(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
式(1)で示される側鎖1,2−ジオール構造単位を含有するポリビニルアルコール系樹脂[I]中の側鎖1,2−ジオール構造単位の含有率が、1〜15モル%であることを特徴とする請求項1に記載の整髪剤用アクリル系樹脂エマルジョン。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものである。
なお、本発明において、(メタ)アクリルとはアクリルあるいはメタクリルを、(メタ)アクリロイルとはアクリロイルあるいはメタクリロイルを、(メタ)アクリレートとはアクリレートあるいはメタクリレートをそれぞれ意味するものであり、アクリル系樹脂とは(メタ)アクリル系モノマーを少なくとも1種含有するモノマー成分を重合して得られる樹脂である。
【0013】
本発明の整髪剤用アクリル系樹脂エマルジョンは、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、「PVA系樹脂」と記すことがある。)[I]により分散安定化されたアクリル系樹脂(A)を含有するものである。
【0014】
本発明において上記分散安定化された状態とは、エマルジョンを23℃、1ヶ月静置しても沈降分離せず、均一な状態を保つ分散状態のことである。
【0015】
<ポリビニルアルコール系樹脂[I]>
【0016】
上記PVA系樹脂[I]としては、次に示す特定の平均ケン化度および平均重合度を有するPVA系樹脂が好ましい。
【0017】
PVA系樹脂[I]の平均ケン化度としては、70〜99.9モル%であることが好ましく、特に好ましくは80〜99.5モル%、更に好ましくは85〜99.0モル%である。
かかる平均ケン化度が低すぎると安定的に重合が進行しにくく、重合が完結したとしてもエマルジョンの保存安定性が低下してしまう傾向がみられ、高すぎる乳化安定性が低下し、製造が困難となる傾向がみられる。
【0018】
なお、本発明において、平均ケン化度は、JIS K 6726(1994)に記載のケン化度の算出方法にしたがって求めることができる。
【0019】
また、PVA系樹脂[I]の平均重合度としては、50〜3,000であることが好ましく、特に好ましくは100〜2,000であり、更に好ましくは200〜1,000であり、殊に好ましくは200〜500である。
かかる平均重合度が低すぎると、乳化重合時の保護コロイド能力が不充分となり重合が安定的に進行しにくい傾向がみられ、高すぎると、重合時に増粘して反応系が不安定になり分散安定性が低下する傾向がある。
【0020】
なお、本発明において、平均重合度は、JIS K 6726(1994)に記載の平均重合度の算出方法にしたがって求めることができる。
【0021】
本発明において、PVA系樹脂[I]とは、PVA自体、または、例えば、各種変性種によって変性されたものを意味し、その変性度は、通常20モル%以下、好ましくは15モル%以下、更に好ましくは10モル%以下である。
【0022】
変性PVA系樹脂としては、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基をはじめとするアニオン性基で変性されたアニオン変性PVA系樹脂、4級アンモニウム基等のカチオン性基で変性されたカチオン変性PVA系樹脂、アセトアセチル基、ジアセトンアクリルアミド基、メルカプト基、シラノール基をはじめとする各種官能基等により変性された変性PVA系樹脂や、側鎖に1,2−ジオール構造単位を含有するPVA系樹脂等を挙げることができる。
【0023】
本発明におけるPVA系樹脂[I]としては、
下記一般式(1)で示される側鎖1,2−ジオール構造単位を含有するPVA系樹脂であることがアクリル酸エステル単量体を重合する際、分散安定性が優れる点で好まし
い。
【0024】
【化2】
【0025】
(式(1)中、R
1〜R
6はそれぞれ独立して水素原子又は有機基を表し、Xは単結合又は結合鎖を示す。)
【0026】
上記一般式(1)において、R
1〜R
6はそれぞれ独立して水素原子又は有機基を表す。R
1〜R
6は、すべて水素原子であることが望ましいが、樹脂特性を大幅に損なわない程度の量であれば有機基であってもよい。該有機基としては特に限定されないが、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、必要に応じてハロゲノ基、水酸基、エステル基、カルボン酸基、スルホン酸基等の置換基を有していてもよい。
【0027】
上記一般式(1)中、Xは単結合又は結合鎖であり、セット保持力、べたつきのなさ、毛髪とのなじみ等の点から、単結合であることが好ましい。上記結合鎖としては、特に限定しないが、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、フェニレン、ナフチレン等の炭化水素(これらの炭化水素は、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン等で置換されていてもよい)の他、−O−、−(CH
2O)
m−、−(OCH
2)
m−、−(CH
2O)
mCH
2−、−CO−、−COCO−、−CO(CH
2)
mCO−、−CO(C
6H
4)CO−、−S−、−CS−、−SO−、−SO
2−、−NR−、−CONR−、−NRCO−、−CSNR−、−NRCS−、−NRNR−、−HPO
4−、−Si(OR)
2−、−OSi(OR)
2−、−OSi(OR)
2O−、−Ti(OR)
2−、−OTi(OR)
2−、−OTi(OR)
2O−、−Al(OR)−、−OAl(OR)−、−OAl(OR)O−等が挙げられる(Rは各々独立して任意の置換基であり、水素原子、アルキル基が好ましく、またmは自然数である)。なかでも、製造時の粘度安定性や耐熱性等の点で、炭素数6以下のアルキレン基、特にメチレン基、あるいは−CH
2OCH
2−が好ましい。
【0028】
かかる式(1)で示される1,2−ジオール構造単位を含有するPVA系樹脂は、例えば、(I)酢酸ビニルと3,4−ジアセトキシ−1−ブテンとの共重合体をケン化する方法、(II)酢酸ビニルとビニルエチレンカーボネートとの共重合体をケン化及び脱炭酸する方法、(III)酢酸ビニルと2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソランとの共重合体をケン化及び脱ケタール化する方法、(IV)酢酸ビニルとグリセリンモノアリルエーテルとの共重合体をケン化する方法等により得られる。
【0029】
式(1)で示される1,2−ジオール構造単位を含有するPVA系樹脂中の1,2−ジオール構造単位の含有率は、1〜15モル%であることが好ましく、特に好ましくは1〜12モル%、更に好ましくは2〜10モル%、殊に好ましくは2〜9モル%である。
かかる1,2−ジオール構造単位の含有率が低すぎると、エマルジョンの機械安定性が低下する傾向があり、高すぎると重合時の安定性が低下し、不揮発分の高い安定なエマルジョンが得られにくくなる傾向がある。
【0030】
なお、PVA系樹脂中の側鎖1,2−ジオール単位の含有率は、PVAを完全にケン化したものの
1H−NMRスペクトル(溶媒:DMSO−d6、内部標準:テトラメチルシラン)から求めることができ、具体的には、1,2−ジオール単位中の水酸基プロトン、メチンプロトン、及びメチレンプロトン、主鎖のメチレンプロトン、主鎖に連結する水酸基のプロトンなどに由来するピーク面積から算出すればよい。
【0031】
また、式(1)で示される1,2−ジオール構造単位を含有するPVA系樹脂の平均ケン化度は、85モル%以上であることが好ましく、より好ましくは86.5〜99.8モル%、特に好ましくは95〜99モル%である。
かかるケン化度が小さすぎると、エマルジョンの重合時の安定性が低下して目的とするエマルジョンを得ることが困難になる傾向がある。
【0032】
さらに、式(1)で示される1,2−ジオール構造単位を含有するPVA系樹脂の平均重合度は、50〜3,000が好ましく、より好ましくは100〜2,500、さらに好ましくは200〜2,000、特に好ましくは200〜500である。
かかる平均重合度が小さすぎるとPVA系樹脂を工業的に製造することが困難となる傾向があり、大きすぎるとエマルジョンの粘度が高くなり過ぎたり、エマルジョンの重合安定性が低下する傾向がある。
【0033】
また、本発明では、PVA系樹脂[I]は、通常、水系媒体を用いて水溶液とし、これが乳化重合の過程において使用される。ここで水系媒体とは、水、または水を主体とするアルコール性溶媒をいい、好ましくは水のことをいう。
【0034】
この水溶液におけるPVA系樹脂[I]の量(不揮発分)については特に限定されないが、取り扱いの容易性の観点からは、5〜30重量%であることが望ましい。
【0035】
<アクリル系樹脂(A)>
本発明におけるアクリル系樹脂(A)は、(メタ)アクリル系モノマー(a1)を主成分として含有する単量体成分を重合してなるものである。
上記主成分とは単量体成分全体に対して、好ましくは40重量%以上、より好ましくは50重量%以上、特に好ましくは60重量%以上、更に好ましくは70重量%以上である。
【0036】
上記(メタ)アクリル系モノマー(a1)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の脂肪族系(メタ)アクリレート系モノマーや、フェノキシ(メタ)アクリレート等の芳香族系(メタ)アクリレート系モノマー、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル等が挙げられる。なお、これらは単独もしくは2種以上を併用して用いることができる。
これらの中でも、毛束感や再整髪の点で
、アルキル基の炭素数
が4〜12の脂肪族系(メタ)アクリレート系モノマー
が重要であり、殊に好ましくはn−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートである。また、2−エチルヘキシルアクリレートとメチルメタクリレートの併用や、n−ブチルアクリレートとメチルメタクリレートの併用も好適に用いることができる。
【0037】
また、上記(メタ)アクリル系モノマー(a1)に官能基含有モノマー(a2)を共重合させてもよく、官能基含有モノマー(a2)としては、例えば、分子構造中にビニル基を2個以上有するモノマー、グリシジル基含有モノマー、アリル基含有モノマー、加水分解性シリル基含有モノマー、アセトアセチル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー等が挙げられる。
これらの中でも、整髪性を落とさず水洗性が向上する点で、分子構造中にビニル基を2個以上有するモノマーまたは加水分解性シリル基含有モノマーを共重合することが好ましい。
【0038】
上記分子構造中にビニル基を2個以上有するモノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが、(メタ)アクリレート系モノマーとの共重合性のよい点で好ましい。
【0039】
上記グリシジル基含有モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アリルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0040】
上記アリル基含有モノマーとしては、例えば、トリアリルオキシエチレン、マレイン酸ジアリル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、テトラアリルオキシエタン等のアリル基を2個以上有するモノマー、アリルグリシジルエーテル、酢酸アリル等が挙げられる。
【0041】
上記加水分解性シリル基含有モノマーとしては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメトキシシラン等のビニル系シリル基含有モノマー;γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等の(メタ)アクリロキシ系シリル基含有モノマーが挙げられる。
これらの中でも、(メタ)アクリロキシ系シリル基含有モノマーが、(メタ)アクリレート系モノマー(a1)との共重合性に優れる点で好ましい。
【0042】
上記アセトアセチル基含有モノマーとしては、例えば、アセト酢酸ビニルエステル、アセト酢酸アリルエステル、ジアセト酢酸アリルエステル、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチルクロトナート、アセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシプロピルクロトナート、2−シアノアセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0043】
上記ヒドロキシル基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート等が挙げられ、乳化重合時における保護コロイド的作用および水洗性の観点から、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートが好ましい。
【0044】
上記カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、アクリル酸ダイマー、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、グルタコン酸、イタコン酸、アクリルアミドN−グリコール酸、ケイ皮酸等が挙げられ、これらの中でも、乳化重合時における保護コロイド的作用及び水洗性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
【0045】
上記官能基含有モノマー(a2)の含有割合としては、単量体成分全体に対して、0.01〜10重量%であることが好ましく、特に好ましくは0.05〜5重量%、更に好ましくは0.1〜3重量%である。
かかる含有割合が多すぎると、アクリル系樹脂が硬くなりすぎ十分な接着力が出ず整髪性が低下する傾向があり、少なすぎると水洗性の効果が分かりにくい傾向がある。
【0046】
また、官能基含有モノマー(a2)が、分子構造中にビニル基を2個以上有するモノマーである場合は、単量体成分全体に対して、0.01〜5重量%であることが好ましく、特に好ましくは0.05〜3重量%、更に好ましくは0.1〜1重量%である。
【0047】
また、その他本発明の効果を損なわない範囲において、少量のスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマーや; ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル等のビニルエステル系モノマーを使用してもよい。
【0048】
本発明によるアクリル系樹脂エマルジョンにおいては、上述の単量体成分以外に、必要に応じて他の成分をさらに用いることができる。このような他の成分としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、重合開始剤、重合調整剤、補助乳化剤、可塑剤等が挙げられる。
【0049】
上記重合開始剤としては、通常の乳化重合に使用できるものが使用でき、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物;有機過酸化物、アゾ系開始剤、過酸化水素、ブチルパーオキサイド等の過酸化物;および、これらと酸性亜硫酸ナトリウムやL−アスコルビン酸等の還元剤とを組み合わせたレドックス重合開始剤等が挙げられる。これらは、単独で、もしくは2種以上併せて用いることができる。
これらの中でも、重合が容易な点で、過硫酸アンモニウムや過硫酸カリウムが好ましい。
【0050】
上記重合調整剤としては、公知のものの中から適宜選択することができる。このような重合調整剤としては、例えば、連鎖移動剤、バッファー等が挙げられる。
【0051】
上記連鎖移動剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール;アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類;および、ドデシルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、ノルマルメルカプタン、チオグリコール酸、チオグリコール酸オクチル、チオグリセロール等のメルカプタン類等が挙げられる。これらは、単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。連鎖移動剤の使用は、重合を安定に行わせるという点で有効であり、アクリル系樹脂の重合度を調整するために使用することが望ましい。
【0052】
上記バッファーとしては、例えば、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、第二リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。これらは、単独で、もしくは2種以上併せて用いることができる。
【0053】
上記補助乳化剤としては、乳化重合に用いることができるものとして当業者に公知のものであれば、いずれのものでも使用可能である。したがって、補助乳化剤は、例えば、アニオン性、カチオン性、およびノニオン性の界面活性剤、PVA系樹脂[I]以外の保護コロイド能を有する水溶性高分子、および水溶性オリゴマー等の公知のものの中から、適宜選択することができる。
【0054】
上記界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのようなアニオン性界面活性剤、および、プルロニック型構造を有するものやポリオキシエチレン型構造を有するもの等のノニオン性界面活性剤が挙げられる。また、界面活性剤として、構造中にラジカル重合性不飽和結合を有する反応性界面活性剤を使用することもできる。これらは単独で、もしくは2種以上併せて用いることができる。
【0055】
上記界面活性剤の使用は、乳化重合をスムーズに進行させ、コントロールし易くしたり(乳化剤としての効果)、重合中に発生する粗粒子やブロック状物の発生を抑制する効果がある。ただし、これら界面活性剤を乳化剤として多く使用すると、グラフト率が低下する傾向がある。このため、界面活性剤を使用する場合には、その使用量はPVA系樹脂[I]に対して補助的な量であること、すなわち、できる限り少なくすることが望ましい。
【0056】
上記PVA系樹脂[I]以外の保護コロイド能を有する水溶性高分子としては、例えば、PVA系樹脂[I]以外のPVA系樹脂、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース等が挙げられる。これらは単独で、もしくは2種以上併せて用いられる。これらは、エマルジョンの増粘やエマルジョンの粒子径を変えて粘性を変化させる点で効果がある。
【0057】
上記水溶性オリゴマーとしては、例えば、スルホン酸基、カルボキシル基、水酸基、アルキレングリコール基等の親水性基を有する重合度が好ましく、中でも10〜500程度の重合体または共重合体が好適に挙げられる。水溶性オリゴマーの具体例としては、例えば、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体等のアミド系共重合体、メタクリル酸ナトリウム−4−スチレンスルホネート共重合体、スチレン/マレイン酸共重合体、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ポリ(メタ)アクリル酸塩等が挙げられる。さらに、具体例としては、スルホン酸基、カルボキシル基、水酸基、アルキレングリコール基等を有するモノマーやラジカル重合性の反応性乳化剤を予め単独または他のモノマーと共重合してなる水溶性オリゴマー等も挙げられる。これらは単独で、もしくは2種以上併せて用いられる。
【0058】
上記可塑剤としては、アジペート系可塑剤、フタル酸系可塑剤、リン酸系可塑剤等が使用できる。
【0059】
これら他の成分の使用量は、本発明の効果を損なわない範囲で、目的に応じて適宜選択することができる。
【0060】
<アクリル系樹脂エマルジョンの製造方法>
つぎに、本発明のアクリル系樹脂エマルジョンの製造方法について説明する。
【0061】
本発明のアクリル系樹脂エマルジョンは、例えば、PVA系樹脂[I]を分散安定化剤として用い、上述の単量体成分を乳化重合することによって製造することができる。この重合過程において、PVA系樹脂[I]を分散安定化剤として、分散安定化されたアクリル系樹脂(A)を分散質とするアクリル系樹脂エマルジョンが製造される。
【0062】
本発明において、PVA系樹脂[I]の使用量は、アクリル系樹脂(A)を構成する単量体成分全体100重量部に対して、0.01〜40重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.1〜30重量部、更に好ましくは0.5〜20重量部である。
かかるPVA系樹脂[I]の使用量が少なすぎると、乳化重合の際の保護コロイド量が不足することとなって、重合安定性が低下する傾向があり、使用量が多すぎると、アクリル系樹脂エマルジョンの粘度が高まり安定性が低下する傾向がある。
【0063】
ここで、用いられたPVA系樹脂[I]は、通常、重合により形成されるアクリル系樹脂エマルジョン中に全量が存在することとなる。
【0064】
通常、乳化重合は、PVA系樹脂[I]及び前記単量体成分以外に、重合開始剤、重合調整剤、補助乳化剤等のような前記した他の成分を必要に応じて用いて実施する。また、重合の反応条件は、モノマーの種類、目的等に応じて適宜選択することができる。
【0065】
乳化重合の方法としては、例えば、反応缶に、水、PVA系樹脂[I]を仕込み、昇温して単量体成分と重合開始剤を滴下するモノマー滴下式乳化重合法;および、滴下する単量体成分の混合モノマーを予めPVA系樹脂[I]及び/またはPVA系樹脂[I]以外の保護コロイド能を有する水溶性高分子と水とで分散・乳化させた後、その分散・乳化モノマーを滴下する乳化モノマー滴下式乳化重合法等が挙げられるが、疎水性モノマー使用時の反応性や、重合工程の管理やコントロール性等の面で乳化モノマー滴下式重合方法が有利である。
また、エマルジョンの安定性付与や、水溶性及び/または水への再分散性付与のため、重合反応終了時にPVA系樹脂[I]及び/またはPVA系樹脂[I]以外の保護コロイド能を有する水溶性高分子を後添加することも可能である。
【0066】
乳化重合過程をさらに具体的に説明にすると、以下のとおりである。
【0067】
上記モノマー滴下式乳化重合では、例えば、まず、反応缶に水、PVA系樹脂[I]、必要に応じて補助乳化剤を仕込み、これを昇温(通常40〜90℃)した後、単量体成分の一部と重合開始剤をこの反応缶に添加して、初期重合を実施する。次いで、残りの単量体成分を、一括または滴下しながら反応缶に添加し、必要に応じてさらに重合開始剤を添加しながら重合を進行させる。重合反応が完了したと判断されたところで、反応缶を冷却し、目的とするアクリル系樹脂エマルジョンを取り出すことができる。
【0068】
また、上記乳化モノマー滴下式乳化重合法では、例えば、まず、反応缶に水、必要に応じてPVA系樹脂[I]、補助乳化剤を仕込み、これを昇温(通常40〜90℃)した後、PVA系樹脂[I]及び/またはPVA系樹脂[I]以外の保護コロイド能を有する水溶性高分子、必要に応じて補助乳化剤と水で乳化・分散された単量体成分の一部と重合開始剤をこの反応缶に添加して、初期重合を実施する。次いで、残りの単量体成分を、一括または滴下しながら反応缶に添加し、必要に応じてさらに重合開始剤を添加しながら重合を進行させる。重合反応が完了したと判断されたところで、反応缶を冷却し、目的とするアクリル系樹脂エマルジョンを取り出すことができる。
【0069】
また、上記、初期重合を実施せず、単量体成分の全量と重合開始剤を滴下しながら反応缶に添加する方法でも実施できる。また、上記、反応温度が70℃未満の場合は還元剤を併用するレドックス重合反応系とすることがスムーズに反応が進行する点で好ましい。
【0070】
本発明において、乳化重合により得られるアクリル系樹脂エマルジョンは、典型的には、均一な乳白色であって、アクリル系樹脂エマルジョン中のアクリル系樹脂(A)の平均粒子径は、0.2〜2μmであることが好ましく、より好ましくは0.3〜1.5μmである。
【0071】
なお、ここで、平均粒子径は、慣用の方法、例えばレーザー解析/散乱式粒度分布測定装置「LA−950S2」(株式会社堀場製作所製)により測定することができる。
【0072】
アクリル系樹脂エマルジョン中のアクリル系樹脂(A)は、そのガラス転移温度が
−80〜0℃である。
かかるガラス転移温度が高すぎるとアクリル系樹脂が硬くなり乾くと脆くなり、再整髪性能が低下する傾向がある。
また、ガラス転移温度は低ければ低いほど、ポリマーに粘着性が出るため再整髪性が良好となる傾向があり好ましいが、下限値として
は−80℃、好ましくは−70℃である。
なお、PVA系樹脂[I]の含有比率が多い場合ほど、アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度が低い方が再整髪性の点で好ましい。
【0073】
本発明におけるアクリル系樹脂(A)のガラス転移温度は、アクリル系樹脂を構成する各重合成分からなるホモポリマーのガラス転移温度をFoxの式により算出して求められる値であり、アクリル系樹脂(A)を構成する各重合成分の重量比を適宜調整することによって、調整することができる。なお、官能基含有モノマーを併用する場合においては、かかる官能基含有モノマーを除いた主要単量体成分に基づきFoxの式により計算されることもある。
【0074】
さらに、本発明においては、PVA系樹脂[I]の少なくとも一部が、前記アクリル系樹脂(A)にグラフトしていることが、得られる乾燥前のアクリル系樹脂エマルジョン自体の貯蔵安定性や接着強度測定における測定値のばらつきが少なくなること等の点で好ましい。
【0075】
PVA系樹脂[I]が前記アクリル系樹脂(A)にグラフトした場合に、下記式(2)で表される値(W)が90重量%以下であることが好ましく、より好ましくは85重量%以下であり、さらに好ましくは80重量%以下である。なお、下限としては、通常、1重量%、好ましくは5重量%、さらに好ましくは10重量%である。かかる値は、グラフト化程度の目安になるものであり、この値が低すぎると、グラフト化の程度が低く、乳化重合時の保護コロイド作用が低下し、重合安定性が低下する等の傾向があり、高すぎると、高濃度で安定なエマルジョンが生成しにくくなる傾向がある。
【0076】
式(2)の値(W)は、以下のようにして算出される。
すなわち、対象となるエマルジョン等を室温乾燥して被膜を作製し、その被膜を沸騰水中およびアセトン中でそれぞれ8時間抽出して、グラフト化していない樹脂等を除去する。この場合の、抽出前の被膜絶乾重量をw
1(g)、抽出後の被膜絶乾重量をw
2(g)とし、下記の式(2)より求める。
【0077】
W(重量%)=(w
2)/(w
1)×100 …(2)
【0078】
上記式(2)の値(W)を調整する方法としては、乳化重合温度を変更したり(高くすると(W)は高く、低くすると(W)は低くなる)、重合用触媒として使用する過硫酸塩などに極微量の還元剤(例えば、酸性亜硫酸ナトリウム等)を併用したりする方法((W)は高くなる)等が挙げられる。
【0079】
本発明においては、乳化重合後のアクリル系樹脂エマルジョンに、必要に応じて各種添加剤をさらに加えてもよい。このような添加剤としては、例えば、有機顔料、無機顔料、水溶性添加剤、pH調整剤、防腐剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0080】
このようにして、本発明のアクリル系樹脂エマルジョンが得られ、その使用に際しては、不揮発分として通常0.1〜65重量%に調整することが好ましい。
また、かかるアクリル系樹脂エマルジョンを整髪剤として使用する際に、他の配合成分(後述の樹脂や添加物)と併用する場合には、不揮発分は通常30〜60重量%とすることが、他の樹脂や添加物の使用が制限されにくい点で好ましい。
なお、かかるアクリル系樹脂エマルジョンを整髪剤として単独で使用する場合は、不揮発分を通常1〜10重量%とすることが、髪に対して均一に塗布しやすい点で好ましい。
【0081】
かくして本発明のアクリル系樹脂エマルジョンが得られるものである。かかるアクリル系樹脂エマルジョンは整髪剤用途に用いられるものであり、該エマルジョンを用いた整髪剤は所望の性能を発揮するものである。
【0082】
本発明の整髪剤は、アクリル系樹脂エマルジョンを単独で用いたものであってもよいし、アクリル系樹脂エマルジョンと各種配合剤とを併用したものであってもよい。
【0083】
本発明の整髪剤において、本発明の整髪剤用アクリル系樹脂エマルジョンは、整髪剤中1重量%以上(固形分換算)含有するのが好ましく、より好ましくは3重量%以上(固形分換算)であり、さらに好ましくは5重量%以上(固形分換算)である。なお、上限としては、通常、70重量%(固形分換算)、好ましくは60重量%(固形分換算)、さらに好ましくは50重量%(固形分換算)である。本発明の整髪剤用アクリル系樹脂エマルジョンが少なすぎると整髪力が低下する傾向があり、また多くなりすぎると洗浄性が低下しやすくなる傾向がある
【0084】
本発明の整髪剤では、上記アクリル系樹脂エマルジョンに、公知一般の整髪剤で用いられる種々の配合成分、例えば、油剤、多価アルコール、低級アルコール、界面活性剤、紫外線吸収剤、香料、酸化防止剤、保湿剤、清涼剤、ビタミン類、植物抽出物などを目的に応じて適宜配合して、製造することができる。
【0085】
上記油剤としては、例えば、ヒマワリ油、綿実油、大豆油、オリーブ油、ヤシ油、ヒマシ油、ホホバ油、椿油、ミンク油等の油脂;ミツロウ、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、コメヌカロウ、セラックロウ、鯨ロウ、ラノリン等のロウ類;セレシン、パラフィンワックス、流動パラフィン、流動イソパラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレン末、ポリエチレンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、ワセリン、スクワラン等の炭化水素油;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、2−エチルブタン酸、イソペンタン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルペンタン酸、イソステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等の高級脂肪酸;ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ラノリンアルコール、ベヘニルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール;オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、オレイン酸オレイル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸エチル、イソステアリン酸イソプロピル、2−エチルヘキサン酸セチル、2−エチルヘキサン酸セトステアリル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、オクタン酸イソセチル、オクタン酸イソステアリル、イソステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸オクチルドデシル、ジメチルオクタン酸オクチルドデシル等の脂肪酸エステル油;メチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、アルコール変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン等のシリコーン油などを挙げることができる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0086】
かかる油剤の含有量は、通常、乳化の観点から、整髪剤全量中に、0.5〜50重量%であることが好ましく、特に好ましくは1〜40重量%である。また、整髪料の油っぽさやべたつき感低減の観点からは、できるだけ少ない含有量とすることが好ましいが、本発明のアクリル系樹脂エマルジョンを用いることで、油剤の使用量は低減または不使用とすることができる。
【0087】
上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、イソプレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−デカンジオールなどを例示することができる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0088】
かかる多価アルコールの含有量は、使用感の観点から、整髪剤全量中に、0.1〜20重量%であることが好ましく、特に好ましくは0.5〜15重量%である。
【0089】
本発明の整髪剤用アクリル系樹脂エマルジョンは、例えば、アクリル系樹脂エマルジョンを水、多価アルコール、低級アルコール等で希釈して液状タイプの整髪料として使用したり、アクリル系樹脂エマルジョンに、上記油分を界面活性剤と水で乳化分散したものを配合して粘チョウ液タイプまたはクリーム状タイプの整髪剤として使用したりすることができるものである。
【0090】
本発明の整髪剤用アクリル系樹脂エマルジョンを含有した整髪剤を用いて、例えば以下のように整髪することができる。ポリビニルアルコール系樹脂[I]により分散安定化されたアクリル系樹脂(A)を含有する、本発明の整髪剤用アクリル系樹脂エマルジョンを、有効整髪量分毛髪に塗布し、整髪剤用アクリル系樹脂エマルジョンの塗布中またはその前後に、毛髪を所望の形状に整える。このように整髪することにより、容易に所望の髪形を形成することができる。
【実施例】
【0091】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
【0092】
まず、下記のようにして各種アクリル系樹脂エマルジョンを調製した。なお、アクリル系樹脂エマルジョンの不揮発分、粘度については下記の方法により、ガラス転移温度の測定に関しては、前述の方法にしたがって測定した。
【0093】
<不揮発分>
JIS R 3503(1994)に規定する平形はかり瓶50mm×30mmと同底面積に成形したアルミニウム箔の皿の容器に、試料1gを塗り広げ、正確に量る。容器を恒温槽の中心に置き、105℃±2℃で60±5分間乾燥した後、デシケーター中で放冷し、その重量を量る。
そして、次の式によって算出した。
N=(Wd/Ws)×100
(ここで、Nは不揮発分(%)、Wdは乾燥後の試料の重量(g)、Wsは乾燥前の試料の重量(g)である。)
【0094】
<粘度>
ブルックフィールド形粘度計(例えば、(株)東京計器製、BL型粘度計)にて測定する。試料約500mlを気泡が混入しないように試料容器に入れ、試料の液面が恒温浴槽の伝熱媒体の液面より低くなるよう試料容器を保持する。必要に応じてガラス棒でかき混ぜ、試料温度が23±1℃で測定する。
粘度は、次の式によって算出した(有効数字2桁)。
η=Kn×θ
(ここで、ηは粘度(mPa・s)、Knは粘度計に添付されている換算乗数、θは2回の測定の粘度計指示値の平均である)。
【0095】
<実施例1:アクリル系樹脂エマルジョン(1)の製造>
冷却管と攪拌翼を供えたSUS製反応缶に、脱イオン水(92部)に側鎖に1,2−ジオール構造単位を含有するPVA系樹脂(平均ケン化度99モル%、平均重合度300、側鎖の1,2−ジオール構造単位の含有量8モル%/日本合成化学工業株式会社製)10部と亜硫酸水素ナトリウム0.2部と炭酸ナトリウム・三水0.4部とを完全に溶解し、75℃に昇温した。
あらかじめ脱イオン水77部、未変性PVA系樹脂(日本合成化学工業株式会社製;商品名「ゴーセノールGL05」)5部、2−エチルヘキシルアクリレート100部を乳化したもの(i)と、10%APS(過硫酸アンモニウム)水溶液2.7部(ii)とを準備し、反応缶に、まず(i)の10%と(ii)の30%を添加し、45分間反応させた。
次に(i)の残りの90%と(ii)の60%を3.5時間かけて滴下し、75〜78℃で重合させた。
滴下終了後、(ii)の5%を添加し、1.5時間その温度を保持し、さらに(ii)の5%を添加して1.5時間その温度を保持した。
その後冷却してアクリル系樹脂エマルジョン(1)(不揮発分46%;粘度125mPa・s(B型粘度計12rpm、23℃);アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)=−70℃)を得た。アクリル系樹脂エマルジョン(1)は分散安定化されていた。
【0096】
<実施例2:アクリル系樹脂エマルジョン(2)の製造>
実施例1において、2−エチルヘキシルアクリレート100部を、2−エチルヘキシルアクリレート90部とメチルメタクリレート10部とに変更し、更に未変性PVA系樹脂として「ゴーセノールGL05」(商品名、日本合成化学工業株式会社製)を日本合成化学工業株式会社製;商品名「ゴーセノールEG05」に変更した以外は実施例1と同様にして、アクリル系樹脂エマルジョン(2)(不揮発分43%;粘度160mPa・s(B型粘度計12rpm、23℃);アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)=−60℃)を得た。アクリル系樹脂エマルジョン(2)は分散安定化されていた。
【0097】
<実施例3:アクリル系樹脂エマルジョン(3)の製造>
実施例2において、アクリルモノマーとして、さらにエチレングリコールジメタクリレート(三菱レイヨン社製;商品名「アクリエステルED」)の0.3部を追加した以外は実施例2と同様にして、アクリル系樹脂エマルジョン(3)(不揮発分44%;粘度210mPa・s(B型粘度計12rpm、23℃);アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)=−60℃)を得た。アクリル系樹脂エマルジョン(3)は分散安定化されていた。
【0098】
<実施例4:アクリル系樹脂エマルジョン(4)の製造>
実施例1において、2−エチルヘキシルアクリレート100部を、2−エチルヘキシルアクリレート75部とメチルメタクリレート25部とに変更し、更に未変性PVA系樹脂として「ゴーセノールGL05」(商品名、日本合成化学工業株式会社製)を日本合成化学工業株式会社製;商品名「ゴーセノールEG05」に変更した以外は実施例1と同様にして、アクリル系樹脂エマルジョン(4)(不揮発分46%;粘度540mPa・s(B型粘度計12rpm、23℃);アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)=−43℃)を得た。アクリル系樹脂エマルジョン(4)は分散安定化されていた。
【0099】
<実施例5:アクリル系樹脂エマルジョン(5)の製造>
実施例4において、アクリルモノマーとして、アクリエステルED(エチレングリコールジメタクリレート)の0.2部を追加した以外は実施例4と同様にして、アクリル系樹脂エマルジョン(5)(不揮発分43%;粘度420mPa・s(B型粘度計12rpm、23℃);アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)=−43℃)を得た。アクリル系樹脂エマルジョン(5)は分散安定化されていた。
【0100】
<実施例6:アクリル系樹脂エマルジョン(6)の製造>
実施例1において、2−エチルヘキシルアクリレート100部を、2−エチルヘキシルアクリレート60部とメチルメタクリレート40部とに変更し、更に未変性PVA系樹脂として「ゴーセノールGL05」(商品名、日本合成化学工業株式会社製)を日本合成化学工業株式会社製;商品名「ゴーセノールEG05」に変更した以外は実施例1と同様にして、アクリル系樹脂エマルジョン(6)(不揮発分44%;粘度470mPa・s(B型粘度計12rpm、23℃);アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)=−24℃)を得た。アクリル系樹脂エマルジョン(6)は分散安定化されていた。
【0101】
<
参考例1:アクリル系樹脂エマルジョン(7)の製造>
冷却管と攪拌翼を供えたSUS製反応缶に、脱イオン水92部と亜硫酸水素ナトリウム0.2部と炭酸ナトリウム・三水0.4部とを完全に溶解し、75℃に昇温した。
あらかじめ脱イオン水77部と側鎖に1,2−ジオール構造単位を含有するPVA系樹脂(平均ケン化度89モル%、平均重合度340、側鎖の1,2−ジオール結合の含有量3モル%/日本合成化学工業株式会社製)4部とn−ブチルアクリレート55部とメチルメタクリレート45部とを乳化したもの(i)と、10%APS水溶液2.7部(ii)とを準備し、反応缶に、まず(i)の10%と(ii)の30%を添加し、45分間反応させた。次に(i)の残りの90%と(ii)の60%を3.5時間かけて滴下し、75〜78℃で重合させた。滴下終了後、(ii)の5%を添加し、1.5時間その温度を保持し、さらに(ii)の5%を添加して1.5時間その温度を保持した。
その後冷却してアクリル系樹脂エマルジョン(7)(不揮発分45%;粘度600mPa・s(B型粘度計12rpm、23℃);アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)=3℃)を得た。アクリル系樹脂エマルジョン(7)は分散安定化されていた。
【0102】
<
参考例2:アクリル系樹脂エマルジョン(8)の製造>
冷却管と攪拌翼を供えたSUS製反応缶に、脱イオン水169部と側鎖に1,2−ジオール構造単位を含有するPVA系樹脂(平均ケン化度99モル%、平均重合度300、側鎖の1,2−ジオール結合の含有量8モル%/日本合成化学工業株式会社製)7部と亜硫酸水素ナトリウム0.2部と炭酸ナトリウム・三水0.4部とを完全に溶解し、75℃に昇温した。n−ブチルアクリレート54.7部とメチルメタクリレート44.8部と2−アセトセトキシエチルメタクリレート0.5部を混合したもの(i)と、10%APS水溶液2.7部(ii)とを準備し、反応缶に、(i)の100%と(ii)の90%とを4.5時間かけて滴下し、75〜78℃で重合させた。滴下終了後、(ii)の5%を添加し、1.5時間その温度を保持し、さらに(ii)の5%を添加して1.5時間その温度を保持した。
その後冷却してアクリル系樹脂エマルジョン(8)(不揮発分45%;粘度500mPa・s(B型粘度計12rpm、23℃);アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)=9℃)を得た。アクリル系樹脂エマルジョン(8)は分散安定化されていた。
【0103】
<実施例
7:アクリル系樹脂エマルジョン(9)の製造>
実施例4において、モノマー成分としてKBM503(γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)の0.05部を追加した以外は実施例4と同様にして、アクリル系樹脂エマルジョン(9)(不揮発分44%;粘度550mPa・s(B型粘度計12rpm、23℃);アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)=−43℃)を得た。アクリル系樹脂エマルジョン(9)は分散安定化されていた。
【0104】
<実施例
8:アクリル系樹脂エマルジョン(10)の製造>
実施例1で得られたアクリル系樹脂エマルジョン(1)100部に対し、未変性PVA系樹脂(日本合成化学工業株式会社製;商品名「ゴーセノールGL05」)の20%水溶液10部を追加して、アクリル系樹脂エマルジョン(10)(不揮発分44%;粘度140mPa・s(B型粘度計12rpm、23℃);アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)=−70℃)を得た。アクリル系樹脂エマルジョン(10)は分散安定化されていた。
【0105】
<比較例1>
側鎖に1,2−ジオール構造単位を含有するPVA系樹脂(平均ケン化度99モル%、平均重合度300、側鎖の1,2−ジオール結合の含有量8モル%/日本合成化学工業株式会社製)を脱イオン水を用いて希釈し、不揮発分45%、および3%PVA系樹脂溶液を製造した。比較例1のPVA系樹脂溶液の状態は分散安定化されていた。
【0106】
<比較例2>
アニオン型界面活性剤のみを使用して乳化重合し製造されたアクリル系樹脂エマルジョン(日本合成化学工業株式会社製、商品名「コーポニールWU−6406」;不揮発分56%;粘度1200mPa・s;アクリル系樹脂のガラス転移温度−68℃)を、脱イオン水を用いて希釈し、不揮発分45%、および3%のアクリル系樹脂エマルジョンを製造した。比較例2のアクリル系樹脂エマルジョンの状態は分散安定化されていた。
【0107】
<整髪剤試験溶液(A)の製造>
上記実施例1〜
8および参考例1〜2については、アクリル系樹脂エマルジョン(1)〜(10)を、それぞれ不揮発分が3%になるように脱イオン水を用いて希釈し、整髪剤試験溶液(A)とした。
上記、比較例1および2については、不揮発分3%のものを使用し、整髪剤試験溶液(A)とした。
【0108】
上記整髪剤試験溶液(A)を用いて、下記の通り整髪性能(セット力)、再整髪性能(再セット力)、触感性を評価した。
【0109】
<整髪性能(セット力)>
毛束(長さ20cm×重さ1.2g;毛束屋)に上記整髪剤試験溶液(A)0.5gをスポイトで均一に塗布し、さらにビニル手袋をつけた指でさらに均一になじませ塗布した。束の幅が約1cmとなるように指で整え、送風乾燥機にて100℃×1分乾燥させた後、束ねている方を下に向け毛先を真上から約45°の角度で手に持ち、毛束が固着されているかどうかの官能評価を行った。評価方法は以下のとおりである。
(評価基準)
○…少し振ってもまとまったまま整髪されている
△…少し振ると毛先がやや広がる
×…まとまっていない、または少し振ると毛先がバラける
なお、上記評価において、「○」は性能が優れ、「△」は実用上許容される。また、「×」は性能に劣るものである。
【0110】
<再整髪性能(再セット力)>
上記整髪力評価を行なった後の毛束を指でほぐし、さらに櫛でばらけさせた後、再び指で毛束を作ったときの毛束状態を官能評価した。評価方法は以下のとおりである。
(評価基準)
○…再び毛束がまとまる(整髪される)
△…まとまるが、毛束がやや広がる
×…毛束とならず整髪されない
なお、上記評価において、「○」は性能が優れ、「△」は実用上許容される。また、「×」は性能に劣るものである。
【0111】
<触感性>
上記の再整髪性能評価時の髪のまとまり感について、指での手触り感を評価した。評価方法は以下のとおりである。
(評価基準)
○…しっとりなめらかである
△…ややパサパサしている
×…かなりパサパサしている
なお、上記評価において、「○」は性能が優れ、「△」は実用上許容される。また、「×」は性能に劣るものである。
【0112】
<整髪剤試験溶液(B)の製造>
上記実施例1〜
8および参考例1〜2については、アクリル系樹脂エマルジョン(1)〜(10)をそのまま用いて、上記比較例1および2については、不揮発分45%のものを用いて、それぞれ整髪剤試験溶液(B)とした。
【0113】
<被洗浄性能>
上記整髪剤試験溶液(B)を50μm厚のPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムに40μmアプリケーターで塗布し、100℃で5分乾燥させ、厚み約15μm(乾燥時)の塗膜を得た。塗膜の上に、脱イオン水をスポイトで1滴たらし、指で約1cmの直径の円を描くよう軽く10回(10周)こすり、パルプ製ウエス(日本製紙クレシア株式会社製、「キムワイプ」(登録商標))でふき取った後の、塗膜上の整髪剤溶液の洗浄度合いを目視で評価した。評価方法は以下のとおりである。
(評価基準)
○…70%以上100%ふき取れた
△…20%以上70%未満ふき取れた
×…0以上20%未満ふき取れた
なお、上記評価において、「○」は性能が優れ、「△」は実用上許容される。また、「×」は性能に劣るものである。
【0114】
【表1】
【0115】
上記実施例1〜
8より、本発明のPVA系樹脂により分散安定化されたアクリル系樹脂エマルジョンを用いた整髪剤では、スタイリング性能(整髪性能、再整髪性能、触感性)と被洗浄性能にバランスよく優れるものであることがわかる。
【0116】
一方、PVA系樹脂を水溶液として用いた比較例1では、整髪性能や被洗浄性能は良好なものの、再整髪性や触感性に劣るものであることがわかる。
また、非PVA系の界面活性剤を使用して得られたアクリル系樹脂エマルジョンを用いた比較例2では、整髪性能や再整髪性能、触感性は良好なものの、被洗浄性能が不良であり、整髪剤としては実用上、支障のあるレベルであることがわかる。