(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記作動ガスシール部は、前記第1高圧区間とは反対側で前記第2高圧区間と隣接する第1緩衝区間を形成し、前記第1緩衝区間は、前記周囲圧力より高く前記第2高圧より低い第1緩衝圧を有することを特徴とする請求項1に記載の極低温冷凍機。
前記作動ガスシール部は、前記第1高圧区間とは反対側で前記加圧区間と隣接する第2緩衝区間を形成し、前記第2緩衝区間は、前記周囲圧力より高く前記中間圧より低い第2緩衝圧を有することを特徴とする請求項2から6のいずれかに記載の極低温冷凍機。
極低温冷凍機の圧縮機と前記極低温冷凍機の膨張機との流体連絡のためのロータリージョイントであって、前記圧縮機は静止部に設置され、前記膨張機は前記静止部に軸回転可能に支持される回転部に設置され、前記ロータリージョイントは、
前記回転部の回転軸と同軸に前記回転部に固定されるロータと、
前記ロータとの間にクリアランスを形成するよう前記ロータと隣接配置され前記静止部に固定されるステータと、
前記極低温冷凍機の周囲圧力より高い圧力を有する作動ガスの流路であって、前記ステータから前記クリアランスを通じて前記ロータに至る作動ガスの流路と、
前記作動ガスの流路に連通する高圧区間、前記高圧区間と隣接する第1加圧区間、及び、前記第1加圧区間とは反対側で前記高圧区間と隣接する第2加圧区間へと前記クリアランスを仕切る作動ガスシール部と、を備え、
前記第1加圧区間は、前記周囲圧力より高く前記高圧区間より低い第1中間圧を有し、前記第2加圧区間は、前記周囲圧力より高く前記高圧区間より低い第2中間圧を有することを特徴とするロータリージョイント。
前記作動ガスシール部は、前記シールディスクを前記ステータに連結し前記シールディスクを前記環状平坦面に付勢する付勢部材を備えることを特徴とする請求項11に記載の極低温冷凍機。
前記シールディスクは、前記第2高圧を受ける受圧面を有し、前記第2高圧によって前記環状平坦面に押し付けられることを特徴とする請求項11または12に記載の極低温冷凍機。
前記作動ガスシール部は、前記シールディスクと前記ロータとの間に配設され前記回転軸まわりに延在する第1補助シールを備え、前記クリアランスは、前記第1補助シールと前記シール面との間に形成される緩衝区間を含み、前記緩衝区間は、前記周囲圧力より高く前記第2高圧より低い緩衝圧を有することを特徴とする請求項11から13のいずれかに記載の極低温冷凍機。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、以下に述べる構成は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0014】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る極低温冷凍機10を概略的に示す図である。極低温冷凍機10は、作動ガス(例えばヘリウムガス)を圧縮する圧縮機12と、作動ガスを断熱膨張により冷却する膨張機14と、を備える。極低温冷凍機10は、ギフォードマクマホン(Gifford-McMahon;GM)冷凍機など任意の蓄冷式冷凍機である。
【0015】
極低温冷凍機10は、静止部50と回転部52を有する装置に設置されている。回転部52は、静止部50に軸回転可能に支持されている。つまり回転部52は所定の回転軸まわりに回転可能に静止部50に支持されている。回転軸の方向は
図1における上下方向である。極低温冷凍機10は、回転部52に設けられた回転する物体68を冷却する。物体68は例えば超伝導装置(例えば超電導コイル)である。そのため、膨張機14は、回転部52に設置されている。圧縮機12は、静止部50に設置されている。
【0016】
回転部52は、回転テーブル54と真空容器56を備え、静止部50は、支持表面58、支持体60、及び支持台62を備える。回転テーブル54は、回転部52の回転軸まわりに回転可能に軸受64を介して支持体60に支持されている。真空容器56は回転テーブル54に取り付けられている。膨張機14は、その低温部が真空容器56に収容されるように真空容器56に取り付けられている。極低温冷凍機10によって冷却されるべき物体68も真空容器56に収容されている。物体68は、膨張機14の低温部に熱的に連結されるとともに、回転テーブル54に物体支持部材69によって支持されている。物体支持部材69は、熱伝導率が小さい材料(例えば、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP))で形成されている。また、回転テーブル54は、回転部52の回転軸を中心とするテーブル開口66を有する。一方、支持体60は支持表面58に支持されている。支持台62もまた支持表面58に支持されている。圧縮機12は、支持表面58に取り付けられている。
【0017】
圧縮機12は、第1高圧作動ガスを膨張機14に供給する。第1高圧作動ガスは、極低温冷凍機10の周囲圧力Paより高い第1高圧Phを有する。極低温冷凍機10の周囲圧力Paは例えば大気圧または0.1MPaである。第1高圧Phは例えば、周囲圧力Paの10倍の圧力(1MPa)、または、周囲圧力Paの20倍の圧力(2MPa)より大きい。
【0018】
膨張機14における断熱膨張によって、第1高圧作動ガスは第2高圧作動ガスへと減圧される。第2高圧作動ガスは、極低温冷凍機10の周囲圧力Paより高く第1高圧Phより低い第2高圧Plを有する。第2高圧Plは例えば、周囲圧力Paの10倍の圧力(1MPa)、または、周囲圧力Paの20倍の圧力(2MPa)より小さい。圧縮機12は、第2高圧作動ガスを膨張機14から回収する。圧縮機12によって、第2高圧作動ガスは第1高圧作動ガスへと再び加圧される。
【0019】
極低温冷凍機10は、圧縮機12から膨張機14に第1高圧作動ガスを送出すると共に膨張機14から圧縮機12に第2高圧作動ガスを還流するよう圧縮機12を膨張機14に接続する作動ガスライン16を備える。作動ガスライン16は、圧縮機12と膨張機14との間で作動ガスを循環させるための配管系である。作動ガスライン16は、第1静止部ガスライン18、第2静止部ガスライン20、第1回転部ガスライン22、第2回転部ガスライン24、及びロータリージョイント100を備える。ロータリージョイント100は、圧縮機12と膨張機14との流体連絡のために設けられており、第1高圧流路102と第2高圧流路104を有する。
【0020】
第1静止部ガスライン18及び第2静止部ガスライン20は静止部50に配置されている。第1静止部ガスライン18は、圧縮機12のガス送出ポートをロータリージョイント100の第1高圧流路102に接続する。第2静止部ガスライン20は、圧縮機12のガス受入ポートをロータリージョイント100の第2高圧流路104に接続する。
【0021】
第1回転部ガスライン22及び第2回転部ガスライン24は回転部52に配置されている。第1回転部ガスライン22は、膨張機14のガス受入ポートをロータリージョイント100の第1高圧流路102に接続する。第2回転部ガスライン24は、膨張機14のガス送出ポートをロータリージョイント100の第2高圧流路104に接続する。第1回転部ガスライン22及び第2回転部ガスライン24はそれぞれテーブル開口66を通じて第1高圧流路102及び第2高圧流路104に接続されている。
【0022】
よって、圧縮機12は、第1高圧作動ガスを、第1静止部ガスライン18、第1高圧流路102、及び第1回転部ガスライン22を通じて膨張機14に供給する。また、圧縮機12は、第2高圧作動ガスを、第2回転部ガスライン24、第2高圧流路104、及び第2静止部ガスライン20を通じて膨張機14から回収する。
【0023】
ロータリージョイント100は、ロータ106とステータ108を備える。ロータ106は、回転部52の回転軸と同軸に配設される軸部材である。ロータ106は、回転部52の回転軸を中心軸とする円筒状の外周面を有する。ステータ108は、静止部50に固定される非回転部材である。ステータ108は、回転部52の回転軸と同軸に配設されロータ106を囲む中空部材である。ステータ108は、回転部52の回転軸を中心軸とする円筒状の内周面を有する。
【0024】
ロータ106とステータ108との間にはクリアランス110が形成されている。ステータ108は、クリアランス110を形成するようロータ106と隣接配置されている。クリアランス110は、ステータ108に対するロータ106の回転運動を許容するための僅かな径方向隙間であり、ステータ108の内径はロータ106の外径よりわずかに大きい。
【0025】
ロータ106は、回転部52に固定されるロータ基部112を有する。ロータ106は、回転部52の回転軸に沿ってロータ基部112から延在し、ロータ軸端114で終端する。ロータ軸端114は、支持台62との間に狭い軸方向隙間を有して支持台62の近傍に位置する。ステータ108は、支持台62に固定されロータ軸端114を囲むステータ基部116を有する。ステータ108は、回転部52の回転軸に沿ってステータ基部116から延在し、ステータ端118で終端する。ステータ端118は、ロータ基部112との間に狭い軸方向隙間を有してロータ基部112の近傍に位置する。このようにして、クリアランス110は、ロータ基部112/ステータ端118とロータ軸端114/ステータ基部116との間に形成されている。
【0026】
本書では、説明の便宜のために、軸方向においてロータ基部112/ステータ端118に近い側を「上」と称し、ロータ軸端114/ステータ基部116に近い側を「下」と称することがある。このような表記は極低温冷凍機10の配置を限定するものではない。回転部52の回転軸は任意の方向に向けられていてもよい。例えば、回転軸は水平面に平行であってもよく、極低温冷凍機10の現実の配置においてロータ106が左右に延在していてもよい。
【0027】
ロータリージョイント100は、クリアランス110を軸方向に少なくとも3つの区間に仕切る作動ガスシール部120を備える。作動ガスシール部120は、上方第2高圧区間124、第1高圧区間126、及び下方第2高圧区間128へとクリアランス110を分割する。第1高圧区間126は軸方向中央に位置し、この両側に2つの第2高圧区間が隣接する。第1高圧区間126は第1高圧流路102に連通する。上方第2高圧区間124及び下方第2高圧区間128は第2高圧流路104に連通する。
【0028】
さらに、上方第2高圧区間124及び下方第2高圧区間128それぞれの軸方向外側には上方周囲圧力区間122及び下方周囲圧力区間130がある。よって、作動ガスシール部120は、クリアランス110を5つの区間、すなわち、上方周囲圧力区間122、上方第2高圧区間124、第1高圧区間126、下方第2高圧区間128、及び下方周囲圧力区間130に分割するとも言える。
【0029】
このような区間分割のために、作動ガスシール部120は、軸方向に互いに離間して配設される4つのシールを備える。各シールは、ロータ106の外周面とステータ108の内周面との間を回転軸まわりに延在するリング状または環状のシール部材、例えばOリングなどのシールリングである。4つのシールとは、図において上から下に、第1シール132、第2シール134、第3シール136、及び第4シール138である。
【0030】
第1シール132は、上方周囲圧力区間122と上方第2高圧区間124との第1境界を定める。第2シール134は、上方第2高圧区間124と第1高圧区間126との第2境界を定める。第3シール136は、第1高圧区間126と下方第2高圧区間128との第3境界を定める。第4シール138は、下方第2高圧区間128と下方周囲圧力区間130との第4境界を定める。すなわち、第1シール132及び第4シール138は、加圧区間を周囲環境から仕切る一対の外側シールである。第2シール134及び第3シール136は、加圧区間の中央部に第1高圧区間126を形成する一対の内側シールである。
【0031】
第1高圧流路102は、ステータ108からクリアランス110の第1高圧区間126を通じてロータ106に至るロータリージョイント100のガス流通路である。第1高圧流路102は、ロータ基部112に開口する第1出口140、第1高圧区間126に開口する第1入口142、及び、第1入口142を第1出口140につなぐ第1接続路144を有する。第1入口142は、ロータ106の外周面上で回転軸まわりに形成された環状溝である。第1接続路144は、回転軸に垂直な方向から回転軸に平行な方向に途中で方向を変える。第1高圧作動ガスは、第1静止部ガスライン18から第1高圧区間126、第1入口142、第1接続路144、及び第1出口140を通じて第1回転部ガスライン22へと流れる。
【0032】
第2高圧流路104は、第1高圧流路102と並列に形成され、ロータ106からクリアランス110の上方第2高圧区間124及び下方第2高圧区間128を通じてステータ108に至るもう1つのガス流通路である。第2高圧流路104は、ロータ基部112に開口する第2入口146、上方第2高圧区間124に開口する第2上方出口148、下方第2高圧区間128に開口する第2下方出口150、及び、第2入口146を第2上方出口148と第2下方出口150に分岐する第2接続路152を有する。第2上方出口148及び第2下方出口150はそれぞれロータ106の外周面上で回転軸まわりに形成された環状溝である。第2接続路152は、回転軸に平行な方向から回転軸に垂直な方向に途中で方向を変える。
【0033】
第2高圧作動ガスは、第2回転部ガスライン24から第2入口146、第2接続路152、第2上方出口148、及び上方第2高圧区間124を通じて第2静止部ガスライン20へと流れる。また、第2高圧作動ガスは、第2回転部ガスライン24から第2入口146、第2接続路152、第2下方出口150、及び下方第2高圧区間128を通じて第2静止部ガスライン20へと流れる。第2接続路152で分岐した2つの第2高圧作動ガス流れは第2静止部ガスライン20で合流する。
【0034】
第1の実施の形態によると、第1高圧区間126が2つの第2高圧区間で挟まれている。こうして、第1高圧区間126の両側に中間圧区間が介在する。したがって、第1高圧区間126が周囲圧力Paに直に隣接する場合に比べて、第1高圧区間126から周囲環境への第1高圧作動ガスの漏れを低減することができる。
【0035】
ある実施の形態においては、作動ガスシール部120は、第1高圧区間126、上方第2高圧区間124、及び、下方加圧区間へとクリアランス110を仕切ってもよい。あるいは、作動ガスシール部120は、第1高圧区間126、上方加圧区間、及び、下方第2高圧区間128へとクリアランス110を仕切ってもよい。あるいは、作動ガスシール部120は、第1高圧区間126、上方加圧区間、及び、下方加圧区間へとクリアランス110を仕切ってもよい。ここで、上方加圧区間及び下方加圧区間は、第1高圧区間126と隣接するが第2高圧流路104から独立した中間圧領域である。上方加圧区間及び下方加圧区間はそれぞれ、周囲圧力Paより高く第1高圧Phより低い第1中間圧及び第2中間圧を有する。第1中間圧は、第2中間圧と等しくてもよいし、異なってもよい。第1中間圧及び第2中間圧の少なくとも一方は第2高圧Plに等しくてもよい。
【0036】
ある実施の形態においては、少なくとも1つの第2高圧区間は、第1高圧区間126と隣接せず軸方向に離れていてもよい。この場合、作動ガスシール部120は、第2高圧区間、上方加圧区間、及び、下方加圧区間へとクリアランス110を仕切ってもよい。ここで、上方加圧区間及び下方加圧区間はそれぞれ、周囲圧力Paより高く第2高圧Plより低い第1中間圧及び第2中間圧を有する。
【0037】
第2高圧Pl、第1中間圧、及び/または第2中間圧は、0.11MPaから0.2MPaの範囲から選択されてもよい。このようにすれば、周囲圧力Paが大気圧である場合に、第2高圧区間(及び/または加圧区間)と周囲圧力区間との差圧を0.1MPa以下に小さくすることができる。その場合、加圧区間を周囲環境から仕切る一対の外側シールとして磁性流体シールを採用することができる。
【0038】
ある実施の形態においては、作動ガスライン16は、第1静止部ガスライン18を第1回転部ガスライン22に接続する第1ロータリージョイントと、第2静止部ガスライン20を第2回転部ガスライン24に接続する第2ロータリージョイントと、を備えてもよい。第1ロータリージョイントは第1ロータ及び第1ステータを備え、第1ロータと第1ステータとの間に第1クリアランスが形成されてもよい。第1ロータリージョイントは、第1高圧区間、上方加圧区間、及び、下方加圧区間へと第1クリアランスを仕切る第1作動ガスシール部を備えてもよい。第2ロータリージョイントは第2ロータ及び第2ステータを備え、第2ロータと第2ステータとの間に第2クリアランスが形成されてもよい。第2ロータリージョイントは、第2高圧区間、上方加圧区間、及び、下方加圧区間へと第2クリアランスを仕切る第2作動ガスシール部を備えてもよい。
【0039】
(第2の実施の形態)
図2は、本発明の第2の実施の形態に係る極低温冷凍機10を概略的に示す図である。第2の実施の形態に係る極低温冷凍機10は、2つの第2高圧区間(または、上方加圧区間及び下方加圧区間)の更に両側に2つの緩衝区間を追加的に有する点で、第1の実施の形態に係る極低温冷凍機10と相違する。すなわち、第2高圧区間と周囲圧力区間との間に緩衝区間が形成される。
【0040】
作動ガスシール部120は、第1緩衝区間154及び第2緩衝区間156をクリアランス110に形成する。第1緩衝区間154は、第1高圧区間126とは軸方向反対側で上方第2高圧区間124と隣接する。第2緩衝区間156は、第1高圧区間126とは軸方向反対側で下方第2高圧区間128と隣接する。また、第1緩衝区間154は、ロータ106の外周面上で回転軸まわりに形成された第1環状溝155を含む。第2緩衝区間156は、ロータ106の外周面上で回転軸まわりに形成された第2環状溝157を含む。
【0041】
第1緩衝区間154及び第2緩衝区間156はそれぞれ、周囲圧力Paより高く第2高圧Plより低い第1緩衝圧及び第2緩衝圧を有する。第1緩衝圧は第2緩衝圧と等しくてもよいし、異なっていてもよい。
【0042】
作動ガスシール部120は、第1シール132、第2シール134、第3シール136、及び第4シール138に加えて、第1補助シール158及び第2補助シール160を備える。これら6つのシールは、軸方向に互いに離間してクリアランス110に配設される。第1補助シール158及び第2補助シール160は、他のシールと同様に、ロータ106の外周面とステータ108の内周面との間を回転軸まわりに延在するリング状または環状のシール部材、例えばOリングなどのシールリングである。
【0043】
第1補助シール158は、上方周囲圧力区間122と第1緩衝区間154との境界を定める。第2補助シール160は、第2緩衝区間156と下方周囲圧力区間130との境界を定める。第1補助シール158及び第2補助シール160は、緩衝区間を周囲環境から仕切る一対の最外側シールである。これら最外側シールの間に第1シール132及び第4シール138は位置する。よって、第1シール132は、第1緩衝区間154と上方第2高圧区間124との境界を定める。第4シール138は、下方第2高圧区間128と第2緩衝区間156との境界を定める。
【0044】
第2の実施の形態によると、第1高圧区間126が2つの第2高圧区間で挟まれ、これら2つの第2高圧区間がさらに2つの緩衝区間で挟まれている。こうして、第1高圧区間126の両側で、第1高圧区間126と周囲圧力Paとの間に2つの中間圧区間がある。したがって、第1高圧区間126が周囲圧力Paに直に隣接する場合に比べて、第1高圧区間126から周囲環境への第1高圧作動ガスの漏れを低減することができる。また、第2高圧区間が周囲圧力Paに直に隣接する場合に比べて、第2高圧区間から周囲環境への第2高圧作動ガスの漏れを低減することができる。
【0045】
第1緩衝圧及び/または第2緩衝圧は、0.11MPaから0.2MPaの範囲から選択されてもよい。このようにすれば、周囲圧力Paが大気圧である場合に、緩衝区間と周囲圧力区間との差圧を0.1MPa以下に小さくすることができる。その場合、緩衝区間を周囲環境から仕切る一対の最外側シールとして磁性流体シールを採用することができる。また、極低温冷凍機10の通常の運転圧力を第2高圧Plとして使用することができる。この場合、第2高圧Plは、例えば、0.2MPaより高く1MPaより低い範囲から選択される圧力であってもよい。
【0046】
ある実施の形態においては、
図3に示されるように、ロータリージョイント100は、緩衝容積162または圧力制御容積を備えてもよい。緩衝容積162は例えばバッファタンクである。緩衝容積162は、静止部50に設置され、連絡路164を用いて第1緩衝区間154及び第2緩衝区間156に接続される。緩衝容積162は、周囲圧力Paより高く第2高圧Plより低い圧力、例えば、0.11MPaから0.2MPaの範囲から選択される圧力を有する。たとえ第1シール132及び第4シール138を通じた緩衝区間へのガス漏れが生じたとしても、第1緩衝区間154及び第2緩衝区間156の圧力上昇を緩衝容積162によって抑制することができる。
【0047】
ある実施の形態においては、緩衝容積162は、回転部52に設置されてもよく、その場合、緩衝容積162は、連絡路164としてのロータ内部流路を通じて第1緩衝区間154及び第2緩衝区間156に接続されてもよい。また、ある実施の形態においては、緩衝容積162は、第1緩衝区間154に接続される第1緩衝容積と、第2緩衝区間156に接続される第2緩衝容積と、を含んでもよい。
【0048】
ある実施の形態においては、
図4に示されるように、ロータリージョイント100は、連絡路164に圧力制御弁166を備えてもよい。緩衝容積162は、圧力制御弁166を介して第1緩衝区間154及び第2緩衝区間156に接続される。圧力制御弁166は、緩衝容積162と緩衝区間との差圧によって機械的に開閉される。緩衝区間のほうが高圧となって差圧が所定値を越えるとき圧力制御弁166は開かれる。こうして、圧力制御弁166を通じて第1緩衝区間154及び第2緩衝区間156の圧力を緩衝容積162に解放することができる。よって、第1緩衝区間154及び第2緩衝区間156の圧力上昇を抑制することができる。
【0049】
ある実施の形態においては、ロータリージョイント100は、第1圧力制御弁及び第2圧力制御弁を備えてもよい。緩衝容積162は、第1圧力制御弁を介して第1緩衝区間154に接続され、第2圧力制御弁を介して第2緩衝区間156に接続されてもよい。
【0050】
緩衝容積162に代えて、ある実施の形態においては、
図5に示されるように、ロータリージョイント100は、連絡路164に補助圧縮機168を備えてもよい。緩衝区間及び連絡路164の圧力を測定する圧力センサ170が設けられていてもよい。また、圧力センサ170の測定圧力に基づいて補助圧縮機168を制御する制御部172が設けられていてもよい。制御部172は、極低温冷凍機10を制御するための制御装置の一部であってもよい。
【0051】
第1緩衝区間154及び第2緩衝区間156は、補助圧縮機168を介して上方第2高圧区間124に接続される。制御部172は、緩衝区間の圧力が所定値を超えるか否かを圧力センサ170の測定圧力から決定する。制御部172は、緩衝区間の圧力が所定値を超えない場合、補助圧縮機168を運転しない。一方、制御部172は、緩衝区間の圧力が所定値を超える場合、補助圧縮機168を運転する。こうして、補助圧縮機168は、第1緩衝区間154及び第2緩衝区間156からガスを回収して圧縮し、そのガスを上方第2高圧区間124に供給する。このようにしても、第1緩衝区間154及び第2緩衝区間156の圧力上昇を抑制することができる。
【0052】
ある実施の形態においては、第1緩衝区間154及び第2緩衝区間156は、補助圧縮機168を介して、第1高圧区間126、下方第2高圧区間128、または極低温冷凍機10における他の任意の高圧領域に接続されてもよい。また、ある実施の形態においては、補助圧縮機168は、第1補助圧縮機及び第2補助圧縮機を含んでもよい。第1緩衝区間154は、第1補助圧縮機を介して上方第2高圧区間124または他の任意の高圧領域に接続されてもよい。第2緩衝区間156は、第2補助圧縮機を介して下方第2高圧区間128または他の任意の高圧領域に接続されてもよい。ある実施の形態においては、ロータリージョイント100は、緩衝容積162及び補助圧縮機168の両方を備えてもよい。
【0053】
ある実施の形態においては、作動ガスシール部120は、第1緩衝区間154及び第2緩衝区間156の一方のみをクリアランス110に形成してもよい。また、ある実施の形態においては、第1緩衝区間154及び/または第2緩衝区間156には、極低温冷凍機10の作動ガスとは異なるガス、例えば周囲環境と同じガスが封じられていてもよい。
【0054】
(第3の実施の形態)
図6は、本発明の第3の実施の形態に係る極低温冷凍機10を概略的に示す図である。第3の実施の形態に係る極低温冷凍機10は、低圧側のシール構造に関して第1及び第2の実施の形態に係る極低温冷凍機10と相違する。
【0055】
第1及び第2の実施の形態に係る極低温冷凍機10と同様に、第3の実施の形態に係る極低温冷凍機10においても、ロータ106とステータ108との間にはクリアランス110が形成されている。ステータ108は、クリアランス110を形成するようロータ106と隣接配置されている。
【0056】
ロータ106は、回転部52に固定されるロータ基部112と、回転部52の回転軸に沿ってロータ基部112から同軸に延在するロータ軸部174と、を備える。ロータ基部112は、回転軸の周囲で径方向に延在し回転軸に垂直な環状平坦面175を有する。ロータ軸部174は、ロータ基部112より細い。ロータ軸部174は、環状平坦面175の中心部から突出しロータ軸端114で終端する。
【0057】
こうしたロータ形状に対応して、ステータ108は、ステータ小径部176及びステータ大径部178を備える。ステータ108は、ステータ小径部176とステータ大径部178の間にこれらを径方向につなぐステータ段部177を備える。ステータ小径部176はロータ軸端114を同軸に囲み、ステータ大径部178はロータ軸部174を同軸に囲む。
【0058】
また、ステータ108は、支持台62に固定されるステータ底壁部179を備える。ステータ底壁部179は、ステータ小径部176の下端を閉じ、ロータ軸端114を囲む半密閉区画を形成する。隣接する二部材間にシールを挟み込むことに代えて、ステータ108は、ステータ108の下端における気密性を構造的に保持する。
【0059】
ステータ小径部176は、回転部52の回転軸に沿ってステータ底壁部179からステータ段部177へと延在する。ステータ大径部178は、回転部52の回転軸に沿ってステータ段部177からステータ端118へと延在する。
【0060】
作動ガスシール部120は、第1高圧流路102に連通する第1高圧区間126と第2高圧流路104に連通する第2高圧区間127とにクリアランス110を仕切る。第1高圧区間126は第2高圧区間127と隣接する。周囲圧力区間123は、第1高圧区間126とは反対側で第2高圧区間127と隣接する。そのために、作動ガスシール部120は、軸方向に互いに離間して配設される3つのシール、すなわち、第1シール132、第2シール134、及びシールディスク180を備える。
【0061】
シールディスク180は、周囲圧力Paから第2高圧区間127をシールするよう回転部52の回転軸まわりに配設される。シールディスク180は、ステータ大径部178に囲まれている。また、シールディスク180は、ロータ軸部174を同軸に囲む筒状部材である。この筒部の一方の端面は、環状平坦面175に接触するリング状のシール面182である。筒部の他方の端面は、第2高圧区間127に面する受圧面184である。受圧面184が第2高圧Plを受けることにより、シールディスク180は環状平坦面175に押し付けられる。
【0062】
また、作動ガスシール部120は、シールディスク180をステータ108に連結しシールディスク180を環状平坦面175に付勢する付勢部材186を備える。付勢部材186は例えば、押しバネである。付勢部材186の一端はステータ段部177に取り付けられ、他端は受圧面184に取り付けられている。第2高圧Plだけでなく付勢部材186によっても、シールディスク180は環状平坦面175に押し付けられる。
【0063】
シールディスク180はステータ108に連結されているので、ステータ108と同様に非回転部材である。ただし、シールディスク180は、ステータ108に対し軸方向に遊びをもって連結されている。ガイドピン188がステータ大径部178に設けられ、シールディスク180はガイドピン188を受け入れるガイドピン穴190を有する。ガイドピン188はステータ大径部178の内周面から径方向内向きに突き出している。ガイドピン穴190はシールディスク180の外周面においてガイドピン188に対向する位置に形成されている。ガイドピン188とガイドピン穴190との間には軸方向に遊びがあり、シールディスク180が環状平坦面175に付勢されるときシールディスク180は軸方向に僅かに移動することができる。
【0064】
シール面182は、周囲圧力区間123と第2高圧区間127との境界を定める。第1シール132も、周囲圧力区間123と第2高圧区間127との境界を定める。ただし、第1シール132は、ステータ108とシールディスク180との間に配設される。第1シール132は、ステータ大径部178の内周面とシールディスク180の外周面との隙間を回転軸まわりに周方向に延在する。第2シール134は、第2高圧区間127と第1高圧区間126との境界を定める。第2シール134は、ステータ小径部176の内周面とロータ軸部174の外周面との隙間を回転軸まわりに周方向に延在する。第1高圧区間126は、ロータ軸端114とステータ底壁部179との間に形成される。
【0065】
第1高圧流路102は、第1ロータ流路192及び第1ステータ流路194を有する。第1ロータ流路192は、ロータ基部112からロータ軸端114へと軸方向にロータ軸部174を貫通する。第1ステータ流路194は、ステータ小径部176を径方向に貫通する。第1高圧作動ガスは、第1静止部ガスライン18から第1ステータ流路194、第1高圧区間126、及び第1ロータ流路192を通じて第1回転部ガスライン22へと流れる。
【0066】
第2高圧流路104は、第2ロータ流路196及び第2ステータ流路198を有する。第2ロータ流路196は、ロータ基部112を軸方向に貫通する。第2ステータ流路198は、ステータ大径部178を径方向に貫通する。第2高圧作動ガスは、第2回転部ガスライン24から第2ロータ流路196、第2高圧区間127、及び第2ステータ流路198を通じて第2静止部ガスライン20へと流れる。
【0067】
第3の実施の形態によると、作動ガスシール部120は、シールディスク180とロータ基部112との間に軸方向接触シールを形成する。シール面182の面積を十分に大きくすることにより、第2高圧区間127から周囲環境への第2高圧作動ガスの漏れを顕著に低減することができる。第1シール132は2つの非回転部材の間に設けられているので、これを回転部52と静止部50との間に設ける場合に比べて、良好なシール性を実現することが容易である。
【0068】
また、ステータ108の下端はステータ底壁部179によって密閉されているので、第1高圧区間126から周囲環境への第1高圧作動ガスの漏れを防止することができる。
【0069】
作動ガスシール部120は、第1高圧区間126において第1径を有し、第2高圧区間127において第2径を有し、第1径は第2径より小さい。よって、第2シール134の周方向長さは、第1シール132の周方向長さより短い。短いシールを高圧側に用いることにより、高圧側からの漏れを抑制することができる。
【0070】
ある実施の形態においては、
図7に示されるように、作動ガスシール部120は、シールディスク180とロータ106との間に配設され回転部52の回転軸まわりに延在する第1補助シール158を備えてもよい。
【0071】
ロータ軸部174は、第1補助シール158を取り付けるための拡径部174aを備えてもよい。第1補助シール158は、シールディスク180の内周面とロータ軸部174の拡径部174aの外周面との隙間を回転軸まわりに周方向に延在してもよい。第1補助シール158は、第1シール132と同じ軸方向位置において第1シール132の径方向内側に配置されていてもよい。
【0072】
クリアランス110は、第1補助シール158とシール面182との間に形成される緩衝区間153を含んでもよい。緩衝区間153は、周囲圧力Paより高く第2高圧Plより低い緩衝圧を有してもよい。このようにしても、第2高圧区間127から周囲環境への第2高圧作動ガスの漏れを低減することができる。
【0073】
(第4の実施の形態)
図8は、本発明の第4の実施の形態に係る極低温冷凍機10を概略的に示す図である。第4の実施の形態に係る極低温冷凍機10においては、第3の実施の形態に係る極低温冷凍機10と同様に、作動ガスシール部120は、第1高圧区間126において第1径を有し、第2高圧区間127において第2径を有し、第1径は第2径より小さい。
【0074】
ただし、第4の実施の形態に係る極低温冷凍機10は、第3の実施の形態に係る極低温冷凍機10と異なり、シールディスクを有しない。第4の実施の形態に係る極低温冷凍機10は、第1及び第2の実施の形態に係る極低温冷凍機10と同様に、第1シール132、第2シール134、及び第3シール136を有する。
【0075】
第1高圧区間126は第2高圧区間127より小径であるので、第2シール134及び第3シール136の周方向長さは、第1シール132の周方向長さより短い。短いシールを高圧側に用いることにより、高圧側からの漏れを抑制することができる。言い換えれば、クリアランス110は、高圧側において低圧側よりも小さい流路断面積を有する。このようにしても、第1高圧区間126から周囲環境への第1高圧作動ガスの漏れを抑制することができる。
【0076】
ある実施の形態においては、第3シール136の軸方向厚さは、第1シール132及び/または第2シール134の軸方向厚さより大きくてもよい。
【0077】
(第5の実施の形態)
図9は、本発明の第5の実施の形態に係る極低温冷凍機10を概略的に示す図である。第5の実施の形態に係る極低温冷凍機10においては、第3の実施の形態に係る極低温冷凍機10と同様に、ステータ底壁部179がロータ軸端114を囲む半密閉区画を形成する。ただし、第5の実施の形態に係る極低温冷凍機10は、第3の実施の形態に係る極低温冷凍機10と異なり、シールディスクを有しない。このようにしても、第1高圧区間126から周囲環境への第1高圧作動ガスの漏れを防止することができる。
【0078】
なお、第5の実施の形態に係る極低温冷凍機10においても、第4の実施の形態に係る極低温冷凍機10と同様に、作動ガスシール部120は、第1高圧区間126において第1径を有し、第2高圧区間127において第2径を有し、第1径は第2径より小さくてもよい。第2シール134の周方向長さは、第1シール132の周方向長さより短くてもよい。
【0079】
(第6の実施の形態)
図10は、本発明の第6の実施の形態に係る超電導風力発電装置200を概略的に示す図である。超電導風力発電装置200は、基礎202上に立設される支柱204と、支柱204の上端に設置されるナセル206と、該ナセル206に対して回転自在に組付けられた回転ヘッド208とを有している。回転ヘッド208には、複数枚の風車ブレード210が取り付けられている。ナセル206の内部において、回転ヘッド208には、超電導発電機212が接続されている。
【0080】
超電導発電機212は、静止部50、回転部52、及び、静止部50を回転部52に連結する連結機構214を備える。回転部52は、超電導コイルを有する。連結機構214は、第1ないし第5の実施の形態のいずれかに係るロータリージョイント100を含む。また、超電導発電機212には、第1ないし第5の実施の形態のいずれかに係る極低温冷凍機10が設置されている。上述のように、静止部50には圧縮機12が設置され、回転部52には膨張機14が設置されている。回転部52の超電導コイルが膨張機14によって冷却される。このようにして、超電導発電機212の回転部52を冷却する極低温冷凍機10を提供することができる。
【0081】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。