(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、複数の実施形態による空気調和機について、図面を参照して説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0011】
(第1実施形態)
第1実施形態について、
図1から
図9を参照しながら説明する。
図1に示すように、空気調和機10は、屋外に設置される室外機20と、屋内の例えば壁上部に設置される室内機30と、空気調和機の運転操作信号および運転条件や空温等の設定信号を送信する図示しないリモコンと、を備えている。
【0012】
この空気調和機10は、室外機20と室内機30とが冷媒配管11によって接続された周知の冷凍サイクルを備え、また、室外機20と室内機30とが、図示しない電気配線により接続されている。
室外機20は、圧縮機21、室外熱交換器22、室外送風機23、電子膨張弁24、及び四方弁25等を有している。
室内機30は、室内熱交換器31、及び室内送風機32等を有している。
【0013】
圧縮機21は、吸込口側からガス冷媒を吸い込み、その冷媒を圧縮し吐出口側から吐出させることで、冷凍サイクル内に冷媒を循環させる。圧縮機21は、能力可変型であって、図示しないインバータ制御装置によりその運転周波数(回転数)を変更可能に構成されている。
【0014】
電子膨張弁24は、通常圧縮機吸込側の温度又は圧力に応じて開度を制御することで通過する冷媒の絞り量が適正になるよう調整する。この電子膨張弁24は、膨張装置に相当する。なお、膨張装置は、絞り量を制御可能な電子膨張弁に限られず、メカニカル式の膨張弁やキャピラリチューブのような絞り量が一定に構成された膨張手段であっても良い。
【0015】
四方弁25は、圧縮機21から吐出された冷媒の流路及び圧縮機に吸い込まれる冷媒の流路を冷房運転時と暖房運転時とで正逆に切り換える。この場合、冷媒は、冷房運転時に
図1の矢印Aで示す方向へ流れ、暖房運転時に
図1の矢印Bで示す方向へ流れる。
【0016】
室外熱交換器22では、冷媒の流れる方向に応じて放熱又は吸熱作用が行われる。室外送風機23は、運転により室外熱交換器22に対して空気の流れを生じさせ、これにより室外熱交換器22を通過する空気との熱交換を促す。
【0017】
室内熱交換器31では、冷媒の流れる方向に応じて放熱又は吸熱作用が行われる。室内送風機32は、運転により室内熱交換器31に対して空気の流れを生じさせ、これにより室内熱交換器31を通過する空気との熱交換を促し、その熱交換後の温風又は冷風を室内へ供給する。なお、室内用送風機としては、横流ファンに限らず他の構成であってもよい。
【0018】
また、空気調和機10は、温度検出手段として、吸込温度センサ41、吐出温度センサ42、外気温度センサ43、室外熱交温度センサ44、内気温度センサ45、及び室内熱交温度センサ46を備えている。各温度センサ41〜46は、例えばサーミスタで構成されているが、他の構成であってもよい。
【0019】
吸込温度センサ41、吐出温度センサ42、外気温度センサ43、及び室外熱交温度センサ44は、室外機20に設けられている。吸込温度センサ41は、圧縮機21の吸い込み側の冷媒配管11に設けられている。吸込温度センサ41は、圧縮機21に吸い込まれる前の冷媒の温度を検出するものであって、吸込温度検出手段として機能する。吐出温度センサ42は、圧縮機21の吐出側の冷媒配管11に設けられている。吐出温度センサ42は、圧縮機21から吐出された冷媒の温度を検出するものであって、吐出温度検出手段として機能する。外気温度センサ43は、室外機20内において室外の空気と接触する箇所に設けられている。外気温度センサ43は、室外の温度つまり外気温度を検出するものであって、外気温度検出手段として機能する。室外熱交温度センサ44は、室外熱交換器22に設けられている。室外熱交温度センサ44は、室外熱交換器22の温度を検出するものであって、室外熱交換温度検出手段として機能する。
【0020】
また、内気温度センサ45及び室内熱交温度センサ46は、室内機30に設けられている。内気温度センサ45は、室内機30内において室内の空気と接触する箇所に設けられている。内気温度センサ45は、室内の温度つまり内気温度を検出するものであって、内気温度検出手段として機能する。なお、内気温度センサ45は、例えば図示しないリモコンに設けてもよい。室内熱交温度センサ46は、室内熱交換器31に設けられている。室内熱交温度センサ46は、室内熱交換器31の温度を検出するものであって、室内熱交温度検出手段として機能する。
【0021】
また、
図2に示すように、空気調和機10は、室外機20及び室内機30を制御して冷房運転、暖房運転、除湿運転等の空調を行うための制御装置12を備えている。
制御装置12には、圧縮機21、室外送風機23、電子膨張弁24、四方弁25、室内送風機32、および各温度センサ41〜46が接続されている。制御装置12は、図示しないリモコンからの空気調和機の運転操作信号および運転条件や空温等の設定信号、各温度センサ41〜46の検出データに基づき、圧縮機21、室外送風機23、電子膨張弁24、四方弁25、室内送風機32の動作を制御する。
【0022】
制御装置12は、ユーザーによって目標温度Tmが設定されて空調運転を開始すると、内気温度センサ45で検出した内気温度Tinと目標温度Tmとの差に基づいて空調負荷を算出し、その空調負荷に基づいて最小周波数Fmin及び最大周波数Fmaxを設定する。空調負荷は、内気温度Tinと目標温度Tmとの差の大小によって増減する。つまり、内気温度Tinと目標温度Tmとの差が大きい場合、空調負荷は大きくなる。この場合、最小周波数Fmin及び最大周波数Fmaxは、比較的大きい値に設定される。一方、内気温度Tinと目標温度Tmとの差が小さい場合、空調負荷は小さくなる。この場合、最小周波数Fmin及び最大周波数Fmaxは、比較的小さい値に設定される。本実施形態の場合、例えば暖房運転において、暖房運転前の内気温度Tinを18[℃]、目標温度Tmを27[℃]とすると、最小周波数Fminは10[Hz]、最大周波数Fmaxは70[Hz]に設定される。
【0023】
そして制御装置12は、内気温度Tinに基づいて、最小周波数Fmin及び最大周波数Fmaxの範囲内で指令周波数Fcを決定し、その指令周波数Fcで圧縮機21を駆動させる。その後、空調が行われて内気温度Tinが目標温度Tmに到達すると、制御装置12は、温度制御を禁止し、圧縮機21の駆動を停止させる。この場合、制御装置12は、指令周波数Fcを無視した制御を行う。この指令周波数Fcを無視した制御の期間を、温度制御禁止期間と称する。
【0024】
ここで、温度制御禁止期間中の冷凍機油の温度状態の変化、その温度状態の変化が与える影響、及びその影響を是正するための措置について、
図3及び
図4を参照して、従来の制御と本願の制御とを比較しながら説明する。
図3は、従来の制御による内気温度Tinと、圧縮機21内の冷凍機油の温度Toilと、圧縮機21の駆動周波数Fdとの関係を示したグラフである。
図4は、本願の制御による内気温度Tinと、圧縮機21内の冷凍機油の温度Toilと、圧縮機21の駆動周波数Fdとの関係を示したグラフである。なお、駆動周波数Fdは、圧縮機21が実際に駆動される周波数を意味する。
【0025】
圧縮機21内には、圧縮機21の摺動部品を潤滑するための潤滑油として冷凍機油が貯留されている。冷凍機油には、例えば合成油や鉱油があるが、特にこれらに限られない。一般に冷凍機油は、所定温度付近で潤滑特性や粘度特性が良くなる特性を有しており、本実施形態の場合、その所定温度は例えば60[℃]前後である。
【0026】
冷凍機油の温度が所定温度付近である場合、冷凍機油は、圧縮機21内を通過する冷媒に比較的溶け込み難いため、冷媒と共に圧縮機21から吐出され難い。したがって、この場合、冷凍機油の大部分は圧縮機21内に残留している。一方、冷凍機油の温度が所定温度よりも大幅に低下すると、冷凍機油は、圧縮機21内を通過する冷媒に比較的溶け込み易くなる。すると、冷凍機油は、冷媒によって希釈化されて潤滑特性や粘度特性が低下するとともに、冷媒と共に圧縮機21から吐出され易くなり、圧縮機21内に残留している冷凍機油の残量が減少する。
【0027】
そして、温度制御禁止期間においては、圧縮機21が停止されていることにより、圧縮機21内の温度が低下する。すると、圧縮機21内の冷凍機油の温度も低下し、これにより上述した圧縮機21内における冷凍機油の残量の減少や潤滑特性の低下などが生じ、その結果、圧縮機21の摺動部品の焼き付けなどの問題が生じるおそれがある。
【0028】
そのため、従来の制御では、
図3に示すように、温度制御禁止期間C3において、圧縮機21を保護するための保護運転を断続的に実行するようにしていた。この保護運転は、温度制御禁止を無視して、圧縮機21を最小周波数Fminよりも高い周波数で駆動させるものである。これにより、冷凍機油の温度Toilは、所定温度この場合60[℃]近辺まで上昇し、冷凍機油の潤滑特性を維持することができる。しかし、この場合、圧縮機21の駆動に伴って室内熱交換器31も作用するため、内気温度Tinが目標温度Tmこの場合27[℃]から外れるいわゆるオーバーシュートが生じる。
【0029】
ここで、1回の保護運転の期間を短くし、内気温度Tinが目標温度Tmを超える前に圧縮機21の駆動を停止することも考えられる。しかし、保護運転の期間を短くして冷凍機油の温度Toilの大幅な低下を防ぐためには、保護運転の期間を短くした分、保護運転の回数を増やす必要がある。そのため、保護運転の期間をあまりに短くし過ぎると、圧縮機21の起動、停止の回数が多くなり、その結果、圧縮機21の負荷が増大して圧縮機21の劣化が早まるといった問題がある。
【0030】
そこで、本実施形態では、以下のようにして、圧縮機21の起動、停止の回数を抑制して圧縮機21の負担を低減しつつ、いわゆるオーバーシュートを考慮した保護運転を実行している。すなわち、本実施形態では、温度制御禁止期間中の保護運転において、制御装置12は、最小周波数Fminよりも高い第1周波数Faで圧縮機21を立ち上げた後、その第1周波数Faよりも低くかつ最小周波数Fmin以上である第2周波数Fbで圧縮機21を運転する。なお、保護運転における第1周波数Fa及び第2周波数Fbを、総称して保護周波数Fa、Fbと称する。
【0031】
第1周波数Fa及び第2周波数Fbは、冷凍機油の温度状態に基づいて選定される。ここで、温度制御禁止期間C3中は、冷凍機油の温度が次第に低下していくが、圧縮機21の周囲の温度つまり外気温度Toutが低い程、冷凍機油の温度Toilも低下し易い。そのため、温度制御禁止期間C3中の冷凍機油の温度状態は、外気温度Toutからある程度推定することができる。本実施形態では、制御装置12は、温度制御禁止期間C3中の冷凍機油の温度状態を、外気温度センサ43により検出した外気温度Toutに基づいて推定する。そして、制御装置12は、その推定結果に基づいて第1周波数Fa、第2周波数Fbを選定する。
【0032】
この場合、制御装置12は、ROMやRAMから構成された記憶部に、
図5に示すテーブルDを記憶している。テーブルDは、保護運転の内容に関する情報であって、第1周波数Fa、第1期間Ha、第2周波数Fb、第2期間Hb、及び保護運転期間Hを、それぞれ外気温度Toutに応じて定めたものである。
【0033】
第1周波数Faは、保護運転において圧縮機21を立ち上げる際の圧縮機21の周波数である。第1期間Haは、保護運転において、第1周波数Faで圧縮機21を駆動させる期間である。第2周波数Fbは、保護運転において第1周波数Faで圧縮機21を立ち上げた後に、圧縮機21の周波数を下げて駆動させる場合の圧縮機21の周波数である。第2期間Hbは、保護運転において、第2周波数Fbで圧縮機21を駆動させる期間である。保護運転期間Hは、保護運転をする期間であり、保護運転の1サイクルの期間を意味する。第1期間Haと第2期間Hbの合計が、保護運転期間Hとなる。本実施形態の場合、第1期間Haは3分以上に設定されている。また、保護運転期間Hは、10分に設定されている。
【0034】
この場合、
図6に示すように、第1周波数Faは、最小周波数Fminの2倍以上であって3倍未満に設定されている。第2周波数Fbは、第1周波数Faの1/2以下に設定されている。第1期間Haは、第2期間Hbよりも短くなるように設定されている。第1期間Haは、3分間以上に設定されている。そして、第1期間Haと第2期間Hbの合計である保護運転期間Hは、10分に設定されている。また、テーブルDは、外気温度Toutによって3段階に設定された設定D1〜D3を有している。この場合、外気温度Toutが低くなるほど、第1周波数Fa、第2周波数Fb、及び保護運転期間Hが大きくなるように設定されている。
【0035】
次に、上記構成の空気調和機10の具体的な制御内容について、
図7〜
図9も参照して説明する。
図7に示すように、まず、空気調和機10は、電源が投入されて(スタート)、その後ユーザーにより目標温度Tmが設定される(ステップS11)。すると、制御装置12は、内気温度センサ45により室内の温度つまり内気温度Tinを検出した後、内気温度Tinと目標温度Tmとの差に基づいて空調負荷を算出し、その空調負荷に応じて最小周波数Fmin及び最大周波数Fmaxを決定する(ステップS12)。
【0036】
次に、制御装置12は、現在の内気温度Tinに基づいて、最小周波数Fminから最大周波数Fmaxの範囲内で指令周波数Fcを算出し(ステップS13)、その指令周波数Fで圧縮機21を駆動させると共に、室外送風機23や室内送風機32等を駆動させる(ステップS14)。これにより、冷凍サイクルが作用し、室内の空調を開始する。制御装置12は、内気温度Tinが目標温度Tmに到達するまで、ステップS13〜ステップS15を繰り返す(ステップS15でNO)。
【0037】
この場合、空調により内気温度Tinが目標温度Tmに近づくと、指令周波数Fcは次第に小さくなり、それに伴い、
図4の期間C1に示すように、駆動周波数Fdも次第に小さくなる。そして、さらに内気温度Tinと目標温度Tmとの差が縮まると、指令周波数Fcつまり駆動周波数Fdは、最終的に
図4の期間C2に示すように最小周波数Fminになる。そして、空調により内気温度Tinが目標温度Tmに達して内気温度Tinと目標温度Tmとの差がほとんど無くなると(
図5のステップS15でYES)、制御装置12は、空調負荷が低負荷状態であると判断する。すると、制御装置12は、内気温度Tinに基づく温度制御を禁止して圧縮機21の駆動を停止し、これにより温度制御禁止期間を開始する(ステップS16)。
【0038】
次に、制御装置12は、保護運転を実行するための周波数つまり保護周波数Fa、Fbを決定するための保護周波数選定処理を実行する(ステップS17)。制御装置12は、保護周波数選定処理を実行すると、
図8のステップS31において指令周波数Fcを取得し、次にステップS32において外気温度センサ43により外気温度Toutを取得する。その後、制御装置12は、ステップS33において外気温度Toutに基づいて
図8に示す設定D1〜D3の中からいずれか一を選択し、保護運転における保護周波数Fa、Fbを選定する。その後、制御装置12は、
図7のステップS18へ移行する(リターン)。
【0039】
なお、外気温度Toutと室外熱交換器22の温度とは相関性がある。そのため、例えば次のような構成としても良い。すなわち、制御装置12は、ステップS32において、外気温度Toutに換えて室外熱交温度センサ44の検出結果を取得する。そして、制御装置12は、室外熱交温度センサ44の検出結果に基づいて、
図8に示す設定D1〜D3の中からいずれか一を選択する。この場合、室外熱交温度センサ44は、室外の温度を検出する外気温度検出手段として機能する。これによれば、外気温度センサ43を新たに設ける必要がなく、センサの数を低減することができる。
【0040】
次に、制御装置12は、ステップS31で取得した指令周波数Fcが第1周波数Fa以上であるか否かを判断する(ステップS18)。ステップS31で取得した指令周波数Fcが第1周波数Fa以上である場合(ステップS18でYES)、制御装置12は、温度制御禁止期間を終了し(ステップS19)、ステップS14へ移行してステップS14〜ステップS18を繰り返す。一方、ステップS31で取得した指令周波数Fcが第1周波数Fa未満である場合(ステップS18でNO)、制御装置12は、ステップS20へ移行し、保護運転を実行する。
【0041】
制御装置12は、ステップS20において保護運転を実行すると、
図9に示すステップS41へ移行し、第1周波数Faで圧縮機21を駆動させる。制御装置12は、第1期間Haが経過するまで第1周波数Faで圧縮機21を駆動する(ステップS42でNO)。制御装置12は、第1期間Haが経過すると(ステップS42でYES)、ステップS43へ移行して第2周波数Fbで圧縮機21を駆動させる。そして、制御装置12は、第2期間Hbが経過するまで第2周波数Fbで圧縮機21を駆動する(ステップS44でNO)。そして、制御装置12は、第2期間Hbが経過すると(ステップS44でYES)、圧縮機21を停止させる(ステップS45)。その後、制御装置12は、
図7のステップS16へ移行し、ステップS16〜ステップS18の制御内容を繰り返す。なお、第1周波数Fa及び第2周波数Fbによる一連の駆動制御を保護運転の1サイクルとし、温度制御禁止期間C3が継続している間は、保護運転が断続的に回繰り返されている。
【0042】
これによれば、
図4に示すように、冷凍機油温度Toilは、温度制御禁止期間C3中であっても保護運転によって所定温度この場合60[℃]近くまで上昇する。一方、内気温度Tinは、第1期間Ha中に急激の上昇するものの、第2期間Hb中にはその上昇が緩やかになる。そのため、ある程度の期間保護運転を継続しても、内気温度Tinが目標温度Tmを超え難くなる。このように、保護運転において立ち上がりの周波数を大きくし、その後、周波数を下げて圧縮機21の駆動を継続することにより、保護運転の期間が短くなり過ぎることを防ぎつつ冷凍機油の温度Toilの大幅な低下を防ぐとともに、いわゆるオーバーシュートを防ぐことできる。その結果、圧縮機21の信頼性の維持と空調による快適性の維持の両立を図ることができる。
【0043】
また、制御装置12は、冷凍機油の温度状態に基づいて、保護周波数Fa、Fbを決定する。これによれば、冷凍機油の温度状態に適したより保護運転を実行することができるため、より適切に圧縮機21を保護することができる。
【0044】
また、制御装置12は、外気温度センサ43で検出した外気温度Toutに基づいて冷凍機油の温度状態を推定し、これにより保護周波数Fa、Fbを決定する。冷凍機油の温度状態は、外気温度の影響を受けやすいことから、この構成によれば、簡易な構成で、冷凍機油の温度状態により適した保護運転を実行することができる。
【0045】
保護運転における第1周波数Faが過小だと冷凍機油の温度を充分に上昇させることができない一方、第1周波数Faが過大だと温度制御禁止期間を解除した際に出力が大きくなり過ぎて空調の快適性を損ねることに繋がる。そこで、本実施形態において、保護運転における第1周波数Faは、最小周波数Fminの2倍以上3倍未満の範囲で設定される。これによれば、保護運転により冷凍機油の温度を充分に上昇させつつ、温度制御禁止期間の解除時における出力を抑制し空調の快適性を維持することができる。
【0046】
同様に、保護運転における第1期間Haが過小だと冷凍機油の温度を充分に上昇させることができない一方、第1期間Haが過大だと内気温度Tinが上昇し過ぎて空調の快適性を損ねることに繋がる。そこで、本実施形態において、第1期間Haは、第2期間Hbよりも短くなるように設定されている。これによれば、冷凍機油の温度を上昇させて圧縮機21の信頼性を維持するとともに、保護運転による過度な出力を抑制して空調の快適性を維持することができる。なおこの場合、第1期間Haと第2期間Hbの合計である保護運転期間Hは、従来の保護運転の期間と同等かそれより短く設定されている。
【0047】
また、第1期間Haは3分以上に設定されている。これによれば、保護運転によって冷凍機油の温度を充分に上昇させることができる。また、第2周波数Fbは、第1周波数Faの半分以下に設定されている。これによれば、冷凍機油の温度を十分に上昇させつつ、内気温度Tinの過剰な変化をより適切に抑制することができる。
【0048】
また、本実施形態において、保護運転における圧縮機21の周波数は、第1周波数Faと第2周波数Fbとの2段階に設定されている。これによれば、制御を極力簡素化することができる。
【0049】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について
図10を参照して説明する。
第2実施形態は、第2周波数Fbが2段階以上の多段階この場合2段階に設定されている点で、上記第1実施形態と異なる。この場合、第2周波数Fbとして、第2周波数Fba、Fbbの2段階が設定されている。第2周波数Fba、Fbbは、第1周波数Faよりも小さい。また、第2周波数Fbbは、第2周波数Fbaよりも小さい。これにより、制御装置12は、保護運転の第2期間Hbにおいて、周波数を段階的に低減させながら圧縮機21を駆動させる。これによれば、保護運転の周波数をより細かく制御することにより、保護運転による内気温度Tinの温度変化より抑制することができる。
【0050】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について
図11及び
図12を参照して説明する。
上記第1実施形態では、冷凍機油の温度状態を外気温度Toutから推定していた。一方、第3実施形態では、冷凍機油の温度状態を、外気温度Toutと、圧縮機21から吐出される冷媒の温度つまり吐出温度センサ42により検出される冷媒の吐出温度Tdと、から推定する。
この場合、冷凍機油の推定温度Txは、次の(1)で算出される。
Tx=Kout×Tout+Kd×Td・・・(1)
【0051】
なお、Kout及びKdは、圧縮機21のサイズや能力、冷媒や冷凍機油の封入量、及び熱交換器22、31の性能等によって定まる係数である。
図11を見ると、式(1)で推定された冷凍機油の推定温度Txは、冷凍機油の温度を直接的に計測した温度である温度Toilに近似していることがわかる。
【0052】
この場合、制御装置12が記憶するテーブルDは、
図5に示す内容に換えて、
図12に示す内容である。
図12に示すテーブルDは、冷凍機油の推定温度Txに基づくものである。
図12のテーブルDも、
図5のテーブルDと同様に、冷凍機油の推定温度Txに応じて、3段階に第1周波数Fa、第1期間Ha、第2周波数Fb、第2期間Hb、及び保護運転期間Hが定められている。
【0053】
これによれば、冷凍機油の温度状態を外気温度Tout又は吐出温度Tdのいずれか一方のみで推定した場合に比べて、より正確に冷凍機油の温度状態を把握することができる。したがって、冷凍機油の温度状態に合わせたより適切な保護運転を実行することができ、その結果、圧縮機21の信頼性の向上と空調による快適の維持をより適切に図ることができる。
【0054】
以上実施形態の空気調和機によれば、制御手段は、空調負荷が低い低負荷運転時において温度制御を禁止する温度制御禁止期間中に最小周波数よりも高い第1周波数で圧縮機を立ち上げた後に第1周波数よりも低くかつ最小周波数以上である第2周波数で圧縮機を運転する保護運転を実行する。これによれば、温度制御禁止期間中における冷凍機油の大幅な温度低下を抑制するとともに、内気温度つまり室内の温度の変化を極力抑えることができる。これにより、圧縮機の信頼性の維持と空調による快適性の維持の両立を図ることができる。
【0055】
なお、上述の各実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。本実施形態およびその変形は、発明の範囲および要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。