(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
斜板構造のアキシャルピストン機械(1)であって、該アキシャルピストン機械(1)が、回転軸線(D)を中心として回転可能に配置されたシリンダブロック(2)を備えており、該シリンダブロック(2)が、少なくとも1つのピストン用切欠き(3)を備えており、該ピストン用切欠き(3)内にそれぞれ1つの駆動機構ピストン(4)が長手方向摺動可能に配置されており、該駆動機構ピストン(4)が、それぞれ1つのスライドシュー(20)によってストロークディスク(19)に支持されており、スライドシュー(20)に作用結合された、シリンダブロック(2)と回転同期して回転するリテーナプレート(30)が設けられており、該リテーナプレート(30)が、スライドシュー(2)をストロークディスク(19)からの持上りに対して防護している、斜板構造のアキシャルピストン機械において、リテーナプレート(30)が、皿ばね状のばねエレメント(31)として形成されており、該ばねエレメント(31)が、内周面でシリンダブロック(2)に傾動自在に支持されており、その際、リテーナプレート(30)に作用する押付け力を発生させる付加的な押付けばねは設けられておらず、リテーナプレート(30)のばね特性線が、該ばね特性線の緩傾斜の変化領域を備えた特性線範囲(K1)を有しており、該特性線範囲(K1)が、アキシャルピストン機械(1)の組立て後、組付け位置において、リテーナプレート(30)と、シリンダブロック(2)と、スライドシュー(20)との自動的な誤差補償を可能にしており、リテーナプレート(30)が、ばね特性線の緩傾斜の変化領域を備えた特性線範囲(K1)にすぐに続いて、ばね力の急上昇領域を備えた特性線範囲(B2)を有しており、
リテーナプレート(30)が、それぞれ1つのスライドシュー(20)のスライドシューネック(20a)を収容するための孔状の切欠き(35)を備えており、該切欠き(35)の範囲にリテーナプレート(30)が、内側に向けられていると共にスライドシュー(20)のスライドシュープレート(20b)に向けられた複数のばね歯(33)を有していることを特徴とする、斜板構造のアキシャルピストン機械。
リテーナプレート(30)が、シリンダブロック(2)への傾動自在の支持のために、内周面に球冠部(32a)を備えており、該球冠部(32a)が、シリンダブロック(2)に設けられた球冠状のシリンダブロックネック(32b)に支持されている、請求項1記載のアキシャルピストン機械。
リテーナプレート(30)は、ストロークディスク(19)からのスライドシュー(20)の規定された持上り量(A)のあと、スライドシュー(20)がスライドシュープレート(20b)でリテーナプレート(30)のディスクセグメント(34)に当て付けられるように形成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載のアキシャルピストン機械。
シリンダブロック(2)と、スライドシュー(20)と、リテーナプレート(30)とが、アキシャルピストン機械(1)のハウジング(7)内に組付け可能である予め組立て可能な駆動機構アッセンブリとして形成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載のアキシャルピストン機械。
【背景技術】
【0002】
このような流体静力学式の斜板構造のアキシャルピストン機械では、駆動機構ピストンが、この駆動機構ピストンにジョイント式に配置されたスライドシューによってストローク発生用のストロークディスクに支持されている。斜板構造のアキシャルピストン機械を確実に運転するためには、駆動機構ピストンにジョイント式に取り付けられたスライドシューの滑動面をストロークディスクの滑動面に常時接触させることが確保されなければならない。このために、より高い出力密度のアキシャルピストン機械の場合には、スライドシューとストロークディスクとの間に、静圧的に負荷軽減されたスラスト滑り軸受けが形成される。スライドシューには、圧力ポケットが形成されている。この圧力ポケットは、駆動機構ピストンに設けられた孔を介して相応の押退け室に接続されている。押付け力は、押退け室内に形成される圧力媒体の圧力に関連している。しかし、アキシャルピストン機械の吸込み運転中または、たとえばシリンダブロックのピストン用切欠きを汚染粒子が通過する場合の駆動機構ピストンにおける高められた摩擦の発生時には、スライドシューをストロークディスクの滑動面から持ち上げる力がスライドシューに作用することがある。スライドシューがストロークディスクの滑動面から持ち上がっている場合には、アキシャルピストン機械の吸込み体積流が遮断されてしまい、低圧側の吸込み側から高圧側の圧送側への移行時に、ストロークディスクから相応に大きな持上り量で持ち上げられたスライドシューが、ストロークディスクに激しく衝突するという危険がある。これによって、スライドシューと、駆動機構ピストンと、ストロークディスクとが損傷を受けてしまう。
【0003】
アキシャルピストン機械におけるストロークディスクからのスライドシューのこのような持上りを阻止するために、すでに、固定の押さえ装置が公知である。この公知の押さえ装置では、リテーナプレートが直接ハウジング内にまたは付加的な1つの保持リングもしくは付加的な複数の保持プレートによってハウジング内に軸方向で固定される。このような固定の押さえ装置は、ドイツ連邦共和国特許第4040313号明細書およびドイツ連邦共和国特許出願公開第102005047981号明細書に基づき公知であり、スライドシューの高い押さえ力を可能にしている。ハウジングもしくはハウジングに固定された保持リングまたはハウジングに固定された保持プレートと、リテーナプレートの当付け面との間には、製造および組付けに起因して、スライドシューがストロークディスクから持ち上がることができる分だけの軸方向の遊びが必要となる。しかし、このような固定の押さえ装置は高い構造手間を有している。なぜならば、構成部材誤差および間隔誤差を補償しかつ軸方向の遊びを制限するために、ストロークディスク、スライドシュー、保持リングもしくは保持プレートまたはリテーナプレートに、それぞれ異なる厚さのベアリングディスクが予め保持されなければならないからである。さらに、リテーナプレートもしくは保持リングまたは保持プレートを収容しかつ固定する目的で相応の当付け面を製作するために、ハウジングに機械的な加工が必要となる。リテーナプレートが1つの保持リングまたは複数の保持プレートによってハウジングに固定される限り、保持リングまたは保持プレートにより形成された付加的な構成部材が構造手間を一層増加させる。さらに、このような固定の押さえ装置の場合には、高い組付け手間が生じる。なぜならば、ハウジング内に一体成形されたストロークディスクを備えたアキシャルピストン機械の場合、シリンダブロックをハウジング内に組み込みかつ組み付ける前に、駆動機構ピストンにジョイント式に取り付けられたスライドシューが、リテーナプレートによってストロークディスクにひいてはハウジング内に固定されるからである。この公知例では、アキシャルピストン機械の、シリンダブロックを取り囲むハウジングの内部での、シリンダブロックのピストン用切欠き内への駆動機構ピストンの手間と時間のかかる導入および内挿が必要となる。
【0004】
アキシャルピストン機械では、このような固定の押さえ装置に対して択一的に、すでに、遊びなしに形成可能であるばね弾性的な押さえ装置が公知である。このようなばね弾性的な押さえ装置は、たとえばドイツ連邦共和国特許出願公開第3222210号明細書に基づき公知である。このような公知のばね弾性的な押さえ装置では、シリンダブロックを制御面に押し付ける、駆動軸とシリンダブロックとの間に半径方向で配置された圧縮ばねのばね力が、全周にわたって均一に分配された複数のピンと、リテーナプレートの球冠状の内面が支持される球冠状の外面を備えた1つのディスクとによってリテーナプレートに伝達される。シリンダブロックを制御ディスクに押し付ける圧縮ばねは、同時にスライドシューをストロークディスクに向かって押さえ付けるために使用されるので、このようなばね弾性的な押さえ装置は、スライドシューの押さえ力の高さが大幅に制限されていることによって特徴づけられている。より高い出力密度のアキシャルピストン機械の場合には、シリンダブロックを駆動軸に相対回動不能に結合する歯列を備えたシリンダブロックネックの範囲におけるピンのための組込みスペースと、シリンダブロックを制御面に押し付ける圧縮ばねのための組込みスペースとが大幅に制限されている。したがって、このようなアキシャルピストン機械の場合、圧縮ばねのばね力をリテーナプレートに伝達するピンのための組込みスペースとして、シリンダブロックもしくは駆動軸の歯列における複数の歯を省略して、ピンを配置する孔をシリンダブロックネックの範囲に設けることが必要となる。しかし、駆動軸とシリンダブロックとの間の歯列における複数の歯の省略と、シリンダブロックのシリンダブロックネックに設けられた所要の孔とは、最大のトルクの伝達可能性を制限することになる。なぜならば、複数の歯の欠落によって、歯列の残りの歯にかけられる負荷が高められてしまい、孔がシリンダブロックネックを歯列の範囲において弱化させてしまうからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、冒頭で述べたアキシャルピストン機械を改良して、スライドシューの高い押さえ力を発生させることができ、構造手間および組付け手間に関して改善されていて、シリンダブロックと駆動軸との間の歯列の弱化を伴わないスライドシューの押さえ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するために本発明に係るアキシャルピストン機械では、リテーナプレートが、皿ばね状のばねエレメントとして形成されており、該ばねエレメントが、内周面でシリンダブロックにジョイント式に支持されており、その際、リテーナプレートに作用する押付け力を発生させる付加的な押付けばねは設けられていない。
【0008】
本発明に係るアキシャルピストン機械の有利な態様では、リテーナプレートが、シリンダブロックへのジョイント式の支持のために、内周面に球冠部を備えており、該球冠部が、シリンダブロックに設けられた球冠状のシリンダブロックネックに支持されている。
【0009】
本発明に係るアキシャルピストン機械の有利な態様では、リテーナプレートが、スライドシューに遊びなしに接触している。
【0010】
本発明に係るアキシャルピストン機械の有利な態様では、リテーナプレートのばね特性線が、該ばね特性線の緩傾斜の変化領域を備えた特性線範囲を有しており、該特性線範囲が、アキシャルピストン機械の組立て後、組付け位置において、リテーナプレートと、シリンダブロックと、スライドシューとの自動的な誤差補償を可能にしている。
【0011】
本発明に係るアキシャルピストン機械の有利な態様では、リテーナプレートが、それぞれ1つのスライドシューのスライドシューネックを収容するための孔状の切欠きを備えており、該切欠きの範囲にリテーナプレートが、内側に向けられていると共にスライドシューのスライドシュープレートに向けられた複数のばね歯を有している。
【0012】
本発明に係るアキシャルピストン機械の有利な態様では、リテーナプレートが、スリットを備えた皿ばねとして形成されている。
【0013】
本発明に係るアキシャルピストン機械の有利な態様では、リテーナプレートが、半径方向外側に向けられた複数のばね舌片を備えており、2つのばね舌片の間に、それぞれ1つのスライドシューのスライドシューネックを収容するための1つの切欠きが形成されている。
【0014】
本発明に係るアキシャルピストン機械の有利な態様では、リテーナプレートが、ばね特性線の緩傾斜の変化領域を備えた特性線範囲にすぐに続いて、ばね力の急上昇領域を備えた特性線範囲を有している。
【0015】
本発明に係るアキシャルピストン機械の有利な態様では、リテーナプレートは、ストロークディスクからのスライドシューの規定された持上り量のあと、スライドシューがスライドシュープレートでリテーナプレートのディスクセグメントに当て付けられるように形成されている。
【0016】
本発明に係るアキシャルピストン機械の有利な態様では、シリンダブロックと、スライドシューと、リテーナプレートとが、アキシャルピストン機械のハウジング内に組付け可能である予め組立て可能な駆動機構アッセンブリとして形成されている。
【0017】
本発明に係るアキシャルピストン機械の有利な態様では、シリンダブロックを制御面に押し付ける押付け力を発生させる付加的な押付けばねが設けられている。
【0018】
本発明に係るアキシャルピストン機械の有利な態様では、押付けばねが、第1の側でアキシャルピストン機械の駆動軸に支持されていて、第2の側でシリンダブロックに支持されている。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るアキシャルピストン機械は、スライドシューに対するばね弾性的な押さえ装置を備えている。本発明では、リテーナプレートが、ばね弾性的に形成されたエレメントとして形成されていて、皿ばねとして形成されたリテーナプレートが、スライドシューの押さえ力を発生させるようになっている。したがって、押さえ装置が皿ばねとして形成されている。この皿ばねは内周面でシリンダブロックにジョイント式に支持されており、これによって、リテーナプレートにより発生させられたばね力が、直接スライドシューを押さえ付けるようになっており、したがって、スライドシューの押さえ力を発生させて、この押さえ力をリテーナプレートに伝達するための付加的な押付けばねが不要となる。さらに、皿ばねとして形成されたリテーナプレートによって、スライドシューの高い押さえ力を発生させることが簡単に可能となる。公知先行技術に基づき公知の固定の押さえ装置に比べて、本発明における押さえ装置は、減少させられた構造手間および組付け手間を有している。なぜならば、ハウジングに、リテーナプレートを収容するための当付け面もしくはリテーナプレートを保持する1つの保持リングに対する当付け面またはリテーナプレートを保持する複数の保持プレートに対する当付け面が不要となり、これらの構成要素を省略することができるからである。シリンダブロックの圧縮ばねのばね力が、シリンダブロックと駆動軸との歯列を越えたピンによってリテーナプレートに伝達される公知先行技術に基づき公知のばね弾性的な押さえ装置に比べて、本発明における押さえ装置は、皿ばねとして形成されたリテーナプレートのばね力により高められた、スライドシューに対する押さえ力を有している。さらに、皿ばねとして形成された本発明におけるリテーナプレートでは、シリンダブロックの内部に配置される、このシリンダブロックを制御面に押し付ける圧縮ばねのばね力を伝達するピンが不要となり、これによって、本発明に係るアキシャルピストン機械では、シリンダブロックと駆動軸との間の歯列の弱化ならびにシリンダブロックのシリンダブロックネックの範囲での弱化が生じないようになっている。
【0020】
本発明の有利な態様によれば、リテーナプレートが、シリンダブロックへのジョイント式の支持のために、内周面に球冠部を備えており、この球冠部が、シリンダブロックに設けられた球冠状のシリンダブロックネックに支持されている。シリンダブロックのシリンダブロックネックにおける球形状と、ばねとして形成されたリテーナプレートの内面における対応する球冠形状とによって、不変の押退け容積を有するアキシャルピストン機械でも、可変の押退け容積を有するアキシャルピストン機械でも、シリンダブロックに対する、皿ばねとして形成されたリテーナプレートのジョイント式の支持を少ない製造手間で達成することができる。
【0021】
特別な利点は、本発明の改良態様によれば、リテーナプレートが、スライドシューに遊びなしに接触している場合に得られる。さらに、シリンダブロックに支持された皿ばねとして形成されたリテーナプレートが、スライドシューのスライドシュープレートに遊びなしに接触している限り、ばね弾性的に形成されたリテーナプレートのばね力により発生させられたスライドシューの押さえ力が、同時にシリンダブロックにも伝達される。これによって、アキシャルピストン機械の制御面へのシリンダブロックの基本押付けが達成され、制御面からのシリンダブロックの傾倒が回避される。したがって、シリンダブロックを制御面に押し付ける付加的な圧縮ばねを省略することが可能となり、これによって、ばね弾性的に形成されたリテーナプレートを備えた本発明における押さえ装置によって、シリンダブロックの基本押付けが、更なる構成部材を使用することなしに、構造的に簡単な手段によって可能となる。
【0022】
特別な利点は、本発明の改良態様によれば、リテーナプレートのばね特性線が、このばね特性線の緩傾斜の変化領域を備えた特性線範囲を有しており、この特性線範囲が、アキシャルピストン機械の組立て後、組付け位置において、リテーナプレートと、シリンダブロックと、スライドシューとの自動的な誤差補償を可能にしている場合に得られる。皿ばねとして形成されたリテーナプレートにより、ばね弾性的に形成されたリテーナプレートのばね特性線をリテーナプレートの相応の構造的な構成によって、課せられた要求に適合させることが簡単に可能となる。ばね弾性的に形成されたリテーナプレートが、ばね力の緩傾斜のもしくは水平な変化領域を備えたばね特性線の緩傾斜の特性線範囲を有していて、アキシャルピストン機械の組立て後、緩傾斜の特性線範囲において構成部材の組付け位置が付与されている限り、ばね特性線の、リテーナプレートがばね力のほんの僅かな変化しか有していない緩傾斜のもしくは水平な変化領域によって、更なる調整なしに、周辺構成部材の誤差補償、特にシリンダブロックへのばね弾性的なリテーナプレートの載置面と、スライドシューのスライドシュープレートへのばね弾性的なリテーナプレートの載置面との間隔誤差の補償ならびにばね弾性的なリテーナプレートそれ自体の誤差の補償を行うことができる。したがって、ばね弾性的に形成されたリテーナプレートによって、ばね力がほんの僅かしか変化しない緩傾斜の特性線範囲において、間隔誤差の自動的な補償が可能となる。これによって、構造手間が一層減少させられる。なぜならば、公知先行技術に基づき公知の固定の押さえ装置に比べて、構成部材の間隔誤差を補償するために、それぞれ異なる厚さのベアリングディスクまたはスライドシューまたは種々異なるリテーナプレートが不要となるからである。
【0023】
本発明の有利な態様によれば、リテーナプレートが、それぞれ1つのスライドシューのスライドシューネックを収容するための孔状の切欠きを備えており、この切欠きの範囲にリテーナプレートが、内側に向けられていると共にスライドシューのスライドシュープレートに向けられた複数のばね歯を有している。スライドシューがスライドシュープレートで遊びなしに接触するこのようなばね歯によって、皿ばねとして形成されたリテーナプレートに対して、ばね特性線の緩傾斜の変化領域を備えた特性線範囲を少ない構造手間で得ることができる。
【0024】
本発明の択一的な態様によれば、リテーナプレートが、スリットを備えた皿ばねとして形成されている。リテーナプレートとして、このようなスリット付きの皿ばねを用いることによって、皿ばねとして形成されたリテーナプレートに対して、ばね特性線の緩傾斜の変化領域を備えた特性線範囲を同じく少ない構造手間で得ることができる。
【0025】
少ない構造手間に関して、スリットを備えたリテーナプレートが、半径方向外側に向けられた複数のばね舌片を備えており、2つのばね舌片の間に、それぞれ1つのスライドシューのスライドシューネックを収容するための1つの切欠きが形成されていると有利である。これによって、スリットを備えたリテーナプレートにおいて、スライドシューのスライドシューネックを収容するための切欠きを簡単に形成することができ、スライドシューをスライドシュープレートで、互いに隣り合った2つのばね舌片の間に配置することができる。したがって、スライドシューがスライドシュープレートでばね舌片に遊びなしに接触している。
【0026】
本発明の態様によれば、リテーナプレートが、ばね特性線の緩傾斜の変化領域を備えた特性線範囲にすぐに続いて、急激な力上昇を備えた特性線範囲を有している。これによって、緩傾斜の特性線範囲を越えたのち、スライドシューをストロークディスクから持ち上げる力によって、ストロークディスクからのスライドシュー滑動面の僅かな持上り量のあと、ばね弾性的なリテーナプレートにより発生させられるばね力の急激な力上昇が生じ、ひいては、スライドシューに高い押さえ力が発生させられることが可能となる。したがって、急激な力上昇を備えたこのような特性線範囲によって、ばね弾性的なリテーナプレートによる高い押さえ力を発生させることができ、ストロークディスクからのスライドシューの持上り量を制限することができる。これによって、スライドシューおよびストロークディスクに対する損傷の危険を減少させることができる。高められた押さえ力は、皿ばねとして形成されたリテーナプレートによって、ストロークディスクからのスライドシューの持上りの際にしか発生させられないので、アキシャルピストン機械の通常の運転中には、スライドシューとストロークディスクとの間の摩擦を少なくすることができる。したがって、スライドシューとストロークディスクとの間の摩擦の減少によって、ばね弾性的に形成されたリテーナプレートを備えた本発明に係るアキシャルピストン機械が、スライドシューの少ない摩耗と、減少させられた損失出力とを有している。
【0027】
リテーナプレートにおける急激な力上昇を備えたこのような特性線範囲は、本発明の態様によれば、ストロークディスクからのスライドシューの規定された持上り量のあと、スライドシューがスライドシュープレートでリテーナプレートのディスクセグメントに当て付けられるように、リテーナプレートが形成されている場合に少ない構造手間で得ることができる。したがって、ばね歯もしくはばね舌片のばね撓み量の経過後、スライドシューが相応のスライドシュープレートでリテーナプレートのディスクセグメントに当て付けられ、これによって、スライドシューの規定された持上り量のあと、急激な力上昇を簡単に得ることができる。
【0028】
さらに、ばね弾性的に形成された本発明におけるリテーナプレートによって、シリンダブロックと、スライドシューと、リテーナプレートとを、アキシャルピストン機械のハウジング内に組付け可能である予め組立て可能な駆動機構アッセンブリとして形成することが可能となる。公知の固定の押さえ装置に比べて、本発明におけるリテーナプレートによって、シリンダブロックと、スライドシューと、リテーナプレートとから成る駆動機構アッセンブリを、アキシャルピストン機械の、ストロークディスクが一体成形されていて、駆動機構アッセンブリを取り囲むハウジング内に簡単にかつコンパクトに組み付けることが可能となる。固定の押さえ装置を備えた公知のアキシャルピストン機械に比べて、ハウジングの内部での、シリンダブロックのピストン用切欠き内への駆動機構ピストンの手間と時間のかかる導入および内挿が省略される。これによって、本発明に係るアキシャルピストン機械は、簡単な組立てと、これに起因して減少させられた製造コストとを有している。
【0029】
本発明の改良態様によれば、シリンダブロックを制御面に押し付ける押付け力を発生させる付加的な押付けばねが設けられている。ばね弾性的に形成されたリテーナプレートがスライドシューをストロークディスクからの持上りに対して防護しかつ制御面へのシリンダブロックの基本押付けを招く、ばね弾性的なリテーナプレートにより形成された遊びなしの押さえ装置を備えた本発明に係るアキシャルピストン機械は、シリンダブロックを制御面に押し付けかつ、有利には駆動軸とシリンダブロックとの間に組み込まれる付加的な押付けばねを備えてよい。本発明に係るアキシャルピストン機械では、公知先行技術のばね弾性的な押さえ装置を備えたアキシャルピストン機械に比べて、本発明におけるばね弾性的に形成されたリテーナプレートによって、押付け力ひいてはスライドシューの押さえ力を、シリンダブロックを制御面に押し付ける押付けばねに関係なく形成することができ、これによって、スライドシューに加えられる摩擦力を意図的に減少させることができ、シリンダブロックに加えられる、ばね弾性的に形成されたリテーナプレートの反力によって、制御面へのシリンダブロックの押付けを強めることができる。本発明に係るアキシャルピストン機械では、制御面に加えられるシリンダブロックの押付け力が、ばねとして形成されたリテーナプレートのばね力と、付加的に存在する押付けばねのばね力とから形成されるので、制御面に加えられるシリンダブロックの押付け力を変えずに、押付けばねにより発生させられる押付け力を減少させ、ひいては、公知のアキシャルピストン機械に比べて、押付けばねを縮小しかつ小さな寸法で形成することが可能となる。したがって、押付けばねがシリンダブロックの内部で駆動軸とシリンダブロックとの間に半径方向で組み込まれている限り、付加的な押付けばねはシリンダブロック内に少ない組込みスペースしか必要としない。
【0030】
このために、有利には、押付けばねが、第1の側でアキシャルピストン機械の駆動軸に支持されていて、第2の側でシリンダブロックに支持されている。駆動軸とシリンダブロックとの間に半径方向で配置されたこのような押付けばねによって、シリンダブロックに、このシリンダブロックを制御面に押し付ける押付け力を簡単に発生させることができる。
【0031】
本発明の更なる利点および詳細は、概略図で示した複数の実施の形態に基づき詳細に説明してある。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明を実施するための形態を図面につき詳しく説明する。
【0034】
図1には、本発明に係る流体静力学式の斜板構造のアキシャルピストン機械1が縦断面図で示してある。
【0035】
このアキシャルピストン機械1は、回転軸線Dを中心として回転可能に配置されたシリンダブロック2を有している。このシリンダブロック2は、回転軸線Dに対して同心的に配置された複数のピストン用切欠き3を備えている。これらのピストン用切欠き3は、有利にはシリンダ孔によって形成されている。また、ピストン用切欠き3内には、それぞれ1つの駆動機構ピストン4が長手方向摺動可能に支承されている。
【0036】
シリンダブロック2は軸方向において一方の端面で、ハウジング7に対して不動の制御面5に支持されている。この制御面5は底側のディスク状の制御部材6に形成されている。この制御部材6は、ハウジング7にまたはハウジング7の相応のハウジングカバー7aに相対回動不能に固定されている。制御部材6は、キドニ状のまたは繭形の複数の制御スリットを備えている。これらの制御スリットは流入ポート8および流出ポート9を成している。ピストン用切欠き3はシリンダブロック2の端面側に、有利にはキドニ状のまたは繭形のそれぞれ1つの接続通路10を備えており、これによって、駆動機構ピストン4とピストン用切欠き3とにより形成された押退け室が、回転軸線Dを中心としたシリンダブロック2の回転時に、流入ポート8と流出ポート9とに交互に接続されるようになっている。
【0037】
シリンダブロック2は中心の孔によって貫通されている。この孔によって、回転軸線Dに対して同心的に配置された駆動軸15がシリンダブロック2を貫いてガイドされている。駆動軸15は、ハウジング7とハウジングカバー7aとに軸受け16,17によって回転可能に支承されている。シリンダブロック2は駆動軸15に回転同期するように、つまり、相対回動不能に結合されているものの、たとえばシリンダブロック2のシリンダブロックネックの範囲に設けられた歯列18によって軸方向に摺動可能に結合されている。シリンダブロックネックはシリンダブロック2に一体成形されていて、軸方向でストロークディスク19の方向に延びている。
【0038】
駆動機構ピストン4は、シリンダブロック2を越えて突出した範囲において、スライドシュー20として形成されたそれぞれ1つの支持エレメントによって、回転軸線Dに対して傾けられて配置されたストローク発生用のストロークディスク19、たとえば斜板に支持されている。このストロークディスク19は、図示の実施の形態では、ハウジング7に直接一体成形されている。アキシャルピストン機械1は不変の押退け容積を有している。図示の実施の形態では、さらに、ストロークディスク19に取り付けられたベアリングディスク21が示してある。このベアリングディスク21を介してスライドシュー20がストロークディスク19に支持されている。スライドシュー20はベアリングディスク21において静圧的に負荷軽減されている。スライドシュー20に配置された圧力ポケットに圧力媒体を供給するためには、スライドシュー20と駆動機構ピストン4とに、相応の押退け室に接続された複数の長手方向孔が配置されている。
【0039】
スライドシュー20は、駆動機構ピストン4にボールジョイントによって傾動自在に取り付けられていて、
図2に関連して詳細に明らかとなるように、スライドシューネック20aとスライドシュープレート20bとを有している。このスライドシュープレート20bの、ベアリングディスク21に向けられた端面は、スライドシュー20をベアリングディスク21に沿って滑動させる滑動面を成している。スライドシュープレート20bの、スライドシューネック20aに向けられた反対側の端面は、環状のスライドシューつば20cとして形成されている。このスライドシューつば20cはディスク状のリテーナプレート30と協働する。このリテーナプレート30は、スライドシュー20の押さえ装置を成していて、ストロークディスク19もしくはベアリングディスク21からのスライドシュー20の持上りを防止している。
【0040】
本発明におけるリテーナプレート30はシリンダブロック2と一緒に回転し、
図4に関連して明らかとなるように、皿ばね状のばねエレメント31として形成されている。皿ばねとして形成されたリテーナプレート30は内周に隆起部を備えている。この隆起部は内周面に球冠部32aを有している。シリンダブロック2のシリンダブロックネックは外周面に球形の球冠部32bを備えている。この球冠部32bには、リテーナプレート30が球冠部32aでジョイント式にもしくは傾動自在に支持されている。
【0041】
皿ばねとして形成された円錐形のリテーナプレート30は、
図2に詳細に示したように、シリンダブロック2に向かって所定の傾きを備えている。
【0042】
ばね弾性的に形成されたリテーナプレート30は、円錐形のディスクセグメント34を有している。このディスクセグメント34は、スライドシュー20を収容するために、それぞれ孔状の切欠き35を備えている。この切欠き35を通って、それぞれ1つのスライドシュー20がスライドシューネック20aで突出している。孔状の切欠き35の範囲では、リテーナプレート30に、それぞれ内方に向けられた複数のばね歯33が形成されている。これらのばね歯33は、出発状態でスライドシュープレート20bに向けられていて、各スライドシュー20のスライドシュープレート20bに設けられたスライドシューつば20cと協働している。相応の切欠き35には、この相応の切欠き35の全周にわたって、内方に向けられてスライドシュー20のスライドシュープレート20bに向かって傾けられた複数のばね歯33が分配されて配置されている。
【0043】
本発明に係るアキシャルピストン機械1では、ばね弾性的に形成されたリテーナプレート30が、ばね歯33によってスライドシュー20のスライドシュープレート20bに遊びなしに接触している。したがって、ばね弾性的なリテーナプレート30によって、一方では、スライドシュー20がベアリングディスク21もしくはストロークディスク19に当て付けられた状態で保持され、他方では、シリンダブロック2に対するジョイント式の結合を介して、このシリンダブロック2に作用する押付け力が発生させられる。この押付け力はシリンダブロック2を端面で制御面5に押し付ける。
図1には、ばね弾性的に形成されたリテーナプレート30の力伝達経路KFが破線で示してある。この力伝達経路KFはスライドシュー20をベアリングディスク21もしくはストロークディスク19に押し付けると同時にシリンダブロック2を制御面5に押し付ける。
【0044】
ばね弾性的に形成されたリテーナプレート30によって、このリテーナプレート30に作用する押付け力を発生させる付加的な押付けばねが不要となる。さらに、ばね弾性的に形成されたリテーナプレート30により達成される、制御面5へのシリンダブロック2の押付けによって、このシリンダブロック2に対する付加的な押付けばね、たとえば駆動軸15とシリンダブロック2との間に半径方向で組み込まれていて、制御面5からのシリンダブロック2の傾倒を回避するために、シリンダブロック2を制御面5に当て付けた状態で保持する圧縮ばねが不要となる。
【0045】
図1〜
図4に示した、皿ばねとして形成されて、切欠き35の範囲に複数のばね歯33を備えたリテーナプレート30は、ベアリングディスク21もしくはストロークディスク19からのスライドシュー20の持上り量を成すスライドシュー移動量S(
図1に示した矢印参照)に関するばね力Fひいてはスライドシュー20の押さえ力の特性線経過を有している。この特性線経過は
図5に示してある。
【0046】
リテーナプレート30は、スライドシュー20のスライドシューつば20cに接触するばね歯33によって、第1の特性線範囲B1において、ばね力ひいては押さえ力Fの力上昇後、特性線ひいてはばね力Fの緩傾斜の変化領域、図示の実施の形態では水平な変化領域を備えた特性線範囲K1を有している。この特性線範囲K1では、構成部材の組立て後、アキシャルピストン機械1の組付け位置が付与されている。
【0047】
緩傾斜の特性線範囲K1にすぐに続いて、ばね弾性的なリテーナプレート30は、ばね力ひいては押さえ力Fが急激に上昇する特性線範囲B2を有している。この特性線範囲B2は、ベアリングディスク21もしくはストロークディスク19からの規定された短い持上り量Sのあと、スライドシュー20のスライドシューつば20cが、ばね弾性的なリテーナプレート30の円錐形のディスクセグメント34に当て付けられる場合に達成される。
【0048】
本発明に係るアキシャルピストン機械1では、ばね弾性的に形成されたリテーナプレート30によって、
図6の右側に示したように、シリンダブロック2と、駆動機構ピストン4と、スライドシュー20とにより形成された回転させられる駆動機構アッセンブリを、予め組み立てられたアッセンブリとして形成することができる。このアッセンブリは全体として、ストロークディスク19が一体成形されたハウジング7内に組み込むことができる。
図6の左側には、対応する公知先行技術のアキシャルピストン機械1が示してある。このアキシャルピストン機械1は、スライドシュー20のための固定の押さえ装置を備えている。この固定の押さえ装置では、リテーナプレート30aが付加的な保持リング30bによってハウジング7内に軸方向で位置固定されている。ストロークディスク19を備えたハウジング7内への保持リング30bを用いたリテーナプレート30aの固定によって、公知先行技術のアキシャルピストン機械1では、ハウジング7内へのシリンダブロック2の組付け時に、このシリンダブロック2のピストン用切欠き3内への、スライドシュー20に結合された駆動機構ピストン4の手間と時間のかかる内挿が必要となる。
【0049】
図7〜
図10には、本発明に係るアキシャルピストン機械1の第2の実施の形態が示してある。同じ構成部材には、同じ符号が付してある。
【0050】
図7〜
図10に示したアキシャルピストン機械1は、調整可能な押退け容積を備えている。このためには、ストロークディスク19が、回転軸線Dに対して斜めに調節可能にハウジング7内に配置された旋回クレードル19aに形成されている。
【0051】
図7〜
図10に示した、ばね弾性的に形成されたディスク状のリテーナプレート30は、
図9に詳細に示したように、スリットを備えた皿ばねとして形成されている。
【0052】
図9に示した、皿ばね状のばねエレメント31として形成されたリテーナプレート30は、
図4に類似して、内周に隆起部を備えている。この隆起部は内周面に球冠部32aを有している。この球冠部32aでリテーナプレート30は、シリンダブロック2のシリンダブロックネックの球冠部32bにジョイント式に支持されている。
【0053】
ばね弾性的に形成されたリテーナプレート30は、隆起部に隣接して、スライドシュー20を受け止めるために半径方向外側に向けられた複数のばね舌片36を備えたディスクセグメント34を有している。2つのばね舌片36の間には、半径方向外向きに開いた長孔状のそれぞれ1つの切欠き37が形成されている。この切欠き37内には、1つのスライドシュー20のスライドシューネック20aが収容されている。半径方向外側に向けられたばね舌片36は、このばね舌片36を破線で示した
図7に関連して明らかとなるように、出発状態でスライドシュー20のスライドシュープレート20bに向かって湾曲させられ、曲げられる。したがって、ばね舌片36は、各スライドシュー20のスライドシュープレート20bに設けられたスライドシューつば20cと協働する。
【0054】
本発明に係るアキシャルピストン機械1では、ばね弾性的に形成されたリテーナプレート30が、ばね舌片36によってスライドシュー20のスライドシューつば20cひいてはスライドシュープレート20bに遊びなしに接触している。したがって、ばね弾性的なリテーナプレート30によって、一方では、スライドシュー20がベアリングディスク21もしくはストロークディスク19に当て付けられた状態で保持され、他方では、シリンダブロック2に対するジョイント式の結合を介して、このシリンダブロック2に作用する押付け力が発生させられる。この押付け力はシリンダブロック2を端面で制御面5に押し付ける。
【0055】
ばね弾性的に形成されたリテーナプレート30によって、このリテーナプレート30に作用する押付け力を発生させる付加的な押付けばねは存在しなくなるかもしくは必要なくなる。さらに、ばね弾性的に形成されたリテーナプレート30により達成される、制御面5へのシリンダブロック2の押付けによって、このシリンダブロック2に対する付加的な押付けばね、たとえば駆動軸15とシリンダブロック2との間に半径方向で組み込まれていて、制御面5からのシリンダブロック2の傾倒を回避するために、シリンダブロック2を制御面5に当て付けた状態で保持する圧縮ばねが不要となる。したがって、シリンダブロック2と駆動軸15との間の歯列18を、
図8に示したように、全周にわたって見て中断なしにかつ歯の省略なしに形成することができる。さらに、本発明に係るアキシャルピストン機械1のシリンダブロック2では、歯列18の範囲に、ばね弾性的な押さえ装置を備えた公知先行技術のアキシャルピストン機械のような、ピンを収容するための付加的な弱化孔が不要となる。
図8に示した歯列18の構成は、当然ながら、
図1〜
図5に示した本発明に係るアキシャルピストン機械1でも同様に可能である。
【0056】
図7〜
図9に示した、スリットを備えた皿ばねとして形成されたリテーナプレート30は、ベアリングディスク21もしくはストロークディスク19からのスライドシュー20の持上り量を成すスライドシュー移動量Sに関するばね力Fの特性線経過を有している。この特性線経過は、
図10に示してある。
【0057】
リテーナプレート30は、スライドシュー20のスライドシューつば20cに接触するばね舌片36によって、第1の特性線範囲B1において、ばね力ひいては押さえ力Fの力上昇後、特性線およびばね力Fの緩傾斜の変化領域、図示の実施の形態では僅かに放物線状に湾曲させられた変化領域を備えた特性線範囲K1を有している。この特性線範囲K1は、構成部材の組立て後のアキシャルピストン機械1の組付け位置を成している。
【0058】
緩傾斜の特性線範囲K1にすぐに続いて、リテーナプレート30は、ばね力ひいては押さえ力Fが急激に上昇する特性線範囲B2を有している。この特性線範囲B2は、ベアリングディスク21もしくはストロークディスク19からの規定された短い持上り量Aのあと、スライドシュー20のスライドシューつば20cが、ばね弾性的なリテーナプレート30の、隆起部に隣接して形成されたディスクセグメント34に当て付けられる場合に達成される。持上り量Aは
図7に示してある。この
図7では、構成部材の組立て後の組付け位置において、スライドシュー20がスライドシューつば20cでリテーナプレート30のばね舌片36にだけ接触しており、スライドシューつば20cとリテーナプレート30の半径方向内側のディスクセグメント34との間に軸方向の間隔Aが存在していることが明らかである。したがって、スライドシュー20が、アキシャルピストン機械1の運転中に軸方向の間隔Aだけベアリングディスク21もしくはストロークディスク19から持ち上げられると、スライドシュー20がスライドシューつば20cでディスクセグメント34に当て付けられる。これによって、ばね特性線の特性線範囲B2における急傾斜の力上昇が達成される。
【0059】
図11には、本発明に係るアキシャルピストン機械1の改良形態が示してある。この改良形態は、すでに制御面5へのシリンダブロック2の基本押付けを可能にするばね弾性的なリテーナプレート30に対して付加的に、シリンダブロック2を制御面5に押し付ける付加的な押付けばね40を備えている。この押付けばね40は、駆動軸15とシリンダブロック2との間に半径方向で配置された圧縮ばねとして形成されている。押付けばね40は、第1の側では、当付けリング41、たとえば駆動軸15の軸段部に接触する当接リングによってアキシャルピストン機械1の駆動軸15に支持されていて、第2の側では、シリンダブロック2に取り付けられた当付けリング42、たとえばシリンダブロック2の内周面に設けられた環状溝内に挿入された位置固定リングによってシリンダブロック2に支持されている。
【0060】
皿ばねとして形成され、ひいては、ばね弾性的に形成されたリテーナプレート30を備えた本発明に係るアキシャルピストン機械1は、一連の利点を有している。
【0061】
本発明におけるリテーナプレート30は、スライドシュー20の遊びなしの押さえ装置を形成していて、アキシャルピストン機械1の組立て後の組付け位置が付与されている緩傾斜の特性線範囲K1を備えた特性線経過によって、間隔誤差、特に球冠部32aにより形成された、シリンダブロック2に対するリテーナプレート30の載置面と、ばね歯33もしくはばね舌片36により形成された、スライドシュー20に対するリテーナプレート30の載置面との間の間隔誤差ならびにリテーナプレート30それ自体の構成部材誤差の自動的な補償を可能にする。
【0062】
ベアリングディスク21もしくはストロークディスク19からのスライドシュー20の持上りの際には、本発明におけるリテーナプレート30のばね力ひいては押さえ力Fが急激に上昇する特性線範囲B2によって、高い押さえ力Fが発生させられる。これによって、スライドシュー20の持上り量が制限され、スライドシュー20とストロークディスク19もしくはベアリングディスク21とに対する損傷の危険が減少させられる。この高められた押さえ力Fは、本発明におけるばね弾性的なリテーナプレート30によって、ベアリングディスク21もしくはストロークディスク19からのスライドシュー20の持上りの際にしか発生させられないので、アキシャルピストン機械1の通常の運転中には、スライドシュー20とベアリングディスク21との間の摩擦が少なくなり、したがって、スライドシュー20には少ない摩耗しか生じず、本発明に係るアキシャルピストン機械1の損失出力が少なくなる。
【0063】
本発明におけるばね弾性的なリテーナプレート30により、スライドシュー20の押さえ力Fが同時にシリンダブロック2に伝達されることによって、制御面5へのシリンダブロック2の基本押付けを、このシリンダブロック2と駆動軸15との間の付加的な押付けばねなしに、ひいては、構造的に簡単な手段で達成することができる。シリンダブロック2に対する押付けばねの省略によって、本発明に係るアキシャルピストン機械1の構造が簡単になり、さらに、シリンダブロック2と駆動軸15との間の歯列18を延長することが可能となる。
【0064】
公知先行技術の固定の押さえ装置に比べて、本発明における押さえ装置では、リテーナプレート30を軸方向でハウジング7内に位置固定する保持リングまたは保持プレートの省略と、保持リングまたは保持プレートのための当付け面の機械的な加工の省略とによって、ハウジング7の構成および製作が簡単になる。
【0065】
さらに、本発明に係るアキシャルピストン機械1では、取囲み用のハウジング7内への予め組み立てられた駆動機構アッセンブリの簡単でコンパクトな組付けが、ストロークディスク19を備えたハウジング7の内部での、シリンダブロック2のピストン用切欠き3内への駆動機構ピストン4の手間と時間のかかる内挿なしに可能となる。
【0066】
シリンダブロックを制御面に押し付ける圧縮ばねのばね力が、シリンダブロックと駆動軸との間の歯列の範囲に設けられたピンによってリテーナプレートに伝達される公知先行技術のばね弾性的な形成された押さえ装置に比べて、本発明におけるばね弾性的なリテーナプレート30によって、駆動軸15とシリンダブロック2との間の歯列18の弱化およびシリンダブロックネックの範囲でのシリンダブロック2の弱化が回避される。
【0067】
図11によれば、本発明におけるばね弾性的なリテーナプレート30が、シリンダブロック2を制御面5に押し付けるための付加的な押付けばね40に組み合わされる限り、更なる利点が得られる。スライドシュー20の、ばね弾性的なリテーナプレート30により発生させられる押さえ力は、公知先行技術のばね弾性的に形成された押さえ装置に比べて、シリンダブロック2の押付けばね40の押付け力に関係なく形成することができる。これによって、スライドシュー20とベアリングディスク21もしくはストロークディスク19との間の摩擦を減少させることができる。本発明におけるばね弾性的なリテーナプレート30は、スライドシュー20の押さえ力の反力をシリンダブロック2において支持しているので、ばね弾性的なリテーナプレート30によって、制御面5へのシリンダブロック2の押付け力も強められる。したがって、制御面5へのシリンダブロック2の押付け力が、ばね弾性的なリテーナプレート30の力と、シリンダブロック2の押付けばね40の力とから形成されるので、本発明に係るアキシャルピストン機械1では、シリンダブロック2のための押付け力が必要となる場合に、押付けばね40を公知先行技術のアキシャルピストン機械に比べて縮小することができる。押付けばね40の縮小により得られる、シリンダブロック2と駆動軸15との間の構成スペースは、本発明に係るアキシャルピストン機械1では、シリンダブロック2と駆動軸15との間の歯列18を延長するために使用することができる。
【0068】
本発明は、図示の実施の形態に限定されるものではない。当然ながら、緩傾斜の区分と、急激な力上昇を有する範囲とを備えた所望の特性線経過を得るために、皿ばね状のばねエレメント31として形成された
図1〜
図4ならびに
図7〜
図9に示したリテーナプレート30のばね特性線をばねエレメント31の相応の構成によって適合させることが可能である。また、
図10に示した特性線経過を
図1〜
図4に示したリテーナプレート30において設定し、
図5に示した特性線経過を
図7〜
図9に示したリテーナプレート30において設定することも同じく可能である。