(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明に係る作業車の原動部を、作業車の一例であるトラクタに適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1に示すように、本実施形態で例示するトラクタは、車体フレーム1の前半部に原動部2を備え、車体フレーム1の後半部に搭乗運転部3を備えている。そして、原動部2の左右に駆動可能な操舵輪としての前輪4を配備し、搭乗運転部3の左右に制動可能な駆動輪としての後輪5を配備して、4輪駆動型に構成している。
【0019】
図1及び
図2に示すように、車体フレーム1は、その前部側を形成する前フレーム6、前フレーム6の後部に連結した水冷式のエンジン7、エンジン7の後下部に連結したクラッチハウジング8、クラッチハウジング8の後部に連結した中間フレーム9、及び、中間フレーム9の後端部に連結したトランスミッションケース10、などから構成している。又、クラッチハウジング8の後端箇所に、前後方向視の形状が下向きU字状の支持フレーム11を立設している。
【0020】
図1〜5に示すように、原動部2は、エンジン7などの配置空間を形成するボンネット12を備えている。又、支持フレーム11から車体前側に設定間隔をあけた位置に、その配置空間を車体前側のエンジンルームと車体後側のタンクルームとに区画する遮熱壁13を立設している。そして、車体前側のエンジンルームに、エンジン7、エンジン7に供給する空気を濾過するエアクリーナ14、排気処理装置の一例であるマフラ15、冷却ファン16を備えたラジエータ17、オイルクーラ18、及び、バッテリ19、などを配備している。又、車体後側のタンクルームに燃料タンク20を配備している。そして、エンジンルームに備えた冷却ファン16、ラジエータ17、及び、オイルクーラ18、などによって冷却部を構成している。
【0021】
尚、排気処理装置は、酸化触媒及びDPF(ディーゼルパティキュレートフィルタ)などを内蔵した排気浄化装置、などであってもよい。
【0022】
図1〜3に示すように、ボンネット12は、開閉揺動可能な第1カバー部12Aと、着脱可能な左右の第2カバー部12Bとを備えている。第1カバー部12Aは、支持フレーム11の上部に左右向きに備えた左右の支軸21を支点にして、エンジン7及びラジエータ17などを上方から覆う閉じ状態と、エンジン7及びラジエータ17などを開放する開き状態とに上下方向に開閉揺動可能に構成している。そして、その前端に外気導入部としてのフロントグリル12Cを備えている。左右の第2カバー部12Bは、それらの前部側に排気部12Dを備えている。
【0023】
図1〜4に示すように、エンジン7は、エンジンルームにおけるフロントグリル12Cから離れた車体後側の領域に、その出力軸(図示せず)が前後向きになる姿勢で配備している。遮熱壁13は、燃料タンク20の前面に沿って屈曲形成した板金製で、支持フレーム11から前向きに延出した複数の支持部材22を介して支持フレーム11に連結している。エアクリーナ14及びマフラ15は、エンジンルームにおける上方の空間に左右方向に並べて配備している。具体的には、エンジンルームにおけるエンジン7の上方の空間に左右方向に並べて配備している。
【0024】
図2〜7に示すように、エアクリーナ14は、エンジンルームの左右中央側に位置するようにエンジン7の上部に立設したエアクリーナ用の支持部材23を介して、エンジンルームにおけるエンジン上方空間の右側領域に配備している。そして、そのクリーナ本体14Aからボンネット12のフロントグリル12Cに向けて延出する外気取り入れ用の吸気管14Bと、クリーナ本体14Aからエンジン7の吸気部7Aにわたる中継用の吸気管14Cとを備えている。
【0025】
外気取り入れ用の吸気管14Bは、ボンネット12とラジエータ17との間に形成した空間24を通っている。そして、その延出端の吸気口14aをラジエータ17よりも外気導入部側に位置させる長さを有してエアクリーナ14から延出している。これにより、ラジエータ17よりも冷却風の流動方向上手側の空気を取り入れるように構成している。
【0026】
中継用の吸気管14Cは、エンジン7の吸気部7Aとの接続箇所を支点にした上下方向への揺動変位が可能な状態でエンジン7の吸気部7Aに接続している。これにより、エアクリーナ14を、エアクリーナ用の支持部材23により支持する支持位置と、エアクリーナ用の支持部材23による支持を解除する解除位置とにわたって、外気取り入れ用の吸気管14B及び中継用の吸気管14Cとともに上下方向に揺動変位させることができる。そして、エアクリーナ14が支持位置に位置する状態では、外気取り入れ用の吸気管14Bがボンネット12とラジエータ17との間の空間24に入り込む状態になるように構成している。又、エアクリーナ14が解除位置に位置する状態では、外気取り入れ用の吸気管14Bがボンネット12とラジエータ17との間の空間24から上方に離脱する状態になるように構成している。
【0027】
図3及び
図4に示すように、マフラ15は、エンジン7の排気部7Bからマフラ15にわたる中継用の排気管15Aと、マフラ15から前フレーム6の左外方箇所に向けて延出する排気用の排気管15Bとを備えている。そして、支持部材を兼ねる中継用の排気管15Aを介して、エンジンルームにおけるエンジン上方空間の左側領域に配備している。
【0028】
図2、
図3及び
図7に示すように、冷却ファン16は、エンジンルームにおけるエンジン7よりも冷却風の流動方向上手側となる車体前側の位置に配備している。そして、エンジン7からの動力で正面視右回りに回転することにより、ボンネット12のフロントグリル12Cからエンジン7に向けて安定して流れる冷却風を発生させる。又、冷却後の冷却風を、ボンネット12の排気部12D、及び、原動部2の後側下部において車体フレーム1とボンネット12との間に形成される左右の隙間などから機外に流出させる。
【0029】
図2〜7に示すように、ラジエータ17は、エンジン7に対する冷却風の流動方向上手側となる車体前側の位置に立設している。具体的には、エンジンルームにおけるエンジン7及び冷却ファン16よりも前方の位置に起立姿勢で配備している。そして、フロントグリル12Cからの冷却風によりエンジン冷却水を冷却している。又、その冷却効率の向上を図るために、ラジエータ17から冷却ファン16にわたるファンシュラウド25を備えている。
【0030】
ファンシュラウド25は、ラジエータ側からボンネット12に向けて延出する延出部25Aを備えている。そして、延出部25Aにおける上部の右側箇所に、前述した外気取り入れ用の吸気管14Bが通る空間24をボンネット12との間に形成する凹入部分25aを備えている。又、その延出部25Aにおける凹入部分25aを除いた延出端に、閉じ状態のボンネット12の内面に密接するトリム26を装着している。
【0031】
図2〜5に示すように、オイルクーラ18は、上下向きの流路を形成する複数の縦向き管部18Aと、隣接する2つの縦向き管部18Aの上端同士にわたる流路を形成する複数の上側管部18Bと、隣接する2つの縦向き管部18Aの下端同士にわたる流路を形成する複数の下側管部18Cとを備えて、上下方向に蛇行して連続する熱交換用の1本の流路を形成している。又、ラジエータ17における上半部の上下長さに相当する上下幅と、ラジエータ17における左右方向の全幅にわたる横幅とを有するように形成している。そして、ラジエータ17に対する冷却風の流動方向上手側に配備している。具体的には、エンジンルームにおけるラジエータ17よりも車体前側の位置にて、ラジエータ17の上半部に対向配備している。そして、ボンネット12のフロントグリル12Cからラジエータ17の上半部に向けて流動する冷却風により、このトラクタに主変速装置として備えた静油圧式無段変速装置(図示せず)に使用するオイルを冷却するように構成している。
【0032】
バッテリ19は、オイルクーラ18とともにラジエータ17に対する冷却風の流動方向上手側に配備している。具体的には、エンジンルームにおけるラジエータ17よりも車体前側の位置にて、ラジエータ17の下半部に対向配備している。
【0033】
図2〜4に示すように、燃料タンク20は、クラッチハウジング8及び下向きU字状の支持フレーム11などが形成する空間に入り込んでいる。そして、その左右に備えた連結部(図示せず)を支持フレーム11に連結している。
【0034】
図2〜4、
図7及び
図8に示すように、エアクリーナ14を支持する支持部材23は、エンジン7の上端部にボルト連結する連結部23Aと、エアクリーナ14とマフラ15との間において連結部23Aから上方に延出する起立部23Bと、起立部23Bからエアクリーナ14に向けて延出するU字状の保持部23Cとを備えている。そして、その保持部23Cにより、エアクリーナ14を、保持部23Cに対する上方への離脱操作が可能な状態で挟持保持している。又、エンジンルームを通る冷却風のうちの支持部材23に向かう冷却風をマフラ15に案内する風向板27を備えている。風向板27は、エアクリーナ14の前部とマフラ15の前部との間に位置するように、連結部23Aにおける起立部23Bよりも冷却風の流動方向上手側となる車体前側の位置に立設している。そして、その平面視での姿勢を、その左側ほど後方に位置する左後傾斜姿勢に設定している。
【0035】
これにより、積極的に冷却する必要のない支持部材23に向かう冷却風を、昇温抑制のために積極的に冷却する必要のあるマフラ15に供給することができる。その結果、マフラ15の冷却をより効果的に行うことができる。
【0036】
又、風向板27の作用により、エンジンルームの上部における冷却ファン16から車体後側の領域においては、冷却ファン16からの冷却風を平面視左回りに流動させることができる。これにより、エンジンルームにおけるエンジン7の上方空間などに滞留し易い熱気を流動させてボンネット12の排気部12Dなどから機外に流出させることができる。その結果、エンジン7及びマフラ15などの冷却をより効果的に行うことができる。
【0037】
エアクリーナ用の支持部材23及びラジエータ17は、それらにわたる帯状鋼板製の第1連結部材28を介して連結している。第1連結部材28は、その幅方向が上下向きになる姿勢で、支持部材23の上部側とラジエータ17におけるアッパータンク17Aの右端部とにわたって、エアクリーナ側の空間を斜めに横切る状態で架設している。
【0038】
つまり、冷却ファン16からマフラ15への冷却風の流れを第1連結部材28にて遮ることなく、エアクリーナ用の支持部材23及びラジエータ17の支持強度を第1連結部材28にて高めることができる。
【0039】
尚、第1連結部材28は、その前端部をファンシュラウド25の右上端部とともにラジエータ17におけるアッパータンク17Aの右端部にボルト連結している。
【0040】
エアクリーナ用の支持部材23及び遮熱壁13は、それらにわたる帯状鋼板製の第2連結部材29を介して連結している。第2連結部材29は、その幅方向が上下向きになる姿勢で、支持部材23の上部側と遮熱壁13における上部側の左右中央側箇所とにわたって、エアクリーナ14とマフラ15との間を通る状態で架設している。
【0041】
つまり、冷却ファン16からマフラ15への冷却風の流れを第2連結部材29にて遮ることなく、エアクリーナ用の支持部材23及び遮熱壁13の支持強度を第2連結部材29にて高めることができる。
【0042】
図2〜4及び
図7に示すように、エアクリーナ14は、前述した支持位置では、前後向きの水平姿勢になって遮熱壁13と冷却ファン16との間に入り込む。そして、そのクリーナ本体14Aの前端部に着脱可能に備えたカバー体14Dが冷却ファン16及びファンシュラウド25に対向する。又、前述した解除位置では、前上がりの傾斜姿勢になって、カバー体14Dが遮熱壁13と冷却ファン16との間から上方に外れて冷却ファン16及びファンシュラウド25の上方を向くようになる。
【0043】
つまり、エアクリーナ14は、支持位置から解除位置に揺動変位させることにより、クリーナ本体14Aに対してカバー体14Dを着脱させることができる。そして、この着脱により、クリーナ本体14Aに着脱可能に内蔵したエレメント14Eの交換を行うことができる。
【0044】
図2〜7に示すように、原動部2は、外気取り入れ用の吸気管14Bが通る空間24における吸気管周辺の隙間を塞ぐ弾性体30を備えている。弾性体30は、その原料としてゴム又はポリウレタンなどを採用して、比較的高い保形性を有する海綿状に構成している。そして、ラジエータ側に固定するラジエータ側弾性部30Aと、ラジエータ側弾性部30Aとともに外気取り入れ用の吸気管14Bを外囲する閉じ状態と外気取り入れ用の吸気管14Bを開放する開き状態とに開閉自在なボンネット側弾性部30Bと、ボンネット側弾性部30Bを閉じ状態に係合保持する係合部30Cとを備えている。
【0045】
ラジエータ側弾性部30Aは、ファンシュラウド25の凹入部分25aよりも小さい凹入部分30aを有するU字状に形成している。そして、ファンシュラウド25の延出部前面における凹入部分25aの周辺部分25bに貼り付けて固定している。
【0046】
ボンネット側弾性部30Bは、ラジエータ側弾性部30Aに開閉揺動自在に一体形成している。そして、ラジエータ側弾性部30Aとボンネット側弾性部30Bとを繋ぐ左端部の外側部位に形成した横向きV字状の切欠部30Dにより、その閉じ状態から開き状態への揺動変形を無理なく円滑に行えるようにしている。又、その弾性により開き状態から閉じ状態に復帰するように構成している。そして、その閉じ状態では、ラジエータ側弾性部30Aと共同して、外気取り入れ用の吸気管14Bに密接状態で外嵌する。又、その左右に位置する左右のトリム26にわたるようになって、左右のトリム26とともに閉じ状態のボンネット12との隙間を塞ぐシール部材として機能する。
【0047】
係合部30Cは、ラジエータ側弾性部30Aの右端部に形成した凸部分30bと、ボンネット側弾性部30Bの遊端部に形成した凹部分30cとから構成している。凸部分30bは、前後方向視の形状がΩ形状でラジエータ側弾性部30Aの右端部から上向きに膨出している。凹部分30cは、前後方向視の形状がΩ形状でボンネット側弾性部30Bにおける遊端部の下面から上向きに凹入している。
【0048】
上記の構成から、ボンネット12の第1カバー部12Aを開き状態にした後、係合部30Cによるボンネット側弾性部30Bの閉じ状態での係合保持を解除してボンネット側弾性部30Bを開き状態にすることにより、エアクリーナ14における外気取り入れ用の吸気管14Bをラジエータ側弾性部30Aの凹入部分30aから上方に離脱させることができる。これにより、前述したエアクリーナ14の支持位置から解除位置への揺動変位が可能になり、その解除位置でのエアクリーナ14に対するエレメント14Eの交換などのメンテナンスを行うことができる。
【0049】
その後、外気取り入れ用の吸気管14Bをラジエータ側弾性部30Aの凹入部分30aに載置した後、ボンネット側弾性部30Bを閉じ状態にし、この閉じ状態を係合部30Cにて係合保持することにより、ボンネット12を開き状態に維持したままで弾性体30を外気取り入れ用の吸気管14Bに外嵌することができる。又、外気取り入れ用の吸気管14Bを、エンジンルームの所定位置に固定保持することができる。
【0050】
これにより、外気取り入れ用の吸気管14Bとこの吸気管14Bに外嵌する弾性体30との間における隙間の有無を視認することができ、隙間を有する場合には、その隙間を埋めるなどの適正な処置を確実に行うことができる。その結果、ラジエータ17を通過した冷却後の昇温冷却風が、外気取り入れ用の吸気管14Bと弾性体30との隙間を通って、ラジエータ通過前の冷却風に混入することを確実に防止することができ、その混入に起因した冷却効率の低下を確実に回避することができる。
【0051】
又、ボンネット12の第1カバー部12Aを閉じ状態にする際に、外気取り入れ用の吸気管14Bが所定位置から不測に位置ずれする虞を回避することができ、その位置ずれに起因した外気取り入れ用の吸気管14Bと弾性体30との間における隙間の発生を防止することができる。
【0052】
そして、ボンネット12の第1カバー部12Aを閉じ状態にすると、ボンネット側弾性部30Bが、その左右のトリム26とともにボンネット12の内面に密接することにより、ボンネット12の内面との間における隙間の発生を防止することができる。又、外気取り入れ用の吸気管14Bに適正に外嵌する弾性体30により、閉じ状態の第1カバー部12Aとラジエータ17に備えたファンシュラウド25の凹入部分25aとの間に形成される吸気管挿通用の空間24における吸気管周辺の隙間を確実に塞ぐことができる。
【0053】
その結果、ラジエータ通過後の昇温冷却風が、閉じ状態の第1カバー部12Aとファンシュラウド25の凹入部分25aとの間に形成される吸気管挿通用の空間24における吸気管周辺の隙間などを通って、ラジエータ通過前の冷却風に混入する虞を確実に回避することができ、その混入に起因した冷却効率の低下を確実に防止することができる。
【0054】
そして、ファンシュラウド25における凹入部分25aの周辺部分25bに弾性体30のラジエータ側弾性部30Aを固定することにより、ボンネット12とファンシュラウド25の凹入部分25aとで形成する吸気管挿通用の空間24を通る外気取り入れ用の吸気管14Bと弾性体30との位置合わせが行い易くなる。その結果、弾性体30による外気取り入れ用の吸気管14Bの所定位置での固定保持、及び、弾性体30による吸気管挿通用の空間24における吸気管周辺の隙間の閉塞を、より簡単かつ良好に行うことができる。
【0055】
図2〜5に示すように、オイルクーラ18は、複数の縦向き管部18Aを、上側管部18Bにより連接する縦向き管部18Aの並び方向と下側管部18Cにより連接する縦向き管部18Aの並び方向とが異なるように配列した状態で備えている。そして、各上側管部18Bと各下側管部18Cとを、平面視でラジエータ17に対する異なる傾斜姿勢で備えている。
【0056】
具体的には、複数の縦向き管部18Aを前後2列で平面視千鳥状に配列した状態で備えている。そして、各上側管部18Bを、前列の縦向き管部18Aとその左後方に位置する後列の縦向き管部18Aとにわたる平面視で左後方向きの傾斜姿勢で備えている。又、各下側管部18Cを、前列の縦向き管部18Aとその右後方に位置する後列の縦向き管部18Aとにわたる平面視で右後方向きの傾斜姿勢で備えている。そして、これらにより、オイルクーラ18を、上下方向と車体前後とに蛇行して連続する1本の長い流路を有する形状に曲げ形成している。
【0057】
これにより、オイルクーラ18を、その上下長さを短くして、エンジンルームにおけるラジエータ17に対する冷却風の流動方向上手側においてラジエータ17の上半部に対向配備する構成としながら、オイルクーラ18の全体をフロントグリル12Cに臨ませた状態でオイルクーラ18における流路の全長を長くすることができる。
【0058】
つまり、オイルクーラ18をラジエータ17の上半部と対向する箇所にコンパクトに配備しながら、フロントグリル12Cからの冷却風をオイルクーラ18の全体に余すところなく良好に当てることができる。
【0059】
又、例えば、オイルクーラ18の全体をフロントグリル12Cに臨ませた状態でオイルクーラ18における流路の全長を長くするために、複数の縦向き管部18Aをそれらの左右間隔を狭くして1列に配列する場合に比較して、隣接する縦向き管部18Aの間に形成される冷却風路を大きくすることができ、その冷却風路を通る冷却風の風量を多くすることができる。
【0060】
その結果、フロントグリル12Cからの冷却風によるオイルクーラ18でのオイルの冷却効率を向上させることができる。
【0061】
バッテリ19は、オイルクーラ18をラジエータ17の上半部に対向配備することによって得られるオイルクーラ18の下方の空間を利用して、平面視でオイルクーラ18と重なるようにオイルクーラ18の下方に入り込ませた状態でラジエータ17の下半部に対向配備している。
【0062】
これにより、例えば、エンジンルームにおけるラジエータ17に対する冷却風の流動方向上手側である車体前側にオイルクーラ18を対向配備し、このオイルクーラ18に対する冷却風の流動方向上手側である車体前側にバッテリ19を対向配備する場合に比較して、原動部2の前後長さを短くすることができ、トラクタの全長を短くすることができる。又、フロントグリル12Cからオイルクーラ18に向かう冷却風がバッテリ19によって遮られることを回避することができ、バッテリ19の配置に起因したオイルクーラ18の冷却効率の低下を防止することができる。
【0063】
図2〜5、
図9及び
図10に示すように、前フレーム6は、その前半上部にラジエータ17及びバッテリ19を支持する板金製の支持台31を備えている。支持台31は、その台上に、ボンネット12の閉じ状態での係止保持を可能する保持機構32、バッテリ19の前下部を受け止めてバッテリ19の車体前方への位置ずれを防止する前側受止部材33、バッテリ19の後下部を受け止めてバッテリ19の車体後方への位置ずれを防止する後側受止部材34、及び、バッテリ19の固定保持を可能にする固定具35を備えている。
【0064】
固定具35は、前側受止部材33に連接した保持機構32の被係合部32Aに対して下端部が着脱可能に係合する前側縦向きロッド36、後側受止部材34に対して下端部が着脱可能に係合する後側縦向きロッド37、前側縦向きロッド36と後側縦向きロッド37とに着脱可能にわたる押え部材38、対応する縦向きロッド36,37に外嵌する前後の座金39、及び、対応する縦向きロッド36,37の上部に螺合する前後の蝶ナット40、を備えている。そして、これらにより、バッテリ19を冷却風の流動方向である車体の前後方向に跨いだ状態で車体に固定するように構成している。
【0065】
前側受止部材33は、保持機構32との間への前側縦向きロッド36の起立姿勢での係入を許容し、かつ、保持機構32と共同して前側縦向きロッド36の前後方向への倒伏を阻止する状態で、保持機構32の車体後側に設定距離をあけて隣接配備している。
【0066】
後側受止部材34は、ラジエータ17との間への後側縦向きロッド37の起立姿勢での係入を許容し、かつ、ラジエータ17と共同して後側縦向きロッド37の前後方向への倒伏を阻止する状態で、ラジエータ17の車体前側に設定距離をあけて隣接配備している。
【0067】
前側縦向きロッド36は、その上端部に蝶ナット用の螺合部36Aを備えている。又、その下端部に右向きに延出する係合部36Bを備えている。そして、その係合部36Bを、保持機構32と前側受止部材33との間に係入して、保持機構32の被係合部32Aに横方向から係合することにより、保持機構32と前側受止部材33との間に着脱可能な状態で起立保持することができる。
【0068】
後側縦向きロッド37は、その上端部に蝶ナット用の螺合部37Aを備えている。又、その下端部に右向きに延出する係合部37Bを備えている。そして、その係合部37Bを、ラジエータ17と後側受止部材34との間に係入して、後側受止部材34に備えた被係合部34Aに横方向から係合することにより、ラジエータ17と後側受止部材34との間に着脱可能な状態で起立保持することができる。
【0069】
押え部材38は、前後向きのロッド41と左右向きの押圧具42とを備えている。ロッド41は、その両端部を対応する縦向きロッド36,37に係合可能なフック状の係合部41Aに曲げ形成している。又、その中間部側を前下がり傾斜させることで前部側が後部側よりも低くなる形状に屈曲形成している。押圧具42は、バッテリ19の前上部に面接触するL字状に形成している。そして、その押圧具42をロッド41における前側の係合部41Aに溶接することにより、押え部材38の前端部に、前側縦向きロッド36の挿通を許容する挿通孔(図示せず)を形成している。
【0070】
この構成から、バッテリ19を支持台31の台上に固定する場合は、例えば、先ず、後側縦向きロッド37の係合部37Bを、ラジエータ17と後側受止部材34との間に係入し、後側受止部材34の被係合部34Aに係合して、後側縦向きロッド37をラジエータ17と後側受止部材34との間に起立保持する。次に、バッテリ19を、支持台31における前側受止部材33と後側受止部材34との間の位置に載置する。そして、その載置後に、前側縦向きロッド36の係合部36Bを、保持機構32と前側受止部材33との間に係入し、保持機構32の被係合部32Aに係合して、前側縦向きロッド36を保持機構32と前側受止部材33との間に起立保持する。その後、押え部材38を、前側縦向きロッド36と後側縦向きロッド37とにわたって、押え部材38の押圧具42をバッテリ19の前上部に面接触させた状態で架設する。この架設後は、先ず、押え部材38の後端部と蝶ナット40との間に座金39を介装した状態で、蝶ナット40を後側縦向きロッド37の螺合部37Aに螺合して、押え部材38の後端部をバッテリ19の上面から適正距離をあけた高さ位置に保持する。次に、押え部材38の前端部と蝶ナット40との間に座金39を介装した状態で、蝶ナット40を前側縦向きロッド36の螺合部36Aに螺合して、押え部材38の押圧具42によりバッテリ19の前上部を押圧する。これにより、バッテリ19を支持台31の台上に固定することができる。
【0071】
一方、バッテリ19を支持台31の台上から取り外す場合は、例えば、前側縦向きロッド36の螺合部36Aに螺合した蝶ナット40を緩めて、バッテリ19の前上部に対する押え部材38の押圧具42による押圧を解除する。これにより、支持台31の台上での固定具35によるバッテリ19の固定を解除することができる。又、前側縦向きロッド36及び押え部材38の取り外しを可能にすることができる。そして、前側縦向きロッド36及び押え部材38を取り外すことにより、バッテリ19を支持台31の台上から取り外すことが可能になる。
【0072】
その後、バッテリ19を支持台31の台上に固定する場合は、バッテリ19を、支持台31における前側受止部材33と後側受止部材34との間の位置に載置した後、先ず、前側縦向きロッド36と押え部材38とを、押え部材38の押圧具42をバッテリ19の前上部に面接触させた状態で、後側縦向きロッド37の上端部と保持機構32の被係合部32Aとにわたるように取り付ける。その後、前側縦向きロッド36の螺合部36Aに螺合した蝶ナット40を締めて、押え部材38の押圧具42によりバッテリ19の前上部を支持台31に向けて押圧する。これにより、バッテリ19を支持台31の台上に固定することができる。
【0073】
図3〜5に示すように、固定具35は、冷却風の流動方向視である車体の前後方向視ではオイルクーラ18の各縦向き管部18Aと重ならない位置で、かつ、平面視ではオイルクーラ18の各下側管部18Cと重ならない位置に配備している。
【0074】
これにより、オイルクーラ18の各下側管部18Cとバッテリ19との間に固定具35の装備を可能にするための空間を確保しなくても、後側縦向きロッド37の螺合部37Aに対する蝶ナット40の螺合操作などを、オイルクーラ18の縦向き管部18A及び下側管部18Cによって阻害されることなく良好に行うことができる。そして、このように、オイルクーラ18とバッテリ19との間において固定具装備用の空間を確保する必要がないことにより、その空間を確保するために、ボンネット12の高さが高くなって、搭乗運転部3から車体前下方への視界が狭くなる、又は、オイルクーラ18における縦向き管部18Aの長さが短くなるとともにオイルクーラ18における流路の全長が短くなって、フロントグリル12Cからの冷却風によるオイルクーラ18でのオイルの冷却効率が低下する、といった不都合の発生を回避することができる。
【0075】
図3〜5及び
図9に示すように、固定具35は、バッテリ19の上部に備えた左右の端子19Aから左右方向に離れる位置で、かつ、ガス抜きキャップ19Bと平面視で重ならない位置に配備している。具体的には、バッテリ19の左右中央に位置するように配備している。これにより、外部電力でバッテリ19を充電する場合に、左右の端子19Aに接続するターミナル(図示せず)が固定具35に接触する不都合の発生を防止することができる。又、ガス抜きキャップ19Bの着脱操作を、固定具35の押え部材38などによって阻害されることなく容易に行うことができる。
【0076】
尚、図示は省略するが、バッテリ19が、その上部に左右の端子19Aと複数の液口栓を備える場合は、固定具35を、左右の端子19Aから左右方向に離れる位置で、かつ、複数の液口栓と平面視で重ならない位置、例えば、バッテリ19の左右中央などの位置に配備するようにすれば、外部電力でバッテリ19を充電する場合に、左右の端子19Aに接続するターミナルが固定具35に接触する不都合の発生を防止することができ、又、各液口栓の着脱操作を、固定具35の押え部材38などによって阻害されることなく容易に行うことができる。
【0077】
図2、
図5、
図11及び
図12に示すように、前フレーム6は、帯状鋼板からなる左右のサイドメンバ43を備えている。各サイドメンバ43は、それらの下端部に油圧ホース用のホルダ44を備えている。
【0078】
各ホルダ44は、J字状に曲げ形成した丸棒鋼材により左右共通部品に構成している。又、それらの湾曲部44Aからの離間距離が長い側の端部に、サイドメンバ43とのボルト連結を可能にするループ状の連結部44Bを備えている。そして、それらの連結部44Bを対応するサイドメンバ43にボルト連結する際には、連結部44Bとは反対側の端面44Cが対応するサイドメンバ43の下縁43Aに面接触することにより、ボルト連結時の螺合操作に伴う各ホルダ44の連れ回りを阻止することができる。又、それらの連結部44Bを対応するサイドメンバ43にボルト連結した状態では、それらの端面44Cが対応するサイドメンバ43の下縁43Aに面接触することにより、それらの湾曲部側とサイドメンバ43の下縁43Aとから閉ループ状のホース保持部45を形成している。そして、これらのホース保持部45により、パワーステアリングユニット(図示せず)などからの油圧ホース46を適正に保持することができる。
【0079】
つまり、左右のホルダ44を安価な丸棒鋼材にて部品管理の容易な左右共通部品に構成しながら、各ホルダ44の組み付け性の向上とともに、各ホルダ44による油圧ホース46の保持性を高めることができる。
【0080】
図2、
図4及び
図8に示すように、ボンネット12は、その前端下部に、支持台31に備えた保持機構32に係合可能な前後向きの係合部12Eを備えている。又、その後部側に連結する支軸部47Aを支点にして上下揺動する支持ロッド47を備えている。支持ロッド47は、その遊端側を、エアクリーナ用の支持部材23における起立部23Bに形成した縦長の挿通孔23Eに挿通している。又、その遊端部を、挿通孔23Eの下縁に係合可能なU字状の係合部47Bに曲げ形成している。そして、第2連結部材29から支持ロッド47にわたる引っ張りバネ(図示せず)により、その係合部47Bを挿通孔23Eの下縁に係合付勢している。支持部材23の起立部23Bは、挿通孔23Eの下方に係合孔23Fを備えている。
【0081】
この構成から、ボンネット12を下降揺動させて閉じ状態に切り替えると、その閉じ状態への切り替えに伴って、ボンネット12の係合部12Eが保持機構32に係合保持されることにより、ボンネット12を閉じ状態にて固定保持することができる。
【0082】
又、保持機構32による係合部12Eの係合保持を解除してボンネット12を上昇揺動させると、その上昇揺動に伴って、支持ロッド47が、引っ張りバネの作用によって挿通孔23Eの下縁に接する状態を維持しながら、挿通孔23Eに対する抜き出し方向に摺動変位する。そして、支持ロッド47の係合部47Bが挿通孔23Eの下縁に達するとともに、支持ロッド47の遊端が係合孔23Fに係入して係合部47Bが挿通孔23Eの下縁に係合する。これにより、ボンネット12を所定の開き状態にて固定保持することができる。
【0083】
そして、このボンネット12の開き状態での固定保持は、引っ張りバネの作用に抗して挿通孔23Eの下縁に対する係合部47Bの係合を解除することによって解除することができ、これにより、ボンネット12の下降揺動による閉じ状態への切り替えを可能にすることができる。
【0084】
図3〜5に示すように、ラジエータ17の前方でバッテリ19の左方箇所には、ラジエータ用のリザーブタンク48を配備している。リザーブタンク48は、バッテリ19と同様に、オイルクーラ18をラジエータ17の上半部に対向配備することによって得られるオイルクーラ18の下方の空間を利用して、平面視でオイルクーラ18と重なるようにオイルクーラ18の下方に入り込ませた状態でラジエータ17の下半部に対向配備している。
【0086】
〔1〕エアクリーナ14を、エンジンルームにおける上方の空間の左側の領域に配備し、排気処理装置15を、エンジンルームにおける上方の空間の右側の領域に配備してもよい。
【0087】
〔2〕エアクリーナ用の支持部材23とラジエータ17とを連結する連結部材28を、丸棒鋼材又はアングル鋼材などから構成してもよい。
【0088】
〔3〕連結部材28は、その前端部を単独でラジエータ17に連結するように構成してもよい。又、その前端部を、ラジエータ17に連結装備したファンシュラウド25のみに連結するように構成してもよい。
【0089】
〔4〕エアクリーナ用の支持部材23と遮熱壁13とを連結する連結部材29を、丸棒鋼材又はアングル鋼材などから構成してもよい。
【0090】
〔5〕風向板27を支持部材23の起立部23Bに装備してもよい。
【0091】
〔6〕
図13に示すように、支持部材23の一部である起立部23Bの左側部分を右斜め前向きに折り曲げて、この折り曲げ部分が風向板27として機能するように構成してもよい。又、図示は省略するが、支持部材23の一部である連結部23Aの左側部分を上向きに折り曲げて、この折り曲げ部分が風向板27として機能するように構成してもよい。
【0092】
〔7〕支持部材23における起立部23Bの前面が風向板27として機能するように構成してもよい。