(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記板ばねは折り曲げられており、前記垂下部は、前記板ばね及び前記接続板に重なるように延設され、前記板ばねの形状に沿って折り曲げられていることを特徴とする請求項3又は4に記載の電磁継電器。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
図1は、第1の実施の形態に係る電磁継電器(以下、リレーという)の分解図である。
図2は、リレーの斜視図である。
【0013】
本実施の形態に係るリレー1は、直流高電圧対応リレーであり、例えば、電気自動車のバッテリープリチャージ(メインリレー接点への突入電流防止)用リレーとして使用される。ここで、直流高電圧は、IEC(International Electrotechnical Commission)で規定される高電圧ではなく、例えば、一般的な自動車バッテリーで使用される12VDC又は24VDCを越える電圧を意味する。
【0014】
リレー1は、直流高電圧の負荷遮断時に、固定接点及び可動接点間に発生するアークを確実に消弧する必要がある。また、一般的な直流高電圧対応リレーでは負荷側の接続に極性の指定があるが、バッテリープリチャージ用リレーであるリレー1では、バッテリー充電時及び放電時に電流方向が互いに逆転するため、負荷側の接続の極性を指定しないことが要求される。従って、リレー1は、可動接点と固定接点との間に流れる電流の向きにかかわらず、アークを消弧する必要がある。尚、リレー1の用途は、電気自動車に限定されるものではなく、様々な装置や設備に利用することができる。
【0015】
図1に示すように、リレー1は、ケース10、磁気消弧用の永久磁石12、ヒンジばね14、接極子16、可動接点ばね18、絶縁カバー20、固定接点端子22(22a,22b)、鉄芯24、スプール26、ベース28、コイル30、一対のコイル端子32(32a,32b)及び継鉄34を備えている。一対のコイル端子32(32a,32b)は、鉄芯24、スプール26及びコイル30で構成される電磁石を励磁するための電流を供給する。
【0016】
図3(A)に示すように、ケース10の内部には、磁石ホルダー101が形成されており、磁石ホルダー101内に永久磁石12が保持される。磁石ホルダー101内に保持された永久磁石12は、
図2に示すように、固定接点端子22a,22bの間に配置される。なお、
図2ではケース10を図示省略している。また、例えば、永久磁石12のN極を有する面は固定接点端子22b側に向けられており、永久磁石12のS極を有する面は固定接点端子22a側に向けられている。尚、N極を有する面とS極を有する面の位置が逆であってもよい。また、永久磁石12として、例えば、残留磁束密度、保持力及び耐熱性に優れているサマリウムコバルト磁石を利用する。特に、アークの熱が永久磁石12に伝わるので、ネオジム磁石よりも耐熱性に優れているサマリウムコバルト磁石が利用される。
【0017】
図1に戻り、ヒンジばね14は、側面視で逆L字状に形成されており、接極子16の垂下部16bを下方向に付勢する水平部14aと、継鉄34の垂直部34bに固定される垂下部14bとを備えている。
【0018】
接極子16は、
図3(B)に示すように側面視で「く」の字の形状の磁性体であり、鉄芯24に吸着される平板部16aと、屈曲部16cを介して平板部16aから下方に延びる板状の垂下部16bとを備えている。垂下部16bには、可動接点ばね18を垂下部16bにかしめ固定するための突起16fが、後述する絶縁カバー20又は電磁石装置31に対向する垂下部16bの第1面に設けられている。また、垂下部16bは、屈曲部16cから突起16fに向けて延びる上部16b1と、突起16fより下に延びる下部16b2とを備えている。後述するように、下部16b2は可動接点ばね18を引き付ける引付部として機能する。さらに、
図1及び
図2に示すように、屈曲部16cの中央には、ヒンジばね14の水平部14aが突出するように、貫通孔16dが形成されている。また、平板部16aには、継鉄34の突起部34cが嵌るような切り欠き部16eが形成されている。
【0019】
接極子16は、継鉄34の突起部34cに嵌められた切り欠き部16eを支点として回転運動をする。コイル30に電流が流れると、鉄芯24が平板部16aを吸着する。このとき、ヒンジばね14の水平部14aは垂下部16bと接触し、垂下部16bから上方向に押される。コイル30の電流が切断されると、ヒンジばね14の水平部14aの復元力により垂下部16bは押し下げられる。これにより、平板部16aは鉄芯24から引き離される。ここで、鉄芯24又は絶縁カバー20に対向する平板部16aの面を第1面とし、第1面の裏面を第2面とする。また、絶縁カバー20又は電磁石装置31に対向する面を垂下部16bの面を第1面とし、第1面の裏面を第2面とする。
【0020】
図4(A)は、可動接点ばね18の正面図であり、
図4(B)は、可動接点ばね18の側面図である。
【0021】
図4(A)に示すように、可動接点ばね18は、正面視でコの字形状の導電性の板ばねであり、一対の可動片、即ち第1可動片18a及び第2可動片18bと、第1可動片18a及び第2可動片18bの上端を互いに水平に連結する連結部18cとを備えている。
【0022】
第1可動片18aは、中央より下端に近い位置18da及び位置18daよりも下端に近い位置18eaの2箇所で2回折曲加工されている。第2可動片18bは、中央より下端に近い位置18db及び位置18dbよりも下端に近い位置18ebの2箇所で2回折曲加工されている。ここで、第1可動片18aの位置18eaより下の部分を下部18a3とし、位置18eaと位置18daの間の部分を中央部18a1とし、第1可動片18aの位置18daより上の部分を上部18a2とする。同様に、第2可動片18bの位置18ebより下の部分を下部18b3とし、位置18ebと位置18dbの間の部分を中央部18b1とし、第2可動片18bの位置18dbより上の部分を上部18b2とする。
【0023】
第1可動片18aの中央部18a1には、耐アーク性に優れた材料からなる可動接点36aが設けられている。第2可動片18bの中央部18b1には、耐アーク性に優れた材料からなる可動接点36bが設けられている。第1可動片18a及び第2可動片18bは、第1可動片18aの上部18a2及び下部18a3並びに第2可動片18bの上部18b2及び下部18b3が固定接点端子22a及び22bからそれぞれ離れる方向に折り曲げられている。
【0024】
上部18a2及び上部18b2は、接点間で発生したアークを上方向の空間に移動させるアークランナーとして機能する。下部18a3及び下部18b3は、接点間で発生したアークを下方向の空間に移動させるアークランナーとして機能する。
【0025】
連結部18cには、垂下部16bに設けられた突起16fに嵌められる貫通孔18eが形成されている。突起16fが貫通孔18eに嵌められてかしめられることで、可動接点ばね18は接極子16の垂下部16bの第1面に固定される。
【0026】
また、下部18a3の面に沿って、下部18a3から可動接点36aに向けて突出する、中央部18a1に対して傾いている切り起こし部18faが第1可動片18aに形成されている。さらに、下部18b3の面に沿って、下部18b3から可動接点36bに向けて突出する、中央部18b1に対する切り起こし部18fbが第2可動片18b形成されている。下部18a3及び18b3に繋がっている切り起こし部18fa及び18fbにより、可動接点36aと下部18a3(つまり接点以外の部材)との間の距離及び可動接点36bと下部18b3との間の距離が短くなる。よって、可動接点36aと固定接点38aとの間に発生するアーク及び可動接点36bと固定接点38bとの間に発生するアークがこれらの接点から下部18a3及び18b3(つまり接点以外の部材)にそれぞれ素早く移動することができる。従って、切り起こし部18fa及び18fbは、これらの接点の消耗を抑制することができる。
【0027】
図5(A)は、固定接点端子22a及び22bの正面図であり、
図5(B)は、固定接点端子22a及び22bの側面図である。
【0028】
固定接点端子22a及び22bは、ベース28に設けられた不図示の貫通孔に上方から圧入され、ベース28に固定される。固定接点端子22a及び22bは、側面視でクランク状に曲げられている。固定接点端子22a及び22bの各々は、最上部22g、上部22e、傾斜部22f及び下部22dを備えている。固定接点端子22a及び22bがベース28に固定されている下部22dは支点として機能する。上部22eは下部22dよりも可動接点ばね18又は絶縁カバー20から離れるように曲げられている。固定接点端子22a及び22bの上部22eには、耐アーク性に優れた材料からなる固定接点38a及び38bがそれぞれ設けられている。固定接点端子22a及び22bの下部22dには、不図示の電源等に接続される2股端子22cが設けられている。
【0029】
最上部22gは、固定接点38a及び38bよりも上の位置22hで固定接点端子22a及び22bを折曲加工することで形成されている。
図5(A)及び(B)では、位置22hより上の部分が最上部22gであり、位置22hと傾斜部22fとの間の部分が上部22eである。
【0030】
最上部22gは上部22eよりも可動接点ばね18又は絶縁カバー20から離れるように曲げられている。最上部22gは、接点間で発生したアークを可動接点36a及び36b並びに固定接点38a及び38bから上方向の空間に移動させるアークランナーとして機能する。
【0031】
図1に戻り、絶縁カバー20は、樹脂で構成されており、絶縁カバー20の天井部20eには、鉄芯24の頭部24aを露出する貫通孔20aが形成されている。絶縁カバー20の底部には、絶縁カバー20をベース28に固定するために突起状の固定部20b及び20cが形成されている。固定部20bはベース28の一端に係合し、固定部20cはベース28の不図示の孔に挿入される。また、樹脂で構成されたバックストップ20dが絶縁カバー20と一体形成されている。このストッパーとしてのバックストップ20dは、コイル30に電流が流れない場合(即ち、後述する電磁石装置31がオフの場合)に、可動接点ばね18と当接する。バックストップ20dにより、可動接点ばね18及び継鉄34のような金属部品同士の衝突音の発生を抑制できる。従って、リレー1の作動音を低減できる。
【0032】
鉄芯24は、スプール26の頭部26bに形成された貫通孔26aに挿入される。スプール26には、コイル30が巻線されており、ベース28と一体形成されている。鉄芯24、スプール26及びコイル30は、電磁石装置31を構成する。電磁石装置31は電流のオン/オフに応じて接極子16の平板部16aを引きつけたり又は引きつけを解除する。これにより、固定接点端子22a及び22bに対する可動接点ばね18の開閉動作が実行される。ベース28には、一対のコイル端子32a,32bが圧入され、一対のコイル端子32a,32bにはそれぞれコイル30の巻線が絡げられる。
【0033】
継鉄34は、側面視でL字形の導電性の部材であり、ベース28の裏面に固定される水平部34aと、水平部34aに対して垂直に立設される垂直部34bとを備えている。垂直部34bは、ベース28の下方からベース28の不図示の貫通孔及び絶縁カバー20の不図示の貫通孔に圧入される。これにより、
図2に示すように、垂直部34bの上部の両端に設けられた突起部34cが絶縁カバー20の天井部20eから突出する。
【0034】
図6(A)は、リレー1に流れる電流の向きを模式的に示す図であり、特に固定接点と可動接点とが離れている状態を図示している。
図6(B)は固定接点端子22a側から見た場合のアーク消弧を示す図であり、
図6(C)は固定接点端子22b側から見た場合のアーク消弧を示す図である。
図6(A)〜
図6(C)において、電流の流れる向き(第1方向)は矢印で示されている。
【0035】
図6(A)では、固定接点端子22a及び22bのいずれか一方が不図示の電源側に接続され、他方が不図示の負荷側に接続されている。コイル30に電流が流れると、鉄芯24が平板部16aを吸着し、突起部34c及び切り欠き部16eを支点として接極子16が回動する。接極子16の回動に伴って垂下部16b及び垂下部16bに固定された可動接点ばね18が回転し、可動接点36a及び36bはそれぞれ対応する固定接点38a及び38bに接触する。可動接点36a及び36bと固定接点38a及び38bとが接触している状態で、例えば固定接点端子22bに電圧が印加されると、電流は、
図6(A)に示すように、固定接点端子22b、固定接点38b、可動接点36b、第2可動片18b、連結部18c、第1可動片18a、可動接点36a、固定接点38a、固定接点端子22aの順に流れる。そして、コイル30に流れる電流が切断されると、ヒンジばね14の復元力によって接極子16が
図6(B)に示される反時計方向に回動する。接極子16の回動によって、可動接点36a及び36bはそれぞれ固定接点38a及び38bから離れ始めるが、可動接点36a及び固定接点38a間を流れる電流並びに可動接点36b及び固定接点38b間を流れる電流は完全には遮断されず、固定接点38a及び38bと可動接点36a及び36bとの間にアークが発生する。
【0036】
図6(A)〜(C)に図示するリレー1では、電流が可動接点36aから固定接点38aに流れる場所では、
図6(B)に示すように、磁界の向きは固定接点端子22aから固定接点端子22bに向かう奥行き方向である。従って、可動接点36a及び固定接点38a間に発生するアークは、ローレンツ力により
図6(B)の矢印Aで示すように下方向の空間に引き伸ばされて消弧する。一方、電流が固定接点38bから可動接点36bに流れている場所では、
図6(C)に示すように、磁界の向きは固定接点端子22aから固定接点端子22bに向かう奥行き方向である。従って、可動接点36b及び固定接点38b間に発生するアークは、ローレンツ力により
図6(C)の矢印Bで示すように上方向の空間に引き伸ばされて消弧する。
【0037】
図7(A)は、リレー1に流れる電流の向きを模式的に示す図であり、
図7(B)は固定接点端子22a側から見た場合のアーク消弧を示す図であり、
図7(C)は固定接点端子22b側から見た場合のアーク消弧を示す図である。
図7(A)〜
図7(C)において、電流の流れる向き(第2方向)は矢印で示されている。なお、電流の流れる向きは、
図6(A)〜
図6(C)の例とは逆になっている。
【0038】
図7(A)では、
図6(A)と同様に、固定接点端子22a及び22bのいずれか一方が不図示の電源側に接続され、他方が不図示の負荷側に接続されている。コイル30に電流が流れると、鉄芯24が平板部16aを吸着し、突起部34c及び切り欠き部16eを支点として接極子16が回動する。接極子16の回動に伴って垂下部16b及び垂下部16bに固定された可動接点ばね18が回転し、可動接点36a及び36bはそれぞれ対応する固定接点38a及び38bに接触する。可動接点36a及び36bと固定接点38a及び38bとが接触している状態で、例えば、固定接点端子22aに電圧が印加されると、電流は、
図7(A)に示すように、固定接点端子22a、固定接点38a、可動接点36a、第1可動片18a、連結部18c、第2可動片18b、可動接点36b、固定接点38b、固定接点端子22bの順に流れる。そして、コイル30に流れる電流が切断されると、ヒンジばね14の復元力によって接極子16が
図7(B)に示される反時計方向に回動する。接極子16の回動によって、可動接点36a及び36bはそれぞれ固定接点38a及び38bから離れ始めるが、可動接点36a及び固定接点38a間を流れる電流並びに可動接点36b及び固定接点38b間を流れる電流は完全には遮断されず、固定接点38a及び38bと可動接点36a及び36bとの間にアークが発生する。
【0039】
図7(A)〜(C)に図示するリレー1では、電流が固定接点38aから可動接点36aに流れる場所では、
図7(B)に示すように、磁界の向きは固定接点端子22aから固定接点端子22bに向かう奥行き方向である。従って、可動接点36a及び固定接点38a間に発生するアークは、ローレンツ力により
図7(B)の矢印Aで示すように上方向の空間に引き伸ばされて消弧する。一方、電流が可動接点36bから固定接点38bに流れている場所では、
図7(C)に示すように、磁界の向きは固定接点端子22aから固定接点端子22bに向かう奥行き方向である。従って、可動接点36b及び固定接点38b間に発生するアークは、ローレンツ力により
図7(C)の矢印Bで示すように下方向の空間に引き伸ばされて消弧する。
【0040】
従って、
図6(A)〜
図7(C)によれば、本実施の形態のリレー1は、可動接点36a及び固定接点38a間を流れる電流並びに可動接点36b及び固定接点38b間を流れる電流の向きに関わらず、可動接点36a及び固定接点38a間に発生するアークと可動接点36b及び固定接点38b間に発生するアークとを同時に、且つそれぞれ反対方向の空間にそれぞれ引き伸ばして消弧することができる。
【0041】
また、接極子16及び可動接点ばね18を含む可動部材の支点(例えば切り欠き部16e)が可動接点36a及び36b又は固定接点38a及び38bの上側に配置され、固定接点端子22a及び22bの支点(例えば、下部22d)が可動接点36a及び36b又は固定接点38a及び38bの下側に配置されている。従って、可動接点36a及び固定接点38a間に流れる電流の向きに応じて、可動接点36a及び固定接点38a間に発生するアークを上方向に引き伸ばしても、下方向に引き伸ばしても、アークを引き伸ばす空間を確保することができる。同様に、可動接点36b及び固定接点38b間に流れる電流の向きに応じて、可動接点36b及び固定接点38b間に発生するアークを上方向に引き伸ばしても、下方向に引き伸ばしても、アークを引き伸ばす空間を確保することができる。
【0042】
図8(A)は、第1可動片18a側から見たリレー1の側面図である。
図8(B)は、固定接点端子22a、可動接点ばね18及び接極子16の拡大図である。
図8(C)及び(D)は、可動接点ばね18及び接極子16の部分拡大図である。
【0043】
コイル30に電流が流れると、鉄芯24が平板部16aを吸着し、突起部34c及び切り欠き部16eを支点として接極子16が回動する。接極子16の回動に伴って垂下部16b及び垂下部16bに固定された可動接点ばね18が回転し、
図8(A)に示すように可動接点36aは固定接点38aに接触する。
【0044】
このとき、可動接点ばね18は、垂下部16bの第1面に設けられた突起16fによってかしめ固定されているため、接極子16の垂下部16bの下部16b2に対向する第1可動片18aの上部18a2(具体的には突起16fよりも下に位置する上部18a2)は、
図8(B)に示すように、接極子16の垂下部16bから離れるように撓んでいる。つまり、接極子16の垂下部16bの下部16b2と第1可動片18aの上部18a2との間に隙間が形成される。
【0045】
可動接点36aが固定接点38aと接触すると、例えば、電流は
図8(C)に示すように、第1可動片18aの上部18a2に流れる。このため、上部18a2で右ネジの法則により磁界が発生する。接極子16は磁性体であり、上部18a2に向けた磁界が発生しているため、
図8(C)に示すように、第1可動片18aの上部18a2には垂下部16bの下部16b2に向けて吸引力が発生する。
【0046】
また、
図8(D)に示すように、電流の向きが
図8(C)と逆である場合、磁界の向きも
図8(C)と逆になるが、
図8(C)と同様に、第1可動片18aの上部18a2には垂下部16bの下部16b2に向けて吸引力が発生する。
【0047】
従って、第1可動片18aに流れる電流の向きによらず、第1可動片18aの上部18a2には垂下部16bの下部16b2に向けて吸引力が発生する。この吸引力により可動接点36aが固定接点38aに押し付けられるため、電磁反発力が発生した場合に可動接点36aが固定接点38aから離れることを抑制することができる。
【0048】
また、接極子16の垂下部16bが、第1可動片18aの上部18a2に対向すると共に突起16fより下に延びる下部16b2を備えているので、可動接点及び固定接点間に吸引力を発生させるための新たな部品を設けなくても、下部16b2が第1可動片18aの上部18a2を吸引することができる。そのため、過電流の通電時に電磁反発力が発生しても、接極子16の垂下部16bの下部16b2が、可動接点36aが固定接点38aから離れることを抑制できる。
【0049】
ここでは、第1可動片18aについて説明したが、第2可動片18bの上部18b2も第1可動片18aの上部18a2と同様に、吸引力を発生する。従って、垂下部16bの下部16b2が第2可動片18bの上部18b2を吸引することができる。
【0050】
以上説明したように、第1の実施の形態によれば、可動接点ばね18が、固定接点38a,38bと接離する可動接点36a,36bをそれぞれ有する一対の可動片18a,18bと、当該一対の可動片を互いに連結する連結部18cとを含む。そして、接極子16の垂下部16bが、電磁石装置31と対向する第1面上に可動接点ばね18をかしめ固定するための突起16fと、突起16fより下方に延びると共に固定接点38a,38bと可動接点36a,38bとの間に電流が流れる場合に可動接点ばね18を引き付ける下部16b2とを備えている。従って、本実施の形態のリレー1では、一方の固定接点から入力される電流は、正面視でコの字形状の可動接点ばね18、つまり、コの字形状の電流路を介して他方の固定接点に出力されるので、従来のように、固定接点及び可動接点の周りに電流路を這い回す必要がなく、リレーのサイズを小型にできる。また、垂下部16bが可動接点ばね18(即ち上部18a2,18b2)を吸引することができるので、従来のように、可動接点及び固定接点間に吸引力を発生させるための新たな部品を設ける必要がなく、製造コストを低減できる。
【0051】
図9は、第2の実施の形態に係るリレー110の斜視図である。第2の実施の形態に係るリレー110は、接極子160、板ばね180及び接続板181を備えている。第2の実施の形態に係るリレー110の他の構成は、第1の実施の形態のリレー1の対応する構成と同一であるので、その説明は省略する。
【0052】
図10(A)は、板ばね180及び接続板181の構成図である。
図10(B)は、接極子160の構成図である。
図10(C)は、板ばね180及び接続板181が接極子160に取り付けられた状態を示す図である。
図10(D)は、板ばね180、接続板181及び接極子160の側面図である。
【0053】
図10(A)に示すように、板ばね180は、側面視で「く」の字形状の導電性の板ばねであり、中央より下端に近い位置180bで折曲加工されている。ここで、板ばね180の位置180bより上の部分を上部180cとし、板ばね180の位置180bより下の部分を下部180dとする。上部180cには、接極子160の垂下部160bに設けられた突起160fに嵌められる貫通孔180aが形成されている。
図10(C)に示すように、突起160fが貫通孔180aに嵌められ、かしめられることで、板ばね180は接極子160の垂下部160bの第1面に固定される。ここでは、電磁石装置31又は絶縁カバー20に対向する垂下部160bの面を第1面とし、第1面の裏面を第2面とする。板ばね180は、上部180cが固定接点端子22a及び22bから離れる方向(つまり、電磁石装置31に近づく方向)に折り曲げられている。
【0054】
接続板181は、導電性の板であり、下部180dに水平に固定されている。また、接続板181の左右両端には、耐アーク性に優れた材料からなる可動接点36a,36bがそれぞれ設けられている。
【0055】
板ばね180の一端は、上述したように、接極子160の垂下部160bの第1面にかしめ固定されている。板ばね180の他端は、可動接点36a,36bを結ぶ方向と垂直な方向に延びるように接続板181に固定されており、且つ可動接点36a,36b間に固定されている。
【0056】
図10(B)及び
図10(D)に示すように、接極子160は、2回折曲加工された磁性体であり、鉄芯24に吸着される平板部160aと、屈曲部160cを介して平板部160aから下方に延びる板状の垂下部160bとを備えている。さらに、
図10(B)に示すように、屈曲部160cの中央には、ヒンジばね14の水平部14aが突出するように、貫通孔160dが形成されている。また、平板部160aには、継鉄34の突起部34cが嵌るような切り欠き部160eが形成されている。接極子160は、上述した接極子16と同様に、継鉄34の突起部34c及び切り欠き部160eを支点として回転運動をする。コイル30に電流が流れると、鉄芯24が平板部160aを吸着する。このとき、ヒンジばね14の水平部14aは垂下部160bと接触し、垂下部160bから上方向に押される。コイル30の電流が切断されると、ヒンジばね14の水平部14aの復元力により垂下部160bは押し下げられる。これにより、平板部160aは鉄芯24から引き離される。
【0057】
図10(C)に示すように、垂下部
160bには、板ばね180を垂下部160bにかしめ固定するための突起160fが電磁石装置31又は絶縁カバー20に対向する垂下部160bの第1面に設けられている。また、
図10(B)に示すように、垂下部160bは、正面視で略T字形状の磁性体であり、屈曲部160cに接続される上部160g、上部160gの下端中央から下方に延出する中央部160h、中央部160hからさらに下方に延出する下部160jを備えている。下部160jは、接続板181及び板ばね180を引き付ける引付部として機能する。中央部160hと下部160jとの間の位置160iで折曲加工されている。下部160jが略垂直に配置される場合に、垂下部160bは、上部160g及び中央部160hが固定接点端子22a及び22bから離れる方向(つまり、絶縁カバー20に近づく方向)に折り曲げられている。また、垂下部160bは
図10(D)に示すように、板ばね180及び接続板181に重なるように延設されている。さらに、
図10(D)に示すように、垂下部160bは、板ばね180の形状に沿って折曲加工されている、つまり、板ばね180に重なるように折曲加工されている。従って、上部160g及び中央部160hが上部180cと重なり、下部160jが下部180dと重なる。
【0058】
可動接点36a及び36bがそれぞれ固定接点38a及び38bと接触した状態で、例えば、
図10(D)に示すように、可動接点36aから可動接点36bに電流が流れると、接続板181で右ネジの法則により磁界が発生する。接極子160は磁性体であり、下部160jに向けた磁界が発生しているため、接続板181には垂下部160bの下部160jに向けて吸引力が発生する。また、電流の向きが
図10(D)と逆である場合、磁界の向きも
図10(D)と逆になるが、下部160jに向けた磁界が発生する。従って、
図10(D)と同様に、接続板181には垂下部
160bの下部160jに向けて吸引力が発生する。従って、接続板181に流れる電流の向きによらず、接続板181には垂下部160bの下部160jに向けて吸引力が発生する。この吸引力は、電磁反発力が発生した場合に、可動接点36a,36bが固定接点38a,38bか
ら離れることを抑制することができる。
【0059】
また、接極子160の垂下部160bが、板ばね180の下部180dに対向すると共に突起
160fより下に延びる中央部160h及び下部160jを備えているので、可動接点及び固定接点間に吸引力を発生させるための新たな部品を設けなくても、下部160jが接続板181及び板ばね180の下部180dを吸引することができる。過電流の通電時に電磁反発力が発生しても、接極子160の垂下部160bの下部160jは、可動接点36a及び36bが固定接点38a及び38bから離れることを抑制できる。
【0060】
図11(A)は、接極子16の変形例を示す図であり、
図11(B)は接極子160の変形例を示す図である。
図12(A)は、
図11(A)のA−A線の断面図である。
図12(B)は側壁が形成されていない場合の接極子16及び可動接点ばね18の断面図である。
図12(C)は、
図11(B)のA−A線の断面図である。
図12(D)は底壁が形成されていない場合の接極子160、接続板181及び板ばね180の断面図である。なお、
図12(A)〜(D)に示す電流の向きは一例であり、逆向きでもよい。電流の向きが逆向きになる場合、磁界の向きも逆向きになる。
【0061】
図11(A)に示すように、垂下部16bの下部16b2の左右両端の少なくとも一方に、電磁石装置31側に所定の角度θで立設された側壁162を設けてもよい。所定の角度θは、過電流の通電により発生する磁界(磁気回路)の磁気抵抗を小さくするために、垂下部16bの第1面に対して90度以内であることが好ましい。側壁162は、垂下部16bの下部16b2の左右両端の少なくとも一方を電磁石装置31側に折り曲げることによって形成されてもよい。側壁162は、磁性体で構成されている。
【0062】
図11(A)のA−A線の断面では、
図12(A)に示すように、可動接点ばね18の第1可動片18aの周りに磁界(磁気回路)が形成される。
図12(A)のように側壁162が垂下部16bに設けられている場合、
図12(B)に示すように側壁162が垂下部16bに設けられていない場合に比べて、過電流の通電により発生する磁界(磁気回路)の磁気抵抗が小さくなるため、可動接点ばね18が接極子16により強い力で吸引される。
【0063】
また、
図11(B)に示すように、接極子160の垂下部160bの下部160jの下端に、電磁石装置31側に所定の角度θで立設された底壁163を設けてもよい。所定の角度θは、過電流の通電により発生する磁界(磁気回路)の磁気抵抗を小さくするために、垂下部160bの第1面に対して90度以内であることが好ましい。底壁163は、垂下部160bの下部160jを電磁石装置31側に折り曲げることによって形成されてもよい。底壁163は、磁性体で構成されている。
【0064】
図11(B)のA−A線の断面では、
図12(C)に示すように、板ばね180の下部180dの周りに磁界(つまり磁気回路)が形成される。
図12(C)のように底壁163が下部160jに設けられている場合、
図12(D)に示すように底壁163が下部160jに設けられていない場合に比べて、過電流の通電により発生する磁界(磁気回路)の磁気抵抗が小さくなるため、板ばね180及び板ばね180に固定された接続板181が接極子160により強い力で吸引される。
【0065】
以上説明したように、第2の実施の形態によれば、リレー110は、固定接点38a,38bと接離する可動接点36a,36bを有する平板状の接続板181を備えている。また、接極子160の垂下部160bが、電磁石装置31と対向する第1面上に可動板ばね180をかしめ固定するための突起160fと、突起160fより下方に延びると共に固定接点38a,38bと可動接点36a,
36bとの間に電流が流れる場合に板ばね180及び接続板181を引き付ける下部160jとを備えている。従って、本実施の形態のリレー110では、一方の固定接点から入力される電流は、左右両端に可動接点36a,36bが配置された接続板181、つまり直線状の電流路を介して他方の固定接点に出力されるので、従来のように、固定接点及び可動接点の周りに電流路を這い回す必要がなく、リレーのサイズを小型にできる。また、垂下部
160bの下部160jが接続板181及び板ばね180(即ち下部180d)を吸引することができるので、従来のように、可動接点及び固定接点間に吸引力を発生させるための新たな部品を設ける必要がなく、製造コストを低減できる。
【0066】
尚、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することが可能である。