特許第6403531号(P6403531)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭化成ホームズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6403531-断熱構造、建物及び断熱改修方法 図000002
  • 特許6403531-断熱構造、建物及び断熱改修方法 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6403531
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】断熱構造、建物及び断熱改修方法
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/00 20060101AFI20181001BHJP
   E06B 3/10 20060101ALI20181001BHJP
   E06B 3/20 20060101ALI20181001BHJP
   E06B 1/56 20060101ALI20181001BHJP
   E06B 3/66 20060101ALI20181001BHJP
   E04B 1/76 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   E06B5/00 B
   E06B3/10
   E06B3/20
   E06B1/56 A
   E06B3/66 Z
   E04B1/76 500A
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-206809(P2014-206809)
(22)【出願日】2014年10月8日
(65)【公開番号】特開2016-75098(P2016-75098A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2017年7月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(72)【発明者】
【氏名】千葉 陽輔
【審査官】 家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−126913(JP,A)
【文献】 実開昭58−009483(JP,U)
【文献】 実開昭53−118333(JP,U)
【文献】 特開2013−204279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/00−5/20
E06B 1/00−1/70
E06B 3/04−3/46
E06B 3/54−3/88
E04B 1/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の壁部に設けた外サッシの屋内側に内サッシを設ける断熱構造であって、
前記外サッシの外サッシ枠の屋内側に固定された外開口枠と、内周面に前記内サッシが取り付けられる内開口枠とを有し、
前記内開口枠で囲まれた内開口領域の外周縁は、前記外開口枠で囲まれた外開口領域の外周縁よりも外側に位置し、
前記内開口枠は、断熱層を備えるふかし壁に支持されている、ことを特徴とする断熱構造。
【請求項2】
前記内開口枠は、前記外開口枠の外周側に設けられる、請求項1に記載の断熱構造。
【請求項3】
前記内サッシは、当該内サッシのガラスを保持する障子枠が樹脂製或いは木製である請求項1又は2に記載の断熱構造。
【請求項4】
前記内サッシは、二層以上のガラスで構成される複層ガラスを有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の断熱構造。
【請求項5】
前記複層ガラスは、少なくとも一層のガラスが低放射性ガラスである請求項4に記載の断熱構造。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の断熱構造を備える建物。
【請求項7】
建物の壁部に設けた外サッシの屋内側に内サッシを設ける断熱改修方法であって、
前記外サッシの外サッシ枠の屋内側に固定された外開口枠の屋内側に、内周面に前記内サッシが取り付けられる内開口枠を、前記内開口枠で囲まれた内開口領域の外周縁が、記外開口枠で囲まれた外開口領域の外周縁よりも外側になるように設置する工程と、
前記内開口枠を、断熱層を備えるふかし壁によって支持する工程と、を備える断熱改修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の壁部に設けた外サッシの屋内側に内サッシを設ける断熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の壁部に設けた屋外側サッシ(外サッシ)の屋内側に屋内側サッシ(内サッシ)を新たに設けることで、断熱性能を向上させることができる断熱構造が知られている(例えば特許文献1参照)。ここで外サッシの外サッシ枠には、特許文献1の図1に示されるように、L字状に曲げた屋内側アングル部に対し、外開口枠(特許文献1では、図1、2に示された既存額縁6)を設けておくことが一般的であって、内サッシは通常、既に設けられている外開口枠の内周面に取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−332651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示されるような従来の断熱構造では、外開口枠の内周面側に内サッシの枠(樹脂サッシ枠7)が設けられ、更にその内側に内サッシ障子(引戸本体9)が設けられることになるので、内サッシのガラス面積は外サッシのガラス面積よりも小さくなってしまい、十分な採光が得られずに室内空間の明るさが損なわれるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決することを課題とするものであり、優れた断熱性能が得られるうえ、採光性能にも優れる断熱構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、建物の壁部に設けた外サッシの屋内側に内サッシを設ける断熱構造であって、前記外サッシの外サッシ枠の屋内側に固定された外開口枠と、内周面に前記内サッシが取り付けられる内開口枠とを有し、前記内開口枠で囲まれた内開口領域の外周縁は、前記外開口枠で囲まれた外開口領域の外周縁よりも外側に位置し、前記内開口枠は、断熱層を備えるふかし壁に支持されている、ことを特徴とする。
また、本発明は、上記断熱構造を備える建物である。
更に、本発明は、建物の壁部に設けた外サッシの屋内側に内サッシを設ける断熱改修方法であって、前記外サッシの外サッシ枠の屋内側に固定された外開口枠の屋内側に、内周面に前記内サッシが取り付けられる内開口枠を、前記内開口枠で囲まれた内開口領域の外周縁が、記外開口枠で囲まれた外開口領域の外周縁よりも外側になるように設置する工程と、前記内開口枠を、断熱層を備えるふかし壁によって支持する工程と、を備える。
【0007】
また、前記内開口枠は、前記外開口枠の外周側に設けられることが好ましい。
【0008】
また、前記内サッシは、当該内サッシのガラスを保持する障子枠が樹脂製或いは木製であることが好ましい。
【0009】
また、前記内サッシは、二層以上のガラスで構成される複層ガラスを有することが好ましい。
【0010】
また、前記複層ガラスは、少なくとも一層のガラスが低放射性ガラスであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、二重構成になる外サッシ及び内サッシによって優れた断熱性能が得られるうえ、外開口枠で囲まれた外開口領域の外周縁に対し、内開口枠で囲まれた内開口領域の外周縁が外側に位置するようにしているので、従来のものに対して内サッシのガラス面積を大きくすることが可能になり、優れた採光性能を得ることができる。
【0012】
壁部の屋内側に、内開口枠を有するとともに断熱層を備えるふかし壁を設ける場合は、ふかし壁によって建物の断熱性能を更に向上させることができる。
【0013】
内サッシのガラスを保持する障子枠が樹脂製或いは木製である場合は、熱伝導率の低い樹脂或いは木材によって建物の断熱性能を一層向上させることができる。ここで、樹脂製或いは木製の障子枠は強度が比較的低くなるため、これを障子枠の枠幅を増やして補おうとすると、内サッシのガラス面積が減少して採光が不足することになる。しかし本発明では、従来の断熱構造に対して内サッシのガラス面積を大きくすることができるので、障子枠の強度を維持しつつ必要な採光を得ることができる。
【0014】
内サッシが、二層以上のガラスで構成される複層ガラスを有する場合は、建物の断熱性能をより向上させることができる。また、複層ガラスを用いる場合は、ガラスの枚数が増加することで可視光の透過率が小さくなって採光量が減少してしまうものの、本発明では従来の断熱構造に対して内サッシのガラス面積を大きくすることができるので、採光量が減少する影響を抑制することができる。
【0015】
複層ガラスのうち、少なくとも一層のガラスが低放射性ガラスである場合は、建物の断熱性能をより向上させることができるものの、可視光の透過率が小さくなるので採光量が減少することになる。本発明では従来の断熱構造に対して内サッシのガラス面積を大きくすることができるので、採光量が減少する影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に従う断熱構造の一実施形態を模式的に示す横断面図である。
図2】本発明に従う断熱構造の一実施形態を屋内側から見た正面図(内サッシは不図示)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明に従う断熱構造の一実施形態を詳細に説明する。なお、本明細書において「左」、「右」とは、屋内側から屋外側を見た場合を基準とする。
【0018】
本実施形態の断熱構造は、既存の建物の壁部1に形成した建物開口部2に対して屋外側サッシ(外サッシ)3が設けられていて(本実施形態では、引き違い形式の腰高窓として設けられている)、改修により、この壁部1の屋内側に新たにふかし壁4を設けるとともに、新たに屋内側サッシ(内サッシ)5を設けて建物の断熱性能の向上を図ったものである。
【0019】
壁部1は、軽量気泡コンクリートである外壁パネル1aと、断熱材1bと、木下地1cと、石膏ボード1dとによって構成されている。
【0020】
外サッシ3は、建物開口部2に装着される外サッシ枠3aを備えている。外サッシ枠3aは、上枠、下枠、及び左右に設けられる一対の縦枠を方形に枠組みしたものである。上枠、下枠、及び縦枠は、例えばアルミニウム等の金属で形成されるものや、塩化ビニルやABS等の合成樹脂で形成されるもの、若しくは木製のもの、又はこれらを組み合わせたもの等、種々のものが適用可能である。また、図示のように外サッシ枠3aには、横断面形状がL字状になる屋内側アングル部3a1が設けられている。
【0021】
屋内側アングル部3a1の外周側には、外サッシ3から屋内側に突出する外開口枠3bが設けられている。外開口枠3bは、例えば塗装仕上げやラミネート仕上げされた木質部材の他、木質下地材に対して壁紙が巻き込まれたものであってもよい。
【0022】
また、外サッシ3は、外サッシ枠3a内に引き違い自在に納められる一対の外サッシ障子3cを備えている。外サッシ障子3cは、例えば金属や合成樹脂、若しくは木製又はこれらの組み合わせによって形成される、上枠、下枠、及び左右の縦枠を方形に枠組みした障子枠(外サッシ障子枠)3c1と、外サッシ障子枠3c1内に納められる外サッシガラス3c2とを備えている。本実施形態の外サッシガラス3c2は、一層のガラスから構成される単層ガラスであるが、二層以上のガラスで構成される複層ガラスであってもよい。
【0023】
ふかし壁4は、改修により、既存の壁部1の石膏ボード1dの屋内側に設けられている。
ふかし壁4は、既存の壁部1に固定した木下地4bと、木下地4bの間に配置された断熱層4dと、木下地4bに固定した石膏ボード4cとによって構成されている。断熱層4dを構成するものとしては、例えばフェノールフォームやグラスウール、ロックウール等が挙げられるが、他にも種々のものが適用可能である。
【0024】
内開口枠4aは、ふかし壁4に支持されており、外開口枠3bの屋内側、かつ外開口枠3bの外周側に設けられる。内開口枠4aは、外開口枠3bと同様に、塗装仕上げやラミネート仕上げされた木質部材の他、木質下地材に対して壁紙が巻き込まれたものであってもよい。
【0025】
内サッシ5は、内開口枠4aの内周面に取り付けられる内サッシ枠5aを備えている。内サッシ枠5aは、例えば金属や合成樹脂、若しくは木製又はこれらの組み合わせによって形成される、上枠、下枠、及び左右の縦枠を方形に枠組みしたものである。
【0026】
また内サッシ5は、内サッシ枠5a内に引き違い自在に納められる一対の内サッシ障子5bを備えている。内サッシ障子5bは、例えば金属や合成樹脂、或いはこれらの組み合わせによって形成される、上枠、下枠、及び左右の縦枠を方形に枠組みした障子枠(内サッシ障子枠)5b1と、内サッシ障子枠5b1内に納められる内サッシガラス5b2とを備えている。内サッシガラス5b2は、一層のガラスから構成される単層ガラスでもよいが、本実施形態では断熱性能をより高めるために、二層のガラスを有し、ガラス間に空気層を設けた複層ガラスを用いている。なお複層ガラスは、三層以上のガラスを有するものであってもよい。なお空気層は、空気をそのまま充填したものの他、アルゴンガスやクリプトンガスを充填したものでもよい。また空気層に替えて真空層を設けてもよい。更に本実施形態では、少なくとも一層のガラスが低放射性ガラスであって、断熱性能を一層高めている。
【0027】
ここで、図2に示すように外開口枠3bで囲まれた領域を外開口領域Xとし、内開口枠4aで囲まれた領域を内開口領域Yとする場合、内開口領域Yの外周縁Y1は、外開口領域Xの外周縁X1よりも外側に位置するように設けられている。
【0028】
このような構成になる断熱構造にあっては、内サッシが外開口枠の内周面に取り付けられている従来のものよりも内サッシガラス5b2の面積を大きくすることができるので、優れた採光性能を得ることができる。なお、内サッシ5には比較的重量の大きくなる複層ガラスを用いているため、この複層ガラスを保持する内サッシ障子枠5b1の枠幅は、強度を確保するために、単層ガラスを保持する外サッシ障子枠3c1の枠幅よりも大きくなる。しかし本発明によれば、上述したように内サッシガラス5b2の面積を増すことができるので、内サッシ障子枠5b1の強度を維持しつつ必要な採光を得ることができる。
【0029】
また、二重構成になる外サッシ3と内サッシ5とによって、屋外と屋内との熱の伝達が抑えられるので、優れた断熱性能を得ることができる。樹脂製或いは木製の内サッシ枠5aを用いる場合は、熱伝導率の低い樹脂或いは木材によって、より優れた断熱性能を得ることができる。加えて本実施形態では、断熱層4dを備えるふかし壁4を設けているので、断熱性能を更に向上させることができる。
【0030】
本発明に従う断熱構造は、本実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に従う範囲で種々の変更が可能である。例えば上述の実施形態では、既存の外サッシの屋内側に内サッシを新たに設けているが、本発明において時間的な順序は必須なものではなく、例えば新築の建物に対して外サッシ及び内サッシを同時期に設ける場合も含まれる。
【符号の説明】
【0031】
1:壁部
2:建物開口部
3:外サッシ
3a:外サッシ枠、3a1:屋内側アングル部
3b:外開口枠
3c:外サッシ障子、3c1:外サッシ障子枠、3c2:外サッシガラス
4:ふかし壁
4a:内開口枠
4b:木下地
4c:石膏ボード
4d:断熱層
5:内サッシ
5a:内サッシ枠
5b:内サッシ障子、5b1:内サッシ障子枠、5b2:内サッシガラス
X:外開口領域、X1:外開口領域の外周縁
Y:内開口領域、Y1:内開口領域の外周縁
図1
図2