(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した集合住宅では、屋根裏空間が共用廊下上にも形成される。この場合、その共用廊下上の屋根裏空間(以下、廊下屋根裏空間という)を介して隣り合う住戸の屋根裏空間(以下、住戸屋根裏空間という)同士が連通される。そのため、廊下屋根裏空間を通じて隣り合う住戸屋根裏空間の間で延焼が生じるおそれがある。
【0006】
そこで、このような延焼を抑制すべく、屋根裏界壁を廊下屋根裏空間まで延設し、廊下屋根裏空間を介した隣り合う住戸屋根裏空間の連通を遮断することが考えられる。その場合、上述した廊下屋根裏空間を通じた隣り合う住戸間の延焼を抑制することができる。
【0007】
しかしながら、かかる構成としても、住戸屋根裏空間から廊下屋根裏空間に火が回ると、その火が軒先側から屋外を経由して屋根裏界壁を隔てた隣りの廊下屋根裏空間に回るおそれがある。その場合、やはり隣りの住戸屋根裏空間への延焼を招くおそれがある。また、廊下屋根裏空間に回った火がそこから下方に、すなわち共用廊下の方に回ることも考えられ、その場合共用廊下を通じた他の住戸への延焼を招くおそれがある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、住戸間の延焼をより確実に抑制することができる集合住宅の屋根裏構造を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく、第1の発明の集合住宅の屋根裏構造は、横並びに設けられた複数の住戸と、前記各住戸の並ぶ方向に延びているとともに、それら各住戸に通じる共用廊下部とを備え、前記各住戸の居住空間と前記共用廊下部とを上方から覆うように屋根部が設けられている集合住宅に適用され、前記屋根部において前記各住戸の前記居住空間の上方にはそれぞれ前記各住戸の屋根裏空間である住戸屋根裏空間が設けられており、前記屋根部において前記共用廊下部の上方には廊下屋根裏空間が設けられており、隣り合う前記住戸屋根裏空間は屋根裏界壁により互いに仕切られており、前記各住戸屋根裏空間を前記廊下屋根裏空間と仕切る第1耐火隔壁を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、各住戸屋根裏空間を廊下屋根裏空間と仕切る第1耐火隔壁が設けられているため、住戸屋根裏空間から廊下屋根裏空間への延焼を抑制することができる。そのため、廊下屋根裏空間から屋外を通じて屋根裏界壁を隔てた隣りの廊下屋根裏空間ひいては隣りの住戸屋根裏空間へ火が回るのを抑制することができる。また、廊下屋根裏空間から共用廊下部への延焼も抑制することができるため、共用廊下部を通じた他の住戸への延焼も抑制することができる。これにより、住戸間の延焼をより確実に抑制することができる。
【0011】
第2の発明の集合住宅の屋根裏構造は、第1の発明において、下階部と、その下階部の上方に設けられ前記屋根部の直下に位置する上階部とを備え、前記上階部には、前記住戸としての上階住戸が横並びに設けられているとともに、前記共用廊下部としての上階廊下部が前記各上階住戸の並ぶ住戸並び方向に延びており、前記各上階住戸のうち端に位置する上階住戸と前記住戸並び方向に隣接し、かつ前記下階部と前記上階部とに跨がって形成された階段室を備え、前記階段室には、前記上階廊下部から前記下階部の共用廊下部へ通じる共用階段が設けられている集合住宅に適用され、前記第1耐火隔壁は、前記各上階住戸の前記住戸屋根裏空間を前記上階廊下部上の前記廊下屋根裏空間と仕切るものであり、前記屋根部において前記階段室の上方には階段屋根裏空間が設けられており、前記端の上階住戸の前記住戸屋根裏空間と前記階段屋根裏空間とを仕切る第2耐火隔壁を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、住戸屋根裏空間を階段屋根裏空間と仕切る第2耐火隔壁がさらに設けられているため、住戸屋根裏空間から階段屋根裏空間への延焼についても抑制することができる。この場合、階段屋根裏空間からその下方の階段室への延焼を抑制することができるため、その階段室から共用廊下部を経由して各住戸へ延焼が拡がるのを抑制することができる。これにより、住戸間の延焼をより一層確実に抑制することができる。
【0013】
特に、階段室は、上階部及び下階部の各共用廊下部にそれぞれ通じているため、階段室に延焼が拡がると、そこから上階側の住戸と下階側の住戸とにそれぞれ延焼が拡がり大規模な火災につながるおそれがある。そのため、この点を鑑みても、階段屋根裏空間への延焼を抑制することの意義は大きいといえる。
【0014】
第3の発明の集合住宅の屋根裏構造は、第2の発明において、前記第1耐火隔壁は、第1隔壁フレームにより支持された第1耐火板を備え、前記第2耐火隔壁は、第2隔壁フレームにより支持された第2耐火板を備え、前記第1耐火板と前記第2耐火板とは、他の耐火板を介して又は介さずに、互いに連続して設けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、第1耐火隔壁が有する第1耐火板と、第2耐火隔壁が有する第2耐火板とが他の耐火板を介して又は介さずに連続して設けられている。この場合、これら各耐火板により第1耐火隔壁と第2耐火隔壁とに跨がる連続した耐火層を形成することができるため、隔壁の耐火性能を高めることができる。
【0016】
第4の発明の集合住宅の屋根裏構造は、第3の発明において、前記上階廊下部に沿って延び、その上階廊下部を屋外と仕切る外壁を備え、前記第2隔壁フレームは、前記住戸並び方向と直交する方向に延びているとともに、前記上階廊下部の上方を跨いで前記外壁上に載置されて固定されており、前記第1隔壁フレームは、前記住戸並び方向に延びて前記第2隔壁フレームと連結されており、前記第1隔壁フレームの前記住戸屋根裏空間側には、前記第1耐火板としての住戸側第1耐火板が設けられており、前記第2隔壁フレームの前記住戸屋根裏空間側には、前記第2耐火板としての住戸側第2耐火板が設けられており、前記住戸側第1耐火板と前記住戸側第2耐火板とは互いの端部同士で連続することで平面視L字状をなして配置されていることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、住戸並び方向と直交する方向に延びる第2隔壁フレームが上階廊下部を跨いで、その上階廊下部を屋外と仕切る外壁上に載置されて固定されている。住戸並び方向に上階住戸(詳しくは端の上階住戸)と隣接して階段室が設けられる上述の構成では、階段室に通じる上階廊下部が住戸並び方向に長くなることが考えられるが、上記のように第2隔壁フレームを上階廊下部を跨いで配設することで構造区画上望ましい構成とすることができる。
【0018】
ここで、第2隔壁フレームを上述のように配設すると、第2隔壁フレームの一部が第1隔壁フレームよりも上階廊下部側(廊下屋根裏空間側)に延出して設けられることになる。そこで本発明では、この点に鑑みて、第1耐火板(住戸側第1耐火板)を第1隔壁フレームの住戸屋根裏空間側に設けるとともに、第2耐火板(住戸側第2耐火板)を第2隔壁フレームの住戸屋根裏空間側に設け、それら各耐火板を互いの端部同士で連続させてL字状をなして配置している。この場合、第2隔壁フレームの上記延出部を回避しながら第1耐火板と第2耐火板とを直に連続させることができるため、第2隔壁フレームに延出部が存在する構成にあって隔壁の耐火性能を好適に高めることができる。
【0019】
第5の発明の集合住宅の屋根裏構造は、第4の発明において、前記第1隔壁フレームの前記廊下屋根裏空間側には、前記第1耐火板としての廊下側第1耐火板が設けられており、前記第2隔壁フレームの前記階段屋根裏空間側には、前記第2耐火板としての階段側第2耐火板が設けられており、前記廊下側第1耐火板と前記階段側第2耐火板とは前記第2隔壁フレームにより互いに隔てられており、前記第2隔壁フレームの枠内には、前記廊下側第1耐火板と前記階段側第2耐火板とを繋ぐ繋ぎ耐火板が前記他の耐火板として設けられており、前記繋ぎ耐火板を介して前記廊下側第1耐火板と前記階段側第2耐火板とが互いに連続していることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、第1耐火板(廊下側第1耐火板)がさらに第1隔壁フレームの廊下屋根裏空間側に設けられ、第2耐火板(階段側第2耐火板)がさらに第2隔壁フレームの階段屋根裏空間側に設けられている。この場合、廊下側第1耐火板と階段側第2耐火板とは第2隔壁フレーム(詳しくはその延出部)により隔てられているが、第2隔壁フレームの枠内にはこれら各耐火板を繋ぐ繋ぎ耐火板が設けられているため、この繋ぎ耐火板を介して上記各耐火板を互いに連続させることができる。したがって、この場合、隔壁フレームを挟んだ両側にてそれぞれ第1耐火隔壁と第2耐火隔壁とに跨がる連続した耐火層を形成することができる。そのため、隔壁の耐火性能をより一層高めることができる。
【0021】
第6の発明の集合住宅の屋根裏構造は、第5の発明において、記第2隔壁フレームは、上下に向き合って設けられた上枠材及び下枠材と、それら上枠材及び下枠材を上下に連結する複数の縦材とを備え、前記繋ぎ耐火板は、前記上枠材と前記下枠材との間に配設され、それら各枠材に跨がって上下に延びる縦長形状を有しており、前記各縦材のうちいずれかの縦材は前記繋ぎ耐火板と隣接して配置されており、その縦材に対して前記繋ぎ耐火板が固定されていることを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、繋ぎ耐火板が第2隔壁フレームを構成する縦材に固定されているため、第2隔壁フレームに繋ぎ耐火板を固定するための下地材を別途設ける場合と比べ、構成の簡素化を図ることができる。
【0023】
また、繋ぎ耐火板は、上枠材と下枠材との間でそれら各枠材に跨がる縦長状をなしているため、その両端部のみを第2隔壁フレーム(上枠材及び下枠材)に固定するだけではその強度面において不安が残る。これに対して上記の構成では、かかる繋ぎ耐火板を上下に延びる縦材に固定しているため、繋ぎ耐火板を両端部だけでなく中間部においても固定することができる。そのため、縦長状の繋ぎ耐火板であっても安定した状態で固定することができる。
【0024】
第7の発明の集合住宅の屋根裏構造は、第6の発明において、前記第1隔壁フレームは、前記第2隔壁フレームの前記縦材に連結されており、その縦材に対して前記繋ぎ耐火板が固定されていることを特徴とする。
【0025】
本発明によれば、第1隔壁フレームが連結された第2隔壁フレームの縦材に繋ぎ耐火板が固定されている。この場合、第1隔壁フレームを連結するための縦材を利用して繋ぎ耐火板が固定されているため、縦材の有効利用を図ることができる。
【0026】
第8の発明の集合住宅の屋根裏構造は、第6又は第7の発明において、前記上枠材と前記下枠材とはいずれも溝形鋼よりなり、互いの溝開口を向き合わせた状態で配置されており、前記繋ぎ耐火板は、その上下の端部がそれぞれ前記上枠材及び前記下枠材の各溝内に挿し入れられた挿し入れ部となっており、それら各挿し入れ部の間が中間部となっており、前記各挿し入れ部は、幅方向の両端部がそれぞれ前記溝の内側面に接触しており、前記中間部は、その幅が前記各挿し入れ部よりも大きくなっており、幅方向の両端部がそれぞれ前記廊下側第1耐火板及び前記階段側第2耐火板に接触していることを特徴とする。
【0027】
本発明によれば、繋ぎ耐火板の上下の端部がそれぞれ耐火性を有する溝形鋼からなる上枠材及び下枠材の各溝内に挿し入れられて挿し入れ部となっており、それら各挿し入れ部の幅方向の両端部がそれぞれ溝の内側面に当接している。この場合、上枠材及び下枠材の設置高さにおいて挿し入れ部と上枠材(又は下枠材)とを介して廊下側第1耐火板と階段側第2耐火板とを連続させることができる。また、繋ぎ耐火板において各挿し入れ部の間の中間部では、その幅が挿し入れ部よりも大きくなっており、その幅方向の両端部がそれぞれ廊下側第1耐火板及び階段側第2耐火板に接触している。このため、上枠材と下枠材との間の高さ範囲においては中間部を介して廊下側第1耐火板と階段側第2耐火板とを連続させることができる。よって、この場合、下枠材から上枠材までの上下方向全域に亘って各耐火材を連続させることができるため、隔壁の耐火性能をさらに高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、集合住宅として、複数の住戸を有する二階建てのアパートについて具体化している。なお、
図1は集合住宅の外観を示しており、(a)が同外観を示す正面図、(b)が背面図、(c)が平面図、(d)が側面図である。また、
図2は、二階部分12の構成を示す概略横断面図であり、
図1(a)のA−A線断面図に相当する。
【0030】
図1(a)〜(d)に示すように、集合住宅10は、基礎K上に設けられた下階部としての一階部分11と、一階部分11の上方に設けられた上階部としての二階部分12と、二階部分12の上方に設けられた屋根部13とを備える。
【0031】
集合住宅10は、大きく分けて、住宅本体部15と、その住宅本体部15に隣接して設けられた隣接部16とを備える。一階部分11、二階部分12及び屋根部13はそれぞれ住宅本体部15と隣接部16とに跨がって設けられている。住宅本体部15と隣接部16とはいずれも平面視において矩形形状をなしており、また平面視の大きさが住宅本体部15よりも隣接部16の方が小さくなっている。
【0032】
図1及び
図2に示すように、住宅本体部15には、その一階部分11に複数(具体的には3つ)の住戸21(以下、一階住戸21という)が横並びで設けられており、二階部分12にも同様に複数(具体的には3つ)の住戸22(以下、二階住戸22という)が横並びで設けられている。各一階住戸21と各二階住戸22とはいずれも同じ方向に並んでおり、以下においてはこの方向を住戸並び方向Xともいう。なお、住戸並び方向Xは、住宅本体部15と隣接部16とが並ぶ方向と同じ方向となっている。
【0033】
隣り合う二階住戸22同士は界壁23によって互いに仕切られている。この界壁23により隣り合う二階住戸22間における耐火性能が確保されている。また、図示は省略するが、隣り合う一階住戸21の間にも同様の界壁が設けられており、その界壁が上記の界壁23と上下に並ぶように配置されている。
【0034】
住宅本体部15には、各住戸21,22へ出入りする際に用いられる共用の廊下部が設けられている。かかる廊下部として、一階部分11には各一階住戸21へ通じる一階廊下部25が設けられ、二階部分12には各二階住戸22へ通じる二階廊下部26が設けられている。一階廊下部25と二階廊下部26とはいずれも住戸並び方向に延びるように設けられている。また、各廊下部25,26は上下に隣接して配置されている。なお、二階住戸22が「住戸」に相当し、二階廊下部26が「共用廊下部」に相当する。
【0035】
各二階住戸22と二階廊下部26とは仕切壁27によって仕切られている。この仕切壁27には、各二階住戸22ごとにそれぞれ二階廊下部26から二階住戸22へ出入りするための出入口28が形成されている。出入口28には、当該出入口28を開閉する開閉扉29が設けられている。また、一階部分11においても、これと同様の仕切壁31が設けられており、その仕切壁31が上記の仕切壁27と上下に並んで配置されている。そして、仕切壁31には一階廊下部25から一階住戸21へ出入りするための出入口32が形成され、その出入口32には開閉扉33が設けられている。
【0036】
隣接部16は、住宅本体部15に対して住戸並び方向における一方側に隣接して設けられている。隣接部16は、住戸並び方向Xと直交する方向(以下、住戸並び直交方向Yともいう)の長さが住宅本体部15の略半分となっており、同方向Yにおいて各廊下部25,26と各住戸21,22とに跨がるように設けられている。隣接部16には、一階廊下部25と二階廊下部26とがそれぞれ住宅本体部15から延出している。この場合、これら各廊下部25,26は住宅本体部15と隣接部16とに跨がって延びている。
【0037】
隣接部16において一階住戸21及び二階住戸22と住戸並び方向Xに隣接する部分には階段室35が設けられている。階段室35は、一階部分11と二階部分12とに跨がる吹き抜け空間となっており、その階段室35には一階廊下部25と二階廊下部26とを連絡する共用階段36が設けられている。共用階段36は廻り階段よりなる。この共用階段36と一階廊下部25と二階廊下部26とがそれぞれ集合住宅10の共用部となっている。
【0038】
階段室35は各住戸21,22と住戸並び方向Xに横並びで配置されている。階段室35は一階住戸21及び二階住戸22と仕切壁37により仕切られている。詳しくは、各一階住戸21のうち端に位置して階段室35と隣接する一階住戸21(以下、21Aとする)と、各二階住戸22のうち端に位置して階段室35と隣接する二階住戸22(以下、22Aとする)とが仕切壁37により階段室35と仕切られている。
【0039】
隣接部16の一階部分11には共用出入口38が形成されている。共用出入口38は、集合住宅10への出入口となっており、一階廊下部25に通じている。共用出入口38には、当該出入口38を開閉する共用扉39が設けられている。
【0040】
集合住宅10の外周部には外壁41が設けられている。外壁41は、各住戸21,22と各廊下部25,26と階段室35とを囲むようにして設けられている。住戸並び直交方向Yにおいて各住戸21,22及び各廊下部25,26を挟んだ両側にはそれぞれ、外壁41として一対の外壁41a,41bが設けられている。これらの外壁41b,41bは、いずれも住戸並び方向Xに沿って延びている。これら各外壁41b,41bのうち各廊下部25,26を屋外と仕切る外壁41aには複数の開口部42が形成されている。これらの開口部42により各廊下部25,26が屋外に開放されている。なお、外壁41aにおいて開口部42の下方部分は各廊下部25,26の腰壁43となっている。
【0041】
また、一階住戸21A及び二階住戸22Aは外壁41cにより屋外と仕切られている。この外壁41cは住戸並び直交方向Yに延びており、同方向Yにおいて仕切壁37と連続している。
【0042】
屋根部13は切り妻式の屋根として構成されている。屋根部13は、住宅本体部15に設けられた屋根部13aと、隣接部16に設けられた屋根部13bとを有する。これら各屋根部13a,13bはいずれも切り妻状の屋根となっており、互いに棟違いとなっている。これら各屋根部13a,13bの棟18a,18bはいずれも住戸並び方向Xに延びている。なお、
図2では、屋根部13の外縁を仮想線(二点鎖線)で示している(
図3も同様)。
【0043】
屋根部13には、屋根裏空間が設けられている。以下、屋根部13の屋根裏構造について
図3及び
図4に基づいて説明する。
図3は、屋根部13の内部構成を示す概略横断面図であり、
図1(a)のB−B線断面図に相当する。
図4は集合住宅10の内部構成を示す概略縦断面図であり、(a)が
図1(c)のC−C線断面図、(b)が
図1(c)のD−D線断面図である。
【0044】
図3、
図4(a)及び(b)に示すように、各二階住戸22はそれぞれ二階部分12に設けられた居住空間45と、屋根部13に設けられた屋根裏空間46とを有している。居住空間45と屋根裏空間46とは上下に隣接して配置されており、天井部47により互いに仕切られている。なお、天井部47は、居住空間45の天井面を形成する天井面材を含んで構成されている。
【0045】
界壁23は、二階部分12と屋根部13とに跨がって上下に延びており、二階部分12に設けられた居住界壁48と、屋根部13に設けられた屋根裏界壁49とを有している。居住界壁48により隣り合う二階住戸22の居住空間45同士が仕切られており、屋根裏界壁49により隣り合う二階住戸22の屋根裏空間46同士が仕切られている。これらの界壁48,49により、隣り合う二階住戸22の居住空間45同士の間及び屋根裏空間46同士の間の耐火性能が確保されている。なお、以下の説明では、二階住戸22の屋根裏空間46を住戸屋根裏空間46という。
【0046】
屋根部13には、二階廊下部26の上方に廊下屋根裏空間51が設けられている。廊下屋根裏空間51は、天井部52によって二階廊下部26と上下に仕切られている。廊下屋根裏空間51は、二階廊下部26(住戸並び方向X)に沿って延びており、各住戸屋根裏空間46とそれぞれ隣接している。
【0047】
廊下屋根裏空間51と各住戸屋根裏空間46との間には、耐火性能を有する屋根裏隔壁53が設けられている。屋根裏隔壁53は、廊下屋根裏空間51と各住戸屋根裏空間46との境界部(住戸並び方向X)に沿って延びており、当該境界部全域に亘って配設されている。この屋根裏隔壁53により廊下屋根裏空間51と各住戸屋根裏空間46とが互いに仕切られている。屋根裏隔壁53は、仕切壁27の上方に配設され、その仕切壁27と上下に並んで配置されている。また、屋根裏隔壁53は、各屋根裏界壁49に跨がって設けられており、それら各屋根裏界壁49とそれぞれ連続している。なお、屋根裏隔壁53が第1耐火隔壁に相当する。
【0048】
屋根部13(詳しくは屋根部13b)には、階段室35の上方に階段屋根裏空間54が設けられている。階段屋根裏空間54は、天井部55によって階段室35と上下に仕切られている。階段屋根裏空間54は、各住戸屋根裏空間46と住戸並び方向Xに横並びで配置されており、端の二階住戸22Aの住戸屋根裏空間46(以下、46Aとする)と同方向Xに隣接している。
【0049】
住戸屋根裏空間46Aと階段屋根裏空間54との間には耐火性能を有する屋根裏隔壁56が設けられている。屋根裏隔壁56は、住戸屋根裏空間46Aと階段屋根裏空間54との境界部(住戸並び直交方向Y)に沿って延びており、当該境界部全域に亘って配設されている。この屋根裏隔壁56により住戸屋根裏空間46Aと階段屋根裏空間54とが互いに仕切られている。屋根裏隔壁56は仕切壁37の上方に配設され、その仕切壁37と上下に並んで配置されている。また、屋根裏隔壁56は、屋根裏隔壁53と連続して設けられており、平面視においてこれら各隔壁53,56はL字状をなして配置されている。なお、屋根裏隔壁56が第2耐火隔壁に相当する。
【0050】
住戸屋根裏空間46Aは、屋根部13aの妻壁58により屋外と仕切られている。妻壁58は、屋根部13aにおいて屋根部13bにより覆われていない妻面部に設けられている。妻壁58は、住戸並び直交方向Yに屋根裏隔壁56と連続して設けられている。妻壁58は、外壁41cの上方に設けられ、外壁41cと上下に並んで配置されている。また、屋根部13aには、各住戸屋根裏空間46を挟んで妻壁58とは反対側に妻壁59が設けられている。
【0051】
屋根部13には、各屋根裏界壁49上、各屋根裏隔壁53,56上及び各妻壁58,59上に跨がって屋根材57が敷設されている。屋根材57は、野地板と野地板上に葺設された屋根葺き材とを有している(共に図示略)。この屋根材57により屋根裏空間46,51,54と屋外とが仕切られている。
【0052】
続いて、屋根裏界壁49及び各屋根裏隔壁53,56の構成について
図5乃至
図8に基づいて詳しく説明する。
図5は、屋根裏界壁49及び各屋根裏隔壁53,56の構成を示す横断面図である。
図6は屋根裏界壁49を構成する界壁パネル61を示す正面図である。
図7は屋根裏隔壁53を構成する隔壁パネル71を示す正面図である。
図8は屋根裏隔壁56を構成する妻壁パネル81を示しており、(a)が同パネル81を示す正面図であり、(b)が背面図である。
【0053】
図5及び
図6に示すように、屋根裏界壁49は、界壁パネル61により構成されている。界壁パネル61は、二等辺三角形の一部が切除された形状を有しており、より詳しくは二等辺三角形の一端側が上下方向の断面により切除された形状を有している。界壁パネル61は、界壁フレーム62と、その界壁フレーム62を挟んで両側にそれぞれ設けられた石膏ボード63,64とを備える。
【0054】
界壁フレーム62は、一対の斜材66a,66b(ランナ)と、横材67(ランナ)と、複数の縦材68(スタッド)とを備える。一対の斜材66a,66bは互いに長さが相違しており、界壁フレーム62の上端部からそれぞれ屋根(屋根材57)の傾斜方向に沿って異なる方向に延びている。これら各斜材66a,66bのうち長い側の斜材66aの下端部には横材67の一端部が連結されている。横材67は、各斜材66a,66bの真下において横方向に延びており、その他端部が短い側の斜材66bの下端部の真下に位置している。各斜材66a,66b及び横材67はいずれも溝形鋼よりなり、互いの溝開口を上下に向き合わせた状態で配置されている。
【0055】
各縦材68はそれぞれ、斜材66a,66bと横材67との間に所定間隔で設けられており、それら斜材66a,66b及び横材67を上下に繋いでいる。各縦材68はいずれもリップ溝形鋼(いわゆるC形鋼)よりなり、その溝開口を横材67の長手方向に向けて配置されている。これら各縦材68は、その上端部が斜材66a,66bの溝内に挿し入れられた状態で当該斜材66a,66bにビス等で固定され、その下端部が横材67の溝内に挿し入れられた状態で当該横材67にビス等で固定されている。
【0056】
各縦材68のうち一の縦材68aは、斜材66bの下端部と横材67の端部との間に配設され、これら斜材66b及び横材67を上下に繋いでいる。縦材68aは、その溝開口をフレーム内側に向けて配置され、換言するとそのウェブをフレーム外側に向けて配置されている。本界壁フレーム62では、この縦材68aと各斜材66a,66bと横材67とにより外枠部が構成されている。また、界壁フレーム62は、その横材67が居住界壁48の上方に載置された状態で設置されており、その設置状態で横材67が居住界壁48の上端部にビス等で固定されている。
【0057】
界壁フレーム62を挟んだ両側にはそれぞれ石膏ボード63,64が二枚重ねされて設けられている。これら各石膏ボード63,64は優れた耐火性能を有している。各石膏ボード63,64はいずれも、界壁フレーム62と同じ大きさでかつ同じ形状を有して形成されており、その厚みがいずれも同じとなっている。各石膏ボード63,64は、界壁フレーム62に対してビス等で固定されている。なお、石膏ボード63,64は、左右方向(横方向)に複数に分割されていてもよい。
【0058】
次に、屋根裏隔壁53について説明する。
【0059】
図5及び
図7に示すように、屋根裏隔壁53は、隔壁パネル71により構成されている。隔壁パネル71は、横長の矩形形状を有している。隔壁パネル71は、隔壁フレーム72と、その隔壁フレーム72を挟んだ両側にそれぞれ設けられた石膏ボード73,74とを備える。隔壁フレーム72は、上下一対の横材76,77(ランナ)と、それら各横材76,77の間を上下に繋ぐ複数の縦材78(スタッド)とを備える。なお、隔壁フレーム72が第1隔壁フレームに相当する。
【0060】
各横材76,77はいずれも溝形鋼よりなり、互いの溝開口を上下に向き合わせた状態で配置されている。また、縦材78はリップ溝形鋼(いわゆるC形鋼)よりなる。各縦材78はそれぞれ、その溝開口をランナ76,77の長手方向に向けた状態で所定の間隔で配置されている。詳しくは、各縦材78のうち両端に位置する各縦材78aについては溝開口をフレーム内側に向けた状態で配置されている。これら各縦材78はそれぞれ、その上端部が上側の横材76の溝内に挿し入れられた状態で当該横材76にビス等で固定され、その下端部が下側の横材77の溝内に挿し入れられた状態で当該横材77にビス等で固定されている。
【0061】
隔壁フレーム72は、仕切壁27上において住戸並び方向Xに延びる向きで設置されている。隔壁フレーム72は、その横材77が仕切壁27上に載置されており、その載置状態で横材77が仕切壁27の上端部にビス等で固定されている。かかる隔壁フレーム72の設置状態において、各縦材78のうち2つの縦材78はそれぞれ隔壁フレーム72の長手方向において各屋根裏界壁49(界壁パネル61)と同位置に配置されている。これら2つの縦材78はそれぞれ各界壁パネル61の界壁フレーム62(詳しくはその縦材68a)とビス等で連結されている。これにより、隔壁フレーム72が各界壁フレーム62とそれぞれ連結されており、ひいては隔壁パネル71(屋根裏隔壁53)が各界壁パネル61(各屋根裏界壁49)とそれぞれ連結されている。
【0062】
隔壁フレーム72の住戸屋根裏空間46側には、石膏ボード73が2枚重ねされて設けられている。石膏ボード73は優れた耐火性能を有しており、その厚みが界壁パネル61の石膏ボード63,64と同じ厚みとなっている。石膏ボード73は各屋根裏界壁49(界壁パネル61)により分断されて設けられており、隣り合う屋根裏界壁49及び妻壁59の間、隣り合う屋根裏界壁49の間及び、隣り合う屋根裏界壁49及び屋根裏隔壁56の間にそれぞれ配置されている。各石膏ボード73はそれぞれ矩形板状をなしており、その上下寸法が隔壁フレーム72の上下寸法と同じとされ、かつ、その幅寸法が隣り合う壁49,59(49,49)(49,56)同士の間隔と略同じ寸法とされている。各石膏ボード73は隔壁フレーム72に対してビス等で固定されている。なお、各石膏ボード73がそれぞれ住戸側第1耐火板に相当する。また、各石膏ボード73は、左右方向(横方向)に複数に分割されていてもよい。
【0063】
各石膏ボード73はそれぞれ屋根裏界壁49側の端部において屋根裏界壁49の石膏ボード63,64と当接している。具体的には、石膏ボード73の当該端部と石膏ボード63,64の隔壁パネル71側の端部とが互いに当接(連続)しており、それにより石膏ボード73と石膏ボード63,64とが平面視L字状をなして配置されている。これにより、石膏ボード73と石膏ボード63(64)とにより、屋根裏隔壁53と屋根裏界壁49とに跨がる連続した耐火層が形成されている。
【0064】
ここで、石膏ボード73と石膏ボード63,64とが互いの端部同士で当接する当接部分の構成についてより詳しく説明する。石膏ボード63,64において石膏ボード73側の端部では、2枚重ねされた石膏ボード63a,63b(64a,64b)のうち内側の石膏ボード63a(64a)が外側の石膏ボード63b(64b)よりも石膏ボード63,64の厚み分だけ側方に突出している。その結果、当該端部では石膏ボード63a(64a)側に凸部63c(64c)(突出部)が設けられ、石膏ボード63b(64b)側に凹部63d(64d)が設けられている。また、石膏ボード73において石膏ボード63,64側の端部では、2枚重ねされた石膏ボード73a,73bのうち内側の石膏ボード73aが外側の石膏ボード73bよりも石膏ボード73の厚み分だけ側方に突出している。その結果、当該端部では、石膏ボード73a側に凸部73c(突出部)が設けられ、石膏ボード73b側に凹部73dが設けられている。
【0065】
石膏ボード73(73a,73b)は、その凸部73cを石膏ボード63(64)の凹部63d(64d)に入り込ませた状態で石膏ボード63(64)に当接している。この場合、石膏ボード73a(凸部74c)が石膏ボード63a(64a)に当接し、石膏ボード73bが石膏ボード63b(64b)に当接している。かかる構成では、石膏ボード73aと石膏ボード63,64との継ぎ目及び、石膏ボード73bと石膏ボード63,64との継ぎ目が石膏ボード73の幅方向にずれているため、石膏ボード73と石膏ボード63,64との境界部における耐火性能を高めることができる。なお、かかる構成に代えて、石膏ボード63(64)の凸部63c(64c)を石膏ボード73の凹部73dに入り込ませ、その状態で各石膏ボード63(64)、73を当接させるようにしてもよい。
【0066】
隔壁フレーム72の廊下屋根裏空間51側には、石膏ボード74が2枚重ねされて設けられている。石膏ボード74は優れた耐火性能を有しており、その厚みが石膏ボード73の厚みと同じとなっている。石膏ボード74は、隔壁フレーム72と同じ大きさ(縦横寸法)を有する矩形板状をなしており、隔壁フレーム72に対してビス等で固定されている。なお、石膏ボード74が廊下側第1耐火板に相当する。また、石膏ボード74は、左右方向(横方向)に複数に分割されていてもよい。
【0067】
続いて、屋根裏隔壁56について説明する。
【0068】
図5、
図8(a)及び(b)に示すように、屋根裏隔壁56は、妻壁パネル81の一部により構成されている。妻壁パネル81は、二等辺三角形状に形成されており、その斜辺の長さが界壁パネル61の斜辺(詳しくは長い側の斜辺)と同じ長さとなっている。妻壁パネル81は、妻壁フレーム82と、その妻壁フレーム82を挟んで両側にそれぞれ設けられた石膏ボード83,84と、妻壁フレーム82の屋外側に設けられた妻壁下地材85とを備える。
【0069】
なお、
図8(a)では妻壁パネル81を住戸屋根裏空間46A側から見ており、(b)では妻壁パネル81をその反対側(屋外側及び階段屋根裏空間54側)から見ている。また、
図8(b)では便宜上、
図8(a)の妻壁パネル81を上下に反転させた状態で示している。
【0070】
妻壁フレーム82は、フレーム上端部から屋根(屋根材57)の傾斜方向に沿って互いに異なる方向に延びる一対の斜材87(ランナ)と、それら各斜材87の下端部同士を連結する横材88(ランナ)と、斜材87と横材88との間に設けられそれら斜材87及び横材88を上下に繋ぐ複数の縦材89(スタッド)とを備える。斜材87及び横材88はいずれも溝形鋼よりなり、互いの溝開口を上下に向き合わせた状態で配置されている。各縦材89はいずれもリップ溝形鋼(いわゆるC形鋼)よりなり、その溝開口を横材88の長手方向(妻壁パネル81の幅方向)に向けて配置されている。これら各縦材89は、その上端部が斜材87の溝内に挿し入れられた状態で当該斜材87にビス等で固定され、その下端部が横材88の溝内に挿し入れられた状態で当該横材88にビス等で固定されている。
【0071】
なお、妻壁フレーム82が第2隔壁フレームに相当し、斜材87が上枠材に相当し、横材88が下枠材に相当する。
【0072】
各縦材89のうち一部の複数(具体的には3つ)の縦材89は互いに隣接して配置され縦材集合部95を構成している。縦材集合部95を構成する各縦材89はそれぞれ隣接する縦材89と当接して配置されている。
【0073】
妻壁フレーム82は、仕切壁37上及び外壁41c上において住戸並び直交方向Yに延びる向きで設置されている。妻壁フレーム82は、その横材88が仕切壁37上及び外壁41c上に跨がって載置されており、その載置状態で横材88が仕切壁37及び外壁41cの上端部にビス等で固定されている。また、妻壁フレーム82は、さらに横材88がその両端部において各外壁41a,41b上に載置されており、その載置状態で各外壁41a,41bの上端部にビス等で固定されている。
【0074】
かかる妻壁フレーム82の設置状態において、縦材集合部95を構成する各縦材89a〜89cのうち廊下屋根裏空間51寄りに位置する2つの縦材89a,89bは隔壁フレーム72と住戸並び方向Xに横並びで配置されている。これら2つの縦材89a,89bは互いの溝部を向き合わせて(互いのウェブを反対側に向けて)配置され、それぞれが隔壁フレーム72の縦材78(78a)にビス等で固定されている。これにより、妻壁フレーム82が隔壁フレーム72に連結されている。また、縦材89cは、そのウェブを隣接する縦材89bのウェブに向き合わせた状態で配置され、その配置状態で縦材89bにビス等で固定されている。
【0075】
妻壁フレーム82において隔壁フレーム72よりも廊下屋根裏空間51側(外壁41a側)に延出した部分はフレーム延出部91となっている。このフレーム延出部91は二階廊下部26の上方を跨いで外壁41a上に延びており、その外壁41a上にてビス等で固定されている(
図3参照)。
【0076】
妻壁フレーム82の住戸屋根裏空間46A側には、石膏ボード83が2枚重ねされて設けられている。石膏ボード83は優れた耐火性能を有しており、その厚みが隔壁パネル71の石膏ボード73,74と同じ厚みとなっている。石膏ボード83は、妻壁フレーム82において隔壁フレーム72よりも住戸屋根裏空間46A側に設けられている。石膏ボード83は、妻壁フレーム82の斜材87と横材88とに跨がる台形形状をなしており、その隔壁フレーム72側の端面が上下(鉛直)方向に延びる鉛直面となっている。また、石膏ボード83は、住戸屋根裏空間41Aと階段屋根裏空間54との境界部全域に跨がる大きさを有しており、妻壁フレーム82に対してビス等で固定されている。なお、石膏ボード83が住戸側第2耐火板に相当する。
【0077】
石膏ボード83は、屋根裏隔壁53側の端部において屋根裏隔壁53の石膏ボード73と当接している。具体的には、石膏ボード83の当該端部と石膏ボード73の屋根裏隔壁56(妻壁パネル81)側の端部とが互いに当接(連続)しており、それにより石膏ボード83と石膏ボード73とが平面視L字状をなして配置されている。これにより、石膏ボード83と石膏ボード73とにより、両屋根裏隔壁53,56に跨がる連続した耐火層が形成されている。
【0078】
各石膏ボード73,83が互いの端部同士で当接する当接部分の構成についてより詳しく説明すると、石膏ボード73において石膏ボード83側の端部では、2枚重ねされた石膏ボード73a,73bのうち内側の石膏ボード73aが外側の石膏ボード73bよりも石膏ボード73の厚み分だけ側方に突出している。その結果、当該端部では石膏ボード73a側に凸部73c(突出部)が設けられ、石膏ボード73b側に凹部73dが設けられている。また、石膏ボード83において石膏ボード73側の端部では、2枚重ねされた石膏ボード83a,83bのうち内側の石膏ボード83aが外側の石膏ボード83bよりも石膏ボード83の厚み分だけ側方に突出している。その結果、当該端部では、石膏ボード83a側に凸部83c(突出部)が設けられ、石膏ボード83b側に凹部83dが設けられている。
【0079】
石膏ボード73は、その凸部73cを石膏ボード83の凹部83dに入り込ませた状態で石膏ボード83に当接している。この場合、石膏ボード73a(凸部74c)が石膏ボード83aに当接し、石膏ボード73bが石膏ボード83bに当接している。かかる構成では、石膏ボード73aと石膏ボード83との継ぎ目及び、石膏ボード73bと石膏ボード83との継ぎ目が石膏ボード73の幅方向にずれているため、石膏ボード73と石膏ボード83との境界部における耐火性能を高めることができる。なお、かかる構成に代えて、石膏ボード83の凸部83cを石膏ボード73の凹部73dに入り込ませ、その状態で各石膏ボード73,83を当接させるようにしてもよい。
【0080】
妻壁フレーム82の階段屋根裏空間54側には、石膏ボード84と妻壁下地材85とが隣接して設けられている。石膏ボード84と妻壁下地材85とは、妻壁フレーム82においてフレーム延出部91を除くフレーム領域全体に跨がるように配設されている。そして、石膏ボード84と妻壁下地材85とは、屋根部13bの屋根面に沿った境界線92で分断されており、その境界線92よりもフレーム延出部91側に石膏ボード84が配設され、フレーム延出部91側とは反対側に妻壁下地材85が配設されている。
【0081】
石膏ボード84は、妻壁フレーム82において2枚重ねされて設けられている。石膏ボード84は優れた耐火性能を有しており、その厚みが石膏ボード83の厚みと同じとなっている。石膏ボード84は、住戸屋根裏空間41Aと階段屋根裏空間54との境界部全域に跨がる大きさを有しており、妻壁フレーム82に対してビス等で固定されている。なお、石膏ボード84が階段側第2耐火板に相当する。
【0082】
石膏ボード84は、そのフレーム延出部91(廊下屋根裏空間51)側の端面が上下方向に延びる鉛直面となっており、その端面が隔壁パネル71の石膏ボード74(74b)の外側面と同一平面上に位置している。この場合、石膏ボード84と石膏ボード74とは妻壁フレーム82のフレーム延出部91によって互いに隔てられている。なお、各石膏ボード83,84と、妻壁フレーム82において石膏ボード83,84を支持している部分とにより屋根裏隔壁56が構成されている。
【0083】
妻壁下地材85は、構造用合板よりなる。妻壁下地材85は、妻壁パネル81において屋外側から屋根部13bにより覆われていない領域に配設されている。妻壁下地材85の屋外側面には、妻壁58の妻面(屋外面)を形成する妻壁材(図示略)が取り付けられている。なお、妻壁58は、妻壁材と、妻壁下地材85と、妻壁フレーム82において妻壁下地材85を支持する部分とにより構成されている。
【0084】
妻壁フレーム82(詳しくはフレーム延出部91)の枠内には、石膏ボード84と石膏ボード74とを繋ぐ繋ぎ板93が設けられている。以下、この繋ぎ板93に関する構成について
図9及び
図10を用いながら説明する。
図9は、繋ぎ板93周辺の構成を示す斜視図である。
図10は、(a)が繋ぎ板93の下端部が横材88の溝内に入り込んだ状態を示す斜視図であり、(b)が繋ぎ板93の上下の端部が斜材87及び横材88の溝内に入り込んだ状態を示す縦断面図である。
【0085】
図9、
図10(a)及び(b)に示すように、繋ぎ板93は縦長板状に形成された不燃材よりなり、例えばスラグセメントパーライト板よりなる。繋ぎ板93は、その厚みが2枚の石膏ボード74a,74bの厚みと略同じとなっている。繋ぎ板93は、妻壁フレーム82における横材88と斜材87との間に配設されており、それら横材88及び斜材87に跨がって上下に延びている。また、繋ぎ板93は、その板面を縦材89aのウェブの外側面に重ね合わせた状態で当該縦材89aに固定されている。この場合、繋ぎ板93における両側の板面はそれぞれ2枚重ねの石膏ボード74a,74bの両板面(詳しくは、石膏ボード74aの内側面及び石膏ボード74bの外側面)と面一とされている。なお、繋ぎ板93が繋ぎ耐火板に相当する。
【0086】
繋ぎ板93は、その上端部が斜材87の溝内に挿し入れられて挿し入れ部93aとなっており、その下端部が横材88の溝内に挿し入れられて挿し入れ部93bとなっている。挿し入れ部93aは、その幅L1が斜材87の溝幅と同じとなっており、幅方向の両端部がそれぞれ溝の内側面に当接している。また、挿し入れ部93aの上端部は斜材87の溝底面に当接している。挿し入れ部93bは、その幅L2が横材88の溝幅と同じとなっており、幅方向の両端部がそれぞれ溝の内側面に当接している。また、挿し入れ部93bの下端部は横材88の溝底面に当接している。なお、本実施形態では、斜材87と横材88とが同じ横断面を有しており、そのためL1とL2とが同じ寸法となっている。
【0087】
ここで、斜材87の各フランジにはそれぞれ石膏ボード74の端面と石膏ボード84(84a)の内側面とが当接しており、また横材88の各フランジにもそれぞれ石膏ボード74の端面と石膏ボード84(84a)の内側面とが当接している。そのため、斜材87の設置高さにおいては挿し入れ部93aと斜材87の両フランジとを介して各石膏ボード74,84が連続しており、また横材88の設置高さにおいては挿し入れ部93bと横材88の両フランジとを介して各石膏ボード74,84が連続している。
【0088】
繋ぎ板93において各挿し入れ部93a,93bの間は中間部93cとなっている。中間部93cは、その幅L3が各挿し入れ部93a,93bの幅L1,L2よりも大きくなっている。詳しくは、中間部93cの幅L3は、斜材87及び横材88の幅と同じとなっている。中間部93cは、その幅方向の両端部がそれぞれ各石膏ボード73,84に対して当接している。これにより、斜材87と横材88との間の高さ範囲においては、中間部93cを介して各石膏ボード74,84が互いに連続している。
【0089】
以上のように、各石膏ボード74,84は繋ぎ板93(挿し入れ部93a,93b,中間部93c)を介して互いに連続している。これにより、各石膏ボード74,84と繋ぎ板93とにより、両屋根裏隔壁53,56に跨がる連続した耐火層が形成されている。
【0090】
なお、繋ぎ板93において各挿し入れ部93a,93bと中間部93cとはそれぞれ別体からなり、それぞれ個別に縦材89aに対してビス等で固定されている。但し、各挿し入れ部93a,93bと中間部93cとを一体形成することで繋ぎ板93を構成してもよい。
【0091】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0092】
各住戸屋根裏空間46を廊下屋根裏空間51と仕切る屋根裏隔壁53を設けたため、住戸屋根裏空間46から廊下屋根裏空間51への延焼を抑制することができる。そのため、廊下屋根裏空間51から屋外を通じて屋根裏界壁49を隔てた隣りの廊下屋根裏空間ひいては隣りの住戸屋根裏空間46へ火が回るのを抑制することができる。また、廊下屋根裏空間51から二階廊下部26への延焼も抑制することができるため、二階廊下部26を通じた他の二階住戸22への延焼も抑制することができる。これにより、二階住戸22間の延焼をより確実に抑制することができる。
【0093】
住戸屋根裏空間46を階段屋根裏空間54と仕切る屋根裏隔壁56をさらに設けたため、住戸屋根裏空間46から階段屋根裏空間54への延焼についても抑制することができる。この場合、階段屋根裏空間54からその下方の階段室35への延焼を抑制することができるため、その階段室35から各廊下部25,26を経由して各住戸21,22へ延焼が拡がるのを抑制することができる。これにより、住戸間の延焼をより一層確実に抑制することができる。
【0094】
特に、階段室35は、一階部分11及び二階部分12の各廊下部25,26にそれぞれ通じているため、階段室35に延焼が拡がると、そこから各一階住戸21と各二階住戸22とのそれぞれに延焼が拡がり大規模な火災につながるおそれがある。そのため、この点を鑑みても、階段屋根裏空間54への延焼を抑制することの意義は大きい。
【0095】
屋根裏隔壁53の石膏ボード73(74)と屋根裏隔壁56の石膏ボード84(83)とをそれぞれ連続させて設けた。この場合、これら各石膏ボード73,84(74,83)により各屋根裏隔壁53,56に跨がる連続した耐火層を形成することができるため、隔壁の耐火性能を高めることができる。
【0096】
住戸並び直交方向Yに延びる妻壁フレーム82の一部を隔壁フレーム72よりも延出させてフレーム延出部91とし、そのフレーム延出部91を二階廊下部26上を跨いで外壁41a上に載置し当該外壁41aに対して固定した。この場合、階段室35が各二階住戸22と住戸並び方向Xに並んでいることから、階段室35に通じる二階廊下部26が同方向Xに長くなっている上述の構成にあって、構造区画上望ましい構成とすることができる。
【0097】
また、このようなフレーム延出部91が存在する構成にあって、隔壁フレーム72の住戸屋根裏空間46(46A)側に石膏ボード73を取り付けるとともに、妻壁フレーム82の住戸屋根裏空間46(46A)側に石膏ボード83を取り付けて、それら各石膏ボード73,83を互いの端部同士で当接させて平面視L字状に配置した。この場合、フレーム延出部91を回避しながら各石膏ボード73,83を直に連続させることができるため、フレーム延出部91が存在する構成にあって隔壁の耐火性能を好適に高めることができる。
【0098】
隔壁フレーム72の廊下屋根裏空間51側にさらに石膏ボード74を取り付けるとともに、妻壁フレーム82の階段屋根裏空間54側にさらに石膏ボード84を取り付けた。この場合、これら各石膏ボード74,84は妻壁フレーム82(フレーム延出部91)により互いに隔てられている。そして、かかる構成にあって、妻壁フレーム82の枠内に、これら各石膏ボード74,84を繋ぐ繋ぎ板93を設け、その繋ぎ板93を介して各石膏ボード74,84を連続させるようにした。この場合、隔壁フレーム72,82を挟んだ両側にてそれぞれ各屋根裏隔壁53,56に跨がる連続した耐火層を形成することができる。そのため、隔壁の耐火性能をより一層高めることができる。
【0099】
繋ぎ板93を、妻壁フレーム82において斜材87と横材88とを上下に連結する縦材89に対して固定したため、妻壁フレーム82に繋ぎ板93を固定するための下地材を別途設ける場合と比べて構成の簡素化を図ることができる。また、上下に延びる縦材89に繋ぎ板93を固定したことで、縦長状の繋ぎ板93であっても安定した状態で固定することができる。
【0100】
隔壁フレーム72を妻壁フレーム82の縦材89aに対して連結し、その縦材89aに対して繋ぎ板93を固定した。この場合、隔壁フレーム72を連結するための縦材89aを利用して繋ぎ板93を固定しているため、縦材89aの有効利用を図ることができる。
【0101】
繋ぎ板93の上下の端部をそれぞれ溝形鋼(不燃材)からなる斜材87及び横材88の溝内に挿し入れて挿し入れ部93a,93bとし、それら挿し入れ部93a,93bの幅方向の両端部をそれぞれ溝の内側面に当接させた。この場合、斜材87の設置高さにおいては挿し入れ部93aと斜材87(各フランジ)とを介して各石膏ボード74,84を連続させることができ、また横材88の設置高さにおいては挿し入れ部93bと横材88(各フランジ)とを介して各石膏ボード74,84を連続させることができる。
【0102】
また、繋ぎ板93において各挿し入れ部93a,93bの間の中間部93cでは、その幅を挿し入れ部93a,93bよりも大きくし、その幅方向の両端部をそれぞれ各石膏ボード74,84に当接させた。この場合、斜材87と横材88との間の高さ範囲においては中間部93cを介して各石膏ボード74,84を連続させることができる。よって、以上より、横材88から斜材87までの上下方向全域に亘って各石膏ボード74,84を連続させることができるため、隔壁の耐火性能をさらに高めることができる。
【0103】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0104】
(1)上記実施形態では、屋根裏隔壁53(隔壁パネル71)において隔壁フレーム72を挟んだ両側にそれぞれ石膏ボード73,74を設けたが、これら各石膏ボード73,74のうちいずれか一方だけを設けるようにしてもよい。また、屋根裏隔壁56(妻壁パネル81)において妻壁フレーム82を挟んだ両側にそれぞれ石膏ボード83,84を設けたが、これら各石膏ボード83,84のうちいずれか一方だけを設けるようにしてもよい。例えば、各屋根裏隔壁53,56において隔壁フレーム72及び妻壁フレーム82の住戸屋根裏空間46側にのみ石膏ボード73,83を設けることが考えられる。
【0105】
(2)上記実施形態では、繋ぎ板93において中間部93cの幅L3を挿し入れ部93a,93bの幅L1,L2よりも大きくしたが、中間部93cの幅L3を挿し入れ部93a,93bの幅L1,L2と同じ幅としてもよい。この場合、繋ぎ板93の構成を簡素化することができる。また、繋ぎ板93に挿し入れ部93a,93bを設けないようにしてもよい。
【0106】
(3)上記実施形態では、繋ぎ板93を妻壁フレーム82の縦材89aに対して固定したが、これを変更してもよい。例えば、妻壁フレーム82における斜材87及び横材88にそれぞれ固定金具を設け、それら各固定金具に対して繋ぎ板93を固定することが考えられる。
【0107】
(4)上記実施形態では、妻壁フレーム82の一部を隔壁フレーム72よりも延出させてフレーム延出部91としたが、妻壁フレーム82がかかるフレーム延出部91を有しない構成としてもよい。その場合、例えば妻壁フレーム82を界壁フレーム62と同様の構成とすることが可能となる。妻壁フレーム82がフレーム延出部91を有しない構成であれば、各屋根裏隔壁53,56の石膏ボード74,84がフレーム延出部91により隔てられることがないため、これら各石膏ボード74,84を直に連続させることができる。そのため、繋ぎ板93を不要とすることができる。
【0108】
(5)上記実施形態では、屋根裏界壁49及び屋根裏隔壁53,56の耐火板として石膏ボードを用いたが、これに代えて、セメントボード等他の耐火板を用いてもよい。
【0109】
(6)上記実施形態では、屋根裏隔壁として、2つの屋根裏隔壁53,56を設けたが、屋根裏隔壁56については設けないようにしてもよい。但し、階段屋根裏空間54側への延焼を抑制する上では、屋根裏隔壁56を設けるのが望ましい。
【0110】
(7)上記実施形態では、二階建ての集合住宅10の屋根裏に本発明の屋根裏構造を適用したが、一階建て又は三階建て以上の集合住宅の屋根裏に本発明の屋根裏構造を適用してもよい。また、上記実施形態では、集合住宅10としてアパートを想定し、そのアパートに本発明を適用したが、マンション等、アパート以外の集合住宅に本発明を適用してもよい。