(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記硬化性樹脂組成物において、前記イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー及び前記ポリアミンの合計含有率が、80質量%以上である、請求項1に記載の床版防水構造。
前記舗装接着材層において、前記イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー又は前記ポリアミンと反応する基を有する成分の割合が、10%以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の床版防水構造。
【背景技術】
【0002】
道路橋等の道路構造体は、通常、コンクリート床版等の道路構造体本体の床版上に、アスファルト舗装層を敷設することによって形成されている。
【0003】
その際、アスファルト舗装層を透過した雨水や融雪水が直接に床版と接触すると、床版を構成している道路構造体本体自体が劣化することが知られている。従ってこのような問題を避けるために、アスファルト舗装層の舗設に先だって、床版上に防水層を構築することが一般的である。
【0004】
これに関して近年、良好な防水を達成するために、床版上にウレタン系又はウレア系の防水層を形成し、その上に、アスファルト舗装層を敷設することが行われている。
【0005】
ただし、この場合、ウレタン系又はウレア系の防水層上にアスファルト舗装層を直接に舗設すると、防水層に対するアスファルト舗装層の接着性が低く、アスファルト舗装層が剥離することが知られている。したがって、したがってこの問題を避けるために、防水層とアスファルト舗装層との間に舗装接着材を用いることが行われている。
【0006】
例えば、特許文献1及び2では、ウレタン系樹脂等の防水層とアスファルト舗装層との接着を促進するために、これらの層の間の舗装接着材として熱可塑性樹脂の粒状物又はシートを用い、アスファルト舗装層の舗設の際の熱でこの粒状物又はシートを溶融させてホットメルト接着材として用いることを提案している。
【0007】
また例えば、特許文献3では、ウレア系樹脂防水層とアスファルト舗装層との接着を促進するために、これらの層の間の舗装接着材としてアスファルト系接着材を用い、かつこのアスファルト系接着材に、ウレア系防水層に含有されるイソシアネート又はポリアミンに対する反応性を有する熱可塑性樹脂を含有させることを提案している。また、この特許文献3では、ウレア系防水層とアスファルト舗装層との接合を改良するために、ウレア系防水層に、テルペン樹脂等の粘着付与剤を添加することも提案している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の特許文献1〜3で用いられている舗装接着材等は、樹脂防水層とアスファルト舗装層との接着の問題を部分的に解決している。
【0010】
しかしながら、道路橋等が曝される夏期の高温条件等の厳しい環境を経ても、樹脂防水層とアスファルト舗装層との良好な接着を長期的に維持でき、かつ容易に施工できる床版防水構造及び防水層が更に求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の床版防水構造及び防水層、並びにそれらの施工方法は、これらの課題を解決するものであり、その態様としては、下記の態様を挙げることができる。
【0012】
〈1〉床版上に、防水層、舗装接着材層、及びアスファルト舗装層がこの順で積層されている、床版防水構造であって、
前記防水層が、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーとポリアミンとを含有する硬化性樹脂組成物を反応硬化させて得られるウレア系硬化型樹脂の層であり、かつ前記硬化性樹脂組成物において、非反応性液体成分及びポリオールの合計含有率が10質量%未満であり、かつ
前記舗装接着材層が、アスファルト系接着材又はホットメルト樹脂系接着材の層である、
床版防水構造。
〈2〉前記硬化性樹脂組成物において、前記イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー及び前記ポリアミンの合計含有率が、80質量%以上である、上記〈1〉項に記載の床版防水構造。
〈3〉前記硬化性樹脂組成物において、前記非反応性液体成分及び前記ポリオールの合計含有率が、5質量%以下である、上記〈1〉又は〈2〉項に記載の床版防水構造。
〈4〉前記硬化性樹脂組成物において、粘着付与剤の含有率が10質量%以下である、上記〈1〉〜〈3〉項のいずれか一項に記載の床版防水構造。
〈5〉前記舗装接着材層において、前記イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー又は前記ポリアミンと反応する基を有する成分の割合が、10%以下である、上記〈1〉〜〈4〉項のいずれか一項に記載の床版防水構造。
〈6〉前記床版と前記防水層との間にプライマー層を更に有する、上記〈1〉〜〈5〉項のいずれか一項に記載の床版防水構造。
〈7〉前記防水層と前記接着材層との間にプライマー層を更に有する、上記〈1〉〜〈6〉項のいずれか一項に記載の床版防水構造。
〈8〉上記プライマー層が反応性樹脂及びセメントを含有するプライマーから形成された層である、上記〈6〉又は〈7〉項に記載の床版防水構造。
〈9〉前記舗装着材層が、アスファルト系接着材である、上記〈1〉〜〈8〉項のいずれか一項に記載の床版防水構造。
〈10〉イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーとポリアミンとを含有する硬化性樹脂組成物を反応硬化させて得られ、かつ
前記硬化性樹脂組成物において、非反応性液体成分及びポリオールの合計含有率が10質量%未満である、
ウレア系硬化型樹脂の防水層。
〈11〉床版上に、防水層、舗装接着材層、及びアスファルト舗装層をこの順で積層することを含む、床版防水構造の施工方法であって、
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーとポリアミンとを含有する硬化性樹脂組成物を前記床版上に塗布し、そして反応硬化させてウレア系硬化型樹脂の層にすることによって、前記防水層を形成することを含み、かつ
前記硬化性樹脂組成物において、非反応性液体成分及びポリオールの合計含有率が10質量%未満であり、かつ前記舗装接着材層が、アスファルト系接着材又はホットメルト樹脂系接着材の層である、
床版防水構造。
〈12〉ウレア系硬化型樹脂の防水層の施工方法であって、
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーとポリアミンとを含有する硬化性樹脂組成物を前記床版上に塗布し、そして反応硬化させてウレア系硬化型樹脂の層にすることによって、前記防水層を形成することを含み、かつ
前記硬化性樹脂組成物において、非反応性液体成分及びポリオールの合計含有率が10質量%未満であり、かつ前記舗装接着材層が、アスファルト系接着材又はホットメルト樹脂系接着材の層である、
ウレア系硬化型樹脂の防水層の施工方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の床版防水構造及び防水層、並びにそれらの施工方法によれば、道路橋等が曝される夏期の高温条件等の厳しい環境を経ても、樹脂防水層とアスファルト舗装層との良好な接着を長期的に維持でき、かつ容易に施工できる。
【0014】
また、本発明の床版防水構造及び防水層、並びにそれらの施工方法によれば、夏期の高温条件等の長期的な厳しい環境に耐えるだけでなく、アスファルト舗装を敷設する際の100℃を超える短期的な加熱にも耐えることができ、したがって樹脂防水層とアスファルト舗装層との間の初期接着性を改良することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
《床版防水構造》
本発明の床版防水構造では、床版上に、防水層、舗装接着材層、及びアスファルト舗装層がこの順で積層されている。
【0017】
具体的には例えば、
図1で示すように、本発明の床版防水構造10は、道路橋床版等の床版1上に、プライマー層2、防水層3、プライマー層4、舗装接着材層5、及びアスファルト舗装層6がこの順で積層されて形成されている。
【0018】
本発明の床版防水構造の施工方法では、まず、床版1の表面を清掃後、床版1上にプライマーを塗布して、プライマー層2を形成する。このプライマー層2は任意であって、床版1とその上の防水層3との接着性等に依存して省略することもできる。
【0019】
プライマー層2の形成後その上に、又は床版1上に直接に、硬化性樹脂組成物を塗布し、そして反応硬化させて、防水層3を形成する。この防水層の厚さは、所望の防水効果が得られる限り特段の制限はないが、例えば0.5mm〜5.0mm、又は1.0mm〜2.0mmの厚みにすることができる。
【0020】
防水層3の形成後、防水層3上にプライマーを塗布し、プライマー層4を形成する。なお、このプライマー層4は任意であって、防水層3とその上の舗装接着材層5との接着性等に依存して省略することができる。
【0021】
プライマー層4の形成後その上に、又は防水層3上に直接に、舗装接着材層5を形成する。舗装接着材層5を形成する接着材は、ペレット又は粒子状の形状で提供して散布すること、シート状の形状で提供して敷設すること、又は溶融させた状態若しくは溶媒中に熔解させた状態で提供して塗布することができる。
【0022】
舗装接着材層5の形成後、必要に応じて珪砂などの砂を散布した後で、その上に加熱して軟化させたアスファルト混合物を舗設して、アスファルト舗装層6を形成する。これによれば、この加熱されたアスファルトを舗設する際の熱によって舗装接着材5が軟化し、そして冷却後に舗装接着材5が硬化することによって、舗装接着材5とアスファルト舗装層6とが良好に接着される。
【0023】
〈床版〉
本発明の床版防水構造で防水される床版は、道路橋床版等の床版であって、例えばコンクリート床版、PC(プレストレスト・コンクリート)床版、又は鋼床版である。
【0024】
〈プライマー層〉
本発明の床版防水構造は、床版と防水層との間のプライマー層、及び/又は防水層と舗装接着材層との間のプライマー層を任意に有することができる。このようなプライマー層は、床版と防水層との間の接着性、及び/又は防水層と舗装接着材層との間の接着性を改良できる任意のプライマーを用いて形成することができる。
【0025】
使用することができる具体的なプライマーとしては、ウレタン系樹脂、ウレア系樹脂、エポキシ系樹脂等の、反応性樹脂を挙げることができる。また、このプライマーは、セメントを更に含有して、床版と防水層との間の接着、及び/又は防水層と舗装接着材層との間の接着、特に防水層と舗装接着材層との間の接着を促進することができる。
【0026】
〈防水層〉
本発明の床版防水構造で用いられる防水層は、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーとポリアミンとを含有する硬化性樹脂組成物を反応硬化させて得られるウレア系硬化型樹脂の層である。なお、この「ウレア系硬化型樹脂」は、ウレタン結合部分とウレア結合部分とを有しているので、「ウレタンウレア系硬化型樹脂」として言及することもできる。
【0027】
この硬化性樹脂組成物において、非反応性液体成分及びポリオールの合計含有率は、10質量%以下、10質量%未満、8質量%以下、6質量%以下、5質量%以下、4質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1質量%以下、又は0.5質量%以下であり、特にこの硬化性樹脂組成物は、非反応性液体成分及びポリオールを実質的に含有していない。
【0028】
なお、本発明に関して「非反応性液体成分」は、硬化性樹脂組成物に含有されているイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーとポリアミンとの硬化反応の際に、これらのいずれとも実質的に反応しない成分であって、25℃1気圧において液体である成分を意味している。したがって、この「非反応性液体成分」としては、溶媒、可塑剤等の成分を挙げることができる。したがって例えば、非反応性液体成分である可塑剤の含有率が、10質量%未満、8質量%以下、6質量%以下、5質量%以下、4質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1質量%以下、又は0.5質量%以下であり、特にこの硬化性樹脂組成物が、非反応性液体成分である可塑剤を実質的に含有していない。
【0029】
一般的に、床版防水で用いられるウレタン系又はウレア系樹脂の防水層、特にウレア系樹脂の防水層では、その柔軟性を維持するために、非反応性液体成分である可塑剤を用いることが行われている。また、ウレタン系又はウレア系樹脂の防水層の原料組成物に溶剤を含有させて粘度を低下させ、それによって取り扱い性を改良することも考慮されている。なお、非反応性液体成分である可塑剤としては一般に、オイル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤が用いられている。オイル系可塑剤としては、例えばこめ油、大豆油、亜麻仁油、桐油、ひまし油、やし油、サフラワー油、トール油等を挙げることができる。また、フタル酸エステル系可塑剤としては、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジイソノニル等を挙げることができる。
【0030】
しかしながら、本件発明者等は、形成された防水層中に存在するこれらの非反応性液体成分は、防水層が夏期の高温条件等の厳しい環境に曝されたときに、及び/又は防水層がアスファルト舗装を敷設する際に100℃を超える高温条件に曝されたときに、防水層から滲出(ブリード・アウト)し、防水層とその上の接着層との界面に移動し、それよってこれらの層の間の接着性を低下させることを見出した。
【0031】
また、ポリオールは、イソシアネートと反応させてウレタンを形成するのに用いられるものであるが、ポリアミンと比較するとイソシアネートに対する反応速度が有意に小さく、また空気中の湿分として存在することがある水と比較しても反応速度が有意に小さいので、可塑剤等の非反応性液体成分と同様に、形成後の防水層から滲出する可能性があることを見出した。
【0032】
これに対して、本発明では、防水層を得るのに用いられる硬化性樹脂組成物において、可塑剤等の非反応性液体成分及びポリオールの含有率が小さいことによって、得られるウレア系硬化型樹脂に含有されるこれらの成分の含有率が低くなり、したがって防水層からの滲出、及びそれによる防水層とその上の舗装接着材層との間の接着性の低下の問題を抑制することができる。
【0033】
特許文献3では、床版防水で用いられるウレタン系又はウレア系樹脂の防水層、特にウレア系樹脂の防水層において、その上に積層する層との接着性を改良するために、粘着剤を含有させることを提案している。
【0034】
これに対して、本発明では、防水層を得るのに用いられる硬化性樹脂組成物は、粘着付与剤の含有率が好ましくは、10質量%以下、7質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、又は1質量%以下であり、特に粘着付与剤実質的に含有していない。
【0035】
これによれば、得られるウレア系硬化型樹脂の防水層の粘着性を低下させることができ、それによってその後の作業性を改良することができる。また他方で、本発明では、防水層における非反応性液体成分等の含有率が小さいことによって、非反応性液体成分等が防水層の表面に滲出することを防ぎ、それによって防水層と舗装接着材層との間の良好な接着を提供することができる。
【0036】
なお、一般的な粘着付与剤としては、テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、テルペン系水素添加樹脂、テルペンフェノール共重合体樹脂、クマロンインデンスチレン共重合体樹脂、クマロンインデン樹脂、インデン樹脂、クマロン樹脂、スチレン樹脂等を挙げることができる。
【0037】
なお、本発明では、防水層を得るのに用いられる硬化性樹脂組成物は、防水層と舗装接着材層との間の良好な接着性を阻害しない範囲で、アスファルト、例えばストレートアスファルトや、ポリマー改質アスファルトなどの改質アスファルト、ブローンアスファルトを更に含有していてもよい。
【0038】
上記のとおり、防水層を得るのに用いられる硬化性樹脂組成物では、非反応性液体成分及びポリオールの含有率が比較的低く、また好ましくは粘着付与剤の含有率も低い。したがって、防水層を得るのに用いられる硬化性樹脂組成物では、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーとポリアミンの合計含有率が比較的高く、例えば80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、又は98質量%以上であり、特にイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーとポリアミンのみから実質的に構成されている。
【0039】
なお、硬化性樹脂組成物は、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを含有する主剤と、ポリアミンを含有する硬化剤とを、施工現場で混合して得ることができる。すなわち、ウレア系硬化型樹脂は、二液硬化型のポリウレア樹脂として言及されるものであってよい。また、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーとポリアミンとの混合比率は、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーに含まれるイソシアネート基と、ポリアミンに含まれるアミノ基の比率に基づいて定められ、通常、イソシアネート基1個に対しアミノ基0.3〜2個、好ましくは0.5〜1個になるようにして決定することができる。
【0040】
〈防水層−イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー〉
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーは、末端のイソシアネート基と鎖中のウレタン結合を有するプレポリマーであり、例えばポリオールと化学量論的に過剰なポリイソシアネートとを反応させて得ることができる。
【0041】
上記のように、従来、一般的に、床版防水で用いられるウレア系樹脂の防水層では、単独のウレア樹脂が非常に剛性であるので、その柔軟性を維持するために、非反応性液体成分である可塑剤を用いることが行われている。
【0042】
これに対して、本発明で用いられるウレア系樹脂の防水層では、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを用いることによって、得られる防水層中に比較的弾性のウレタン結合部分を提供し、それによって非反応性液体成分である可塑剤の含有率が小さいことによる柔軟性の欠如の問題を解消している。
【0043】
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを製造するためのポリイソシアネートの種類に特段の制限はなく、ポリウレタン樹脂又はポリウレア樹脂の主剤として用いられているものを適宜使用することができ、例えば芳香族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香環含有脂肪族ポリイソシアネートを使用することができる。
【0044】
また、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを製造するためのポリオールの種類に特段の制限はなく、ポリウレタン樹脂の硬化剤として用いられているものを適宜使用することができ、例えばポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールを使用することができる。また、ポリオールとしては、エチレングリコール等のジオール化合物を使用することもできる。
【0045】
〈防水層−ポリアミン〉
ポリアミンとしては、特段の制限はなく、ポリウレア樹脂又はポリウレタンウレア樹脂の硬化剤として用いられているものを適宜使用することができ、例えば芳香族ポリアミン、脂肪族ポリアミンを好適に使用することができる。
【0046】
〈舗装接着材層〉
本発明の床版防水構造で用いられる舗装接着材層は、アスファルト系接着材又はホットメルト樹脂系接着材の層である。ここで、ホットメルト樹脂系接着材としては、ホットメルト接着剤としての使用の際に硬化反応を伴わないホットメルト樹脂系接着材、すなわち非反応性ホットメルト接着剤樹脂、及びホットメルト接着剤としての使用の際に又はその後に硬化反応を伴って硬化するホットメルト樹脂系接着材、すなわち反応性ホットメルト接着剤樹脂を挙げることができる。
【0047】
これらの舗装接着材は、ペレット又は粒子状の形状で提供して、防水層又はプライマー層上に散布すること、シート状、フィルム状、織物状、不織布状の形状で提供して、防水層又はプライマー層上に敷設すること、又は溶融させた状態若しくは溶媒中に熔解させた状態で提供して、防水層又はプライマー層上に塗布することができる。
【0048】
アスファルト系接着材又はホットメルト樹脂系接着材のいずれの舗装接着材も、可塑剤等が防水層と接着層との界面に移動した場合には、接着性の低下をもたらすことがある。したがって、上記のような防水層と組み合わせてこれらの舗装接着材層を用いることによって、防水層とその上の接着層との接着性の低下の問題を抑制することができる。
【0049】
また、上記の舗装接着材層のうち、特にアスファルト系接着材及び非反応性ホットメルト接着剤樹脂、より特にアスファルト系接着材は、可塑剤等による影響を受けやすく、したがって上記のような防水層と組み合わせて用いることが特に好ましい。
【0050】
〈舗装接着材層−アスファルト系接着材〉
アスファルト系接着材としては、その上に舗設されるアスファルト舗装層との親和性、すなわち接着性が良好であれば、基本的にどのような種類のアスファルトを使用してもよく、特に改質アスファルトを用いることが、周囲環境の温度変化等にも関わらず防水層と接着材層との間の良好な接着性を維持するために好ましい。
【0051】
改質アスファルトとしては、ポリマー改質アスファルト、セミブローンアスファルト、硬質アスファルトを挙げることができ、これらの中でも、ポリマー改質アスファルトを用いることが好ましい。
【0052】
ポリマー改質アスファルトは、ポリマーをアスファルトに含有させることによって改質したアスファルトであり、ここで用いられるポリマーとしては、スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレンブタジエンブロック共重合体(SBS)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEPS)を挙げることができる。
【0053】
なお、特許文献3では、防水層とその上のアスファルト系接着材との間の接着性を改良するために、防水材に含まれるポリイソシアネート又はポリアミンと反応する反応性官能基を有する熱可塑性樹脂、例えばアミノ基、エポキシ基、カルボキシル基等の反応性官能基を有する熱可塑性樹脂を、アスファルト系接着材に含有させることを提案している。
【0054】
これに対して、本発明の1つの態様では、アスファルト系接着材層において、このような反応性官能基を有する熱可塑性樹脂の割合が比較的少なく、例えば10%以下、9%以下、7%以下、5%以下、3%以下、又は1%以下である。特に本発明の1つの態様では、接着材層は、これらの反応性官能基を有する熱可塑性樹脂を実質的に含有しない。
【0055】
これによれば、使用するアスファルト系接着材層の製造コストを低下させること、アスファルト系接着材層の加熱及び溶融の間の反応性官能基の予想外の反応によるアスファルト系接着材層の物性の予想外の変化を抑制すること等ができる。
【0056】
〈舗装接着材層−ホットメルト接着剤樹脂〉
ホットメルト接着剤樹脂としては上記のように、非反応性ホットメルト接着剤樹脂、及び反応性ホットメルト接着剤樹脂を挙げることができる。
【0057】
非反応性ホットメルト接着剤樹脂としては、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ゴム系の熱可塑性樹脂を用いることができ、特にエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー、エチレンアクリル共重合体(EAA)、スチレンブチレンエラストマー(SBS)を用いることができる。
【0058】
反応性ホットメルト接着剤樹脂としては、任意の反応性ホットメルト接着剤樹脂を用いることができ、したがって加熱及び溶融させて接着をする際に熱的に架橋反応して更に硬化するホットメルト接着剤、又は加熱及び溶融させて接着を行った後で空気中に含まれる水分(湿気)と架橋反応して更に硬化するホットメルト接着剤等を用いることができる。このような反応性ホットメルト接着剤としては具体的には、イソシアネート基含有成分を用いる一液型のホットメルト接着剤樹脂、イソシアネート基含有成分とポリオール成分とを用いる二液型のホットメルト接着剤樹脂を挙げることができる。
【実施例】
【0059】
以下では、非反応性液体成分としての可塑剤(具体的にはアジピン酸ジイソノニル(DINA))及び/又はポリオールとしてのポリプロピレングリコール(PPG)をウレア系硬化型樹脂が含有することによる接着強度への影響を評価した。
【0060】
《実施例1及び比較例1〜3》
〈実施例1〉
実施例1の床版防水構造は、床版上に、プライマー層、防水層、舗装接着材層、及びアスファルト舗装層がこの順で積層されているものであり、したがって防水層3と舗装接着材層5との間のプライマー層4を用いなかったことを除いて、
図1に示すようなものであった。
【0061】
具体的には、実施例1の床版防水構造は、床版としてのコンクリート平板に、セメント入りエポキシ系プライマーを、ローラーを用いて、0.3kg/m
2の量で塗布し、指触乾燥するまで養生した。ここで、このセメント入りエポキシ系プライマーは、エポキシ樹脂系溶剤プライマー(株式会社ダイフレックスのレジプライマーPW−F)と普通ポルトランドセメントとを配合比12kg:3kgで混合して得た。
【0062】
次に、防水層としてのウレア樹脂を、専用機械を用いて、1.7kg/m
2の量で吹き付け、2時間養生した。ここで、このウレア樹脂は、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーとポリアミンとを含有する硬化性樹脂組成物を反応硬化させるものであり、非反応性液体成分及びポリオールを実質的に含有していなかった。
【0063】
次に、加熱溶融型改質アスファルト(株式会社ダイフレックスのアスプラスコートM)を、220℃の温度で、刷毛を用いて、1.2kg/m
2の量で塗布し、その後、7日間にわたって養生した。
【0064】
その後、23℃に養生した塗布済みの加熱溶融型改質アスファルト上に、140℃に加熱した砕石マスチックアスファルト混合物(最大粒度13mm)を、舗装厚み40mmで敷均し、ローラーコンパクタで転圧した。
【0065】
このようにして得られた床版防水構造を、常温になるまで十分に放冷し、直径100mmのコアを12個抜き取って、引張試験を行った。また、100mm×100mmのサイズに切り出した12個の試料を用いて、せん断試験を行った。引張試験及びせん断試験は、いずれも、道路橋床版防水便覧(平成19年3月版)の付録1の試験方法(6引張接着試験、7せん断試験)に準拠して行った。
【0066】
〈比較例1〉
防水層として、非反応性液体成分としての可塑剤(具体的にはアジピン酸ジイソノニル(DINA))を10質量%含有しているウレア系硬化型樹脂を用いたことを除いて実施例1と同様にして、比較例1の床版防水構造を得て評価した。
【0067】
〈比較例2〉
防水層として、ポリオールとしてのポリプロピレングリコールを10質量%含有しているウレア系硬化型樹脂を用いたことを除いて実施例1と同様にして、比較例1の床版防水構造を得て評価した。
【0068】
〈比較例3〉
防水層として、非反応性液体成分としての可塑剤(具体的にはアジピン酸ジイソノニル(DINA))を5質量%及びポリオールとしてのポリプロピレングリコールを5質量%含有しているウレア系硬化型樹脂を用いたことを除いて実施例1と同様にして、比較例1の床版防水構造を得て評価した。
【0069】
実施例1及び比較例1〜3の試験条件の概要及び試験結果の平均値を下記の表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
実施例1及び比較例1〜3の試験結果からは、防水層としてのウレア系硬化型樹脂が、非反応性液体成分としての可塑剤及び/又はポリオールとしてのポリプロピレングリコール(PPG)を含有しないことによって、防水層とアスファルト舗装層との間の接着強度が改良されることが理解される。
【0072】
《実施例2及び比較例4〜6》
〈実施例2〉
防水層としてのウレア系硬化型樹脂層上に、セメント入りウレタン系プライマーを、ローラーを用いて、0.15kg/m
2の量で塗布したことを除いて実施例1と同様にして、実施例2の床版防水構造を得て評価した。
【0073】
ここで、セメント入りウレタン系プライマーは、湿気硬化型1液ウレタンプライマー(株式会社ダイフレックスのレジプライマーJ)と普通ポルトランドセメントとを、16.3kg:2kgの割合で混合して得た。
【0074】
〈比較例4〜6〉
実施例2でのようにして防水層としてのウレア系硬化型樹脂層上にセメント入りウレタン系プライマー塗布したことを除いて比較例1〜3と同様にして、それぞれ、比較例4〜6の床版防水構造を得て評価した。
【0075】
実施例2及び比較例4〜6の試験条件の概要及び試験結果の平均値を下記の表1に示す。
【0076】
【表2】
【0077】
実施例2及び比較例4〜5の試験結果からは、防水層としてのウレア系硬化型樹脂が、非反応性液体成分としての可塑剤及び/又はポリオールとしてのポリプロピレングリコール(PPG)を含有しないことによって、防水層とアスファルト舗装層との間の接着強度が改良されることが理解される。
【0078】
また、実施例1及び比較例1〜3の試験結果と、実施例2及び比較例4〜5の試験結果との比較からは、防水層としてのウレア系硬化型樹脂層上に、セメント入りウレタン系プライマー層を用いることによって、防水層とアスファルト舗装層との間の接着強度が更に改良されることが理解される。