(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6403496
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】キャップ
(51)【国際特許分類】
B65D 47/08 20060101AFI20181001BHJP
【FI】
B65D47/08 100
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-174661(P2014-174661)
(22)【出願日】2014年8月29日
(65)【公開番号】特開2016-49980(P2016-49980A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2017年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175397
【氏名又は名称】三笠産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南 健太
(72)【発明者】
【氏名】小手川 京子
(72)【発明者】
【氏名】濱 芳典
【審査官】
宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−226051(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/165404(WO,A1)
【文献】
特開2012−030872(JP,A)
【文献】
特開平10−139056(JP,A)
【文献】
特開2012−020756(JP,A)
【文献】
特開2006−176187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 35/44−35/54
B65D 39/00−55/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に取り付けられるキャップ本体と、キャップ本体に形成された注出口と、注出口を開閉する蓋とを有し、
蓋が、ヒンジ部を介して、回動自在にキャップ本体に連結されているキャップであって、
蓋の外周部で且つ径方向においてヒンジ部とは反対側の箇所に、径方向外側へ突出した鍔部が形成され、
蓋を閉じた状態において、鍔部の下面の周方向中央部における径方向外側部に、平坦部が形成され、
蓋の天面に、蓋を押して閉じる際の目印となる窪み部が形成され、
窪み部は、径方向におけるヒンジ部と鍔部との間で、且つ、キャップの軸心と鍔部の平坦部との間に形成されていることを特徴とするキャップ。
【請求項2】
平坦部は蓋の周方向に延びた平坦面であり、
鍔部の下面に、平坦面の周方向における両端部から鍔部の周方向における両端部に向かって下方へ弧状に傾斜した第1の傾斜面が形成されていることを特徴とする請求項1記載のキャップ。
【請求項3】
平坦面の径方向内側部には、径方向内側に向かって下方へ傾斜する第2の傾斜面が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に取り付けられるキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のキャップとしては、例えば
図5,
図6に示すように、容器101に取り付けられるキャップ本体102と、キャップ本体102に形成された注出口と、注出口を開閉する蓋103とを有するものがある。蓋103は、ヒンジ部(図示省略)を介して、回動自在にキャップ本体102に設けられている。
【0003】
蓋103の外周部で且つ径方向Dにおいてヒンジ部とは反対側の箇所には、径方向Dの外側へ突出した鍔部104が形成されている。蓋103を閉じた状態において、鍔部104の下面105は、周方向Cの中央部における径方向Dの全幅において、径方向Dの内側に向かって漸次下方に傾斜して延びると共に、周方向Cの中心Gから両側に向かって下方へ弧状に延びている。
【0004】
これによると、蓋103を開ける際、親指107の腹部108に鍔部104が強く食い込むことはなく、親指107の腹部108が鍔部104の下面105に円滑に馴染むため、親指107に痛みを感じることは防止される。
【0005】
尚、上記のようなキャップは例えば下記特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−20756
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら上記の従来形式では、
図5に示すように、鍔部104の下面105は、径方向Dの全幅において、径方向Dの内側に向かって漸次下方に傾斜して延びているため、親指107で鍔部104を上向きに押し上げて蓋103を開放する際、
図7に示すように、上向きの力Fは、傾斜した下面105に垂直な第1の分力f1と、下面105に平行な第2の分力f2とに分けられる。このうち、第2の分力f2は蓋103の開放にほとんど寄与せず、第2の分力f2によって親指107が不用意に斜め上方へずれて鍔部104から離脱し易くなり、これを防止するために蓋103を開く際に余分な力が必要になるといった問題がある。
【0008】
また、
図6に示すように、鍔部104の下面105は周方向Cの中心Gから両側に向かって下方へ円弧状に傾斜しているため、親指107の位置が周方向Cにおける鍔部104の中心Gから周方向Cへずれた場合、上向きの力Fは、円弧状に傾斜した下面105に垂直な第1の分力f3と、下面105に平行な周方向Cの第2の分力f4とに分けられる。このうち、第2の分力f4は蓋103の開放にほとんど寄与しないため、蓋103を開く際に余分な力が必要になる。
【0009】
本発明は、蓋を開く際に要する力を低減することができるキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本第1発明は、容器に取り付けられるキャップ本体と、キャップ本体に形成された注出口と、注出口を開閉する蓋とを有し、
蓋が、
ヒンジ部を介して、回動自在にキャップ本体に連結されているキャップであって、
蓋の外周部で且つ径方向において
ヒンジ部とは反対側の箇所に、径方向外側へ突出した鍔部が形成され、
蓋を閉じた状態において、鍔部の下面の周方向中央部における径方向外側部に、平坦部が形成され
、
蓋の天面に、蓋を押して閉じる際の目印となる窪み部が形成され、
窪み部は、径方向におけるヒンジ部と鍔部との間で、且つ、キャップの軸心と鍔部の平坦部との間に形成されているものである。
【0011】
これによると、蓋を開く場合、例えば指で鍔部の下面の平坦部を上向きに押し上げる。この際、鍔部の下面の平坦部は傾斜していないので、上向きの力の全て(又は大部分)が平坦部に垂直に作用し、平坦部に平行な分力はほとんど発生しない。これにより、指が不用意に鍔部から離脱するのを防止することができ、蓋を開く際に余分な力を必要とせず、蓋を開くのに要する力を低減することができる。
また、蓋を閉じる際、窪み部を目印にして、指で蓋の最適な箇所を押して蓋を閉じることができる。この際、指先で窪み部を押すことにより、指先が窪み部に入り込むため、指先が蓋の天面を滑って蓋を押す位置がずれてしまうといった不具合を防止することができ、蓋を確実に押して閉じることができる。
【0012】
本第2発明におけるキャップは、平坦部は蓋の周方向に延びた平坦面であり、
鍔部の下面に、平坦面の周方向における両端部から鍔部の周方向における両端部に向かって下方へ弧状に傾斜した第1の傾斜面が形成されているものである。
【0013】
これによると、平坦部は蓋の周方向に延びた平坦面であるため、蓋を開く場合、例えば指の位置が蓋の周方向において若干ずれても、平坦面の形成範囲内を上向きに押し上げれば、上向きの力の全て(又は大部分)が平坦面に垂直に作用し、平坦面に平行な分力はほとんど発生しない。これにより、指の位置が蓋の周方向において若干ずれても、蓋を開く際に余分な力を必要とせず、蓋を開く際に要する力を低減することができる。
【0014】
本第3発明におけるキャップは、平坦面の径方向内側部には、径方向内側に向かって下方へ傾斜する第2の傾斜面が形成されているものである。
これによると、第2の傾斜面を形成することにより、鍔部の平坦面の径方向内側部と蓋の外周面とのコーナー部分に応力が集中するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように本発明によると、指が不用意に鍔部から離脱するのを防止することができ、蓋を開く際に余分な力を必要とせず、蓋を開くのに要する力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態におけるキャップの一部切欠き側面図である。
【
図4】同、キャップの蓋の鍔部の拡大断面図である。
【
図7】同、キャップの蓋の鍔部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明における実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1〜
図4に示すように、1は容器2に取付けられたキャップである。キャップ1は、容器2の口部3に取付けられるキャップ本体4と、ヒンジ部5(連結部の一例)を介してキャップ本体4に回動自在に連結された蓋6とを有している。
【0020】
キャップ本体4は、円筒状の注出筒部8と、注出筒部8の付け根の外側周囲を取り囲む円形の環状部9とを有している。注出筒部8の先端部には注出口10が形成されている。環状部9の外周には、係合凹部11(一方の係合部の一例)が全周にわたり形成されている。
【0021】
蓋6は、注出口10を開閉するものであり、円形の蓋板部14と、蓋板部14の周縁に設けられた周壁部15と、周壁部15の内側に設けられた円筒状のシール筒部16とを有している。また、キャップ1の軸心方向Aを上下方向とすると、周壁部15の内周面下部には係合凸部17(他方の係合部の一例)が全周にわたり形成されている。尚、
図1の実線で示すように、蓋6を閉じた状態では、シール筒部16が注出筒部8内に入り込み、シール筒部16の外周面が注出筒部8の内周面に圧接し、係合凸部17が係合凹部11に係合する。
【0022】
蓋6の周壁部15の上部外周面で且つ径方向Dにおいてヒンジ部5とは反対側の箇所に、径方向外側へ突出した鍔部20が形成されている。鍔部20は、
図3に示すように、平面視において円弧状に形成されている。
図1の実線で示すように、蓋6を閉じた状態において、鍔部20は、キャップ1の軸心28に直交する水平面に対して、所定の傾斜角度Bで傾斜している。尚、所定の傾斜角度Bは例えば20°に設定されている。また、
図3に示すように、キャップ1の軸心28を中心とし、且つ、周方向Cにおける鍔部20の一端から他端までの角度Eは90°〜180°の範囲に設定されている。
【0023】
また、蓋6を閉じた状態において、鍔部20の下面の周方向Cの中央部における径方向Dの外側部には、平坦面22(平坦部の一例)が形成されている。平坦面22は、蓋6の周方向Cに延びており、蓋6を閉じた状態において、径方向Dと周方向Cとに拡がる水平面である。
【0024】
鍔部20の下面には、平坦面22の周方向Cにおける両端部22a,22bから鍔部20の周方向Cにおける両端部20a,20bに向かって下方へ弧状に傾斜した第1の傾斜面24が形成されている。
【0025】
また、平坦面22の径方向Dの内側部には、径方向Dの内側に向かって下方へ傾斜した円弧状の第2の傾斜面25が形成されている。
また、蓋6の天面には、蓋6を指で押して閉じる際の目印となる窪み部27が形成されている。窪み部27は、蓋6の天面から内側へ円弧状に窪んでおり、径方向Dにおけるヒンジ部5と鍔部20との間で、且つ、キャップ1の軸心28に対して鍔部20寄りの位置に形成されている。
【0026】
以下、上記構成における作用を説明する。
図1の実線で示すように、蓋6が閉じた状態では、シール筒部16の外周面が注出筒部8の内周面に圧接し、係合凸部17が係合凹部11に係合している。これにより、注出口10が蓋6で閉じられ、蓋6が不用意に開くことは防止される。
【0027】
また、蓋6を開く場合、
図4に示すように、例えば親指31で鍔部20の平坦面22を上向きに押し上げる。この際、平坦面22は、傾斜しておらず、水平であるため、上向きの力Fの全て(又は大部分)が平坦面22に垂直に作用し、平坦面22に平行な分力(水平分力)はほとんど発生しない。これにより、親指31が不用意に鍔部20から離脱するのを防止することができ、蓋6を開く際に余分な力を必要とせず、蓋6を開くのに要する力を低減することができる。
【0028】
また、
図2,
図3に示すように、平坦面22は周方向Cにも延びているため、親指31の位置が周方向Cにおいて若干ずれても、平坦面22の形成範囲W内を上向きに押し上げれば、上向きの力Fの全て(又は大部分)が平坦面22に垂直に作用し、平坦面22に平行な周方向Cの分力はほとんど発生しない。これにより、親指31の位置が周方向Cにおいて若干ずれても、蓋6を開く際に余分な力を必要とせず、蓋6を開く際に要する力を低減することができる。
【0029】
また、円弧状の第2の傾斜面25を形成することにより、鍔部20の平坦面22の径方向Dの内側部と蓋6の外周面とのコーナー部分に応力が集中するのを防止することができる。
【0030】
また、蓋6を閉じる際、窪み部27を目印にして、人差し指等の指先で蓋6の最適な箇所(すらわち窪み部27の形成箇所)を押して蓋6を閉じることができる。この際、指先で窪み部27を押すことにより、指先が窪み部27に入り込むため、指先が蓋6の天面を滑って蓋6を押す位置がずれてしまうといった不具合を防止することができ、蓋6を確実に押して閉じることができる。
【符号の説明】
【0031】
1 キャップ
2 容器
4 キャップ本体
5 ヒンジ部(連結部)
6 蓋
10 注出口
20 鍔部
22 平坦面(平坦部)
24 第1の傾斜面
25 第2の傾斜面
27 窪み部
C 周方向
D 径方向