特許第6403377号(P6403377)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6403377-多結晶化方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6403377
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】多結晶化方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/20 20060101AFI20181001BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20181001BHJP
   G02F 1/1368 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   H01L21/20
   H01L21/304 647Z
   G02F1/1368
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-239048(P2013-239048)
(22)【出願日】2013年11月19日
(65)【公開番号】特開2015-99853(P2015-99853A)
(43)【公開日】2015年5月28日
【審査請求日】2016年11月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 直也
(72)【発明者】
【氏名】神内 紀秀
(72)【発明者】
【氏名】水越 寛文
【審査官】 桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−142027(JP,A)
【文献】 特開平11−354441(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/047086(WO,A1)
【文献】 特開2000−353807(JP,A)
【文献】 特開2007−208147(JP,A)
【文献】 特開2007−053398(JP,A)
【文献】 特開2002−353135(JP,A)
【文献】 特開2002−141510(JP,A)
【文献】 特開平11−016866(JP,A)
【文献】 特開2005−005302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/20
H01L 21/304
G02F 1/1368
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に非晶質半導体膜の水素を除去する熱処理により形成した自然酸化膜を有する前記非晶質半導体膜を多結晶化させる多結晶化方法であって、
前記非晶質半導体膜の表面の前記自然酸化膜を残しながらオゾンを溶解させた液体を前記自然酸化膜に吹き付けて前記自然酸化膜を清浄化する工程と、
前記自然酸化膜を残した状態にて雰囲気酸素濃度は500PPM以下で前記自然酸化膜に含まれる酸素を利用して前記非晶質半導体膜を多結晶化させる工程と
を具備することを特徴とする多結晶化方法
【請求項2】
前記液体に溶解させる前記オゾンの濃度は1PPMないし100PPMである
ことを特徴とする請求項記載の多結晶化方法。
【請求項3】
前記自然酸化膜を清浄化させる工程では、前記自然酸化膜上での水滴の接触角を15度以内とする
ことを特徴とする請求項または記載の多結晶化方法。
【請求項4】
前記自然酸化膜を残した状態にて前記非晶質半導体膜を多結晶化させる工程は、エキシマレーザーアニール処理である
ことを特徴とする請求項1ないしいずれか一記載の多結晶化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、非晶質半導体膜を多結晶化させる多結晶化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表示素子のスイッチング素子として、多結晶半導体膜を半導体層に用いた薄膜トランジスタがある。
【0003】
多結晶半導体膜を製造するには、非晶質半導体膜にレーザー光を照射して多結晶化する方法がある。この方法では、非晶質半導体膜の表面に酸化膜を形成しておくことにより、酸化膜に含まれる酸素を利用して多結晶半導体膜を形成することが可能となっている。非晶質半導体膜の表面には非晶質半導体膜の熱処理や大気中での保存等によって自然酸化膜が形成されるが、このような自然酸化膜は安定していないため、自然酸化膜を非晶質半導体膜の多結晶化に利用したのでは、薄膜トランジスタの特性が安定しない。
【0004】
そこで、非晶質半導体膜を多結晶化するには、前処理工程において、非晶質半導体膜の表面の自然酸化膜をフッ酸によって完全に除去する。その後、結晶化工程にて、まず、比較的高い濃度の酸素雰囲気中で非晶質半導体膜にレーザーを照射し、非晶質半導体膜の表面を再度酸化させて表面酸化膜を形成し、続いて、雰囲気中の酸素濃度を下げ、表面酸化膜に導入された酸素を利用して非晶質半導体膜を多結晶化している。
【0005】
このように、非晶質半導体膜の多結晶化には、前処理工程において自然酸化膜を完全に除去した後に、結晶化工程において非晶質半導体膜の表面を再度酸化させて表面酸化膜を形成する必要があり、工程が多く、生産効率が低い課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−124467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、生産効率を向上できる多結晶化方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の多結晶化方法は、表面に非晶質半導体膜の水素を除去する熱処理により形成した自然酸化膜を有する非晶質半導体膜を多結晶化させる多結晶化方法であって、非晶質半導体膜の表面の自然酸化膜を残しながらオゾンを溶解させた液体を自然酸化膜に吹き付けて自然酸化膜を清浄化する工程と、自然酸化膜を残した状態にて雰囲気酸素濃度は500PPM以下で自然酸化膜に含まれる酸素を利用して非晶質半導体膜を多結晶化させる工程とを具備するものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態を示す多結晶化方法の工程を(a)〜(c)に示す断面図である。
図2】同上多結晶化方法による結晶化工程の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施形態を、図1および図2を参照して説明する。
【0011】
図1には、例えばゲートトップ形の薄膜トランジスタにおける半導体層として多結晶半導体膜10を形成する工程を示す。多結晶半導体膜10は例えばポリシリコン膜である。
【0012】
図1(a)には、多結晶半導体膜10を製造する前の状態を示す。ガラス基板等の基板11上に、プラズマCVD法等によりアンダーコート膜12が形成されている。このアンダーコート膜12の表面に、プラズマCVD法等により非晶質半導体膜13が形成されている。非晶質半導体膜13は例えばアモルファスシリコン膜である。
【0013】
非晶質半導体膜13の表面には、非晶質半導体膜13中に含まれる水素を除去する熱処理や大気中での保存等のために、自然酸化による自然酸化膜14が形成されている。
【0014】
そして、多結晶半導体膜10の製造方法について説明する。製造工程には、前処理工程と結晶化工程が含まれる。
【0015】
まず、前処理工程について説明する。図1(b)に示すように、非晶質半導体膜13の表面の自然酸化膜14を残しながらその自然酸化膜14を清浄化する。
【0016】
この清浄化には、自然酸化膜14を酸化させる酸化処理を行う。この酸化処理では、オゾンを溶解させた純水等の液体(以下、オゾン水と呼ぶ)を用い、このオゾン水を自然酸化膜14に吹き付けるなどして接触させる。液体に溶解させるオゾンの濃度は1PPMないし100PPMの範囲を許容するが、好ましくは5PPMないし10PPMである。
【0017】
この酸化処理により、オゾン水の酸化力を利用して、自然酸化膜14の表面を洗浄し、自然酸化膜14をさらに酸化させて、自然酸化膜14に所定量の酸素を均一に導入する。したがって、自然酸化膜14の清浄化には、自然酸化膜14の表面の洗浄、および自然酸化膜14に所定量の酸素を均一に導入するための自然酸化膜14のさらなる酸化が含まれる。
【0018】
この酸化処理では、自然酸化膜14の表面が十分な親水性が得られるまで行う。具体的には、自然酸化膜14上に水滴を垂らした状態での自然酸化膜14の表面に対する水滴の接触角が15度以内となるまで行う。
【0019】
次に、結晶化処理について説明する。図1(c)に示すように、自然酸化膜14を残した状態にて非晶質半導体膜13を多結晶化し、多結晶半導体膜10を形成する。この結晶化工程では、エキシマレーザーアニール処理を行う。
【0020】
エキシマレーザーアニール処理は、図2に示すように、基板11の幅方向に沿ってパルス状のレーザーLを照射しながら、基板11を幅方向に対して直交する方向に送り、レーザーLを自然酸化膜14および非晶質半導体膜13の全体に照射する。このとき、雰囲気酸素濃度は500PPM以下、基板11の送り速度は20μm/パルスである。そして、エキシマレーザーアニール処理により、自然酸化膜14に含まれる酸素を利用して多結晶半導体を成長させ、多結晶半導体膜10を形成する。
【0021】
上述したように、多結晶化方法によれば、非晶質半導体膜13の表面の自然酸化膜14を残しながら自然酸化膜14を清浄化するため、従来の方法で行われていた前処理工程でのフッ酸によって自然酸化膜を完全に除去する除去処理、および結晶化工程での非晶質半導体膜の表面を再度酸化させて表面酸化膜を形成する処理が必要なくなり、工程を削減し、生産効率を向上できる。
【0022】
また、清浄化する工程では、酸化処理を行うため、自然酸化膜14に所定量の酸素を均一に導入でき、多結晶化工程において安定した多結晶半導体膜10を形成できる。
【0023】
さらに、酸化処理にはオゾン水を用いるため、自然酸化膜14の表面の洗浄と、自然酸化膜14に所定量の酸素を均一に導入するための自然酸化膜14のさらなる酸化とが同時に行える。
【0024】
さらに、液体に溶解させるオゾンの濃度は1PPMないし100PPMの範囲とするため、適切な酸化処理を行える。なお、好ましくは5PPMないし10PPMであれば、より適切な酸化処理を行える。
【0025】
また、酸化処理では、自然酸化膜14上に水滴を垂らした状態での自然酸化膜14の表面に対する水滴の接触角が15度以内となるまで行うため、自然酸化膜14の表面を均一化し、多結晶化工程において安定した多結晶半導体膜10を形成できる。
【0026】
また、結晶化工程では、エキシマレーザーアニール処理するが、このとき自然酸化膜14に含まれる酸素を利用して非晶質半導体膜13を多結晶化できる。
【0027】
なお、上述のようにして製造される薄膜トランジスタを用いてアクティブマトリクス基板を構成できる。アクティブマトリクス基板は、基板と、基板上に形成された薄膜トランジスタであるスイッチング素子と、スイッチング素子に電気信号を供給する信号配線と、スイッチング素子と電気的に接続して基板上に形成された画素電極とを有する。
【0028】
このアクティブマトリクス基板は、液晶表示素子、有機EL表示素子やその他の自発光形表示素子等の表示素子に用いることができる。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0030】
13 非晶質半導体膜
14 自然酸化膜
図1
図2