特許第6403679号(P6403679)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6403679
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】付加開裂剤
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/38 20060101AFI20181001BHJP
   C08F 20/14 20060101ALI20181001BHJP
   C07F 7/18 20060101ALI20181001BHJP
   C09C 3/12 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   C08F2/38
   C08F20/14
   C07F7/18 W
   C09C3/12
【請求項の数】14
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2015-541828(P2015-541828)
(86)(22)【出願日】2013年11月4日
(65)【公表番号】特表2015-537082(P2015-537082A)
(43)【公表日】2015年12月24日
(86)【国際出願番号】US2013068207
(87)【国際公開番号】WO2014074427
(87)【国際公開日】20140515
【審査請求日】2016年10月24日
(31)【優先権主張番号】61/725,061
(32)【優先日】2012年11月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ジョリー, ガイ ディー.
(72)【発明者】
【氏名】アブエルヤマン, アーメド エス.
(72)【発明者】
【氏名】フォーノフ, アン アール.
(72)【発明者】
【氏名】クレッグ, ブラッドリー ディー.
(72)【発明者】
【氏名】クレプスキー, ラリー アール.
(72)【発明者】
【氏名】モーザー, ウィリアム エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ユルト, セルカン
(72)【発明者】
【氏名】オックスマン, ジョエル ディー.
【審査官】 小出 直也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/112304(WO,A1)
【文献】 特許第6087355(JP,B2)
【文献】 MICHAEL J. MONTEIRO et al,JOURNAL OF POLYMER SCIENCE PART A Polymer Chemistry,2001年 8月15日,39(16),p2813-2820
【文献】 Lillian Huston et al,Macromolecules,2004年,37(12),p4441-4452
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00− 2/60
C08F 6/00−246/00
A61K 6/00− 6/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)不安定な付加開裂基、及び2)少なくとも2つの表面結合官能基を含み、
下記式で表される、付加開裂剤。
【化1】

[式中、R、R、及びRは、各々独立して、Y−Q’−、(ヘテロ)アルキル基又はアリール基であり、ただし、R、R、及びRのうちの少なくとも2つは、Y−Q’−であり、
Q’は共有結合又は連結基であり(ただし、連結基の側鎖にエチレン性不飽和重合性基を含む場合は除く)、
Yは、モノホスフェート、ホスホネート、ホスホン酸、ヒドロキサム酸、カルボン酸、及びアセトアセテート、無水物、イソニトリル基、シリル、ジスルフィド、チオール、アミノ、スルフィン酸、スルホン酸、ホスフィン、フェノール、ベンゾトリアゾリル、チアゾイル、ベンズイミダゾリル、又はピリジニルから選択される表面結合官能基であり
各Xは、独立して、−O−又は−NR−(式中、Rは、H又はC〜Cアルキルである)であり、
nは、0又は1である。]
【請求項2】
Q’が、式:−C2r−[式中、rが1〜10である。]で表されるアルキレンである、請求項に記載の付加開裂剤。
【請求項3】
Q’が、式:−CH−CH(OH)−CH−で表されるヒドロキシル置換アルキレンである、請求項に記載の付加開裂剤。
【請求項4】
Q’がアリールオキシ置換アルキレンである、請求項に記載の付加開裂剤。
【請求項5】
Yが、式:−SiRで表されるシリル基である、請求項1に記載の付加開裂剤。
[式中、R基が、独立して、アルコキシ、アセトキシ、及びハロゲン化物の群から選択される。]
【請求項6】
請求項1に記載の付加開裂剤、フリーラジカルにより重合可能な少なくとも1つのモノマー及び開始剤を含む、重合性組成物。
【請求項7】
100重量部の全モノマーa)〜e)に基づき、
a)85〜100重量部の(メタ)アクリル酸エステル、
b)0〜15重量部の酸官能性エチレン性不飽和モノマー、
c)0〜10重量部の非酸官能性エチレン性不飽和極性モノマー(ただし、前記非酸官能性エチレン性不飽和極性モノマーはモノマーa)、b)、d)及びe)とは異なる)
d)0〜5部のビニルモノマー(ただし、前記ビニルモノマーはモノマーa)、b)、c)及びe)とは異なる)、及び
e)0〜5部の多官能性(メタ)アクリレートを含み、
100重量部のa)〜e)に基づき、
f)0.1〜12重量部の前記付加開裂剤、及び
g)開始剤、を含む、請求項に記載の重合性組成物。
【請求項8】
0.01〜5部の多官能性(メタ)アクリレートを更に含む、請求項に記載の重合性組成物。
【請求項9】
下記式で表される化合物を、
【化2】

[式中、Xが、求電子性又は求核性の官能基を含み、
が、X、X−R、又はX−Rであり、
各Xは、独立して、−O−又は−NR−(式中、Rは、H又はC〜Cアルキルである)であり、
及びRは、各々独立して、Y−Q’−、(ヘテロ)アルキル基又はアリール基であり、
Q’は共有結合又は連結基であり(ただし、連結基の側鎖にエチレン性不飽和重合性基を含む場合は除く)、
Yは、モノホスフェート、ホスホネート、ホスホン酸、ヒドロキサム酸、カルボン酸、及びアセトアセテート、無水物、イソニトリル基、シリル、ジスルフィド、チオール、アミノ、スルフィン酸、スルホン酸、ホスフィン、フェノール、ベンゾトリアゾリル、チアゾイル、ベンズイミダゾリル、又はピリジニルから選択される表面結合官能基であり、
nが、0又は1である。]
式(III)で表される化合物と反応させる工程を含む、付加開裂剤を作製する方法。
−R5*−Y III
[式中、Aが、官能基Xと共反応性である官能基であり、
5*が、単結合、又はY基を反応性官能基Aに結合させる二価若しくは三価の(ヘテロ)ヒドロカルビル連結基であり(ただし、連結基の側鎖にエチレン性不飽和重合性基を含む場合は除く)、
Yは、モノホスフェート、ホスホネート、ホスホン酸、ヒドロキサム酸、カルボン酸、及びアセトアセテート、無水物、イソニトリル基、シリル、ジスルフィド、チオール、アミノ、スルフィン酸、スルホン酸、ホスフィン、フェノール、ベンゾトリアゾリル、チアゾイル、ベンズイミダゾリル、又はピリジニルから選択される表面結合官能基である。]
【請求項10】
下記式で表される表面修飾無機酸化物。
【化3】

[式中、Fillerは、無機フィラー粒子であり、
は、Y−Q’−、(ヘテロ)アルキル基、又はアリール基であり、
Q’は共有結合又は連結基であり、
Y’は、表面結合官能基Yの残基であり、Yは、モノホスフェート、ホスホネート、ホスホン酸、ヒドロキサム酸、カルボン酸、及びアセトアセテート、無水物、イソニトリル基、シリル、ジスルフィド、チオール、アミノ、スルフィン酸、スルホン酸、ホスフィン、フェノール、ベンゾトリアゾリル、チアゾイル、ベンズイミダゾリル、又はピリジニルから選択され
は、独立して、−O−又は−NR−(式中、Rは、H又はC〜Cアルキルである。)であり、
nは、0又は1である]。
【請求項11】
フリーラジカルにより重合可能な少なくとも1つのモノマー、開始剤、及び請求項10に記載の表面修飾無機酸化物を含む、重合性組成物。
【請求項12】
下記式で表される表面修飾無機酸化物を更に含む、請求項に記載の重合性組成物。
【化4】

[式中、Fillerは、無機フィラー粒子であり、
は、Y−Q’−、(ヘテロ)アルキル基、又はアリール基であり、
Q’は共有結合又は連結基であり、
Y’は、表面結合官能基Yの残基であり、
は、独立して、−O−又は−NR−(式中、Rは、H又はC〜Cアルキルである。)であり、
nは、0又は1である。]
【請求項13】
1つ以上の多官能性(メタ)アクリレートモノマー又は(メタ)アクリレートオリゴマーと、請求項1〜のいずれか一項に記載の付加開裂剤と、を含む、ハードコート組成物。
【請求項14】
1つ以上の多官能性(メタ)アクリレートモノマー又は(メタ)アクリレートオリゴマーと、請求項12に記載の重合性組成物と、を含む、ハードコート組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[背景]
本開示は、低応力重合性組成物において使用するための新規付加開裂剤を提供する。フリーラジカル重合は、通常、モノマーがポリマーに変換されるとき、体積の減少を伴う。体積の収縮によって、硬化された組成物において応力が生じ、微小な亀裂及び変形を引き起こす。硬化された組成物と基材との間の界面に移動した応力は、接着不良を引き起こす場合があり、硬化された組成物の耐久性に影響を与える場合がある。
【0002】
本開示の付加開裂剤は、重合プロセス中に開裂し、再形成することのできる不安定な結合を含めることによる応力軽減を提供する。そのような開裂により、ネットワークの再形成、重合応力の軽減、及び高応力領域の進展の防止を可能にする機序を提供することができる。本付加開裂剤は、更に、重合性組成物を粘稠な材料から弾性固体又は粘弾性固体へと転移させるゲル化点を遅延させることにより、応力軽減を提供し得る。重合性混合物が粘稠性を維持する時間が長いほど、物質の流動が重合プロセス中の応力を緩和するために作用し得る可使時間が多くなる。
【0003】
付加開裂剤により、歯科用組成物、薄膜、ハードコート、複合材、接着剤、及び応力の減少の対象となるその他の使用法において用途を有する、新規の応力減少剤が提供される。加えて、付加開裂プロセスにより、更に官能化させることのできる新規ポリマーを提供する連鎖移動事象がもたらされる。
【0004】
[概要]
本開示は、次の官能基、1)開裂させ、再形成させて歪みを軽減することができる不安定な付加開裂基、及び2)共有結合又はイオン結合を形成することなどによって、基材の表面と結合する少なくとも2つの表面結合官能基を有する、付加開裂剤を提供する。
【0005】
付加開裂剤を重合性モノマー混合物に添加することにより、重合により誘導される応力を減少させることができる。本開示は、本明細書に更に開示されるように、式Iの付加開裂剤を調製する方法を更に提供する。
【0006】
本開示は、付加開裂剤と1つ以上のフリーラジカルによって重合可能なモノマー又はオリゴマーとを含む硬化性組成物を更に提供し、この付加開裂剤は、得られるポリマーの応力を低減する。付加開裂剤は、付加開裂結合が重合時に不安定であり、持続的に開裂及び再形成することで重合により生じる応力が減少する付加開裂プロセスを介して、連鎖移動剤として機能する。
【0007】
本開示は、基材表面に結合又は基材表面と結合する少なくとも2つの表面結合官能基を有する、硬化性組成物を更に提供する。結果として、本開示の硬化性組成物は、セルフボンディング性又はセルフプライミング性である可能性がある。
【0008】
一部の実施形態では、付加開裂剤それ自体が、その剤が基材に適用されて、その基材と結合するプライマーとして働き得る。
【0009】
本明細書で使用するとき、
「アクリロイル」は一般的な意味で用いられ、アクリル酸の誘導体だけなくアミン誘導体及びアルコール誘導体もそれぞれ意味する。
【0010】
「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の両方を包含する。即ち、エステル及びアミドの両方を含む。
【0011】
「硬化性」は、コーティング可能な物質が、フリーラジカル重合、化学架橋、放射線架橋等を用いて固体の実質的に流動しない物質に転換され得ることを意味する。
【0012】
「アルキル」は、直鎖状、分枝鎖状、及び環状アルキル基を含み、非置換及び置換アルキル基の両方を含む。特に指定がない限り、アルキル基は、典型的には、1〜20個の炭素原子を含む。本明細書で使用するとき、「アルキル」の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、イソブチル、t−ブチル、イソプロピル、n−オクチル、n−ヘプチル、エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチル、及びノルボルニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。特に記載しない限り、アルキル基は、一価であっても多価であってもよく、すなわち、一価アルキルであっても多価アルキレンであってもよい。
【0013】
「ヘテロアルキル」は、未置換及び置換アルキル基の両方と共にS、O及びNから独立して選択される1個以上のヘテロ原子を有する直鎖状、分枝鎖状、及び環状のアルキル基をいずれも包含する。別途記載のない限り、ヘテロアルキル基は、典型的には、1〜20個の炭素原子を含む。「ヘテロアルキル」は、以下に記載の「1個以上のS、N、O、P又はSi原子を含むヒドロカルビル」の部分集合である。本明細書で使用するとき、「ヘテロアルキル」の例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、3,6−ジオキサへプチル、3−(トリメチルシリル)−プロピル、4−ジメチルアミノブチル及びこれらに類するものが挙げられるが、これらに限定されない。別途記載のない限り、ヘテロアルキル基は、一価であっても多価であってもよく、すなわち、一価ヘテロアルキルであっても多価ヘテロアルキレンであってもよい。
【0014】
「アリール」は、5〜18個の環原子を含む芳香族であり、任意の縮合環を含んでもよく、これは、飽和であっても、不飽和であっても、芳香族であってもよい。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、ビフェニル、フェナントリル、及びアントラシルが挙げられる。ヘテロアリールは、窒素、酸素、又は硫黄等の1〜3個のヘテロ原子を含むアリールであり、縮合環を含んでもよい。ヘテロアリール基のいくつかの例は、ピリジル、フラニル、ピロリル、チエニル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、インドリル、ベンゾフラニル、及びベンゾチアゾリルである。別途記載のない限り、アリール及びヘテロアリール基は、一価であっても多価であってもよく、すなわち、一価アリールであっても多価アリーレンであってもよい。
【0015】
「(ヘテロ)ヒドロカルビル」は、ヒドロカルビルアルキル及びアリール基、並びにヘテロヒドロカルビルヘテロアルキル及びヘテロアリール基を含み、後者は、エーテル又はアミノ基等の1つ以上のカテナリー(鎖内)酸素ヘテロ原子を含む。ヘテロヒドロカルビルは、所望により、エステル、アミド、尿素、ウレタン、及びカーボネート官能基等の1つ以上のカテナリー(鎖内)官能基を含んでもよい。別途記載のない限り、非高分子(ヘテロ)ヒドロカルビル基は、典型的に、1〜60個の炭素原子を含む。このようなヘテロヒドロカルビルのいくつかの例には、本明細書で使用するとき、上記「アルキル」、「ヘテロアルキル」、「アリール」、及び「ヘテロアリール」について記載したものに加えて、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、4−ジフェニルアミノブチル、2−(2’−フェノキシエトキシ)エチル、3,6−ジオキサヘプチル、3,6−ジオキサへキシル−6−フェニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
「結合」は、表面結合官能基という文脈において、付加開裂剤と基材との間の共有結合又はイオン性結合の形成を指す。結合はまた、表面結合官能基による基材のエッチングも含む。
【0017】
[詳細な説明]
本開示は、次の官能基、1)開裂させ、再形成させて歪みを軽減することができる不安定な付加開裂基、及び2)少なくとも2つの表面結合官能基を有する、付加開裂剤を提供する。
【0018】
付加開裂基は反応して、不安定な基を付加し、断片化し、ポリマー又はポリマーネットワークの伸長に対する応力を減少させてポリマー鎖を伸長させることにより再度付加する、ポリマー系となることができる。そのような基は、G Moadら、Radical addition−fragmentation chemistry in polymer synthesis,Polymer,Vol.49,No.5.(2008年3月3日),pp.1079〜1131に記載のものから選択され得る。
【0019】
好ましい一実施形態では、本開示は、下記式で表される付加開裂剤を提供する。
【0020】
【化1】

[式中、
、R、及びRは各々独立して、Y−Q’−、(ヘテロ)アルキル基、又は(ヘテロ)アリール基であり、ただし、R、R、及びRのうちの少なくとも2つはY−Q’−であり、
Q’は共有結合又は連結基であり、好ましくは価数がp+1である(ヘテロ)ヒドロカルビル連結基であり、
Yは、表面結合官能基であり、
pは、1又は2であり、
各Xは、独立して、−O−又は−NR−(式中、Rは、H又はC〜Cアルキルである)であり、
nは0又は1である]R、R、及びRの各々は、2つ以上のY−Q’−基を含んでもよいことが、更に理解されるであろう。
【0021】
更に式Iに関して、特に有用なY基(R−X−基及び任意にR−X−並びにR−X基)には、モノホスフェート、ホスホネート、ホスホン酸、ヒドロキサム酸、カルボン酸及びアセトアセテート、無水物、イソニトリル基、シリル基、ジスルフィド基、チオール基、アミノ基、スルフィン酸基、スルホン酸基、ホスフィン基、フェノール基(カテコール及び1,2,3−トリヒドロキシベンゼン誘導体を含む)、又はヘテロ芳香族基が含まれる。式:−SiRのシリル基として選択されるYが特に対象とされる。[式中、各R基は独立して、アルコキシ、アセトキシ、及びハロゲン化物の群から選択される]。
【0022】
付加開裂剤は、次のスキーム1に示す付加開裂経路に従うと考えられる。このスキームでは、nが0である式Iの付加開裂基/剤を示す。工程1では、フリーラジカル種P・を付加開裂剤に添加する。付加開裂剤はその後、工程2に示すように開裂して、安定したα−カルボニル第3級ラジカル、及びフリーラジカル種P・の残基を担持するα,β−不飽和エステルを形成する。このα,β−不飽和エステルは、工程5に示すようにラジカル付加され得る。ラジカル付加は、開始剤又はポリマーラジカルによって開始し得る。
【0023】
同時に、α−カルボニル第3級ラジカルは、工程3に示すように、モノマーの重合を開始させ得る。例示のために、メタクリレートモノマーを示す。モノマーが付加されると、メタクリレート末端ラジカル中間体が生成される。式1の付加開裂剤の存在下では(工程4に示す)、第3級ラジカルが得られる付加及び開裂の両方が生じる。工程4から得られるポリマーは、追加的なモノマー(複数可)を更に開裂し、再結合又は付加し得る。
【0024】
【化2】
【0025】
応力軽減はまた、付加開裂剤の存在下で反応速度が低下した(硬化速度が減速した)結果でもあり得る。ラジカルを付加開裂剤に付加した結果、寿命の長い可能性がある第3級ラジカル(工程1、スキーム1の生成物)が生成された。この寿命の長いラジカル中間体は、出発物質に戻って、モノマーに付加又は開裂し得る。開裂、逆付加(retro-addition)、及びモノマー付加が、付加と比べて緩徐である場合、中間体第3級ラジカルは、比較的長い寿命を有する。この寿命の長いラジカル中間体は、次いで、ラジカルリザーバとして作用し、全体的重合プロセスを減速させる。硬化速度の低下は、粘稠な物質から弾性又は粘弾性固体への物質の移行を遅延させ、ゲル化点を遅延させる役目をし得る。ゲル化後収縮は、応力発生の主な要因であり、したがって、わずかであってもゲル化点が遅延すると、硬化プロセス中に物質が流動する更なる時間を与えることによって応力の軽減を導くことができる。したがって、式Iの化合物でさえも、重合応力を低減するために使用することができる。
【0026】
式Iの化合物は、置換、変位、又は縮合反応によって、(メタ)アクリレートダイマー及びトリマーから調製することができる。原料となる(メタ)アクリレートダイマー及びトリマーは、参照により本明細書に援用される米国特許第4,547,323号(Carlson)の方法を用いて、フリーラジカル開始剤及びコバルト(II)錯体触媒の存在下で、(メタ)アクリロイルモノマーのフリーラジカル付加によって調製することができる。あるいは、(メタ)アクリロキシダイマー及びトリマーは、参照により本明細書に援用される米国特許第4,886,861号(Janowicz)又は同第5,324,879号(Hawthorne)の方法を用いて、コバルトキレート錯体を用いて調製することができる。いずれの方法でも、反応混合物は、ダイマー、トリマー、より高級なオリゴマー、及びポリマーの複合混合物を含み得、所望のダイマー又はトリマーは、蒸留によって混合物から分離することができる。
【0027】
式Iを参照すると、必須の「Y」基は、付加、縮合、置換、及び変位反応を含む手段によって、(メタ)アクリロイルダイマー又はトリマーに組み込まれ得る。一般に、(メタ)アクリロイルダイマー又はトリマーのアシル基のうちの1つ以上は、式IのY−Q’−X−基を備える。
【0028】
より具体的には、下記式:
【化3】

[式中、Xは、求電子性又は求核性の官能基を含み、
は、独立して、X、X−R、又はX−Rであり、
nは、0又は1である]
で表される化合物を、
式(III)で表される共反応性化合物と反応させる。
−R5*−Y III、
[式中、
は、官能基Xと共反応性である官能基であり、
5*は、単結合、又は基Yを反応性官能基Aに結合させる二価若しくは三価の(ヘテロ)ヒドロカルビル連結基である]反応の結果として、付加開裂剤は、2つ以上の表面結合官能基Yを備える。
【0029】
一部の実施形態では、式IIの化合物は、Aがエポキシ又はアジリジン官能基を含む、式IIIの化合物と反応する。反応生成物は、必須の基Yに加えて、追加的な表面結合官能基Y、又はアルキル若しくはアリール基等の非反応性基で更に官能化され得る、ヒドロキシル基又はアミン基を有する。
【0030】
より具体的には、R5*は、単結合、又は表面結合基を共反応性官能基Aに結合させる二価若しくは三価の連結基であり、好ましくは、最大34個、好ましくは最大18個、より好ましくは最大10個の炭素、並びに任意に、酸素及び窒素原子、任意のカテナリーエステル、アミド、尿素、ウレタン、及び炭酸塩基を含む。R5*が単結合ではない場合は、−O−、−S−、−N−R−、−SO−、−PO−、−CO−、−OCO−、−N(R)−CO−、−N(R)−CO−O−、−N(R)−CO−N(R)−、−R−、並びに−CO−O−R−、−CO−N(R)−R−、及び−R−CO−O−R−等のそれらの組み合わせから選択されてもよい。
式中、各Rは、水素、C〜Cアルキル基、又はアリール基であり、各Rは、1〜6個の炭素原子を有するアルキレン基、5〜10個の炭素原子を有する5員環若しくは6員環シクロアルキレン基、又は6〜16個の炭素原子を有する二価芳香族基である。
【0031】
式IIのX基と式IIIのA基との間の反応により、式IのY−Q’−X−部分が形成され、したがって、Q’は、
上記のように、A2*−X2*−がAとXとの間に形成される結合である、−R−A2*−X2*−として定義し得ることが理解されるであろう。したがって、Q’は、単結合又は二価の連結(ヘテロ)ヒドロカルビル基として定義し得る。より具体的には、Q’は、単結合、又は表面結合基を共反応性官能基Aに結合させる二価連結基であり、好ましくは、最大34個、好ましくは最大18個、より好ましくは最大10個の炭素、並びに任意に、酸素及び窒素原子、任意のカテナリーエステル、アミド、尿素、ウレタン、及び炭酸塩基を含む。Qが単結合ではない場合、−O−、−S−、−NR−、−SO−、−PO−、−CO−、−OCO−、−R−、並びに−N(R)−CO−O−、−N(R)−CO−N(R)−、−CO−O−R−、−CO−NR−R−、及び−R−CO−O−R−、−O−R−、−S−R−−、−N(R)−R−、−SO−R−、−PO−R−、−CO−R−、−OCO−R−、−N(R)−CO−R−、NR−R−CO−O−、N(R)−CO−N(R)−、−R−等のそれらの組み合わせから選択され得、ただし、Q’−Yは、過酸化結合、すなわち、O−O、N−O、S−O、N−N、N−S結合を含まず、各Rは、水素、C〜Cアルキル基、又はアリール基であり、各Rは、1〜6個の炭素原子を有するアルキレン基、5〜10個の炭素原子を有する5員環若しくは6員環シクロアルキレン基、又は6〜16個の炭素原子を有する二価アリーレン基である。
【0032】
一部の実施形態では、式IIの化合物を、スキームIIIに示す通り、アジリジン又はエポキシ官能性化合物と反応させる。図示されるものに由来する異なる異性体は開環から生じ得ることが理解される。スキームIIIでは、横のメチル基は、隣接する炭素原子のいずれかに結合することを示す。それぞれアミン又はヒドロキシル基を有する示される生成物は、その後、式IIb:A−R5*−Yで表される化合物との反応によって、表面結合官能基を備え得る。例えば、示される生成物は、シリルアルキルイソシアネートとの反応によって、シリル表面結合基を備え得る。
【0033】
【化4】
【0034】
あるいは、式IIの化合物をアジリジン又はエポキシ官能性化合物と反応させることで、スキームIVに示す通り、中間体官能基が形成される。反応スキーム中で、生成物を更に官能化して、必須の表面結合基Yを得る。別の方法としては、エポキシ−又はアジリジン−官能性ポリマーを、式IIIa又はbの求核化合物により更に官能化して、式Iの化合物を生成することができる。例えば、示される酸性基をエポキシ化合物と反応させ、その後、開環から得られるヒドロキシ基をイソシアナトアルキルトリアルコキシシランと反応させて、シラン表面結合官能基を得ることができる。
【0035】
【化5】
【0036】
有用な反応性(及び共反応性)官能基(X及び式IIIのA2)としては、ヒドロキシル、第2級アミノ、オキサゾリニル、オキサゾロニル、アセチルアセトネート、カルボキシル、イソシアナト、エポキシ、アジリジニル、ハロゲン化アシル、及び環状無水物基が挙げられる。(メタ)アクリル酸ダイマー/トリマーの反応性官能基がイソシアナト官能基である場合、共反応性官能基は、好ましくは第1級又は第2級のアミノ又はヒドロキシル基を含む。反応性官能基がヒドロキシル基を含む場合、共反応性官能基は好ましくは、カルボキシル、エステル、ハロゲン化アシル、イソシアナト、エポキシ、無水物、又はオキサゾリニル基を含む。ペンダント基の反応性官能基がカルボキシル基を含む場合、共反応性官能基は好ましくは、ヒドロキシル、アミノ、エポキシ、イソシアナト、又はオキサゾリニル基を含む。最も一般的には、反応は、求核性官能基と求電子性官能基との間で生じる。
【0037】
式IIIに関して、反応基Aは上記のものから選択することができる。Yは、基材(例えば、テープの裏材、金属表面、ガラス、ガラス布、又は基Yが親和性を示す任意の表面)と相互作用する表面結合基であり、その基材上に、又はフィラー表面上に、硬化性組成物が配置される(即ち、物理的又は化学的に相互作用し、共有結合性又はイオン性であることができる)。一部の実施形態では、Yはチオール基(−SH)、モノホスフェート基、ホスホン酸若しくはホスホン酸基(−P(O)(OH))、ヒドロキサム酸基(−C(O)NHOH)、カルボン酸基(−C(O)OH)、スルフィン若しくはスルホン酸基、ホスピン基、フェノール基(カテコール及び1,2,3−トリヒドロキシベンゼン誘導体を含む)、アミン、イソニトリル基、シリル基、ジスルフィド基(−S−S−)、又は複素環式芳香族基(例えば、ベンゾトリアゾリル、チアゾイル、ベンズイミダゾリル、又はピリジニル)である。
【0038】
より好ましくは、Yは、チオール基、モノホスフェート基、ホスホン酸基、カルボン酸基、シリル基、又はベンゾトリアゾール基である。酸化アルミニウム基材に対しては、好ましくはYとしては、ホスホン酸基(−P(O)(OH))、ヒドロキサム酸基(−C(O)NHOH)、又はカルボン酸基(−C(O)OH)が挙げられる。酸化鉄又は鉄鋼基材に対しては、好ましくはYとしては、ヒドロキサム酸基(−C(O)NHOH)が挙げられる。酸化銅に対しては、好ましくはYとしては、ヒドロキサム酸基(−C(O)NHOH)、チオール基(−SH)、モノホスフェート基、ホスホン酸又はホスホン酸基、トリアゾリル基、チアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、又はピリジニル基が挙げられる。酸化ケイ素又はガラスに対しては、好ましくはYは、式:−SiRで表されるシリル基である。[式中、各R基は、独立して、アルコキシ、アセトキシ、及びハロゲン化物の群から選択される]金、銅、及び銀に対しては、好ましくはYは、チオール基(−SH)又はジスルフィド基(−S−S−)である。白金に対しては、好ましくはYとしては、ピリジニル又はホスフィン基が挙げられる。
【0039】
式IIの化合物は、単純なエステル又はアミドに加え、その他の求核性又は求電子性官能基を備えてもよいことも理解されるであろう。求電子性又は求核性の官能基を含む、式IIのX基を参照すると、Xは、−OH、−Cl、−Br、−NRH、−R−NCO、−R−SH、−R−OH、−R−NRH、−R−Si(OR、−R−ハロゲン化物、−R−アジリジン、−R−エポキシ、−R−N、−R−無水物、−R−コハク酸、−R−NRH、及び他の求電子性又は求核性の官能基から選択され得る。
式中、各Rは、1〜6個の炭素原子を有するアルキレン基、5〜10個の炭素原子を有する5員環若しくは6員環シクロアルキレン基、又は6〜16個の炭素原子を有する二価芳香族基である。Rは、エーテル、アミン、チオエーテル、エステル、アミド、尿素、及びウレタン官能基、例えば、R6’がRとして定義されるR−NH−CO−O−R6’−NCOを含む、1つ以上の鎖内官能基で置換されてもよい。Rは、H又はC〜Cアルキルである。
【0040】
本開示は、更に、(メタ)アクリレートホモ及びコポリマーを生成するために、式Iの付加開裂剤と、アクリレートエステル、アミド、及び酸を含む(メタ)アクリロイルモノマー等の少なくとも1つの重合性モノマーとを含む重合性組成物を提供する。一般に、式Iの付加開裂剤は、全モノマー100重量部に基づいて、0.1〜12重量部、好ましくは0.1〜8重量部の量で使用される。
【0041】
(メタ)アクリレートポリマーを調製するのに有用な(メタ)アクリレートエステルモノマーは、1〜14個の炭素原子、好ましくは平均で4〜12個の炭素原子を含む非三級アルコールのモノマー(メタ)アクリルエステルである。
【0042】
(メタ)アクリレートエステルモノマーとして用いるのに好適なモノマーの例としては、非第三級アルコール、例えばエタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール、3−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、イソオクチルアルコール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−デカノール、2−プロピルヘプタノール、1−ドデカノール、1−トリデカノール、1−テトラデカノール、シトロネロール、ジヒドロシトロネロール、及びこれらに類するものと、アクリル酸又はメタクリル酸のいずれかとのエステルが挙げられる。一部の実施形態では、2つ又はそれ以上の異なる(メタ)アクリレートエステルモノマーの組み合わせが好ましいが、好ましい(メタ)アクリレートエステルモノマーは、ブチルアルコール又はイソオクチルアルコール、又はこれらの組み合わせと(メタ)アクリル酸とのエステルである。一部の実施形態では、好ましい(メタ)アクリレートエステルモノマーは、2−オクタノール、シトロネロール、ジヒドロシトロネロールなどの再生可能な資源に由来するアルコールを伴う(メタ)アクリル酸のエステルである。
【0043】
一部の実施形態では、(メタ)アクリル酸エステルモノマーが、少なくとも25℃、好ましくは少なくとも50℃のTを有する高Tモノマーを含むことが望ましい。本発明に有用である好適なモノマーの例としては、t−ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、s−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、3,3,5トリメチルシクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、N−オクチルアクリルアミド、及びプロピルメタクリレート、又は組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
(メタ)アクリレートエステルモノマーは、ポリマーを調製するのに用いられる100部の全モノマー含量を基準として、100重量部以下、好ましくは85〜99.5重量部の量で存在する。好ましくは、(メタ)アクリレートエステルモノマーは、100部の総モノマー含量を基準として90〜95重量部の量で存在する。一部の実施形態において高Tモノマーが含まれる場合、コポリマーは、最大30重量部、好ましくは最大20重量部の(メタ)アクリレートエステルモノマー成分を含み得る。他の実施形態、例えば、構造接着剤では、高Tモノマーは、最大100%の(メタ)アクリレートエステルモノマー成分を含んでもよい。
【0045】
ポリマーは、酸官能性モノマーを更に含んでよく、ここで酸官能性基は、カルボン酸などそれ自体が酸であるか、又は、一部がアルカリ金属カルボン酸塩などの塩であってもよい。有用な酸官能性モノマーとしては、エチレン性不飽和カルボン酸、エチレン性不飽和スルホン酸、エチレン性不飽和ホスホン酸、及びこれらの混合物から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。このような化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、マレイン酸、オレイン酸、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−スルホエチルメタクリレート、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルホスホン酸、及びこれらの混合物から選択されるものが挙げられる。
【0046】
入手し易さに起因し、酸官能性コポリマーの酸官能基性モノマーは一般に、エチレン性不飽和カルボン酸類、すなわち(メタ)アクリル酸類から選択される。更により強い酸を所望する場合、酸性モノマーとしては、エチレン性不飽和スルホン酸及びエチレン性不飽和ホスホン酸が挙げられる。酸官能性モノマーは、一般に、モノマー全体を100重量部として、0.5〜15重量部、好ましくは1〜15重量部、最も好ましくは5〜10重量部の量で使用される。
【0047】
ポリマーは、極性モノマーを更に含んでもよい。コポリマーの調製に有用な極性モノマーは、油溶性及び水溶性の両方の性質をある程度有し、エマルション重合中の水相と油相との間に、極性モノマーの分配をもたらす。本明細書で使用するとき、用語「極性モノマー」は、酸官能性モノマーを含まない。
【0048】
好適な極性モノマーの代表的な例としては、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート;N−ビニルピロリドン;N−ビニルカプロラクタム;アクリルアミド;モノ−又はジ−N−アルキル置換アクリルアミド;t−ブチルアクリルアミド;ジメチルアミノエチルアクリルアミド;N−オクチルアクリルアミド;2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートを含むポリ(アルコキシアルキル)(メタ)アクリレート;ビニルメチルエーテルを含むアルキルビニルエーテル;及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい極性モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びN−ビニルピロリドンからなる群から選択されるものが挙げられる。極性モノマーは、総モノマーの100重量部に基づき、0〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部の量で存在し得る。
【0049】
ポリマーは、ビニルモノマーを更に含んでもよい。使用する場合、(メタ)アクリレートポリマーに有用なビニルモノマーとしては、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル及びビニルプロピオネート)、スチレン、置換スチレン(例えば、a−メチルスチレン)、ビニルハロゲン化物、及びこれらの混合物が挙げられる。本明細書で使用するとき、ビニルモノマーは、酸官能性モノマー、アクリレートエステルモノマー、及び極性モノマーを含まない。そのようなビニルモノマーは一般に、モノマー全体を100重量部として、0〜5重量部、好ましくは1〜5重量部で使用される。
【0050】
組成物の貼着性強度を増強させる目的で、多官能性(メタ)アクリレートを重合性モノマーのブレンドに組み込んでもよい。多官能性アクリレートは特に、エマルション又はシロップ重合に有用である。有用な多官能性(メタ)アクリレートの例としては、限定するものではないが、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート、及びテトラ(メタ)アクリレート、例えば、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンジ(メタ)アクリレート、ポリウレタンジ(メタ)アクリレート、及びプロポキシル化グリセリントリ(メタ)アクリレート、並びにこれらの混合物が挙げられる。多官能性(メタ)アクリレートの量及び同一性は、接着剤組成物の用途に応じて調整される。典型的には、多官能性(メタ)アクリレートは、接着剤組成物の総乾燥重量を基準として5部未満の量で存在する。より詳細には、架橋剤は、接着剤組成物のモノマー全体を100重量部として、0.01〜5部、好ましくは0.05〜1部の量で存在し得る。
【0051】
このような実施形態では、コポリマーは、100重量部の全モノマーに基づき、
i.100重量部以下、好ましくは85〜99.5重量部の(メタ)アクリル酸エステル、
ii.0〜15重量部、好ましくは0.5〜15重量部の酸官能性エチレン性不飽和モノマー、
iii.0〜15重量部の非酸官能性エチレン性不飽和極性モノマー、
iv.0〜5部のビニルモノマー、
v.0〜5部の多官能性(メタ)アクリレート、
vi.0〜5部の光開始剤、
を含み得る。
【0052】
本組成物は、熱反応開始剤又は光開始剤のどちらかを用いて重合されてもよい。任意のフリーラジカル開始剤を使用して、初期ラジカルを生成することができる。好適な熱反応開始剤の例としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ジベンゾイル、過酸化ジラウリル、過酸化シクロヘキサン、過酸化メチルエチルケトン、ヒドロペルオキシドなどの過酸化物(例えば、t−ブチルヒドロペルオキシド及びクメンヒドロペルオキシド)、ジシクロヘキシルペルオキシジカーボネート、2,2,−アゾ−ビス(イソブチロニトリル)、並びに過安息香酸t−ブチルが挙げられる。市販の熱反応開始剤の例としては、VAZO(商標)67(2,2’−アゾービス(2−メチルブチロニトリル))、VAZO(商標)64(2,2’−アゾービス(イソブチロニトリル))及びVAZO(商標)52(2,2’−アゾービス(2,2−ジメチルバレロニトリル))を含む商品名VAZOとしてDuPont Specialty Chemical(Wilmington,Del.)から入手可能な開始剤、並びにElf Atochem North America(Philadelphia,Pa)からLucidol(商標)70として入手可能な開始剤が挙げられる。
【0053】
有用な光開始剤としては、ベンゾインメチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインエーテル;Irgacure(商標)651光開始剤(Ciba Specialty Chemicals)として入手可能な2,2−ジメトキシアセトフェノン、Esacure(商標)KB−1光開始剤(Sartomer Co.(West Chester,PA))として入手可能な2,2 ジメトキシ−2−フェニル−l−フェニルエタノン、及びジメトキシヒドロキシアセトフェノンなどの置換アセトフェノン;2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノンなどの置換a−ケトール;2−ナフタレン−スルホニル塩化物などの芳香族スルホニル塩化物;並びに1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−エトキシ−カルボニル)オキシムなどの光活性オキシムが挙げられる。これらの中で特に好ましいのは、置換アセトフェノンである。
【0054】
光開始剤はまた、フリーラジカルにより重合可能な基及び光開始剤基を有する重合性光開始剤であってもよい。そのような重合性光開始剤としては、4−ベンゾイルペニルアクリレート、2−(4−ベンゾイルフェノキシ)エチルアクリレート、及び2−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロパノイル)フェノキシ]エチル−N−アクリロイル−2−メチルアリネートが挙げられ、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,838,110号(Zhuら)、同第5,506,279号(Babuら)、及びTemelら、「Photopolymerization and photophysical properties of amine linked benzophenone photoinitiators for free rradical polymerization」、Journal of Photochemistry and Photobiology A,Chemistry 219(2011),pp.26〜31にも記載される。
【0055】
開始剤は、付加開裂架橋剤に対するフリーラジカルによる付加を促進させるのに効果的な量で使用され、この量は、例えば、開始剤の種類、ポリマーの分子量、及び所望される官能度に基づき、変化する。開始剤は、全モノマー100部に基づいて、約0.001重量部〜約5重量部の量で使用することができる。
【0056】
また、硬化性組成物は、他の添加剤を含んでもよい。好適な添加剤の例としては、粘着付与剤(例えば、ロジンエステル、テルペン、フェノール、及び脂肪族、芳香族、又は脂肪族と芳香族との混合物、合成炭化水素樹脂)、界面活性剤、可塑剤(物理的発泡剤以外)、造核剤(例えば、タルク、シリカ、又はTiO)、顔料、染料、補強剤、固体フィラー、ゴム強化剤、安定剤(例えば、UV安定剤)、及びそれらの組み合わせが挙げられる。添加剤は、生成される硬化された組成物について所望の特性を得るのに十分な量で添加され得る。所望の特性は、得られるポリマー物品の意図される用途により大部分が決定される。
【0057】
一部の実施形態では、架橋性組成物はフィラー(Filler)を含んでよい。一部の実施形態では、フィラーの総量は、最大で50重量%、好ましくは最大で30重量%、より好ましくは最大で10重量%のフィラーである。フィラーは、当該技術分野において既知の幅広い材料から1種以上選択することができ、フィラーとしては、有機及び無機フィラーが挙げられる。無機フィラー粒子としては、シリカ、サブミクロンのシリカ、ジルコニア、サブミクロンのジルコニア、及び米国特許第4,503,169号(Randklev)に記載されている種類の非ガラス質微小粒子が挙げられる。
【0058】
フィラー成分としては、ナノサイズのシリカ粒子、ナノサイズの金属酸化物粒子、及びこれらの組み合わせが挙げられる。ナノフィラーはまた、米国特許第7,090,721号(Craigら)、同第7,090,722号(Buddら)、同第7,156,911号(Kangasら)、及び同第7,649,029号(Kolbら)に記載されている。
【0059】
一部の好ましい実施形態では、硬化性組成物は、フィラーとモノマー/及び/又はポリマーとの間の結合を強化するために、有機金属カップリング剤で処理されたナノ粒子及び/又はナノクラスターを含む。有機金属カップリング剤は、アクリレート基、メタクリレート基、ビニル基などの反応性硬化基により官能化されていてよく、かつシラン、ジルコネート又はチタネート系カップリング剤を含み得る。
【0060】
好適な共重合性又は反応性有機金属化合物は、一般式:CH=C(R22)−R21Si(OR)3−n、又はCH=C(R22)−C=OOR21Si(OR)3−n(式中、RはC〜Cアルキルであり、R21は二価有機ヘテロヒドロカルビル連結基、好ましくはアルキレンであり、R22はH又はC1〜C4アルキルであり、nは1〜3である)を有してもよい。好ましいカップリング剤としては、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びこれらに類するものが挙げられる。
【0061】
ナノ粒子の表面を修飾するには、例えばナノ粒子に表面修飾剤(例えば、粉末又はコロイド分散液の形態で)を加えて、表面修飾剤をナノ粒子と反応させるなどの多くの従来法がある。他の有用な表面修飾法は、各々参照により本明細書に組み込まれる米国特許第2,801,185号(Iler)、同第4,522,958号(Dasら)、同第6,586,483号(Kolbら)に記載されている。
【0062】
表面修飾基は、表面修飾剤から誘導することができる。模式的に、表面修飾剤は、式:A−Bにより表すことができる。[式中、A基は粒子の表面(すなわち、シリカ粒子のシラノール基)に結合することができ、B基は、組成物の成分に対して反応性であっても非反応性であってもよい官能基である。]非反応性基は、系(例えば、基材)中の他の成分と反応しないものである。非反応性官能基は、粒子の極性を比較的高く、比較的低く、又は比較的非極性とするように、選択することができる。一部の実施形態では、非反応性官能基「B」は、酸基(カルボキシレート、スルホネート及びホスホネート基)、アンモニウム基又はポリ(オキシエチレン)基、又はヒドロキシル基などの親水性基である。他の実施形態では、「B」は、フリーラジカルにより重合性樹脂又はモノマーと重合させることのできる、ビニル、アリル、ビニルオキシ、アリルオキシ、及び(メタ)アクリロキシなどといった、エチレン性不飽和重合性基などの反応性官能基であってよい。
【0063】
このような、場合に応じて用いられる表面修飾剤は、シリカナノ粒子の表面官能基(Si−OH基)の0〜100%、一般には1〜90%(存在する場合)が官能化されるような量で使用することができる。官能基の数は、所定量のナノ粒子を、利用可能な反応部位がすべて表面修飾剤によって官能化されるように、過剰量の表面修飾剤と反応させることによって、実験的に決定される。この結果から、より低い官能化率を計算することができる。一般に表面修飾剤の量は、無機ナノ粒子の重量に対して同じ重量の表面修飾剤の最大で2倍の重量が与えられるだけの充分な量で使用される。表面修飾剤の量は、特定のフィラー、そのサイズ、及び所望の官能度によって異なるであろう。表面修飾されたシリカナノ粒子が望ましい場合、コーティング組成物に添加する前にナノ粒子を修飾することが好ましい。
【0064】
一部の好ましい実施形態では、フィラー、特にシリカフィラーは、式Iの付加開裂剤により表面修飾され得る。したがって、本開示は、付加開裂剤によりモノマー修飾されたフィラー粒子を提供する。本明細書に記載の通り、これらの表面修飾フィラー粒子を重合性混合物と混ぜ合わせ、硬化させることができ、結果として、フィラー粒子が硬化性組成物に組み込まれる。式Iを参照する際、表面修飾粒子フィラーは、下記の通りに記載することができる。
【0065】
【化6】

[式中、
Fillerは、無機フィラー粒子であり、
は、Y−Q’−、(ヘテロ)アルキル基、又は(ヘテロ)アリール基であり、
Q’は共有結合又は連結基であり、好ましくは、価数がp+1である有機(ヘテロ)ヒドロカルビル連結基であり、
Y’は、付加開裂剤を配置した基材と結合する表面結合有機官能基の残基であり、
pは1又は2であり、
は、独立して、−O−又は−NR−(式中、Rは、H又はC〜Cアルキルである)であり、
nは、0又は1である]。
【0066】
式IのR及びR基は、「Y−Q’−」表面結合基で選択されたこと、及びRはそのように示され得たことが、上の式において理解されるであろう。R、R、及びRの各々はY−Q’−基を含んでもよいこと、及び各々は1つ以上のY基を含み得ることが、更に理解されるであろう。
【0067】
本明細書で使用するとき、用語「残基」は、官能基と無機粒子の表面との反応後に残留している官能基の部分を定義するために使用される。例えば、式:−SiRのシラン官能基Yの「残基」は、−O−Si(R−である。
【0068】
更なる例示に際し、粒子フィラーは、シリカ(又はシリカ複合体)から選択することができ、表面結合有機官能基「Y」は、式:−SiRで表されるシリル基から選択することができる。[式中、各R基は、独立して、アルコキシ、アセトキシ、及びハロゲン化物の群から選択される]これにより、シリカ粒子と付加開裂剤との間に、シリカ−O−Si(R−結合により例示される共有結合が生じる。シリル部分がシリカ粒子と1つ(例示される通り)若しくは1つ以上のシロキサン結合を形成し得ること、又は他のシリル基とシロキサン結合を形成し得ることが理解されるであろう。式Iを参照すると、Yには、高屈折率コーティング/フィルムに、並びに歯科用組成物に使用されるフィラーであるジルコニアに結合することができるヒドロキサム酸又はN−ヒドロキシ尿素を選択することができ、またアルミナフィラーには、Yがホスフェート及びホスホネートであることも有用であり、金の場合にはYはチオールである。
【0069】
一般的に、無機フィラー粒子の表面官能基のすべて又は一部は、式Iの付加開裂剤によりそのようにして修飾することができる。フィラーは、未修飾であっても、従来の表面修飾剤、式Iの付加開裂剤、又は従来の表面修飾剤と式Iのものとの混合物により表面修飾されていてもよい。好ましくは、付加開裂剤は、フィラー粒子の重量に対し0.5〜30重量%の量で使用される。具体的には、より大きいサイズのフィラー粒子、例えば>100nmに対して、より多量のナノ粒子が使用され得る。
【0070】
表面修飾は、重合性モノマーとの混合に続いて、混合中又は混合後に行うこともできる。樹脂へ組み込む前に、オルガノシラン表面処理化合物をナノ粒子と組み合わせることが通常好ましい。表面修飾剤の必要量は、粒子サイズ、粒子タイプ、修飾剤の分子量、及び修飾剤の種類などのいくつかの因子に応じ異なる。一般的には、ほぼ単層の修飾剤を粒子の表面に付着させることが好ましい。
【0071】
本発明の付加開裂剤は、ハードコートの調製にも有用である。用語「ハードコート」又は「ハードコート層」は、対象の外部表面上に配置された層又はコーティングを意味し、層又はコーティングは、対象を少なくとも磨耗から保護するよう設計される。本開示は、式Iの付加開裂剤、並びに3つ以上の(メタ)アクリレート基、及び/又は多官能性(メタ)アクリレートオリゴマー及び任意に(メタ)アクリレート官能性希釈剤を含む、多官能性(メタ)アクリレートモノマーを含むハードコート組成物を提供する。
【0072】
3つ以上の(メタ)アクリレート基を含む有用な多官能性(メタ)アクリレートモノマー、多官能性(メタ)アクリレートモノマーは、これらによりハードコート層に摩耗耐性が付与されることから、本発明の実施に有用である。3つ以上の(メタ)アクリレート基を含む好ましい多官能性(メタ)アクリレートモノマーとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(TMPTA)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(Sartomer 355)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(Sartomer 399)、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート(DPHPA)、グリセリルプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及びこれらの混合物が挙げられる。本発明の別の有用な放射線硬化性成分は、2つ以上の(メタ)アクリレート基を有し、かつ約400〜2000の範囲の平均分子量(Mw)を有する、多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーの分類である。
【0073】
有用な多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、及び(メタ)アクリレート化エポキシ(メタ)アクリレートが挙げられる。比較的に低粘度を有する傾向があり、したがって、スピンコーティング法により、より均一な層を適用することができるようになることから、(メタ)アクリレート化エポキシ(メタ)アクリレート及びポリエステル(メタ)アクリレートが最も好ましい。具体的には、好ましい多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、UCB Radcure、Inc.(Smyrna、Georgia)から市販の、商品名Ebecryl(Eb):Eb40(四官能性アクリレート化ポリエステルオリゴマー)、ENO(ポリエステルテトラ官能性(メタ)アクリレートオリゴマー)、Eb81(多官能性(メタ)アクリレート化ポリエステルオリゴマー)、Eb600(ビスフェノールAエポキシジ(メタ)アクリレート)、Eb605(25%トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートにより希釈したビスフェノールAエポキシジ(メタ)アクリレート)、Eb639(ノボラックポリエステルオリゴマー)、Eb2047(三官能性アクリレート化ポリエステルオリゴマー)、Eb3500(二官能性ビスフェノール−Aオリゴマーアクリレート)、Eb3604(多官能性ポリエステルオリゴマーアクリレート)、Eb6602(三官能性芳香族ウレタンアクリレートオリゴマー)、Eb8301(六官能性脂肪族ウレタンアクリレート)、EbW2(二官能性脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー)、及びそれらの混合物が挙げられる。これらのうち、最も好ましいのは、Eb600、Eb605、Eb80、及びEb8lである。
【0074】
本明細書において「反応性希釈剤」としても参照される(メタ)アクリレート官能性希釈剤は、比較的低分子量の単官能性又は二官能性の(メタ)アクリレートモノマーである。これらの比較的低分子量の反応性希釈剤は、有利に、比較的低粘度、例えば、25℃で約30センチポアズ(cps)未満のものである。二官能性の非芳香族(メタ)アクリレートは、より早い硬化時間を可能にするため、一般に、単官能性非芳香族(メタ)アクリレートよりも好ましい。好ましい反応性希釈剤としては、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート(UCB Radcure,Inc.(Smyrna,Georgia)のHDDA)、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート(1130A、Radcure)、2(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート(SARTOMER Company,Inc.(Exton,Pennsylvania)から商品名Sartomer 256で販売)、n−ビニルホルムアミド(Sartomer 497)、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート(Sartomer 285)、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(Sartomer 344)、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(Radcure)、ネオペンチルグリコールジアルコキシジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0075】
ハードコート組成物は、
0.1〜12重量%の付加開裂(AFM)及び/又はAFM修飾シリカ、官能化フィラーであるか否かに関わらずAFMそれ自体に関する重量パーセント(0.1〜12重量%のAFM)
20〜75重量%の多官能性(メタ)アクリレートモノマー及び/又は多官能性(メタ)アクリレートオリゴマー、
0〜25重量%の範囲の(メタ)アクリレート希釈剤(0〜25重量%)
20〜75重量%のシリカなどの無機フィラー、官能化されるか否かに関わらず無機フィラーそれ自体に関する重量範囲、を含み得る。
【0076】
一部の実施例では、AFM表面修飾シリカ、従来の表面修飾剤により修飾されたシリカ、及び未修飾シリカを含むシリカの量は、20〜75重量%であり、好ましくは50〜70重量%である。
【0077】
一部の実施形態では、付加開裂剤それ自体が、その剤が基材に適用されて、その基材と結合するプライマーとして働き得る。これらの実施形態では、式IのAFMの薄層を基材に適用し、その後、追加の層をAFMで下塗りした基材に適用してもよい。特定の結合基Yを、上記の教示のように、選択した基材の官能基として選択する。例えば、酸化アルミニウム基材、好ましくはYとしては、ホスホン酸基、ヒドロキサム酸基、又はカルボン酸基が挙げられる。酸化鉄又は鉄鋼基材に対しては、好ましくはYとしては、ヒドロキサム酸基が挙げられる。酸化銅に対しては、Yとしては、ヒドロキサム酸基、チオール基、モノホスフェート基、ホスホン酸又はホスホン酸基、トリアゾリル基、チアゾリル基、ベンズイミダゾリル基、又はピリジニル基が挙げられる。酸化ケイ素又はガラスに対しては、Yはシリル基である。金、銅、及び銀に対しては、Yは、チオール基(−SH)又はジスルフィド基(−S−S−)である。白金に対しては、好ましくはYとしては、ピリジニル又はホスフィン基が挙げられる。
【0078】
基材に結合したAFMは、次のように表される。
【0079】
【化7】

式中、破線は基材の表面を表し、基材と結合基Y’との間の結合は、上記のように、共結合又はイオン性結合であり得る。残りの基は、表面修飾フィラー粒子について前述した通りである。示す通り、そのような表面官能化基材は、種々のモノマー又は重合性組成物と共重合され得るα,β−エチレン性不飽和基を提供する。具体的には、AFM表面修飾基材は、AFMを含む重合性組成物で続いてコーティングされ得る。エチレン性不飽和基を硬化中に重合性組成物に組み込むことで、基材とコーティングとの間の確実な結合が得られると考えられる。
【0080】
付加開裂剤は、参照によりその全体が組み込まれる同時係属出願、表題「Dental Compositions Comprising Addition−Fragmentation Agent」(2011年8月23日に出願の米国特許第61/526437号)に記載の通り、歯科用組成物の調製にも有用である。
【実施例】
【0081】
本発明で使用するとき、別途記載のない限り、全ての比及び百分率は、重量による。付加開裂剤は、付加開裂リガンド(AFL)として実施例では言及する。全ての市販の材料は、販売業者から入手したまま使用した。
【0082】
試験方法
ダイヤメトラル引張強度(DTS)試験方法
本試験では、硬化性組成物のダイヤメトラル引張強度を測定した。未硬化の試験サンプル組成物を4mm(内径)のガラス管に注入し、この管にシリコーンゴムのプラグで蓋をした。管を5分間、約2.88kg/cmの圧力で軸方向に圧縮した。その後、XL 1500歯科用硬化光(3M ESPE(St.Paul,MN))に曝露することにより、サンプルを80秒間光硬化させ、続いてKulzer UniXS硬化ボックス(Heraeus Kulzer GmbH(Germany))内で90秒間照射した。試験サンプルをダイヤモンドの鋸で切断して、厚さ約2mmのディスクを形成し、これを試験前に約24時間37℃の蒸留水中で保存した。測定は、ISO規格7489(又はAmerican Dental Association(ADA)規格番号27)に従って、10キロニュートン(kN)のロードセルを用い、クロスヘッド速度1mm/分で、Instron試験機(Instron 4505、Instron Corp.(Canton,MA))で実施した。試験結果は、複数の測定値の平均として、MPa(メガパスカル)で記録した。
【0083】
応力試験方法(尖点偏向)
応力試験方法により、硬化プロセス時に試験サンプル組成物に発生する応力を測定する。15×8×8mmの矩形アルミニウムブロック内に、8×2.5×2mmスロットを機械加工し、各試験サンプル用の試験装置を作製した。スロットは端に沿って2mmの位置に配置し、したがって、試験する組成物を含む2mm幅の空洞に隣接し並行した2mm幅のアルミニウム尖点を作製した。線状可変変位変換器(モデルGT 1000、E309アナログ増幅器とともに使用、両方ともRDP Electronics(United Kingdom)製)を配置して、組成物を室温で光硬化させたときの尖点の変位を測定した。試験前に、アルミニウムブロックにおけるスロットを、Rocatec Plus Special Surface Coating Blasting Material(3M ESPE(St.Paul,MN))を用いて砂で磨き、RelyX Ceramic Primer(3M ESPE)で処理し、最後に、歯科用接着剤Adper Easy Bond(3M ESPE)で処理した。約100mgの試験組成物によりスロットを完全に充填した。スロット中の材料とほぼ接触するように(<1mm)配置された歯科用硬化ランプ(Elipar S−10、3M ESPE)を用いて、材料を1分間照射し、次いで、ランプを消した9分後に尖点の変位をマイクロメートルで記録した。
【0084】
重なり剪断試験
測定値1×4×1/16インチ(2.54×10.2×0.159cm)のアルミニウム製試験片を使用して、重なり剪断強度を試験した。試験片の約2.54cmの結合表面を、研磨パッド(Scotch−Brite Heavy Duty Scour Pad、3M Company(St.Paul,MN,USA))により研磨した。次に、紙タオルの上で、試験片に対してメチルエチルケトン(MEK)を吹きかけて試験片を洗浄し、紙タオルによりMEKを拭きとった。各試験用接着サンプル用に3つの試験片を用意した。
【0085】
接着試験サンプルは、接着剤組成物を混合し、研磨面上に、接着剤が2.54×1.27cmの面積を覆うよう、接着剤により4本の線を描いて分配することで準備した。接着剤表面にはスペーサービーズ(3〜5ミル(0.0762〜0.127mm)直径のビーズ(Class VI Soda Lime Glass Sphere beads,MO−SCI Specialty Products(Rolla,MO,USA))を撒いた。接着剤の重なり合いが2.54cm×1.27cm×0.127mmとなるように第2の試験片を配置し、反対方向に試験片の自由端を延ばした。試験片の重なり合っている部分上に大型クリップを配置し、第2の大型クリップを試験片の反対側に配置した。接着試験サンプルを室温で5〜7日間硬化させた。
【0086】
1分当たり0.1インチ(1分当たり0.25cm)の速度で、5625lb(2551.5kg)のロードセルにより、引張試験機で試験を実施した。破壊強度を平方インチ当たりのポンド量として記録し、及びメガパスカル(MPa)で報告した。引張試験機は、商標名30 MTS又はSintech 5/GL(MTS Systems Corporation(Eden Prairie,MN,USA))のものが利用可能である。
【0087】
接着剤取り扱い性試験
基材を接着剤で濡らし、接着剤組成物の取り扱い性、並びに可使時間、すなわちゲル化及び硬化させるまでにどの程度の間、接着剤を使用することができるかを評価する。8×2インチ(20.3×5.08cm)の高密度ポリエチレン(HDPE)試験片上に接着剤を(直径約1.8cm)で12箇所一列に分配し、接着剤試験サンプルを調製した。スペーサービーズ(重なりせん断試験を参照のこと)を各ドットの接着剤表面全体にまぶし、ストップウォッチを開始させるまでの間、最初の2つのドット上にガラス製顕微鏡スライドカバーガラスを載せ、押さえた。5分後、カバーガラスを次のドット上に載せ、押さえた。すべてのドットを覆って処理するまで、このプロセスを続けた。結合を形成するのに十分な程度接着剤がカバーガラスを濡らす最大の時間を、分数で濡れ時間として記録した。例えば、接着剤がカバーガラスの端を10分で濡らしたものの、15分で濡らすことはできなかった場合には、濡れ時間は10分として記録した。
【0088】
最初の2箇所から開始して1分間隔で木製爪楊枝によってカバーガラスを優しく歪めて、各接着剤の「可使時間」を評価した。カバーガラスを爪楊枝で動かせなくなるまでの時間として可使時間を記録する。
【0089】
接着剤硬化応力試験
硬化後に、アルミニウムシムに対する接着剤の変形を測定し、重合時に構造接着剤が受ける硬化応力を評価した。カール測定値が大きくなるほど、硬化させた接着剤中の応力が大きいことを示す。試験手順及び装置は、米国特許第13/169306号(2012年2月11日出願)に記載されている。
【0090】
材料
・1,2−エポキシ−3−フェノキシプロパン−TCI America(Portland,OR,USA)
・1−メトキシ−2−プロパノール−Alfa Aesar又はJT Bauer
・2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)−Alfa Aesar又はJT Bauer
・2−メルカプトエタノール−Alfa Aesar(Ward Hill,MA,USA)
・3−クロロ−2−クロロメチル−1−プロペン−Secant Chemicals,Inc.(USA)
・3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン−Sigma Aldrich(St.Louis,MO,USA)
・3−トリエトキシシリルプロピルイソシアネート−Alfa Aesar(Ward Hill,MA,USA)
・BHT−ブチル化ヒドロキシトルエン、Sigma−Aldrich(Milwaukee,WI,USA)
・酢酸コバルト(II)四水和物−Alfa Aesar(Ward Hill,MA,USA)
・CPQ−カンファキノン、Sigma−Alrich
・DDDMA−ドデカンジオールジメタクリレート、Sartomer
・ジブチルスズジラウレート−Alfa Aesar(Ward Hill,MA,USA)
・ジメチルグリオキシム−Alfa Aesar(Ward Hill,MA,USA)
・DI水−脱イオン水
・ジオール2−米国特許公開第2012/0208965号、実施例2−ジオール2によるAFM−2の調製に記載の通りに調製したジオール
・DPIHFP−ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート(≧98%)、Sigma−Aldrich
・DP807接着剤−2部硬化性アクリル系樹脂、3M Scotch−Weld(商標)アクリル系接着剤樹脂DP807 Duo−pak、3M Company(St.Paul,MN)
・ENMAP−エチルN−メチル−N−フェニル−3−アミノプロピオネート、CAS番号2003−76−1;これは、米国特許出願第2010−0311858号(Holmes)中の式1−aの化合物である。化合物は、Adamsonら、JCSOA9;J.Chem.Soc.;1949;spl.144,152に記載の方法により合成することができる(この文献は参照により本明細書に組み込まれる)。
・ERGP−IEM−EP特許公開第EP 2401998号の実施例の節に記載の通りに調製
・エタノール−Pharmaco−AAPER(Brookfield,CT,USA)
・酢酸エチル−EMD Chemicals Inc.(Gibbstown,NJ,USA)
・GF−31シラン−3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、Wacker Chemie AG(Munich,Germany);Silquest A−174、Momentive Performance Materials(Albany,NY)も使用
・Ciba Specialty Chemicalsから入手したIrgacure(商標)651光開始剤
・Nalco 2327kシリカゾル−水性ゾル中の20ナノメートル平均粒度シリカ粒子、41重量%固体、Nalco Company(Naperville,IL)
・NHOH溶液−水酸化アンモニウム溶液、水中30%のNHOH−Sigma Aldrich
・ナノジルコニアフィラー−SILQUEST A−1230の代わりにGF−31シランを使用したことを除き、米国特許第7,156,911号、調製例1Aに記載の通りに調製した、シラン処理ナノジルコニア粉末GF−31シランを、約1.2ミリモルのシラン/g酸化物で充填した。
・ナノシリカフィラー(20nmのシリカとしても言及される)−名目粒径20nmのシラン処理ナノシリカ粉末、米国特許第6,572,693号(第21段、第63〜67行、ナノサイズ粒子フィラー、タイプ2)に記載の通りに調製
・粒子A(125m/gシリカ/ジルコニアナノクラスター)−米国特許第6,730,156号、調製例Aに概して記載の通りに調製した凝集粒子クラスター材料。材料の表面積は125m/gであり、シリカ/ジルコニア重量比は73/27であった。材料の調製は、米国特許第20110196062号のジルコニア及びシリカナノ粒子(Bradley)を含むフィラー及び複合材の段[0067]〜[0073](2009年10月9日出願)並びにその参照文献(すなわち、米国特許第6,376,590号(Kolbら)(1999年10月28日出願)、又は米国特許第7,429,422号(Davidsonら)(2007年6月7日出願))に、より詳細に記載されており、これらの文献の各々は、参照により本明細書に組み込まれる。
・PETフィルム−米国特許第6,893,731号(Kausch)の実施例29に記載の通りに調製した、厚さ5ミル(0.127mm)のポリエステルフィルム
・ペンタエリスリトールトリアクリレートは、Sartomer USA,LLC(Exton,PA)から入手した
・Prostab 5198−4−ヒドロキシ−TEMPO、Sigma Aldrich(St.Louis,MO USA)
・ピリジン−Alfa Aesar(Heysham,Lanc,England)
・ナトリウム金属−Alfa Aesar(Ward Hill,MA,USA)
・UDMA−Rohamere(商標)6661−0(ジウレタンジメタクリレート、CAS番号41 137−60−4)、Rohm Tech,Inc.(Malden,MA)
・Vazo(商標)67−フリーラジカル開始剤、DuPont(Wilmington,DE)
・YbF−フッ化イッテルビウム、100ナノメートル粒度(Sukgyung、Korea)。
【0091】
計装:プロトン核磁気共鳴(H NMR)スペクトル及びカーボン核磁気共鳴(13C NMR)スペクトルを、500MHz分光計で記録した。
【0092】
調製例−ジオール1
【0093】
【化8】
【0094】
炉で乾燥させた三つ口の250mL丸底フラスコに、マグネチックスターラーバー、ガス注入口アダプタ、及びゴム隔膜で蓋をした250mL均圧添加漏斗、及びゴム隔膜を装備した。装置を窒素下で室温に冷却させた。HEMA(100mL、107.3g、824.5mmol)及びVazo(商標)67(0.215g、1.12mmol)を反応フラスコに添加し、混合物を撹拌した。添加漏斗に、HEMA(200mL、214.6g、1649mmol)、Vazo(商標)67(0.430g、2.24mmol)を充填した。HEMA中のVazo(商標)67の溶液に30分間窒素を散布し、その後、反応物を窒素下で維持した。次に、酢酸コバルト(II)四水和物(0.104g、0.418mmol)、ジメチルグリオキシム(0.158g、1.36)、及びピリジン(0.250mL、0.245g、3.10mmol)をポットに添加し、油浴中で75℃に加熱しながら撹拌した。HEMA及びVazo(商標)67の溶液を1.5時間かけてポットに滴加した。更に1時間後、Vazo(商標)67(0.0164g、0.0853mmol)をポットに添加した。反応物を更に18時間75℃で撹拌させ、次に、室温に冷却させた。短行程蒸留装置を使用して、二量体生成物を反応混合物から蒸留した。二量体は、0.09mmHgの圧力で、約140℃で蒸留された。無色透明の粘稠液を得た(136.2g)。50gの蒸留生成物を酢酸エチル(250mL)中に溶解し、脱イオン水(3×125mL)で洗浄した。酢酸エチル溶液を30分間硫酸ナトリウム上で乾燥させ、次に真空濾過して、乾燥剤を除去した。酢酸エチル溶液を真空濃縮して、ジオール1を得た(26.13g)。
【0095】
実施例1−AFL−1
【0096】
【化9】
【0097】
40mL褐色瓶に、ジオール1(7.500g、28.82mmol)及び3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン(14.255g、57.63mmol)を充填した。マグネチックスターラーバーを瓶に加えた。撹拌しながらジブチルスズジラウレートを添加し(ガラスピペットの先から2滴)、反応物を、テフロン張りのプラスチック蓋で密封した。3日後に反応物をサンプリングし、H NMR分析は、所望の生成物AFL−1と一貫した。無色透明粘稠物質のAFL−1(21.73g、28.79mmol、99.9%)を得た。
【0098】
実施例2−AFL−2
【0099】
【化10】
【0100】
40mL褐色瓶に、ジオール2(10.00g、21.16mmol)及び3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン(10.47g、42.33mmol)を充填した。マグネチックスターラーバーを瓶に加えた。撹拌しながらジブチルスズジラウレートを添加し(ガラスピペットの先から2滴)、反応物を、テフロン張りのプラスチックキャップで密封した。反応混合物を撹拌しながら50℃に加熱した。2日後、反応物を室温に冷却し、サンプリングした。H NMR分析は、所望の生成物AFL−2と一貫した。極淡黄色粘稠物質のAFL−2(20.33g、21.02mmol、99.3%)を得た。
【0101】
実施例3−AFL−3
【0102】
【化11】
【0103】
マグネチックスターラーバー、コンデンサ、及び滴下漏斗を装備した500mL二つ口丸底フラスコ中で、2−メルカプトエタノール(25.60g、0.328mol)を100mLのエタノール中に溶解して、溶液を調製した。激しく撹拌しながら、ナトリウム金属(8.20g、0.356mol)を少量ずつゆっくりと添加することで、添加中の発熱を制御した。ナトリウム金属の添加完了後、混合物を、フラスコの内容物が室温に冷却されるまで窒素ブランケット下で撹拌した。3−クロロ−2−クロロメチル−1−プロペン((20g、0.16mol)50mLのエタノール中)の溶液を、滴下漏斗を使用して滴加して、白濁混合物を形成させ、次に、ジクロロプロペン成分の全てを添加した後に、白色固体との異種混合物を形成させた。フラスコの内容物を45分間還流させ、その後室温に冷却した。白色固体を真空濾過によって除去し、濾塊を、原濾液に加えて過剰エタノールで洗浄した。溶媒をロータリーエバポレーター中で除去し、次いで、真空ポンプ中で乾燥させて、無色の液体を得た。粗生成物を6〜7トル(799.9〜933.3Pa)の真空及び135〜150C下で蒸留して、所望の生成物2−メチレンプロパン−1,3−ビス(硫化2−ヒドロキシエチル)を75〜80%の回収率で得た。
【0104】
2−メチレンプロパン−1,3−ビス(硫化2−ヒドロキシエチル)(7.0g、0.034mol)、3−トリエトキシシリルプロピルイソシアネート(16.60g、0.067mol)、BHT(0.016g)、及びジブチルスズジラウレート触媒(3滴)を、100mLガラス瓶に充填して、混合物を調製した。瓶を2分間手で回し、その間、混合物は混ざり反応を開始した。混合物は、多少の発熱を伴って無色となった。瓶を放置し室温に冷却させた。IRスペクトルは、NCO帯の完全消失を示した(約2200−2400cm−1)。NMRを記録し、AFL−3の所望の構造と一貫することが判明した。反応物の収率は定量的であった。
【0105】
実施例4〜5、対照実施例C1−官能化フィラー
実施例4において、10gの粒子A、1.0502gのAFL−1、10.64gの酢酸エチル、及び0.21gのNHOH溶液を混合し、室温で一晩撹拌して、官能化フィラーを調製した。次に、混合物をフラッシュ乾燥させ、次に、80℃の炉の中で30分間乾燥させた。
【0106】
実施例5において、官能化フィラーを、組成物が、10グラムの粒子A、1.055gのAFL−3、0.944gのGF−31シラン、10.473gの酢酸エチル、及び0.203gのNHOH溶液であったことを除き、実施例4の通りに調製した。
【0107】
対照実施例C1を、組成物が、10gの粒子A、2.0999gのGF−31シラン、20.5632gの酢酸エチル、及び0.4002gのNH4OH溶液であったことを除き、実施例4の通りに調製した。
【0108】
実施例6〜7、対照実施例C2−樹脂
表1に示した組成物を手で混合し、均一な混合物を形成して、樹脂組成物を調製した。
【0109】
【表1】
【0110】
実施例6において、2.675gの樹脂混合物、0.5493gのYbF、0.2855gのナノシリカフィラー、0.1536gのナノジルコニアフィラー、0.0669gの実施例4からのフィラー、及び6.2269gの実施例C1からのフィラーを、スピードミキサで混合して、歯科用樹脂に好適なペーストを調製した。
【0111】
実施例7を、組成物が、2.675gの樹脂、0.5497gのYbF3、0.2862gのナノシリカフィラー、0.1539gのナノジルコニアフィラー、及び6.3361gの実施例5からのフィラーであったことを除き、実施例6の通りに調製した。
【0112】
対照実施例C2を、実施例C1からのフィラーを使用したことを除き、実施例7の通りに調製した。
【0113】
接着剤の直径強度(DTS)及び応力(尖点偏向)を、上の試験方法に従って試験した。結果を表2に示す。
【0114】
【表2】
【0115】
実施例8〜12及び対照実施例C3(官能化ナノ粒子の調製)
以降の手順に従い、表2に示す成分を有する組成物を調製した。Nalco 2327kシリカゾルを、テフロンで包まれた糸を用いて8オンス(235mL)ガラス瓶に添加し、マグネチックスターラーバーで撹拌した。メトキシプロパノール、Prostab、シラン(3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン)、並びにそれぞれ実施例1及び2に記載の通りに調製したAFL−1又はAFL−2を、4オンス(115mL)褐色ガラス瓶中で混合して、溶液を調製した。次に、溶液を、約5分かけて撹拌しながら、8オンス(235mL)瓶中のシリカゾルにゆっくりと添加した。
【0116】
次にガラス瓶を、テフロン張りの金属蓋、テフロンテープ、及び電気テープで密封した。撹拌しながら反応物を90℃に加熱した。約18時間後、反応混合物を250mLの丸底フラスコに移し、減圧下で固形分約45重量%(元の量の約半量)に濃縮した。約55gのメトキシプロパノールを加え、固形分含量を約20重量%に再度低下させた。次に、溶液を再度濃縮し、減圧下で約45重量%の官能化ナノ粒子固体(約50mL)を得た。
【0117】
AFLを使用せず、固形分約45重量%に濃縮した後に約110グラムのメトキシプロパノールを添加して固形分約20%に蒸留し、次に約45重量%に再度濃縮したことを除き、同一の手順に従って、対照実施例C3を調製した。
【0118】
約0.250gの最終溶液をアルミニウムパンに添加し、125℃に設定した炉の中で45分間乾燥させて、各実施例の固形分重量%を決定した。次にサンプルを炉から取り出し、室温に冷却させて、乾燥サンプルの質量を測定し、ナノ粒子溶液の固形分含量を算出するのに使用した。官能化したナノ粒子組成物は、樹脂組成物においてフィラーとして好適である。
【0119】
【表3】
【0120】
実施例13〜17、対照実施例C4(ハードコート)
表3に示す量で、実施例8〜13及びC3からの官能化シリカナノ粒子のメトキシプロパノール溶液を、ペンタエリスリトールトリアクリレート及びIrgacure(商標)651と20mLガラスバイアル中で組み合わせて、ハードコート溶液を調製した。更なるメトキシプロパノールを添加して、溶液の固形分重量パーセントを50パーセントにした。溶液を十分に混合し、2〜5分間超音波処理した。
【0121】
【表4】
【0122】
#12の巻線ロッド(RD Specialties(Webster,NY))を使用して、溶液をPETフィルムのシート(6×14インチ(15.2×35.6cm))上にコーティングした。コーティングしたサンプルを、75℃に設定した炉で30分間乾燥させた。次に、Hバルブを取り付けたUVプロセッサ(Fusion UV System,Inc.(Gaithersburg,MD))を使用し、UV光(850mJ/cm、UVB)を用いて、コーティングしたフィルムに放射線を照射して硬化させ、窒素雰囲気下で、ライン速度24フィート/分(7.32メートル/分)(2回通過させる)で操作して、PETフィルム上にハードコートを行った。
【0123】
照射後、コーティングしたフィルムの湾曲度、ハードコート厚、及び鉛筆硬度を測定した。結果を表4に示す。コーティングしたフィルムの中央から切り出した7.6×7.6cm平方のサンプル上でフィルム湾曲度を測定した。サンプルを平らな表面上に配置し、定規を使用して、各角部の高さを測定した。総湾曲度は、四隅の高さの合計であった。
【0124】
ダイヤルゲージ(Mitutoyo Digital Dial Gauge、Model ID−F125E、Mitutoyo Corp.(Aurora、IL))を使用して、7.6×7.6cm平方のフィルムの各角部の厚み、及び各辺の中央を測定した(合計8箇所を測定)。平均フィルム厚は、これら8箇所の測定値を用い算出した。
【0125】
Elcometer 3086モーター駆動型鉛筆硬度計(Elcometer Inc.(Rochester Hills,MI)から入手)を使用して、ASTM D3363に従い、7.5N荷重により、各ハードコートに対して鉛筆硬度を測定した。
【0126】
試験結果を表4に示す。
【0127】
【表5】
【0128】
実施例13〜14で対照C4を調製及び試験し、実施例15〜17で対照C4を調製及び試験した。
【0129】
実施例18〜21、対照実施例C7−AFL修飾構造接着剤
2部からなるメチルメタクリレート構造接着剤(DP807)を、表6に示す量で、実施例1からのAFL−1で修飾した。DP807接着剤は、基剤部と促進剤部とを持つデュオパックカートリッジとして供給され、1:1の割合でカートリッジから分配及び混合される。
【0130】
各部をカートリッジから取り出し、表10に示す同量の、例えば0.41%のAFL−1と別々に混合した。混合後、各部をカートリッジ内のそれぞれの容器に再補充した。接着剤を混合し、AFMの全体の割合が同じままであるよう、例えば0.41%であるよう、1:1の比でカートリッジから分配した。
【0131】
上記の試験手順に従い、重なり剪断強度、取り扱い性(濡れ性及び可使時間)、及び硬化負荷について、構造接着剤を試験した。試験結果を表5に示す。重なり剪断強度についての結果によると、すべての接着剤において許容可能な強度が示され、AFL−1を含む実施例では濡れ性及び可使時間が向上していた。シムの湾曲度の減少と対応して、2.125”(5.398cm)幅で、測定したアルミニウム製シムの高さが低下したことに示される通り、接着剤製剤へのAFL−1の添加により、硬化時の応力におけるかなりの減少も示された。
【0132】
【表6】
【0133】
実施例22〜25及び対照実施例C6
AFL−1の代わりにAFL−2を使用したことを除き、構造接着剤を、実施例18〜21のように調製及び試験した。組成物及び試験結果を表6に示す。
【0134】
【表7】