(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物(A)とポリアミド系樹脂(B)を溶融混練し、ストランド状に押出し水冷で冷却した後に、表面温度100〜130℃でストランドカットすることによって得られたペレットを、30分以内に表面温度60℃以下に冷却することを特徴とするエチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物組成物ペレットの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の構成につき詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものであり、これらの内容に特定されるものではない。
【0016】
本発明のEVOH樹脂組成物の製造方法は、EVOH樹脂(A)とポリアミド系樹脂(B)を含有する樹脂組成物である。
【0017】
まず、本発明において用いられるEVOH樹脂について説明する。
<EVOH樹脂>
本発明に用いられるEVOH樹脂(A)は、通常、エチレンとビニルエステル系モノマーとの共重合体(エチレン−ビニルエステル共重合体)をケン化させることにより得られる樹脂であり、非水溶性の熱可塑性樹脂である。重合法も公知の任意の重合法、例えば、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合を用いて行うことができるが、一般的にはメタノールを溶媒とする溶液重合が用いられる。得られたエチレン−ビニルエステル共重合体のケン化も公知の方法で行い得る。
このようにして製造されるEVOH樹脂は、エチレン由来の構造単位とビニルアルコール構造単位を主とし、ケン化されずに残存した若干量のビニルエステル構造単位を含む。
【0018】
上記ビニルエステル系モノマーとしては、市場入手性や製造時の不純物処理効率がよい点から、代表的には酢酸ビニルが用いられる。他のビニルエステル系モノマーとしては、例えばギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等の脂肪族ビニルエステル、安息香酸ビニル等の芳香族ビニルエステル等が挙げられ、通常炭素数3〜20、好ましくは炭素数4〜10、特に好ましくは炭素数4〜7の脂肪族ビニルエステルを用いることができる。これらは通常単独で用いるが、必要に応じて複数種を同時に用いてもよい。
【0019】
EVOH樹脂におけるエチレン構造単位の含有量は、ISO14663に基づいて測定した値で、通常20〜60モル%、好ましくは25〜55モル%、特に好ましくは29〜48モル%である。かかる含有量が低すぎる場合は、高湿下のガスバリア性、溶融成形性が低下する傾向があり、逆に高すぎる場合は、ガスバリア性が不足する傾向がある。
【0020】
EVOH樹脂におけるビニルエステル成分のケン化度は、JIS K6726(ただし、EVOH樹脂は水/メタノール溶媒に均一に溶解した溶液にて)に基づいて測定した値で、通常90〜100モル%、好ましくは95〜100モル%、特に好ましくは99〜100モル%である。かかるケン化度が低すぎる場合にはガスバリア性、熱安定性、耐湿性等が低下する傾向がある。
【0021】
また、該EVOH樹脂のメルトフローレート(MFR)(210℃、荷重2,160g)は、通常0.5〜100g/10分であり、好ましくは1〜50g/10分、特に好ましくは3〜35g/10分である。かかるMFRが大きすぎる場合には、製膜性が不安定となる傾向があり、小さすぎる場合には粘度が高くなり過ぎて溶融押出しが困難となる傾向がある。
【0022】
本発明に用いられるEVOH樹脂には、エチレン構造単位、ビニルアルコール構造単位(未ケン化のビニルエステル構造単位を含む)の他、以下に示すコモノマーに由来する構造単位が、さらに含まれていてもよい。前記コモノマーとしては、プロピレン、イソブテン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のα−オレフィン;3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、3−ブテン−1、2−ジオール等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類やそのエステル化物、アシル化物などのヒドロキシ基含有α−オレフィン誘導体;不飽和カルボン酸又はその塩,部分アルキルエステル,完全アルキルエステル,ニトリル,アミド若しくは無水物;不飽和スルホン酸又はその塩;ビニルシラン化合物;塩化ビニル;スチレン等が挙げられる。
【0023】
さらに、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化、オキシアルキレン化等の「後変性」されたEVOH系樹脂を用いることもできる。
【0024】
特に、ヒドロキシ基含有α−オレフィン類を共重合したEVOH樹脂は、二次成形性が良好になる点で好ましく、中でも1,2−ジオールを側鎖に有するEVOH樹脂が好ましい。
かかる1,2−ジオールを側鎖に有するEVOH樹脂は、側鎖に1,2−ジオール構造単位を含むものである。かかる1,2−ジオール構造単位とは、具体的には下記構造単位(1)で示される構造単位である。
【0026】
[一般式(1)において、R1、R2、及びR3はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示し、Xは単結合または結合鎖を示し、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示す。]
【0027】
上記一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位における有機基としては、特に限定されず、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の飽和炭化水素基、フェニル基、ベンジル基等の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、水酸基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、スルホン酸基等が挙げられる。
R1〜R3は通常炭素数1〜30、特には炭素数1〜15、さらには炭素数1〜4の飽和炭化水素基または水素原子が好ましく、水素原子が最も好ましい。R4〜R6は通常炭素数1〜30、特には炭素数1〜15、さらには炭素数1〜4のアルキル基または水素原子が好ましく、水素原子が最も好ましい。特に、R1〜R6がすべて水素であるものが最も好ましい。
【0028】
また、一般式(1)で表わされる構造単位中のXは、代表的には単結合である。
なお、本発明の効果を阻害しない範囲であれば結合鎖であってもよい。かかる結合鎖としては特に限定されないが、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、フェニレン、ナフチレン等の炭化水素鎖(これらの炭化水素はフッ素、塩素、臭素等のハロゲン等で置換されていても良い)の他、−O−、−(CH
2O)m−、−(OCH
2)m−、−(CH
2O)mCH
2−等のエーテル結合部位を含む構造、−CO−、−COCO−、−CO(CH
2)mCO−、−CO(C
6H
4)CO−等のカルボニル基を含む構造、−S−、−CS−、−SO−、−SO
2−等の硫黄原子を含む構造、−NR−、−CONR−、−NRCO−、−CSNR−、−NRCS−、−NRNR−等の窒素原子を含む構造、−HPO
4−等のリン原子を含む構造などのヘテロ原子を含む構造、−Si(OR)
2−、−OSi(OR)
2−、−OSi(OR)2O−等の珪素原子を含む構造、−Ti(OR)
2−、−OTi(OR)
2−、−OTi(OR)
2O−等のチタン原子を含む構造、−Al(OR)−、−OAl(OR)−、−OAl(OR)O−等のアルミニウム原子を含む構造などの金属原子を含む構造等が挙げられる。なお、Rは各々独立して任意の置換基であり、水素原子、アルキル基が好ましく、またmは自然数であり、通常1〜30、好ましくは1〜15、さらに好ましくは1〜10である。その中でも製造時あるいは使用時の安定性の点で−CH2OCH2−、および炭素数1〜10の炭化水素鎖が好ましく、さらには炭素数1〜6の炭化水素鎖、特には炭素数1であることが好ましい。
【0029】
上記一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位における最も好ましい構造は、R1〜R6がすべて水素原子であり、Xが単結合であるものである。すなわち、下記構造式(1a)で示される構造単位が最も好ましい。
【0031】
特に、上記一般式(1)で表わされる1,2−ジオール構造単位を含有する場合、その含有量は通常0.1〜20モル%、さらには0.1〜15モル%、特には0.1〜10モル%のものが好ましい。
【0032】
また、本発明で使用されるEVOH樹脂は、異なる他のEVOH樹脂との混合物であってもよく、かかる他のEVOH樹脂としては、一般式(1)で表わされる1,2−ジオール構造単位の含有量が異なるもの、ケン化度が異なるもの、重合度が異なるもの、他の共重合成分が異なるものなどを挙げることができる。
【0033】
<ポリアミド系樹脂>
本発明に用いられるポリアミド系樹脂(B) としては、具体的にポリカプラミド( ナイロン6) 、ポリ− ω − アミノヘプタン酸( ナイロン7) 、ポリ− ω − アミノノナン酸( ナイロン9) 、ポリウンデカンアミド( ナイロン11) 、ポリラウリルラクタム( ナイロン12) 、ポリエチレンジアミンアジパミド( ナイロン26) 、ポリテトラメチレンアジパミド( ナイロン46) 、ポリヘキサメチレンアジパミド( ナイロン66) 、ポリヘキサメチレンセバカミド( ナイロン610) 、ポリヘキサメチレンドデカミド( ナイロン612) 、ポリオクタメチレンアジパミド( ナイロン86) 、ポリデカメチレンアジパミド( ナイロン108) 、カプロラクタム/ ラウリルラクタム共重合体( ナイロン6/12) 、カプロラクタム/ ω − アミノノナン酸共重合体( ナイロン6/9) 、カプロラクタム/ ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体( ナイロン6/66) 、ラウリルラクタム/ ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体( ナイロン12/66) 、エチレンジアミンアジパミド/ ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体( ナイロン26/ 66) 、カプロラクタム/ ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体( ナイロン66/610) 、エチレンアンモニウムアジペート/ ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体( ナイロン6/66/610) 、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド、ヘキサメチレンイソフタルアミド/ テレフタルアミド共重合体あるいはこれらのポリアミド系樹脂をメチレンベンジルアミン、メタキシレンジアミン等の芳香族アミンで変性したものやメタキシリレンジアンモニウムアジペート等が挙げられるが、本発明では、カルボキシル基やアミノ基で末端が調整されたポリアミド系樹脂が好適に用いられる。
【0034】
かかる末端が調整されたポリアミド系樹脂としては、カプロアミドを主たる構成単位とし、末端調整剤を使用して末端カルボキシル基含有量[ X ] および末端アミノ基含有量[Y ] が、{ ( 1 0 0 × [ Y ] ) / ( [ X ] + [ Y ] ) } ≧ 5 ( ただし、[ X ] , [ Y ] の単位はμ e q/ g ・ポリマー) を満足するように調整したポリアミド系樹脂が用いられる。
【0035】
上記における末端調節剤としては、炭素数2〜23のカルボン酸、炭素数2〜20のジアミンが用いられる。ここで炭素数2〜23のモノカルボン酸としては、脂肪族モノカルボン酸( 酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、カプリン酸、ペラルゴン酸、ウンデカン酸、ラウリル酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ミリトレイン酸、パルメチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキン酸、ベヘン酸等) 、脂環式モノカルボン酸(シクロヘキサンカルボン酸、メチルシクロヘキサンカルボン酸等)、芳香族モノカルボン酸(安息香酸、トルイン酸、エチル安息香酸、フェニル酢酸等)などがあげられる。
【0036】
炭素数2〜20のジアミンとしては、脂肪族ジアミン( エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、ヘキサデカメチレンジアミン、2,2,4−( または2,4 ,4−)トリメチルヘキサメチレンジアミン)等)、脂環式ジアミン(シクロヘキサンジアミン、ビス−(4,4′−アミノシクロヘキシル)メタン等)、芳香族ジアミン(キシリレンジアミン等)などが挙げられる。
【0037】
また、上記のモノカルボン酸のほかに、脂肪族ジカルボン酸(マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、テトラデカンジオン酸、ヘキサデカンジオン酸、ヘキサデセンジオン酸、オクタデカンジオン酸、オクタデセンジオン酸、エイコサジオン酸、エイコセンジオン酸、ドコサンジオン酸、2,2 ,4−トリメチルアジピン酸等) 、脂環式ジカルボン酸(1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸( テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、キシリレンジカルボン酸等)などのジカルボン酸類を使用したり併用したりすることもできる。
【0038】
ポリアミドの重合度は、特に限定はされないが、JISK6810に準じて測定される相対粘度で1.7〜5.0、殊に2.0〜5.0であることが好ましい。
【0039】
ポリアミドの重合方法としては、溶融重合、界面重合、溶液重合、塊状重合、固相重合、あるいはこれらを組合わせた方法を採用することができる。又、ポリアミド原料としては、より良好な耐ボイル性及び耐レトルト性が得られるという点よりε − カプロラクタムが特に好ましい。
【0040】
EVOH樹脂(A)とポリアミド系樹脂(B)の含有割合は、特に限定されないが、EVOH樹脂(A)100重量部に対して、ポリアミド系樹脂(B)を1〜40重量部(さらには5〜30重量部、特には10〜20重量部)含有させることが好ましく、ポリアミド系樹脂(B)の含有量が少なすぎる場合はレトルト処理後の外観性や耐デラミネーションが低下する傾向にあり、逆にポリアミド系樹脂(B)の含有量が多すぎる場合はロングラン加工性が低下する傾向にあり好ましくない。
【0041】
本発明は、EVOH樹脂(A)とポリアミド系樹脂(B)を溶融混練し、ストランド状に押出した後に、表面温度100〜130℃でストランドカットすることによって得られたペレットを、30分以内に、表面温度60℃以下に冷却することを特徴とするもので、かかるEVOH樹脂組成物ペレットの製造方法について以下に説明する。
【0042】
EVOH樹脂組成物を溶融混練してストランド状に押出すにあたっては、ダイノズルが設けられた単軸押出機、二軸押出機等の溶融押出機にEVOH樹脂組成物を供給して、そのダイノズルからEVOH樹脂組成物を押出せばよい。
【0043】
ダイノズルから押出される際のEVOH樹脂組成物の樹脂温度は、150〜300℃(更には180〜290℃、特に200〜280℃)が好ましく、かかる温度が低すぎると溶融不十分で、未溶融ゲルが多発し、逆に高すぎるとEVOH樹脂が熱劣化し、着色する等して好ましくない。
【0044】
また、押出機のスクリューの長さL(mm)と同スクリューの直径D(mm)の比であるL/Dが、10<(L/D)<100の関係を満足することが好ましく、更に好ましくは、15<(L/D)<70である。特に40<(L/D)<60である。かかる比が低すぎると未溶融ゲルが多発し、逆に高すぎるとEVOH樹脂が熱劣化し、着色する等して好ましくない。
【0045】
ダイノズルの形状は、特に限定されないが、ペレットの形状の点で径1〜10mmの円形ノズルが好ましく、更には2〜7mmの円形ノズルが好ましい。
【0046】
ダイノズルからストランド状に押出し水冷されたEVOH樹脂組成物は、その後切断されてペレット状になるのであるが、かかる水冷温度は、通常0〜40℃である。かかる温度が高すぎると、充分な冷却効果が得られず、また、逆に温度が低すぎると、水が氷となり通常の冷却が出来なくなるとともに、過度の吸湿が起こる傾向がある。
なお、水冷するにあたっては、所定温度の水を入れた水槽中にストランドを通して冷却すればよい。
【0047】
また、ストランド水冷後、ペレットを切断するまでに、ストランドに風を当てたり、吸引して表面の水分を除去してもよい。
【0048】
ストランド切断時のEVOH樹脂組成物の表面温度は、100〜130℃、好ましくは105〜125℃、特に好ましくは、110〜120℃程度に調整することが好ましい。かかる温度が低すぎると、ストランドが硬くなりすぎてカッティング工程でペレットの割れが発生し微粉の発生やペレット外観を損ねてしまい製品に適さなくなる傾向があり、一方で、高すぎるとストランドが柔らかくカッティング不良を起こし製造が難しくなる。
【0049】
かくしてペレット状に切断されるのであるが、かかるペレットの形状は、ペレットの取り扱いの容易性の観点から、円柱状の場合は径が1〜6mm、長さ1〜6mmのもの(更にはそれぞれ2〜5mmのもの)が好ましい。
【0050】
本発明は、比較的高温でストランドを切断することによって得られたEVOH樹脂組成物ペレットを冷却し、ペレットの表面温度を、30分以内に、60℃以下にすることを最大の特徴とする。
【0051】
本発明における冷却後のペレット表面温度は、60℃以下、好ましくは45℃以下、特に好ましくは30℃以下である。かかる温度が高すぎると、蓄熱により黄変化しやすい傾向がある。
【0052】
また、ペレットの冷却時間は、30分以内、好ましくは20分以内、特に好ましくは10分以内、殊に好ましくは5分以内である。かかる時間が長すぎると、蓄熱により黄変化しやすい傾向がある。さらに、かかる時間が長すぎると冷却効率が悪いため生産効率が低下する問題がある。
【0053】
本発明におけるペレットの冷却方式は、特に限定されないが、例えば空冷方式、水冷方式、熱交換器を用いる方式等が挙げられる。
【0054】
空冷方式としては、特に限定されないが、例えば、空気を吹き付けて均一冷却を行う方式、冷風を局所的に当てる方式等が挙げられる。前者としては具体的には株式会社タナカ「ミストラル ASC40−1500」、SOLEX THERMAL SCIENCE「空冷式ペレット冷却装置」、株式会社誠和鉄工所「PCS−500」等が挙げられる。後者としては具体的には日立アプライアンス株式会社「COOL SHOT SR−P60YLTE1」、ダイキン工業株式会社「クリスプ SUAS3MBU」、株式会社スイデン「クールスイファン SS−25EC−1H」、株式会社ナカトミ「スポットクーラー N407−R」、株式会社デンソーセールス「INSPAC 15HF−NKF」、ハイアールジャパンセールス株式会社「床置型 スポットエアコン JA−SP25J」、トラスコ中山株式会社「TS−25DP−1」等が挙げられる。
【0055】
水冷方式としては、特に限定されないが、例えば、水浴を行う方式、散水を行う方式等が挙げられ、公知の技術を用いることができる。
【0056】
熱交換器を用いる方式しては、特に限定されないが、例えば、冷却フィンを用いる方式、冷媒を通水した放冷媒体を用いる方式等が挙げられる。具体的には公知の技術を用いることができるが、一例としてSOLEX THERMAL SCIENCE「熱交換器冷却式ペレット冷却装置」を挙げることができる。
【0057】
水冷方式は、冷却効率に優れるが、冷却後に遠心分離や乾燥等の後工程を必要とするため生産効率が悪く、製造には好ましくない。
熱交換器を用いる方式は、生産効率に優れるが、ペレットが熱交換器に触れながら冷却される方式ゆえ、ペレットの割れが発生し微粉の発生やペレット外観を損ねてしまい製品の品質の維持には適さない。
よって、冷却効率、生産効率、製品の品質の点から、冷却方式として空冷式が望ましい。
【0058】
得られたペレットの含水率は、通常0.5重量%以下、好ましくは0.4重量%以下、特に好ましくは0.3重量%以下である。かかる含水率が高すぎると、成形加工した際に、成形物に発泡が発生しやすく、成形物の外観不良を呈す傾向がある。
【0059】
<その他の樹脂>
本発明に用いられるEVOH樹脂ペレットは、ベース樹脂がEVOH樹脂の組成物であればよい。
よって、本発明のEVOH樹脂組成物には、EVOH樹脂( A )とポリアミド系樹脂( B )以外に、他の熱可塑性樹脂を、EVOH樹脂に対して、通常30重量%以下にて含有してもよい。
【0060】
上記他の熱可塑性樹脂としては、例えば具体的には、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体、ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンの単独又は共重合体、ポリ環状オレフィン、或いはこれらのオレフィンの単独又は共重合体を不飽和カルボン酸又はそのエステルでグラフト変性したもの等の広義のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル、ポリアミド、共重合ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0061】
熱可塑性樹脂は、通常はナフサなど石油由来の原料が用いられているが、シェールガスなど天然ガス由来の原料や、さとうきび、テンサイ、トウモロコシ、ジャガイモ等などに含まれる糖、デンプンなどの成分、または、稲、麦、キビ、草植物等などに含まれるセルロースなどの成分から精製した植物由来の原料を用いてもよい。
【0062】
特に、本発明の樹脂組成物を多層構造体として食品の包装材として用いた場合、該包装材の熱水処理後に、包装材端部にてEVOH樹脂層が溶出することを防止する点で、ポリアミド系樹脂を配合することが好ましい。
【0063】
また、本発明のEVOH樹脂ペレットには、上記成分のほか、必要に応じて、本発明の効果を損なわない限り(例えば、樹脂組成物全体の5重量%未満にて)、エチレングリコール、グリセリン、ヘキサンジオール等の脂肪族多価アルコール等の可塑剤;飽和脂肪族アミド(例えばステアリン酸アミド等)、不飽和脂肪酸アミド(例えばオレイン酸アミド等)、ビス脂肪酸アミド(例えばエチレンビスステアリン酸アミド等)、低分子量ポリオレフィン(例えば分子量500〜10000程度の低分子量ポリエチレン、又は低分子量ポリプロピレン)等の滑剤;熱安定剤;アンチブロッキング剤;酸化防止剤;着色剤;帯電防止剤;紫外線吸収剤;抗菌剤;不溶性無機塩(例えば、ハイドロタルサイト等);充填材(例えば無機フィラー等);結晶核剤(例えばタルク、カオリン等);界面活性剤、ワックス;分散剤(例えばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸モノグリセリド等);共役ポリエン化合物、アルデヒド化合物(例えばクロトンアルデヒドなどの不飽和アルデヒド類等)などの公知の添加剤を適宜配合することができる。
【0064】
上記熱安定剤としては、溶融成形時の熱安定性等の各種物性を向上させる目的で、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ラウリル酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸等の有機酸類またはこれらのアルカリ金属塩(ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム、マグネシウム等)、亜鉛などの塩;または、硫酸、亜硫酸、炭酸、リン酸、ホウ酸等の無機酸類、またはこれらのアルカリ金属塩(ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム、マグネシウム等)、亜鉛などの塩等の添加剤を添加してもよい。これらのうち、特に、酢酸、ホウ酸およびその塩を含むホウ素化合物、酢酸塩、リン酸塩を添加することが好ましい。
【0065】
かかるペレットは、溶融成形等により、フィルム、シート、容器、繊維、棒、管、各種成形品等に成形され、又、これらの粉砕品(回収品を再使用する時など)を用いて再び溶融成形に供することもでき、かかる溶融成形方法としては、押出成形法、射出成形法が主として採用される。溶融成形温度は、150〜300℃の範囲から選ぶことが多い。また、該ペレットは、単層として用いることもできるし、該ペレットからなる層の少なくとも片面に熱可塑性樹脂層等を積層して多層積層体として用いることも有用である。
【0066】
該積層体を製造するに当たっては、該ペレットからなる層の片面又は両面に他の基材を積層するのであるが、積層方法としては、例えば該ペレットからなるフィルムやシートに熱可塑性樹脂を溶融押出する方法、逆に熱可塑性樹脂等の基材に該ペレットを溶融押出する方法、該ペレットと他の熱可塑性樹脂とを共押出する方法、更には本発明で得られたペレットからなるフィルムやシートと他の基材のフィルム、シートとを有機チタン化合物、イソシアネート化合物、ポリエステル系化合物、ポリウレタン化合物等の公知の接着剤を用いてドライラミネートする方法等が挙げられる。
【0067】
共押出の場合の相手側樹脂としては直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体、ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンの単独又は共重合体、或いはこれらのオレフィンの単独又は共重合体を不飽和カルボン酸又はそのエステルでグラフト変性したものなどの広義のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル、ポリアミド、共重合ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、ポリスチレン、ビニルエステル系樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリケトン、ポリアルコール等が挙げられる。他のEVOHも共押出可能である。上記のなかでも、共押出製膜の容易さ、フィルム物性(特に強度)の実用性の点から、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、PET、PENが好ましく用いられる。
【0068】
更に、本発明で得られたペレットから一旦フィルムやシート等の成形物を得、これに他の基材を押出コートしたり、他の基材のフィルム、シート等を接着剤を用いてラミネートする場合、前記の熱可塑性樹脂以外に任意の基材(紙、金属箔、一軸又は二軸延伸プラスチックフィルム又はシート、織布、不織布、金属綿状、木質等)が使用可能である。
【0069】
積層体の層構成は、本発明で得られたペレットからなる層をa(a1、a2、・・・)、他の基材、例えば熱可塑性樹脂層をb(b1、b2、・・・)とするとき、フィルム、シート、ボトル状であれば、a/bの二層構造のみならず、b/a/b、a/b/a、a1/a2/b、a/b1/b2、b2/b1/a/b1/b2等任意の組み合わせが可能であり、フィラメント状ではa、bがバイメタル型、芯(a)−鞘(b)型、芯(b)−鞘(a)型、或いは偏心芯鞘型等任意の組み合わせが可能である。
【0070】
かくして得られた積層体の形状としては任意のものであってよく、フィルム、シート、テープ、ボトル、パイプ、フィラメント、異型断面押出物等が例示される。又、得られる積層体は必要に応じ、熱処理、冷却処理、圧延処理、印刷処理、ドライラミネート処理、溶液又は溶融コート処理、製袋加工、深絞り加工、箱加工、チューブ加工、スプリット加工等を行うことができる。上記の如く得られたフィルム、シート或いは容器等は食品、医薬品、工業薬品、農薬等各種の包装材料として有用である。
【実施例】
【0071】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、実施例の記載に限定されるものではない。
尚、例中「部」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
【0072】
[実施例1]
エチレン含有量29モル%、ケン化度99.7モル%、MFR3.8g/10分(210℃、荷重2160g)のEVOH樹脂87.5部とナイロン6(DSM社製「ノバミッド 1028EN」)12.5部をドライブレンドした。得られた混合物を二軸押出機に供給して以下の条件で、ストランド状に押し出した。
[二軸押出条件]
スクリュー内径 48mm
L/D 48
樹脂温度 270℃
【0073】
次いで、押し出されたストランドを26℃の水で水冷し、切断時のEVOH樹脂組成物(ストランド)の表面温度を115℃に調整したものを、ペレタイザーを用いて切断することによって、EVOH樹脂組成物ペレット(円柱状、長さ3.0mm、直径2.3mm)を得た。
【0074】
得られたEVOH樹脂組成物ペレットを、空冷式ペレットクーラー(株式会社タナカ社製「ミストラル ASC40−1500」)で冷却し、1分以内にEVOH樹脂組成物ペレットの表面温度を44℃に冷却し、含水率0.21重量%のEVOH樹脂組成物ペレットを得た。
かかるEVOH樹脂組成物ペレットを、タンク(材質:SUS)へ投入した後、フレコン(材質:アルミ)へ充填した。
【0075】
得られたEVOH樹脂組成物ペレットを用いて、以下の要領で評価を行った。
【0076】
〔ペレットの黄変評価〕
ペレット化から1分後の抽出サンプル、及びペレット化から10日後のフレコン中央部の抽出サンプルを、日本電色工業製「分光色差計 SE 6000」を用いて、YIを測定した。
【0077】
[比較例1]
実施例1において、空冷式ペレットクーラーを使用しない以外は、実施例1と同様にVOH樹脂組成物を製造し、同様に評価した。なお、かかるEVOH樹脂組成物ペレットにおいて、ペレット化から1分後のペレットの表面温度は、80℃であった。
【0078】
実施例及び比較例の評価結果を表1にまとめて示す。
【0079】
【表1】
【0080】
上記結果より、EVOH樹脂とポリアミド系樹脂を溶融混練し、EVOH樹脂組成物ペレットを製造する工程において、ペレット化後に冷却を行い、特定時間内にペレット表面温度を60℃以下にすることによって、ペレットの黄変を抑制することができた。