(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ブラシ部を、前記第2の高さ位置にすると共に前記カッティングプレート上で前記落とし込み孔の反対側から前記落とし込み孔に至る前記X軸方向の経路で移動させる掃出し動作を実行するよう構成されていることを特徴とする請求項1記載のレーザ加工機。
複数のワーク支持ブラシを有すると共に第1の水平方向に延びる落とし込み孔を形成するよう離隔対向配置された一対のカッティングプレートを備えるレーザ加工機における前記一対のカッティングプレートの清掃を行うためのカッティングプレート清掃方法であって、
前記レーザ加工機側の部材に対して着脱自在とされ、前記第1の水平方向と直交する第2の水平方向を幅方向としたときに前記落とし込み孔の幅方向よりも狭い幅で下方に向け垂設されたブラシ束群を前記カッティングプレートの上方で上下動可能とした清掃装置を用い、
前記ブラシ束群を、前記ワーク支持ブラシに干渉させつつ前記第2の水平方向に移動させて、前記ワーク支持ブラシに付着した付着物を前記落とし込み孔に掃き出す掃出し動作を行うことを特徴とするカッティングプレート清掃方法。
前記カッティングプレートを、前記Y軸方向に並ぶ複数の領域に仮想分割して前記領域それぞれにおける累積加工時間を求め、求めた累積加工時間が予め設定した所定の時間以上になった前記領域に対して前記掃出し動作を実行することを特徴とする請求項4記載のカッティングプレート清掃方法。
前記ブラシ束群を、前記カッティングプレートの前記落とし込み孔を臨む側面に干渉させつつ前記第1の水平方向に移動させて前記側面に付着した付着物をかき取るかき取り動作を行うことを特徴とする請求項4記載のカッティングプレート清掃方法。
前記ブラシ束群を、前記ワーク支持ブラシに干渉させつつ前記第1の水平方向に移動させて前記ワーク支持ブラシに付着した付着物をかき取るブラッシング動作を行うことを特徴とする請求項4記載のカッティングプレート清掃方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態に係るレーザ加工機の実施例としてのカッティングプレート清掃装置21(以下、単に清掃装置21とも称する)を備えたレーザ加工機(以下、単に加工機1とも称する)について、まず、概略構成を、
図1を参照して説明する。
【0011】
図1は、加工機1の模式的平面図である。説明の便宜上、直交するX軸及びY軸を
図1の矢印のように設定する。また、
図1の紙面に直交するZ軸方向は上下方向であって、紙面表方が上方となる。
【0012】
加工機1は、いわゆるレーザ・パンチ複合加工機であり、床に設置される基台2と、基台2の上にX軸とY軸との直交二軸で規定される水平面に延在して設けられたワークテーブル3と、を有する。
ワークテーブル3は、X軸(+)側とX軸(−)側との一対であって、後述するキャリッジベース5と一体的にY軸方向に移動する一対の左右テーブル3b,3bと、X軸中央部の固定テーブル3cとを有する。
ワークテーブル3の上面のほぼ全領域には、載置されたワークWを支持するためのワーク支持部材として、複数の樹脂製のワーク支持ブラシ3aが設けられている。詳しくは、ワーク支持ブラシ3aは、上方に延びる起立姿勢で植設されている。
ワーク支持ブラシ3aの植設パターンは、例えば千鳥状である。描画を簡単にするため、
図1では、ワーク支持ブラシ3aはワークテーブル3の一部の領域のみに記載されている。
【0013】
基台2には、複数のパンチ金型を周方向に並べて装着可能な上部タレットと、複数のダイ金型を周方向に並べて装着可能な下部タレットと、の組からなるタレット部4が備えられている。
ワークWへのパンチ加工に際し、選択されたパンチ金型とダイ金型とが、パンチ位置PC1に割り出されて、パンチ加工が行われる。
【0014】
左右テーブル3b,3bにはX軸方向に延在するキャリッジベース5が連結し、後述するフレーム10によってY軸方向に移動可能に支持されている。この移動は、後述するフレーム10に設けられたキャリッジベース移動部5aによって行われる。
キャリッジベース5には、X軸方向に移動可能にキャリッジ6が取り付けられている。このキャリッジ6の移動はキャリッジベース5に設けられたキャリッジ移動部6aの動作によって行われる。
キャリッジ6には、複数のワーククランパ7が取り付けられている。
ワーククランパ7は、板状のワークWを把持可能とされている。この把持は、ワーククランパ7が備える把持駆動部7b(
図2参照)の動作によって行われる。
【0015】
中央の固定テーブル3cには、Y軸方向に延びる一対のカッティングプレート8a,8bが、平行に離隔して対向配置されている。
すなわち、一対のカッティングプレート8a,8b間には、Y軸方向に延在する落とし込み孔9が形成される。
一対のカッティングプレート8a,8bには、ワークテーブル3と同様に、複数の樹脂製のワーク支持部材であるワーク支持ブラシ8cが設けられている。詳しくは、ワーク支持ブラシ8cは、上方に延びる起立姿勢で植設されている。ワーク支持ブラシ8cの植設パターンは、例えば3列となる千鳥状である。
【0016】
落とし込み孔9の上方には、Y軸方向に延在する門型のフレーム10が、基台2に連結して設けられている。
図1では、理解容易のため、フレーム10は概略外形が二点鎖線で示されている。
フレーム10のX軸(−)側には、レーザ加工ヘッド11がY軸方向に移動可能に取り付けられている。この移動は、フレーム10に設けられたヘッド移動部11aにより行われる。
図1において、レーザ加工ヘッド11は、二点鎖線の矩形で示されている。
レーザ加工ヘッド11からは、下方の落とし込み孔9に向けてレーザ光が照射される。
レーザ光の照射位置は、位置PC2として
図1に示され、ヘッド移動部11aの駆動により、その軌跡は、落とし込み孔9のX軸方向中央位置でY軸方向に延びる直線状となる。レーザ加工ヘッド11から照射されるレーザ光は、レーザ発振器12から供給される。
【0017】
キャリッジベース移動部5a,キャリッジ移動部6a,把持駆動部7b,レーザ加工ヘッド11,ヘッド移動部11a,及びレーザ発振器12の動作は、制御部13により制御される。
制御部13は、記憶部13Mを備えている。記憶部13Mには、加工機1を動作させるための動作プログラム,ワークWに施す加工に関する加工プログラム,カッティングプレート8a,8bを清掃するための清掃プログラムなどのプログラムが記憶される。
【0018】
以上の構成により、加工機1は、制御部13の制御の下、ワークテーブル3に支持されつつワーククランパ7で把持されたワークWを、キャリッジベース5の移動でY軸方向に移動し、キャリッジ6の移動でX軸方向に移動させることで、X軸Y軸平面上を任意の軌跡で移動可能となっている。
これにより、タレット部4を用いたパンチ加工と、レーザ加工ヘッド11を用いたレーザ加工と、をワークWの所望位置に施すことができる。
【0019】
ワークWに対するレーザ加工で生じた加工屑の多くは、落とし込み孔9から下方に落下し、図示しない集塵装置により回収される。また、加工屑の一部は飛散してカッティングプレート8a,8b及びワーク支持ブラシ8cに付着する。
集塵装置は、図示しないファン及びダクトを備えている。これにより、レーザ加工時、及び後述する清掃装置21による清掃動作の実行時には、ファンの駆動によって落とし込み孔9には吸い込み方向の気流が生じるようになっている。
【0020】
加工機1は、上述の構成に加え、清掃装置21を、キャリッジ6のX軸方向端部に備えている。すなわち、清掃装置21はキャリッジ6と共にX軸方向に移動し、キャリッジベース5と共にY軸方向に移動する。
キャリッジ6の移動範囲は、少なくとも、清掃装置21を、落とし込み孔9お呼び一対のカッティングプレート8a,8bの上方に移動できるよう設定されている。
【0021】
この清掃装置21の構成について、
図2及び
図3を参照して説明する。
図2は、加工機1における清掃装置21の近傍を
図1におけるX軸(−)Y軸(+)の斜め上方から見た斜視図である。
図3は、清掃装置21を
図1におけるX軸(−)方向から見た側面図である。
【0022】
清掃装置21は、構成全体がユニット化されており、キャリッジ6のX軸方向の(+)側又は(−)側の端部に着脱自在に取り付けられる。この例では、X軸の(−)側の端部6bに取り付けられている。清掃装置21は、ユニット化されていることで、既設の加工機に対してもレトロフィット可能である。
清掃装置21は、端部6bなどの被装着部に対し着脱自在に装着するための装着具22を有し、キャリッジ6に対して手作業で着脱自在とされる。
詳しくは、装着具22に、ワンタッチでの着脱を可能とするいわゆるサムターンクランパ22aが複数用いられ、手作業で着脱自在とされている。
【0023】
清掃装置21は、Y軸−Z軸面上に延在するベースプレート23と、ベースプレート23のX軸(−)側の面に取り付けられた清掃ユニット25と、を有している。
清掃ユニット25は、内部にアクチュエータ25a(
図3参照)を収容した箱状の基体部25bを有する。この例ではアクチュエータ25aはエアシリンダである(以下、エアシリンダ25aとも称する)
エアシリンダ25aは、基体部25bの下端側において上下方向に出入りするロッド25a1を有する。ロッド25a1は鉛直方向に延び、その下端には、ブラシユニット26が取り付けられている。
【0024】
ブラシユニット26は、水平に延在しY軸方向に長いブラシプレート部26aと、ブラシプレート部26aにおける下側に取り付けられたブラシ部26bと、を有している。
ブラシ部26bは、Y軸方向に延びる直状で下方に向け垂設されたブラシ束26b1を、X軸方向に離隔して複数列(この例では三列)有している。この複数列のブラシ束26b1を纏めてブラシ束群26bGとも称する。
【0025】
複数のブラシ束26b1それぞれの下端部26cは、概ね水平面となるように毛先が整えられると共に互いに同じ高さに揃えられている。
ブラシ束26b1のブラシ繊維の材質例は、真鍮、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂である。
【0026】
基体部25bにおいて、ロッド25a1を挟んでY軸方向両側には、一対のガイドシャフト25c,25cがZ軸方向に摺動自在に設けられている。ガイドシャフト25cの下方先端は、ブラシプレート部26aに取り付けられている。
【0027】
エアシリンダ25aには、装着具22の上部に取り付けられたエア中継ボックス27からエアがホース27aを介して適宜供給される。この供給は、作業者の手動指示、又は記憶部13Mに記憶された清掃プログラムに基づいて、制御部13の制御の下で実行される。
加工機1のキャリッジ6の端部6bには、清掃装置21を着脱するための被着脱構造と共に、エアの供給口(図示せず)が備えられている。この供給口とエア中継ボックス27とでのエアの連結は、清掃装置21の装着時に自動的に行われるようになっている。
【0028】
エアシリンダ25aは、ロッド25a1をストロークの両端の2ヶ所、又は両端と中間との3ヶ所で保持する、いわゆる2ポジション又は3ポジションのものを用いる。
以下に説明する例では、3ポジションのエアシリンダ25aを採用したものを説明する。
【0029】
すなわち、
図3に示されるように、ブラシ束群26bGの下端部26cの高さ位置が、エアシリンダ25aの動作によって、最上位置P1と、最上位置P1からストロークLS1で下降した中間位置P2と、最上位置P1からストロークLS2で下降した最下位置P3と、の三か所で維持される。
この上下動は、一対のガイドシャフト25c,25cの案内により、スムースに、かつ、振動及びぶれがなく行われる。
【0030】
より詳しくは、ロッド25a1が最も引き込まれた最上位置P1は、下端部26cがパスラインPLよりも距離Laだけ上方に位置する。また、中間位置P2は、下端部26cがパスラインPLより距離Lbだけ下方に位置する。また、ロッド25a1が最も延び出た最下位置P3は、下端部26cがパスラインPLよりも距離Lcだけ下方に位置する。
【0031】
ここで、パスラインPLの高さ位置は、ワーク支持ブラシ8cの上端部の位置となる。そして、ブラシ束群26bGの下端部26cが中間位置P2にあるときに、ブラシ束群26bGの下方側の一部は、ワーク支持ブラシ8cの上方側の一部と高さ方向で干渉するようになっている。
詳しくは、下端部26cがカッティングプレート8a,8bの上面の高さ位置とパスラインPLとの間に位置している。この位置は、ワーク支持ブラシ8cの高さ方向における上方側であることが好ましい。
また、下端部26cは、最下位置P3にあるとき、カッティングプレート8a,8bとカッティングプレート8a,8bの対向面8a1,8b1を保護する保護カバー8dとの内の下方側の下端位置P4よりもさらに下方に位置するようになっている。
具体的な寸法例としては、距離La=20mm,距離Lb=5mm,距離Lc=20mmとされる。
【0032】
ブラシ部26bは、その高さ位置の違いに応じ、各位置での状態を次のようにも称する。
すなわち、下端部26cが最上位置P1にあるときを待機状態、中間位置P2にあるときを掃出し状態、最下位置P3にあるときを側面清掃状態、と称する。
このように、ブラシ部26bは、制御部13の制御によるアクチュエータ25aの動作によって、待機状態,掃出し状態,及び側面清掃状態の三つの状態で維持され、かつ、各状態間で高さ方向の移動が自在とされている。
【0033】
ブラシ部26bにおいて、ブラシプレート部26aは、ロッド25a1が取り付けられたプレート26a1と、ブラシ束26b1が取り付けられた下部プレート26a2とが、ボルト等の装着部材又は装着構造(いずれも図示せず)によって着脱自在とされている。
これにより、ブラシ束26b1を、清掃のため、新品との交換のため、ブラシ仕様違いのものとの交換のため、などを目的として、手作業で交換することが容易になっている。
【0034】
次に、ブラシ束群26bGと、カッティングプレート8a,8b及び落とし込み孔9と、のX軸方向の位置対応について、模式図である
図4を参照して説明する。
図4は、カッティングプレート8a,8bをX軸−Z軸平面で切断した状態をY軸(+)側から見た模式的断面図である。
図4では、ブラシ束群26bGのX軸方向中央位置が、落とし込み孔9のX軸方向中央位置と合致するようにキャリッジ6を移動させた状態が示されている。また、ブラシ部26bは、高さ方向について待機状態とされている。
【0035】
カッティングプレート8a,8bは、互いに対向する側面であって、落とし込み孔9を臨む対向面8a1,8b1を有している。
また、カッティングプレート8a,8bそれぞれには、Y軸方向に延在し、対向面8a1,8b1を覆う保護カバー8dが設けられている。
この例では保護カバー8dの最下位置は、カッティングプレート8a,8bの最下位置より高い位置にある。すなわち、この例において下端位置P4はカッティングプレート8a,8bの最下位置となる。
【0036】
ブラシ束群26bGのX軸方向の幅Ldは、落とし込み孔9のX軸方向の開口幅となる一対の保護カバー8d間の距離Leよりも短い。
従って、ブラシ部26bは、待機状態から下降して(矢印Db)、
図4に一点鎖線で示される最下の側面清掃状態まで落とし込み孔9内に進入可能である。
ブラシ部26bは、側面清掃状態で、下端部26cが保護カバー8dの下端位置及びカッティングプレート8a,8bの下端位置P4よりも下方に位置する。
【0037】
このように、ブラシ部26bを備えた清掃装置21は、X軸方向にはキャリッジ6と共に移動し、Y軸方向にはキャリッジ6及びキャリッジベース5と共に移動する。また、ブラシ部26bは、Z軸方向にエアシリンダ25aの動作によって三つの位置で維持されると共に、各位置間の移動が可能とされている。
【0038】
以上詳述した清掃装置21は、制御部13制御の下、次に説明する三つの清掃モードでの清掃動作を選択的に行う。
制御部13は、この清掃動作を、作業者又は外部機器からの清掃開始指示に応じて開始する。三つの清掃モードの動作手順は、記憶部13Mに記憶された清掃プログラムに含まれている。
制御部13は、三つの清掃モードのいずれかを、この清掃プログラムを参照し、付着物の付着状況等に応じて選択実行する。
【0039】
三つの清掃モードをモードA〜モードCとすると、モードAは、カッティングプレート8a,8bのワーク支持ブラシ8cに付着した付着物をかき取って落とし込み孔9へ掃き出す(掃き落とす)「掃出し動作モード」である。
モードBは、落とし込み孔9近傍のワーク支持ブラシ8cの付着物をかき取る「ブラッシング動作モード」である。
モードCは、カッティングプレート8a,8bにおける落とし込み孔9を臨む側面(対向面8a1,8b1又は保護カバー8d)に付着した付着物をかき取る「側面かき取り動作モード」である。
まず、掃出し動作モードから順に説明する。
【0040】
(モードA:掃出し動作モード:
図5及び
図6参照)
掃出し動作モードは、カッティングプレート8a,8bにおける広範囲(例えば全体)のワーク支持ブラシ8cを清掃対象とする動作モードである。
制御部13は、ブラシ部26bを、まず、Z軸方向について待機状態,X軸方向について落とし込み孔9の中央位置,及びY軸方向についてカッティングプレート8bよりもY軸(−)側に位置させる。この位置は
図5及び
図6において(A0位置)〔符号に付与:以下同様〕で示される。
【0041】
次いで制御部13は、ブラシ部26bをX軸(−)及びY軸(+)方向に水平移動し(矢印Ad)、同じ高さで一方のカッティングプレート8bのY軸(−)側端部の上方に位置させる(A1位置)。
そして、エアシリンダ25aを動作させてブラシ部26bを下降させ(矢印Aa)、中間状態とする(A2位置)。
この(A2位置)状態で、ブラシ束群26bGの下方側が、ワーク支持ブラシ8cの上方側と干渉して入り混じる。
【0042】
次いで制御部13は、ブラシ部26bを、中間状態の高さを維持したままX軸(+)方向に水平移動し(矢印Ab)、落とし込み孔9の中央に位置させる(A3位置)。
この水平移動により、ワーク支持ブラシ8cの先端側に付着していた付着物41が、ブラシ束群26bGによってかき取られると共に落とし込み孔9に掃き出される。これにより、かき出した付着物41の飛散が抑制される。
また、落とし込み孔9の下方には、既述のように、ダクト及び吸い込みファン(いずれも図示せず)が配置され、吸引が行われているので(白矢印Dc)、付着物41の掃出し(掃き落とし)は、かき出した付着物41が飛散することなくさらに良好に行われる。
【0043】
その後、制御部13は、エアシリンダ25aを動作させてブラシ部26bを上昇させ(矢印Ac)、再び待機状態とする(A4位置)。
【0044】
制御部13は、次の矢印Adで示される移動で、ブラシ部26bをY軸(+)方向にピッチPT1で移動し、(A5位置)とする。
ピッチPT1は、ブラシ束群26bGの長手方向の長さLd2よりも短く設定して、カッティングプレート8bのY軸方向全体に対し、ブラシ束群26bGの矢印Abで示される掃出し動作が行われるようにする。
【0045】
以降、矢印Ad〜矢印Acで示される四つの移動を一サイクルとしたときに、この一サイクルを複数回繰り返す。これにより、ブラシ部26bが、カッティングプレート8bのY軸(+)側端部までの全領域を掃出して(An位置)に達したら、制御部13は、ブラシ部26bを、待機状態の(A0位置)に戻して掃出し動作を終了する。
【0046】
制御部13は、他方のカッティングプレート8aについても、X軸方向の移動が対称となる同様の掃出し動作を実行する。
【0047】
この掃出し動作モードによれば、カッティングプレート8a,8bのワーク支持ブラシ8cに比較的弱く(非強固に)付着していた付着物が、ブラシ束群26bGにかき取られると共に、落とし込み孔9内に積極的に掃き出される。これにより、ワーク支持ブラシ8cに付着した、比較的除去し易い、例えば付着初期の付着物の除去が良好に行える。その際、付着物の飛散が良好に抑制される。
【0048】
(モードB:ブラッシング動作モード:
図7参照)
ブラッシング動作モードは、カッティングプレート8a,8bにおける一部の領域のワーク支持ブラシ8cを対象として、比較的強固に付着した付着物をかきとるために好適な動作モードである。ブラッシングは、ブラシ束群26bGの任意方向における往復動作を意味する。
一部の領域とは、例えば、落とし込み孔9の近傍領域である。この領域は、加工で照射されるレーザ光に近いため、付着物が、ワーク支持ブラシ8cに比較的強固に付着し易い領域である。
【0049】
図7に示されるように、ブラシ部26bを、まず、Z軸方向について待機状態,X軸方向について落とし込み孔9の中央位置,及びY方向についてカッティングプレート8a,8bのY軸(−)側端部に位置させる。この位置は、
図7において(B0位置)〔符号に付与:以下同様〕で示される。
【0050】
次いで制御部13は、ブラシ部26bをX軸(−)及びY軸(+)方向に水平移動し(矢印Ba)、カッティングプレート8bのY軸(−)側端部の、落とし込み孔9側の縁部8b2の上方(B1位置)に位置させる(矢印Ba)
その後、ブラシ部26bを下降させて中間状態とする。これにより、ブラシ部26bにおける下方部位と、ワーク支持ブラシ8cの上方部位とが干渉して入り混じる。
【0051】
その後、Y軸水平方向に所定の距離PT2で、所望の回数で往復移動させるブラッシング動作(矢印Bb)と、往復移動の中心位置をY軸(+)の一方向に距離PT3で移動する送り移動(矢印Bc)と、を交互に実行する。
ブラッシング動作によって、カッティングプレート8bの縁部8b2及びその近傍のワーク支持ブラシ8cが、ブラシ束群26bGにY軸の一方向とその逆方向とに繰り返し擦られ、付着物がかき取られる。
ブラッシング動作(矢印Bb)の往復回数を増やすことで、かき取りがより良好に行われる。すなわち、強固に付着した付着物をかき取ることができる。
ブラッシング動作(矢印Bb)における往復移動距離と、送り動作(+)(矢印Bc)における送り距離とは、カッティングプレート8bにおける落とし込み孔9側の縁部8b2の近傍において、ブラシ束群26bGによるブラッシング未処理範囲が生じないよう、一部の範囲が重複されるように選定される。
【0052】
以降、ブラッシング動作(矢印Bb)と送り動作(矢印Bc)との組み合わせを一サイクルとしたときに、この一サイクルを複数回繰り返す。これにより、ブラシ部26bがカッティングプレート8bのY軸(+)側端部までの落とし込み孔9近傍の領域をブラッシングして(Bn位置)に達したら、制御部13は、ブラシ部26bを待機状態の(B0位置)に戻してブラッシング動作を終了する。
【0053】
制御部13は、他方のカッティングプレート8aについても、同様のブラッシング動作を実行する。
【0054】
このブラッシング動作によれば、カッティングプレート8a,8bにおける特定の領域である、落とし込み孔9側の縁部8b2の近傍領域におけるワーク支持ブラシ8cに、加工屑などが強固に付着していても、繰り返しの擦りによって比較的良好にかき取ることができる。
【0055】
(モードC:側面かき取り動作モード:
図8参照)
側面かき取り動作モードは、カッティングプレート8a,8bの対向面8a1,8b1、又は対向面8a1,8b1が保護カバー8dで覆われている場合には、その保護カバー8dを中心に清掃するモードである。
この動作モードにおけるブラシ部26bの上面視での移動パターンは、例えば、(モードB:ブラッシング動作モード)と同じとしてよい。
ただし、Y軸方向の往復移動におけるブラシ部26bの高さ位置及びX軸方向の位置が異なる。これについて、
図8を参照して説明する。
【0056】
図8は、
図5に対応する図であり、カッティングプレート8b及びその近傍のX軸−Z軸平面で切断した模式的断面図である。
図8には、保護カバー8dを有するカッティングプレート8bが記載されている。
この側面かき取り動作モードでは、ブラシ部26bのY軸方向の往復移動(ブラッシング)において、ブラシ部26bは、側面清掃状態とされている。すなわち、ブラシ束群26bGの下端部26cの位置が、最下位置P3にある。
また、ブラシ部26bのX軸方向の位置は、三列のブラシ束26b1の内の、カッティングプレート8b側の一列が保護カバー8dと干渉する位置とされている。
【0057】
これにより、ブラシ束群26bGの内の、カッティングプレート8b側の一列のブラシ束26b1が、保護カバー8dの落とし込み孔9側の側面8d1を擦りながらY軸方向に往復移動する。そのため、保護カバー8dの側面8d1に付着した加工屑などの付着物が、ブラシ束26b1によって繰り返し擦られることでかき取られ、保護カバー8dは良好に清掃される。かき取られた付着物は、そのまま落とし込み孔9の下方に、自重及び吸引により落下する。
【0058】
制御部13は、他方のカッティングプレート8aの保護カバー8dについても、同様のブラッシング動作を実行する。
【0059】
以上詳述した加工機1によれば、キャリッジ6の端部に清掃装置21が装着可能とされている。
これにより、清掃装置21が加工機1に装着された状態のまま、側面から作業者が取り扱うことができるので、現場でのメンテナンス作業が容易であり、作業を短時間で終えることができる。
また、清掃装置21は、キャリッジ6に対し着脱自在に装着される。
これにより、修理やメンテナンス作業を、別の最適作業環境において綿密かつ詳細に行うことができるので、難易度の高い作業も、容易にかつ短時間に行える。
また、ブラシ束群26bGの幅が、落とし込み孔9の幅よりも狭くなっているので、ブラシ部26bが、一対のカッティングプレート8a,8bに対し、片方ずつ清掃動作を実行できる。
これにより、ワーク支持部材8cに付着した付着物を、落とし込み孔9へ積極的に掃出す掃出し(掃き落とし)動作が可能になる。そのため、ワーク支持部材8cを良好に清掃できると共に、清掃時にワーク支持部材8cから付着物が飛散しにくく、ワークへの異物付着などの不具合発生を防止できる。
【0060】
本発明の実施例は、上述した構成及び手順に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形例としてもよい。
【0061】
モードA〜モードCの各動作モードは、適宜組み合わせて実行してよい。例えば(モードB:ブラッシング動作モード)実行後に、(モードA:掃出し動作モード)を実行することで、ブラッシング動作を行って容易にかき落とせる状態になった付着物を、落とし込み孔9内へ良好に掃出し排出できる。
これにより、落とし込み孔9近傍のワーク支持ブラシ8cは、付着物のかき落とし残り分がなく、より良好に清掃される。
【0062】
実施例では、三つの動作モードすべてにおいて、カッティングプレート8a,8b長手方向全体を清掃するものを説明した。
これに対し、付着物が他よりも多量に累積付着した領域、或いは多量に累積付着したと推測される領域、についてのみ、任意の動作モードでの清掃動作を実行する変形例の加工機1Aとしてもよい。
加工機1Aの構成は、加工機1の構成に対し、制御部13が領域分割処理部13aを備える点で異なる。
この変形例では、カッティングプレート8a,8bを、Y軸方向に並ぶ複数の領域に仮想分割し、領域毎に清掃動作の実行と非実行とを選択できるようにする。
【0063】
この変形例について、
図9〜
図11を参照して具体的に説明する。
制御部13は、カッティングプレート8a,8bを、
図9(a)に示す複数の領域AR1〜ARn(nは2以上の整数:
図9の例ではn=12)に仮想分割して清掃動作を管理する。分割幅は、すべて同じでもよいし、意図的に異なるようにしてもよい。
制御部13の領域分割処理部13aは、一連の加工動作が終了する毎に、領域AR1〜ARnそれぞれに対応するY軸方向位置(範囲)でのレーザ加工の累積時間を求める。そして、その累積時間が、予め設定した所定の時間以上になった領域があるか否かを判定し、該当領域がある場合、その領域についてのみ上述のモードA〜モードCなる動作モードのいずれかを実行する。
【0064】
図9(b)には、ある一連の加工動作が終了した時点での領域AR1〜ARnそれぞれに対応するレーザ加工の累積時間例が示されている。ここでは、清掃動作を実行する、しない、の判定境界となる累積時間の閾値を時間Taとしている。
図9(b)の例では、全領域の内、領域AR2〜AR5が時間Taを超えているので、制御部13は、次の加工動作に移行する前に、これらの領域AR2〜AR5について、清掃動作を実行する。
【0065】
図10は、この領域分割した場合の清掃動作の一例を示す図であり、
図6に対応する図である。
図10には、領域AR4及び領域AR5のみに(モードA:掃出し動作モード)清掃動作を実行する例が示されている。Y軸(+)側から見た動作は、
図5と同じであり、
図5において括弧付のDa〜Ddで移動方向を示してある。
【0066】
まず、一方のカッティングプレート8bの該当領域に対し、清掃動作を実行する。
制御部13の領域分割処理部13aは、ブラシ部26bを、Z軸方向について待機状態、X軸方向について落とし込み孔9の中央位置、及びY方向についてカッティングプレート8bよりもY軸(−)側に位置させる。この位置は
図10における(D0位置)〔符号に付与:以下同様〕で示される。
【0067】
次いで、領域分割処理部13aは、ブラシ部26bをX軸(−)及びY軸(+)方向に水平移動し(矢印Dd)、同じ高さでカッティングプレート8bの領域AR4のY軸(−)側端部の上方に位置させる(D1位置)。
そして、エアシリンダ25aを動作させてブラシ部26bを下降させ(
図5:矢印Da)、中間状態とする(D2位置)。
【0068】
以降、(モードA:掃出し動作モード)と同様に、Db〜Daのサイクルを繰り返して実行し、領域AR5のY軸(+)端部において掃出しを実行したら(矢印Db)、待機位置に上昇し(矢印Dc)、その後、他方のカッティングプレート8aの清掃対象領域である領域AR4及び領域AR5について、同様の清掃動作を実行する。
【0069】
カッティングプレート8a側の清掃開始位置は、Y軸(−)側からでもY軸(+)側からでもよい。
ブラシ部26bの移動距離を短縮して効率を向上する観点では、カッティングプレート8bにおける領域AR5の清掃終了位置に対応した位置から清掃を開始し、領域AR4のY軸(−)側で終了する方が好ましい。
【0070】
一方のカッティングプレート8bに次いで、他方のカッティングプレート8aにおける領域AR5及び領域AR4の清掃が終了したら、制御部13は、ブラシ部26bを待機位置である(D0位置)へ戻す。
【0071】
この清掃動作の実行有無を自動的に判定する自動清掃動作の手順例が、フロー図である
図11に示される。
制御部13の領域分割処理部13aは、まず、すべての領域AR1〜AR12について、累積加工時間Tをリセット(ゼロ)にする(Step1)。
レーザ加工を実行し(Step2)、その後、累積加工時間Tが閾値の時間Ta以上となった領域の有無を判定する(Step3)。
無(No)と判定された場合、(Step2)へ戻る
有(Yes)と判定された場合、有と判定された領域についてのみ、清掃動作を実行する(Step4)。
【0072】
ここで実行する清掃動作の動作モードは、時間Taを超えた累積加工時間の長短や加工したワークの材質等の、付着物の多少及び付着具合(強固さ)に影響を与えるパラメータの量に基づいて設定する。
例えば、累積加工時間が長いほど、付着物が強固に付着していると推測されるので、より強力に付着物をかき取れる動作モードを選択する。例えば、(モードB:ブラッシング動作モード)を実行後、(モードA:掃出し動作モード)を実行させる。また、各モードの実行時間を長くするなどの制御を行う。
【0073】
領域分割処理部13aは、清掃動作を実行したら、その実行した領域について、累積加工時間Tをリセットする(Step5)。
次に、領域分割処理部13aは、自動清掃動作を終了する指示が入来しているか否かを判定する(Step6)
否(No)の場合、(Step2)へ戻る。
是(Yes)の場合、終了する。
【0074】
加工機1Aでは、清掃動作をカッティングプレート8a,8bの長手全体にわたって行うモードに加え、一部の、清掃が必要と推測される領域のみに行うことができる。これにより、加工機1Aの稼働時間における、清掃により中断する時間が短縮され、加工機1Aの稼働効率が向上する。
また、清掃不要な領域を掃除することがないので、その分、ブラシ束26b1が長寿命となり、メンテナンス効率向上及びメンテナンス費用低減が図れる。
【0075】
実施例及び変形例では、一対のカッティングプレート8a,8bに、ワークWを支持する支持部材としてワーク支持ブラシ8cが植設された例を説明したが、支持部材は、フリーベア(登録商標)などの回転支持具であってもよい。
従って、ブラシ束群26bGが接触して清掃する被清掃部材は、ブラシを含むワーク支持部材であってよい。
【0076】
エアシリンダ25aを3ポジションではなく2ポジションのものとした場合、ブラシ部26bの高さ位置を、待機状態と掃出し状態との位置出しを可能とするか、待機状態と側面清掃状態との位置出しを可能とするか、適宜選択可能である。
前者の場合、上述の(モードA:掃出し動作モード)及び(モードB:ブラッシング動作モード)が実行可能となる。
後者の場合、上述の(モードC:側面かき取り動作モード)が実行可能となる。
【0077】
レーザ加工機は、上述のレーザ・パンチ複合加工機に限定されない。
カッティングプレート8a,8b及び落とし込み孔9に対し、ワークWを二次元平面上で移動可能な構造のレーザ加工機であれば適用可能である。
【0078】
アクチュエータ25aは、エアシリンダに限定されない。ブラシ部26bを二ポジション又は三ポジションで維持すると共に各ポジション間で移動可能であれば、他の駆動装置を適用できる。