特許第6403414号(P6403414)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6403414
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】衣類乾燥機
(51)【国際特許分類】
   D06F 58/02 20060101AFI20181001BHJP
【FI】
   D06F58/02 F
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-84615(P2014-84615)
(22)【出願日】2014年4月16日
(65)【公開番号】特開2015-202328(P2015-202328A)
(43)【公開日】2015年11月16日
【審査請求日】2017年2月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 勉
(72)【発明者】
【氏名】林 秀竹
【審査官】 山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−182861(JP,A)
【文献】 特開2008−073152(JP,A)
【文献】 特開2012−161355(JP,A)
【文献】 特開2011−152175(JP,A)
【文献】 特開2008−035958(JP,A)
【文献】 特開2003−004253(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02305876(EP,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02246470(EP,A1)
【文献】 特開2013−202318(JP,A)
【文献】 特開平05−154029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 58/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥室と、
この乾燥室内の空気を、循環用送風機の運転により、乾燥室外に設けた通風路を通して乾燥室内に戻す循環を行わしめる循環装置と、
前記通風路に設けられて前記循環空気の除湿をする除湿手段並びに前記循環空気の加熱をする加熱手段とを具備し、
前記循環用送風機と前記除湿手段並びに前記加熱手段との運転による乾燥運転を行う構成にあって、
前記通風路の少なくとも一部に、前記循環空気から吸湿する吸湿機能と放湿機能とを有する吸放湿部材を含み、
前記吸放湿部材としてアクリル系微粒子が用いられ、その放湿機能は、前記乾燥運転の後に前記加熱手段からの熱を与えなくても当該乾燥運転中に吸収した水分を放出して再度吸湿可能状態に戻る自然放湿によることを特徴とする衣類乾燥機。
【請求項2】
前記通風路の少なくとも一部の周壁全体を、前記吸放湿部材で形成したことを特徴とする請求項1記載の衣類乾燥機。
【請求項3】
前記吸放湿部材は、吸湿機能と放湿機能とを有する前記アクリル系微粒子を前記通風路の少なくとも一部の周壁を構成する部材に練り込んで成るものであることを特徴とする請求項1記載の衣類乾燥機。
【請求項4】
前記吸放湿部材は、吸湿機能と放湿機能とを有する前記アクリル系微粒子を前記通風路の少なくとも一部の周壁を構成する部材に塗布して成るものであることを特徴とする請求項1記載の衣類乾燥機。
【請求項5】
前記吸放湿部材は、前記通風路の前記除湿手段より上流側に位置することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項記載の衣類乾燥機。
【請求項6】
前記通風路に被乾燥衣類から散出するリントを捕獲するフィルタ装置が設けられ、前記吸放湿部材は、そのフィルタ装置より下流側に位置することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項記載の衣類乾燥機。
【請求項7】
前記吸放湿部材は、網状に形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項記載の衣類乾燥機。
【請求項8】
前記通風路に前記循環空気の一部を通風路外に排出する排気部が存在し、前記吸放湿部材は、その排気部に設けられていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項記載の衣類乾燥機。
【請求項9】
前記通風路に通風路外の空気を吸入する吸気部が存在し、前記吸放湿部材は、その吸気部に設けられていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項記載の衣類乾燥機。
【請求項10】
前記通風路に通風路外の空気を吸入する吸気部が存在し、前記吸放湿部材は、前記通風路に代えて、もしくはそれに加えて、前記乾燥室を囲繞する外箱の内面に設けられていることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項記載の衣類乾燥機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は衣類乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の洗濯乾燥機など衣類乾燥機においては、乾燥室内の空気を、循環用送風機の運転により、乾燥室外に設けた通風路を通して乾燥室内に戻す循環を行わしめる循環装置を有し、この循環装置の上記通風路に循環空気の除湿をする除湿手段と循環空気の加熱をする加熱手段とを設けて、衣類を乾燥させるようにしたものが供されている。
そして、そのものにおいて、更に循環装置の上記通風路にデシカント(ゼオライト)方式の除湿器を設け、それによる除湿機能の付加で、乾燥時間の短縮と消費電力量の低減とを図ったものが供されている(例えば特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−161355号公報
【特許文献2】特開2012−29783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の循環装置の通風路にデシカント方式の除湿器を設けたものは、循環装置の通風路(第1の通風路)とは別に第2の通風路を有し、その両通風路にまたがってデシカント方式の除湿器を設け、この除湿器をモータにより回転させることで、第1の通風路で上記循環空気の吸湿をし、第2の通風路で該第2の通風路を通る空気に放湿をするものであり、その第2の通風路での放湿をするために除湿器を加熱するヒータを要するものである。
【0005】
従って、上述の循環装置の通風路にデシカント方式の除湿器を設けたものでは、除湿器に加えて、循環装置の通風路とは別の第2の通風路、除湿器を回転させるモータ、及び除湿器を加熱するヒータを必要とするものであり、構造が複雑になると共に、消費電力量の低減を充分に図ることのできないものであった。
【0006】
そこで、構造が複雑とならず、消費電力量の低減を充分に図ることができて、乾燥時間の短縮化ができる衣類乾燥機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態の衣類乾燥機は、乾燥室と、この乾燥室内の空気を、循環用送風機の運転により、乾燥室外に設けた通風路を通して乾燥室内に戻す循環を行わしめる循環装置と、前記通風路に設けられて前記循環空気の除湿をする除湿手段並びに前記循環空気の加熱をする加熱手段とを具備し、前記循環用送風機と前記除湿手段並びに前記加熱手段との運転による乾燥運転を行う構成にあって、前記通風路の少なくとも一部に、前記循環空気から吸湿する吸湿機能と放湿機能とを有する吸放湿部材を含み、前記吸放湿部材としてアクリル系微粒子が用いられ、その放湿機能は、前記乾燥運転の後に前記加熱手段からの熱を与えなくても当該乾燥運転中に吸収した水分を放出して再度吸湿可能状態に戻る自然放湿によることを特徴とする。

【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態を示す、図2のI-I線に沿う断面図
図2】衣類乾燥機(洗濯乾燥機)全体の、一部を破断した概略縦断背面図
図3】衣類乾燥機(洗濯乾燥機)全体の、一部を破断した概略縦断側面図
図4】循環装置とヒートポンプの概略構成図
図5】第2の実施形態を示す図1相当図
図6】第3の実施形態を示す図1相当図
図7】第4の実施形態を示す図1相当図
図8】第5の実施形態を示す図3相当図
図9】第6の実施形態を示す図1相当図
図10】第7の実施形態を示す図2相当図
図11】第8の実施形態を示す図2相当図
図12】第9の実施形態を示す図2相当図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、洗濯乾燥機に適用して、その第1の実施形態につき、図1から図4を参照して説明する。
まず、図2及び図3には、洗濯乾燥機、中でもドラム式(横軸形)洗濯乾燥機の全体構成を示しており、外箱1の内部に外槽2を配設し、外槽2の内部に回転槽(ドラム)3を配設している。本実施形態においては、この外槽2と回転槽3とで洗濯室兼用の乾燥室を構成するものであり、回転槽3は、周側壁の全域に通水及び通風兼用の孔4を有する多孔状を成している。
【0010】
上記外槽2及び回転槽3は又、ともに軸方向が前後(図3で左右)の横軸円筒状を成すものであり、それを図示しないサスペンションにより前上がり(図3で左上がり)の傾斜状に弾性支持している。更に、これら外槽2及び回転槽3は、ともに前面が開口しており、それに対して、外箱1の前面部のやゝ上向きに傾斜した上部には扉5によって開閉される衣類出入口(図示省略)を形成し、この衣類出入口と外槽2の前面の開口部とを図示しないベローズにより連ねている。
【0011】
外槽2の背面にはモータ6を取付けている。このモータ6は、例えばアウターロータ形のブラシレスモータであり、回転槽3を直に回転駆動するようになっている。従って、モータ6は回転槽3を回転駆動する駆動装置として機能するものである。
このほか、外槽2の最下部である底部の最後部には、電動の排水弁7を有する排水管路8を接続して設け、この排水管路8により外槽2内の水を機外に排出するようにしている。
【0012】
外槽2の下方(外箱1の奥底部)には通風ダクト9を配置している。この通風ダクト9は、図2に示すように、左右に長いボックスで、その一端部(図2で左側部)の上部に蛇腹状等の可撓ダクト継手10を介して吸気ダクト11の一端部を接続している。吸気ダクト11は、外箱1内の奥部の一方側(図2で左側)を下部から上方へ、そして図3に示すように前方へと配管しており、他端部(上前端部)をフィルタ装置12に接続している。
【0013】
フィルタ装置12は、もっぱら洗濯物(被乾燥衣類)から散出するリントを捕獲するもので、図示しないフィルタ本体を外箱1の上面部の前部において着脱することにより掃除ができるようになっており、このフィルタ装置12を蛇腹状等の可撓接続ホース13を介して、前記外槽2の前部の上部に形成した温風出口14に接続している。すなわち、通風ダクト9の一端部には、外槽2の温風出口14を、可撓接続ホース13、フィルタ装置12、吸気ダクト11、及び可撓ダクト継手10を介して接続しているのである。
【0014】
一方、通風ダクト9の他端部(図2で右側部)には、循環用送風機15を連設している。この循環用送風機15は、詳細には、ケーシング15aの内部に送風羽根車15bを収容し、この送風羽根車15bをケーシング15aの外部に取付けたモータ15cにより回転駆動するもので、上記通風ダクト9の他端部には、ケーシング15aの入口部を連通させている。
【0015】
そして、循環用送風機15のケーシング15aの出口部には、蛇腹状等の可撓ダクト継手16を介して給気ダクト17の一端部を接続している。給気ダクト17は、外箱1内の奥部の他方側(図2で右側)を下部から前記外槽2の背面部に前記モータ6部分を迂回させて配管しており、他端部(上端部)を、前記外槽2の後部の上部に形成した温風入口18(図3参照)に接続している。
【0016】
これらの結果、前記可撓接続ホース13、フィルタ装置12、吸気ダクト11、可撓ダクト継手10、通風ダクト9、循環用送風機15のケーシング15a、可撓ダクト継手16、及び給気ダクト17により、前記外槽2の温風出口14と温風入口18とを接続して、外槽2の外部に通風路19を構成している。
【0017】
循環用送風機15は、回転槽3内の空気を、図2及び図3に矢印で示すように、外槽2内から上記通風路19を通して外槽2外に出した後、外槽2内に、そして回転槽3内に戻す循環を行わしめるようになっており、もって、通風路19と循環用送風機15とにより回転槽3内の空気を循環させる循環装置20を構成している。
【0018】
そして、通風路19中、通風ダクト9の内部には、上流側(図2で左側)に蒸発器21を配設しており、下流側(図2で右側)に凝縮器22を配設している。これらの蒸発器21及び凝縮器22は、図4に示す圧縮機23及び絞り器24とでヒートポンプ25を構成するもので、このヒートポンプ25においては、接続パイプ26によって、圧縮機23、凝縮器22、絞り器24、蒸発器21、及び圧縮機23の順に、それらをサイクル接続しており(冷凍サイクル)、圧縮機23が作動することによって、サイクルに封入した冷媒を循環させるようになっている。
【0019】
なお、絞り器24は、圧縮機23で圧縮し凝縮器22で液化した後の冷媒を減圧する減圧手段であって、この場合、電子膨張弁(PMV)を用いているが、他の減圧手段(例えばキャピラリチューブ等)を用いても良い。
又、圧縮機23は、詳細には図示しないが、例えばロータリー形であり、更に、圧縮機構部とモータ部とから構成されていて、そのモータ部には、インバータ電源(圧縮機駆動手段に相当)により設定周波数の駆動電源を供給するようにしている。これにより、モータ部は供給された周波数に応じた回転速度で回転し、圧縮機構部を可変の設定出力で駆動するようになっている。
【0020】
図4には、ヒートポンプ25と併せて、前記外槽2と循環装置20(吸気ダクト11、通風ダクト9、循環用送風機15、及び給気ダクト17)を概略的に示しており、そのほか、ヒートポンプ25について設けた温度検知手段として、圧縮機23の吐出側の温度(冷媒温度)を検知する温度センサ27と、凝縮器22の温度を検知する温度センサ28、蒸発器21の入口側の温度(冷媒温度)を検知する温度センサ29、蒸発器21の出口側の温度(冷媒温度)を検知する温度センサ30を示し、更に、前記外槽2(乾燥室)の入口側(給気ダクト17中)の温度(空気温度)を検知する温度センサ31と、同外槽2(乾燥室)の出口側(通風ダクト9の蒸発器21より上流側)の温度(空気温度)を検知する温度センサ32とを示している。
【0021】
ここで、図1は、前記通風路19中の吸気ダクト11の構成を詳細に示しており、この図1で明らかなように、吸気ダクト11には吸放湿部材33を設けている。この吸放湿部材33は、吸気ダクト11を通る循環空気から吸湿する吸湿機能と自然放湿をする放湿機能とを有するもので、例えば東洋紡株式会社の商品名でタフチック(TAFTIC)という機能性アクリル系微粒子から成るものであり、それを、この場合、円筒状に成形して吸気ダクト11の全長もしくはほゞ全長の周壁の内周面部に密接配置することで、吸気ダクト11に設けている。
【0022】
吸気ダクト11は、通風路19中の前記蒸発器21より上流側に位置するものであり、従って、吸放湿部材33も、通風路19中の前記蒸発器21より上流側に位置している。
なお、図2及び図4に示すように、通風ダクト9の蒸発器21より上流側には、循環空気の一部を通風路外に排出する排気部として排気口34を設けており、通風ダクト9の蒸発器21より下流側であって凝縮器22の上流側、すなわち、通風ダクト9の蒸発器21と凝縮器22との間の部分には通風路外の空気を吸入する吸気部として吸気口35を設けている。
【0023】
又、通風ダクト9の蒸発器21及び凝縮器22下の部分には、ドレンタンク36を設けており、このドレンタンク36により、蒸発器21で発生して滴下する除湿水を通風ダクト9底部の図示しない通水部を通して受け溜めるようにしている。又、このドレンタンク36には図示しなドレンポンプを付設していて、このドレンポンプにより、ドレンタンク36に貯留した除湿水を汲み上げ、図示しない吐水パイプを通じて前記排水管路8に排出するようにしている。
【0024】
このほか、図2には、前記外箱1の内上部に設けた給水弁37を示しており、この給水弁37は、入口部に水道の蛇口を図示しない接続ホースを介して接続し、出口部を接続ホース38を介して前記外槽2に接続することにより、外槽2内に水道水を供給するようになっている。
【0025】
次に、上記構成の洗濯乾燥機の作用を述べる。
まず、使用者により図示しない操作パネルが操作されて運転のコースが設定され、運転の開始が指示されると、図示しない制御装置が、設定された運転のコースに応じた洗濯運転、乾燥運転、或いはその両運転を行う洗濯乾燥運転を実行する。その一つとして、洗濯乾燥運転の実行が開始された場合には、洗濯行程、脱水行程、乾燥行程を順に実行する。
【0026】
洗濯行程では、給水弁37を開放させることにより外槽2内に給水し、その後に回転槽3を低速で正逆両方向に交互に回転させる動作が行われる。
脱水行程では、排水弁7を開放させて外槽2内の水を排出した後、回転槽3を高速で一方向に回転させる動作が行われる。
乾燥行程では、回転槽3を低速で正逆両方向に交互に回転させつつ、回転槽3内に温風を供給する動作が行われる。
【0027】
回転槽3内に温風を供給する動作は、詳しくは、循環用送風機15を駆動すると共に、ヒートポンプ25の圧縮機23を駆動することで行われる。そのうちの循環用送風機15の駆動により、回転槽3内の空気が外槽2内から通風路19の吸気ダクト11を経て通風ダクト9内に流入される。
【0028】
一方、ヒートポンプ25の圧縮機23の駆動により、ヒートポンプ25に封入した冷媒が圧縮機23により圧縮されて高温高圧の冷媒となり、その高温高圧の冷媒が凝縮器22に流れて、通風ダクト9内の空気と熱交換する。その結果、通風ダクト9内を通る空気が加熱され、反対に、凝縮器22内の冷媒は温度が低下して液化される。この液化された冷媒が、次に、絞り器24を通って減圧された後、蒸発器21を流れ、気化する。それにより、蒸発器21は通風ダクト9内を通る空気を冷却する。蒸発器21のパイプ21aを通過した冷媒は圧縮機23に戻る。
【0029】
これらにより、前記外槽2内から通風ダクト9内に流入した空気は、蒸発器21で冷却されて除湿され、その後に凝縮器22で加熱されて温風化される。従って、蒸発器21は通風ダクト9内を通る空気の除湿をする除湿手段として機能するものであり、凝縮器22は同空気の加熱をする加熱手段として機能するものである。そして、その温風化された空気は、給気ダクト17を経て外槽2内に供給され、更に回転槽3内に供給される。
【0030】
回転槽3内に供給された空気(温風)は、回転槽3内の衣類の水分を奪った後、外槽2内から吸気ダクト11を経て通風ダクト9内に流入する。かくして、蒸発器21及び凝縮器22を有する通風ダクト9と回転槽3との間を回転槽3内の空気が循環することにより、回転槽3内の衣類が乾燥される。従って、このときに、外槽2と回転槽3は、乾燥室として機能する。又、その循環過程では、通風ダクト9の排気口34から一部の空気が通風ダクト9外に排出され、それに見合った量の空気が吸気口35から通風ダクト9内に吸入されることにより、通風ダクト9を通る空気の温度調整並びに湿度調整が行われる。
【0031】
そして、このような乾燥運転が行われる中で、通風路19中の吸気ダクト11に設けた吸放湿部材33は、その特性から、吸気ダクト11を通る空気の温度上昇に伴い、その空気から湿気を漸次吸収する。
【0032】
この場合、吸放湿部材33の特性として、例えば50〔℃〕の雰囲気で湿気の吸収率が80〔%〕であるとすると、重量300〔g〕の吸放湿部材33であれば、300〔g〕×80〔%〕=240〔g〕で、240〔g〕の水分の吸収が可能となる。但し、吸放湿部材33には常態での水分量の吸収があるため、それを50〔%〕とすると、実際は、240〔g〕−240〔g〕×50〔%〕=120〔g〕で、120〔g〕の水分の吸収が可能となる。
【0033】
通常4〔kg〕の衣類を乾燥させる場合、1500〔cc〕程度の除湿が必要であるが、この場合には、120÷1500=8〔%〕で、8〔%〕の除湿負荷の減少が可能となるものであり、このようにして本実施形態においては、通風路19中の吸気ダクト11に設けた吸放湿部材33による除湿機能の付加で、除湿負荷量の低減が可能となるものである。
【0034】
そして、乾燥運転の終了後には、吸放湿部材33は自然放湿により、吸収した漸次湿度が漸次減少し、再度吸湿可能状態に戻る。
従って、本実施形態においては、前記特許文献1,2に記載されたもののような、循環装置の通風路とは別の第2の通風路や、除湿器を回転させるモータ、及び除湿器を加熱するヒータを必要とすることなく、除湿負荷量の低減を可能ならしめ得るもので、構造が複雑とならず、消費電力量も充分に低減できつつ、乾燥時間の短縮化ができるものである。
【0035】
加えて、本実施形態においては、吸放湿部材33を通風路19中の除湿手段である蒸発器21より上流側に位置させており、それによって、外槽2内から通風ダクト9内に流入した高湿度のままの空気に対して吸放湿部材33が吸湿作用を及ぼすので、より効果的な吸湿ができ、除湿負荷量の低減が一層効果的にできる。
【0036】
以上に対して、図5から図12は第2から第9の実施形態を示すもので、それぞれ、第1の実施形態と同一の部分には同一の符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ述べる。
【0037】
[第2の実施形態]
図5に示す第2の実施形態においては、吸気ダクト11の周壁全体を吸放湿部材33で形成している。
このようにすることにより、第1の実施形態と同様の作用効果が得られるほかに、吸気ダクト11に吸放湿部材33を設けることが、吸気ダクト11の周壁の内周面部に吸放湿部材33を密接配置する手間を要することなく、容易にできるという一層の効果が得られる。
【0038】
[第3の実施形態]
図6に示す第3の実施形態においては、吸放湿部材41を、上述の吸放湿部材33に代えて、前述の吸湿機能と放湿機能とを有する微粒子を吸気ダクト11の周壁を構成する部材に練り込んで成るものとしている。
このようにしても、第1の実施形態と同様の作用効果が得られるほかに、吸気ダクト11に吸放湿部材33を設けることが、吸気ダクト11の周壁の内周面部に吸放湿部材33を密接配置する手間を要することなく、容易にできるという一層の効果が得られる。
【0039】
[第4の実施形態]
図7に示す第4の実施形態においては、吸放湿部材51を、上述の吸放湿部材41とも代えて、前述の吸湿機能と放湿機能とを有する微粒子を吸気ダクト11の周壁を構成する材に塗布して成るものとしている。
このようにしても又、第1の実施形態と同様の作用効果が得られるほかに、吸気ダクト11に吸放湿部材33を設けることが、吸気ダクト11の周壁の内周面部に吸放湿部材33を密接配置する手間を要することなく、容易にできるという一層の効果が得られる。
【0040】
[第5の実施形態]
図8に示す第5の実施形態においては、通風路19中のフィルタ装置12と吸気ダクト11とを補助ダクト61で接続する構成とし、この補助ダクト61に吸放湿部材62を前記吸放湿部材33,41,51のいずれかと同様に設けることにより、通風路19中のフィルタ装置12より下流側に吸放湿部材62を設けている。
【0041】
このようにすることにより、吸放湿部材62部分(補助ダクト61)にはフィルタ装置12でリントを捕獲された後の空気が通るようになるので、吸放湿部材62へのリントの付着を防止できて、吸放湿部材62による吸湿作用がリントに阻害されることなく得られ、併せて、この場合も、外槽2内から通風ダクト9内に流入した高湿度のままの空気に対して吸放湿部材33が吸湿作用を及ぼすようになるので、より効果的な吸湿ができて、除湿負荷量の低減が一層効果的にできる。
【0042】
[第6の実施形態]
図9に示す第6の実施形態においては、吸放湿部材71を前述の吸湿機能と放湿機能とを有する微粒子で網状に形成して吸気ダクト11としたものである。すなわち、この場合、吸気ダクト11の全体を吸放湿部材71で網状に形成している。
このようにすることにより、吸放湿部材71の、体積の増加と循環空気との接触面積の増加とにより、吸湿量を大きくできて、より効果的な吸湿ができ、除湿負荷量の低減が一層効果的にできる。
【0043】
なお、この場合の吸放湿部材71の網状構成は、波状の中芯の片面にのみライナーを貼着した片面段ボールを多層に重ねた態様のものであるが、それに代えて、ハニカム状や格子状等にしても良い。
又、吸放湿部材71として、第4の実施形態の補助ダクト61を網状に構成するようにしても良い。
【0044】
[第7の実施形態]
図10に示す第7の実施形態においては、通風路19の排気部である排気口34に吸放湿部材81を設けている。この場合の吸放湿部材81も、第1から第4及び第6の実施形態の各吸放湿部材33,41,51と同様に設けたものであり、更に、網状に構成するようにしても良い。
【0045】
このようにすることにより、通風路19から外箱1内には低湿度の空気を排出し、外箱1内空気の高湿度化を抑えることができるので、外箱1内から通風路19内に吸入する空気を低湿度状態となし得て、除湿負荷の軽減ができる。又、この場合、外箱1内の結露を防止することができる。
【0046】
[第8の実施形態]
図11に示す第8の実施形態においては、上記吸放湿部材81を、通風路19の吸気部である吸気口35に設けている。
このようにしても、外箱1内から通風路19内に吸入する空気を低湿度状態となし得て、除湿負荷の軽減ができる。
なお、吸放湿部材81は通風路19の排気口34と吸気口35の双方に設けるようにしても良い。
【0047】
[第9の実施形態]
図12に示す第9の実施形態においては、通風路19に上記吸気口35が存在するものにおいて、前記吸放湿部材33又は吸放湿部材51同様の吸放湿部材91を、通風路19の前記いずれかの構成部品に代えて、外箱1の内面に設けている。
【0048】
このようにすることにより、吸放湿部材91が外箱1内空気の吸湿をし、外箱1内空気の高湿度化を抑えることができるので、外箱1内から吸気口35を通じて通風路19内に吸入する空気を低湿度状態となし得、除湿負荷の軽減ができる。又、この場合も、外箱1内の結露を防止することができる。
なお、この場合の吸放湿部材91は、通風路19の前記いずれかの部品に代えて設けるのではなく、それらの部品に加えて設けるようにしても良い。
【0049】
以上説明した衣類乾燥機は、上記実施形態にのみ限定されるものではなく、特に洗濯乾燥機全体としては、上述の横軸形に限られず、水槽及び回転槽を縦軸状に有する縦軸形であっても良いし、又、本来的には洗濯と乾燥の両機能を有する洗濯乾燥機に限られず、乾燥機能のみを有する衣類乾燥機に適用できる。更に、吸放湿部材は前記通気路の少なくとも一部に設けられれば良いもので、全部に設けていても良く、除湿手段及び加熱手段も、上述の蒸発器及び凝縮器には限られず、水冷又は空冷の除湿器と電熱ヒータ等であっても良いなど、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得る。
【0050】
そのほか、本発明の幾つかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0051】
図面中、1は外箱、2は外槽(乾燥室)、3は回転槽(乾燥室)、12はフィルタ装置、15は循環用送風機、19は通風路、20は循環装置、21は蒸発器(除湿手段)、22は凝縮器(加熱手段)、33は吸放湿部材、34は排気口(排気部)、35は吸気口(吸気部)、41,51,62,71,81,91は吸放湿部材を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12