特許第6403619号(P6403619)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ミマキエンジニアリングの特許一覧

<>
  • 特許6403619-インクジェットプリンター 図000002
  • 特許6403619-インクジェットプリンター 図000003
  • 特許6403619-インクジェットプリンター 図000004
  • 特許6403619-インクジェットプリンター 図000005
  • 特許6403619-インクジェットプリンター 図000006
  • 特許6403619-インクジェットプリンター 図000007
  • 特許6403619-インクジェットプリンター 図000008
  • 特許6403619-インクジェットプリンター 図000009
  • 特許6403619-インクジェットプリンター 図000010
  • 特許6403619-インクジェットプリンター 図000011
  • 特許6403619-インクジェットプリンター 図000012
  • 特許6403619-インクジェットプリンター 図000013
  • 特許6403619-インクジェットプリンター 図000014
  • 特許6403619-インクジェットプリンター 図000015
  • 特許6403619-インクジェットプリンター 図000016
  • 特許6403619-インクジェットプリンター 図000017
  • 特許6403619-インクジェットプリンター 図000018
  • 特許6403619-インクジェットプリンター 図000019
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6403619
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】インクジェットプリンター
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/00 20060101AFI20181001BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20181001BHJP
   B41J 19/18 20060101ALI20181001BHJP
   B05C 13/02 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   B05C5/00 101
   B41J2/01 109
   B41J2/01 305
   B41J2/01 401
   B41J19/18 J
   B05C13/02
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-63453(P2015-63453)
(22)【出願日】2015年3月25日
(65)【公開番号】特開2016-182543(P2016-182543A)
(43)【公開日】2016年10月20日
【審査請求日】2017年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100140796
【弁理士】
【氏名又は名称】原口 貴志
(72)【発明者】
【氏名】竹内 和行
【審査官】 大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−100880(JP,A)
【文献】 特開平09−300603(JP,A)
【文献】 特開2014−205125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/00
B05C 13/02
B41J 2/01 −2/215
B41J 19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の方向に移動するキャリッジと、
前記キャリッジに搭載されて前記特定の方向への前記キャリッジの移動によって前記特定の方向にインクによって印刷を実行するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドによって外周面の少なくとも一部に印刷が実行される棒状部材を前記特定の方向に延在する状態で保持する部材保持機構とを備えており、
前記部材保持機構は、前記特定の方向に延在する特定の軸を中心に前記棒状部材を回転させる駆動手段を備えており、
前記部材保持機構は、前記特定の方向への前記キャリッジの1回の移動によって2つ以上の前記棒状部材に前記インクジェットヘッドによって同時に印刷可能な状態で、前記2つ以上の棒状部材を互いに平行に保持可能であることを特徴とするインクジェットプリンター。
【請求項2】
前記部材保持機構は、複数の前記棒状部材を保持可能であり、
前記部材保持機構は、前記複数の棒状部材のうち前記2つ以上の棒状部材を切り替える部材切替装置を備えていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンター。
【請求項3】
前記インクジェットヘッドのうち前記棒状部材への印刷の際に使用されるノズルの範囲を変更する範囲変更装置を備えており、
前記範囲変更装置は、前記特定の方向に直交する方向における前記インクジェットヘッドと、前記棒状部材との相対位置を変更することによって、前記範囲を変更することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインクジェットプリンター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状部材の外周面にインクジェットヘッドによって印刷を実行するインクジェットプリンターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、円柱状の立体物の外周面にインクジェットヘッドによって印刷を実行するインクジェットプリンターが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−100880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のインクジェットプリンターにおいては、インクジェットヘッドによって立体物の1つずつに印刷を実行するので、1つの立体物への印刷が終了する度に新たな立体物に交換する必要があり、円柱状の立体物に対する印刷の作業性が悪いという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、棒状部材に対する印刷の作業性を向上することができるインクジェットプリンターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のインクジェットプリンターは、特定の方向に移動するキャリッジと、前記キャリッジに搭載されて前記特定の方向への前記キャリッジの移動によって前記特定の方向にインクによって印刷を実行するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドによって外周面の少なくとも一部に印刷が実行される棒状部材を前記特定の方向に延在する状態で保持する部材保持機構とを備えており、前記部材保持機構は、前記特定の方向に延在する特定の軸を中心に前記棒状部材を回転させる駆動手段を備えており、前記部材保持機構は、前記特定の方向への前記キャリッジの1回の移動によって2つ以上の前記棒状部材に前記インクジェットヘッドによって同時に印刷可能な状態で、前記2つ以上の棒状部材を互いに平行に保持可能であることを特徴とする。
【0007】
この構成により、本発明のインクジェットプリンターは、特定の方向へのキャリッジの1回の移動によって複数の棒状部材にインクジェットヘッドによって同時に印刷可能であるので、棒状部材の設置作業の頻度を低減することができる。したがって、本発明のインクジェットプリンターは、棒状部材に対する印刷の作業性を向上することができる。
【0008】
また、本発明のインクジェットプリンターにおいて、前記部材保持機構は、複数の前記棒状部材を保持可能であり、前記インクジェットプリンターは、前記複数の棒状部材のうち前記2つ以上の棒状部材を切り替える部材切替装置を備えていても良い。
【0009】
この構成により、本発明のインクジェットプリンターは、部材保持機構に保持している複数の棒状部材のうちインクジェットヘッドによる印刷対象の棒状部材を切り替えるので、棒状部材の設置作業の頻度を低減することができる。したがって、本発明のインクジェットプリンターは、棒状部材に対する印刷の作業性を向上することができる。
【0010】
また、本発明のインクジェットプリンターは、前記インクジェットヘッドのうち前記棒状部材への印刷の際に使用されるノズルの範囲を変更する範囲変更装置を備えており、前記範囲変更装置は、前記特定の方向に直交する方向における前記インクジェットヘッドと、前記棒状部材との相対位置を変更することによって、前記範囲を変更しても良い。
【0011】
この構成により、本発明のインクジェットプリンターは、インクジェットヘッドのうち棒状部材への印刷の際に使用されるノズルの範囲を変更するので、インクジェットヘッドのうち棒状部材への印刷の際に使用されるノズルの範囲が固定である構成と比較して、インクジェットヘッドの寿命を延長することができる。そのため、本発明のインクジェットプリンターは、インクジェットヘッドの交換作業の頻度を低減することができる。したがって、本発明のインクジェットプリンターは、棒状部材に対する印刷の作業性を向上することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のインクジェットプリンターは、棒状部材に対する印刷の作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施の形態に係るインクジェットプリンターを前方左上側から撮影した画像を示す図である。
図2図1に示すインクジェットプリンターを前方右上側から撮影した画像を示す図である。
図3図1に示すインクジェットプリンターのキャリッジを左側から撮影した画像を示す図である。
図4図3に示すキャリッジの周辺の概略構成を示す斜視図である。
図5図1に示す第1保持機構を左上側から撮影した画像を示す図である。
図6図5に示す第1保持機構を前方上側から撮影した画像を示す図である。
図7図5に示す第1保持機構を前方右上側から撮影した画像を示す図である。
図8図5に示す第1保持機構の概略構成を示す一部の側面図である。
図9】棒状部材を保持していない状態の図1に示す第2保持機構を前方上側から撮影した画像を示す図である。
図10】棒状部材を保持していない状態の図9に示す第2保持機構を前方から撮影した画像を示す図である。
図11】棒状部材を保持している状態の図9に示す第2保持機構を前方上側から撮影した画像を示す図である。
図12】棒状部材を保持している状態の図9に示す第2保持機構を前方から撮影した画像を示す図である。
図13図4に示すキャリッジの概略構成を示す一部の側面断面図である。
図14図1に示すインクジェットプリンターのブロック図である。
図15図4に示すインクジェットヘッドのうち棒状部材への印刷の際に使用されるノズルの範囲の長さを示す図である。
図16】(a)図1に示すインクジェットプリンターの一部の構成の上面図であって、図1に示す例とは異なる例を示す図である。 (b)図16(a)に示すインクジェットプリンターの一部の構成の上面図であって、図16(a)に示す状態とは異なる状態を示す図である。
図17図1に示すインクジェットプリンターの一部の構成の上面図であって、図1および図16に示す例とは異なる例を示す図である。
図18図1に示すインクジェットプリンターの一部の構成の側面図であって、図1図16および図17に示す例とは異なる例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0015】
まず、本実施の形態に係るインクジェットプリンターの構成について説明する。
【0016】
図1は、本実施の形態に係るインクジェットプリンター10を前方左上側から撮影した画像を示す図である。図2は、インクジェットプリンター10を前方右上側から撮影した画像を示す図である。
【0017】
図1および図2に示すように、インクジェットプリンター10は、床に設置される脚20と、矢印10aで示す鉛直方向において脚20の上側に配置されていて脚20に支持されている本体30とを備えている。
【0018】
インクジェットプリンター10は、中空の棒状部材190の外周面190aの少なくとも一部に印刷を実行する装置である。
【0019】
棒状部材190としては、例えば、歩行用の杖、スキー用やウォーキング用のストック、ゴルフのクラブのシャフト、釣竿、カーテンレール、自転車のパイプなど、種々の用途の棒状の部材が採用されることが可能である。
【0020】
図3は、インクジェットプリンター10のキャリッジ42を左側から撮影した画像を示す図である。図4は、キャリッジ42の周辺の概略構成を示す斜視図である。
【0021】
図3および図4に示すように、本体30は、矢印10aで示す方向に直交する矢印10bで示す方向に延在しているレール41と、矢印10bで示す方向に移動可能にレール41によって支持されているキャリッジ42と、キャリッジ42に搭載されている複数のインクジェットヘッド43と、キャリッジ42に搭載されていて紫外線を照射する紫外線照射装置44とを備えている。
【0022】
インクジェットヘッド43は、インクを吐出する吐出面43aが形成されている。吐出面43aは、図示していない多数のノズルによって構成されているノズル列が形成されている。吐出面43aは、矢印10aで示す鉛直方向に直交していて、鉛直方向における上側から下側に向けてノズルからインクを吐出する面である。なお、ノズル列は、矢印10aで示す方向と、矢印10bで示す方向との両方に直交する矢印10cで示す方向に延在している。インクジェットヘッド43は、レール41に沿ったキャリッジ42の移動に伴って矢印10bで示す方向に移動して、矢印10bで示す方向にインクによって印刷を実行可能な装置である。
【0023】
紫外線照射装置44は、インクジェットヘッド43によって吐出させられて棒状部材190の外周面190aに付着した紫外線硬化型のインクに紫外線を照射することによって、棒状部材190の外周面190a上のインクを硬化させる装置である。
【0024】
図1図4に示すように、本体30は、棒状部材190を保持する部材保持機構50と、部材保持機構50を支持する台100とを備えている。
【0025】
図1および図2に示すように、部材保持機構50は、棒状部材190の延在方向における一端側を保持する第1保持機構60と、棒状部材190の延在方向における他端側を保持する第2保持機構80とを備えている。
【0026】
図5は、第1保持機構60を左上側から撮影した画像を示す図である。図6は、第1保持機構60を前方上側から撮影した画像を示す図である。図7は、第1保持機構60を前方右上側から撮影した画像を示す図である。図8は、第1保持機構60の概略構成を示す一部の側面図である。
【0027】
図5図8に示すように、第1保持機構60は、台100に固定されている支持部材61と、支持部材61に回転可能に支持されていて棒状部材190の延在方向における一端側を保持する4つの保持部62と、保持部62の図示していない回転軸に連結されているギヤ63と、支持部材61に支持されていて保持部62を回転させる駆動力を発生させる駆動手段としてのDCモーター64と、DCモーター64に連結されているモーターピニオン65と、支持部材61に回転可能に支持されていて小ギヤ66aおよび大ギヤ66bによって構成されている複合ギヤ66と、モーターピニオン65および複合ギヤ66の大ギヤ66bに嵌合するタイミングベルト67と、保持部62の回転角度の検出のために複合ギヤ66の回転角度を検出するエンコーダー68と、支持部材61に回転可能に支持されていて小ギヤ69aおよび大ギヤ69bによって構成されている複合ギヤ69と、複合ギヤ66の小ギヤ66aおよび複合ギヤ69の大ギヤ69bに嵌合するタイミングベルト70と、支持部材61に回転可能に支持されているアイドルプーリー71と、4つのギヤ63および複合ギヤ69の小ギヤ69aに嵌合してアイドルプーリー71に掛けられているタイミングベルト72とを備えている。
【0028】
保持部62は、先端に形成されているテーパー62aと、棒状部材190の切欠き190bに挿入されることによって棒状部材190を保持部62自身と共に回転させる突起62bと、棒状部材190が突き当てられる突き当て部62cとを備えている。保持部62の図示していない回転軸は、矢印10bで示す方向に延在している。4つの保持部62は、矢印10cで示す方向に並んで配置されている。
【0029】
エンコーダー68としては、例えば、10000パルス/回転の高分解能のエンコーダーが採用されることができる。
【0030】
図9は、棒状部材190を保持していない状態の第2保持機構80を前方上側から撮影した画像を示す図である。図10は、棒状部材190を保持していない状態の第2保持機構80を前方から撮影した画像を示す図である。図11は、棒状部材190を保持している状態の第2保持機構80を前方上側から撮影した画像を示す図である。図12は、棒状部材190を保持している状態の第2保持機構80を前方から撮影した画像を示す図である。
【0031】
図9図12に示すように、第2保持機構80は、台100に形成された矢印10bで示す方向に延在するレール100aに沿って移動可能な支持部材81と、台100に対して支持部材81の矢印10bで示す方向における位置を固定するための固定レバー82と、矢印10bで示す方向に延在するレール83aが形成されていて支持部材81に固定されているレール部材83と、レール部材83のレール83aに沿って移動可能な支持部材84と、支持部材81および支持部材84を連結していて支持部材84を第1保持機構60(図1参照。)から遠ざける方向に付勢する引っ張りコイルバネ85と、支持部材84に回転可能に支持されていて棒状部材190の延在方向における他端側を保持する4つの保持部86と、保持部86に連結されている軸87と、軸87に連結されていて軸87が支持部材84から脱落することを防止するストッパー88と、軸87が挿入された状態で支持部材84および保持部86の間に配置されていて保持部86を支持部材84から遠ざける方向に付勢する圧縮コイルバネ89と、支持部材81に固定されていて保持部86に保持される前の棒状部材190の他端が載置される4つの載置部90aが形成されている載置部材90と、支持部材81に固定されていて支持部材84を第1保持機構60に近付ける方向に支持部材84を移動させるための部材保持用レバー91とを備えている。
【0032】
レール部材83のレール83aは、図9図12において、1本のみ見えている。しかしながら、レール部材83は、矢印10cで示す方向における両側に1本ずつレール83aが形成されている。
【0033】
保持部86は、先端に形成されているテーパー86aと、棒状部材190の図示していない切欠きに挿入されることによって保持部86自身を棒状部材190と共に回転させる突起86bと、棒状部材190が突き当てられる突き当て部86cとを備えている。保持部86の図示していない回転軸は、矢印10bで示す方向に延在している。4つの保持部86は、矢印10cで示す方向に並んで配置されている。
【0034】
軸87は、上述したように、一端に保持部86が形成されているとともに、他端にストッパー88が形成されている。したがって、軸87は、一端に形成されている保持部86が圧縮コイルバネ89によって支持部材84から遠ざかる方向に付勢されていても、他端に形成されているストッパー88によって圧縮コイルバネ89の付勢力に抗することができる。すなわち、軸87は、支持部材84から脱落することがストッパー88によって防止されている。
【0035】
図13は、キャリッジ42の概略構成を示す一部の側面断面図である。
【0036】
図4および図13に示すように、部材保持機構50は、矢印10bで示す方向へのキャリッジ42の1回の移動によって2つ以上の棒状部材190にインクジェットヘッド43によって同時に印刷可能な状態で、2つ以上の棒状部材190を互いに平行に保持可能である。
【0037】
図14は、インクジェットプリンター10のブロック図である。
【0038】
図14に示すように、インクジェットプリンター10は、矢印10b(図1参照。)で示す方向にキャリッジ42(図4参照。)を移動させるキャリッジ駆動装置161と、上述の複数のインクジェットヘッド43と、上述の紫外線照射装置44と、上述のDCモーター64と、上述のエンコーダー68と、利用者による種々の操作が入力されるボタンなどの入力デバイスである操作部162と、種々の情報を表示するLCD(Liquid Crystal Display)などの表示デバイスである表示部163と、PC(Personal Computer)などの外部の装置と通信を行う通信デバイスである通信部164と、各種のデータを記憶するEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶デバイスである記憶部165と、インクジェットプリンター10全体を制御する制御部166とを備えている。
【0039】
制御部166は、例えば、CPU(Central Processing Unit)と、プログラムおよび各種のデータを予め記憶しているROM(Read Only Memory)と、CPUの作業領域として用いられるRAM(Random Access Memory)とを備えている。CPUは、ROMまたは記憶部165に記憶されているプログラムを実行するようになっている。
【0040】
次に、インクジェットプリンター10への棒状部材190の設置について説明する。
【0041】
まず、作業者は、部材保持機構50の第2保持機構80の固定レバー82を矢印10aで示す方向に延在する軸82a(図9および図10参照。)を中心として回して緩めた後、第2保持機構80の支持部材81を台100のレール100aに沿って矢印10bで示す方向に移動させることによって、部材保持機構50の第1保持機構60に対する第2保持機構80の位置を棒状部材190の長さに応じた適切な位置に移動させる。ここで、適切な位置とは、棒状部材190が第1保持機構60の保持部62に保持されていて第2保持機構80の部材保持用レバー91が倒されている場合に第2保持機構80の保持部86が棒状部材190に挿入されない位置であって、棒状部材190が第1保持機構60の保持部62に保持されていて第2保持機構80の部材保持用レバー91が起こされている場合に第2保持機構80の保持部86が棒状部材190に挿入される位置である。作業者は、第1保持機構60に対する第2保持機構80の位置が適切な位置である状態で、固定レバー82を軸82aを中心として回して締めることによって、第1保持機構60に対する第2保持機構80の位置を固定する。
【0042】
次いで、作業者は、棒状部材190を把持して移動させることによって、第1保持機構60の保持部62を棒状部材190のうち矢印10bで示す方向における一端側の部分に挿入させて、棒状部材190のうち矢印10bで示す方向における一端側の端部を保持部62の突き当て部62cに突き当てる。ここで、保持部62を棒状部材190に挿入させる際、保持部62のテーパー62aは、棒状部材190への保持部62の挿入を容易化することができる。また、棒状部材190が保持部62の突き当て部62cに突き当てられている場合、保持部62の突起62bが棒状部材190の切欠き190bに挿入されているので、棒状部材190は、保持部62と共に回転させられるようになっている。
【0043】
次いで、作業者は、図9および図10に示すように第2保持機構80の部材保持用レバー91を倒している状態で、棒状部材190のうち矢印10bで示す方向における他端側の部分を第2保持機構80の載置部材90の載置部90aに載置させる。
【0044】
次いで、作業者は、図11および図12に示すように第2保持機構80の部材保持用レバー91を起こす。第2保持機構80は、部材保持用レバー91が起こされると、部材保持用レバー91によって第1保持機構60に近付く方向に押された支持部材84が引っ張りコイルバネ85の付勢力に抗して第1保持機構60に近付く方向に移動する。したがって、第2保持機構80の保持部86が棒状部材190のうち矢印10bで示す方向における他端側の部分に挿入されて、棒状部材190のうち矢印10bで示す方向における他端側の端部が保持部86の突き当て部86cに突き当てられる。ここで、保持部86を棒状部材190に挿入させる際、保持部86のテーパー86aは、棒状部材190への保持部86の挿入を容易化することができる。また、棒状部材190が保持部86の突き当て部86cに突き当てられる場合、棒状部材190によって支持部材84に近付く方向に押された保持部86は、圧縮コイルバネ89の付勢力に抗して支持部材84に近付く方向に移動する。なお、棒状部材190が保持部86の突き当て部86cに突き当てられている場合、保持部86の突起86bが棒状部材190の図示していない切欠きに挿入されているので、保持部86は、棒状部材190と共に回転させられるようになっている。
【0045】
なお、図11および図12においては、部材保持機構50は、1本の棒状部材190のみを保持している。しかしながら、部材保持機構50は、1回の部材保持用レバー91の操作によって同時に4本まで棒状部材190を保持することができる。
【0046】
作業者は、図9および図10に示すように第2保持機構80の部材保持用レバー91を倒すことによって、部材保持機構50から棒状部材190を取り外すことが可能である。
【0047】
なお、作業者は、部材保持機構50によって保持される棒状部材190を交換する場合には、上述した手順を繰り返すことになる。しかしながら、交換前の棒状部材190の長さと、交換後の棒状部材190の長さとが同一である場合には、第1保持機構60に対する第2保持機構80の位置の再調整は不要である。
【0048】
次に、インクジェットプリンター10の動作について説明する。
【0049】
制御部166は、外部の装置から印刷データが送信されてくると、送信されてきた印刷データに基づいた画像を棒状部材190の外周面190aに印刷する。具体的には、制御部166は、棒状部材190の外周面190aに対してキャリッジ42をキャリッジ駆動装置161によって矢印10bで示す方向に相対移動させながら、インクジェットヘッド43によって棒状部材190の外周面190aにインクを吐出させるとともに、紫外線照射装置44による紫外線の照射によって棒状部材190の外周面190a上のインクを硬化させる。そして、制御部166は、棒状部材190の外周面190aに対する矢印10bで示す方向への印刷が終了する度に、DCモーター64によって棒状部材190を回転させることによって、棒状部材190の周方向における印刷位置を変更する。なお、制御部166は、DCモーター64によって棒状部材190を回転させる際に、エンコーダー68によって棒状部材190の回転角度を確認することによって、DCモーター64によって棒状部材190を高精度に回転させることができる。
【0050】
なお、インクジェットヘッド43の吐出面43aと、棒状部材190の外周面190a上におけるインクの着弾位置との矢印10aで示す方向における距離が長いほど、吐出面43aからインクが吐出されてから棒状部材190の外周面190a上に着弾されるまでの時間が長くなる。ここで、インクジェットヘッド43は、矢印10bで示す方向に移動しながらインクを吐出する。そのため、インクジェットヘッド43の吐出面43aから吐出されたインクは、棒状部材190の外周面190aに着弾するまで、矢印10aで示す方向に移動し続けるだけでなく、矢印10bで示す方向にも移動し続ける。したがって、インクジェットヘッド43の吐出面43aと、棒状部材190の外周面190a上におけるインクの着弾位置との矢印10aで示す方向における距離が長いほど、棒状部材190の外周面190a上におけるインクの着弾位置が、適切な着弾位置から矢印10bで示す方向に大きくずれる。そのため、インクジェットプリンター10は、インクジェットヘッド43の吐出面43aと、棒状部材190の外周面190a上におけるインクの着弾位置との矢印10aで示す方向における最大の許容距離(以下「最大許容距離」と言う。)が「大」、「中」、「小」の3段階で例えば操作部162を介して入力可能になっている。ここで、「大」、「中」、「小」は、それぞれ、実際には具体的な数値が対応付けられている。
【0051】
また、インクジェットプリンター10は、棒状部材190の直径が例えば操作部162を介して入力可能になっている。
【0052】
したがって、インクジェットヘッド43の吐出面43aおよび棒状部材190の外周面190aの間の矢印10aで示す方向におけるギャップをGh、最大許容距離をGx、棒状部材190の直径をRとすると、制御部166は、図15に示すように、1つのインクジェットヘッド43のうち、1つの棒状部材190への印刷の際に使用されるノズルの範囲の矢印10cで示す方向における長さ(以下「使用ノズル範囲長」と言う。)Lを、2×(R−(Gh+R−Gx)1/2と算出することができる。すなわち、最大許容距離が「大」である場合には、上述した着弾位置のずれが生じ易くなり印刷品質が低下するが、使用ノズル範囲長Lが大きくなるので棒状部材190の1周分の印刷速度が向上する。一方、最大許容距離が「小」である場合には、使用ノズル範囲長Lが小さくなるので棒状部材190の1周分の印刷速度が低下するが、上述した着弾位置のずれが生じ難くなり印刷品質が向上する。
【0053】
以上に説明したように、インクジェットプリンター10は、矢印10bで示す方向へのキャリッジ42の1回の移動によって複数の棒状部材190にインクジェットヘッド43によって同時に印刷可能であるので、棒状部材190の設置作業の頻度を低減することができる。したがって、インクジェットプリンター10は、棒状部材190に対する印刷の作業性を向上することができる。
【0054】
なお、インクジェットプリンター10は、矢印10bで示す方向へのキャリッジ42の1回の移動によって1つのインクジェットヘッド43毎に2本の棒状部材190に同時に印刷可能である。しかしながら、インクジェットプリンター10は、矢印10bで示す方向へのキャリッジ42の1回の移動によって1つのインクジェットヘッド43毎に1本の棒状部材190に印刷可能である場合であっても、矢印10cで示す方向に互いにずらしてキャリッジ42に搭載された複数のインクジェットヘッド43を備えているときには、矢印10bで示す方向へのキャリッジ42の1回の移動によって複数の棒状部材190に複数のインクジェットヘッド43によって同時に印刷可能である。また、インクジェットプリンター10は、矢印10bで示す方向へのキャリッジ42の1回の移動によって1つのインクジェットヘッド43によって複数の棒状部材190に印刷可能である場合には、インクジェットヘッド43を1つのみ備えているだけでも良い。
【0055】
インクジェットプリンター10は、本実施の形態において、第1保持機構60が棒状部材190を回転駆動させて、第2保持機構80が従動するようになっている。しかしながら、インクジェットプリンター10は、例えば棒状部材190が捩じれ易い部材である場合には、第1保持機構60による棒状部材190の回転駆動と同期させて、第2保持機構80でも棒状部材190を回転駆動させても良い。
【0056】
部材保持機構50は、図16に示すように、インクジェットヘッド43のうち棒状部材190への印刷の際に使用されるノズルの範囲を変更する範囲変更装置110を備えていても良い。図16に示すように、範囲変更装置110は、矢印10cで示す方向に延在するレール111を矢印10bで示す方向において台100の両側に備えている。また、範囲変更装置110は、台100をレール111に沿って矢印10cで示す方向に移動させる図示していないモーターを備えている。範囲変更装置110は、図16(a)および図16(b)に示すように、インクジェットヘッド43と、部材保持機構50との矢印10cで示す方向における相対位置を変更することによって、インクジェットヘッド43のうち棒状部材190への印刷の際に使用されるノズルの範囲を変更することができる。この構成により、図16に示すインクジェットプリンターは、インクジェットヘッド43のうち棒状部材190への印刷の際に使用されるノズルの範囲を変更するので、インクジェットヘッド43のうち棒状部材190への印刷の際に使用されるノズルの範囲が固定である構成と比較して、インクジェットヘッド43の寿命を延長することができる。そのため、図16に示すインクジェットプリンターは、インクジェットヘッド43の交換作業の頻度を低減することができる。したがって、図16に示すインクジェットプリンターは、棒状部材190に対する印刷の作業性を向上することができる。
【0057】
インクジェットプリンター10は、本実施の形態において、同時に4本の棒状部材190の外周面190aに印刷を実行することができるが、2本以上であれば、4本以外の本数の棒状部材190の外周面190aに同時に印刷を実行することができても良い。
【0058】
インクジェットプリンター10の部材保持機構50は、本実施の形態において、4本の棒状部材190を保持可能であるが、2本以上であれば、4本以外の本数の棒状部材190を保持可能であっても良い。
【0059】
例えば、部材保持機構50は、図17に示すように、20本の棒状部材190を保持可能であっても良い。図17に示すインクジェットプリンターは、20本の棒状部材190のうちインクジェットヘッド43による印刷対象の棒状部材190を切り替える部材切替装置120を備えている。
【0060】
部材切替装置120は、矢印10cで示す方向に延在するレール121を矢印10bで示す方向において台100の両側に備えている。また、部材切替装置120は、台100をレール121に沿って矢印10cで示す方向に移動させる図示していないモーターを備えている。
【0061】
部材切替装置120は、インクジェットヘッド43と、部材保持機構50との矢印10cで示す方向における相対位置を変更することによって、20本の棒状部材190のうちインクジェットヘッド43による印刷対象の棒状部材190を切り替えることができる。
【0062】
この構成により、図17に示すインクジェットプリンターは、部材保持機構50に保持している複数の棒状部材190のうちインクジェットヘッド43による印刷対象の棒状部材190を切り替えるので、棒状部材190の設置作業の頻度を低減することができる。したがって、図17に示すインクジェットプリンターは、棒状部材190に対する印刷の作業性を向上することができる。
【0063】
なお、部材切替装置120は、上述した範囲変更装置の機能をも備えていても良い。
【0064】
また、部材保持機構50は、図18に示すように、多数の棒状部材190を保持可能であっても良い。図18に示すインクジェットプリンターは、多数の棒状部材190のうちインクジェットヘッド43による印刷対象の棒状部材190を切り替える部材切替装置130を備えている。
【0065】
部材切替装置130は、部材保持機構50を支持する無端ベルト131と、無端ベルト131を支持するローラー132、133および134と備えている。また、部材切替装置130は、ローラー132〜134の何れかを回転させることによって、無端ベルト131を移動させる図示していないモーターを備えている。
【0066】
なお、図18に示すインクジェットプリンターの部材保持機構50は、隣り合う部分50a同士が分離可能な状態で複数に分割されており、個々の部分50aが棒状部材190を1本ずつ保持するようになっている。このようになっていることによって、ローラー132、133および134の箇所でローラー132、133および134の周に沿って無端ベルト131が曲げられる場合に、無端ベルト131が曲がっている箇所に設置されている部材保持機構50の部分50aが互いに分離するので、部材保持機構50における隣り合う部分50a同士が分離不可能な構成と比較して、部材保持機構50の存在によって無端ベルト131の移動がし難くなることを抑えることが可能である。
【0067】
部材切替装置130は、インクジェットヘッド43と、インクジェットヘッド43に対向している部材保持機構50との矢印10cで示す方向における相対位置を変更することによって、多数の棒状部材190のうちインクジェットヘッド43による印刷対象の棒状部材190を切り替えることができる。
【0068】
この構成により、図18に示すインクジェットプリンターは、部材保持機構50に保持している複数の棒状部材190のうちインクジェットヘッド43による印刷対象の棒状部材190を切り替えるので、棒状部材190の設置作業の頻度を低減することができる。したがって、図18に示すインクジェットプリンターは、棒状部材190に対する印刷の作業性を向上することができる。
【0069】
なお、図18に示すインクジェットプリンターは、インクジェットヘッド43による棒状部材190への印刷中に、既にインクジェットヘッド43による印刷が完了している他の棒状部材190を部材保持機構50から外して未印刷の棒状部材190に交換することによって、棒状部材190の交換のために印刷を停止することなく、多数の棒状部材190への印刷を連続的に実行することができる。
【0070】
また、部材切替装置130は、上述した範囲変更装置の機能をも備えていても良い。
【符号の説明】
【0071】
10 インクジェットプリンター
42 キャリッジ
43 インクジェットヘッド
50 部材保持機構
64 DCモーター(駆動手段)
110 範囲変更装置
120 部材切替装置(範囲変更装置)
130 部材切替装置(範囲変更装置)
190 棒状部材
190a 外周面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18