特許第6403669号(P6403669)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6403669
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】潮流計
(51)【国際特許分類】
   G01P 5/24 20060101AFI20181001BHJP
   G01P 5/00 20060101ALI20181001BHJP
   G01S 15/60 20060101ALI20181001BHJP
   G01S 7/526 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   G01P5/24 A
   G01P5/00 G
   G01S15/60
   G01S7/526 M
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-522657(P2015-522657)
(86)(22)【出願日】2014年5月13日
(86)【国際出願番号】JP2014062663
(87)【国際公開番号】WO2014199758
(87)【国際公開日】20141218
【審査請求日】2017年4月7日
(31)【優先権主張番号】特願2013-122307(P2013-122307)
(32)【優先日】2013年6月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川浪 敏志
【審査官】 山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−242583(JP,A)
【文献】 特開2007−064768(JP,A)
【文献】 特開平08−136642(JP,A)
【文献】 実開昭63−152580(JP,U)
【文献】 特開昭61−173182(JP,A)
【文献】 特開2011−191191(JP,A)
【文献】 特開平05−273333(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P 5/00
G01P 5/24
G01S 7/52− 7/64
G01S 15/00−15/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向が互いに異なる方向を向き、かつ、予め定められた俯角の方向に向かうメインローブを有する複数の超音波信号を水中に送信し、前記複数の超音波信号による複数のエコー信号を受信する送受波器と、
前記送受波器が受信した複数のエコー信号から前記超音波信号の周波数を中心周波数として予め定められた遮断帯域の信号成分を除去するフィルタ手段と、
前記遮断帯域の信号成分が除去されたエコー信号に含まれる前記メインローブによるエコー信号の成分のドップラシフト周波数を検出するドップラシフト周波数検出手段と、
海底に対する船の速度を示す対地船速と所定深度の潮流に対する船の速度を示す対水船速とを前記ドップラシフト周波数に基づいて求め、前記対地船速と前記対水船速との差から前記所定深度における潮流の速度を算出する潮流速度算出手段と、
を備えた潮流計であって、
前記複数の超音波信号のサイドローブの主要な指向方向が鉛直方向であることを特徴とする潮流計。
【請求項2】
前記フィルタ手段は、前記サイドローブの超音波が水底で反射して生じたエコー信号成分を除去するものであることを特徴とする請求項1に記載の潮流計。
【請求項3】
前記ドップラシフト周波数検出手段は、前記メインローブの超音波が水底から予め定められた距離範囲内の水中にある散乱体で反射して生じたエコー信号成分のドップラシフト周波数を検出するものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の潮流計。
【請求項4】
前記送受波器が送信する超音波は、互いに異なる複数の周波数成分を有し、
前記フィルタ手段は、前記各周波数成分の周波数を各中心周波数として予め定められた各遮断帯域の信号成分を除去するものであり、
前記ドップラシフト周波数検出手段は、前記各遮断帯域の信号成分が除去されたエコー信号に含まれる前記メインローブによるエコー信号成分のドップラシフト周波数を検出するものであることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の潮流計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、水中に送信された超音波のドップラシフト周波数を測定するドップラシフト周波数測定装置及びそれを備えた潮流計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、漁労援助や海洋調査を目的として潮流計で潮流が計測されている。潮流計は、船舶の船底に取り付けられており、例えば水平方向が互いに120度離れた方向に対して一定の俯角θで超音波を送受信する送受波器を備えている。この構成により、潮流計は、設定深度に位置する海中の無数の散乱体(プランクトン等)から帰来する反射波(対水エコー)に生じたドップラシフト周波数からその深度の潮流に対する船の速度(対水船速)を求める。また、潮流計は、海底からの反射波(対地エコー)に生じたドップラシフト周波数から海底に対する船の速度(対地船速)を求める。さらに、潮流計は、対地船速と対水船速との差から潮流の速度を求める。
【0003】
ところで、この種の潮流計の指向特性は、俯角θの方向にメインローブを有し、メインローブから一定角度で傘状に開き鉛直方向に向かうサイドローブを有するものとなることが知られている。そのため、送受波器の受波信号は、特に海底近傍においてメインローブによる受波信号成分にサイドローブによる受波信号成分が加算されたものとなるので、この種の潮流計では海底近傍の潮流の速度を計測できないという課題があった。
【0004】
この課題を解決するものとして、メインローブの指向方向と鉛直線とのなす角度を、サイドローブの指向方向と鉛直線とのなす角度より小さくすることにより、サイドローブによる水底反射波の強度をより低くしてメインローブによる水底の反射波を抽出できるようにした水中探知装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−242583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載のものでは、メインローブの指向方向と鉛直線とのなす角度が従前のものよりも小さくなるので、ドップラシフト周波数の測定精度が低下してしまい、その改善が望まれていた。
【0007】
本発明は、前述のような事情に鑑みてなされたものであり、従来のものよりも高精度でドップラシフト周波数を測定することができるドップラシフト周波数測定装置及びそれを備えた潮流計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のドップラシフト周波数測定装置は、予め定められた俯角の方向に向かうメインローブと、前記メインローブから所定角度で傘状に開き主要な指向方向が鉛直方向であるサイドローブとを有する超音波を水中に送信し、前記超音波のエコー信号を受信する送受波器と、前記送受波器が受信したエコー信号から前記超音波の周波数を中心周波数として予め定められた遮断帯域の信号成分を除去するフィルタ手段と、前記遮断帯域の信号成分が除去されたエコー信号に含まれる前記メインローブによるエコー信号成分のドップラシフト周波数を検出するドップラシフト周波数検出手段と、を備えた構成を有している。
【0009】
この構成により、本発明のドップラシフト周波数測定装置は、フィルタ手段がサイドローブによるエコー信号成分を除去することができるので、従来のもののように、メインローブの指向方向と鉛直線とのなす角度を小さくすることなく、メインローブによるエコー信号成分のドップラシフト周波数を検出することができる。したがって、本発明のドップラシフト周波数測定装置は、従来のものよりも高精度でドップラシフト周波数を測定することができる。
【0010】
本発明のドップラシフト周波数測定装置は、前記フィルタ手段は、前記サイドローブの超音波が水底で反射して生じたエコー信号成分を除去するものである構成を有している。
【0011】
この構成により、本発明のドップラシフト周波数測定装置は、サイドローブによる水底からの信号強度が比較的強いエコー信号成分を除去することができる。
【0012】
本発明のドップラシフト周波数測定装置は、前記ドップラシフト周波数検出手段は、前記メインローブの超音波が水底から予め定められた距離範囲内の水中にある散乱体で反射して生じたエコー信号成分のドップラシフト周波数を検出するものである構成を有している。
【0013】
この構成により、本発明のドップラシフト周波数測定装置は、水底近傍の水中で発生したエコー信号成分のドップラシフト周波数を従来よりも高精度で検出することができる。
【0014】
本発明のドップラシフト周波数測定装置は、前記送受波器が送信する超音波は、互いに異なる複数の周波数成分を有し、前記フィルタ手段は、前記各周波数成分の周波数を各中心周波数として予め定められた各遮断帯域の信号成分を除去するものであり、前記ドップラシフト周波数検出手段は、前記各遮断帯域の信号成分が除去されたエコー信号に含まれる前記メインローブによるエコー信号成分のドップラシフト周波数を検出するものである構成を有している。
【0015】
この構成により、本発明のドップラシフト周波数測定装置は、複数の周波数成分を有する広帯域化された超音波を用いて、メインローブによるエコー信号成分のドップラシフト周波数を検出することができる。
【0016】
本発明の潮流計は、ドップラシフト周波数測定装置と、海底に対する船の速度を示す対地船速と所定深度の潮流に対する船の速度を示す対水船速とを前記ドップラシフト周波数に基づいて求め、前記対地船速と前記対水船速との差から前記所定深度における潮流の速度を算出する潮流速度算出手段と、を備えた構成を有している。
【0017】
この構成により、本発明の潮流計は、従来のものよりも高精度でドップラシフト周波数を測定することができるドップラシフト周波数測定装置を備えるので、従来のものよりも高精度で潮流の速度を算出することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、従来のものよりも高精度でドップラシフト周波数を測定することができるという効果を有するドップラシフト周波数測定装置及びそれを備えた潮流計を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る潮流計の一実施形態におけるブロック構成図である。
図2】本発明に係る潮流計の一実施形態において、送受波器が送信する超音波の模式図である。
図3】本発明に係る潮流計の一実施形態において、送受波器が送信した超音波が物体に反射して生じるエコー信号の説明図である。
図4】本発明に係る潮流計の一実施形態において、図3に示した領域Aにおけるメインローブによる対水エコー信号成分のパワースペクトルである。
図5】本発明に係る潮流計の一実施形態において、図3に示した領域Bにおけるメインローブ及びサイドローブによる対水エコー信号成分のパワースペクトルである。
図6】本発明に係る潮流計の一実施形態におけるフィルタ処理の説明図である。
図7】本発明に係る潮流計の一実施形態におけるフローチャートである。
図8】本発明に係る潮流計の一実施形態の他の態様におけるフィルタ処理の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明のドップラシフト周波数測定装置を潮流計に適用した例を挙げて説明する。
【0021】
まず、本発明の一実施形態における潮流計の構成について説明する。
【0022】
図1に示すように、本実施形態における潮流計10は、ドップラシフト周波数測定装置20、潮流算出部11、表示部12を備えている。
【0023】
潮流計10は、図示しないCPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、各種インタフェースが接続される入出力回路等を備えたマイクロコンピュータを含む。このマイクロコンピュータは、ROMに予め格納された制御プログラムをCPUに実行させることにより、潮流計10の機能を実現するようになっている。また、潮流計10は、図示しない操作部を備え、この操作部を利用者が操作することにより、例えば潮流を計測する深度の設定ができるようになっている。
【0024】
ドップラシフト周波数測定装置20は、送信信号生成部21、送信アンプ22、送受信切替部23、送受波器24、受信アンプ25、アナログデジタルコンバータ(ADC)26、フィルタ27、周波数検出部28を備えている。
【0025】
送信信号生成部21は、超音波帯域の送信信号を生成し、送信アンプ22(22a〜22c)に出力するようになっている。
【0026】
送信アンプ22(22a〜22c)は、送信信号生成部21が生成した送信信号を所定増幅率で増幅し、送受信切替部23に出力するようになっている。
【0027】
送受信切替部23(23a〜23c)は、送信アンプ22から送受波器24に向かう送信時の経路と、送受波器24から受信アンプ25に向かう受信時の経路とを切り替えるようになっている。
【0028】
送受波器24(24a〜24c)は、例えば船底に設置され、超音波を送信するようになっている。この送受波器24は、送信する超音波が、水平方向に対して120度の角度間隔となるよう、かつ、一定の俯角で海中に送信されるよう配置されている。また、送受波器24は、送信した超音波が海中の無数の散乱体や海底で反射したエコー信号を受信し、送受信切替部23を介して受信アンプ25に出力するようになっている。
【0029】
受信アンプ25(25a〜25c)は、送受信切替部23を介して送受波器24から入力したエコー信号を所定増幅率で増幅し、ADC26に出力するようになっている。
【0030】
ADC26(26a〜26c)は、入力したアナログ値の信号をデジタル値の信号に変換してフィルタ27に出力するようになっている。
【0031】
フィルタ27(27a〜27c)は、ADC26から入力した信号に対し、送信信号生成部21が生成した送信信号の周波数を中心周波数として、その中心周波数近傍の周波数成分を除去するようになっている。このフィルタ27(27a〜27c)は、本発明に係るフィルタ手段を構成する。
【0032】
周波数検出部28(28a〜28c)は、フィルタ27の出力信号から、設定深度におけるメインローブによるエコー信号のドップラシフト周波数を検出するようになっている。この周波数検出部28(28a〜28c)は、本発明に係るドップラシフト周波数検出手段を構成する。
【0033】
潮流算出部11は、周波数検出部28が検出したドップラシフト周波数のデータを記憶するメモリ(図示省略)を備えている。また、潮流算出部11は、周波数検出部28が検出したドップラシフト周波数に基づいて、図示しない操作部で設定された設定深度における対水船速を算出するとともに対地船速を算出し、さらに対水船速と対地船速とに基づいて設定深度における潮流の速度を求めるようになっている。この潮流算出部11は、本発明に係る潮流速度算出手段を構成する。
【0034】
ここで、対水船速(又は対地船速)をv、ドップラシフト周波数をfd、水中音速をc、超音波の周波数をf0、俯角をθとすると、cはvよりも十分に大きいので、対水船速(又は対地船速)vは[数1]で近似される。
【0035】
[数1]
v=fd・c/(2f0・cosθ)
【0036】
表示部12は、潮流算出部11が算出した潮流の速度のデータを入力し、潮流の速度を画面に表示するようになっている。
【0037】
次に、送受波器24が送信する超音波について図2の模式図を用いて説明する。
【0038】
図2に示すように、送受波器24は、3方向に超音波を送信するようになっている。例えば、送受波器24a、24b及び24cは、それぞれ、メインローブ31、32及び33を送信するものである。形成された3つのメインローブ31〜33は、互いに120度の角度間隔、かつ、予め定められた俯角θを有する。ここで、メインローブ31は、船首方向に向かうメインローブである。
【0039】
送受波器24から3方向に超音波が送信されると、各メインローブ31〜33から所定角度で傘状に開いたサイドローブ34が発生する。このサイドローブ34は、実際は単一方向に明確に指向するものではないが、送受波器24においては、海底での反射強度は鉛直方向(真下方向)が最も強くなるので、主要な指向方向が鉛直方向であるサイドローブ34が発生しているように表すことができる。
【0040】
次に、送受波器24が送信した超音波が物体に反射して生じるエコー信号について図3図6を用いて説明する。
【0041】
図3は、メインローブ及びサイドローブによるエコー信号成分の信号強度の時間的な変化を示した図である。実際のエコー信号成分は、メインローブとサイドローブとの合成になるが、説明を分かりやすくするため、図3ではメインローブ及びサイドローブによるエコー信号成分の信号強度を個別に表している。
【0042】
図3に示すように、エコー信号40は、メインローブによるエコー信号成分41(実線)と、サイドローブ34によるエコー信号成分42(点線)と、を含む。メインローブによるエコー信号成分41は、海水中の散乱体であるプランクトン等で反射して生じる対水エコー信号成分が時間の経過とともに徐々に減衰していく減衰区間41aと、送信信号が海底で反射して対地エコー信号成分が生じる海底反射区間41bと、を含む。一方、サイドローブ34によるエコー信号成分42は、同様に、対水エコー信号成分が時間の経過とともに徐々に減衰していく減衰区間42aと、対地エコー信号成分が生じる海底反射区間42bと、を含む。
【0043】
図3において、海底反射区間41bの直前の減衰区間41aは、海底近傍の海水(以下「底潮」という。)の区間であるので、底潮区間41cとして表している。この底潮区間41cは、例えば、海底の深度が100mであれば70m〜100m程度の水深に相当する区間である。
【0044】
底潮区間41cでは、サイドローブ34による海底反射区間42bの対地エコー信号成分によりマスクされているので、従来の潮流計では、底潮区間41cの信号強度の測定は不可能であった。したがって、従来は、サイドローブ34によるエコーの影響を受けない図示の範囲が潮流計測可能範囲であった。
【0045】
ここで、図示の潮流計測可能範囲において、深度が比較的深い領域Aにおけるメインローブによる対水エコー信号成分のパワースペクトルの一例を図4に示す。この例における対水エコー信号成分51は、0Hzよりも高い周波数のドップラシフト周波数fd51を有している。図4に示したように、この領域Aでは、サイドローブ34によるエコー信号成分の影響を受けないので、周波数検出部28は、ドップラシフト周波数fd51を容易に検出可能である。
【0046】
一方、図3において、領域Bにおける対水エコー信号成分のパワースペクトルの一例を図5に示す。この例において、メインローブによる対水エコー信号成分52は、0Hzよりも高い周波数のドップラシフト周波数fd52を有している。しかしながら、この領域Bでは、図示のようにサイドローブ34による対水エコー信号成分53の影響を受けるので、この状態では、周波数検出部28は、ドップラシフト周波数fd52を検出不可能である。
【0047】
ここで、対水エコー信号成分53は、図2に示したように、その主要な指向方向がほぼ鉛直方向に沿ったサイドローブ34によるものなので、その中心周波数は、ほぼ0Hzのドップラシフト周波数となる。すなわち、対水エコー信号成分53の中心周波数は、送受波器24が送信する超音波信号の周波数(海中に送信する超音波の周波数)にほぼ一致する。
【0048】
したがって、フィルタ27の中心周波数を、送受波器24が送信する超音波信号の周波数に設定し、ドップラシフト周波数=0Hzの近傍を遮断帯域とするフィルタ処理を施すことにより、図6に示すように、サイドローブ34による対水エコー信号成分53を減衰させることができるので、周波数検出部28は、潮流の速度がある程度の速さを有する場合はドップラシフト周波数fd52を検出可能となる。すなわち、フィルタ27は、ADC26から入力した信号から、サイドローブによる受波信号成分を除去することができる。このフィルタ27は、例えば、帯域除去フィルタやバンドパスフィルタで構成され、そのフィルタ特性(中心周波数、フィルタ減衰特性等)が図示しない操作部により設定されるようになっている。
【0049】
次に、本実施形態における潮流計10の動作について図7に示すフローチャートを中心に説明する。
【0050】
送信信号生成部21は、超音波帯域の送信信号を生成し(ステップS11)、送信アンプ22に出力する。送信アンプ22は、送信信号を増幅し、送受信切替部23を介して送受波器24に出力する。
【0051】
送受波器24は、例えば図2に示したメインローブ31〜33の方向に超音波を送信する(ステップS12)。
【0052】
送受波器24は、送信した超音波が物体で反射した反射波を受信し、その信号を送受信切替部23経由で受信アンプ25に出力し、受信アンプ25は反射波の信号を受信する(ステップS13)。
【0053】
ADC26は、アナログ値の受信信号をデジタル値の受信信号に変換し(ステップS14)、フィルタ27に出力する。
【0054】
フィルタ27は、図6を用いて説明したフィルタ処理を施し(ステップS15)、サイドローブ34による対水エコー信号成分53の信号レベルがノイズフロアのレベルと同等又はそれ以下となった受信信号を周波数検出部28に出力する。
【0055】
周波数検出部28は、設定深度及び海底におけるメインローブ31〜33によるエコー信号成分のドップラシフト周波数を検出し(ステップS16)、検出したデータを潮流算出部11に出力する。
【0056】
潮流算出部11は、前述の[数1]により、ドップラシフト周波数から対水船速及び対地船速を算出し、対地船速と対水船速との差から設定深度における潮流の速度を算出する(ステップS17)。潮流算出部11は、算出した潮流の速度データを表示部12に出力し、表示部12は、例えば、設定深度を示す数値とともに潮流の速度データを画面に表示する。
【0057】
なお、潮流算出部11は、底潮の速度が低速である場合(ドップラシフト周波数がゼロに近い場合)には、底潮の速度を算出することは困難となるが、その場合は、例えば底潮の速度を1ノット未満として表示部12に表示させるのが好ましい。この構成により、潮流計10は、底潮に関する情報を全く提供できないシステムよりも、有益な情報をユーザに提供することができる。
【0058】
以上のように、本実施形態におけるドップラシフト周波数測定装置20は、フィルタ27がサイドローブによるエコー信号成分を除去することができるので、従来のもののように、メインローブの指向方向と鉛直線とのなす角度を小さくすることなく、メインローブによるエコー信号成分のドップラシフト周波数を検出することができる。したがって、本実施形態におけるドップラシフト周波数測定装置20は、従来のものよりも高精度でドップラシフト周波数を測定することができる。
【0059】
また、本実施形態における潮流計10は、従来のものよりも高精度でドップラシフト周波数を測定することができるドップラシフト周波数測定装置20を備える構成としたので、従来のものよりも高精度で潮流の速度を算出することができる。特に、本実施形態における潮流計10は、フィルタ27がサイドローブによるエコー信号成分を除去するので、底潮の速度を高精度で算出することができる。
【0060】
(他の態様)
前述の実施形態では、送信信号生成部21が、単一周波数の送信信号を生成する例を挙げて説明したが、広帯域化した送信信号を生成する構成としてもよい。以下、図8を用いて説明する。
【0061】
図8に示すように、送信信号生成部21が、互いに異なる周波数f1、f2、f3の信号成分を含む広帯域の送信信号を生成するものとする。この種の送信信号は、例えば、一定周波数の搬送波を所定のコードによりBPSK変調することにより生成される。
【0062】
この場合、フィルタ27は、ドップラシフト周波数fd1、fd2、fd3がそれぞれ0Hzとなる周波数の近傍を各遮断帯域とする櫛型のフィルタ処理を施すことにより、周波数f1、f2、f3の信号成分のサイドローブによるエコー信号成分61、62、63を減衰させ、メインローブによるエコー信号成分71、72、73を取り出すことができる。
【0063】
その結果、周波数検出部28は、メインローブによるエコー信号成分71、72、73のドップラシフト周波数fd71、fd72、fd73を検出することができる。
【符号の説明】
【0064】
10 潮流計
11 潮流算出部(潮流速度算出手段)
12 表示部
20 ドップラシフト周波数測定装置
21 送信信号生成部
22(22a〜22c) 送信アンプ
23(23a〜23c) 送受信切替部
24(24a〜24c) 送受波器
25(25a〜25c) 受信アンプ
26(26a〜26c) ADC
27(27a〜27c) フィルタ(フィルタ手段)
28(28a〜28c) 周波数検出部(ドップラシフト周波数検出手段)
31〜33 メインローブ
34 サイドローブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8