(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6403400
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】排風発電装置
(51)【国際特許分類】
F03D 3/04 20060101AFI20181001BHJP
F03D 9/00 20160101ALI20181001BHJP
F03D 9/34 20160101ALI20181001BHJP
F03D 15/00 20160101ALI20181001BHJP
F03D 80/00 20160101ALI20181001BHJP
【FI】
F03D3/04 Z
F03D9/00
F03D9/34
F03D15/00
F03D80/00
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-41898(P2014-41898)
(22)【出願日】2014年3月4日
(65)【公開番号】特開2014-196738(P2014-196738A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2017年1月31日
(31)【優先権主張番号】特願2013-41891(P2013-41891)
(32)【優先日】2013年3月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503114792
【氏名又は名称】日新技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】特許業務法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】山元 賢一
【審査官】
原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−178610(JP,A)
【文献】
英国特許出願公開第02413829(GB,A)
【文献】
特開昭51−041150(JP,A)
【文献】
特開2003−120506(JP,A)
【文献】
特開2004−011599(JP,A)
【文献】
実開昭57−006362(JP,U)
【文献】
特開昭57−052794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 3/04
F03D 9/00
F03D 9/34
F03D 15/00
F03D 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、前記ケーシング内に回転可能に配置された翼車と、前記翼車の回転により駆動される発電機とを備え、前記ケーシング内に排風が導入されることにより前記翼車が回転して発電する排風発電装置であって、
前記ケーシングは、前記翼車が収容される収容部と、前記収容部に排風を導入する導入部と、前記収容部から排風を排出する排出部とを備え、
前記導入部および前記排出部は、いずれも流路断面が矩形状に形成され、それぞれの開口中心線が、前記翼車の回転軸に垂直な断面において互いに直交しており、
前記翼車は、湾曲した複数の翼部材が円筒状を構成するように周方向に間隔をあけて配置されたクロスフロー型であり、
前記排出部は、前記翼車の回転軸と平行な一対の内壁のうち、前記翼車の回転方向下流側の内壁を前記排出部の上流側に向けて凸となるように湾曲させる一方、前記翼車の回転方向上流側の内壁を断面直線状として前記翼車の接線方向に延びるように形成することで、流路が流れ方向に沿って徐々に拡がるように、内壁面における前記翼車の回転方向下流側を外方に膨出させた膨出部を備える排風発電装置。
【請求項2】
前記導入部は、前記収容部に向けて先細に形成されている請求項1に記載の排風発電装置。
【請求項3】
前記収容部は、内壁面と前記翼部材の先端とのクリアランスが、前記排出部から前記導入部までの前記翼車の回転方向に沿った全体にわたって、翼車半径の0.005〜0.05倍に設定されている請求項1または2に記載の排風発電装置。
【請求項4】
一端側が前記導入部に接続され、他端側が排風設備に接続可能な給気ダクトと、
一端側が前記排出部に接続され、他端側が大気に開放される排気ダクトと、
前記給気ダクトと前記排気ダクトとを前記収容部を迂回するように接続し、ダンパの操作により排風流路を切り替え可能なバイパスダクトとを更に備える請求項1から3のいずれかに記載の排風発電装置。
【請求項5】
ケーシングと、前記ケーシング内に回転可能に配置された翼車と、前記翼車の回転により駆動される発電機とを備え、前記ケーシング内に排風が導入されることにより前記翼車が回転して発電する排風発電装置であって、
前記ケーシングは、前記翼車が収容される収容部と、前記収容部に排風を導入する導入部と、前記収容部から排風を排出する排出部とを備え、
前記翼車は、湾曲した複数の翼部材が円筒状を構成するように周方向に間隔をあけて配置されており、
前記排出部は、流路が流れ方向に沿って徐々に拡がるように、内壁面における前記翼車の回転方向下流側を外方に膨出させた膨出部を備え、
前記翼車と前記発電機との間に可変駆動装置が介在され、
前記可変駆動装置は、駆動側プーリと、従動側プーリと、前記駆動側プーリおよび従動側プーリの間で動力を伝達するベルト部材とを備えており、
前記駆動側プーリは、前記翼車の回転軸に固定された固定プーリと、前記翼車の回転軸に沿って移動可能に支持された可動プーリとの間に前記ベルト部材が係合され、前記翼車の回転軸に固定された保持部材と前記可動プーリとの間に保持された錘部材に遠心力が作用することにより、前記可動プーリが前記錘部材に押圧されて移動し、前記ベルト部材のベルト径を大きくするように構成されており、
前記従動側プーリは、前記発電機の回転軸に固定された固定プーリと、前記発電機の回転軸に沿って移動可能に支持された可動プーリとの間に前記ベルト部材が係合され、前記駆動側プーリにおける前記ベルト部材のベルト径が大きくなると、前記ベルト部材の張力によって、前記発電機の回転軸に固定された保持部材と前記可動プーリとの間に介在されたばね部材の付勢力に抗して前記可動プーリが移動し、前記ベルト部材のベルト径を小さくするように構成されている排風発電装置。
【請求項6】
ケーシングと、前記ケーシング内に回転可能に配置された翼車と、前記翼車の回転により駆動される発電機とを備え、前記ケーシング内に排風が導入されることにより前記翼車が回転して発電する排風発電装置であって、
前記ケーシングは、前記翼車が収容される収容部と、前記収容部に排風を導入する導入部と、前記収容部から排風を排出する排出部とを備え、
前記翼車は、湾曲した複数の翼部材が円筒状を構成するように周方向に間隔をあけて配置されており、
前記排出部は、流路が流れ方向に沿って徐々に拡がるように、内壁面における前記翼車の回転方向下流側を外方に膨出させた膨出部を備え、
前記排出部は、前記膨出部の下流側に熱サイフォンユニットを備え、
前記熱サイフォンユニットは、ケーシングの内部が伝熱仕切板により仕切られて作動室および冷却室が形成されおり、
前記作動室は、内部に封入された作動流体が前記排出部を通過する排風により加熱されるように、前記排出部内に配置されており、
前記冷却室は、前記排出部の外部に配置され、前記伝熱仕切板を介して前記作動流体から伝熱される被加熱流体が通過する排風発電装置。
【請求項7】
前記熱サイフォンユニットは、鉛直方向に延びる前記排出部の内部に複数設けられ、互いに間隔をあけて平行に配置される請求項6に記載の排風発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビルや工場などの排風を利用して発電を行う排風発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、クリーンエネルギーである風力発電が普及しつつあるが、自然風を利用する場合には気象条件の影響を大きく受けるため、安定した発電が困難である。そこで、自然風ではなく、ビルや工場などから排出される排風を利用した排風発電が、従来から検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示された電力回収装置は、集塵装置が備える排風機の排風口に増速用ダクトを設け、増速用ダクトから翼車に排風を噴射して翼車を回転させることにより、翼車主軸に連結された発電機で発電するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−178610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記従来の電力回収装置は、インペラの周囲に間隙を形成する構成であるため、この間隙が大きくなるとインペラの回転効率が低下する一方、この間隙を小さくすると排気圧力が高まって排風機の負荷が大きくなるおそれがあり、排風機の余分な電力消費が発生するという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、排風を利用した発電を効率良く行うことができる排風発電装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の前記目的は、ケーシングと、前記ケーシング内に回転可能に配置された翼車と、前記翼車の回転により駆動される発電機とを備え、前記ケーシング内に排風が導入されることにより前記翼車が回転して発電する排風発電装置であって、 前記ケーシングは、前記翼車が収容される収容部と、前記収容部に排風を導入する導入部と、前記収容部から排風を排出する排出部とを備え、
前記導入部および前記排出部は、いずれも流路断面が矩形状に形成され、それぞれの開口中心線が、前記翼車の回転軸に垂直な断面において互いに直交しており、 前記翼車は、湾曲した複数の翼部材が円筒状を構成するように周方向に間隔をあけて配置され
たクロスフロー型であり、前記排出部は、
前記翼車の回転軸と平行な一対の内壁のうち、前記翼車の回転方向下流側の内壁を前記排出部の上流側に向けて凸となるように湾曲させる一方、前記翼車の回転方向上流側の内壁を断面直線状として前記翼車の接線方向に延びるように形成することで、流路が流れ方向に沿って徐々に拡がるように、内壁面における前記翼車の回転方向下流側を外方に膨出させた膨出部を備える排風発電装置により達成される。
【0008】
この排風発電装置において、前記導入部は、前記収容部に向けて先細に形成されていることが好まし
い。また、前記収容部は、内壁面と前記翼部材の先端とのクリアランスが、前記排出部から前記導入部までの前記翼車の回転方向に沿った全体にわたって、翼車半径の0.005〜0.05倍に設定されていることが好ましい。
【0009】
また、この排風発電装置は、一端側が前記導入部に接続され、他端側が排風設備に接続可能な給気ダクトと、一端側が前記排出部に接続され、他端側が大気に開放される排気ダクトと、前記給気ダクトと前記排気ダクトとを前記収容部を迂回するように接続し、ダンパの操作により排風流路を切り替え可能なバイパスダクトとを更に備えることができる。
【0010】
本発明の排風発電装置は、
ケーシングと、前記ケーシング内に回転可能に配置された翼車と、前記翼車の回転により駆動される発電機とを備え、前記ケーシング内に排風が導入されることにより前記翼車が回転して発電する排風発電装置であって、 前記ケーシングは、前記翼車が収容される収容部と、前記収容部に排風を導入する導入部と、前記収容部から排風を排出する排出部とを備え、前記翼車は、湾曲した複数の翼部材が円筒状を構成するように周方向に間隔をあけて配置されており、前記排出部は、流路が流れ方向に沿って徐々に拡がるように、内壁面における前記翼車の回転方向下流側を外方に膨出させた膨出部を備える構成において、前記翼車と前記発電機との間に可変駆動装置が介在されることが好ましい。前記可変駆動装置は、駆動側プーリと、従動側プーリと、前記駆動側プーリおよび従動側プーリの間で動力を伝達するベルト部材とを備えている。前記駆動側プーリは、前記翼車の回転軸に固定された固定プーリと、前記翼車の回転軸に沿って移動可能に支持された可動プーリとの間に前記ベルト部材が係合され、前記翼車の回転軸に固定された保持部材と前記可動プーリとの間に保持された錘部材に遠心力が作用することにより、前記可動プーリが前記錘部材に押圧されて移動し、前記ベルト部材のベルト径を大きくするように構成されている。前記従動側プーリは、前記発電機の回転軸に固定された固定プーリと、前記発電機の回転軸に沿って移動可能に支持された可動プーリとの間に前記ベルト部材が係合され、前記駆動側プーリにおける前記ベルト部材のベルト径が大きくなると、前記ベルト部材の張力によって、前記発電機の回転軸に固定された保持部材と前記可動プーリとの間に介在されたばね部材の付勢力に抗して前記可動プーリが移動し、前記ベルト部材のベルト径を小さくするように構成されている。
【0011】
本発明の排風発電装置
は、ケーシングと、前記ケーシング内に回転可能に配置された翼車と、前記翼車の回転により駆動される発電機とを備え、前記ケーシング内に排風が導入されることにより前記翼車が回転して発電する排風発電装置であって、 前記ケーシングは、前記翼車が収容される収容部と、前記収容部に排風を導入する導入部と、前記収容部から排風を排出する排出部とを備え、前記翼車は、湾曲した複数の翼部材が円筒状を構成するように周方向に間隔をあけて配置されており、前記排出部は、流路が流れ方向に沿って徐々に拡がるように、内壁面における前記翼車の回転方向下流側を外方に膨出させた膨出部を備える構成において、前記排出部は、前記膨出部の下流側に熱サイフォンユニットを備えることが好ましい。前記熱サイフォンユニットは、ケーシングの内部が伝熱仕切板により仕切られて作動室および冷却室が形成されおり、前記作動室は、内部に封入された作動流体が前記排出部を通過する排風により加熱されるように、前記排出部内に配置されており、前記冷却室は、前記排出部の外部に配置され、前記伝熱仕切板を介して前記作動流体から伝熱される被加熱流体が通過することが好ましい。前記熱サイフォンユニットは、鉛直方向に延びる前記排出部の内部に複数設けられることが好ましく、互いに間隔をあけて平行に配置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、排風を利用した発電を効率良く行うことができる排風発電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る排風発電装置の概略構成を示す断面図である。
【
図2】
図1に示す排風発電装置の要部平面図である。
【
図3】
図1に示す排風発電装置の他の要部断面図である。
【
図4】
図1に示す排風発電装置の変形例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る排風発電装置の概略構成を示す断面図である。
図1に示すように、排風発電装置1は、ケーシング10と、ケーシング10内に回転可能に配置された翼車20と、翼車20の回転に連動して駆動される発電機(図示せず)とを備えており、ケーシング10に排風を導入することにより翼車20が回転して発電するように構成されている。
【0015】
ケーシング10は、翼車20が収容される収容部12と、収容部12に排風を導入する導入部14と、収容部12から排風を排出する排出部16とを備えている。導入部14は、一端側にフランジ14aが設けられ、他端側が収容部12に接続されており、一端側から他端側に向けて先細になるように、断面視が湾曲状に形成されている。また、排出部16は、一端側にフランジ16aが設けられ、他端側が収容部12に接続されており、収容部12との接続部から一端側に向けて流路が徐々に拡がるように、膨出部16bが設けられている。
【0016】
翼車20は、両端に配置される円板状の端板22(
図1では一方のみを図示)の間に、円弧状に形成された複数の翼部材24が周方向に間隔をあけて配置されたクロスフロー型であり、円筒状に構成されて回転軸26を中心に回転自在に配置されている。各翼部材24の形状は、排風を受け易い形状であれば円弧状以外の湾曲形状であってもよく、隣接する翼部材24,24間の通風抵抗が小さくなるように設計されることが好ましい。
【0017】
図2は、
図1に示す排風発電装置1の要部平面図であり、排出部16の一端側を示している。
図2に示すように、排出部16は流路断面が矩形状に形成されており、膨出部16bは、回転軸26と平行に配置された一対の内壁16c,16d同士の間隔を、排風の流れ方向に沿って徐々に拡げるように形成されている。導入部14も、排出部16と同様に矩形状の流路断面を有している。導入部14および排出部16のそれぞれの開口中心線c1,c2は、
図1に示す回転軸26に垂直な断面において、互いに直交している。
【0018】
本実施形態の排風発電装置1は、上記の構成に加えて、給気ダクト50、排気ダクト52およびバイパスダクト54を備えている。給気ダクト50は、例えばビルや工場等に設置された集塵装置、換気装置、乾燥装置、排熱装置などの排風設備(図示せず)の排気口に一端側が接続され、他端側が導入部14のフランジ14aに接続される。排気ダクト52は、一端側が排出部16のフランジ16aに接続され、他端側が大気に開放される。また、バイパスダクト54は、収容部12を迂回するように給気ダクト50と排気ダクト52とを接続しており、ダンパ56の操作により排風流路を切り替えることができる。ダンパ56は、通常時はバイパスダクト54を閉じており、バイパスダクト54を開いて導入部14を閉じるように操作することで、メンテナンス作業などを容易に行うことができる。ダンパ56は、給気ダクト50に導入される排風の流量が変動し易い場合に、収容部12に導入される排風流量が一定となるように開度制御を行うものであってもよい。
【0019】
上記の構成を備える排風発電装置1によれば、給気ダクト50から導入部14に導入された排風が、収容部12を通過する際に翼車20を
図1および
図2の矢示方向に回転させて、排出部16から排気ダクト52を経て外部に排出される。これにより、排気設備の排風を利用して翼車20を継続的に回転させることができ、電力回収を行うことができる。
【0020】
特に本実施形態の排風発電装置1は、翼車20をクロスフロー型の構成にすると共に、排出部16に膨出部16bを形成することにより、排風発電装置1の設置に伴う排気設備の負荷を最小限に抑制することができる。本発明者らの実験によれば、クロスフロー型の翼車20を気流により回転させると、翼車20から放出された気流は、排出部16の内壁面における翼車20の回転方向下流側に主として衝突し、これが乱流を生じさせて圧力損失の増加を招いていることが明らかになった。そこで、本発明においては、排出部16の内壁面における翼車20の回転方向下流側を外方に膨出させて、流路が流れ方向に沿って徐々に拡がるように膨出部16bを形成することで、翼車20からの気流が排出部16の内壁に沿ってスムーズに流れるようにして、圧力損失の増大を防止している。これにより、排風発電装置1により排気設備に新たな負荷をかけることなく、従来は単に大気放出していた排風エネルギーを効率良く回収することができる。
【0021】
膨出部16bの形状は、
図1に示すように排出部16の上流側に向けて凸となるような湾曲形状であることが好ましく、これによって排出部16内での流れ剥離や乱流を効果的に抑制することができる。本実施形態においては、
図1および
図2に示すように、回転軸26と平行な一対の内壁16c,16d
のうち、翼車20の回転方向下流側の内壁
16cを、上流側に凸となるように円弧状に湾曲させて、膨出部16bを形成している。
【0022】
また、本実施形態の排風発電装置1は、導入部14を先細に形成し、排風を増速しながら導入部14の開口中心線c1に沿って収容部12に導入すると共に、導入部14および排出部16の開口中心線c1,c2が互いに直交するように構成することで、排風を翼車20の回転に最大限利用することができ、発電効率を高めることができる。
【0023】
収容部12の内壁面は、
図1に示すように、翼部材22の先端との間に生じるクリアランスCが、翼車20の回転方向に沿って排出部16から導入部14までの間で最小限となるように円弧状に形成することが好ましく、これによって、クリアランスC内での渦流の発生を確実に防止して、翼車20の回転負荷の増大を防止することができる。このクリアランスCは、具体的には、排出部16から導入部14までの全体にわたって、翼車20の半径の0.005〜0.05倍(すなわち、クリアランスC = 翼車半径r × 0.005〜0.05)であることが好ましい。
【0024】
図1および
図2に示す翼車20の回転軸26は、
図3(a)に示すように、可変駆動装置110を介して、発電機100に連結することができる。可変駆動装置110は、駆動側プーリ120と、従動側プーリ130と、これら駆動側プーリ120および従動側プーリ130の間で動力を伝達するVベルト等のベルト部材140とを備えている。
【0025】
駆動側プーリ120は、翼車の回転軸26の先端に固定された固定プーリ121と、回転軸26に沿って移動可能に支持された可動プーリ122とを備えており、固定プーリ121と可動プーリ122との間にベルト部材140が係合されている。回転軸26において、可動プーリ122の基端側には保持部材123が固定されており、保持部材123に形成された案内溝123aと可動プーリ122との間に、複数のウエイトローラからなる錘部材124が保持されている。
【0026】
従動側プーリ130は、発電機100の回転軸101の先端に固定された固定プーリ131と、回転軸101に沿って移動可能に支持された可動プーリ132とを備えており、固定プーリ131と可動プーリ132との間にベルト部材140が係合されている。回転軸101において、可動プーリ132の基端側には、コイルばね等からなる複数のばね部材134を介して保持部材133が固定されている。本実施形態においては、ベルト部材140を駆動側プーリ120と従動側プーリ130との間に掛け渡しているが、中間プーリ等を介して動力を伝達するように構成してもよい。
【0027】
上記の構成を備える可変駆動装置110は、排風設備の始動直後など、翼車の回転軸26の回転数が小さい場合には、錘部材124は、
図3(a)に示す位置から変化せず、ベルト部材140は、駆動側プーリ120のベルト径が小さい一方、従動側プーリ130のベルト径が大きくなる。したがって、小さなトルクで発電機100の回転軸101を確実に回転させることができる。
【0028】
そして、翼車の回転軸26の回転数が徐々に増加していくと、錘部材124が遠心力によって案内溝123aに沿って径方向外方へと移動し、
図3(b)に示すように、駆動側プーリ120の可動プーリ122が錘部材124の押圧により矢示方向に移動するので、ベルト部材140は、駆動側プーリ120のベルト径が大きくなる。これに伴い、従動側プーリ130においては、ベルト部材140の張力によって、可動プーリ132がばね部材134の付勢力に抗して矢示方向へと移動し、ベルト径が小さくなる。こうして、翼車の回転軸26の回転数を増速させて、発電機100の回転軸101に伝達することができ、発電効率を高めることができる。排風設備の停止等により翼車の回転軸26が低下した場合には、錘部材124は径方向内方に移動すると共に、従動側プーリ130の可動プーリ132がばね部材134により押圧されて、再び
図3(a)に示すように、駆動側プーリ120のベルト径が小さく、従動側プーリ130のベルト径が大きくなる。
【0029】
このように、可変駆動装置110は、排風発電において特に困難な発電機100の始動を確実に行いつつ、定常時においては発電機100の発電量をより向上させることができる。
【0030】
また、
図1に示す排風発電装置1においては、排出部16と排気ダクト52との間に、
図4に示すように中間ダクト150を介在させて排出部16の一部を構成し、この中間ダクト150の内部に熱サイフォンユニット151を配置してもよい。熱サイフォンユニット151は、
図5にA−A断面図で示すように、平板状に形成されたケーシング152の内部が伝熱仕切板153により仕切られて、作動室154および冷却室155が形成されている。
【0031】
作動室154は、中間ダクト150の内部に配置されており、エタノール等のアルコールや純水、フロン等の作動流体Fが封入されて減圧される。作動流体Fは、作動室154の底部に液状で存在しており、中間ダクト150を上昇する高温の排風により加熱されて、作動室154内で蒸発する。一方、冷却室155は、中間ダクト150の外部に突出するように配置されており、冷却水等の被加熱流体が入口部156から導入されて伝熱仕切板153に沿って上昇し、出口部157から排出されるように構成されている。作動流体Fと被加熱流体とは伝熱仕切板153を介して熱交換され、被加熱流体が作動流体Fにより加熱されると共に、作動流体Fの蒸気は、伝熱仕切板153の表面で凝縮されて、液滴が仕切板153に沿って落下する。こうして、作動流体Fの蒸発と凝縮の相変化の際の潜熱を利用して、排風の熱を、作動流体Fを介して被加熱流体に効率良く伝達することができ、排熱回収を良好に行うことができる。
【0032】
熱サイフォンユニット151は、鉛直方向に延びる中間ダクト150の内部に複数設けられていることが好ましく、互いに間隔をあけて平行に配置されることが好ましい。これにより、熱サイフォンユニット151を排熱回収だけでなく整流板としても機能させることができ、膨出部16bの下流側における排風の流れを安定させて、効率の良い発電を促すことができる。
【符号の説明】
【0033】
1 排風発電装置
10 ケーシング
12 収容部
14 導入部
16 排出部
16b 膨出部
20 翼車
24 翼部材
100 発電機
110 可変駆動装置
120 駆動側プーリ
130 従動側プーリ
140 ベルト部材
151 熱サイフォンユニット
c1,c2 開口中心線
C クリアランス