【実施例】
【0074】
材料および方法
細胞および株細胞
PBMCを、Sanquin Blood Bank(Amsterdam、The Netherlands)から取得したバフィーコートから単離した。初代AML芽細胞は、LML biobank UMC Utrechtから、インフォームドコンセントを得た後に受け取った、Matthias Theobald(Mainz、Germany)からの厚意による贈与であり、GCPおよびHelsinki宣言に従って収集された。株細胞は、補足の材料および方法において記載される。
【0075】
TCR変異誘発、クローニングおよび配列決定
γ9δ2TCR改変は、NcoI制限部位およびBamHI制限部位が隣接したγ9-TCR鎖またはδ2-TCR鎖G115の、コドン最適化された遺伝子に基づく(GeneArt、Regensburg、Germanyによって合成された)。アラニン変異を生成するために、部位特異的変異誘発を、プルーフリーディングポリメラーゼ(Phusion、Bioke)を使用して、重複伸長PCR(overlap extension PCR)21または全プラスミド変異誘発(whole plasmid mutagenesis)22;23によって実施した。変異したNcoI-BamHI消化したγ9-TCR鎖またはδ2-TCR鎖を、レトロウイルスベクターpBullet中にライゲーションし、BaseClear(Leiden、The Netherlands)によって配列決定した。
【0076】
フローサイトメトリー
γ9δ2TCR発現を、Vδ2-FITC(クローンB6、BD)またはpan-γδTCR-PE抗体(クローンIMMU510、Beckman Coulter)を使用して、フローサイトメトリーによって分析した。変化倍率は、γ9-G115wt/δ2-G115wt形質導入されたT細胞の1に設定したMFI値およびモック形質導入されたT細胞の0に設定したMFI値に基づいて計算した。
【0077】
機能的T細胞アッセイ
細胞媒介性細胞傷害に関する
51クロム放出アッセイは、以前に記載されている。標的細胞を、100μCuの
51Cr(初代細胞について150μCu)で一晩標識し、30:1と0.3:1との間の5つのエフェクター-対-標的比(E:T)において、形質導入されたT細胞と共に5時間インキュベートした。変化倍率は、変異していないγ9δ2TCRを発現する操作されたT細胞の反応性と比較して計算した。IFN-γELISpotを、抗huIFN-γmAb1-D1K(I)およびmAb7-B6-1(II)(Mabtech-Hamburg、Germany)を製造業者の推奨手順に従って使用して実施した。標的細胞およびエフェクター細胞(E:T 3:1)を、示されたようなパミドロネート(Calbiochem、Germany)の存在下で24時間インキュベートした。IFNγELISAを、製造業者の指示に従ってELISA-ready-go! Kit(eBioscience)を使用して実施した。エフェクター細胞および標的細胞(E:T 1:1)を、示されたようなパミドロネートの存在下で24時間インキュベートした。特定した場合、変化倍率は、変異していないγ9δ2TCRを発現する操作されたT細胞の反応性と比較して計算した。
【0078】
T細胞のレトロウイルス形質導入
γ9δ2TCRを、以前に記載されたように(Marcu-Malinaら、2011)、αβT細胞中に形質導入した。簡潔に述べると、Fugene6試薬(Takara、Gennevilliers、France)を使用して、パッケージング細胞(phoenix-ampho)を、gag-pol(pHIT60)、env(pCOLT-GALV)(Stanislawskiら、2001)、およびγ9-鎖-IRES-ネオマイシンまたはδ2-鎖-IRES-ピューロマイシンのいずれかを含む2つのレトロウイルス構築物(pBullet)でトランスフェクトした。αCD3(30ng/ml)(Orthoclone OKT3、Janssen-Cilag、Tilburg、The Netherlands)およびIL2(50IU/ml)(Proleukin、Novartis、Arnhem、The Netherlands)で活性化させたヒトPBMCを、50IU/ml IL-2および4μg/mlポリブレン(Sigma-Aldrich、Zwijndrecht、The Netherlands)の存在下で、48時間以内にウイルス上清で2回形質導入した。形質導入されたT細胞を、αCD3/CD28 Dynabeads(0.5×10
6ビーズ/10
6細胞)(Invitrogen)およびIL-2(50IU/ml)を用いた刺激によって増殖させ、800μg/mlジェネテシン(Gibco、Karlsruhe、Germany)および5μg/mlピューロマイシン(Sigma-Aldrich、Zwijndrecht、The Netherlands)を用いて1週間選択した。示された場合、ポリクローナルCD4
+およびCD8
+のTCRで形質導入されたT細胞を、CD4およびCD8 MACS分離システム(Miltenyi Biothech、Bergish Gladbach、Germany)を使用して、CD4またはCD8の発現に基づいて選別した。選択後、TCR形質導入されたT細胞を、以前に記載されたREPプロトコール(RiddellおよびGreenberg、1990)に基づいてin vitroで増殖させた。
【0079】
機能的T細胞アッセイ
細胞媒介性細胞傷害のための
51クロム放出アッセイは、以前に記載されている(Kuballら、2004)。標的細胞を、100μCuの
51Cr(初代細胞について150μCu)で一晩標識し、30:1と0.3:1との間の5つのエフェクター対標的比(E:T)において、形質導入されたT細胞と共に引き続いてインキュベートした。4〜6時間後、
51Cr放出を、上清において測定した。変化倍率は、1に正規化したγ9-3wt/δ9-3wt、γ9-5wt/δ9-5wtまたはγ9-G115wt/δ9-G115wtに基づく比較実験のために、1に正規化したγ9-G115wt/δ9-G115wt形質導入されたT細胞の
51Cr放出に基づいて計算した。
【0080】
IFNγELISpotを、製造業者の推奨手順に従って、Mabtech(Hamburg、Germany)からの抗hu IFN-γ mAb1-D1K(I)およびmAb7-B6-1(II)を使用して実施した(Besoldら、2007)。全てのアッセイにおいて、標的細胞およびエフェクター細胞(E:T 3:1)を、示されたようなパミドロネート(Calbiochem、Germany)の存在下で24時間インキュベートした。
【0081】
IFN-γELISAを、製造業者の指示に従ってELISA-ready-go! Kit(eBioscience)を使用して実施した。エフェクター細胞および標的細胞(E:T 1:1)を、示されたようなパミドロネートの存在下で24時間インキュベートした。特定した場合、変化倍率は、1に正規化したγ9-3wt/δ9-3wt、γ9-5wt/δ9-5wtまたはγ9-G115wt/δ9-G115wtに基づく比較実験のために、1に正規化したγ9-G115wt/δ9-G115wt形質導入されたT細胞のIFN-γ分泌に基づいて計算した。
【0082】
動物モデル
腫瘍異種移植片を誘導するために、致死量以下の全身照射を与え(2Gy)、11〜17週齢のRAG-2-/-/γc-/--BALB/Cマウスに、10
7のγ9δ2TCR+形質導入されたT細胞と共に、0.5×10
6のDaudi-Luc細胞(Genmab Utrecht、The Netherlandsからの厚意による贈与)または5×10
6のRPMI8226/S-Luc細胞(Anton Martens、Utrecht、The Netherlands)を静脈内注射した。このRAG-2
-/-/γc
-/--BALB/Cマウスは元々、AMCAS b.v.(Amsterdam、the Netherlands)から得たものである。マウスを、Central Animal Facility of the University of Utrechtの特定病原体除去(SPF)飼育ユニットにおいて飼育および収容した。全ての動物実験は、動物実験のための地域倫理委員会から許可を得た後施設のガイドラインに従って、および動物実験に関する現行のオランダの法律に従って、実施した。全てのマウスは、Biospace生物発光画像化によって週に1回in vivoで可視化した骨髄において主に成長する腫瘍を発生させた。マウスを、イソフルラン吸入によって麻酔し、その後25mg/ml Beetle Luciferin(Promega、USA)100μlの腹腔内注射を与えた。生物発光画像を、Photo Visionソフトウェアによって制御される第3世代冷却GaAs高感度電荷結合素子カメラ(cooled GaAs intensified charge-coupled device camera)を使用して獲得し、M
3Visionソフトウェアを用いて分析した(全てPhoton Imager;Biospace Laboratoryから)。マウスに、1日目に、(腫瘍細胞と共に)IFA中0.6×10
6IUのIL2(Proleukin(登録商標)、Novartis)を皮下で与え、実験の最後まで21日毎に与えた。パミドロネート(10mg/kg体重)を、1日目に静脈内で、21日毎に腹腔内で、示された群において適用した。成長する腫瘍を、Biospace生物発光画像化(BLI)によってin vivoで可視化した。マウスを、イソフルランによって麻酔し、その後25mg/ml Beetle Luciferin(Promega)の腹腔内注射(100μl)を与えた。生物発光画像を獲得し、M3Visionソフトウェア(Photon Imager、Biospace Laboratory)を用いて分析した。
【0083】
結果
個々のγ9δ2T細胞クローンの抗腫瘍反応性
個々のγ9δ2T細胞クローンが、親γ9δ2T細胞集団と比較して、腫瘍細胞に対する示差的な活性を媒介するかどうかを調査するために、健康なドナー由来のγ9δ2T細胞を、限界希釈によってクローニングし、IFNγELISpotにおいて腫瘍細胞の広いパネルに対して試験した。特異性および機能的結合力に関して腫瘍認識における高い可変性が、個々のγ9δ2T細胞クローン(cl)間で観察された;元のバルク集団と比較して、cl5およびcl13は、Daudiに応答して2倍多くのIFNγスポットを生じ、K562、BT549およびMCF-7でチャレンジした場合、顕著な量のIFNγを選択的に生成した。対照的に、cl3およびcl15は、Daudi細胞のみを認識した。γ9δ2TCR、NKG2D、CD158a、NKAT-2およびNKB-1の表面発現を試験した。
【0084】
個々のγ9δ2TCRによって媒介される抗腫瘍反応性
腫瘍反応性クローンのγ9δ2TCR間の差異を解明するために、cl3(γ9-cl3
wt/δ2-cl3
wt)およびcl5(γ9-cl5
wt/δ2-cl5
wt)の野生型(wt)γ9-TCR鎖およびδ2-TCR鎖の配列を決定し、γ9δ2TCR G115とアラインさせた。3つ全てのγ9δ2TCRが、そのCDR3ドメインにおいて異なっていた:γCDR3中の位置γ109とγ111との間で1〜3アミノ酸、ならびにδCDR3中のδ108とδ112との間で4〜8アミノ酸。別個のγ9δ2TCRが示差的な抗腫瘍反応性を媒介するかどうかを決定するために、個々のγ9δ2TCR鎖を、レトロウイルスベクターpBullet中にクローニングし、記載されるような選択マーカーに連結した。野生型の組み合わせγ9-cl3
wt/δ2-cl3
wt、γ9-cl5
wt/δ2-cl5
wtおよびγ9-G115
wt/δ2-G115
wtを、末梢血αβT細胞中に形質導入し、抗生物質によって選択し、さらに増殖させた。γ9δ2TCR G115(γ9-G115
wt/δ2-G115
wt)はコントロールとして機能し、空のベクターカセット(モック)で形質導入した細胞もコントロールとして機能した。γ9δ2TCR形質導入されたT細胞は、類似のγ9δ2TCR発現を示し、
51Cr放出アッセイにおいて腫瘍標的Daudiに対する溶解活性について、これらをさらに試験した(
図1A)。γ9-cl3
wt/δ2-cl3
wtを発現するT細胞は、腫瘍細胞を溶解させる能力が50%低減していたが(p<0.01)、γ9-cl5
wt/δ2-cl5
wtを有するT細胞は、コントロールγ9-G115
wt/δ2-G115
wtのほぼ2倍強力であった(p<0.01)。減少または増加した機能的結合力を有するγ9δ2TCR形質導入された細胞の表現型が、サイトカインレベル上に対しても存在するかどうかを決定するために、パミドロネート-滴定アッセイを実施した。Daudi細胞のパミドロネート処理は、IPPの下流でメバロン酸経路を遮断し、IPPの蓄積および応答性T細胞の増強されたサイトカイン分泌を引き起こす。NK様の活性化CD4
+を排除するために、NKG2Dなどの主要NKレセプターの発現を欠く、γ9δ2TCR形質導入されたT細胞を、MACSソーティングによって選択した。形質導入体を、腫瘍標的Daudiに対して、異なる濃度のパミドロネートで試験した。等価な刺激を受けたが無関係のαβTCRを発現するモック形質導入されたT細胞が、コントロールとして機能した。IFNγ分泌を、ELISAによって測定し、半数効果濃度(EC50)を計算した(
図1B)。溶解能について観察された変化と一致して、コントロールγ9-G115
wt/δ2-G115
wt(最大800pg/ml)と比較して、γ9-cl3
wt/δ2-cl3
wtで形質導入されたT細胞は、より低い量のIFNγ(最大600pg/ml)を分泌したが、γ9-cl5
wt/δ2-cl5
wtを発現するT細胞は、全てのパミドロネート濃度でより高い量のIFNγ(最大1300pg/ml)を産生した。IFNγ分泌における異なるプラトーにもかかわらず、全ての選択された変異体および野生型コントロールは、匹敵するパミドロネート-EC50を有した(約30pg/ml)。これらの結果は、別個のγ9δ2TCRクローンが異なる機能的結合力を媒介し、腫瘍認識における親γ9δ2T細胞クローン間での高い可変性が、個々のγ9δ2T細胞レセプターのCDR3ドメインによって実質的に調節されると考えられることを、示している。
【0085】
操作されたT細胞の機能的結合力を媒介するための迅速な方法としての、コンビナトリアル-γδTCR鎖交換(CTE)
上記決定を行うために、本発明者らは、操作されたT細胞上での新たに組み合わされたγ9-TCR鎖およびδ2-TCR鎖の発現を生じる、コンビナトリアルγδTCR鎖交換(CTE)と命名した戦略を考案した。このプロセスの間に、γ9-G115
wtをδ2-cl3
wtまたはδ2-cl5
wtと組み合わせ、δ2-G115
wtをγ9-cl3
wtまたはγ9-cl5
wtと組み合わせた。これらの組み合わせを、αβT細胞中にレトロウイルスにより形質導入した。全ての形質導入体において、等価なγδTCR発現が検出されたが、内因性αβTCRは明らかに下方調節された。これは、モック形質導入された細胞と比較した場合、γ9-G115
wt/δ2-G115
wtを発現するαβT細胞のほとんど破壊されたallo-反応性だけでなく、選択されたCTE操作されたαβT細胞のほとんど破壊されたallo-反応性もまた生じた。従って、CTE操作されたT細胞の反応性は、発現されたγδTCRに主として依存するが、残りの内因性αβTCRには依存しない。次に、形質導入体を、
51Cr放出アッセイにおいて腫瘍標的Daudiに対して機能的に試験した(
図1C)。γ9-鎖またはδ2-鎖の交換は、著名な差異を実際に引き起こした。元のTCRγ9-G115
wt/δ2-G115
wtと比較して、γ9-G115
wt/δ2-cl3
wt、γ9-G115
wt/δ2-cl5
wtまたはγ9-cl5
wt/δ2-G115
wtの組み合わせは、腫瘍細胞の、40〜70%増加した特異的溶解を媒介した(全てp<0.05)。同じ大きさの認識が、CD4
+γδTCR形質導入されたT細胞のIFNγ産生をパミドロネート滴定アッセイで試験した場合に観察された(
図1D)。さらに、コントロールTCRγ9-G115
wt/δ2-G115
wt(最大800pg/ml)と比較して、組み合わせγ9-cl3
wt/δ2-G115
wtのみが、全てのパミドロネート濃度において、形質導入された細胞の減少したIFNγ産生を導いたが(最大100pg/ml)、他の全てのCTE-γ9δ2TCRは、増加したIFNγ分泌を媒介した(最大≧1000pg/ml)。約30pg/mlの等しいパミドロネート-EC50が、全ての応答性のγ9δ2TCR形質導入された細胞について計算された。
【0086】
細胞-細胞相互作用がパミドロネート刺激とは異なって応答-動態学に影響を与えるかどうかを決定するために、改善された機能的結合力を媒介するCTE-γ9δ2TCRγ9-G115
wt/δ2-cl5
wtおよびコントロールTCRγ9-G115
wt/δ2-G115
wtを、エフェクター-対-標的比(E:T)滴定アッセイにおいて試験し(
図1E)、E:T-50を計算した。興味深いことに、γ9-G115
wt/δ2-G115
wtを発現するコントロール細胞について計算された1:1のE:T-50と比較して、γ9-G115
wt/δ2-cl5
wtを有するT細胞は、0.3:1のE:T-50で示差的に応答した。異なるTCRとリガンドとの間の相互作用、従って親和性が実際に増加するかどうかを試験するために、Daudiと、潜在的に高い(γ9-G115
wt/δ2-cl5
wt)または低い(γ9-cl3
wt/δ2-G115
wt)親和性のTCRのいずれかを発現するT細胞との間の細胞-細胞コンジュゲートを、フローサイトメトリーによって測定した。顕著なことに、γ9-G115
wt/δ2-cl5
wtを発現させた場合、γ9-cl3
wt/δ2-G115
wtおよびモック形質導入されたT細胞と比較して、より多くの細胞-細胞相互作用が観察された(
図1F)。この効果は、パミドロネートの存在に依存しなかった。従って、G115
wt/δ2-cl5
wtは、高い親和性のγ9δ2TCRである。従って、CTEは、形質導入されたT細胞において改善された機能的結合力を媒介する、増加した親和性を有するγ9δ2TCRを迅速に操作するための効率的な方法である。
【0087】
δCDR3およびJδ1中の残基は、γ9δ2TCRの安定性および操作されたαβT細胞の機能的結合力の媒介に関与する
重要な残基がJγ1内でも報告されているので、δCDR3が最適な機能的結合力を媒介する分子的要件を解明するために、Jδ1セグメント全体を含むモデルδCDR3(クローンG115)のアラニン変異誘発を実施した。初期スクリーニングの間に、5つの配列エリアが、γ9δ2TCR形質導入されたT細胞のTCR発現または機能的結合力のいずれかに影響を与えることが見出された。損なわれたγ9δ2TCR発現およびより低いTCR媒介性の機能的結合力を単一残基が担う程度を明確にするために、単一アラニン変異を生成した。変異したおよび野生型のδ2-G115鎖を、αβT細胞においてγ9-G115
wtと組み合わせて発現させ、δ2-鎖特異的抗体を使用してγ9δ2TCR発現について試験した(
図2A)。3つの単一アラニン変異、即ちδ2-G115
L116A、δ2-G115
F118Aおよびδ2-G115
V124Aが、変異していないδ2-G115
wtと比較した場合、70%低いTCR発現を引き起こした(Table 3(表3))。匹敵する結果が、γ9-鎖またはγδTCRの定常ドメインに対する抗体を使用して観察され、安定なTCR発現のためのδ2-G115
L116、δ2-G115
F118およびδ2-G115
V124の重要性を示している。γ9δ2TCR G115の結晶構造は本発明者らの知見を支持している:δ2-G115
L116、δ2-G115
F118およびδ2-G115
V124は、疎水性コア中に位置付けられ(
図2B)、従って、γ9δ2TCR G115の構造的安定性にとって重要であり得る。
【0088】
機能的結合力に対する単一アラニン変異の影響に取り組むために、
51Cr放出アッセイを実施した(
図2C)。低いTCR発現を有する形質導入体(δ2-G115
L116A、δ2-G115
F118Aおよびδ2-G115
V124A)は、δ2-G115
wtで形質導入された細胞と比較した場合、80%低い溶解能を実証したので、腫瘍細胞を効果的に溶解させることができなかった。変異δ2-G115
L109Aおよびδ2-G115
I117Aを有するT細胞(Table 3(表3))は、TCRを適切に発現したが、δ2-G115
wt発現細胞と比較した場合、70%低減した溶解活性を示した。TCR変異体をCD4
+Jurkat細胞中に形質導入し、IL-2産生を測定した場合に、同様の結果が得られた(データ示さず)。アラニン置換δ2-G115
L109Aおよびδ2-G115
I117Aを、γδTCRクローン3のδ2-鎖中に導入した場合、溶解活性の低減もまた見られた。これらの結果は、δCDR3中の残基δL109だけでなくδI117もまた、機能的結合力を媒介するために、γ9δ2TCRにとって一般に重要であり得ることを示している(
図2D)。クローン3、5およびG115のδ2-鎖間の配列アラインメントは、δL109およびδI117が保存されている可能性があることを示した(Table 2(表2))。
【0089】
【表3】
【0090】
上記表は、3つのクローンのアラインメントを示し、列挙された番号付けは、IGMTに従う。列挙されたγ9-G115
wt配列は、アミノ酸配列配列番号1のアミノ酸C117〜T142に対応する。従って、クローン3、5またはG115
wtのいずれかのγ112.1Lは、アミノ酸配列配列番号1のL126に対応する。列挙されたδ2-G115wt配列は、アミノ酸配列配列番号2のアミノ酸C111〜C138に対応する。従って、このアラインメントが示すように、クローン3および5の対応するCDR3領域は、アラインメントを介して容易に同定され得る。
【0091】
γ9δ2TCR形質導入されたT細胞の機能的結合力に対するCDR3の長さの影響
γ9δ2TCR G115のアラニンスキャニング変異誘発の間のアラニン置換は、機能的結果を有さないδCDR3ドメインの大きい部分を置き換えることができた。これにより、別個のγ9δ2TCR組み合わせの異なる機能的結合力にとって重要な因子には、機能的に重要な残基δ2-G115
L109と構造的に重要な残基δ2-G115
L116との間の相対的長さもまた含まれ得るという可能性が生じる。従って、異なるδ2-G115の長さ変異体を生成した。三重δ2-G115
T113〜K115もまた、安定な表面発現にとって重要であるので(データ示さず)、δ2-G115
L109とδ2-G115
T113との間に0個〜12個のアラニンを有する9つの長さ変異体(δ2-G115
LM)を生成し、γ9-G115
wtと再度組み合わせて、αβT細胞中で同様に発現させた(
図3A)。δ2-G115
LM形質導入されたT細胞の機能的結合力を試験するために、CD4
+TCR形質導入されたT細胞を、MACSソーティングによって選択し、Daudiに応答したIFNγELISAを、パミドロネートの存在下で実施した(
図3B)。δ2-G115
LM0およびδ2-G115
LM1を発現する操作されたT細胞は、IFNγを産生できず、δ-G115
LM4またはδ-G115
LM12を発現するT細胞は、δ2-G115
wt形質導入された細胞と比較して、約半分の量だけのIFNγを分泌した。他の全ての変異体(δ2-G115
LM2、3、5、6、9)は、δ2-G115
wtを発現する形質導入体と比較して、操作されたT細胞において匹敵する量のIFNγを誘導した。機能的障害を有する変異体(δ2-G115
LM0、1、4、12、Table4(表4))を、漸増するパミドロネート濃度に対してさらに試験して、EC50を計算した。最大IFNγ分泌における異なるプラトーにもかかわらず、全ての選択されたδ2-G115
LM形質導入された細胞および野生型コントロールは、匹敵するパミドロネート-EC50(約30pg/ml)を有した(
図3C)。長さ変異もまた、γ9-G115
E108とγ9-G115
E111.1との間の1〜6個のアラニンのストレッチ(γ9-G115
LM1〜6)を操作することによって、γ9δ2TCR G115のγCDR3において研究した。しかし、これは、機能的結合力に影響を与えなかった。
【0092】
これは、γ9CDR3ドメインおよびδ2CDR3ドメイン内のかなりのアラニンストレッチが許容され得ることを示している。しかし、特にδ2-G115
L109とδ2-G115
T113との間の短すぎるアラニンストレッチおよび非常に長いアラニンストレッチ、ならびに4つのアラニンを有するストレッチは、γ9δ2TCRの低減したまたは存在しない機能と関連し得る(
図3Bおよび
図3C)。
【0093】
生理学的γ9δ2T細胞レパートリーに関する結果
ImMunoGeneTics(IMGT)データベースを、γ9-G115
E109とγ9-G115
E111.1との間ならびにδ2-G115
L109とδ2-G115
T113との間の報告されたストレッチについて検索した。報告されたγ9-鎖についての優先的な長さは、γ9-G115
LM2およびγ9-G115
LM3に対応するCDR3領域について見出されたが、より短いストレッチもまた報告された。対照的に、かかる鎖が機能的でない可能性があるという本発明者らの観察と一致して、短いδCDR3ドメインを有するδ2-鎖、例えばδ2-G115
LM1またはδ2-G115
LM0は報告されなかった(
図3D)。列挙されたγ9δ2TCRの大部分は、δ2-G115
LM5、6、7に対応するδCDR3長さを含む。これらの知見は、δ2-G115
L109とδ2-G115
T113との間に5〜7残基のδCDR3長さを有するγ9δ2TCRを選択する優先性を支持する。それにもかかわらず、個々の配列の差異は、γ9δ2TCR媒介される機能的結合力においてなおも役割を果たし得る。
【0094】
γ9δ2TCR媒介される機能的結合力に対するCDR3配列の影響
最適な機能的結合力を媒介することに関してδCDR3の長さおよび配列の両方を試験するために、γ9δ2TCR長さ変異体δ2-G115
LM2、δ2-G115
LM4およびδ2-G115
LM6を、γ9-G115
wtと組み合わせてαβT細胞中に形質導入した。Daudiに応答した形質導入体のIFNγ分泌を、δ2-cl3
wt(長さがδ2-G115
LM2に対応する)、δ2-cl5
wt(長さがδ2-G115
LM4に対応する)およびδ2-G115
wt(長さがδ2-G115
LM6に対応する)由来の野生型配列で形質導入した細胞と比較した(Table 3(表3))。δ2-G115
LM6およびδ2-G115
wtで形質導入したT細胞は、サイトカイン分泌の量において異ならなかったが、他の全ての組み合わせの野生型鎖は、選択的にアラニンを含んだ長さ変異体と比較した場合、IFNγにおいて2倍よりも多い増加を示した(
図3E)。これらの結果は、形質導入された細胞の溶解能を試験した場合に確認された。従って、δCDR3中の配列もまた、γ9δ2TCRの機能にとって重要な因子であり得る。
【0095】
従って、γCDR3の逐次的な重要性を研究した。それにより、γ9-G115
LM1〜3を、δ2-G115
wtと組み合わせてT細胞中に形質導入した。Daudiに応答した形質導入体のIFNγ分泌を、γ9-cl3
wt(長さがγ9-G115
LM1に対応する)、γ9-cl5
wt(長さがγ9-G115
LM2に対応する)およびγ9-G115
wt(長さがγ9-G115
LM3に対応する)で形質導入した細胞と比較した(Table 3(表3))。γ9-cl3
wt/δ2-G115
wtを発現するT細胞は、それらの等価なγ9-G115
LM1と比較した場合、より低い量のIFNγを選択的に産生した(
図4A)。以前に、同じγ9δ2TCRの組み合わせもまた、低減した機能的結合力を媒介することが見出された(
図1Cおよび
図1D)。活性の喪失は、γ9-cl3
wt中のγCDR3
E109をγCDR3
A109に変異させることによって、正常レベル(γ9δ2TCR G115
wtを参照して)に回復され得、これは、γ9CDR3の可変配列中の単一の変化が、本明細書で試験したγ9δ2TCR形質導入されたT細胞の機能的結合力を調節するのに十分であり得ることを実証している。
【0096】
まとめると、L109とT113との間のδ2CDR3ドメインの長さおよび配列(Table 3(表3))は、γ9δ2TCR媒介性の機能的結合力において役割を果たし得る。さらに、γ9CDR3中のE108とE111.1との間の個々の配列は、γ9δ2TCRの活性を妨害し得、G115では、γCDR3
A109がリガンド相互作用にとって重要であり得る(Table 3(表3)および
図4B)。組み合わせると、これは、CTE操作されたγ9δ2TCRに論理的根拠を提供するが、γ9CDR3領域およびδ2CDR3領域の両方内でのランダム変異誘発にも論理的根拠を提供する。
【0097】
癌免疫療法のためのツールとしてのCTE操作されたT細胞
腫瘍細胞に対する増加した活性を有するCTE操作されたγ9δ2TCRは、TCR遺伝子治療戦略のための興味深い候補である。CTE-γ9δ2TCRによって媒介される機能的結合力における変化は、Bリンパ芽球性株細胞Daudiに応答した規定されたγ9δ2TCR対の独自の現象を構成し得、またはこれは、ほとんどの腫瘍標的に対する一般的な応答であり得る。従って、増加した活性を媒介したCTE-γ9δ2TCR(γ9-G115
wt/δ2-cl5
wt)または減少した活性を媒介したCTE-γ9δ2TCR(γ9-cl3
wt/δ2-G115
wt)を、薬理学的濃度のパミドロネート(10μM)の存在下でIFNγELISAにおいて種々の腫瘍に対して試験した(
図5A)。腫瘍反応性は、γ9-G115
wt/δ2-cl5
wtを利用した場合、γ9-G115
wt/δ2-G115
wtと比較して、他の血液学的癌、例えばRPMI8226/S、OPM2、LME1(全ての多発性骨髄腫)、K562(骨髄性白血病)、ならびに固形癌株細胞、例えばSaos2(骨肉腫)、MZ1851RC(腎細胞癌腫)、SCC9、Fadu(頭頸部癌)、MDA-MB231、MCF7、BT549(全ての乳癌)およびSW480(結腸癌腫)を含む全範囲の異なる腫瘍実体に対して顕著に増加し、γ9-cl3
wt/δ2-G115
wtを使用した場合、他の全ての標的に対しては顕著に低減したまたはさらには存在しなかった。さらに、腫瘍細胞に対する増加した活性を有するCTE操作されたT細胞は、PBMCおよび線維芽細胞などの健康な組織に対して反応性をなおも全く有さなかった。γ9-G115
wt/δ2-cl5
wtで操作されたT細胞の優れた溶解活性もまた、γ9-G115
wt/δ2-G115
wtを発現するコントロールT細胞と比較した場合、RPMI8226/S、OPM2、L363などの血液学的癌細胞ならびに固形癌株細胞Saos2、MZ1851RC、SCC9、MDA-MB231およびSW480について観察された(
図5B)。従って、CTE操作されたγ9δ2TCRは、正常組織に影響を与えずに、広いパネルの腫瘍細胞に対してより高い抗腫瘍応答を提供し得、従って、TCR操作されたT細胞の効力を増加させる潜在力を有する。
【0098】
CTE操作されたγ9δ2TCRの潜在的な臨床的影響を評価するために、AML患者の初代芽細胞を標的として選択した場合に、CTE-γ9δ2TCRの増加した効力もまた存在し得るかどうかを試験した。従って、CTE-γ9δ2TCR形質導入されたT細胞を、IFNγ-ELISpotにおいて、11個の初代AML芽細胞および健康なCD34
+前駆細胞に対して試験した(
図5C)。γ9-G115
wt/δ2-cl5
wtを発現する形質導入体は、コントロールγ9-G115
wt/δ2-G115
wtと比較して同等にまたは優れて、11個の初代AMLサンプルのうち8個を認識した。さらに、CD34
+前駆細胞は、γ9-G115
wt/δ2-cl5
wtまたはγ9-G115
wt/δ2-G115
wtのいずれかを発現するT細胞によって認識されなかった。これらの知見を考慮すると、CTE操作されたTCRγ9-G115
wt/δ2-cl5
wtは、臨床適用のための見込みのある候補であると思われる。
【0099】
最後に、CTE-γ9δ2TCRが、安全であり、in vivoで元の構築物と比較して増加した効力で機能することを実証するために、CTE-TCRで操作されたT細胞の養子移入を、ヒト化マウスモデル:Rag2
-/-γc
-/-二重ノックアウトマウスにおけるDaudiまたはRPMI8226/Sの成長に対する保護、において研究した。従って、末梢血αβT細胞を、CTE-TCRγ9-G115
wt/δ2-cl5
wtまたはコントロールTCRγ9-G115
wt/δ2-G115
wtで形質導入した。CTE-TCR形質導入されたT細胞は、L-セレクチンおよびCCR7を含むホーミングマーカーの類似の発現を示した。照射したRag2
-/-γc
-/-マウスに、静脈内注射によってルシフェラーゼ形質導入されたDaudi(0.5×10
6)またはRPMI8226/S細胞(5×10
6)および10
7のCTE操作されたT細胞を与えた。最適以下の条件下でCTE-TCR形質導入されたT細胞の優位性を試験するために、T細胞注入の頻度は、2回の注入が与えられた以前に報告した本発明者らのモデルと比較して、1回の静脈内注射まで低減させた。結果として、これは、生物発光画像化(BLI)によって腫瘍成長を測定した場合、TCR G115
wt操作されたT細胞による保護の喪失を生じた(
図6Aおよび
図6B)。しかし、γ9-G115
wt/δ2-cl5
wtを発現するCTE操作されたT細胞は、TCR G115
wt操作されたT細胞(Daudi:180.000カウント/分、42日目;RPMI8226/S:210.000カウント/分、35日目)と比較して、Daudi(20.000カウント/分、42日目、n=4)およびRPMI8226/S(80.000カウント/分、35日目、n=7)について明らかに腫瘍成長を低減させた。T細胞は、マウスにおいて注入の1〜2週間後まで末梢において見出すことができたが、T細胞の頻度は腫瘍退縮と相関しなかった。最後に、迅速に致死となるDaudiモデルでは、CTE操作されたT細胞で処置されたマウスのみが、γ9-G115
wt/δ2-G115
wtを発現するT細胞で処置されたマウスと比較して、約2か月間の顕著に増加した全生存を有した(
図6C)。これらの結果は、CTE操作されたγ9δ2TCRが、抗腫瘍反応性をin vivoで効率的に媒介することを示し、臨床適用のためにγ9δ2TCRを最適化するための潜在的なツールとしてCTEを指し示している。
【0100】
以下のtable 4(表4)では、本発明に従って実施された方法に関する結果が列挙される。デルタ-CDR3ドメインを、十分に研究されたクローンG115のCDR3ドメイン(Jセグメント全体を含む)のアラニン変異誘発(Table 4(表4)、変異)によってTCR機能について試験したところ、TCR安定性およびTCR機能に適している可能性があるアミノ酸が見出されている。さらに、γ9-鎖のγE108とγE111.1との間およびδ2-鎖のδL109とδT113との間のアミノ酸配列長さ(Table 4(表4)、長さ変異)を試験した。γ9-CDR3ドメインおよびδ2-CDR3ドメインの個々の配列が、機能に重要である(Table 4(表4)、配列)。CTE操作することによって、クローンG115のγ9-TCR鎖およびδ2-TCR鎖を、それぞれクローン3およびクローン5のγ9-TCR鎖およびδ2-TCR鎖と組み合わせた。CTE操作は、4つの新たに設計されたγδTCRを生じた。元のTCRおよび新たなCTE操作されたTCR(Table 4(表4)、組み合わせ)を、αβT細胞中に形質導入し、その機能について試験した。
【0101】
【表4A】
【0102】
【表4B】
【0103】
【表4C】
【0104】
【表5】