特許第6403375号(P6403375)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ホーユー株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6403375
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】非酸化染毛2剤型染毛剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/34 20060101AFI20181001BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20181001BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20181001BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20181001BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20181001BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20181001BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20181001BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   A61K8/34
   A61K8/36
   A61Q5/10
   A61K8/60
   A61K8/19
   A61K8/86
   A61K8/02
   A61K8/41
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-232488(P2013-232488)
(22)【出願日】2013年11月8日
(65)【公開番号】特開2015-93839(P2015-93839A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2016年10月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113274
【氏名又は名称】ホーユー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】今井 陽介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 裕佳
(72)【発明者】
【氏名】今野 佳洋
【審査官】 進士 千尋
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−193722(JP,A)
【文献】 特開2012−097026(JP,A)
【文献】 特開2007−291015(JP,A)
【文献】 特開2011−037750(JP,A)
【文献】 特開平09−077629(JP,A)
【文献】 特開2010−248103(JP,A)
【文献】 特開昭53−148548(JP,A)
【文献】 特開平05−229922(JP,A)
【文献】 特開平03−255019(JP,A)
【文献】 特開平05−170629(JP,A)
【文献】 特開2002−060327(JP,A)
【文献】 特開2012−162465(JP,A)
【文献】 特開2012−106974(JP,A)
【文献】 特開2013−224290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1剤が多価フェノールの1種以上と、POEアルキルエーテル及びPOEメチルグルコシドの脂肪酸エステルから各1種以上選ばれる非イオン性界面活性剤を含有し、第2剤が多価金属塩の1種以上と、POEアルキルエーテル及びアルキルグルコシドから各1種以上選ばれる非イオン性界面活性剤を含有し、それぞれ泡状化して毛髪に適用するものであることを特徴とする非酸化染毛2剤型染毛剤。
【請求項2】
前記第1剤及び第2剤がノンエアゾールフォーマー容器により泡状化されるものであることを特徴とする請求項1に記載の非酸化染毛2剤型染毛剤。
【請求項3】
前記泡状化された第1剤が消泡性であり、泡状化された第2剤が非消泡性であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の非酸化染毛2剤型染毛剤。
【請求項4】
前記第1剤の非イオン性界面活性剤がPOEメチルグルコシドの脂肪酸エステルを含み、前記第2剤の界面活性剤が非イオン性界面活性剤であってアルキルグルコシドを含むことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の非酸化染毛2剤型染毛剤。
【請求項5】
前記第1剤がモノエタノールアミンを含むアルカリ剤を含有し、及び/又は、キレート剤を含有することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の非酸化染毛2剤型染毛剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非酸化染毛2剤型染毛剤に関し、更に詳しくは、多価フェノール類と多価金属塩との反応を利用して染毛する、金属染毛剤とも呼ばれる非酸化染毛2剤型染毛剤に関する。
【背景技術】
【0002】
染毛剤は一時染毛料、半永久染毛料、永久染毛剤に大きく分類される。これらの内、永久染毛剤は、毛髪を膨潤させたもとで毛髪内部で染料成分を発色させるため、染毛効果が長期にわたり持続する。
【0003】
永久染毛剤として一般に広く利用されているものは、パラフェニレンジアミン等を主体とした酸化染料及びアルカリ剤を配合した第1剤と、酸化剤(主に過酸化水素)を配合した第2剤とを混合して使用する酸化型染毛剤である。しかし酸化型染毛剤は、アルカリ剤及び過酸化水素水の作用により毛髪にダメージを与えることがある。
【0004】
これに対して、フェノール類(特に多価フェノール類)と金属塩(特に第1鉄塩等の多価金属塩)との反応を利用して染毛する非酸化型染毛剤では、毛髪に対するダメージが少ないと言う利点がある。
【0005】
但し、非酸化型の染毛剤ではフェノール類と金属塩との反応性が高いため、通常はフェノール類と金属塩を別々の剤に配合した2剤式にすると共に、第1剤を毛髪に適用して暫く放置し、毛髪を膨潤させてから第2剤を毛髪に適用すると言う2浴式での使用となる。そのため、処理が煩雑で時間もかかると言う不便があった。このような不便を考慮する場合には、非酸化染毛2剤型染毛剤を泡状で毛髪に適用するタイプとすることが好ましい。泡状であると、毛髪全体に対する均一な塗布を手早く、容易に行うことができる。
【0006】
下記の特許文献1〜特許文献3のように、従来の金属染毛剤では、上記の観点から非酸化染毛2剤型染毛剤の泡状化を検討したものは余り見られない。
【0007】
特許文献1に開示された染毛剤組成物は、没食子酸又はその誘導体やサリチル酸又はその誘導体、更に好ましくは多価フェノールを含有する第1剤と、鉄塩、好ましくは第1鉄塩を含む第2剤からなり、又、これらの剤の内の少なくとも一方が尿素を含む。そして第1剤は好ましくは弱アルカリ性、第2剤は好ましくはpH2.5〜3.5程度の酸性に調整される。第1剤と第2剤の剤型に関しては、クリーム状が好ましいが、これに限定されないとの記載のみが見られる。
【0008】
特許文献2に開示された二液型染毛剤組成物は、第1鉄塩を含むアルカリ性の第1剤と、没食子酸プロピル、アスコルビン酸類、植物抽出物から選ばれる少なくとも1種を含有する第2剤からなる。そしてシリコン油、特に好ましくはジメチルシリコンやアミノ変性シリコンの配合により染毛・白髪かくし効果が高くなる、としている。第1剤と第2剤の剤型に関しては、「液状、クリーム状、泡状」等の記載があるが、泡状に関しての具体的な記載は全くない。
【0009】
特許文献3に開示された染毛剤組成物は、フェノール系化合物と界面活性剤を含有するシャンプー液を第1剤とし、多価金属塩とカチオン性界面活性剤を含有するリンス液を第2剤とする。即ち、シャンプーとリンスの日常的な繰り返し使用を利用して金属染毛剤の効果を得ようとするものである。従って、特許文献3の「実施例」欄に記載された染毛性評価方法から分かるように、1回当たりの染毛処理時間が短いので、多数回の処理を繰り返す必要がある。又、その使用形態から、第1剤、第2剤ともに液状のままで毛髪に塗布する。但し、第1剤は毛髪に塗布してから泡立てる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−273869号公報
【特許文献2】特開平5−170629号公報
【特許文献3】特開平4−164017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、簡便性に優れた泡状の非酸化染毛2剤型染毛剤を研究する過程で、泡状の第1剤を毛髪に塗布し、暫く放置してから泡状の第2剤を毛髪に塗布する際、第1剤の泡が消泡せずに残っていると、第2剤を塗布し難いことが判明した。具体的には、第2剤を塗布する際、泡状の第1剤及び第2剤を良好に混合させる操作を、毛髪への均一な塗布操作中に同時に行わなければならない。
【0012】
このような作業は面倒で、かつ、容易ではない。従って、却って泡状であることの簡便性が失われ、染毛力及び染毛の堅牢性も確保し難い。泡状タイプの酸化型2剤式染毛剤では、第1剤及び第2剤は、毛髪に塗布する前に予め泡状化・混合されるので、このような問題を生じない。
【0013】
そこで本発明は、第1剤と第2剤をそれぞれ泡状化して毛髪に適用する非酸化染毛2剤型染毛剤において、染毛力及び染毛の堅牢性を維持したもとで、第2剤を塗布する際の上記の困難性を解消することを、解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(第1発明)
本願第1発明の構成は、第1剤が多価フェノールの1種以上と非イオン性界面活性剤の1種以上を含有し、第2剤が多価金属塩の1種以上とカチオン性界面活性剤以外の界面活性剤の1種以上を含有し、それぞれ泡状化して毛髪に適用するものである、非酸化染毛2剤型染毛剤である。
【0015】
(第2発明)
本願第2発明の構成は、前記第1発明に係る非酸化染毛2剤型染毛剤において、第1剤及び第2剤がノンエアゾールフォーマー容器により泡状化されるものである、非酸化染毛2剤型染毛剤である。
【0016】
(第3発明)
本願第3発明の構成は、前記第1発明又は第2発明に係る非酸化染毛2剤型染毛剤において、泡状化された第1剤が消泡性であり、泡状化された第2剤が非消泡性である、非酸化染毛2剤型染毛剤である。
【0017】
(第4発明)
本願第4発明の構成は、前記第1発明〜第3発明のいずれかに係る非酸化染毛2剤型染毛剤において、前記第1剤の非イオン性界面活性剤がPOEメチルグルコシドを含み、前記第2剤の界面活性剤が非イオン性界面活性剤であってアルキルグルコシドを含む、非酸化染毛2剤型染毛剤である。
【0018】
(第5発明)
本願第5発明の構成は、前記第1発明〜第4発明のいずれかに係る非酸化染毛2剤型染毛剤において、第1剤がモノエタノールアミンを含むアルカリ剤を含有し、及び/又は、キレート剤を含有する、非酸化染毛2剤型染毛剤である。
【発明の効果】
【0019】
(第1発明の効果)
第1発明の非酸化染毛2剤型染毛剤においては、第1剤が多価フェノールと共に起泡剤として非イオン性界面活性剤を含有する。非イオン性界面活性剤は、一般的に、各種の界面活性剤の内では消泡し易い泡を生成する。但し、起泡後に直ちに消泡する程の消泡性ではない。
【0020】
従って、泡状化した第1剤を毛髪に適用する際には泡状製剤の利点を活かして毛髪全体に対する均一な塗布を手早く、容易に行うことができる。一方、第1剤の塗布後、暫く放置してから泡状の第2剤を毛髪に塗布する際には、泡状の第1剤が十分に消泡している。そのため、泡状の第2剤を、第1剤と混合させながら毛髪に均一に塗布することが容易である。又、泡状の第1剤が第2剤の塗布前に消泡しても、「毛髪を予め膨潤させておくこと」及び「多価フェノールを第2剤の塗布時に多価金属塩と反応させること」と言う第1剤の作用には影響がないので、染毛剤の染毛力及び染毛の堅牢性は確保される。
【0021】
なお、第1発明に関連して、多価フェノールと多価金属塩が反応すると通常は黒色系の色調に発色するので、第1剤又は第2剤のいずれか一方に明色系(白色ないし黄色)の直接染料、例えば黄色203号を配合しておくと、泡状第2剤の塗布時における第1剤との混合状態を容易に目視・確認でき、便利である。同様の理由から、染毛作用及び染毛色調に支障を来たさない限りにおいて、上記の直接染料に代えて、同様の色調を持つ顔料等の着色料を用いることもできる。
【0022】
第2剤も起泡剤として界面活性剤を含有するが、カチオン性界面活性剤は多価金属塩と結合して染毛剤の染毛力を低下させる恐れがあるため、好ましくない。第2剤の界面活性剤としてアニオン性界面活性剤又は両性界面活性剤を配合した場合は、泡状の第2剤は非消泡性となる。又、第2剤に高級アルコール、好ましくはミリスチルアルコールを配合すると、泡の強度が高まり、非消泡性を一層強化できる。
【0023】
第2剤に非イオン性界面活性剤を配合した場合は、一般的には泡状の第2剤も消泡性となり、比較的長い染毛処理時間(5分〜30分程度)中に垂れ落ちを来たす可能性がある。しかしその場合でも、染毛剤の染毛力及び染毛の堅牢性は確保される。
【0024】
(第2発明の効果)
第1剤及び第2剤を泡状化する手段としては、例えば、エアゾールフォーマー容器を用いても良く、ノンエアゾールフォーマー容器を用いても良く、更に振とう方式で泡状化しても良い。しかし、エアゾールフォーマー容器を用いる場合はコストアップが避けられず、振とう方式による場合は面倒である。従って、コスト及び簡便性の点から、第1剤及び第2剤をノンエアゾールフォーマー容器により泡状化することが、最も好ましい。
【0025】
なお、第2発明に関連して、ノンエアゾールフォーマー容器を用いて良好に泡状化する上で、第1剤及び第2剤を低粘度に製剤しておくことが好ましい。そのために、後述の実施形態で述べる溶剤として、水と共に、有機溶剤として低分子のエタノールやプロピレングリコール、特にエタノールを配合することが好ましい。更に、第1剤及び第2剤を低粘度に製剤すると、特に第1剤において多価フェノールの沈殿や還元剤の酸化、及び酸化による沈殿等を招く可能性がある。従って、第5発明に規定するように、キレート剤の配合が有効となる。
【0026】
(第3発明の効果)
本発明の非酸化染毛2剤型染毛剤において泡状化された第1剤が消泡性であり、泡状化された第2剤が非消泡性であると、第2剤を容易かつ簡便に毛髪に塗布して染毛力及び染毛の堅牢性を確保できる上に、比較的長い染毛処理時間中の垂れ落ちも有効に防止できるので、特に好ましい。
【0027】
(第4発明の効果)
本発明の基本的な効果は、非酸化染毛2剤型泡状染毛剤において、染毛力及び染毛の堅牢性を確保しつつ、第2剤を塗布する際の困難性を解消する点にある。そのためには基本的に、第1発明のように、第1剤に非イオン性界面活性剤を配合して消泡性の泡とし、第2剤には一定のイオン性界面活性剤を配合して非消泡性の泡とすることが好ましい。
【0028】
しかし、第1剤、第2剤ともに非イオン性界面活性剤を配合する場合でも、両者の剤における非イオン性界面活性剤の組成に差異を持たせることにより、相対的に第1剤の泡を消泡性とし、第2剤の泡を非消泡性とすることは可能である。但しこの場合、「第1発明の効果」の項で前記したように、泡の消泡に基づく垂れ落ち、特に、より消泡性が強い第1剤の垂れ落ちが問題となる。
【0029】
この問題に関しては、第1剤の非イオン性界面活性剤の一部としてPOEメチルグルコシドを配合し、第2剤の界面活性剤を非イオン性界面活性剤とすると共にその一部としてアルキルグルコシドを配合すると、第1剤の泡を消泡性、第2剤の泡を非消泡性としたもとで、第1剤の垂れ落ちを有効に防止できることが見出された。その理由は、POEメチルグルコシドが発揮する粘着性にあると推定される。
【0030】
なお、第4発明のように第1剤、第2剤ともに非イオン性界面活性剤を配合する場合には、イオン性界面活性剤を配合する場合と比較して皮膚刺激が緩和されると言う付加的効果も期待できる。
【0031】
(第5発明の効果)
本発明の非酸化染毛2剤型染毛剤においても、通常の金属染毛剤(非酸化型の2剤式染毛剤)と同様、第1剤のpHをアルカリ性に設定する。そのためには第1剤におけるアンモニアの使用が代表的であるが、アンモニアは揮発性であって強い刺激臭を伴うと共に、第1剤の液面付近でアルカリ度が高くなり、その領域での酸化反応が促進されるため、没食子酸等の多価フェノールが酸化されて沈殿する恐れがある。この場合、染毛剤の染毛力が低下する。
【0032】
これに対して、モノエタノールアミンは不揮発性であり、刺激臭の低減や多価フェノールの酸化防止に有効である。但し、アンモニアに代えてモノエタノールアミンを用いた場合、多価フェノールの毛髪内への浸透性が低くなり、その意味で、染毛剤の染毛力と染毛の堅牢性が低下する恐れがある。従って、第1剤が、モノエタノールアミンを含むアルカリ剤(例えば、アンモニア及びモノエタノールアミン)を含有すると、バランスの良いアルカリ剤配合効果が確保される。
【0033】
又、第1剤において不純物である金属イオンの混入を完全に防止することは困難である一方、第1剤には多価フェノールを配合し、システイン等の還元剤も配合する場合が多い。多価フェノールは金属イオンと錯体を形成して沈殿し、そのため染毛剤の発色度あるいは染毛力が低下する恐れがある。システイン等の還元剤はアルカリ性の第1剤中で金属イオンの存在により酸化され、水に不溶性の沈殿を生じる結果、還元剤配合効果が減殺される恐れがある。従って、第1剤にキレート剤を配合して金属イオンを捕捉しておくと、これらの不具合を防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
次に本発明の実施形態を、その最良の形態を含めて説明する。本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されない。
【0035】
〔2剤式染毛剤〕
本発明の非酸化染毛2剤型染毛剤は金属染毛剤とも呼ばれるものであって、第1剤が多価フェノールの1種以上と非イオン界面活性剤の1種以上を含有し、第2剤が多価金属塩の1種以上とカチオン性界面活性剤以外の界面活性剤の1種以上を含有する。そして第1剤と第2剤は、それぞれ泡状化して毛髪に適用される。
【0036】
第1剤はpH7〜11程度のアルカリ性に調整されていることが好ましい。そのためのpH調整剤は限定されないが、例えばアンモニア、炭酸アンモニウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の無機アルカリや、モノエタノールアミン、イソプロパノールアミン、2‐アミノ‐2‐メチル‐1‐プロパノール等の有機アルカリを配合することができる。「第5発明の効果」の欄で述べた理由から、特にモノエタノールアミンを含むアルカリ剤を配合することが好ましく、とりわけ、モノエタノールアミンとアンモニアを併せ配合することが好ましい。この両者の配合量は、モノエタノールアミン:アンモニア=1:1〜5:1程度の質量比であることが好ましい。
【0037】
一方、第2剤はpH2〜4程度の酸性に調整されていることが好ましい。そのことにより、第2剤中の金属塩、例えば鉄塩が安定な第1鉄塩(Fe2+)として存在する。そのためのpH調整剤として、例えば、クエン酸、アスコルビン酸、乳酸、レブリン酸、グリコール酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸等の有機酸や、リン酸、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸を配合することができる。緩衝能を目的として、これらの酸の塩を配合することも好ましい。特にアスコルビン酸は、第2剤の保存中における多価金属塩(硫酸第1鉄)のキレート防止に有効である。
【0038】
第1剤と第2剤との使用形態としては、毛髪に対してまず泡状化した第1剤を塗布した後、しばらく放置して毛髪を膨潤させ、泡状の第1剤を消泡させてから、泡状化した第2剤を第1剤と良く混合するように塗布する形態が好ましい。但し、第1剤と第2剤を設定された量比で予め混合してから毛髪に塗布する形態も可能である。
【0039】
第1剤及び第2剤の使用前の剤型は特段に限定されず、例えば液状、クリーム状、ゲル状等とすることができるが、使用時には、それぞれ泡状化して毛髪に塗布される。第1剤及び第2剤を泡状化するための手段は限定されず、例えばエアゾールフォーマー容器やノンエアゾールフォーマー容器を用い、あるいは、第1剤及び第2剤を密閉容器中で振り又は容器中で撹拌して泡状化すると言う振とう方式で泡状化しても良い。しかし、「第2発明の効果」の欄で述べた理由から、ノンエアゾールフォーマー容器により泡状化することが好ましい。
【0040】
第1剤及び第2剤は、非酸化式染毛剤として構成しても良いが、非酸化式の染毛機能を有する泡状のヘアリキッド、トニック、ヘアセット剤、ヘアスタイリング剤等の使用形態に調製することもできる。
【0041】
〔多価フェノール〕
多価フェノールとは、2以上のフェノール性水酸基を備えた芳香族化合物を言い、第1鉄塩等の金属塩と反応して発色するものである。多価フェノールとしては、単核の芳香環に2以上のフェノール性水酸基を備えたものや、縮合し又は縮合していない複数の芳香環に合計2以上のフェノール性水酸基を備えたものが包含される。具体的には、タンニン酸、没食子酸及びその誘導体、五倍子、ピロガロール、ログウッド、ヘマテイン、カテコール、サリチル酸及びその誘導体、フタル酸、オイゲノール、イソオイゲノール、ニコチン酸アミド、デヒドロ酢酸、ピリドキシン、エラグ酸、コウジ酸、マルトール、フェルラ酸等が例示される。以上の内でも、タンニン酸、没食子酸及びその誘導体、ログウッド、ヘマテイン、サリチル酸及びその誘導体等が特に好ましい。
【0042】
第1剤における多価フェノールの1種以上の合計含有量は限定されないが、混合時における第2剤との設定された混合量比、第2剤中における多価金属塩の含有量等を勘案したもとで、適宜に決定することができる。多価フェノールの1種以上の合計含有量は、第1剤と第2剤との混合物中において、例えば0.1〜5質量%とすることができる。
【0043】
〔多価金属塩〕
多価金属塩とは、2価以上の金属の塩である。具体的には特に鉄塩即ち第1鉄塩が好ましく、例えば硫酸第一鉄、塩化第一鉄、酢酸第一鉄、リン酸第一鉄、シュウ酸第一鉄等を挙げることができる。銅塩、銀塩、亜鉛塩、鉛塩等も用いることができる。
【0044】
第2剤における多価金属塩の1種以上の合計含有量は限定されないが、混合時における第1剤との設定された混合量比、第1剤中におけるフェノールの含有量等を勘案したもとで、適宜に決定することができる。第2剤中の多価金属塩の1種以上の合計含有量は、第1剤と第2剤との混合物中において、例えば0.1〜5質量%とすることができる。
【0045】
〔界面活性剤〕
本発明の非酸化染毛2剤型染毛剤において、第1剤は非イオン性界面活性剤の1種以上を含有し、第2剤はカチオン性界面活性剤以外の界面活性剤、即ち、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤から選ばれる1種以上を含有する。
【0046】
(非イオン性界面活性剤)
非イオン性界面活性剤は、一般的に消泡性の泡を生成するので、第1剤での必須の起泡剤として配合される。又、第2剤に配合される界面活性剤としての選択的成分の一つである。
【0047】
非イオン性界面活性剤の種類は限定されず、例えば以下のものが例示される。
【0048】
1)ポリオキシエチレン(以下、「POE」という)ステアリルエーテル、POEオレイルエーテル等のPOEアルキルエーテル。
【0049】
2)POEノニルフェニルエーテル、POEオクチルフェニルエーテル等のPOEアルキルフェニルエーテル。
【0050】
3)モノオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEソルビタン、モノパルミチン酸POEソルビタン、モノラウリン酸POEソルビタン、トリオレイン酸POEソルビタン等のPOEソルビタン脂肪酸エステル。
【0051】
4)モノステアリン酸POEグリセリン、モノミリスチン酸POEグリセリン等のPOEグリセリルモノ脂肪酸エステル。
【0052】
5)テトラオレイン酸POEソルビット、ヘキサステアリン酸POEソルビット、モノラウリン酸POEソルビット、POEソルビットミツロウ等のPOEソルビトール脂肪酸エステル。
【0053】
6)POE硬化ヒマシ油、POEヒマシ油。
【0054】
7)モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール。
【0055】
8)親油型モノオレイン酸グリセリン、親油型モノステアリン酸グリセリン、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン等の高級脂肪酸グリセリンエステル。
【0056】
9)POEラノリン、POEラノリンアルコール、POEソルビトールラノリン等のラノリン誘導体。
【0057】
10)ジメチルラウリルアミンオキシド等のアルキルアミンオキシド。
【0058】
11)レシチン誘導体水素添加大豆レシチン、水素添加卵黄レシチン等。
【0059】
12)POE・ポリオキシプロピレン(以下、「POP」という)セチルエーテル等のPOE・POPアルキルエーテル。
【0060】
13)ソルビタン脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、POEメチルグルコシド等の糖系の非イオン性界面活性剤。ソルビタン脂肪酸エステルとしては、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン等を例示できる。アルキルグルコシドとしては、ラウリルグルコシド、アルキル(8〜16)グルコシド等を例示できる。POEメチルグルコシドとしては、POEジオレイン酸メチルグルコシド、POEジステアリン酸メチルグルコシド、POEジパルミチン酸メチルグルコシド等のPOEメチルグルコシドを例示できる。
【0061】
なお、第4発明に規定するように、第1剤、第2剤ともに非イオン性界面活性剤を配合しても、泡状の第1剤を消泡性、泡状の第2剤を非消泡性にできる場合がある。そして、その場合における垂れ落ちの問題を、第1剤の非イオン性界面活性剤がPOEメチルグルコシドを含む構成とすることにより、解消できる。一方、第2剤の非イオン性界面活性剤がアルキルグルコシドを含む構成とすると、第2剤の消泡性を抑制することができる。
【0062】
第1剤又は第2剤における非イオン性界面活性剤の配合量は限定されないが、例えば、1〜30質量%とすることができる。
【0063】
(アニオン性界面活性剤)
アニオン性界面活性剤は、第2剤に配合される界面活性剤としての選択的成分の一つである。アニオン性界面活性剤は、第2剤の起泡剤として、放置時間中安定的な泡を生成するというメリットがある。
【0064】
アニオン性界面活性剤の種類は限定されず、硫酸エステル塩型、リン酸エステル塩型、カルボン酸塩型、スルホン酸塩型、脂肪酸塩型、乳酸塩型、サルコシン塩型、グルタミン酸塩型、アラニン塩型、タウリン塩型等のものが例示される。
【0065】
具体的には、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、セチル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸ナトリウム、POEラウリルエーテル硫酸ナトリウム、POEラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン、POEラウリルエーテル硫酸アンモニウム、POEステアリルエーテル硫酸ナトリウム、ステアロイルメチルタウリンナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、テトラデセンスルホン酸ナトリウム、ラウリルリン酸ナトリウム、POEラウリルエーテルリン酸及びその塩、N−ラウロイルグルタミン酸塩類(ラウロイルグルタミン酸ナトリウム等)、N−ラウロイルメチル−β−アラニン塩、N−アシルグリシン塩、N−アシルグルタミン酸塩、高級脂肪酸であるラウリン酸、ミリスチン酸及びこれらの高級脂肪酸の塩等が挙げられる。
【0066】
第2剤におけるアニオン性界面活性剤の配合量は限定されないが、例えば、0.2〜5質量%とすることができる。
【0067】
(両性界面活性剤)
両性界面活性剤は、第2剤に配合される界面活性剤としての選択的成分の一つである。両性界面活性剤は、第2剤の起泡剤として、低刺激性の泡を生成するというメリットがある。
【0068】
両性界面活性剤の種類は特に限定されず、アルキルベタイン型、脂肪酸アミドプロピルベタイン型、アルキルイミダゾール型、アミノ酸型等のものが例示される。
【0069】
具体的には、ラウリルベタイン、イミダゾリン、アミドベタイン、カルボベタイン、スルホベタイン、ヒドロキシスルホベタイン、アミドスルホベタイン、2−ウンデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム、ココアミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等が挙げられる。
【0070】
第2剤における両性界面活性剤の配合量は限定されないが、例えば、0.2〜5質量%とすることができる。
【0071】
〔キレート剤〕
2剤式染毛剤の第1剤は、「第5発明の効果」の欄で述べた理由から、キレート剤を含有することが好ましい。又、第2剤においても、第1鉄(2価鉄)が酸化されて第2鉄(3価鉄)になり、最終的に塩基性酸化鉄となって褐色沈殿を生じることを防止するために、キレート剤を含有することが好ましい。
【0072】
キレート化剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸(DHEDDA)、1,3−プロパンジアミン四酢酸(1,3PDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIMDA)、L−アスパラギン酸−N,N−二酢酸(ASDA)、アミノトリメチレンホスホン酸(NTMP)、ヒドロキシエタンジホスホン酸(HEDP)、あるいはそれらの塩、誘導体、及び誘導体の塩が例示されるが、特にEDTA、HEDTA、DHEDDA及びDTPA等が好ましい。これらは単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0073】
第1剤又は第2剤中のキレート剤の含有量は限定されないが、0.2〜1.0質量%の範囲内が好ましい。
【0074】
〔溶剤〕
非酸化染毛2剤型染毛剤の第1剤及び第2剤は、基材あるいは成分の溶解剤として溶剤を含有する。溶剤としては、水の他、多価フェノール等を溶解させるための有機溶剤が挙げられる。有機溶剤は第1剤及び第2剤の低温下での凍結を防止する上でも有効である。「第2発明の効果」の欄で述べた理由から、溶剤としては、水と共に、低分子の有機溶剤であるエタノール、又はプロピレングリコールを配合することが、特に好ましい。
【0075】
有機溶剤の具体例としては、上記したエタノール、プロピレングリコールの他に、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、n−プロパノール、イソプロパノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、γ−フェニルプロピルアルコール、ケイ皮アルコール、アニスアルコール、p−メチルベンジルアルコール、α−ジメチルフェネチルアルコール、α−フェニルエタノール、フェノキシエタノール、フェノキシイソプロパノール、2−ベンジルオキシエタノール、N−アルキルピロリドン、炭酸アルキレン、アルキルエーテル等を挙げることができる。
【0076】
第1剤又は第2剤中の溶剤の含有量は限定されないが、0.2〜20質量%の範囲内が好ましい。
【0077】
〔高級アルコール〕
「第1発明の効果」の欄で述べたように、第2剤に高級アルコール(特にミリスチルアルコール)を配合すると、泡状化した第2剤が一層非消泡性となるので好ましい。第2剤中のミリスチルアルコールの含有量は限定されないが、0.2〜1.0質量%の範囲内が好ましい。
【0078】
高級アルコールとしては、上記したミリスチルアルコールの他に、ラウリルアルコール、セチルアルコール(セタノール)、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、2−ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、ラノリンアルコール等が挙げられる。
【0079】
〔直接染料又は着色料〕
「第1発明の効果」の欄で述べたように、第1剤又は第2剤のいずれか一方に明色系の直接染料(例えば黄色203号)や類似の色調の着色料を配合しておくと、泡状第2剤の塗布時における第1剤との混合状態を容易に目視・確認できる。第1剤又は第2剤における直接染料又は着色料の配合量は、使用目的を勘案して適宜に決定すれば良い。
【0080】
〔その他の成分〕
本発明の非酸化染毛2剤型染毛剤の第1剤及び/又は第2剤には、上記の各成分の他に、下記のような任意的配合成分を、本発明の効果を損なわない範囲で配合することもできる。但し、任意的配合成分の種類によっては、第1剤及び第2剤のpHと上記の主要配合成分を考慮して、第1剤に配合するか第2剤に配合するかを決定することが好ましい。
【0081】
任意的配合成分として、還元剤、油性成分、高分子化合物、ペプチドあるいはアミノ酸系成分、防腐剤、セラミド類、ビタミン類等が挙げられる。
【0082】
(還元剤)
還元剤としては、L−システイン、N−アセチルシステイン、チオ乳酸、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2−メルカプトエタノール、ジチオスレイトール、ジチオエリスリトール、トリプロピルホスフィン等が例示される。
【0083】
(油性成分)
油性成分として、油脂、ロウ類、高級脂肪酸、シリコーン化合物、アルキルグリセリルエーテル、エステル類等が挙げられる。
【0084】
油脂としては、オリーブ油、ローズヒップ油、ツバキ油、シア脂、マカデミアナッツ油、アーモンド油、茶実油、サザンカ油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、ゴマ油、牛脂、カカオ脂、トウモロコシ油、落花生油、ナタネ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、小麦胚芽油、ハトムギ油、ブドウ種子油、アボカド油、カロット油、マカダミアナッツ油、ヒマシ油、アマニ油、ヤシ油、ミンク油、卵黄油等が挙げられる。
【0085】
ロウ類としては、ミツロウ(蜜蝋)、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ホホバ油、ラノリン、鯨ロウ、コメヌカロウ、パームロウ、モンタンロウ、綿ロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、カポックロウ、セラックロウ等が挙げられる。
【0086】
高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、ウンデシレン酸、リノール酸、リシノール酸、ラノリン脂肪酸等が挙げられる。
【0087】
シリコーン化合物としては、ジメチルポリシロキサン(INCI名:ジメチコン)、ヒドロキシ末端基を有するジメチルポリシロキサン(INCI名:ジメチコノール)、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の他に、ポリエーテル変性シリコーン、平均重合度が650〜10000の高重合シリコーン、アミノ変性シリコーン、ベタイン変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等が挙げられる。これらの内でも、アミノ変性シリコーンが好ましく、特に末端トリメチル型のアミノ変性シリコーンが好ましい。
【0088】
アルキルグリセリルエーテルとしては、バチルアルコール(モノステアリルグリセリルエーテル)、キミルアルコール(モノセチルグリセリルエーテル)、セラキルアルコール(モノオレイルグリセリルエーテル)、イソステアリルグリセリルエーテル等が挙げられる。
【0089】
エステル類としては、アジピン酸ジイソプロピル、オクタン酸セチル、イソオクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、セバシン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、パルミチン酸2−エチルへキシル、リシノール酸オクチルドデシル、乳酸ラウリル、乳酸セチル、酢酸ラノリン、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、カプリン酸セチル、ラノリン誘導体等が挙げられる。
【0090】
炭化水素としては、α−オレフィンオリゴマー、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、流動イソパラフィン、流動パラフィン、スクワラン、ポリブテン、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等が挙げられる。
【0091】
(高分子化合物)
高分子化合物としては、カチオン性ポリマー、カルボキシビニルポリマー等のアニオン性ポリマー、ジアリル4級アンモニウム塩/アクリル酸共重合体等の両性ポリマーの他、水溶性ポリマーも挙げられる。
【0092】
これらの内、カチオン性ポリマーとしては、カチオン化セルロース誘導体、カチオン性澱粉、カチオン化グアーガム、ジアリル4級アンモニウム塩の重合体又は共重合体、4級化ポリビニルピロリドン等が挙げられるが、特に塩化ジメチルジアリルアンモニウムをモノマーとして含むカチオン化ポリマーが好ましく、とりわけポリ塩化ジメチルジアリルアンモニウム(マーコート100)が好ましい。又、塩化ジメチルジアリルアンモニウムをモノマーとして含むカチオン化ポリマーとしては、例えば、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体、アクリルアミド・アクリル酸・塩化ジメチルジアリルアンモニウム共重合体等を挙げることができる。
【0093】
アニオン性ポリマーとしては、カルボキシビニルポリマー等が挙げられる。
【0094】
両性ポリマーとしては、ジアリル4級アンモニウム塩/アクリル酸共重合体等が挙げられる。
【0095】
水溶性ポリマーとしては、アラビアガム、カラヤガム、トラガントガム、キサンタンガム、カラギーナン、ペクチン、寒天、デンプン等の植物性高分子が例示される。デキストラン、プルラン等の微生物系高分子も例示される。コラーゲン、カゼイン、ゼラチン:デキストラン、プルラン等の動物性高分子も例示される。更に、カルボキシメチルデンプン等のデンプン系高分子や、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロース系高分子も例示される。
【0096】
(ペプチドあるいはアミノ酸系成分)
ペプチドあるいはアミノ酸系成分として、コラーゲン、ケラチン、エラスチン、フィブロイン、エッグ、シルク、コンキオリン、カゼイン、ゼラチン等の蛋白質の他、コメ、コムギ、オオムギ、カラスムギ、ダイズ、エンドウ、アーモンド、ブラジルナッツ、ジャガイモなどの植物から得られるタンパク質が挙げられる。
【実施例】
【0097】
次に本発明の実施例及び比較例を説明する。本発明の技術的範囲は以下の実施例及び比較例によって限定されない。
【0098】
〔非酸化染毛2剤型染毛剤の調製〕
末尾の表1及び表2に「例1」〜「例20」としてそれぞれ示す実施例1〜実施例20、及び末尾の表3に「比1」〜「比7」としてそれぞれ示す比較例1〜比較例7に係る組成の非酸化染毛2剤型染毛剤の第1剤及び第2剤を、常法に従い、それぞれ液状に調製した。これらの各例に係る第1剤及び第2剤は、使用時においては、いずれも質量比1:1で使用するように設定されている。
【0099】
各表中における成分の含有量を示す数値は、該当する第1剤又は第2剤中における質量%を示す。なお、後述する評価において、各例に係る第1剤、第2剤を泡状化する際には、いずれも、ホーユー株式会社製のノンエアゾールフォーマー容器である「ビゲン(登録商標)DX クリーミーフォーム」を用いた。
【0100】
〔非酸化染毛2剤型染毛剤の評価〕
(評価項目)
以上の実施例及び比較例に係る非酸化染毛2剤型染毛剤の第1剤及び第2剤を用いて、下記1)〜6)の項目を評価した。
【0101】
1)染毛力:この項目は、泡状化した第1剤及び第2剤による通常の意味での染毛力を評価している。
【0102】
2)堅牢性:この項目は、泡状化した第1剤及び第2剤による通常の意味での染毛の堅牢性を評価している。
【0103】
3)安定性:この項目は、第1剤における沈殿の生じ難さを評価している。
【0104】
4)1剤の初期泡立ち:この項目は、第1剤をノンエアゾールフォーマー容器から吐出した際の泡状化の良好さを評価しており、ひいては毛髪への第1剤の塗布しやすさを意味する。
【0105】
5)1剤の液ダレ:この項目は、泡状化して毛髪に塗布した第1剤が、第2剤塗布の前に液ダレを起こすか否かを評価している。
【0106】
6)2剤の泡安定性:この項目は、泡状化して毛髪に塗布した第2剤の、染毛処理時間中における泡安定性、即ち非消泡性を評価している。
【0107】
(染毛力の評価)
長さ10cmの評価用の白毛混じりの毛束サンプル(以下、単に毛束サンプルと称する)に対し、各実施例及び各比較例に係る非酸化染毛2剤型染毛剤を用いて染毛処理した。具体的には、各例に係る第1剤を2g均一に塗布し、15分放置後、各例に係る第2剤を2g均一に塗布し、15分放置した。その後、毛束サンプルをシャンプーにて洗浄し、乾燥を行った後、非酸化染毛2剤型染毛剤の染毛力を評価した。
【0108】
染毛処理を施した毛束サンプルについて、パネラー20名が標準光源下で目視にて発色度合いを評価することにより、非酸化染毛2剤型染毛剤において一般的に「染毛力が良い」とされる場合を基準として、染毛力が良いか否かについて判断した。パネラー20人中「良い」と答えた人が、それぞれ、17名以上である場合は評価「5」、13〜16名である場合は評価「4」、9〜12名である場合は評価「3」、8〜5名である場合は評価「2」、4名以下である場合は評価「1」とした。その評価結果を各表の「染毛力」欄に示す。
【0109】
(堅牢性の評価)
各実施例及び各比較例に係る上記の染毛力評価における染毛処理後の洗浄・乾燥した毛束サンプルを用いた。染毛処理が完了してから1日後に50℃の1%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液(500ml)に15分間毛束サンプルを浸漬し、その後十分に水洗し、乾燥させた。
【0110】
20名のパネラーに、上記の浸漬処理前と、浸漬処理後に水洗・乾燥させた毛束サンプルとの対比により、「退色がほとんどない」、「退色がほとんどないとは言えない」の二者択一で評価させた。20名のパネラー中、「退色がほとんどない」と回答したパネラーが、それぞれ、17名以上である場合は評価「5」、16〜13名である場合は評価「4」、12〜9名である場合は評価「3」、8〜5名である場合は評価「2」、4名以下である場合は評価「1」とした。その評価結果を各表の「堅牢性」欄に示す。
【0111】
(安定性の評価)
各実施例及び各比較例に係る非酸化染毛2剤型染毛剤の第1剤をそれぞれガラス瓶に入れて60℃の恒温漕中で保存し、沈殿が発生するまでに経過した時間又は日数を確認することにより、安定性が良いか否かを評価した。
【0112】
沈殿が発生するまでの時間又は日数が、それぞれ、5日以上であった場合は「5」、3日以上で5日未満であった場合は「4」、1日以上で3日未満であった場合は「3」、12時間以上で1日未満であった場合は「2」、12時間未満であった場合には「1」と評価した。その評価結果を各表の「安定性」欄に示す。
【0113】
(1剤の初期泡立ちの評価)
各実施例及び各比較例に係る非酸化染毛2剤型染毛剤の第1剤をノンエアゾールフォーマー容器から吐出した直後の泡質を目視観察にて評価した。ノンエアゾール式の泡状染毛剤に対して一般的に期待される泡立ちを基準として、極めてかさ高い泡であった場合は評価「5」、非常にかさ高い泡であった場合は評価「4」、かさ高い泡であった場合は評価「3」、ややかさ高さに欠ける泡であった場合は評価「2」、かさ高さに欠ける泡であった場合は評価「1」とした。その評価結果を各表の「1剤の初期泡立ちの評価」欄に示す。
【0114】
(1剤の液ダレの評価)
各実施例及び各比較例に係る非酸化染毛2剤型染毛剤の第1剤をノンエアゾールフォーマー容器から吐出した直後の泡(約1g)を乗せた画用紙を約37℃の恒温槽内に約70度の傾斜状態で立てて置き、泡の滑りや液の垂れる様子を目視観察にて評価した。泡が滑らず、液が垂れない場合は評価「5」、泡がやや滑るが、液が垂れない場合は評価「4」、泡がやや滑り、液がやや垂れる場合は評価「3」、泡がやや滑り、液が垂れる場合は評価「2」、泡が滑り、液が垂れる場合は評価「1」とした。その評価結果を各表の「1剤の液ダレの評価」欄に示す。
【0115】
(2剤の泡安定性の評価)
各実施例及び各比較例に係る非酸化染毛2剤型染毛剤の第1剤をノンエアゾールフォーマー容器から吐出した直後の泡(約1g)を乗せた画用紙を、泡の載置面を上側にして寝かせた状態で約37℃の恒温槽内に静置し、泡の持続性を目視観察にて評価した。非酸化染毛2剤型染毛剤に必要とされる第2剤塗布後の染毛処理時間を念頭に置いて、それぞれ、非常に持続性が高い泡の場合は評価「5」、十分持続性が高い泡の場合は評価「4」、持続性が高い泡の場合は評価「3」、やや持続性低い泡の場合は評価「2」、持続性低い泡の場合は評価「1」とした。その評価結果を各表の「2剤の泡安定性の評価」欄に示す。
【0116】
【表1】
【0117】
【表2】
【0118】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明により、第1剤と第2剤をそれぞれ泡状化して毛髪に適用する非酸化染毛2剤型染毛剤であって、染毛力及び染毛の堅牢性に優れ、第2剤を塗布する際の困難性のないものが提供される。