特許第6403478号(P6403478)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6403478
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1368 20060101AFI20181001BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20181001BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   G02F1/1368
   H01L29/78 619B
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-153837(P2014-153837)
(22)【出願日】2014年7月29日
(65)【公開番号】特開2016-31459(P2016-31459A)
(43)【公開日】2016年3月7日
【審査請求日】2017年6月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000103747
【氏名又は名称】京セラディスプレイ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】市村 照彦
(72)【発明者】
【氏名】神野 優志
(72)【発明者】
【氏名】森川 慎一郎
【審査官】 磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−100250(JP,A)
【文献】 米国特許第05879959(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1368
G02F 1/1343
H01L 29/786
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上面の第1の方向に形成された複数本のゲート信号線と、前記第1の方向に交差する第2の方向に前記ゲート信号線と交差させて形成された複数本の画像信号線と、前記ゲート信号線と前記画像信号線の交差部の近傍に形成された、多結晶シリコンから成るシングルゲートのチャネル部を有する薄膜トランジスタ素子と、前記基板の上面の平面視で前記チャネル部と重なる部位に絶縁層を介して形成された遮光膜と、を有しており、前記遮光膜は、前記薄膜トランジスタ素子のソース電極の少なくとも一部と平面視で重なるように前記画像信号線に対して斜め方向に伸びた形状で形成されており、前記ソース電極は前記ゲート信号線と平面視で重なっている液晶表示装置。
【請求項2】
前記チャネル部は、前記斜め方向に伸びるように形成されている請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
基板の上面の第1の方向に形成された複数本のゲート信号線と、前記第1の方向に交差する第2の方向に前記ゲート信号線と交差させて形成された複数本の画像信号線と、前記ゲート信号線と前記画像信号線の交差部の近傍に形成された、多結晶シリコンから成るシングルゲートのチャネル部を有する薄膜トランジスタ素子と、前記基板の上面の平面視で前記チャネル部と重なる部位に絶縁層を介して形成された遮光膜と、を有しており、前記遮光膜は、前記薄膜トランジスタ素子のソース電極の少なくとも一部と平面視で重なるように前記画像信号線に対して斜め方向に伸びた形状で形成されており、前記チャネル部は前記斜め方向に伸びるように形成されている液晶表示装置。
【請求項4】
前記遮光膜は、Al,Mo,Cr,Ti,Ta,W及びPdのうちの少なくとも一つを含む金属膜である請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多結晶シリコンから成るチャネル部を有する薄膜トランジスタ(Thine Film Transistor :TFT)素子を有するアクティブマトリクス型の液晶表示装置(Liquid Crystal Display :LCD)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アクティブマトリクス型のLCDは、TFT素子を含む画素電極部が多数形成されたTFTアレイ側基板と、カラーフィルタ及びブラックマトリクスが形成されたカラーフィルタ側基板とを互いに対向させて、それらの基板を所定の間隔でもって貼り合わせ、それらの基板間に液晶を充填、封入させることによって作製される。
【0003】
従来のアクティブマトリクス型のLCDの基本構成の一例を図6に示す。例えば、TFTアレイ側基板は、その上の第1の方向(例えば、行方向)に形成された複数本のゲート信号線GLl,GL2,GL3・・・GLnと、第1の方向と交差する第2の方向(例えば、列方向)にゲート信号線GLl〜GLnと交差させて形成された複数本の画像信号線SLl,SL2,SL3・・・SLmと、ゲート信号線GLl〜GLnと画像信号線SL1〜SLmの交差部に形成された、TFT素子41、画素電極PE11,PE12,PE13・・・PEnmを含む画素部Pll,P12,P13・・・Pnmと、を有する構成である。また、共通電極(図示せず)と、その共通電極に共通電圧(Vcom)を供給する共通電極線42は、画素電極PE11〜PEnmとの間で液晶に印加する垂直的な電界を形成する場合、カラーフィルタ側基板上に設けられている。また共通電極線42は、画素電極PE11〜PEnmとの間で液晶に印加する水平的な電界(横電界:In-Plane Field)、端部電界(Fringe Field)を形成する場合、TFTアレイ側基板上に設けられている。なお、図6において、43はゲート信号線駆動回路、44は画像信号(ソース信号)線駆動回路である。
【0004】
TFT素子41は、アモルファスシリコン(a-Si)、低温多結晶シリコン(Low-Temperature Poly Silicon :LTPS)等から成る半導体層を有し、ゲート電極部、ソース電極部、ドレイン電極部の3端子部を有する構成である。そして、ゲート電極部に所定電位の電圧(例えば6V)を印加することにより、ソース電極部とドレイン電極部の間の半導体層(チャネル)に電流を流す、スイッチング素子(ゲートトランスファ素子)として機能する。また、画素電極PE11〜PEnmは、一般に酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide :ITO)等から成る透明導電体層から構成されている。
【0005】
上記のLTPSは、450℃以下で多結晶化させたシリコンであり、高価な石英基板等ではなく、ガラス基板が使用できる。また、LTPSはキャリア移動度が100〜200cm2/Vs以上であり、アモルファスシリコンの0.5cm2/Vsよりも高い。その結果、電流駆動能力が向上し、TFT素子41を小さくして高精細化することができる。また、LTPSを用いてnチャンネルTFT素子及びpチャンネルTFT素子を形成できるので、CMOS回路を基礎とした駆動回路、SRAM回路、D/A変換器、画像表示部等をガラス基板上に一体的に集積化することができる。従って、音声処理回路、マイクロプロセサを搭載したLCDもLTPSを用いて作製することができる。ガラス基板上にLCDとその周辺駆動回路を一体的に形成できるので、電気的な信頼性が向上する。即ち、LCDパネルと駆動回路との電気的接続数を大幅に低減させることができ、振動に強く、軽量化がなされるので、携帯情報端末等にとって好適なものとなる。また、電流駆動能力が高いので、高精細な画素、開口率の高い画素部Pll〜Pnmを有するLCDを作製することができる。
【0006】
そして、LTPSから成る半導体層は以下のようにして作製される。まず、ガラス基板上に、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法によって、アモルファスシリコン層を形成する。次に、アモルファスシリコン層を多結晶化するために、450℃以下のガラス基板の温度でアモルファスシリコン層にエキシマレーザ光を照射する。エキシマレーザ光のエネルギーによってアモルファスシリコンは瞬間的に溶融し凝固する。その結果、平均粒径0.3μm程度のLTPS層に変化する。
【0007】
上記の製造方法によって作製されたLTPS層は結晶欠陥が比較的多いものとなりやすい。そのため、LTPS層のゲート信号線GLl〜GLnとの交差部であるチャネル部(活性部)に、ゲート信号線GLl〜GLnに所定電位の電圧(例えば6V)を印加した際に、所望の値の電流が流れにくい場合がある。即ち、LTPS層のチャネル部の動作信頼性が低くなりやすい。
【0008】
図4は、図6のゲート信号線GLl〜GLnと画像信号線SL1〜SLmの交差部、及びLTPSから成る半導体層13を有するTFT素子41の部位45を、拡大して示す拡大平面図である。図4に示すように、LCDは、ゲート信号線11と画像信号線12の交差部の近傍に形成された、LTPSから成るダブルゲートのチャネル部13a,13bを有するTFT素子と、ガラス基板の上面の平面視でチャネル部13a,13bと重なる部位にゲート信号線11及びチャネル部13a,13bと絶縁層を介して形成された遮光膜16と、を有している構成である。この遮光膜16は、プロジェクタ装置、ヘッドアップディスプレイ等の高輝度のバックライトを使用する装置において、不活性状態のチャネル部13a,13bに光リーク電流が流れることを抑えるために設けられる。
【0009】
そして、LTPS層のチャネル部の動作信頼性が低くなりやすいことから、LTPSから成る半導体層とゲート信号線GLl〜GLnとの交差部であるチャネル部が2つあるダブルゲート構造とされている。即ち、1つのチャネル部13a(13b)の動作信頼性が低い場合であっても、もう1つのチャネル部13b(13a)の動作信頼性が充分であればよい、という冗長化構造である。なお、図4において、14はドレイン電極、14aはコンタクトホール、15はソース電極、15aはコンタクトホール、17は画素部である。
【0010】
また、図5は、図4のB1−B2線における断面図である。ガラス基板30の上面に、遮光膜16、透光性の第1の絶縁層31、ゲート信号線11、ゲート絶縁層32、半導体層13、透光性の第2の絶縁層33、ドレイン電極14及びソース電極15が順次積層されている。
【0011】
また、他の従来例として、複数のTFTのポリシリコンから成る半導体層の少なくともチャネル領域を基板の側から見てそれぞれ覆う位置に設けられている導電性の遮光膜を有するシングルゲート構造の液晶装置が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2000−10120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、図4に示す従来のLCDにおいては、ガラス基板の上面の平面視でチャネル部13a,13bと重なる部位に形成された遮光膜16を有しているために、遮光膜16の面積が大きくなり、画素部17の開口率が低下するという問題点があった。
【0014】
従って、本発明は、上記従来の問題点に鑑みて完成されたものであり、遮光膜の面積を小さくして画素部の開口率を向上させることが可能なLCDとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の液晶表示装置は、基板の上面の第1の方向に形成された複数本のゲート信号線と、前記第1の方向に交差する第2の方向に前記ゲート信号線と交差させて形成された複数本の画像信号線と、前記ゲート信号線と前記画像信号線の交差部の近傍に形成された、多結晶シリコンから成るシングルゲートのチャネル部を有する薄膜トランジスタ素子と、前記基板の上面の平面視で前記チャネル部と重なる部位に絶縁層を介して形成された遮光膜と、を有しており、前記遮光膜は、前記薄膜トランジスタ素子のソース電極の少なくとも一部と平面視で重なるように前記画像信号線に対して斜め方向に伸びた形状で形成されており、前記ソース電極は前記ゲート信号線と平面視で重なっている構成である。
【0016】
本発明の液晶表示装置は、好ましくは、前記チャネル部は、前記斜め方向に伸びるように形成されている
【0017】
また本発明の液晶表示装置は、基板の上面の第1の方向に形成された複数本のゲート信号線と、前記第1の方向に交差する第2の方向に前記ゲート信号線と交差させて形成された複数本の画像信号線と、前記ゲート信号線と前記画像信号線の交差部の近傍に形成された、多結晶シリコンから成るシングルゲートのチャネル部を有する薄膜トランジスタ素子と、前記基板の上面の平面視で前記チャネル部と重なる部位に絶縁層を介して形成された遮光膜と、を有しており、前記遮光膜は、前記薄膜トランジスタ素子のソース電極の少なくとも一部と平面視で重なるように前記画像信号線に対して斜め方向に伸びた形状で形成されており、前記チャネル部は前記斜め方向に伸びるように形成されている構成である。

【0018】
また本発明の液晶表示装置は、好ましくは、前記遮光膜は、Al,Mo,Cr,Ti,Ta,W及びPdのうちの少なくとも一つを含む金属膜である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の液晶表示装置は、基板の上面の第1の方向に形成された複数本のゲート信号線と、第1の方向に交差する第2の方向にゲート信号線と交差させて形成された複数本の画像信号線と、ゲート信号線と画像信号線の交差部の近傍に形成された、多結晶シリコンから成るシングルゲートのチャネル部を有する薄膜トランジスタ素子と、基板の上面の平面視でチャネル部と重なる部位に絶縁層を介して形成された遮光膜と、を有しており、遮光膜は、薄膜トランジスタ素子のソース電極の少なくとも一部と平面視で重なるように画像信号線に対して斜め方向に伸びた形状で形成されていることから、遮光膜の面積を小さくして画素部の開口率を向上させることができる。
【0020】
本発明の液晶表示装置は、好ましくは、ソース電極は、ゲート信号線と平面視で重なっていることから、遮光性を有するソース電極がゲート信号線にも重なることになる。その結果、画素部の開口率がさらに向上する。
【0021】
また本発明の液晶表示装置は、好ましくは、チャネル部は、斜め方向に伸びるように形成されていることから、薄膜トランジスタ素子のドレイン電極とソース電極とを、チャネル部を含む半導体導電層を介して短い距離で接続することができる。その結果、ソース電極をゲート信号線と画像信号線の交差部により近い位置に配置することができるので、画素部の開口率がさらに向上する。
【0022】
また本発明の液晶表示装置は、好ましくは、遮光膜は、Al,Mo,Cr,Ti,Ta,W及びPdのうちの少なくとも一つを含む金属膜であることから、基板の下方から照射される高輝度のバックライトの光を有効に遮光することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の液晶表示装置について実施の形態の1例を示す図であり、ゲート信号線と画像信号線の交差部、及び多結晶シリコンから成るチャネル部を含む半導体導電層を有するTFT素子の部位の拡大平面図である。
図2図2は、図1のA1−A2線における断面図である。
図3図3は、本発明の液晶表示装置について実施の形態の他例を示す図であり、ゲート信号線と画像信号線の交差部、及び多結晶シリコンから成るチャネル部を含む半導体導電層を有するTFT素子の部位の拡大平面図である。
図4図4は、従来の液晶表示装置を示す図であり、ゲート信号線と画像信号線の交差部、及び多結晶シリコンから成るチャネル部を含む半導体導電層を有するTFT素子の部位の拡大平面図である。
図5図5は、図4のB1−B2線における断面図である。
図6図6は、従来の液晶表示装置の基本構成を示すブロック回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明のLCDの実施の形態について、図面を参照しながら説明する。但し、以下で参照する各図は、本発明のLCDの主要な構成部材等を示している。従って、本発明のLCDは、図に示されていない回路基板、配線導体、制御IC,LSI等の周知の構成部材を備えていてもよい。
【0025】
図1及び図2は本発明のLCDを示す図であり、図1は、本発明のLCDについて実施の形態の1例を示す図であり、ゲート信号線1と画像信号線2の交差部、及び多結晶シリコンから成るチャネル部3aを含む半導体導電層3を有するTFT素子の部位(図6の符号45の部位)の拡大平面図である。図2は、図1のA1−A2線における断面図である。
【0026】
本発明のLCDは、図1及び図2に示すように、ガラス基板等の基板の上面の第1の方向(例えば、行方向)に形成された複数本のゲート信号線1と、第1の方向に交差する第2の方向(例えば、列方向)にゲート信号線1と交差させてゲート信号線1の上方に形成された複数本の画像信号線2と、ゲート信号線1と画像信号線2の交差部の近傍に形成された、多結晶シリコンから成るシングルゲートのチャネル部3aを有するTFT素子と、基板の上面の平面視でチャネル部3aと重なる部位に絶縁層21を介して形成された遮光膜6と、を有しており、遮光膜6は、TFT素子のソース電極5の少なくとも一部と平面視で重なるように画像信号線2に対して斜め方向に伸びた形状で形成されている構成である。この構成により、遮光膜6の面積を小さくして画素部7の開口率を向上させることができる。
【0027】
すなわち、遮光膜6は、シングルゲートのチャネル部3aと平面視で重なるので、遮光膜6の面積が小さくなるうえ、遮光性を有するソース電極5の少なくとも一部と平面視で重なっている。この重畳部8があるために、画素部7の面積に対する遮光膜6の面積が重畳部8の分減少することになる。その結果、画素部7の開口率が向上する。なお、シングルゲートとは、一つのTFT素子において半導体導電層3とゲート信号線1との交差部(チャネル部3a)が1つである構造をいう。ダブルゲートとは、上記交差部(チャネル部3a)が2つある構造をいう。
【0028】
また、図2に示すように、ガラス基板20の上面に、遮光膜6、透光性の第1の絶縁層21、ゲート信号線1、ゲート絶縁層22、半導体導電層3、透光性の第2の絶縁層23、画像信号線2(ドレイン電極4は図示せず)及びソース電極5が順次積層されている。なお、図1図2において、4a,5aはコンタクトホールである。
【0029】
ゲート信号線1、画像信号線2、ドレイン電極4、ソース電極5は、導電層から成り、例えばタンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、銀(Ag)、銅(Cu)、ネオジウム(Nd)等から選ばれた元素、それらの元素を主成分とする合金材料、窒化チタン、窒化タンタル、窒化モリブデン等の金属窒化物等の導電性を有する材料から成る。導電層は、これらの材料の単層構造または複数層の積層構造とすることができる。積層構造とすることにより、低抵抗化を実現することができる。また、ゲート信号線1、画像信号線2、ドレイン電極4、ソース電極5は、一般に遮光性を有している。また、画素電極(図示せず)は、透光性導電層から成り、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、酸化珪素を添加したインジウム錫酸化物(ITSO)、酸化亜鉛(ZnO)、リンやボロンが含まれるシリコン(Si)等の導電性材料であって透光性を有する材料から成る。
【0030】
第1の絶縁層21、ゲート絶縁層22、第2の絶縁層23は、単層構造または複数層の積層構造とすることができる。これらの絶縁層の材料としては、無機材料または有機材料を用いることができる。無機材料としては、酸化珪素または窒化珪素を用いることができる。有機材料としては、アクリル樹脂、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド、ベンゾシクロブテン、シロキサン、ポリシラザンを用いることができる。シロキサンは、シリコン(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が形成される。その置換基として、少なくとも水素を含む有機基(例えばアルキル基、芳香族炭化水素)が用いられる。置換基として、フルオロ基、少なくとも水素を含む有機基とフルオロ基を用いてもよい。ポリシラザンは、珪素(Si)と窒素(N)の結合を有するポリマー材料を出発原料として形成される。これらの絶縁層の材料として有機材料を用いると、その表面の平坦性を高めることができ、好ましい。これらの絶縁層の材料として無機材料を用いると、半導体導電層3、ゲート信号線1の表面形状に沿うような表面を有するものとなる。また、この場合であっても、厚膜化することにより平坦性を有するものとなる。
【0031】
半導体導電層3は多結晶シリコンから成るが、その多結晶シリコンは低温多結晶シリコン(LTPS)である。そして、LTPSから成る半導体導電層3は以下のようにして作製される。まず、ガラス基板等の基板上に、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法によって、アモルファスシリコン層を形成する。次に、アモルファスシリコン層を多結晶化するために、450℃以下のガラス基板の温度でアモルファスシリコン層にエキシマレーザ光を照射する。エキシマレーザ光のエネルギーによってアモルファスシリコンは瞬間的に溶融し凝固する。その結果、平均粒径0.3μm程度のLTPS層に変化する。半導体導電層3を構成するLTPSは、n型LTPS、p型LTPSのいずれであってもよいが、高い電荷(電子等)の移動度が得られる点でn型LTPSが好ましい。
【0032】
遮光膜6は、スパッタリング法、CVD法等の薄膜形成法、スクリーン印刷法等の厚膜法によって形成される。また、遮光膜6は金属、合金、金属酸化物、金属窒化物、黒色系樹脂等の遮光性のある材料から成ればよい。例えば、遮光膜6は、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)及びパラジウム(Pd)のうちの少なくとも一つを含む金属膜であることが好ましい。この場合、ガラス基板20の下方から照射される高輝度(100万カンデラ以上)のバックライトの光を有効に遮光することができる。従って、この遮光膜6を有するLCDは、ヘッドアップディスプレイ、プロジェクタ装置等の高輝度のバックライトを用いるLCDに好適なものである。
【0033】
遮光膜6の他の材料としては、銀(Ag)、銅(Cu)、ネオジウム(Nd)等から選ばれた元素、またはそれらの元素を主成分とする合金材料、及び窒化チタン、窒化タンタル、窒化モリブデン等の金属窒化物等の導電性を有する材料を採用し得る。遮光膜6は、これらの材料から成る単層構造、または複数層の積層構造とすることができる。
【0034】
遮光膜6の厚みは、遮光膜6の光学濃度(Optical Density :OD)値が3程度以上となるような厚みであればよい。
【0035】
遮光膜6は、TFT素子のソース電極5の少なくとも一部と平面視で重なるように画像信号線2に対して斜め方向に伸びた形状であり、遮光膜6の平面視における形状は、長方形、角部を丸めた長方形、楕円形、長円形等の種々の形状とし得る。遮光膜6の長手方向と画像信号線2の信号伝送方向(延伸方向)とのなす角度は、特に限定されるものではないが、30度〜60度程度である。
【0036】
また遮光膜6は、その形状線(アウトライン)とチャネル部3aの形状線(アウトライン)との間の平面視での距離が、いずれの方向においても光リーク電流発生抑止距離以上であることが好ましい。この光リーク電流発生抑止距離は、例えば4μm以上である。4μm未満では、不活性状態のチャネル部3aに光リーク電流が流れやすくなる。
【0037】
また遮光膜6は、TFT素子のソース電極5の少なくとも一部と平面視で重なっているが、その重畳部8の面積はソース電極5の面積の30%以上であることが好ましい。この場合、画素部7の開口率の向上に対する寄与が明確に発現しやすい。
【0038】
図3は、本発明のLCDについて実施の形態の他例を示す図であり、ゲート信号線1と画像信号線2の交差部、及び多結晶シリコンから成るチャネル部3aを含む半導体導電層3を有するTFT素子の部位の拡大平面図である。図3に示すように、ソース電極5は、ゲート信号線1と平面視で重なっていることが好ましい。この場合、遮光性を有するソース電極5がゲート信号線1にも重なることになる。その結果、画素部7の開口率がさらに向上する。
【0039】
また、図3に示すように、チャネル部3aは、遮光膜6の長手方向である斜め方向に伸びるように形成されていることが好ましい。これにより、TFT素子のドレイン電極4とソース電極5とを、チャネル部3aを含む半導体導電層3を介して短い距離で接続することができる。その結果、ソース電極5をゲート信号線1と画像信号線2の交差部により近い位置に配置することができるので、画素部7の開口率がさらに向上する。チャネル部3aの長手方向(延伸方向)は、上記斜め方向と完全に平行である必要はなく、上記斜め方向と20度程度以下の角度をなしていてもよい。
【0040】
なお、チャネル部3aは、n型LTPSから成る場合、ノンドープであるか、TFTの閾値電圧を制御するためにリン(P)またはホウ素(B)を5×1011〜2×1012/cm2程度ドープしたものである。また、半導体導電層3のチャネル部3aの周りに、リーク電流低減のために低濃度ドープドレイン(Lightly Doped Drain :LDD)部を形成してもよい。このLDD部は、例えばリン(P)を1×1012〜5×1013/cm2程度ドープしたものである。半導体導電層3のソース電極5の部位、ドレイン電極4の部位は、トランジスタの動作信頼性を高めるために、例えばリン(P)またはホウ素(B)を5×1014〜5×1015/cm2程度ドープしたものである。
【0041】
半導体導電層3がLDD部を有する場合、遮光膜6の形状線(アウトライン)とLDD部の形状線(アウトライン)との間の平面視での距離が、いずれの方向においても光リーク電流発生抑止距離以上であることが好ましい。この光リーク電流発生抑止距離は、例えば4μm以上である。
【0042】
本発明のLCDは以下のようにして作製される。LCDは、TFT素子を含む画素部が多数形成されたガラス基板等から成るTFTアレイ側基板と、カラーフィルタ及びブラックマトリクスが形成されたガラス基板等から成るカラーフィルタ側基板とを互いに対向させて、それらの基板を所定の間隔でもって貼り合わせ、それらの基板間に液晶を充填、封入させることによって作製される。また、一般的に、カラーフィルタ側基板は、TFT素子及び画素電極に対向する側の主面(主面aとする)の全面に、画素電極との間で液晶に印加する垂直電界を形成するための共通電極(基準電極)が形成されている。この共通電極は、IPS(In-Plane Switching)方式のLCDの場合、TFTアレイ側基板の画素部に画素電極と同じ面内に形成されることによって横電界を生じさせるものとなる。また共通電極は、FFS(Fringe Field Switching)方式のLCDの場合、TFTアレイ側基板の画素部に画素電極の上方または下方に絶縁層を挟んで形成されることによって端部電界(Fringe Field)を生じさせるものとなる。また、カラーフィルタ側基板の主面aには、それぞれの画素に対応する赤(R)、緑(G)、青(B)のカラーフィルタが形成されており、それぞれの画素を通過する光が相互に干渉することを防ぐブラックマトリクスがカラーフィルタの外周を囲むように形成されている。
【0043】
なお、本発明のLCDは、上記実施の形態に限定されるものではなく、適宜の設計的な変更、改良を含んでいてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のアクティブマトリクス型のLCDは各種の電子機器に適用できる。その電子機器としては、ヘッドアップディスプレイ、プロジェクタ装置、自動車経路誘導システム(カーナビゲーションシステム)、船舶経路誘導システム、航空機経路誘導システム、スマートフォン端末、携帯電話、タブレット端末、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、電子手帳、電子書籍、電子辞書、パーソナルコンピュータ、複写機、ゲーム機器の端末装置、テレビジョン、商品表示タグ、価格表示タグ、産業用のプログラマブル表示装置、カーオーディオ、デジタルオーディオプレイヤー、ファクシミリ、プリンター、現金自動預け入れ払い機(ATM)、自動販売機、デジタル表示式腕時計などがある。
【符号の説明】
【0045】
1 ゲート信号線
2 画像信号線
3 半導体導電層
3a チャネル部
4 ドレイン電極
5 ソース電極
6 遮光膜
7 画素部
8 重畳部
図1
図2
図3
図4
図5
図6