特許第6403432号(P6403432)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6403432
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】毛髪化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/41 20060101AFI20181001BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   A61K8/41
   A61Q5/12
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-108484(P2014-108484)
(22)【出願日】2014年5月26日
(65)【公開番号】特開2015-224199(P2015-224199A)
(43)【公開日】2015年12月14日
【審査請求日】2017年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 隆儀
【審査官】 松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−043438(JP,A)
【文献】 特開2002−029937(JP,A)
【文献】 特開平07−138133(JP,A)
【文献】 特開平07−118128(JP,A)
【文献】 特開2010−285390(JP,A)
【文献】 特開平04−108719(JP,A)
【文献】 特表2004−512293(JP,A)
【文献】 特表2002−537237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/41
A61Q 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(C)を含有し、成分(A)と成分(C)の質量比(A)/(C)が以上100以下、成分(B)と成分(C)の質量比(B)/(C)が1を超え100以下である毛髪化粧料であって、毛髪に塗布後に洗い流して使用される洗い流すタイプのヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント又はヘアパックである毛髪化粧料。
(A):炭素数18〜24のアルキル基を1つ有するモノ長鎖アルキル型カチオン界面活性剤 0.05質量%以上15質量%以下
(B):炭素数10〜18のアルキル鎖を2つ有するジ長鎖アルキル型カチオン界面活性剤 0.01質量%以上5質量%以下
(C):炭素数12〜17のアルキル基を1つ有するモノ長鎖アルキル型カチオン界面活性剤
【請求項2】
更に成分(D)として、アミノ変性シリコーンを0.01質量%以上5質量%以下含有する請求項1記載の毛髪化粧料。
【請求項3】
更に成分(E)として、炭素数12〜22の高級アルコールを0.5質量%以上20質量%以下含有する請求項1又は2記載の毛髪化粧料。
【請求項4】
成分(A)の含有量が、0.1質量%以上5質量%以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【請求項5】
成分(B)の含有量が、0.05質量%以上2.5質量%以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【請求項6】
成分(B)と成分(C)との質量比(B)/(C)が、以上50以下である請求項1〜のいずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【請求項7】
毛髪化粧料の25℃における水で20質量倍希釈したときのpHが、2以上7.5以下である請求項1〜のいずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【請求項8】
成分(A)が、ステアリルトリメチルアンモニウム塩及びベヘニルトリメチルアンモニウム塩から選ばれる1種以上である請求項1〜のいずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【請求項9】
成分(B)が、ジアルキル(C12-15)ジメチルアンモニウム塩及びジアルキル(C12-18)ジメチルアンモニウム塩から選ばれる1種以上である請求項1〜のいずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【請求項10】
成分(C)が、セチルトリメチルアンモニウム塩である請求項1〜のいずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【請求項11】
成分(A)の含有量が、0.5質量%以上3質量%以下である請求項4〜10のいずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【請求項12】
成分(B)の含有量が、0.1質量%以上1質量%以下である請求項5〜11のいずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【請求項13】
成分(A)と成分(C)との質量比(A)/(C)が、10以上50以下である請求項12のいずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【請求項14】
成分(B)と成分(C)との質量比(B)/(C)が、3以上25以下である請求項13のいずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の毛髪化粧料を、毛髪に塗布後、洗い流す毛髪化粧料の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャンプー洗髪後に使用される、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント、ヘアパック等の毛髪化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
洗髪中の指通り性能を高めるために、シャンプーには“コアセルベーション”と呼ばれる技術が応用されている。コアセルベーションは、シャンプー中に含まれるアニオン界面活性剤とカチオン化ポリマーが洗髪後水ですすがれる過程で、不溶性の複合体を形成し、毛髪表面に吸着することで、洗髪及びすすぎの際における毛髪表面の摩擦を低減し、滑らかな指通りを与えることができる技術である。
【0003】
一方、シャンプーによる洗髪に続いて使用される、ヘアリンスやヘアコンディショナー、ヘアトリートメント、ヘアマスク(以後、まとめてヘアコンディショナーと称する)は、シリコーンなどの油性成分と一般的にアルキル鎖長16以上のカチオン界面活性剤と高級アルコールを含有し、ダメージを受けた毛髪に柔らかさや滑らかな指通りといった性能を与えることができる(例えば、特許文献1参照)。これは、カチオン界面活性剤や高級アルコール、シリコーンなどの潤滑成分が毛髪表面に効率よく吸着するためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-29937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ヘアコンディショナーに含まれる前記潤滑成分は、洗髪に用いたシャンプーがコアセルベーション技術を利用したものではない場合(すなわちカチオン化ポリマーを含有しない場合)には、毛髪に十分に吸着し、本来のコンディショニング性能を発揮することができる。しかし、洗髪に用いたシャンプーがコアセルベーション技術を利用したもの(以下、「コアセルベーションシャンプー」と称する)である場合には、前記潤滑成分は、毛髪への吸着が阻害され、コンディショニング性能が著しく低下する。これは、コアセルベーションシャンプーによる摩擦低減性能が高いほど顕著であった。つまり、コアセルベーションシャンプーによる摩擦低減性能とヘアコンディショナーのコンディショニング性能とはトレードオフの関係にあり、従来の技術ではこれらを両立することは困難であった。
【0006】
従って本発明は、コアセルベーションシャンプーにより洗髪した毛髪であっても、高いコンディショニング性能を発揮するヘアコンディショナー等の毛髪化粧料に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
コアセルベーションシャンプーによる毛髪の処理によってヘアコンディショナーの性能が低下する原因は、前記シャンプーの濯ぎ後に毛髪表面に残留するアニオン界面活性剤/カチオン化ポリマー複合体が、ヘアコンディショナー成分である潤滑成分の吸着を阻害しているためであると考えられる。そこで本発明者は、シャンプー後の毛髪表面に残留する前記複合体の影響を受けにくいヘアコンデショナーの開発を行った。
【0008】
その結果、特定のアルキル鎖を持つ3種類のカチオン界面活性剤を組み合わせることで、コアセルベーションシャンプーによる性能低下を抑制し、ヘアコンディショナー本来の潤滑性能を維持できることを発見した。
【0009】
本発明は、次の成分(A)〜(C)を含有し、成分(A)と成分(C)の質量比(A)/(C)が3以上200以下、成分(B)と成分(C)の質量比(B)/(C)が1を超え100以下である毛髪化粧料を提供するものである。
(A):炭素数18〜24のアルキル基を1つ有するモノ長鎖アルキル型カチオン界面活性剤
0.05質量%以上15質量%以下
(B):炭素数10〜18のアルキル鎖を2つ有するジ長鎖アルキル型カチオン界面活性剤
0.01質量%以上5質量%以下
(C):炭素数12〜17のアルキル基を1つ有するモノ長鎖アルキル型カチオン界面活性剤
【発明の効果】
【0010】
本発明の毛髪化粧料は、カチオン化ポリマーを含まないシャンプーと組み合わせ使用した場合に、十分なコンデショニング効果を発揮するのみならず、コアセルベーションシャンプーと組み合わせて使用した場合でもコンディショニング性能を十分発揮することができる。これにより、毛髪への塗布時の濃厚感、馴染み易さ、すすぎ時の柔らかさ、指通りの良さ、タオルドライ時の柔らかさ、指通りの良さ、ドライヤーによるブロー時の乾かしやすさ、指通りの良さ、乾燥後の指通りの良さ、均質感、ダメージにより親水化してしまった毛髪表面の疎水化、次の洗髪時の指通りの良さ、均質感等の種々の効果を効果的に発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔成分(A):炭素数18〜24のアルキル基を1つ有するモノ長鎖アルキル型カチオン界面活性剤〕
成分(A)としては、下記一般式(1)に示すモノ長鎖アルキル型四級アンモニウム塩が挙げられる。
【0012】
【化1】
【0013】
〔式中、R1は炭素数18〜24のアルキル基を示し、X-は陰イオンを示す。〕
【0014】
1としては、炭素数18〜22のアルキル基が好ましく、また直鎖のアルキル基が好ましい。陰イオンX-としては、塩化物イオン、臭化物イオン等のハロゲン化物イオン;メトサルフェートイオン、エトサルフェートイオン、メトフォスフェートイオン、エトフォスフェートイオン、メトカーボナートイオン等の無機・有機陰イオン等が挙げられ、メトサルフェートイオン、エトサルフェートイオン、塩化物イオンが好ましい。
【0015】
成分(A)の好ましい具体例としては、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、アラキルトリメチルアンモニウム塩、ベヘニルトリメチルアンモニウム塩が挙げられ、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、ベヘニルトリメチルアンモニウム塩が好ましい。
【0016】
成分(A)は単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。本発明の毛髪化粧料中における成分(A)の含有量は、塗布・濯ぎ・タオルドライ時の毛髪を柔らかくする観点から、0.05質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であり、また、15質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。
【0017】
〔成分(B):炭素数10〜18のアルキル基を2つ有するジ長鎖アルキル型カチオン界面活性剤〕
成分(B)としては、下記一般式(2)に示すジ長鎖アルキル型四級アンモニウム塩が挙げられる。
【0018】
【化2】
【0019】
〔式中、R2及びR3は独立して、炭素数10〜18のアルキル基を示し、Y-は陰イオンを示す。〕
【0020】
2及びR3としては、炭素数12〜18のアルキル基が好ましい。陰イオンY-としては、塩化物イオン、臭化物イオン等のハロゲン化物イオン;メトサルフェートイオン、エトサルフェートイオン、メトフォスフェートイオン、エトフォスフェートイオン、メトカーボナートイオン等の無機・有機陰イオン等が挙げられ、ハロゲン化物イオンが好ましく、塩化物イオンが更に好ましい。
【0021】
成分(B)の好ましい具体例としては、ジステアリルジメチルアンモニウム塩、ジセチルジメチルアンモニウム塩、ジイソステアリルジメチルアンモニウム塩、ジアルキル(C12-15)ジメチルアンモニウム塩、ジアルキル(C12-18)ジメチルアンモニウム塩、イソステアリルラウリルジメチルアンモニウム塩が挙げられ、ジアルキル(C12-15)ジメチルアンモニウム塩、ジアルキル(C12-18)ジメチルアンモニウム塩が好ましい。
【0022】
成分(B)は単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。本発明の毛髪化粧料中における成分(B)の含有量は、タオルドライ時、ドライヤー時、乾燥後の指通り性能を高める観点から、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、また、5質量%以下、好ましくは2.5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.38質量%以下である。
【0023】
〔成分(C):炭素数12〜17のアルキル基を1つ有するモノ長鎖アルキル型カチオン界面活性剤〕
成分(C)としては、下記一般式(3)に示すモノ長鎖アルキル型四級アンモニウム塩が挙げられる。
【0024】
【化3】
【0025】
〔式中、R4は炭素数12〜17のアルキル基を示し、Z-は陰イオンを示す。〕
【0026】
4としては、炭素数14〜16のアルキル基が好ましく、また直鎖のアルキル基が好ましい。陰イオンZ-としては、塩化物イオン、臭化物イオン等のハロゲン化物イオン;メトサルフェートイオン、エトサルフェートイオン、メトフォスフェートイオン、エトフォスフェートイオン、メトカーボナートイオン等の無機・有機陰イオン等が挙げられ、ハロゲン化物イオンが好ましく、塩化物イオンが更に好ましい。
【0027】
成分(C)の好ましい具体例としては、ラウリルトリメチルアンモニウム塩、ミリスチルトリメチルアンモニウム塩、セチルトリメチルアンモニウム塩が挙げられ、セチルトリメチルアンモニウム塩が好ましい。
【0028】
成分(C)は単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。本発明の毛髪化粧料中における成分(C)の含有量は、後述する成分(A)との質量比(A)/(C)、成分(B)との質量比(B)/(C)が所定の範囲内となるように決定されるが、塗布時の馴染みの良さと柔らかさを高める観点から、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.02質量%以上であり、また、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.4質量%以下である。
【0029】
本発明においては、成分(A)、(B)及び(C)の各カチオン界面活性剤の共存下で、成分(C)アルキル鎖長の短いカチオン界面活性剤が、毛髪表面上に残留するアニオン界面活性剤/カチオン化ポリマー複合体を収縮させる。このことにより、成分(A)アルキル鎖長の長いカチオン界面活性剤の毛髪への吸着が促進される。更に成分(B)ジ長鎖アルキル型カチオン界面活性剤が、残留するアニオン界面活性剤/カチオン化ポリマー複合体の潤滑性能を高めることでき、相乗的にヘアコンディショナーとしての高い潤滑性能を発揮できるものと推定される。
【0030】
本発明の毛髪化粧料中における成分(A)と成分(C)との質量比(A)/(C)は、成分(A)の吸着を高め、タオルドライ時、ドライヤー時、乾燥後の指通り性能を高める観点から、3以上、好ましくは5以上、より好ましくは10以上であり、また、200以下、好ましくは100以下、より好ましくは50以下である。
【0031】
本発明の毛髪化粧料中における成分(B)と成分(C)との質量比(B)/(C)は、成分(B)の吸着を高め、タオルドライ時、ドライヤー時、乾燥後の指通り性能を高める観点から、1を超え、好ましくは2以上、より好ましくは3以上であり、また、100以下、好ましくは50以下、より好ましくは25以下である。
【0032】
〔(D):アミノ変性シリコーン〕
アミノ変性シリコーンとしては、下記一般式で表されるものが挙げられる。
【0033】
【化4】
【0034】
〔式中、R5はメチル基、水酸基又はR7−T(R7は炭素数3〜6のアルキレン基、Tは1〜3級アミノ基含有基又はアンモニウム基含有基)を示し、R6は−R8−Q(R8は炭素数3〜6のアルキレン基、Qは1〜3級アミノ基含有基又はアンモニウム基含有基)を示し、aは1以上の整数を示し、bは0以上の整数を示す。ただし、bが0である場合、R5は、−R7−Tである。また好ましい平均分子量は3000〜100000である。〕
【0035】
上記一般式で表されるアミノ変性シリコーンとして、例えば、SS-3551、SF8452C(以上、東レ・ダウコーニング社製)、XF42-B1989(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)等が挙げられる。アミノ変性シリコーンを水性乳濁液として用いる場合、該水性乳濁液中に含まれるアミノ変性シリコーンの量は20〜60質量%が好ましく、30〜50質量%が更に好ましい。好ましいアミノ変性シリコーン水性乳濁液としては、SM8904CE(東レ・ダウコーニング社製)、XS65-C0032(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)が挙げられる。
【0036】
その他のアミノ変性シリコーンとしては、例えば下記一般式で表される「JP-8500 Conditioning Agent」(CAS No.237753-63-8、東レダウ・コーニング社製)、アミノ変性ポリシロキサン−ポリオキシアルキレンブロック共重合体が挙げられる。
【0037】
【化5】
【0038】
〔式中、R9は炭素数13〜15の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示し、Wのうち75%は基−CH2CH(OH)CH2OHを、25%は水素原子を示す。〕
【0039】
アミノ変性ポリシロキサン−ポリオキシアルキレンブロック共重合体の好ましい例としては、下記一般式で表されるものが挙げられる。
【0040】
【化6】
【0041】
〔式中、cは2以上の整数を示し、dは1以上の整数を示し、eは4以上の整数を示し、fは0〜30の整数を示し、gは2以上の整数を示す。〕
【0042】
上記一般式において、好ましくは、cは2〜1,000の数、dは1〜50の数、eは4〜200の数、fは2〜100の数を示す。また、−O(C24O)e(C36O)f−はブロック共重合及びランダム共重合のいずれであってもよい。市販品の例としては、FZ-3789、シリコーンSS-3588(東レ・ダウコーニング社製)を挙げることができる。
【0043】
成分(D)は単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。本発明の毛髪化粧料中における成分(D)の含有量は、タオルドライ時、ドライヤー時、乾燥後の指通り性能、及び毛髪表面の疎水化を高める観点より、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上であり、また、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下である。
【0044】
〔成分(E):高級アルコール〕
本発明の毛髪化粧料には、感触改善、安定性の観点から、更に成分(E)として、炭素数12以上の高級アルコールを含有させることができる。これらは、界面活性剤と構造体を形成して分離を防ぐと共に、すすぎ時の感触を改善する効果がある。
【0045】
高級アルコールとしては、炭素数12以上、更には16以上のものが好ましく、また、炭素数30以下、更には22以下のものが好ましい。具体的には、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、オレイルアルコール等、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0046】
成分(E)は単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。本発明の毛髪化粧料中における成分(E)の含有量は、ヘアコンディショナー製剤の粘度と安定性の観点より、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上であり、また、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
【0047】
〔その他の任意成分〕
本発明の毛髪化粧料には更に、毛髪化粧料に一般に使用されるその他の成分を、目的に応じて配合することができる。例えば、ジメチルポリシロキサン、ジメチコノール、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリシドール変性シリコーン、メチルフェニルポリシロキサン、脂肪酸変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、アルキル変性シリコーン等の成分(D)以外のシリコーン類;カチオン化セルロース、ヒドロキシ化セルロース、高重合ポリエチレンオキサイド等の高分子化合物;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリンモノ脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリンアルキルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルグリコシド等の非イオン界面活性剤;スクワレン、スクワラン、流動パラフィン、流動イソパラフィン、シクロパラフィン等の炭化水素;ヒマシ油、カカオ油、ミンク油、アボカド油、オリーブ油等のグリセリド類;ミツロウ、鯨ロウ、ラノリン、カルナウバロウ等のロウ類;パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ラウリン酸ヘキシル、乳酸セチル、モノステアリン酸プロピレングリコール、オレイン酸オレイル、2-エチルヘキサン酸ヘキサデシル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸トリデシル等のエステル;カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、ヤシ油脂肪酸、イソステアリル酸、イソパルミチン酸等の高級脂肪酸、イソステアリルグリセリルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテルなどの油剤;エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、2-ベンジルオキシエタノール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、プロピルカルビトール、ブチルカルビトール、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、グリセリン等のアルコール類;ジンクピリチオン、塩化ベンザルコニウム等の抗フケ剤;pH調整剤;ビタミン剤;殺菌剤;抗炎症剤;防腐剤;キレート剤;パンテノール等の保湿剤;染料、顔料等の着色剤;ユーカリの極性溶媒抽出物、真珠層を有する貝殻又は真珠から得られる蛋白質又はその加水分解物、シルクから得られる蛋白質又はその加水分解物、マメ科植物の種子から得られる蛋白含有抽出物、オタネニンジン抽出物、米胚芽抽出物、ヒバマタ抽出物、ツバキ抽出物、アロエ抽出物、月桃葉抽出物、クロレラ抽出物等のエキス類;雲母チタン等のパール粉体;メントール等の清涼剤:香料;色素;紫外線吸収剤;酸化防止剤;その他エンサイクロペディア・オブ・シャンプー・イングリーディエンツ(ENCYCLOPEDIA OF SHAMPOO INGREDIENTS (MICELLE PRESS))に記載されている成分等が挙げられる。
【0048】
〔pH〕
本発明の毛髪化粧料のpHは、2以上が好ましく、更には2.5以上が好ましく、また7.5以下が好ましく、更には6.5以下、更には5.5以下が好ましい。なお、本発明において、毛髪化粧料のpHは、水で20質量倍希釈したときの25℃における値をいう。
【0049】
〔毛髪化粧料の形態〕
本発明の毛髪化粧料の形態としては、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント、ヘアパック等の浴室内でシャンプー洗髪後に使用されるもの、すなわち毛髪に塗布後、良くなじませて、洗い流して使用されるものが挙げられる。
【0050】
以上述べた実施形態に関し、以下に本発明の好ましい態様を更に開示する。
【0051】
<1>
次の成分(A)〜(C)を含有し、成分(A)と成分(C)の質量比(A)/(C)が3以上200以下、成分(B)と成分(C)の質量比(B)/(C)が1を超え100以下である毛髪化粧料。
(A):炭素数18〜24のアルキル基を1つ有するモノ長鎖アルキル型カチオン界面活性剤
0.05質量%以上15質量%以下
(B):炭素数10〜18のアルキル鎖を2つ有するジ長鎖アルキル型カチオン界面活性剤
0.01質量%以上5質量%以下
(C):炭素数12〜17のアルキル基を1つ有するモノ長鎖アルキル型カチオン界面活性剤
【0052】
<2>
好ましくは、更に成分(D)として、アミノ変性シリコーンを含有し、その含有量が、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上であり、また、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1.5質量%である<1>に記載の毛髪化粧料。
【0053】
<3>
好ましくは、更に成分(E)として、高級アルコールを含有し、その含有量が、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上であり、また、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である<1>又は<2>に記載の毛髪化粧料。
【0054】
<4>
成分(A)の含有量が、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であり、また、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である<1>〜<3>のいずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【0055】
<5>
成分(B)の含有量が、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、また、好ましくは2.5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.38質量%以下である<1>〜<4>のいずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【0056】
<6>
成分(C)の含有量が、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.02質量%以上であり、また、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.4質量%以下である<1>〜<5>のいずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【0057】
<7>
成分(A)と成分(C)との質量比(A)/(C)が、好ましくは5以上、より好ましくは10以上であり、また好ましくは100以下、より好ましくは50以下である<1>〜<6>のいずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【0058】
<8>
成分(B)と成分(C)との質量比(B)/(C)が、好ましくは2以上、より好ましくは3以上であり、また、好ましくは50以下、より好ましくは25以下である<1>〜<7>のいずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【0059】
<9>
毛髪化粧料の25℃における水で20質量倍希釈したときのpHが、好ましくは2以上、より好ましくは2.5以上であり、また、好ましくは7.5以下、より好ましくは6.5以下、更に好ましくは5.5以下である<1>〜<8>のいずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【0060】
<10>
成分(A)が、好ましくはステアリルトリメチルアンモニウム塩、アラキルトリメチルアンモニウム塩及びベヘニルトリメチルアンモニウム塩から選ばれる1種以上であり、より好ましくはステアリルトリメチルアンモニウム塩及びベヘニルトリメチルアンモニウム塩から選ばれる1種以上である<1>〜<9>のいずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【0061】
<11>
成分(B)が、好ましくはジステアリルジメチルアンモニウム塩、ジセチルジメチルアンモニウム塩、ジイソステアリルジメチルアンモニウム塩、ジアルキル(C12-15)ジメチルアンモニウム塩、ジアルキル(C12-18)ジメチルアンモニウム塩及びイソステアリルラウリルジメチルアンモニウム塩から選ばれる1種以上であり、より好ましくはジアルキル(C12-15)ジメチルアンモニウム塩及びジアルキル(C12-18)ジメチルアンモニウム塩から選ばれる1種以上である<1>〜<10>のいずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【0062】
<12>
成分(C)が、好ましくはラウリルトリメチルアンモニウム塩、ミリスチルトリメチルアンモニウム塩及びセチルトリメチルアンモニウム塩から選ばれる1種以上であり、より好ましくはセチルトリメチルアンモニウム塩である<1>〜<11>のいずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【0063】
<13>
成分(D)が、好ましくは下記一般式で表されるアミノ変性シリコーンである<2>に記載の毛髪化粧料。
【0064】
【化7】
【0065】
〔式中、R5はメチル基、水酸基又はR7−T(R7は炭素数3〜6のアルキレン基、Tは1〜3級アミノ基含有基又はアンモニウム基含有基)を示し、R6は−R8−Q(R8は炭素数3〜6のアルキレン基、Qは1〜3級アミノ基含有基又はアンモニウム基含有基)を示し、aは1以上の整数を示し、bは0以上の整数を示す。ただし、bが0である場合、R5は、−R7−Tである。また好ましい平均分子量は3000〜100000である。〕
【0066】
<14>
成分(E)が、好ましくはミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、オレイルアルコール及びこれらの混合物から選ばれるものである<3>に記載の毛髪化粧料。
【0067】
<15>
好ましくは、毛髪に塗布後、洗い流して使用される洗い流すタイプの毛髪化粧料である<1>〜<14>のいずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【0068】
<16>
<1>〜<15>のいずれか1項に記載の毛髪化粧料を、毛髪に塗布後、洗い流す毛髪化粧料の使用方法。
【実施例】
【0069】
実施例1〜6、比較例1〜6
表1に示す処方に従い、水とジプロピレングリコールを混合し、55℃で撹拌して均一溶解させた後、撹拌・冷却していく過程で、溶解又は融解した状態の高級アルコール、ベンジルアルコール、成分(A)〜(D)を添加し、ヘアコンディショナーを調製した。
【0070】
(評価方法)
30cm、20gの日本人毛トレスを用いて、官能評価を行った。シャンプーにはコアセルベーション技術が応用されている以下のシャンプーを用いた。
評価用シャンプー
(成分) (質量%)
ラウレス硫酸アンモニウム(エマール125A、花王社) 12
ポリクオタニウム-10(カチセロM-80、花王社) 0.14
グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド
(ジャガーC-17SK、Solvay社) 0.36
ポリクオタニウム-7
(マーコート550、Lubrizol Advanced Materials社)
0.18
ラウリルヒドロキシスルタイン(アンヒトール20HD、花王社) 1.7
PPG-7(アデカカーポールDL-30、アデカ社) 1.1
ベンジルアルコール 0.3
塩化ナトリウム 0.1
精製水 バランス
合計 100
【0071】
まずトレスにシャンプー2gを塗布し、泡立て、濯いだ。その後、表1に記載のヘアコンディショナー2gをトレス全体に馴染ませ、濯ぎ、タオルで拭いた後、ドライヤーを用いて乾燥させるといった手順で毛髪を処理した。
コンディショナー塗布時、濯ぎ時、タオルドライ後、ドライヤー中、乾燥後、再度濡らした時における感触を評価した。評価は、パネラー5人に「5:良い」〜「1:悪い」の5段階で点数をつけてもらい、その合計点を表中に記載した。
【0072】
(接触角測定方法)
健常な日本人毛に1回ブリーチ処理と360回洗髪を繰り返したダメージ毛に対し、上記のシャンプー及びヘアコンディショナーを用いて同様に処理した後、水との前進接触角を測定した。水として蒸留水、測定装置としてKRUSS GmbH社のProcessor Tensiometer K100を用いて、水の表面張力:72.8 mN/m、水の密度:0.998 g/cm3、Maximum Immersion Depth:4 mm、Minimum Immersion Depth:1 mm、測定スピード:2 mm/minの条件下で測定した。接触角の数値が高いほど、毛髪表面が疎水化され、仕上がり時に高い均質感と優れた指通り性能を発揮する。
【0073】
【表1】
【0074】
*1:コータミン D2345P,花王株式会社製
*2:XS65-C0032,モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製
*3:DOW CORNING TORAY SS-3588,東レ・ダウコーニング株式会社製
【0075】
参考例(実施例1'、比較例1'〜3')
参考のため、以下に示すプレーンシャンプー(コアセルベーション技術が応用されていないシャンプー)で洗浄した毛髪に対し、表1に記載の実施例1又は比較例1〜3のヘアコンディショナーで処理したときの評価を前記と同様にして行い、その結果を表2に示す(実施例1'、比較例1'〜3')。
まずトレスにシャンプー2gを塗布し、泡立て、濯いだ。その後、表1に記載のヘアコンディショナー2gをトレス全体に馴染ませ、濯ぎ、タオルで拭いた後、ドライヤーを用いて乾燥させるといった手順で毛髪を処理した。なお、使用した毛髪トレスは、前記と同様のものである。
コンディショナー塗布時、濯ぎ時、タオルドライ後、ドライヤー中、乾燥後、再度濡らした時における感触を評価した。評価は、パネラー5人に「5:良い」〜「1:悪い」の5段階で点数をつけてもらい、その合計点を表中に記載した。評価結果を表2に示す。
【0076】
(プレーンシャンプーの組成)
(成分) (質量%)
エマール170J(花王株式会社製、有効分70質量%) 18.6
(ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸Naとして13.0質量%)
アミゾールCME(川研ファインケミカル株式会社製) 0.6
(ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミドとして0.6質量%)
アンヒトール55AB(花王株式会社製、有効分30質量%) 4.7
(ヤシ油脂肪酸アミドプロピルカルボベタインとして1.4質量%)
クエン酸(pH調製剤) 適量
安息香酸ナトリウム 0.3
精製水 残量
計 100.0
【0077】
【表2】