(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
トンネル坑内面の内側に繋ぎ合わされて設けられる略面状の防水シートが、前記トンネル坑内面若しくは前記トンネル坑内面の内側に設けられる一次覆工材の内面から離間して設けられていると共に、前記トンネル坑内面若しくは前記トンネル坑内面の内側に設けられる一次覆工材の内面と前記防水シートとの間に充填材が充填され、前記充填材で前記防水シートの各々が固定されており、
各々が前記防水シートからなる第1の防水シート、第2の防水シート及び第3の防水シートがトンネル掘進方向に順次繋ぎ合わされて設けられ、
前記第2の防水シートにトンネル軸方向に引張応力が生じている状態で、前記第2の防水シートのトンネル掘進方向の後端部及び前端部が後側の前記第1の防水シートの前端部と前側の前記第3の防水シートの後端部にそれぞれ重ね合わされて固着されている
ことを特徴とするトンネル止水構造。
前記防水シートと緩衝材が固着され、前記防水シートのトンネル掘進方向の後端部及び前端部が前記緩衝材と固着されていない未固着部である積層シートが、前記緩衝材を前記トンネル坑内面側にして前記防水シートを繋ぎ合わされて設けられ、
前記充填材が前記緩衝材に入り込むようにして前記防水シートが前記充填材で固定されていると共に、
各々が前記積層シートからなる、前記第1の防水シートから構成される第1の積層シート、前記第2の防水シートから構成される第2の積層シート、及び前記第3の防水シートから構成される第3の積層シートがトンネル掘進方向に順次設けられ、
前記第2の積層シートを構成する前記第2の防水シートの後端部及び前端部が、前記第1の積層シートを構成する前記第1の防水シートの前端部と前記第3の積層シートを構成する前記第3の防水シートの後端部にそれぞれ重ね合わされて固着されている
ことを特徴とする請求項1記載のトンネル止水構造。
前記第2の防水シートの後端部と前記第1の防水シートの前端部、及び前記第2の防水シートの前端部と前記第3の防水シートの後端部が、それぞれ内外に積層して溶着することで重ね合わせ固着されている
ことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のトンネル止水構造。
前記第2の防水シートの後端部と前記第1の防水シートの前端部、及び前記第2の防水シートの前端部と前記第3の防水シートの後端部が、それぞれ拝み合わせ溶着することで重ね合わせ固着されている
ことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のトンネル止水構造。
前記第1の防水シート、前記第2の防水シートに緩衝材が固着されてそれぞれ構成され、前記第1の防水シート、前記第2の防水シートのそれぞれのトンネル掘進方向の後端部及び前端部を、前記緩衝材と固着されていない未固着部にして形成されている第1の積層シート、第2の積層シートを用い、
前記第1工程において、前記充填材が前記緩衝材に入り込むようにして前記第1の積層シートを構成する前記第1の防水シートが前記充填材で固定されている状態で、前記緩衝材を前記トンネル坑内面側にして前記第2の積層シートを近づけるように移動し、前記第2の積層シートを構成する前記第2の防水シートの未固着部の後端部と前記第1の防水シートの未固着部の前端部とを重ね合わせて固着し、
前記第3工程において、前記トンネル坑内面若しくは前記一次覆工材の内面と前記第2の積層シートとの間に充填材を充填して固化する
ことを特徴とする請求項6記載のトンネル止水構造の施工方法。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル内への地山からの漏水を止水するために防水シートを敷設する止水構造において、トンネル坑内面やトンネル坑内面に設けられる一次覆工の吹付けコンクリートの内面に対して、架台の上に載せた状態で防水シートを離間して配置し、トンネル坑内面や吹付けコンクリート内面と防水シートとの間の空隙に裏込め充填材等を充填し、防水シートの背面の空隙を無くすと共に、トンネル坑内面や吹付けコンクリート内面の凹凸形状に関係なく、防水シートの表面を凹凸のない平滑な状態で展張する工法が知られている(特許文献1、2参照)。
【0003】
この工法を用いる際には、トンネル軸方向で隣接する防水シートを現場で溶着する必要があるが、この溶着は
図8或いは
図9の方法で行われるのが通常である。
図8の方法の場合、シート架台104の上に第1の防水シート101pを前端部101bが折り返された状態で載置して、その状態で支保工102が埋設された吹付けコンクリート103に近づけて所定位置で定置し、エアバルク105を膨らませて充填材106の充填空間を閉塞して第1の防水シート101pの背面側に注入管107で充填材106を充填する(
図8(a)、(b)参照)。その後、第2の防水シート101qをシート架台104の上に後端部101aが折り返された状態で載置して、その状態で第1の防水シート101pと隣接する所定位置で定置し、同様に第2の防水シート101qの背面側に充填材106を充填する(
図8(c)、(d)参照)。
【0004】
そして、折り返されていた第1の防水シート101pの前端部101bと第2の防水シート101qの後端部101aを自動溶着機108で拝み合わせ溶着し(
図8(e)参照)、拝み合わせ溶着した溶着部110を折り返して、熱風式溶着機109で溶着部110の先端を第2の防水シート101q等に溶着する(
図8(f)参照)。
【0005】
図9の方法の場合、
図8(a)〜(d)と同様の工程を行った後、折り返されていた第1の防水シート101pの前端部101bと第2の防水シート101qの後端部101aをトンネル周長に沿って内外に重なるようにして重ね合わせ、自動式の自動溶着機111で重ね合わせ溶着する。また、自走式の自動溶着機を用いるものではないが、折り返されていた第1の防水シートの端部と第2の防水シートの端部をトンネル周長に沿って重なるようにして重ね合わせ、溶着した後に、第2の防水シートの背面側に充填材を充填する方法もある(特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記工法では、トンネル内に展張する防水シートの殆どの部分を平滑にすることが可能であるが、トンネル軸方向で隣接する防水シート同士の溶着箇所では、上述のいずれの溶着方法によっても平滑にならずに弛んで残ってしまうという問題がある。防水シートの背面側の地山に別途に湧水防止処理を施していない場合、或いは別途に湧水防止処理を施しても万一湧水が生じた場合には、この弛みが生じた箇所に地山からの湧水が溜まって防水シートに水圧がかかってしまうため、防水シートが破損して止水効果が損なわれる危険性がある。
【0008】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、トンネル軸方向で隣接する防水シート同士の固着箇所の弛みを無くして平滑にすることができ、耐久性の高い止水効果を得ることができるトンネル止水構造及びその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のトンネル止水構造は、トンネル坑内面の内側に繋ぎ合わされて設けられる略面状の防水シートが、前記トンネル坑内面若しくは前記トンネル坑内面の内側に設けられる一次覆工材の内面から離間して
設けられていると共に、前記トンネル坑内面若しくは前記トンネル坑内面の内側に設けられる一次覆工材の内面と前記防水シートとの間に充填材が充填され、前記充填材で前記防水シートの各々が固定されており、各々が前記防水シートからなる第1の防水シート、第2の防水シート及び第3の防水シートがトンネル掘進方向に順次繋ぎ合わされて設けられ、前記第2の防水シートにトンネル軸方向に引張応力が生じている状態で、前記第2の防水シートのトンネル掘進方向の後端部及び前端部が後側の前記第1の防水シートの前端部と前側の前記第3の防水シートの後端部にそれぞれ重ね合わされて固着されていることを特徴とする。
これによれば、防水シートにトンネル軸方向に引張応力が生じている状態で、防水シートの前後が固着され、且つ防水シートが固定されるので、トンネル軸方向で隣接する防水シート同士の固着箇所の弛みを無くして平滑にすることができると共に、この平滑状態を高い安定性で維持することができる。従って、長期に亘って耐久性の高い止水効果を得ることができる。また、固着箇所でも連設される防水シートの弛みがなくなることから、防水シートのロスを確実に無くすことができる。
また、トンネル坑内面若しくは一次覆工材の内面の凹凸やロックボルト等の突起物を充填材で埋めることができることから、事前に一次覆工材の内面等の凹凸を平滑に修正したり、ロックボルトにロックボルトキャップを設けるなど突起物に保護処理をする作業が不要となり、作業効率を向上することができると共に、凹凸や突起物で防水シートが破損することを防止することができる。また、充填材のシート接触面を平滑に仕上げることが可能となり、シート接触面の平滑化により引張応力が生じている状態の防水シートの平滑性をより高い安定性で維持することができる。これによって、より高いアイソレーション(縁切り)効果を得ることができ、二次覆工コンクリートのひび割れをより確実に防止することができる。
【0010】
本発明のトンネル止水構造は、前記防水シートと緩衝材が固着され、前記防水シートのトンネル掘進方向の後端部及び前端部が前記緩衝材と固着されていない未固着部である積層シートが、前記緩衝材を前記トンネル坑内面側にして前記防水シートを繋ぎ合わされて設けられ、前記充填材が前記緩衝材に入り込むようにして前記防水シートが前記充填材で固定されていると共に、各々が前記積層シートからなる、前記第1の防水シートから構成される第1の積層シート、前記第2の防水シートから構成される第2の積層シート、及び前記第3の防水シートから構成される第3の積層シートがトンネル掘進方向に順次設けられ、前記第2の積層シートを構成する前記第2の防水シートの後端部及び前端部が、前記第1の積層シートを構成する前記第1の防水シートの前端部と前記第3の積層シートを構成する前記第3の防水シートの後端部にそれぞれ重ね合わされて固着されていることを特徴とする。
これによれば、充填材を緩衝材に入り込ませ、より高い安定性で積層シート、防水シートを固定することができると同時に、防水シートの端部に緩衝材との未固着部を設けて固着に利用することにより、緩衝材が積層される場合でも防水シートの前後の固着の容易性を確保することができる。
【0011】
本発明のトンネル止水構造は、前記積層シートの後端部で、前記防水シートの後端部が前記緩衝材の後端部よりもトンネル軸方向に突出して形成され、前記積層シートの前端部で、前記緩衝材の前端部が前記防水シートの前端部よりもトンネル軸方向に突出して形成されていることを特徴とする。
これによれば、トンネル掘進方向における積層シートの前端部で緩衝材の前端部を防水シートの前端部よりも突出させることにより、前方の充填材が充填、固化されておらずとも、例えば防水シートの前端部の背面側を充填材が充填、固化した硬い状態にして自走式の自動溶着機を自走させることで内外に積層して重ね合わせ溶着することが可能となり、防水シートの端部同士の固着を一層容易に且つ平滑な仕上がりで行うことができる。また、積層シートの後端部で防水シートの後端部が緩衝材の後端部よりも突出することより、防水シート端部同士が重ね合わせし易くなり、かかる点からも防水シートの端部同士の固着をより一層容易にすることができる。また、緩衝材と防水シートの端部の突出を交互にすることにより、連設する防水シートの背面側をより確実に全体に亘って緩衝材で覆うことができる。
【0012】
本発明のトンネル止水構造は、前記第2の防水シートの後端部と前記第1の防水シートの前端部、及び前記第2の防水シートの前端部と前記第3の防水シートの後端部が、それぞれ内外に積層して溶着することで重ね合わせ固着されていることを特徴とする。
これによれば、固着箇所の突出を無くし、より高い平滑性で防水シートを設置することが可能となる。従って、より一層高いアイソレーション(縁切り)効果を得ることができ、二次覆工コンクリートのひび割れをより確実に防止することができる。
【0013】
本発明のトンネル止水構造は、前記第2の防水シートの後端部と前記第1の防水シートの前端部、及び前記第2の防水シートの前端部と前記第3の防水シートの後端部が、それぞれ拝み合わせ溶着することで重ね合わせ固着されていることを特徴とする。
これによれば、拝み合わせ溶着で固着することで、防水シート同士の固着箇所において重ね合わせ代を切り揃える作業が全く不要となる。また、拝み合わせ溶着の溶着機は取扱いが簡単で熟練作業員がおらずとも作業を行うことが可能となると共に、拝み合わせ溶着の溶着機は入手が容易で、低コストで且つ多様な場所で作業を行うことが可能となる。
【0014】
本発明のトンネル止水構造の施工方法は、略面状の第1の防水シートがトンネル坑内面若しくは前記トンネル坑内面の内側に設けられる一次覆工材の内面から離間して
設けられ、前記第1の防水シートが前記トンネル坑内面若しくは前記一次覆工材の内面と前記第1の防水シートとの間に充填された充填材で固定された状態で、略面状の第2の防水シートを近づけるように移動し、トンネル掘進方向の前記第2の防水シートの後端部と前記第1の防水シートの前端部とを重ね合わせて固着する第1工程と、前記トンネル坑内面若しくは前記一次覆工材の内面から離間した状態で、且つ前記第2の防水シートをトンネル軸方向に引っ張った状態で、前記第1の防水シートと略面一となるように前記第2の防水シートの位置を位置決めする第2工程と、前記第2の防水シートを前記トンネル坑内面若しくは前記一次覆工材の内面から離間して
設け、前記第2の防水シートを前記トンネル坑内面若しくは前記一次覆工材の内面と前記第2の防水シートとの間に充填して固化する充填材で固定する第3工程とを備えることを特徴とする。
これによれば、防水シートにトンネル軸方向に引張応力が生じている状態で、防水シートの前後が固着され、且つ防水シートが固定されるので、トンネル軸方向で隣接する防水シート同士の固着箇所の弛みを無くして平滑にすることができると共に、この平滑状態を高い安定性で維持することができる。従って、長期に亘って耐久性の高い止水効果を得ることができる。また、固着箇所でも連設される防水シートの弛みがなくなることから、防水シートのロスを確実に無くすことができる。
また、トンネル坑内面若しくは一次覆工材の内面の凹凸やロックボルト等の突起物を充填材で埋めることができることから、事前に一次覆工材の内面等の凹凸を平滑に修正したり、ロックボルトにロックボルトキャップを設けるなど突起物に保護処理をする作業が不要となり、作業効率を向上することができると共に、凹凸や突起物で防水シートが破損することを防止することができる。また、充填材のシート接触面を平滑に仕上げることが可能となり、シート接触面の平滑化により引張応力が生じている状態の防水シートの平滑性をより高い安定性で維持することができる。これによって、より高いアイソレーション(縁切り)効果を得ることができ、二次覆工コンクリートのひび割れをより確実に防止することができる。
【0015】
本発明のトンネル止水構造の施工方法は、前記第1の防水シート、前記第2の防水シートに緩衝材が固着されてそれぞれ構成され、前記第1の防水シート、前記第2の防水シートのそれぞれのトンネル掘進方向の後端部及び前端部を、前記緩衝材と固着されていない未固着部にして形成されている第1の積層シート、第2の積層シートを用い、前記第1工程において、前記充填材が前記緩衝材に入り込むようにして前記第1の積層シートを構成する前記第1の防水シートが前記充填材で固定されている状態で、前記緩衝材を前記トンネル坑内面側にして前記第2の積層シートを近づけるように移動し、前記第2の積層シートを構成する前記第2の防水シートの未固着部の後端部と前記第1の防水シートの未固着部の前端部とを重ね合わせて固着し、前記第3工程において、前記トンネル坑内面若しくは前記一次覆工材の内面と前記第2の積層シートとの間に充填材を充填して固化することを特徴とする。
これによれば、充填材を緩衝材に入り込ませ、より高い安定性で積層シート、防水シートを固定することができると同時に、防水シートの端部に緩衝材との未固着部を設けて固着に利用することにより、緩衝材が積層される場合でも防水シートの前後の固着の容易性を確保することができる。
【0016】
本発明のトンネル止水構造の施工方法は、
前記第2工程において、前記第2の防水シートが載置されたシート架台を移動することにより、前記第2の防水シートをトンネル軸方向に引っ張った状態で、前記第1の防水シートと略面一となるように前記第2の防水シートの位置を位置決めすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、トンネル軸方向で隣接する防水シート同士の固着箇所の弛みを無くして平滑にすることができ、耐久性の高い止水効果を得ることができる。また、固着箇所でも連設される防水シートの弛みがなくなることから、防水シートのロスを確実に無くすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔第1実施形態のトンネル止水構造及びその施工方法〕
本発明による第1実施形態のトンネル止水構造は、
図1〜
図3に示すように、地山1に形成されるトンネル2に設けられているものであり、トンネル2はアーチ部21、側壁部22、インバート部23を有する。
図1中の24は仮排水路である。
【0020】
トンネル2には、トンネル坑内面25の内側にトンネル坑内面25に沿って一次覆工材である吹付けコンクリート3が設けられており、吹付けコンクリート3には建て込まれた支保工4が埋設されている。吹付けコンクリート3の内側には防水工である略面状の積層シート5が設けられ、積層シート5は繋ぎ合わされてトンネル周方向及びトンネル軸方向の全体に亘って設けられている。アーチ部21と側壁部22においては、積層シート5と吹付けコンクリート3の内面との間に充填材6が充填されて固化しており、積層シート5は吹付けコンクリート3の内面から離間して配置され充填材6で固定されている。
【0021】
積層シート5は、側壁部22とアーチ部21と側壁部22を連続して覆う長さでトンネル軸方向に所定幅をなす略矩形であり、
図4に示すように、防水シート51と緩衝材52とが接着部53で接着されているものであって、トンネル掘進方向の後端部において、防水シート51の後端部51aが緩衝材52の後端部52aよりもトンネル軸方向に突出して形成され、トンネル掘進方向の前端部において、緩衝材52の前端部52bが防水シート51の前端部51bよりもトンネル軸方向に突出して形成されている。防水シート51の後端部51a、前端部51bはそれぞれ緩衝材52と固着されていない未固着部になっている。
【0022】
防水シート51は、略面状で側壁部22とアーチ部21と側壁部22を連続して覆う長さでトンネル軸方向に所定幅をなす略矩形のシートであり、例えば柔軟性に優れるEVA樹脂等の合成樹脂や合成ゴムなど、防水性と柔軟性を有する適宜の素材で形成することが可能である。緩衝材52は、略面状で防水シート51と略同じ大きさの略矩形であり、緩衝性を有する適宜の素材で形成することが可能であるが、透水性で充填材6を入り込ませることが可能なものとすると好適であり、例えば不織布、立体網状体或いはその積層材等とすることが可能である。また、防水シート51と緩衝材52とを接着する接着部53は、防水シート51と緩衝材52のそれぞれの伸縮性を活かし、追従性を高めるために、図示例の所定間隔で設けられた線状の線接着、或いは点接着など部分的に接着するものであることが好ましい。
【0023】
そして、吹付けコンクリート3の内側に、緩衝材52をトンネル坑内面25側にするようにして、防水シート51が繋ぎ合わされて配置されることにより、積層シート5が繋ぎ合わされて配置される。この防水シート51の繋ぎ合わせでは、
図2及び
図3に示すように、第2の積層シート5qを構成する第2の防水シート51qの後端部51aが、トンネル掘進方向の後側に位置する第1の積層シート5pを構成する第1の防水シート51pの前端部51bに内外に積層するように重ね合わされて固着され、第2の防水シート51qの前端部51bが、トンネル掘進方向の前側に位置する第3の積層シート5rを構成する第3の防水シート51rの後端部51aに内外に積層するように重ね合わされて固着されており、この固着が繰り返されて防水シート51が繋ぎ合わされている。
【0024】
更に、この固着状態において、第2の防水シート51qにはトンネル軸方向に引張応力が生じており、繋ぎ合わされている各防水シート51は、トンネル軸方向に引張応力が生じている状態で、前側と後側の防水シート51に固着されている。また、繋ぎ合わされた積層シート5では、第2の積層シート5qを構成する第2の緩衝材52qの後端部52aの上に、第1の積層シート5pを構成する第1の緩衝材52pの前端部52bが覆い被さるように内外に積層され重ねられて配置され、第3の積層シート5rを構成する第3の緩衝材52rの後端部52aの上に、第2の緩衝材52qの前端部52bが覆い被さるように内外に積層され重ねられて配置され、この配置が繰り返されている。
【0025】
積層シート5と吹付けコンクリート3の内面との間に充填されているモルタル等の充填材6は、緩衝材52に入り込むようにして固化しており、各防水シート51は背面側の充填材6で固定されている。即ち、各防水シート51は、トンネル軸方向に引張応力が生じている状態で、吹付けコンクリート3の内面から離間した位置に充填材6で固定されている。
【0026】
積層シート5の内側には二次覆工コンクリート7がトンネル周方向及びトンネル軸方向の全体に亘って打設され、防水シート52と固着している。
【0027】
次に、
図5に示す第1実施形態のトンネル止水構造の施工方法について説明する。第1実施形態のトンネル止水構造を施工する際には、緩衝材52が吹付けコンクリート3側になるようにしてシート架台11の上に第1の積層シート5pを載置し、第1の積層シート5pのトンネル掘進方向の前端部の上にエアバルク12を載置した状態で、シート架台11を移動して第1の積層シート5pを吹付けコンクリート3の内面から離間した所定位置に配置する(
図5(a)参照)。この第1の積層シート5pの第1の防水シート51pの後端部51aは、トンネル掘進方向の後側に位置する別の防水シート51の前端部51bと内外に積層して重ね合わされて固着されており、第1の防水シート51pをトンネル軸方向に引っ張って緩みを延ばし、第1の防水シート51pが別の防水シート51と略面一となるようにして所定位置に位置決めして配置する。
【0028】
そして、エアバルク12を膨らませて第1の積層シート5pの前端部を閉塞し、後側の既に充填して固化されている充填材6の前端部による閉塞と相俟って充填材6の充填空間を形成し、一次覆工材の吹付けコンクリート3の内面と第1の積層シート5p或いはその第1の防水シート51pとの間の充填空間に図示省略する注入管で充填材6を充填して固化する(
図5(b)参照)。この充填空間は、第1の積層シート5pを構成する第1の緩衝材52pの前端部52bの前縁近くまで形成され、第1の防水シート51pの前端部51bの背面側まで充填材6が充填、固化される。第1の防水シート51pの前端部51bは充填材6で固定されないが、それ以外の第1の防水シート51pの部分では、充填材6が第1の緩衝材52pに入り込んで、吹付けコンクリート3の内面から離間した位置において、トンネル軸方向に引っ張られた状態で固定される。
【0029】
その後、
図5(c)、(d)に示すように、第2の緩衝材52qがトンネル坑内面25側になるようにシート架台11の上に第2の積層シート5qを載置して、第1の積層シート5pに近づけるように第2の積層シート5q或いは第2の防水シート51qを所定位置に移動し、第1の防水シート51pの第1の緩衝材52pと固着されていない未固着部である前端部51bと、第2の積層シート5qを構成する第2の防水シート51qの第2の緩衝材52qと固着されていない未固着部である後端部51aとを、内外に積層して重ね合わせ溶着を行い、重ね合わせて固着する。
【0030】
この際、第1の防水シート51pの前端部51bの背面側が空洞でなく充填材6の充填、固化で硬い状態になっていることから、自走式の自動溶着機13を自走させて押し付けるように重ね合わせ溶着をすることが可能であり、この溶着で略平滑な溶着部を形成することが可能である。また、固定されていない第2の緩衝材52qの後端部52aよりも、第2の防水シート51qの後端部51aがトンネル軸方向に突出していることから、溶着時に第2の緩衝材52qが絡みつくことも防止することができる。
【0031】
その後、
図5(d)、(e)に示すように、第1の防水シート51pの前端部51bに後端部51aが固着された第2の防水シート51qをトンネル掘進方向の前側に引っ張って緩みを延ばし、第2の防水シート51qを、第1の防水シート51pと略面一になるように配置する。即ち、第2の防水シート51qをトンネル軸方向に引っ張った状態にし、第1の防水シート51pと略面一となるように、第2の防水シート51qを所定位置に位置決めする。
【0032】
そして、第2の積層シート5qを、シート架台11の上でトンネル掘進方向の前端部の上にエアバルク12を載置された状態とし、その後は、エアバルクの膨らましによる充填空間の形成や、吹付けコンクリート3の内面と第2の積層シート5q或いは第2の防水シート51qとの間の充填空間への充填材6の充填、固化、第2の積層シート5q或いは第2の防水シート51qの吹付けコンクリート3の内面から離間した位置での充填材6による固定など、上記と同様の工程を繰り返し行う。
【0033】
第1実施形態によれば、防水シート51にトンネル軸方向に引張応力が生じている状態で、防水シート51の前後が固着され、且つ防水シート51が充填材6で固定されるので、トンネル軸方向で隣接する防水シート51・51同士の溶着箇所の弛みを無くして平滑にすることができると共に、この平滑状態を高い安定性で維持することができる。従って、長期に亘って耐久性の高い止水効果を得ることができる。また、固着箇所でも連設される防水シート51の弛みがなくなることから、防水シート51のロスを確実に無くすことができる。
【0034】
また、トンネル坑内面25若しくは吹付けコンクリート3の内面の凹凸やロックボルト等の突起物を充填材6で埋めることができることから、事前に凹凸を平滑に修正したり、突起物に保護処理をする作業が不要となり、作業効率を向上することができると共に、凹凸や突起物で防水シート51が破損することを防止することができる。また、充填材6のシート接触面を平滑に仕上げることが可能となり、シート接触面の平滑化により引張応力が生じている状態の防水シート51の平滑性をより高い安定性で維持することができる。これによって、より高いアイソレーション(縁切り)効果を得ることができ、二次覆工コンクリート7のひび割れをより確実に防止することができる。
【0035】
また、充填材6を緩衝材52に入り込ませ、より高い安定性で積層シート5、防水シート51を固定することができると同時に、防水シート51の後端部51a、前端部51bに緩衝材52との未固着部を設けて固着に利用することにより、緩衝材52が積層される場合でも防水シート51の前後の固着の容易性を確保することができる。
【0036】
また、緩衝材52の前端部52bを防水シート51の前端部51bよりも突出させることにより、トンネル掘進方向の前方の充填材6が充填、固化されておらずとも、防水シート51の前端部51bの背面側を充填材が充填、固化した硬い状態にして自走式の自動溶着機13を自走させて押し付けるように重ね合わせ溶着することが可能となり、防水シート51・51の端部同士の溶着を一層容易に且つ平滑な仕上がりで行うことができる。また、積層シート5の後端部で防水シート51の後端部51aが緩衝材52の後端部52aよりも突出することより、防水シート51・51の端部同士が重ね合わせし易くなり、かかる点からも防水シート51・51の端部同士の溶着をより一層容易にすることができる。また、緩衝材52と防水シート51の端部の突出を交互にすることにより、連設する防水シート51の背面側をより確実に全体に亘って緩衝材52で覆うことができる。
【0037】
〔第2実施形態のトンネル止水構造及びその施工方法〕
本発明による第2実施形態のトンネル止水構造は、
図6(d)に示すように、積層シート5と吹付けコンクリート3の内面との間に充填材6が充填されず、吹付けコンクリート3の内面から離間した位置に設けられる略面状の積層シート5が、充填材6ではなく、吹付けコンクリート3の内面に固定されているシート固定具8で支持されるように固定される。即ち、各防水シート51は、トンネル軸方向に引張応力が生じている状態で、吹付けコンクリート3の内面から離間した位置にシート固定具8で固定されている。
【0038】
シート固定具8は、金属製或いは金属膜が表面に貼り付けられたプラスチック製であり、略ディスク状の基体81と、基体81の一方の面の略中央から突出する釘部82を有し、釘部82を吹付けコンクリート3に打ち込んで吹付けコンクリート3に固定されている。シート固定具8の基体81の他方の面には、熱によって溶解するポリエチレン等の溶着材が貼り付け又は塗布されて設けられており、基体81の他方の面に緩衝材52が接触するようにして積層シート5を配置し、積層シート5の防水シート51側から電磁誘導、高周波或いは赤外線を用いて溶着材を加熱して溶解させて不織布等の緩衝材52に浸透させ、この溶着材が冷却によって再硬化することにより、積層シート5或いは防水シート51が基体81の高さに略対応する距離だけ吹付けコンクリート3から離間した位置に固定される。
【0039】
シート固定具8は、トンネルの周方向に沿って間隔を開けて吹付けコンクリート3の複数箇所に固定されていると共に、トンネル掘進方向に間隔を開けて吹付けコンクリート3の複数箇所に固定され、1個の積層シート5或いは防水シート51は、トンネル周方向に沿って複数箇所に固定されているシート固定具8と、トンネル掘進方向に沿って複数箇所に固定されているシート固定具8とで固定されている。
【0040】
シート固定具8をトンネル周方向に沿ってほぼ同一線上に間隔を開けて固定する場合、同一間隔で配置して設置することも可能であるが、トンネルの上の方を例えば80cm等の比較的せまい間隔、側面の方を例えば100cm等の比較的広い間隔を開けて配置すると、積層シート5或いは防水シート51が弛みやすい上側の弛みを防止できると共に、シート固定具8を効率的に使用することができて好ましい。また、シート固定具8をトンネル掘進方向に間隔を開けて固定する場合、1個の積層シート5或いは防水シート51に対して少なくとも2箇所に固定するが、シート幅が大きい場合には弛みをより確実に防止すべく3箇所以上で固定するとよく、例えば平均1m間隔程度を開けてシート固定具8を固定すると良好である。
【0041】
尚、シート固定具としては、図示のシート固定具8の他、例えば面ファスナーをコンクリート釘で吹付けコンクリート3に固定するもの等を用いることも可能である。面ファスナーをコンクリート釘で留めるシート固定具を用いる場合、トンネル周方向には隙間無くトンネルの内周面に沿って設けるか、或いは短いものはトンネル周方向に沿って間隔を開けて線状に設け、又、トンネル掘進方向にはシート固定具8と同様に間隔を開けて設ける。この面ファスナーのシート固定具には、積層シート5の不織布等の緩衝材52に面ファスナーを絡みつかせることで、積層シート5が固定される。
【0042】
そして、シート固定具8で固定されて設置された積層シート5或いは防水シート51において、第1実施形態と同様に、積層シート5を構成する防水シート51の後端部51aが、トンネル掘進方向の後側に位置する積層シート5を構成する防水シート51の前端部51bに内外に積層するように重ね合わされて固着されると共に、その前端部51aがトンネル掘進方向の前側に位置する積層シート5を構成する防水シート51の後端部51aに内外に積層するように重ね合わされて固着され、この固着が繰り返されて防水シート51がトンネル軸方向に引張応力が生じている状態で繋ぎ合わされている。
【0043】
更に、繋ぎ合わされた積層シート5では、積層シート5を構成する緩衝材52の後端部52aの上に、トンネル掘進方向の後側に位置する積層シート5を構成する緩衝材52の前端部52bが覆い被さるように内外に積層され重ねられて配置されると共に、その前端部52bが、トンネル掘進方向の前側に位置する積層シート5を構成する緩衝材52の後端部52aの上に覆い被さるように内外に積層され重ねられて配置され、この配置が繰り返されている。その他の構成は第1実施形態のトンネル止水構造と同様である。
【0044】
次に、第2実施形態のトンネル止水構造の施工方法について説明する。第2実施形態のトンネル止水構造を施工する際には、
図6(a)に示すように、第1の積層シート5pの第1の防水シート51pをトンネル軸方向に引っ張って緩みを延ばし、第1の防水シート51pがトンネル掘進方向の後側に位置する別の防水シート51と略面一となるようにして所定位置に位置決めして配置すると共に、第1の防水シート51p側からの電磁誘導加熱等で溶着材を溶かしてシート固定具8の他方の面に第1の積層シート5pを溶着し、第1の防水シート51pにトンネル軸方向に引張応力が生じている状態の位置決めした位置で第1の防水シートpを固定する。また、第1の積層シート5pのトンネル掘進方向の前側においてトンネル掘進方向に繋げていく第2の積層シート5qの固定に用いられるシート固定具8を、吹付けコンクリート3の離間した所定箇所に釘部82を打ち込むことで固定する。
【0045】
その後、
図6(b)、(c)に示すように、第2の緩衝材52qが吹付けコンクリート3側になるようにしてシート架台11の上に第2の積層シート5qを載置し、第1の積層シート5pに近づけるように第2の積層シート5q或いは第2の防水シート51qを所定位置に移動し、第1の防水シート51pの第1の緩衝材52pと固着されていない未固着部である前端部51bと、第2の積層シート5qを構成する第2の防水シート51qの第2の緩衝材52qと固着されていない未固着部である後端部51aとを内外に積層し、自走式の自動溶着機13を自走させて重ね合わせ溶着を行うことにより、重ね合わせて固着する。この際、固定されていない第2の緩衝材52qの後端部52aよりも、第2の防水シート51qの後端部51aがトンネル軸方向に突出していることから、溶着時に第2の緩衝材52qが絡みつくことも防止することができる。
【0046】
その後、
図6(c)、(d)に示すように、第1の防水シート51pの前端部51bに後端部51aが固着された第2の防水シート51qをトンネル掘進方向の前側に引っ張って緩みを延ばし、第2の防水シート51qを第1の防水シート51pと略面一になるように配置する。即ち、第2の防水シート51qをトンネル軸方向に引っ張った状態にし、第1の防水シート51pと略面一となるように第2の防水シート51qを所定位置に位置決めする。そして、第2の防水シート51q側からの電磁誘導加熱等で溶着材を溶かしてシート固定具8の他方の面に第2の積層シート5qを溶着し、第2の防水シート51qにトンネル軸方向に引張応力が生じている状態の位置決めした位置で第2の防水シート51qを固定する。
【0047】
その後、上記と同様の工程を繰り返し行い、積層シート5或いは防水シート51をトンネル軸方向に引張応力が生じている状態でトンネル掘進方向に繋ぎ合わせて連設することにより、第2実施形態のトンネル止水構造が形成される。
【0048】
第2実施形態のトンネル止水構造によれば、引張応力が生じている状態の積層シート5或いは防水シート51をシート固定具8で段階的に固定し、簡易、小規模なシート架台11を用いて防水シートの設置作業を行うことができる。また、充填材を充填せずに積層シート5或いは防水シート51を固定できることから、充填材の充填、硬化工程が不要となり、工期の短縮化を図ることができる。また、積層シート5或いは防水シート51を固定した後、次の積層シート5或いは防水シート51を固定するシート固定具8の固定、次の積層シート5或いは防水シート51のシート固定具8への固定の工程順により、シート固定具8と積層シート5或いは防水シート51との位置ズレを防止することが可能である。その他、第1実施形態と対応する構成から対応する効果を得ることができる。
【0049】
〔実施形態の変形例等〕
本明細書開示の発明は、各発明、実施形態の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な構成を本明細書開示の他の構成に変更して特定したもの、或いはこれらの構成に本明細書開示の他の構成を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な構成を部分的な作用効果が得られる限度で削除して特定した上位概念化したものを含むものであり、下記変形例も包含する。
【0050】
例えば本発明における防水シートの端部同士の固着には、防水シートの端部同士が重ね合わされて固着される適宜の構成が含まれ、例えば上記実施形態の溶着以外に接着で固着する構成、或いは内外に積層して重ね合わせ溶着で固着する構成以外に拝み合わせ溶着で固着する構成とすることが可能である。
【0051】
図7に拝み合わせ溶着によって防水シートの端部同士を重ね合わせるように固着する例を示す。本例では、第1実施形態と同様に、第1の防水シート51p及び第1の緩衝材52pで構成される第1の積層シート5pを、充填材6を充填、固化してトンネル軸方向に引っ張られた状態で固定すると共に(
図5(b)参照)、後述と同様に第1の防水シート51pの後端部51aについて拝み合わせ溶着部分を面接着した後、
図7(a)に示すように、第2の緩衝材52qがトンネル坑内面25側になるようにシート架台11の上に第2の積層シート5qを載置して、第1の積層シート5pに近づけるように第2の積層シート5q或いは第2の防水シート51qを所定位置に移動する。
【0052】
そして、下方に垂れた状態になっている、第1の防水シート51pの第1の緩衝材52pと固着されていない未固着部である前端部51bと、第2の積層シート5qを構成する第2の防水シート51qの第2の緩衝材52qと固着されていない未固着部である後端部51aとを、拝み合わせ溶着を行う自動溶着機14を用いて拝み合わせ溶着することにより、重ね合わせて固着する。この際、固定されていない第2の緩衝材52qの後端部52aよりも、第2の防水シート51qの後端部51aがトンネル軸方向に突出していることから、拝み合わせ溶着時に第2の緩衝材52qが絡みつくことなく容易に拝み合わせ溶着を行うことができる。
【0053】
その後、
図7(b)に示すように、第1の防水シート51pの前端部51bに後端部51aが拝み合わせ溶着で固着された第2の防水シート51qをトンネル掘進方向の前側に引っ張って緩みを延ばし、第2の防水シート51qを、第1の防水シート51pと略面一になるように配置して所定位置に位置決めする。
【0054】
次いで、
図7(c)、(d)に示すように、第1実施形態と同様に、吹付けコンクリート3の内面と第2の積層シート5q或いは第2の防水シート51qとの間の充填空間への充填材6の充填、固化を行って、第2の防水シート51q及び第1の緩衝材52qで構成される第2の積層シート5qをトンネル軸方向に引っ張られた状態で固定する。更に、第2の防水シート51qを載置していたシート架台11を移動し、第1の防水シート51pの前端部51bと第2の防水シート51qの後端部51aとの拝み合わせ溶着部分を、下方に垂れた状態からトンネル掘進方向に向かって折り曲げ、折り曲げ部の最奥に熱風式溶着機15を差し込み、折り曲げ部を押し潰しながら第2の防水シート51qに面接着を行う。この折り曲げ部の面接着は、折り曲げ部の全体に亘って行ってもよいが、第2の防水シート51qに折り曲げ部が重なった状態を維持できれば、効率的に間隔を置いて行うことが可能である。その後、これらの工程を繰り返し行う。
【0055】
拝み合わせ溶着で固着する場合には、防水シート51同士の固着箇所において重ね合わせ代を切り揃える作業が全く不要となる。また、拝み合わせ溶着の自動溶着機14は、取扱いが簡単で熟練作業員がおらずとも作業を行うことが可能であると共に、拝み合わせ溶着の自動溶着機14は入手が容易であることから、低コストで且つ多様な場所で作業を行うことが可能となる。
【0056】
尚、第1の防水シート51pの前端部51bと第2の防水シート51qの後端部51aとの拝み合わせ溶着部分を、トンネル掘進方向と逆側に向かって折り曲げ、折り曲げ部を第1の防水シート51pに面接着するようにすることも可能である。また、折り曲げ部の面接着は、面溶着に限定されず、接着剤等を用いた面接着とすることも可能である。また、上記例では、第2の防水シート51q或いは第2の積層シート5qを充填材6で固定した後に、拝み合わせ溶着部分を折り曲げて面接着する構成としたが、シート架台11上で第2の防水シート51qをトンネル掘進方向の前側に引っ張って緩みを延ばした状態で拝み合わせ溶着部分を折り曲げて面接着を行い、その後に、第2の防水シート51q或いは第2の積層シート5qを充填材6によりトンネル軸方向に引っ張られた状態で固定する構成とすることも可能である。また、拝み合わせ溶着の構成は、シート固定具8で積層シート5、防水シート51の固定を行う第2実施形態等にも変形例として用いることが可能である。
【0057】
また、第1、第2実施形態や変形例では、トンネル坑内面25の内側に一次覆工材が設けられる場合について説明したが、本発明のトンネル止水構造には、一次覆工材が設けられないトンネル坑内面25から離間した位置に、積層シート5、防水シート51をトンネル坑内面25と積層シート5との間に充填される充填材6で固定、又はトンネル坑内面25に固定されるシート固定具8で固定する構造も含まれる。
【0058】
また、第1、第2実施形態や変形例では、積層シート5を構成する防水シート51が繋ぎ合わされて設けられる場合について説明したが、本発明のトンネル止水構造には、例えば不織布等の緩衝材をトンネル坑内面25の内側に展張し且つその内側に積層シートでない防水シートを展張する構成など、積層シートでない防水シートが繋ぎ合わされて設けられ、この防水シートのトンネル坑内面25側に緩衝材が設けられる場合と設けられない場合の双方が含まれる。この防水シートも、トンネル坑内面25若しくはトンネル坑内面25に設けられる一次覆工材との間に充填される充填材6で固定、又はトンネル坑内面25に固定されるシート固定具8等で固定することが可能である。尚、不織布等の緩衝材がない防水シートをシート固定具8等のシート固定具に固定する場合、接着材による接着等の適宜の固定方法を用いることが可能である。
【0059】
また、防水シート51と緩衝材52で構成される積層シート5を用いる場合、隣り合う緩衝材52・52の後端部52a、前端部52bの配置は、繋ぎ合わされて設けられる防水シート51の背面側を覆うことができるものであれば、後端部52aと前端部52bを内外に積層して重ね合わせて配置するもの以外にも適宜である。また、防水シート51の後端部51a、後端部52bや、緩衝材52・52の後端部52a、前端部52bを内外に積層して重ね合わせる場合、いずれの端部を内外に配置する場合も本発明に含まれる。
【0060】
また、防水シート51と緩衝材52で構成される積層シート5を用いる場合、防水シート51の後端部52aがトンネル軸方向に突出し、緩衝材52の前端部52bがトンネル軸方向に突出するもの以外にも、防水シート51を繋ぎ合わせて設け、緩衝材52がその背面側を覆うことができるものであれば、防水シートと緩衝材が積層して設けられる適宜の積層シートが本発明に含まれる。
【0061】
また、防水シート51には、二次覆工コンクリート7などコンクリートとの接着性を有するもの、或いはコンクリートとの接着性を有しないものを用いることが可能である。