(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、シューズ用の、特にスポーツシューズ用のアッパーを用いて、本発明の実施形態および変形形態をさらに詳細に説明する。
【0036】
ニットウェアを使用することにより、シューズのアッパー(シューアッパーとも呼ばれる)あるいはソール(インソール、シュトローベルソール、ミッドソール、および/またはアウターソールなど)などの製品が、少ない製造努力によって種々の機能を実現する種々の特徴を有する領域を備えることが可能となる。これらの特性には、例えば曲げ性、伸縮性(例えばヤング率として表される)、空気および水に対する透過性、熱伝導性、熱容量、吸湿、静摩擦、耐摩耗性、硬さ、および厚さなどが含まれる。
【0037】
かかる特徴または機能を実現するために、様々な技術が適用されるが、それらを次に説明する。これは、編成技術、繊維および糸の選択、ポリマーもしくは他の材料による繊維、糸、またはニットウェアのコーティング、モノフィラメントの使用、モノフィラメントおよびポリマーコーティングの組合せ、融着糸/溶着糸の適用、ならびに多層布帛材料などの、ニットウェアの製造における適切な技術を含む。一般的には、ニットウェアの製造に使用される糸は、それ相応に装いが施され得る、すなわちコーティングされ得る。追加的にまたは代替的に、完成したニットウェアは、それ相応に装いが施され得る。
【0038】
機能を実現する別の態様は、例えばアッパーまたはソールなどの製品の特定の領域に対してニットウェアを特定的に使用することと、適切な連結技術によるそれぞれ異なるパーツの連結とに関する。以下、既述の態様および技術と、他の態様および技術とが説明される。
【0039】
既述の技術は、個別に使用することが可能であり、または任意の様式で組み合わせることも可能である。
【0040】
ニットウェア
本発明において使用されるニットウェアは、一方の緯編み編成布および単糸経編み編成布と、他方の多重糸経編み編成布とに区分される。ニットウェア特有の特徴は、インターロック編み糸ループから形成される点である。これらの糸ループは、ステッチとも呼ばれ、1つまたは複数の糸から形成され得る。
【0041】
糸は、直径に対して長さが長い1つまたは複数の繊維からなる構造物に対する用語である。繊維は、長さに対してその太さが細い可撓性構造物である。使用に関して事実上無制限の長さを有する非常に長い繊維は、フィラメントと呼ばれる。モノフィラメントは、単一フィラメントすなわち単一繊維から構成された糸である。
【0042】
緯編み編成布および単糸経編み編成布においては、ステッチ形成は、製品の長手方向に、すなわち製造プロセス時に製品が作製される方向に対して実質的に直角に延在する、少なくとも1つの糸を必要とする。多重糸経編み編成布においては、ステッチ形成は、少なくとも1つの経糸シートを、すなわち複数のいわゆる経糸を必要とする。これらのステッチ形成糸は、長手方向に、すなわち実質的には製造プロセス時に製品が作製される方向に延在する。
【0043】
図1aは、織成布10と、緯編み編成布11および12と、経編み編成布13との間の基本的な相違を示す。織成布10は、通常は相互に対して直角に配置された少なくとも2つの糸シートを有する。この点に関して、糸は、相互の上または下に配置され、ステッチを形成しない。緯編み編成布11および12は、ステッチをインターロック編みすることにより1つの糸を左から右に編むことによって作製される。11で示されるものは、緯編み編成布の正面図(フロントループ生地側とも呼ばれる)であり、12で示されるものは、緯編み編成布の背面図(バックループ生地側とも呼ばれる)である。フロントループ製品側およびバックループ製品側は、レッグ14の延在において異なる。バックループ生地側12においては、レッグ14は、フロントループ生地側11とは対照的に下側にある。
【0044】
図1bにおいては、いわゆるフィラー糸15を有する、本発明のために使用し得る緯編み編成布の1つの代替形態を示す。フィラー糸15は、2つのウェール間に長手方向に配置された1本の糸であり、他の織り要素の横方向糸により保持される。フィラー糸15を他の織り要素と組み合わせることにより、緯編み編成布の特性が影響を被るか、または様々な模様効果が実現される。ウェール方向における緯編み編成布の伸縮性は、例えばフィラー糸15によって低下させ得る。
【0045】
多重糸経編み編成布13は、
図1aに示すように、上から下に多数の糸で経編みすることにより作製される。その実施においては、糸のステッチは、隣接する糸のステッチとインターロック編みされる。例えば、隣接する糸のステッチ同士がインターロック編みされるパターンに応じて、7つの基本連結(多重糸経編みにおいては「交絡」とも呼ばれる)、すなわち鎖編み、トリコット編み、2×1平編み、繻子織り、ビロード織り、アトラス編み、および綾織りの中の1つが形成される。
【0046】
例として、
図2においては、トリコット編み21、2×1平編み22、およびアトラス編み23の交絡を示す。例として強調された糸24のステッチが隣接する糸のステッチにインターロック編みされる様式によって、異なるインターロック編みが結果的に得られる。トリコット編みの交絡21においては、ステッチ形成糸は、長手方向にニットウェア中をジグザグに延在し、2つの隣接するウェール同士を結合させる。2×1平編みの交絡22は、トリコット編みの交絡21と同様の様式で結合するが、各ステッチ形成経糸は、ウェールをスキップする。アトラス編みの交絡23においては、各ステッチ形成経糸は、階段形状で方向転換点まで延在し、次いで方向を変える。
【0047】
継ぎ目結合部位を伴う相互の上に配置されたステッチを、ウェールと呼ぶ。
図3は、参照番号31で、緯編み編成布の一例としてのウェールを示す。ウェールという用語は、経編み編成布においても類義的に使用される。したがって、ウェールは、メッシュ生地中を垂直方向に延在する。例として
図3の参照番号32で緯編み編成布に関して示されるような、相互に隣接して配設されたステッチ行を、コースと呼ぶ。コースという用語は、経編み編成布においても類義的に使用される。したがって、コースは、メッシュ生地中を横方向に延在する。
【0048】
ウェールに沿ったステッチの延在により識別され得る3つの基本的な緯編み構造が、緯編み編成布において知られている。平編みシングルジャージでは、バックループのみが、生地の一方の側においてウェールに沿って認識され得ると共に、バックループのみが、製品の他方の側に沿って認識され得る。この構造は、編み機の1列針、すなわち隣接し合う編み針構成に基づき形成され、シングルジャージとも呼ばれる。リブ編み生地では、フロントループおよびバックループは、コース内で交互に位置する、すなわち、製品のウェールを見る側に応じて、フロントループまたはバックループのいずれかのみが、ウェールに沿って見受けられる。この構造は、相互にオフセットした2列針に基づき形成される。パール編み生地では、フロントループおよびバックループが、1つのウェール内に交互に位置する。製品の両側が同一の外観を有する。この構造は、
図4に示すようなラッチニードルによりステッチ移動によって製造される。ステッチの移動は、各端部にフックおよびラッチを共に備えるダブルラッチニードルが使用される場合には、回避され得る。
【0049】
織成布帛に対するニットウェアの本質的な利点は、それにより形成し得る構造および表面の多様性である。実質的に同一の製造技術により、非常に目の詰まったおよび/または剛直なニットウェアと、非常に柔軟な、透けるような薄さの、および/または伸縮性の高いニットウェアとの両方を製造することが可能である。材料の特性に対して影響を実質的に与え得るパラメータは、緯編みまたは経編みのパターン、使用される糸、針のサイズまたは針の距離、および針に配された糸が受ける引張歪みである。
【0050】
緯編みの利点は、特定の糸が、自由に選択可能な位置において緯編みされ得る点である。このようにすることで、選択されたゾーンは、特定の特性を備えることが可能となる。例えば、サッカーシューズ用のアッパーが、ゴム引き糸から作製されたゾーンを備えることにより、より高い静摩擦を実現し、したがってプレーヤのより優れたボールコントロールを可能にすることが可能である。特定の糸が選択された位置において緯編みされる場合に、追加的な要素が適用される必要はない。
【0051】
ニットウェアは、工業的な場面においては機械で製造される。通常は、これらは、複数の針を備える。通常は、緯編みでは、ラッチニードル41が使用され、これらはそれぞれ、
図4に示すように可動ラッチ42を備える。このラッチ42は、ニードル41がステッチ45に引っ掛かることなく、糸44がステッチ45を通り引き抜かれ得るように、ニードル41のフック43を閉じる。緯編みでは、ラッチニードルは、通常は個別に移動可能であり、そのため、各単一のニードルが、ステッチ形成のために糸を引っ掛けるように制御され得る。
【0052】
平編み機と丸編み機とは、区別される。平編み機においては、糸フィーダが、針の列に沿って前後に糸を送る。丸編み機においては、針は、円形に配置され、糸の送りは、これに応じて、1つまたは複数の円形列の針に沿って円形移動を行う。
【0053】
1列針の代わりに、編み機が平行な2列針を備えることもまた可能である。側面から見た場合に、これらの2列針の針は、例えば相互に対して直角に位置してもよい。これにより、より精巧な構造または織地を製造することが可能となる。2列針を使用することにより、単層緯編み編成布または二層緯編み編成布を製造することが可能となる。単層緯編み編成布は、第1の列の針に基づき生成されるステッチが、第2の列の針に基づき生成されるステッチに交絡される場合に、作製される。したがって、二層緯編み編成布は、第1の列の針に基づき生成されるステッチが、第2の列の針に基づき生成されるステッチに交絡されないもしくは選択的にのみ交絡される場合に、および/または、これらの両ステッチが、緯編み編成布の端部においてのみ交絡される場合に、作製される。第1の列の針に基づき生成されるステッチが、追加の糸により第2の列の針に基づき生成されるステッチに選択的にのみ緩く交絡される場合には、これは、スペーサ緯編み編成布とも呼ばれる。したがって、例えばモノフィラメントなどの追加の糸が2つの層の間で前後に案内されることにより、2つの層間に距離が形成される。これらの2つの層は、例えばいわゆるハンドルを介して相互に連結され得る。
【0054】
したがって、一般的には、以下の緯編み編成布は、緯編み機で製造され得る。1列針のみを使用する場合には、単層緯編み編成布が作製される。2列針を使用する場合には、両列の針のステッチが相互に対して一貫して連結され得るため、結果的に得られるニットウェアは単層を備える。2列針が使用される場合に、両列の針のステッチが、連結されないかまたはエッジにおいてのみ連結される場合には、二層が形成される。両列の針のステッチが追加の糸により交互に選択的に連結される場合には、スペーサ緯編み編成布が作製される。また、追加の糸は、スペーサ糸とも呼ばれ、別個の糸フィーダにより送られ得る。
【0055】
単糸経編み編成布は、共同で移動する針によって製造される。代替的には、針は固定され、生地が移動される。緯編みとは対照的に、針が個別に移動することはできない。緯編みと同様に、平編み式単糸経編み機と、丸編み式単糸経編み機とが存在する。
【0056】
多重糸経編みにおいては、1つまたは複数の螺旋巻糸、すなわち相互に隣接して螺旋巻された糸が使用される。ステッチ形成においては、各経糸が針の周囲に配置され、針が共同で移動される。
【0057】
本明細書において説明する技術およびニットウェアの製造のさらなる態様は、例えば、「Fachwissen Bekleidung」第6版、H. Eberleら(英題「Clothing Technology」で発刊)、「Textil- und Modelexikon」第6版、Alfons Hofer、および「Maschenlexikon」第11版、Walter Holthausにおいて確認できる。
【0058】
(三次元ニットウェア)
さらに、三次元(3D)ニットウェアが、緯編み機および経編み機において、特に平編み機において製造可能である。これは、空間構造を備えるニットウェアであるが、単一プロセスで緯編みまたは経編みされる。三次元緯編み技術または三次元経編み技術により、シームを用いずに空間ニットウェアを製造すること、一体でのおよび単一プロセスでの切断または製造が、可能となる。
【0059】
三次元ニットウェアは、例えばウェール方向におけるステッチ数を変更することにより部分的コースが形成されることによって製造され得る。これに対応する機械プロセスは、「ニードルパーキング(needle parking)」と呼ばれる。これは、必要に応じて、コース方向におけるステッチの様々な構造および/または個数と組み合わせることが可能である。部分的コースが形成される場合には、ステッチ形成は、緯編み編成布または経編み編成布の一部の幅のみに沿って一時的に行われる。ステッチ形成に関与しない針は、緯編みがこの位置において再度行われるまで、半ステッチ(「ニードルパーキング」)を維持する。このようにすることで、例えば膨出を実現することが可能となる。
【0060】
三次元緯編みまたは三次元経編みにより、例えば、アッパーを靴型または足に対して調節することが可能となり、ソールを輪郭設定することが可能となる。例えばシューズのベロをその正しい形状へと緯編みすることが可能となる。外形、構造、こぶ、湾曲、ノッチ、開口、ファスナ、ループ、およびポケットを、単一プロセスでニットウェアに組み込むことが可能となる。
【0061】
三次元ニットウェアは、本発明のために有利に使用することが可能である。
【0062】
(機能的ニットウェア)
ニットウェアおよび特に緯編み編成布は、広範な機能的特性を備えることが可能であり、本発明において有利に使用され得る。
【0063】
緯編み技術により、種々の機能領域を有すると同時にその外形を維持するニットウェアを製造することが可能となる。ニットウェアの構造は、ステッチパターン、糸、針サイズ、針の距離、または針に配された糸が受ける引張歪みを相応に選択することによって、特定の領域における機能要件に対して調節することが可能である。
【0064】
例えば、換気が要求されるニットウェア内の領域に大きなステッチまたは開口を有する構造を備えることが可能となる。対照的に、支持および安定性が求められる領域においては、細目メッシュステッチパターン、より剛直な糸、またはさらには多層緯編み構造を使用することが可能であり、これらは以下において説明される。同様に、ニットウェアの厚さが変更可能である。
【0065】
ニットウェアが2つ以上の層を有することにより、多数の利点をもたらす多数の構造がニットウェアにおいて可能となる。例えば2つなど、2つ以上の層を有するニットウェアは、上記の「ニットウェア」の章において説明したように、緯編み機または経編み機において例えば2列針など複数列の針を用いて単一段階で緯編みまたは経編みすることが可能である。代替的には、例えば2つなどの複数の層が、それぞれ別個の段階で緯編みまたは経編みされ、次いで相互の上に配置され、妥当な場合には例えば縫製、膠剤接着、溶接、またはかがり縫いなどによって相互に連結され得る。
【0066】
複数の層は、基本的には、ニットウェアの丈夫さおよび安定性を高める。この点に関して、結果的に得られる丈夫さは、層同士が相互に連結される度合いおよびその技術によって決定される。同一の糸をまたは異なる糸を各層に使用することが可能である。例えば、緯編み編成布においては、1つの層が多重繊維糸から緯編みされ、1つの層がモノフィラメントから緯編みされ、それらのステッチ同士が交絡されるものが可能である。特に、緯編み層の伸縮性は、この異なる糸の組合せにより低下する。この構造の1つの有利な代替形態は、多重繊維糸から作製された2つの層の間にモノフィラメントから作製された層を配置することにより、ニットウェアの伸縮性を低下させ丈夫さを高めることである。これにより、ニットウェアの両側に多重繊維糸から作製された好適な表面が結果として得られる。
【0067】
二層ニットウェアの1つの代替形態は、「ニットウェア」の章で説明したように、スペーサ緯編み編成布またはスペーサ経編み編成布と呼ばれる。この点に関して、スペーサ糸は、2つの緯編み層または経編み層の間において多少なりとも緩く緯編みまたは経編みされることで、2つの層を相互連結すると同時にフィラーとしての役割を果たす。スペーサ糸は、例えばポリエステルまたは別の材料など、層自体と同じ材料を含むことが可能である。また、スペーサ糸は、モノフィラメントであることも可能であり、これは、スペーサ緯編み編成布またはスペーサ経編み編成布に安定性を与える。
【0068】
かかるスペーサ緯編み編成布またはスペーサ経編み編成布は、三次元緯編み編成布とも呼ばれるが、上記の「三次元ニットウェア」の章において説明した形成上の3D緯編み編成布または3D経編み編成布とは区別する必要がある。これらのスペーサ緯編み編成布またはスペーサ経編み編成布は、例えばアッパーもしくはアッパーのベロにおいて、またはソールの特定領域においてなど、追加的な緩衝または保護が求められる場合にはいつでも使用することが可能である。また、三次元構造は、隣接し合う布帛層の間にまたはさらに布帛層と足との間に空間を形成する役割を果たすことも、およびしたがって換気を確保することも可能である。さらに、スペーサ緯編み編成布またはスペーサ経編み編成布の層は、足に対するスペーサ緯編み編成布の位置に応じて、異なる糸を含むことが可能である。
【0069】
スペーサ緯編み編成布またはスペーサ経編み編成布の厚さは、機能または着用者に応じて個々の領域で設定され得る。例えば、様々な緩衝度が、様々な厚さの領域によって実現され得る。薄い領域は、例えば曲げ性を高めることが可能であるため、関節または撓曲ラインの機能を果たし得る。
【0070】
さらに、スペーサ緯編み編成布の層は、足に対するスペーサ緯編み編成布の位置に応じて異なる糸を備えることが可能である。このようにすることで、ニットウェアは、例えば表および裏について2つの異なる色を有することが可能となる。この場合には、かかるニットウェアから作製されるアッパーは、外側に内側とは異なる色を有することが可能となる。
【0071】
多層構造の代替形態は、ポケットまたはトンネルであり、2列針で緯編みもしくは経編みされた2つの布帛層またはニットウェアが、中空空間が形成されるように特定領域のみにおいて相互に連結される。代替的には、2つの別個のプロセスにおいて緯編みまたは経編みされたニットウェアのアイテムが、空部が形成されるように、例えば縫製、膠剤接着、溶接、またはかがり縫いなどによって相互に連結される。この場合には、例えばベロ、アッパー、ヒール、ソール、または他の領域の開口を通して、例えば発泡材料、eTPU(発泡熱可塑性ウレタン)フォーム、ePP(発泡ポリプロピレン)フォーム、発泡EVA(エチレンビニルアセテート)フォーム、もしくは発泡粒子、または空気クッションもしくはゲルクッションなどの、緩衝材料を導入することが可能となる。代替的にはまたは追加的には、ポケットは、フィラー糸またはスペーサニットウェアで埋めることも可能である。さらに、糸を、例えばアッパーの特定領域に引張荷重がある場合の補強としてなど、トンネルに引き通すことも可能である。さらに、かかるトンネルに紐を通して案内することも可能である。さらに、緩い糸が、例えば足首の領域などにおける芯入れのために、トンネルまたはポケットの中に配置され得る。しかし、キャップ、フラップ、またはボーンなどのより剛直な補強要素をトンネルまたはポケット内に挿入することも可能である。これらは、例えばポリエチレン、TPU、ポリエチレン、またはポリプロピレンなどのプラスチックから製造することが可能である。
【0072】
ニットウェアの機能設計に関してさらに可能なことは、基本織地のいくつかのバリエーションの利用である。緯編みにおいては、膨出、リブ、またはウェーブを特定領域において緯編みすることにより、例えばこれらの位置における補強を実現することが可能である。ウェーブは、例えば、ニットウェアの層におけるステッチの累積によって形成され得る。これは、別の層よりもより多数のステッチが、ある層において緯編みまたは経編みされることを意味する。代替的には、例えば、目のより詰まった、より広い緯編み編成布となるか、または異なる糸を使用することで、他の層とは異なるステッチが、ある層において緯編みされる。これらの両代替形態では、厚さが大きくなる。
【0073】
また、リブ、ウェーブ、または同様のパターンが、例えばシューズの緯編みアウターソールの底部において使用されることにより、足裏およびシューズにより優れた滑り止め特性を与えてもよい。例えばやや厚い緯編み編成布を得るために、緯編み技術である「タック」または「片あぜ編み」を利用することが可能である。これらは、例えば「Fachwissen Bekleidung」第6版、H. Eberleらに記載されている。
【0074】
ウェーブは、二層ニットウェアの2つの層の間に連結部が形成されるように、またはこれらの2つの層の間に連結部が形成されないように、緯編みまたは経編みされ得る。また、ウェーブは、2つの層の連結部を伴ってまたは伴わずに、両面で左右方向ウェーブとして緯編みされ得る。ニットウェアの構造は、ニットウェアの表または裏におけるステッチの不均一な割当てにより実現され得る。
【0075】
本発明の枠組み内においてニットウェアを機能的に設計することのさらなる可能性は、緯編み時または経編み時に予めニットウェア中に開口を設けることである。他の実施形態と組み合わせることも可能な本発明のコースにおける一実施形態は、ニットウェアを備えたインソールに言及する。しかし、この実施形態は、シュトローブソールに対しても適用可能である。この実施形態は、アウターソールに対しても同様に適用可能である。インソール、シュトローブソール、またはアウターソールは、一般的にはミッドソールの上方に配置される。ミッドソールは、緩衝特性を有することが可能である。ミッドソールは、例えば、発泡材料を含むか、または発泡材料から構成され得る。他の適切な材料は、例えば、eTPU(発泡熱可塑性ウレタン)フォーム、ePP(発泡ポリプロピレン)フォーム、発泡EVA(エチレンビニルアセテート)フォーム、または発泡粒子などである。
【0076】
インソール、シュトローブソール、またはアウターソールのニットウェアは、ニットウェアの緯編み時または経編み時にそれぞれ予め緯編みまたは経編みされた少なくとも1つの開口を備える。少なくとも1つの開口により、シューズの着用者の足が、ミッドソールに直接的に接触することが可能となる。これにより、全体的なシューズの緩衝特性が向上し、それによりミッドソールの厚さを削減することが可能となる。
【0077】
好ましくは、少なくとも1つの開口は、踵骨の領域に配置される。この位置への配置は、緩衝特性に対して特にプラスの効果を有する。少なくとも1つの開口を別の位置に位置決めすることが考えられる。
【0078】
本発明の枠組み内においてニットウェアを機能的に設計することのさらに別の可能性は、アッパーのニットウェアと一体的に紐を形成することである。この実施形態においては、アッパーは、ニットウェアを備え、紐は、アッパーのニットウェアが緯編みまたは経編みされる際に予め、ニットウェアと共に一体として経編みまたは緯編みされる。この点に関して、紐の第1の端部が、ニットウェアに連結され、第2の端部は、自由端部となる。
【0079】
好ましくは、第1の端部は、ベロからアッパーの前足部の領域にかけての移行領域において、アッパーのニットウェアに対して連結される。さらに好ましくは、第1の紐の第1の端部は、ベロの内側においてアッパーのニットウェアに対して連結され、第2の紐の第1の端部は、ベロの外側においてアッパーのニットウェアに対して連結される。この場合には、2つの紐の各第2の端部は、シューズの紐を結ぶために、紐穴に引き通すことが可能となる。
【0080】
紐の一体的な緯編みまたは経編みの速度を上げる1つの可能性は、ベロからアッパーの前足部の領域にかけての移行領域においてニットウェア端部を緯編みまたは経編みするために全ての糸を使用することである。これらの糸は、好ましくは、ベロの内側でアッパーの内側において終端し、ベロの内側で連結された紐を形成する。これらの糸は、好ましくは、ベロの外側でアッパーの外側において終端し、ベロの外側に連結された紐を形成する。次いで、好ましくは、これらの糸は、紐を形成するのに十分な長さにおいて切断される。糸は、例えば撚り合わされ得るかまたは編み合わされ得る。紐の各第2の端部は、好ましくは紐クリップを備える。代替的には、第2の端部は、融着されるか、またはコーティングを備える。
【0081】
ニットウェアは、その構成によりステッチの方向(長手方向)に特に伸縮性を有する。この伸縮性は、例えばニットウェアの後のポリマーコーティングにより低下させ得る。しかし、伸縮性は、ニットウェア自体の製造時にも低下させ得る。1つの可能性は、メッシュ開口を削減すること、すなわちより小さな針サイズを使用することである。より小さなステッチは、一般的には、ニットウェアのより低い伸縮性を結果としてもたらす。細目メッシュニットウェアを、例えばアッパー(シューアッパーとも呼ばれる)において使用することが可能である。さらに、ニットウェアの伸縮性は、例えば三次元構造などの緯編み補強により低下させ得る。かかる構造は、アッパーの内側または外側に配置され得る。さらに、例えばナイロンなどから作製された非伸縮性糸を、ニットウェアに沿ってトンネル内に配置することにより、非伸縮性糸の長さまでに伸縮を制限することが可能である。
【0082】
複数色を有する有色領域が、異なる糸の使用によりおよび/または追加の層により形成され得る。移行領域においては、より小さなメッシュ開口(より小さな針サイズ)が使用されることにより、色の滑らかな移行が実現される。
【0083】
さらなる効果は、緯編みインセット(インレイ加工)またはジャカード織編みにより実現され得る。インレイ加工は、例えばある特定の色などの特定の糸のみを提供する領域である。この場合には、例えば異なる色などの異なる糸を備え得る隣接領域は、いわゆるハンドルにより相互に連結される。
【0084】
ジャカード織編み時には、2列針が使用され、例えば2つの異なる糸が全ての領域にわたって延在する。しかし、いくつかの領域においては、1つの糸のみが、製品の可視側に現れ、他の糸はそれぞれ、製品の他方の側に不可視の状態で延在する。
【0085】
ニットウェアから製造される製品は、緯編み機または経編み機において一体で製造され得る。この場合には、機能領域は、本明細書において説明されるような対応する技術により緯編みまたは経編み時に予め製造され得る。
【0086】
代替的には、製品は、ニットウェアの複数のパーツの組合せであることが可能であり、また、ニットウェアから製造されないパーツを備えることも可能である。この点に関して、ニットウェアのパーツは、例えば厚さ、遮断、水分輸送、等々に関して、それぞれ異なる機能を個別に有するように設計され得る。
【0087】
アッパーおよび/またはソールは、一般的には例えば全体的にニットウェアから製造され得るが、または、種々のニットウェアパーツから組み立てることも可能である。例えば、アッパー全体またはその一部が、ニットウェアのより大きな片から分離されても、例えば打ち抜き加工されてもよい。例えば、ニットウェアのより大きな片は、丸編み式緯編み編成布もしくは丸編み式経編み編成布、または平編み式緯編み編成布もしくは平編み式経編み編成布などであってもよい。
【0088】
例えば、ベロは、連続片として製造することが可能であり、後にアッパーと連結され得る。または、ベロは、アッパーと一体で製造することが可能である。それらの機能設計に関して、例えば、内側のリッジにより、ベロの可撓性を向上させ、ベロと足との間の距離を確保することが可能となり、さらにこれにより、さらなる換気が可能となる。紐は、ベロの1つまたは複数の緯編みトンネルを通して案内され得る。また、ベロは、ポリマーで補強することにより、ベロの安定化を実現し、例えば非常に薄いベロが巻き込まれるのを防ぐことが可能となる。さらに、この場合には、ベロは、靴型または足の形状に対しても合致させ得る。
【0089】
アッパーにおいては、例えば表部分のみをニットウェアから製造することが可能である。アッパーの残りの部分は、例えば織成布などの異なる布帛および/または材料を備えることが可能である。例えば、表部分は、つま先領域のみに位置する、つま先関節を越えて延在する、または中足部領域まで延在することが可能である。代替的には、アッパーの裏部分が、例えば踵の領域においてニットウェアから製造され、例えばポリマーコーティングによりさらに補強されることが可能である。一般的には、アッパーまたはソールの任意の所望の領域を、ニットウェアとして製造することが可能である。
【0090】
ポリウレタン(PU)プリント、熱可塑性ポリウレタン(TPU)リボン、布帛補強、皮革、等々の適用物が、後にニットウェアに対して適用され得る。したがって、全体にまたは一部にニットウェアを備えるアッパーにおいては、以下において説明するように、補強もしくはロゴとしてのプラスチックヒールもしくはトーキャップ、または紐用の穴を、例えば縫製、膠剤接着、または溶接などによってアッパーに対して適用することが可能である。
【0091】
例えば、縫製、膠剤接着、または溶接は、各ニットウェアを他の布帛にまたは他のニットウェアに連結するための適切な連結技術を構成する。かがり縫いは、2片のニットウェアを連結するためのもう1つの可能性である。この場合に、ニットウェアの2つのエッジは、ステッチにしたがって(通常はステッチごとに)相互に対して連結される。
【0092】
布帛、特にプラスチック糸から作製された布帛を溶接するための1つの可能性は、超音波溶接である。この場合には、超音波周波数範囲内の機械振動が、ソノトロードと呼ばれる器具に対して伝達される。振動は、加圧下においてソノトロードにより連結されることとなる布帛に対して伝達される。結果的に生じる摩擦により、布帛は、加熱され、軟化し、最終的にはソノトロードとの接触位置の領域において連結される。超音波溶接は、特にプラスチック糸を有する布帛を迅速にかつ費用対効果の高い方法で連結することを可能にする。リボンを、溶接シームに対して例えば膠剤接着するなど、装着することが可能であり、これにより、溶接シームはさらに補強され、より見栄えの良いものになる。さらに、特にベロへの移行部における皮膚の掻痒感が回避されることにより、着用快適性が上昇する。
【0093】
様々な布帛領域の連結は、非常に様々な位置において行われ得る。例えば、アッパーの様々な布帛領域同士を連結するためのシームが、
図5aおよび
図5bに示すように、様々な位置に配置され得る。
図5aには、2つの布帛領域52および53を備えるアッパー51が示される。これらの布帛領域は、相互に縫い合わされる。2つの布帛領域52および53を連結するシーム54は、中足部から踵にかけての移行領域においてアッパーのインステップ領域からソールの領域まで斜めに延在する。また、
図5bにおいては、シーム55は、斜めに延在するが、つま先の方向へとさらに前方に配置される。シームおよび連結位置の他の構成が、一般的に考えられ得る。
図5aおよび
図5bに示すシームは、それぞれ、糸シーム、膠剤接着シーム、溶接シーム、またはかがり縫いシームであることが可能である。これらの2つのシーム54および55は、それぞれ、アッパー51の一方の側のみにまたはアッパーの両側に取り付けることが可能である。
【0094】
接着テープの使用は、布帛領域を連結するためのさらなる1つの可能性を構成する。また、これは、例えば縫い付けられたシームまたは溶接されたシームの上になど、既存の連結部に対して追加的に使用することが可能である。接着テープは、連結機能に加えて、例えば汚れまたは水に対する保護などのさらなる機能を果たし得る。接着テープは、その長さにわたって変化する特性を備えることが可能である。
【0095】
図6a、
図6b、および
図6cには、接着テープによりシューソール61に対して連結されたアッパー51の一実施形態を示す。
図6a、
図6b、および
図6cはそれぞれ、それぞれ異なる足の位置と、それにより生じたシューズの変形とを伴う、シューズの断面図を示す。例えば、
図6aにおいては、引張力がシューズの右側に作用する一方、圧縮力が左側に作用する。
【0096】
シューソール61は、アウターソールまたはミッドソールであることが可能である。アッパー51およびシューソール61は、周囲の接着テープ62により相互に対して連結される。接着テープ62は、その長さに沿って変化する可撓性を有することが可能である。例えば、接着テープ62は、シューズの踵領域においては特に剛性でありあまり可撓性を有さないことにより、シューズの踵領域に必要な安定性を与えることができる。これは、例えば接着テープ62の幅および/または厚さを変化させることにより実現され得る。接着テープ62は、一般的には、テープに沿った特定の領域において特定の力を受けることが可能となるように構成され得る。このようにすることで、接着テープ62は、ソールに対してアッパーを連結するだけでなく、同時に構造的補強機能を果たす。
【0097】
(繊維)
本発明のニットウェアに対して使用される糸は、繊維を通常含む。上記で説明したように、長さに対してその太さが細い可撓性構造物は、繊維と呼ばれる。使用に関して事実上無制限の長さを有する非常に長い繊維は、フィラメントと呼ばれる。繊維は、紡績されてまたは撚り合わされて、糸になる。しかし、繊維は、長いものも可能であり、回転されて糸になる。繊維は、天然材料または合成材料から構成され得る。天然繊維は、堆肥化可能であるため、環境に優しい。天然繊維には、例えば綿、羊毛、アルパカ毛、麻、ココナッツ繊維、または絹などが含まれる。合成繊維には、Nylon(商標)、ポリエステル、エラステイン、もしくはスパンデックスなどのそれぞれのポリマーベース繊維、または従来的な繊維としてもしくは高性能繊維もしくは工業技術繊維として生産され得るKevlar(商標)がある。
【0098】
シューズが、例えば、天然繊維から作製された天然糸を含む緯編みパーツまたは経編みパーツと、例えばプラスチックを含むインソールなどの着脱自在パーツとを含む、様々なパーツから組み立てられることが考えられる。このようにすることで、両パーツは、別々に処分することが可能となる。この例においては、例えば、緯編みパーツは、堆肥化可能廃棄物となり得るが、インソールは、再利用可能材料のリサイクリング行きとなり得る。
【0099】
また、これらから製造された糸の機械特性および物理特性は、
図7に示すような繊維の断面によって決定される。次に、これらの種々の断面、特性、およびかかる断面を有する材料例を説明する。
【0100】
円形断面710を有する繊維は、中実または中空であることが可能である。中実繊維は、最も通常のタイプであり、容易な曲げを可能にし、手触りが柔らかい。中実繊維と同一の重量/長さ比を有する中空円としての繊維は、より大きな断面を有し、曲げに対して抵抗がより大きい。円形断面を有する繊維の例は、Nylon(商標)、ポリエステル、およびLyocellである。
【0101】
骨形状断面730を有する繊維は、水分を毛管作用により搬送する特性を有する。かかる繊維に関する材料の例は、アクリルおよびスパンデックスである。繊維の中間部の凹状領域は、水分が長手方向に送られるのを支援し、水分は、ある特定の位置から毛管作用により迅速に搬送されて、分散される。
【0102】
図7には、以下のさらなる断面が示される。
フラワを有する多角形断面711、例えば亜麻、
重畳部分を有する楕円〜円形断面712、例えば羊毛、
拡張および巻込みを伴う平坦状の楕円断面713、例えば綿、
部分的細溝を有する円形鋸歯断面714、例えばレーヨン、
ライ豆断面720、平滑表面、
鋸歯ライ豆断面721、例えばAvril(商標)レーヨン、
丸みエッジを有する三角形断面722、例えば絹、
三葉星形断面723、光沢性のより高い外観を有する三角形繊維など、
部分的細溝を有するこん棒状断面724、キラキラと輝く外観、例えばアセテート、
平坦状および幅広の断面731、例えば別設計のアセテート、
星形またはコンサーティーナ断面732、
中空中心を有する座屈チューブの形状の断面733、および
空部を有する正方形断面734、例えばAnsoIV(商標)ナイロン。
【0103】
次に、本発明のためのニットウェアの製造に関係する特性を有する各繊維を説明する。
アラミド繊維:摩耗および有機溶剤に対する良好な耐性、非導電性、最大500℃までの耐熱性、
パラアラミド繊維:Kevlar(商標)、Techova(商標)、およびTwaron(商標)の商標名で知られているもの、優れた強度−重量特性、高いヤング率および高い引張強度(メタアラミドを上回る)、低い伸縮性および低い破断点伸び(約3.5%)、着色の困難さ、
メタアラミド:Numex(商標)、Teijinconex(商標)、New Star(商標)、X−Fiper(商標)の商標名で知られているもの、
ダイニーマ繊維:あらゆる公知の熱可塑性プラスチックの中で最高の衝撃強度、腐食性化学薬品(酸化性酸を除く)に対する高い耐性、極めて低い吸湿性、nylon(商標)およびアセテートよりも著しく低くTeflonと同等の非常に低い摩擦係数、自己潤滑性、摩耗に対する高い耐性(炭素鋼に比べて15倍の高さの耐摩耗性)、無毒性、
炭素繊維:炭素原子から実質的に構成された直径約0.005〜0.010mmの極細繊維、サイズに関して高い安定性、1つの糸が数千の炭素繊維から形成される、高い引張強度、軽量、低い熱膨張率、伸縮または曲げに対して非常に強い、熱伝導性および電気伝導性、
ガラス繊維:高い表面積−重量比、空気を内部に捕獲することによりガラス繊維ブロックが良好な断熱性を実現、0.05W/(m×K)の熱伝導性、繊維がより細いほど延性がより高いことにより最細繊維が最も高い強度を有する、ガラスがアモルファス構造を有することによりガラス繊維の特性は繊維に沿っておよび断面にわたって同一となる、繊維の曲げ直径と繊維直径との相関性、断熱性、電気絶縁性、防音性、炭素繊維に比べてより高い破断点伸縮性。
【0104】
(糸)
複数の異なる糸が、本発明において使用されるニットウェアを製造するために使用され得る。既に定義したように、直径に対してその長さが長い1つまたは複数の繊維からなる構造物を、糸と呼ぶ。
【0105】
機能性糸は、水分を輸送することが、したがって汗および水分を吸収することが可能である。これらの糸は、導電性、自浄性、温度調整性および断熱性、難燃性、ならびにUV吸収性を有するものであることが可能であり、赤外線放射を行い得る。機能性糸は、感覚原理(sensorics)にとって適し得る。例えば銀糸などの抗菌性糸は、臭気形成を防止する。
【0106】
ステンレス鋼糸は、ナイロンまたはポリエステルと鋼との混合物から作製された繊維を含む。その特性には、高い耐摩耗性、高い耐切断性、高い耐熱摩耗性、高い熱伝導性および電気伝導性、より高い引張強度、ならびに高重量が含まれる。
【0107】
ニットウェアから作製された布帛においては、導電性糸が、電子デバイスの組込みのために使用され得る。例えば、これらの糸は、センサからインパルス処理を行うデバイスへインパルスを転送してもよく、または、例えばセンサ自体として機能し、皮膚もしくは生理学的磁場における電流を測定することが可能である。布帛ベース電極の使用例は、欧州特許出願EP1916323において確認できる。
【0108】
溶着糸は、熱可塑性糸と非熱可塑性糸との混合物であることが可能である。実質的に3つのタイプの溶着糸が、すなわち、非熱可塑性糸により囲まれた熱可塑性糸、熱可塑性糸により囲まれた非熱可塑性糸、および熱可塑性材料の純溶着糸が存在する。融点までの加熱後に、熱可塑性糸は、非熱可塑性糸(例えばポリエステルまたはnylon(商標))と融着して、ニットウェアを剛化する。熱可塑性糸の融点は、それ相応に決定され、通常は、混合糸の場合の非熱可塑性糸の融点よりも低い。
【0109】
収縮性糸は、2部構成糸である。外方構成要素は、収縮性材料であり、所定の温度を超えると収縮する。内方構成要素は、ポリエステルまたはナイロンなどの非収縮性糸である。収縮性は、布帛材料の剛直性を高める。
【0110】
ニットウェアにおいて使用するためのさらなる糸は、発光糸または反射性糸であり、いわゆる「インテリジェント」糸である。インテリジェント糸の例は、湿気、熱、または冷温に対して反応し、それに応じて特性を変化させる糸であり、例えば収縮ししたがってステッチをより小さくするか、または体積を変えしたがって空気透過性を高める。圧電繊維から作製された糸または圧電性物質でコーティングされた糸は、運動エネルギーまたは圧力変化を電気に変換することが可能であり、例えばセンサ、トランスミッタ、またはアキュムレータなどにエネルギーを供給し得る。
【0111】
さらに、一般的には、糸は、例えばコーティングされるなど再加工されて、伸縮性、色、または耐湿性などのいくつかの特性を維持することが可能である。
【0112】
(ポリマーコーティング)
緯編みニットウェアまたは経編みニットウェアは、その構造により、織成布帛材料よりも大幅に高い可撓性および伸縮性を有する。したがって、例えば本発明によるアッパーまたはソールの特定の領域などにおける特定の適用および要件のために、可撓性および伸縮性を低下させて十分な安定性を実現することが必要となる。
【0113】
これを目的として、ポリマー層を、ニットウェア(緯編み商品もしくは経編み商品)の片側または両側に対して適用することが可能であるが、一般的には他の布帛材料に対しても適用し得る。かかるポリマー層は、ニットウェアの補強および/または剛化を引き起こす。アッパーにおいては、例えば、ポリマー層は、つま先領域における、踵領域における、紐穴に沿った、外側表面上および/または内側表面上における、あるいは他の領域における、支持および/または剛化および/または弾性の低減という目的を果たし得る。さらに、ニットウェアの弾性および特に伸縮性が低減される。さらに、ポリマー層は、摩耗からニットウェアを保護する。さらに、圧縮成形によるポリマーコーティングによりニットウェアに三次元形状を与えることが可能である。
【0114】
ポリマーコーティングの第1のステップにおいては、ポリマー材料が、ニットウェアの一方の側に対して適用される。しかし、ポリマー材料は、両側に対して適用することも可能である。この材料は、噴霧、ドクターナイフによるコーティング、塗付け、印刷、焼結、アイロンがけ、または散布によって適用され得る。例えば、ポリマー材料がフィルムの形態である場合には、このフィルムは、ニットウェア上に配置され、熱および圧力によりニットウェアに連結される。最も重要な適用方法は、噴霧である。これは、ホットグルーガン(hot glue gun)と同様の工具によって実施され得る。噴霧により、ポリマー材料を薄層で均一に適用することが可能となる。さらに、噴霧は、迅速な方法である。例えば着色顔料などのエフェクト顔料をポリマーコーティング中に混合することが可能である。
【0115】
ポリマーは、好ましくは0.2〜1mmの厚さを有する少なくとも1つの層で適用される。1つまたは複数の層を適用することが可能であり、これらの層はそれぞれ異なる厚さおよび/または色からなることが可能である。様々な厚さのポリマーコーティングを有する隣接し合う領域間には、薄いポリマーコーティングを有する領域から厚いポリマーコーティングを有する領域にかけて連続的な移行部が存在し得る。これと同様に、以下で説明されるように、種々のポリマー材料が種々の領域において使用され得る。
【0116】
適用時に、ポリマー材料は、一方においてはニットウェアの糸の接触点または交差点のそれぞれに対して、および他方においては糸同士の間の間隙に対して装着され、以下に説明する処理ステップ後にはニットウェア上に閉鎖ポリマー表面を形成する。しかし、布帛構造中により大きなメッシュ開口または穴がある場合には、この閉鎖ポリマー表面は、例えば換気を可能にするためなどに、断続的であることも可能である。また、これは、適用される材料の厚さにより左右され、適用されるポリマー材料がより薄いほど、閉鎖ポリマー表面の断続化はより容易になる。さらに、ポリマー材料は、糸に浸透し染み込むことも可能であり、したがって糸の剛化に寄与する。
【0117】
ポリマー材料の適用後には、ニットウェアは、プレス機で熱および圧力下においてプレスされる。ポリマー材料は、このステップで液化し、布帛材料の糸と融着する。
【0118】
さらなる任意ステップにおいて、ニットウェアを、圧縮成形機において三次元形状へとプレスすることが可能である。例えば、アッパーの踵領域およびつま先領域を、靴型上で三次元形状設定することが可能である。代替的には、ニットウェアを、足に対して直接的に合致させることも可能である。
【0119】
プレスおよび成形後の完全な剛化までの反応時間は、使用されるポリマー材料に左右されるが、1日または2日となり得る。
【0120】
以下のポリマー材料、すなわち、ポリエステル、ポリエステル−ウレタンプレポリマー、アクリレート、アセテート、反応性ポリオレフィン、コポリエステル、ポリアミド、コポリアミド、反応系(主にH
2OまたはO
2と反応するポリウレタン系)、ポリウレタン、熱可塑性ポリウレタン、およびポリマー分散剤を使用することが可能である。
【0121】
ポリマー材料の粘度の適切な範囲は、90〜150℃において50〜80Pa s(パスカル秒)である。110〜150℃における15〜50Pa s(パスカル秒)の範囲が、特に好ましい。
【0122】
硬化ポリマー材料の硬度の好ましい範囲は、40〜60ショアDである。用途に応じて、他の硬度範囲も考えられる。
【0123】
既述のポリマーコーティングは、支持機能、剛化、高い耐摩耗性、伸縮性の解消、快適性の向上、および/または所定の三次元幾何形状への合致の中のいずれが求められる場合でも、賢明な使用が可能である。また、例えば、ポリマー材料をアッパーに適用し、次いで熱の下で足の形状に適合化させることで、着用者の足の個別の形状に対してアッパーを合致させることも考えられる。
【0124】
(補強用のモノフィラメント)
既に定義したように、モノフィラメントは、単一フィラメントすなわち単一繊維から構成された糸である。したがって、モノフィラメントの伸縮性は、多数の繊維から製造された糸の伸縮性よりも大幅に低い。また、このことにより、モノフィラメントから製造されるかまたはモノフィラメントを含む、および本発明において使用される、ニットウェアの伸縮性が低下する。
【0125】
モノフィラメントは、典型的にはポリアミドから作製される。しかし、ポリエステルまたは熱可塑性材料などの他の材料もまた考えられる。
【0126】
そのため、モノフィラメントから作製されたニットウェアは、大幅により高い剛性およびより低い伸縮性を有するが、このニットウェアは、例えば通常のニットウェアが有するような平滑性、色、水分輸送、外観、および布帛構造の多様性などの、所望の表面特性を有さない。この欠点は、以下に説明するニットウェアによって解消される。
【0127】
図8は、例えば多重繊維糸などの第1の糸から作製された緯編み層と、モノフィラメントから作製された緯編み層とを有する、緯編み編成布を示す。モノフィラメント層は、第1の糸の層の中に緯編みされる。結果的に得られる二層ニットウェアは、糸のみから作製された層に比べて、大幅により高い剛性およびより低い伸縮性を有する。モノフィラメントが若干溶融し始めると、モノフィラメントは第1の糸にさらに良好に融着する。
【0128】
図8は、特に、二層ニットウェア80の正面
図81および背面
図82を示す。これらの両図は、第1の糸から作製された第1の緯編み層83と、モノフィラメントから作製された第2の緯編み層84とを示す。第1の糸から作製された第1の布帛層83は、ステッチ85により第2の層84に対して連結される。したがって、モノフィラメントから作製された第2の布帛層84のより高い剛直性およびより低い伸縮性が、第1の糸から作製された第1の布帛層83に伝達される。
【0129】
また、モノフィラメントは、若干溶融し始めることにより、第1の糸の層に連結し、伸縮性をさらに一層制限することも可能である。この場合には、モノフィラメントは、接触点において第1の糸と融着し、モノフィラメントから作製された層に対して第1の糸を固定する。
【0130】
(モノフィラメントおよびポリマーコーティングの組合せ)
前章で説明された2つの層を有する緯編み編成布は、さらに、「ポリマーコーティング」の章で既に説明したようなポリマーコーティングによって補強することが可能である。このポリマー材料は、モノフィラメントから作製された緯編み層に対して適用される。これを行う際に、ポリマー材料は、モノフィラメントが非常に平滑かつ丸い表面を有するため、モノフィラメントの材料(例えばポリアミド材料)に対して連結せず、下に位置する第1の糸(例えばポリエステル糸)の第1の層に実質的に浸透する。したがって、後のプレス時に、ポリマー材料は、第1の層の糸に融着し、第1の層を補強する。この実施において、ポリマー材料は、第1の層の第1の糸および第2の層のモノフィラメントよりも低い融点を有する。プレス時の温度は、ポリマー材料のみが溶融し、モノフィラメントまたは第1の糸は溶融しないように、選択される。
【0131】
(溶着糸)
追加的にまたは代替的には、補強と伸縮性の低減とを目的として、本発明により使用されるニットウェアの糸は、プレス後にニットウェアを固定する溶着糸であることも可能である。実質的に3つのタイプの溶着糸が、すなわち非熱可塑性糸により囲まれた熱可塑性糸、熱可塑性糸で囲まれた非熱可塑性糸、および熱可塑性材料の純溶着糸が存在する。熱可塑性糸と非熱可塑性糸との間の結合を向上させるために、非熱可塑性糸の表面をテクスチャー化することが可能である。
【0132】
好ましくは、プレスは、110〜150℃の範囲の、特に好ましくは130℃の温度にて実施される。熱可塑性糸は、このプロセスにおいて少なくとも部分的に溶融し、非熱可塑性糸に融着する。プレス後に、ニットウェアは冷却されて、結合が硬化および固定される。溶着糸は、アッパーおよび/またはソールに配置され得る。
【0133】
一実施形態においては、溶着糸は、ニットウェア中に緯編みされる。複数層の場合には、溶着糸は、ニットウェアの1つの、複数の、または全ての層中に緯編みされ得る。
【0134】
第2の実施形態においては、溶着糸は、ニットウェアの2つの層の間に配置され得る。これを行う際に、溶着糸は、これらの層の間に単純に配置することが可能である。層の間への配置は、溶着糸と型との間における直接的な接触がないため、プレス時および成形時に型が汚れないという利点を有する。
【0135】
(補強用の熱可塑性布帛)
例えばアッパーおよび/またはソールなどにおいて本発明のために使用されるニットウェアを補強するためのさらなる1つの可能性は、熱可塑性布帛の使用である。これは、熱可塑性織成布または熱可塑性ニットウェアである。熱可塑性布帛は、熱を受けると少なくとも部分的に溶融し、冷却することにより剛化する。例えば、熱可塑性布帛は、ニットウェアを備えることができるアッパーまたはソールの表面に対して、例えば圧力および熱の印加などにより、適用することができる。冷却することにより、熱可塑性布帛は、剛化し、例えばその熱可塑性布帛が配置された領域においてアッパーまたはソールを特定的に補強する。
【0136】
熱可塑性布帛は、その形状、厚さ、および構造の点において、補強を目的として特定的に製造され得る。さらに、熱可塑性布帛の特性は、特定の領域において変更され得る。ステッチ構造、編みステッチ、および/または使用される糸は、種々の特性が種々の領域において実現されるように、変更され得る。
【0137】
熱可塑性布帛の一実施形態は、熱可塑性糸から作製された緯編み編成布または経編み編成布である。さらに、熱可塑性布帛は、非熱可塑性糸を含むことも可能である。熱可塑性布帛は、例えば圧力および熱などによりシューズのアッパーまたはソールに対して適用することが可能である。
【0138】
緯糸および/または経糸が熱可塑性である織成布が、熱可塑性布帛のもう1つの実施形態である。種々の糸を、熱可塑性織成布の緯糸方向および経糸方向に使用することにより、緯糸方向および経糸方向において伸縮性などの種々の特性を実現することが可能である。
【0139】
熱可塑性材料から作製されたスペーサ緯編み編成布またはスペーサ経編み編成布が、熱可塑性布帛のもう1つの実施形態である。この点に関して、例えばアッパーまたはソールに対する装着などを目的として、例えば1つのみの層を熱可塑性とすることが可能である。代替的には、例えばアッパーにソールを連結することなどを目的として、両層が熱可塑性を有する。
【0140】
熱可塑性緯編み編成布または経編み編成布は、「ニットウェア」の章で説明されたニットウェアのための製造技術を利用して製造することが可能である。
【0141】
熱可塑性布帛は、圧力および熱に部分的にのみさらされた補強対象表面と連結されることにより、熱可塑性布帛の1つまたは複数の特定領域のみを表面に対して連結させることが可能である。1つまたは複数の他の領域は、連結しないことにより、例えばその位置における空気および/または湿気の透過性が維持される。例えばアッパーまたはソールなどの機能および/または設計は、これによって修正することが可能である。
【0142】
(アッパー)
図9は、本発明によるアッパー51の第1の実施形態を示す。アッパー51は、ニットウェアから完全にまたは部分的に製造され得る。「ニットウェア」の章で説明されるように、ニットウェアは、緯編み機または経編み機で製造され得る。ニットウェアに加えて、アッパー51は、例えば織成布などの他の布帛と、例えばプラスチック、レザー、または金属などから作製された紐環などの非布帛要素とを備えてもよい。
【0143】
アッパー51は、より高い弾性の糸から作製されたニットウェアから製造された第1の部分領域91aを含む。第1の部分領域91aは、前足部の領域のシューズの撓曲ゾーンに延在し、足の上方側を経由して外側から内側へと延在する。この第1の部分領域は、一般的にはアッパー51の他の領域にも配置され得る。
【0144】
シューアッパー51は、第1の部分領域91aと共に一体ニットウェアとして製造された、第2の部分領域92aを備える。第1の部分領域91aおよび第2の部分領域92aは、緯編み機または経編み機にいて一体で製造され得る。第2の部分領域92aは、第1の部分領域91aに対して基本的に平行に延在し、かつ第1の部分領域91aに直に隣接する。基本的に平行なコース(2つの部分領域が相互に隣接する)ことにより、第2の部分領域92aの外形は、第1の部分領域91aの外形に倣う。
【0145】
第1の部分領域91aは、第1の糸を含み、第2の部分領域92aは、第2の糸を含む。第1の糸は、第2の糸よりも高い弾性を有する。弾性、すなわち可塑性は、例えば糸に対して引張歪みを加えることにより、および結果的に得られる長さの変化を測定することにより、測定され得る。規定の引張歪みの場合に別の糸よりも伸張する、すなわちより大きな長さの変化を被る糸が、この別の糸よりも高い弾性を有する。この測定は、通常は、長さの変化を同等の状態に維持するために両糸の同一長さの部分を用いて実施される。
【0146】
糸の弾性すなわち可塑性は、例えばヤング率として明示され得る。ヤング率は、引張歪みと結果的に得られる伸びとの商であり、この伸びは、元の長さに対する長さの変化の比を示す。ヤング率は、例えばニュートン/平方メートル(N/m
2)などとして明示され得る。したがって、より高い弾性の糸は、より低い弾性の糸よりも低いヤング率を有する。
【0147】
第1の糸は、エラステインまたはゴムを含んでもよい。これらの2つの材料は、高い可塑性を備える。第2の糸は、Nylon(商標)またはポリエステルなどのプラスチック糸であってもよいが、例えばエラステインまたはゴムに比べてより低い可塑性を備える溶着溶融糸であってもよい。
【0148】
第1の部分領域91aおよび第2の部分領域92aが、相互に直に隣接しないことも考えられる。この場合には、第1の部分領域91aにもまたは第2の部分領域92aにも割り当てられず(なぜならば例えば第1の糸も第2の糸も含まないことにより)、かつ第1の部分領域91aおよび第2の部分領域92aと共に一体ニットウェアとして製造され得るニットウェアが、第1の部分領域91aと第2の部分領域92aとの間に配置され得る。
【0149】
図9の実施形態においては、第1の部分領域91aおよび第2の部分領域92aは、ほぼ中足指節関節の領域に、すなわちシューズがローリングした場合に撓曲するゾーンに配置される。これらの関節は、足指を曲げる目的を本質的に果たす。第1の部分領域91aおよび第2の部分領域92aのこの配置により、第1の部分領域91aは、歩行時またはランニング時に、第2の部分領域92aよりも高い伸張を受ける。したがって、この配置により、足の動きが支持される。
【0150】
また、アッパー51の長手方向軸93が、
図9に示される。長手方向軸93の近傍には、第1の部分領域91aおよび第2の部分領域92aが、長手方向軸93に対して基本的に直交方向に延在し、すなわち、長手方向軸93とほぼ直角に交差する。第1の部分領域91aと長手方向軸93との間の角度は、外側および内側の方向に向かって変化する。この角度は、直角から逸脱する。これと同じことが、第2の部分領域92aに対しても当てはまる。しかし、第1の部分領域91aもしくは第2の部分領域92aまたは両部分領域91aおよび92aが、それらの各長さ全体に沿って、アッパー51の長手方向軸93と基本的に直角を形成することもまた考えられる。
【0151】
図9の実施形態においては、第1の部分領域91aおよび第2の部分領域92aは、さらに、アッパー51の長手方向軸93の周囲に実質的に対称に配置される。内側における第1の部分領域91aのコースは、長手方向軸93において鏡像となる外側のコースに対応し、またはその逆となる。これと同じことが、第2の部分領域92aのコースに対しても当てはまる。しかし、第1の部分領域91aおよび第2の部分領域92aのコースは、対称でなくてもよい。
【0152】
さらなる第1の部分領域91bが、
図9に示される。この第1の部分領域91bは、アッパー51の足首領域(カラー領域とも呼ばれる)に配置される。第2の部分領域92bが、第1の部分領域91b内に配置される。第1の部分領域91bは、第2の部分領域92bと共に一体ニットウェアとして製造される。第1の部分領域91bは、第1の糸を含み、第2の部分領域92bは、第2の糸を含む。本発明によれば、第1の糸は、第2の糸よりも高い弾性を有する。
【0153】
足首領域の第2の部分領域92bは、4つの別個の部分を備える。一般的には、第1の部分領域および第2の部分領域は、相互に連結されてもまたは連結されなくてもよいセクションを備えてもよく、すなわち部分領域が、連続表面である必要はない。また、部分領域が、例えば、相互に隣接しない2つの部分から構成されてもよい。これらの部分が、連結されない場合には、各他の部分領域は、例えばこれらの部分の間に配置されてもよい。
図9の実施形態においては、第1の部分領域91bは、第2の部分領域92bの部分同士の間に配置される。また、第1の部分領域にもまたは第2の部分領域にも割り当てられず(なぜならば例えば第1の糸も第2の糸も含まないことにより)、かつ第1の部分領域および第2の部分領域と共に一体ニットウェアとして製造され得るニットウェアが、一方の部分領域の部分と他方の部分領域の部分との間に位置することも考えられる。
【0154】
第1の部分領域91bが、
図9の実施形態においては足首領域に配置され、その弾性のより高い糸により足首領域を完全に囲むことによって、第1の部分領域91bは、足に良好にフィットし、圧力を伴っても靴擦れを生じさせることなく足首領域をしっかりと囲むように、アッパーを支持する。
【0155】
追加的には、第1の部分領域91bは、快適な着用感覚を実現するために、例えば発泡材料またはスペーサ緯編み編成布などで足首領域にパッド加工されてもよい。また、第1の部分領域91bは、足首領域にスペーサ緯編み編成布またはスペーサ経編み編成布として製造されてもよい。このようにすることで、後のパッド加工が省略される。
【0156】
また、一般的には、第2の部分領域は、スペーサ緯編み編成布またはスペーサ経編み編成布として製造されてもよい。例えば、第1の部分領域は、このようにしてパッドの機能を有し得る。
【0157】
アッパー51の甲領域にわたって延在するさらなる第1の部分領域91cが、
図9の実施形態に示される。この部分領域91cは、7つの非連結部分を備える。また、第2の部分領域92cも、第1の部分領域91cに対して平行に、アッパー51のブリッジにわたって延在する。また、第2の部分領域92cも、7つの非連続部分を備える。第1の部分領域91cは、第2の部分領域92cと共に一体ニットウェアとして製造される。第1の部分領域91cは、第1の糸を含み、第2の部分領域92cは、第2の糸を含む。第1の糸は、第2の糸よりも高い弾性を有する。
【0158】
甲領域にわたって弾性のより高い糸を有する第1の部分領域91cを配置することにより、紐を省くことができる。なぜならば、アッパー51は、アッパー51が第2の糸によりこの領域において足に対して調節されるための幾分かの可撓性を備えるからである。しかし、同時に、第2の部分領域92c中のより低い弾性の糸により、足は、足から地面に対する力の高い伝達を伴う動きの場合(例えばランニング時の急激な減速時など)に、過度のずれを防止される。換言すれば、第1の部分領域91cにより、アッパー51の良好なフィットおよび良好な調整が確保される一方で、第2の部分領域92cにより、大きな力の伝達時に足が固定され、ソールに対する最大限の移動が制限される。
【0159】
さらに、踵領域に配置された第1の部分領域91dおよび第1の部分領域91eが、
図9に示される。第2の部分領域92dまたは92eが、これらに対してそれぞれ平行に延在する。この配置においては部分領域91d、91e、92d、および92eは、部分領域91cおよび92cと同様の機能を果たす。一方において、アッパー51は、第1の部分領域91cの可塑性により踵領域において足に対して調節され、他方において、第2の部分領域92cは、例えば立っている状態から加速した場合などの高い力の伝達時に踵を固定する。踵領域においては弾性よりも安定性が必要とされるため、第2の部分領域が、例えば表面積などの点において優勢となってもよい。
【0160】
図9の第1の部分領域91a、91b、91c、91d、および91e、ならびに第2の部分領域92a、92c、92d、および92eは、アッパー51のソール領域まで延在し(
図10の破線を越えて)、したがってソール領域内に少なくとも部分的に配置される。また、アッパーが、例えば中足部領域などにおいて足を囲み、第1の部分領域が、ソールの下方に延在することも考えられる。主に中足部領域においては、第1の部分領域は、第1の糸の弾性により中足部がしっかりと囲まれるのに寄与し得る。この例においては、第1の部分領域は、足のアーチの支持機能を果たす。
【0161】
一般的には、
図9の第1の部分領域91a、91b、91c、91d、および91eなどの第1の部分領域は、例えば
図9の第2の部分領域92a、92b、92c、92d、および92eなどの第2の部分領域とは異なるメッシュ構造を備えることができる。例えば、第1の部分領域ステッチは、目がより詰まったものであってもよく、または第2の部分領域におけるステッチとは異なる基本的な連結もしくは交絡を備えてもよい。
【0162】
また、主義として、メッシュ構造は、第1の部分領域または第2の部分領域内において異なってもよい。また、緯編みまたは経編みのタイプが、第1の部分領域または第2の部分領域内において異なってもよい。
【0163】
本発明によるアッパーのニットウェアは、一般的には、「補強用のモノフィラメント」および「モノフィラメントおよびポリマーコーティングの組合せ」の章で説明されるようなモノフィラメントを補強として含んでもよい。例えば、第2の部分領域のニットウェアが、補強用のモノフィラメントを含むことなどが考えられる。この場合第2の部分領域のより低い弾性は、第2の糸のより低い可塑性に加えてモノフィラメントによって補強される。また、第2の部分領域は、「ポリマーコーティング」、「モノフィラメントおよびポリマーコーティングの組合せ」、および「補強用の熱可塑性布帛」の章において説明されるように補強され得る。また、これは、第1の部分領域に関しても当てはまる。
【0164】
また、本発明によるアッパーのニットウェアは、「糸」および「溶着糸」の章で説明するように、溶着糸を含んでもよい。この溶着糸は、融点温度を超えて加熱されることが可能であり、溶融し、ニットウェアの冷却時には剛化するため、ニットウェアを補強する。好ましくは、溶着糸が、第2の部分領域の第2の糸に加えて使用される。しかし、第1の部分領域における使用は、除外されない。
【0165】
使用される糸に関して第1の部分領域とは異なる第2の部分領域を実現するために、そのようなものとして公知である緯編み技術または経編み技術を利用することが可能である。例えば、第1の部分領域もしくは第2の部分領域または両部分領域が、インタルジア編み技術またはジャカード織り技術において編成されてもよい。
【0166】
また、アッパーは、着用者の足を本質的に完全に囲むことも可能である。この場合には、第1の部分領域もしくは第2の部分領域または両部分領域が、ソールの領域に少なくとも部分的に配置されてもよい。
【0167】
アッパー51は、シューズを実現するためにソールに対して装着され得る。これを目的として、アッパー51は、例えば「機能的編成布」の章において説明されたように、ソールに対して膠剤接着、溶接、または縫製され得る。代替的には、ソールは、アッパーと一体で製造されてもよく、例えば緯編み機または経編み機で一体ニットウェアとして製造されてもよい。
【0168】
図10は、より高い安定性またはより高い可撓性をそれぞれ必要とする、ヒトの足の骨格のゾーン101または102を示す。したがって、
図10における第一趾105の基節骨と第五趾104の末節骨との間のまたは中足部と足指関節との間のゾーン102は、歩行時の足指のローリング運動の際にシューズの高い可撓性を必要とする。対照的に、足指のゾーン101および中足骨103の上方においては、高い可撓性が望ましい。
【0169】
したがって、第1のより高い弾性の糸を有する第1の部分領域が、
図10のゾーン102の領域に配置されると有利である。これに関して、第1の部分領域は、アッパーの上部の足指の上方に配置されてもよい。しかし、アッパーが、ゾーン102の領域において足を少なくとも部分的に囲むことも、および第1の部分領域が、ソール領域において足の底部側に配置されることも可能である。
【0170】
図10のゾーン101および103の領域において足に必要な安定性を与えるためには、第2のより低い弾性を有する糸を有する第2の部分領域が、ゾーン101および103の領域に配置されると、有利である。これに関して、第2の部分領域は、アッパーの上部の足指または中足部領域の上方に配置されてもよい。しかし、アッパーが、ゾーン101および/または102の領域において足を少なくとも部分的に囲むことも、および第1の部分領域が、ソール領域において足の底部側に配置されることも可能である。
【0171】
図11は、足の種々のゾーンの詳細な解析の一例を示す。この例においては、グラフィック表示される、裸足歩行時の足の表面における、すなわち皮膚における足の局所的拡張。裸足歩行時に、ゾーン112に、すなわち足指骨と中足部領域との間のローリング領域112において、足の拡張増加が内側および外側の両方において発生するのが明らかである。しかし、例えば足首111の領域においては、若干の拡張が発生するに過ぎない。
【0172】
本発明によれば、第2のより低い弾性の糸を含む第2の部分領域は、足の表面すなわち皮膚の大きな拡張が予想されない位置に、例えば足首111の領域に配置されてもよい。このようにすることで、これらのゾーンにおいて、より大きな撓曲性および安定性が実現され得ることにより、足が安定化され、したがって図示における足の擦れおよび滑動が防止または軽減される。
【0173】
しかし、また同時にシューズの着用者に非常に好適な歩行感覚を与えるために、より高い弾性を有する第1の糸を有する第1の部分領域は、足のより大きな拡張が予想されるゾーンに配置されるべきである。これは、例えば
図11のゾーン112に該当する。
【0174】
図12は、第1の部分領域および第2の部分領域が踵の周囲に延在する、本発明によるアッパー51の一実施形態を示す。例として、第1の部分領域が、参照番号121で示され、第2の部分領域が、参照番号122で示される。第1の部分領域121および第2の部分領域122は、リボン状に甲の上方に、踵の周りに、および足の内側に(
図12には図示せず)、そして前足部領域まで戻るように延在する。第1の部分領域121および第2の部分領域122のこの配置により、運動エネルギーが、運動シーケンス中に、位置エネルギーの形態で一時的に保存され、運動エネルギーへと変換されて戻され得る。例えば歩行時には、第1の部分領域121は、例えば足が踵から趾球へと移動された場合などに、伸張される。このために必要なエネルギーは、ゴムと同様に、位置エネルギーの形態で保存される。足が、例えば趾球を介して踏み切られると、このエネルギーは、再び運動エネルギーへと変換され、第1の部分領域121が、元の長さに復帰する。このようにすることで、シューズの着用者によりもたらされたエネルギーが、運動シーケンス全体に対してより良好に分配される。