【実施例】
【0043】
(試験例1)
(混合粉末の作製)
まず、原料としてSrCO
3(0.01425mol)と、SnCl
2(0.00075mol)と、TiO
2(アナターゼ、0.01mol)とを用意し、95%エタノール水溶液を滴下しながら、乳鉢でよく混ぜ合わせて、固溶物を得た。
【0044】
次に、この固溶物をアルミナ燃焼ボートに入れ、管状炉内に配置した。
次に、アルゴン雰囲気下で加熱温度800℃、加熱時間10時間の条件で加熱した。
加熱により、光触媒Sr
0.95Sn
0.05TiO
3を生成した。このとき、未反応のSrCO
3(0.00475mol)と、未反応のSnCl
2(0.00025mol)が残留した。
以上の工程で、混合粉末(試験例1試料:サンプル番号1)を得た。
【0045】
(試験例2)
(混合粉末の作製)
加熱温度を1000℃、加熱時間24時間とした他は実施例1と同様にして、光触媒Sr
0.95Sn
0.05TiO
3を生成した。
このとき、未反応のSrCO
3(0.00475mol)と、未反応のSnCl
2(0.00025mol)が残留した。
以上の工程で、混合粉末(試験例2試料:サンプル番号2)を得た。
【0046】
(実施例1)
(光触媒Sr
0.90Sn
0.10TiO
3含有混合粉末の作製)
原料のSrCO
3を0.0135mol、SnCl
2を0.0015molとした他は実施例1と同様にして、光触媒Sr
0.90Sn
0.10TiO
3を生成した。
このとき、未反応のSrCO
3(0.0045mol)と、未反応のSnCl
2(0.0005mol)が残留した。
以上の工程で、光触媒含有混合粉末(実施例1試料:サンプル番号3)を得た。
【0047】
(実施例2)
(光触媒Sr
0.90Sn
0.10TiO
3含有混合粉末の作製)
加熱温度を1000℃、加熱時間24時間とした他は実施例3と同様にして、光触媒Sr
0.90Sn
0.10TiO
3を生成した。
このとき、未反応のSrCO
3(0.0045mol)と、未反応のSnCl
2(0.0005mol)が残留した。
以上の工程で、光触媒含有混合粉末(実施例2試料:サンプル番号4)を得た。
【0048】
(実施例3)
(光触媒Sr
0.80Sn
0.20TiO
3含有混合粉末の作製)
原料のSrCO
3を0.012mol、SnCl
2を0.003molとした他は実施例1と同様にして、光触媒Sr
0.80Sn
0.20TiO
3を生成した。
このとき、未反応のSrCO
3(0.004mol)と、未反応のSnCl
2(0.001mol)が残留した。
以上の工程で、光触媒含有混合粉末(実施例3試料:サンプル番号5)を得た。
【0049】
(試験例3)
(混合粉末の作製)
原料のSrCO
3を0.0105mol、SnCl
2を0.0045molとした他は実施例1と同様にして、光触媒Sr
0.70Sn
0.30TiO
3を生成した。
このとき、未反応のSrCO
3(0.0035mol)と、未反応のSnCl
2(0.0015mol)が残留した。
以上の工程で、混合粉末(試験例3試料:サンプル番号7)を得た。
【0050】
(試験例4)
(粉末の作製)
原料のSrCO
3を0.0095mol、SnCl
2を0.0005molとした他は実施例1と同様にして、光触媒Sr
0.95Sn
0.05TiO
3を生成した。
このとき、未反応の残留物はなかった。
以上の工程で、粉末(試験例4試料:サンプル番号8)を得た。
【0051】
(試験例5)
(混合粉末の作製)
原料のSrCO
3を0.01275mol、SnCl
2を0.00225molとした他は実施例1と同様にして、光触媒Sr
0.85Sn
0.15TiO
3を生成した。
このとき、未反応のSrCO
3(0.00425mol)と、未反応のSnCl
2(0.00075mol)が残留した。
以上の工程で、混合粉末(試験例5試料:サンプル番号9)を得た。
【0052】
(試験例6)
(粉末の作製)
原料のSrCO
3を0.008mol、SnCl
2を0.002molとした他は実施例1と同様にして、光触媒Sr
0.80Sn
0.20TiO
3を生成した。
このとき、未反応の残留物はなかった。
以上の工程で、粉末(試験例6試料:サンプル番号11)を得た。
【0053】
(試験例7)
(混合粉末の作製)
原料のSrCO
3を0.0104mol、SnCl
2を0.0026molとした他は実施例1と同様にして、光触媒Sr
0.80Sn
0.20TiO
3を生成した。
このとき、未反応のSrCO
3(0.0024mol)と、未反応のSnCl
2(0.0006mol)が残留した。
以上の工程で、混合粉末(試験例7試料:サンプル番号12)を得た。
【0054】
(試験例8)
(混合粉末の作製)
原料のSrCO
3を0.0136mol、SnCl
2を0.0034molとした他は実施例1と同様にして、光触媒Sr
0.80Sn
0.20TiO
3を生成した。
このとき、未反応のSrCO
3(0.0056mol)と、未反応のSnCl
2(0.0014mol)が残留した。
以上の工程で、混合粉末(試験例8試料:サンプル番号13)を得た。
【0055】
(比較例1)
(SnO
2とSrTiO
3との混合粉末の作製)
原料のSnO
2を0.002mol、SrTiO
3を0.01molと混合して、混合粉末(比較例1試料:サンプル番号14)を得た。
【0056】
(試験例9)
(混合粉末の作製)
原料のSrCO
3を0.01125mol、SnCl
2を0.00375molとした他は実施例1と同様にして、光触媒Sr
0.75Sn
0.25TiO
3を生成した。
このとき、未反応のSrCO
3(0.00375mol)と、未反応のSnCl
2(0.00125mol)が残留した。
以上の工程で、混合粉末(試験例9試料:サンプル番号15)を得た。
【0057】
(試験例10)
(混合粉末の作製)
原料のSrCO
3を0.016mol、SnCl
2を0.004molとした他は実施例1と同様にして、光触媒Sr
0.80Sn
0.20TiO
3を生成した。
このとき、未反応のSrCO
3(0.008mol)と、未反応のSnCl
2(0.002mol)が残留した。
以上の工程で、混合粉末(試験例10試料:サンプル番号16)を得た。
【0058】
(試験例11)
(混合粉末の作製)
原料のSrCO
3を0.0128mol、SnCl
2を0.0032molとした他は実施例1と同様にして、光触媒Sr
0.80Sn
0.20TiO
3を生成した。
このとき、未反応のSrCO
3(0.0048mol)と、未反応のSnCl
2(0.0012mol)が残留した。
以上の工程で、混合粉末(試験例11試料:サンプル番号17)を得た。
【0059】
(比較例2)
(SrTiO
3粉末)
原料のSrTiO
3を0.01molと秤量して、粉末(比較例2試料:サンプル番号18)とした。
表1は原料及び製造条件について、表2は生成物、未反応物、粉末色についてまとめたものである。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
(光触媒含有混合粉末、混合粉末及び粉末の外観観察)
まず、外観観察写真を撮影した。
図3は、サンプル番号3〜5(実施例1〜3試料)、サンプル番号1、2、7〜13、15〜17(試験例1〜11試料)、サンプル番号14(比較例1試料)の写真である。 キャップはサンプル番号である。白色〜黄色みがかった白色の粉末として得られた。Snの濃度が高いものほど黄色みがかっていた。
【0063】
(粉末のXRD測定)
次に、XRDパターンを測定した。Cu−Kα線源を備えたXRD分光器(PANalytical B.N.社製、X‘Pert Pro MRD)を用いた。
図4は、市販の試薬粉末SrTiO
3、SrCO
3、TiO
3、SnCl
2、SnO
2のXRDパターンである。
【0064】
図5は、サンプル番号1、3、5、7、8、9、11のXRDパターンである。
いずれのサンプルでもSrTiO
3由来のXRDパターンが現れた。これにより、いずれのサンプルでも光触媒Sr
(1−X)Sn
XTiO
3粉末が生成されたと考察した。
一番大きなピークを比較すると、サンプル番号8とサンプル番号1は市販のSrTiO
3の第1ピーク位置と同じ位置であり、サンプル番号11は、これらに対して、低角度側にピークがシフトし、サンプル番号5は高角度側にピークがシフトした。
サンプル番号5の光触媒Sr
(1−X)Sn
XTiO
3粉末は、市販のSrTiO
3の第1ピーク位置に比べて高角度側にシフトしたので、格子定数が小さくなったと推察した。
また、複数の微小ピークの存在により、SrTiO
3構造以外の構造も混ざっているように推察した。例えば、サンプル番号1では、SrTiO
3由来のピーク(2θ=31)が観測され、サンプル番号5では、SnO
2由来の2ピーク(2θ=27、34)が観測された。固溶限界を超えたため、SnO
2が生成されたと考察した。なお、2ピーク(2θ=27、34)は、未反応の原料に由来するとも考えた。
【0065】
(粉末のABS測定)
まず、試料粉末の拡散反射スペクトルを積分球(アクセサリー)付き(が付属した)紫外可視(近赤外)分光光度計(Shimadzu社製、UV−2600)を用いて、測定した。
次に、その反射スペクトルをKubelka−Munk変換を利用して、光吸収スペクトル(ABS)に変換した。なお、反射スペクトル測定時のリファレンス・サンプルとして、BaSO
4を用いた。
【0066】
図6は、市販SrTiO
3、サンプル番号1、5、7の光吸収スペクトルである。
図7は、市販SrTiO
3、サンプル番号1、5、7の400nm近傍領域の光吸収スペクトルである。
市販SrTiO
3では、400nm以上の可視光領域の吸収は観測されなかったが、サンプル番号1は少し吸収が観測され、サンプル番号5、7はより多く吸収が観測された。
粉末色との関係では、混合粉末は真っ白であり、可視光を吸収しなかった。一方、粉末状態で黄色みがかっていたものほど、可視光領域に吸収域が広がる吸収スペクトルが得られた。
【0067】
(水素発生のための光触媒活性測定)
まず、パイレックスセルに純水220mLとメタノール50mLを混合して、メタノール水溶液を調製した。
次に、このメタノール水溶液に、各試料サンプル0.3gと、H
2PtCl
6・6H
2Oの0.5w%溶液0.38mLを分散してから、3〜4時間、300WのXeアークランプのUV+VIS光を照射して、光触媒にPt助触媒を光析出(photo−deposited)させた。
次に、メタノール水溶液を磁気撹拌子で攪拌して、各試料サンプルの懸濁液を調製した。
【0068】
次に、キセノンランプ(Xe lump、300W)に一面側を対面させるようにして、各試料サンプルの懸濁液を貯蔵したパイレックスセルを配置した。
次に、キセノンランプとパイレックスセルとの間に光フィルターを配置した。
次に、パイレックスセルに配管を接続し、その配管をロータリーポンプに接続してから、パイレックスセルに別の配管を接続し、その配管をガスクロマトグラフに接続して、ガス―クローズド循環システムとした。
次に、パイレックスセルの内部をロータリーポンプで減圧してから、パイレックスセル内で発生させた水素を洩れなくガスクロマトグラフで測定可能とした。
【0069】
以上の構成の下、まず、キセノンランプの光をそのまま用いて(UV+VIS)光を、各試料サンプルの懸濁液それぞれに対して3時間照射した。
次に、1時間、光照射を停止した。
次に、光フィルター(L42カットオフフィルター)で400nm超の可視光(VIS)のみにしたVIS光を4時間、パイレックスセル内の懸濁液に照射した。
最後に、光照射を停止した。
【0070】
光照射開始から停止まで継続して、H
2発生量を、標準曲線に従い、熱伝導検出器(Thermal conductivity detector:TCD)を用い、オンラインのガスクロマトグラフ(GC−8A、Shimadzu製)で測定した。
【0071】
図8は、サンプル番号5のH
2発生量の光照射時間依存性を示すグラフである。UV+VIS光を3時間照射することにより、H
2発生量は約40μmolとなった。
1時間光照射を停止して減圧することにより、H
2発生量は約0μmolとなった。
VIS光を4時間照射することにより、H
2発生量は約30μmolとなった。
【0072】
図9は、サンプル番号3のH
2発生量の光照射時間依存性を示すグラフである。UV+VIS光を3時間照射することにより、H
2発生量は約260μmolとなった。
1時間光照射を停止することにより、H
2発生量は約0μmolとなった。
VIS光を4時間照射することにより、H
2発生量は約20μmolとなった。
【0073】
図10は、VIS光を4時間照射したときのサンプル番号1、3、5、7〜9、11〜15、17のH
2発生量の光照射時間依存性を示すグラフである。
4h時のH
2発生量は、サンプル番号5(実施例1試料)が一番多く、サンプル番号3(実施例3試料)が二番目に多かった。
ABSの300nm付近の吸収強度が高ければ高いほど、還元力を維持し、活性が高くなったと推察した。
また、サンプル番号5(実施例1試料)とサンプル番号7(試験例3)は光吸収スペクトルを見ると可視光吸収量はほとんど同じだが、H
2発生量はサンプル番号5(実施例1試料)の方がはるかに多かった。Snによる濃度が高くなることにより、エキシトン同士が互いに影響して、エキシトンの発生が低下したと推察した。
混合粉末ではないサンプル番号8(試験例4試料)とサンプル番号11(試験例6試料)のH
2発生量は低かった。
【0074】
次に、サンプル番号5の試料サンプル懸濁液で、メタノール水溶液の代わりにエタノール水溶液を用いた他は先に記載の構成と同様にしてH
2発生量の光照射時間依存性を観測した。
図11は、VIS光を4時間照射したときサンプル番号5のH
2発生量の光照射時間依存性のメタノール水溶液とエタノール水溶液の違い示すグラフである。エタノール水溶液の方が4h時のH
2発生量が多かった。
表3は、生成物と光触媒特性(H
2発生量)についてまとめたものである。
【0075】
【表3】