各実施例及び各比較例に係る上記の染毛力評価における染毛処理後の洗浄・乾燥した毛束サンプルを用いた。染毛処理が完了してから1日後に50℃の1%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液(500ml)に15分間毛束サンプルを浸漬し、その後十分に水洗し、乾燥させた。
【0085】
20名のパネラーに、上記の浸漬処理前と、浸漬処理後に水洗・乾燥させた毛束サンプルとの対比により、「退色がほとんどない」、「退色がほとんどないとは言えない」の二者択一で評価させた。20名のパネラー中、「退色がほとんどない」と回答したパネラーが、それぞれ、17名以上である場合は評価「5」、16〜13名である場合は評価「4」、12〜9名である場合は評価「3」、8〜5名である場合は評価「2」、4名以下である場合は評価「1」とした。その評価結果を各表の「堅牢性」欄に示す。
【0086】
(感触)
各実施例及び各比較例に係る上記の染毛力評価における染毛処理後の洗浄・乾燥した毛束サンプルを用いて、感触を評価した。「感触」とは、「毛髪表面のザラつき」及び「毛髪の硬さ」を総合した評価であり、「毛髪表面のザラつき及び毛髪の硬さが共に感じられない」場合を「感触が良い」と評価し、「毛髪表面のザラつきと毛髪の硬さの少なくとも一方が感じられる」場合を「感触が良いとは言えない」と評価した。
【0087】
20名のパネラーに、「感触が良い」、「感触が良いとは言えない」の二者択一で評価させ、20名のパネラー中、「感触が良い」と回答したパネラーが、それぞれ、20〜17名以上である場合は評価「5」、16〜13名である場合は評価「4」、12〜9名である場合は評価「3」、8〜5名である場合は評価「2」、4名以下である場合は評価「1」とした。その評価結果を各表の「感触」欄に示す。
【0088】
(チューブ安定性)
各実施例及び各比較例に係る非酸化染毛2剤型染毛剤のクリーム状の第1剤及び第2剤を調製し、直ちにそれぞれ40gを容量50mlの薄いアルミニウム製チューブに充填し、40℃で1ヵ月間保存した。次いでそれらのチューブを切り開き、クリーム状の内容物を取り除いた後、第1剤及び第2剤をそれぞれ充填したチューブの安定性を評価した。この評価は、チューブの内面に異常(ブリスター、腐食又は孔食)が発生していないかどうかを観察することにより行った。
【0089】
観察の結果、「異常なし」の場合は評価「◎」、「異常あり」の場合は評価「×」とした。その評価結果を各表の「チューブ安定性」欄に示す。「異常あり」の評価であった比較例5においては、実際には第2剤を充填したチューブに異常が見られた。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明により、十分な染色性及び堅牢性を実現し、かつ金属染毛剤に独特のゴワつきを解消した非酸化染毛2剤型染毛剤が提供される。
図1