特許第6403791号(P6403791)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6403791銅および銅合金のマイクロエッチングのための組成物および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6403791
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】銅および銅合金のマイクロエッチングのための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C23F 1/18 20060101AFI20181001BHJP
   C25C 1/12 20060101ALI20181001BHJP
   H01L 21/308 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   C23F1/18
   C25C1/12
   H01L21/308 F
【請求項の数】19
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-553785(P2016-553785)
(86)(22)【出願日】2015年10月30日
(65)【公表番号】特表2017-506701(P2017-506701A)
(43)【公表日】2017年3月9日
(86)【国際出願番号】EP2015075310
(87)【国際公開番号】WO2016096228
(87)【国際公開日】20160623
【審査請求日】2016年8月24日
(31)【優先権主張番号】14199223.0
(32)【優先日】2014年12月19日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】300081877
【氏名又は名称】アトテツク・ドイチユラント・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Atotech Deutschland GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マルック ラーガー
(72)【発明者】
【氏名】アーノ クリック
(72)【発明者】
【氏名】ディアク テューズ
【審査官】 國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−534347(JP,A)
【文献】 特表2013−527323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅または銅合金の表面をマイクロエッチングするための組成物であって、前記組成物が、以下:
i)1〜100g/lの範囲の濃度であるFe3+イオンの、少なくとも1種の供給源、
ii)1〜200mg/lの範囲の濃度であるBrイオンの、少なくとも1種の供給源、
iii)少なくとも1種の、0.1〜500g/lの範囲の濃度である無機酸、および
iv)式I
【化1】
[式中、
R1は、水素またはC〜C−アルキル基から選択され;
R2は、水素、C〜C−アルキル、またはC〜C−アルコキシからなる群から選択され、位または位に存在する;
R3、R4は、水素、およびC〜C−アルキルからなる群から選択され;
かつ、Xは、ハロゲン化物イオンである]
による少なくとも1種の、1〜1000mg/lの範囲の濃度であるエッチングリファイナー
を含むことを特徴とする、前記組成物。
【請求項2】
R1が、水素、メチル、エチル、n−プロピル、およびイソプロピルからなる群から選択され;
R2が、水素、メチル、エチル、n−プロピル、およびイソプロピルからなる群から選択され;
R3が、水素、メチル、エチル、n−プロピル、およびイソプロピルからなる群から選択され;
R4が、水素、メチル、エチル、n−プロピル、およびイソプロピルからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
R3とR4とが同一であることを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
式Iによるエッチングリファイナーが、4−(6−メチル−1,3−ベンゾチアゾル−3−イウム−2−イル)−N,N−ジメチルアニリンクロリド、4−(3−ベンジル−6−メチル−1,3−ベンゾチアゾル−3−イウム−2−イル)−N,N−ジメチルアニリンクロリド、4−(3,6−ジメチル−1,3−ベンゾチアゾル−3−イウム−2−イル)−N,N−ジメチルアニリンクロリド、4−(3−ベンジル−5−メチル−1,3−ベンゾチアゾル−3−イウム−2−イル)−N,N−ジメチルアニリンクロリド、4−(3,5−ジメチル−1,3−ベンゾチアゾル−3−イウム−2−イル)−N,N−ジメチルアニリンクロリド、4−(3−メチル−6−エトキシ−1,3−ベンゾチアゾル−3−イウム−2−イル)−N,N−ジメチルアニリンクロリド、4−(3−ベンジル−1,3−ベンゾチアゾル−3−イウム−2−イル)−N,N−ジメチルアニリンクロリド、4−(3−メチル−5−エトキシ−1,3−ベンゾチアゾル−3−イウム−2−イル)−N,N−ジメチルアニリンクロリド、4−(3−ベンジル−5−エトキシ−1,3−ベンゾチアゾル−3−イウム−2−イル)−N,N−ジメチルアニリンクロリド、4−(3−ベンジル−5−エトキシ−1,3−ベンゾチアゾル−3−イウム−2−イル)−N,N−ジメチルアニリンクロリド、4−(6−メチル−1,3−ベンゾチアゾル−3−イウム−2−イル)−N,N−ジエチルアニリンクロリド、4−(3−ベンジル−6−メチル−1,3−ベンゾチアゾル−3−イウム−2−イル)−N,N−ジエチルアニリンクロリド、4−(3,6−ジメチル−1,3−ベンゾチアゾル−3−イウム−2−イル)−N,N−ジエチルアニリンクロリド、4−(3−ベンジル−5−メチル−1,3−ベンゾチアゾル−3−イウム−2−イル)−N,N−ジエチルアニリンクロリド、4−(3,5−ジメチル−1,3−ベンゾチアゾル−3−イウム−2−イル)−N,N−ジエチルアニリンクロリド、4−(3−メチル−6−エトキシ−1,3−ベンゾチアゾル−3−イウム−2−イル)−N,N−ジエチルアニリンクロリド、4−(3−ベンジル−1,3−ベンゾチアゾル−3−イウム−2−イル)−N,N−ジエチルアニリンクロリド、4−(3−メチル−5−エトキシ−1,3−ベンゾチアゾル−3−イウム−2−イル)−N,N−ジエチルアニリンクロリド、4−(3−ベンジル−5−エトキシ−1,3−ベンゾチアゾル−3−イウム−2−イル)−N,N−ジエチルアニリンクロリド、4−(3−ベンジル−5−エトキシ−1,3−ベンゾチアゾル−3−イウム−2−イル)−N,N−ジエチルアニリンクロリド、およびこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
さらにCu2+イオンの少なくとも1種の供給源を含むことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
Cu2+イオンの供給源が、CuSO、CuBr、CuO、Cu(OH)、およびそれらの混合物から構成される群から選択されることを特徴とする、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の組成物であって、前記組成物がさらにFe2+イオンの少なくとも1種の供給源を含むことを特徴とする、前記組成物。
【請求項8】
Fe2+イオンの濃度とFe3+イオンの濃度とが同一であることを特徴とする、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
Fe2+イオンの供給源がFeSOであり、かつFe3+イオンの供給源がFe(SOであることを特徴とする、請求項7または8に記載の組成物。
【請求項10】
100mg/l未満のCl1−イオンを含むことを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
50mg/l未満のCl1−イオンを含むことを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
25mg/l未満のCl1−イオンを含むことを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
有機酸および有機酸の塩を実質的に含まないことを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
式Iによるエッチングリファイナーの濃度が、1〜300mg/lの範囲であることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
式Iによるエッチングリファイナーの濃度が、1〜100mg/lの範囲であることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
Brイオンの濃度が、1〜100mg/lの範囲であることを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
Brイオンの濃度が、1〜25mg/lの範囲であることを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
以下の方法ステップを特徴とする、銅または銅合金の表面をマイクロエッチングするための方法:
i)銅または銅合金の表面を有する基材を準備するステップ、
ii)前記表面を洗浄剤組成物と接触させるステップ、
iii)前記表面を、第1の槽内で、請求項1から17までのいずれか1項に記載の組成物と接触させるステップ、
その際、接触時に銅が酸化されてCu2+イオンとなり、前記Cu2+イオンは前記組成物中に顕れ、一方で同時にFe3+イオンが還元されてFe2+イオンとなるものとする。
【請求項19】
さらに以下の方法ステップを含むことを特徴とする、請求項18に記載の方法:
iv)前記組成物の一部を基材との接触後に第2の槽に移すステップ、
ここで、前記第2の槽は、アノードおよびカソードを含むものとする、および、
v)前記アノードと前記カソードとの間に電流を印加することにより、前記Cu2+イオンを還元して銅にし、一方でFe2+イオンを酸化してFe3+イオンにするステップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、銅または銅合金の表面をマイクロエッチングするための組成物;および、そのような組成物を用いて銅または銅合金の表面をマイクロエッチングするための方法に関する。
【0002】
発明の背景
プリント回路基板(PCB)の形状の複雑さや、製造に使用される銅および銅合金の基材の多様性が増すにつれて、例えばフォトレジストやソルダーマスクといったイメージングレジストの良好な密着性が重要な問題となってきている。また、鉛フリーの製造の要求がより厳しくなっていることから、例えば無電解スズめっきや無電解銀めっきやENIG(lectroless ickel/mmersion old)等のPCB表面処理工程によって生じる上述の銅または銅合金の表面に対する化学的攻撃に耐えることが必要となってきている。したがって、イメージングフィルムやソルダーマスクの密着性が低いことによって生じる欠陥を防ぐためには、今やイメージングレジストやソルダーマスクの優れた密着性が必須の前提条件となっている。
【0003】
銅または銅合金の表面へのイメージングレジストやソルダーマスクの密着性の向上は、イメージングレジストやソルダーマスクを付着させる前にこの銅または銅合金の表面をマイクロエッチングすることによって達成できる。EP0757118には、こうしたマイクロエッチングを目的とした組成物の一般的なタイプの一つが開示されている。こうした水性マイクロエッチング組成物は、第二銅イオンの供給源、有機酸、およびハロゲン化物イオンの供給源を含む。
【0004】
文献EP0855454は、さらにポリアミン鎖またはカチオン性基またはその双方を含む高分子化合物を含む同様の組成物を開示している。
【0005】
従来技術から知られている銅および銅合金の表面のためのマイクロエッチング組成物によって、こうした表面の均一でかつ制御可能な微細粗面化は得られるものの、現在の技術水準でのプリント回路基板の製造に求められるようなイメージングレジストやソルダーマスクの十分な密着性は得られない。具体的には、例えば≦100μmのサイズを有するソルダーマスクの線状スポットや、≦100μmのラインアンドスペース寸法を有する細線イメージングレジストパターンに対する上述のマイクロエッチング組成物により提供される密着性は、もはや十分ではない。
【0006】
本発明の目的
したがって本発明の目的は、銅および銅合金の表面のマイクロエッチングに有用な組成物および方法を提供し、それによって、特にプリント回路基板を製造するための銅および銅合金の表面に対するイメージングレジストかまたはソルダーマスクのいずれかの密着性を向上させることである。
【0007】
本発明の概要
上述の目的、および明示されてはいないものの本明細書において冒頭で論じられた文脈から容易に導出可能であるかまたは認識可能であるさらなる目的は、請求項1のすべての特徴部を有する組成物により達成される。本発明の組成物の適した変更形態は、従属請求項2〜13において保護される。さらに、請求項14がそのような組成物を用いて銅および銅合金の表面をマイクロエッチングするための方法を含むのに対して、この本発明の方法の適した変更形態は従属請求項15に含まれる。
【0008】
したがって本発明は、銅または銅合金の表面をマイクロエッチングするための組成物を提供し、ここで、前記組成物は、以下:
i)Fe3+イオンの少なくとも1種の供給源、
ii)Brイオンの少なくとも1種の供給源、
iii)少なくとも1種の無機酸、および
iv)式I
【化1】
[式中、
R1は、水素、C〜C−アルキル基、または置換されたアリール基、または置換されたアルカリール基からなる群から選択され;
R2は、水素、C〜C−アルキル、またはC〜C−アルコキシからなる群から選択され;
R3、R4は、水素、およびC〜C−アルキルからなる群から選択され;
かつ、Xは、適したアニオンである]
による少なくとも1種のエッチングリファイナー
を含むものとする。
【0009】
このようにして、それぞれの基材の適した表面粗さを生じさせることによって、銅および銅合金の表面に対するイメージングレジストかまたはソルダーマスクのいずれかの密着性を向上させうる組成物を、予見不可能な様式で提供することができる。
【0010】
本発明の詳細な説明
臭化物イオンの供給源は、NaBr、KBr、NHBr、LiBr、およびそれらの混合物を含む群から選択される。
【0011】
本発明の組成物中に存在する少なくとも1種の無機酸は、硫酸(HSO)、リン酸(HPO)を含む群から選択される。好ましいのは硫酸である。本発明の組成物中に存在する酸の総量は、0.1〜500g/lの範囲であり、より好ましくは1〜200g/lの範囲である。
【0012】
適したアニオンとしてのXは、例えば塩化物イオンや臭化物イオンといったハロゲン化物イオンであることができ、その際、塩化物イオンが好ましい。
【0013】
一実施形態において、R1は、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、フェニル、およびベンジルからなる群から選択され;R2は、水素、メチル、エチル、n−プロピル、およびイソプロピルからなる群から選択され;R3は、水素、メチル、エチル、n−プロピル、およびイソプロピルからなる群から選択され;R4は、水素、メチル、エチル、n−プロピル、およびイソプロピルからなる群から選択される。
【0014】
他の実施形態において、R2基は、位または位に存在する。
【0015】
一実施形態において、R3とR4とは同一である。
【0016】
一実施形態において、式Iによるエッチングリファイナーは、4−(6−メチル−1,3−ベンゾチアゾル−3−イウム−2−イル)−N,N−ジメチルアニリンクロリド、4−(3−ベンジル−6−メチル−1,3−ベンゾチアゾル−3−イウム−2−イル−N,N−ジメチルアニリンクロリド、4−(3,6−ジメチル−1,3−ベンゾチアゾル−3−イウム−2−イル)−N,N−ジメチルアニリンクロリド、4−(3−ベンジル−5−メチル−1,3−ベンゾチアゾル−3−イウム−2−イル)−N,N−ジメチルアニリンクロリド、4−(3,5−ジメチル−1,3−ベンゾチアゾル−3−イウム−2−イル)−N,N−ジメチルアニリンクロリド、4−(3−メチル−6−エトキシ−1,3−ベンゾチアゾル−3−イウム−2−イル)−N,N−ジメチルアニリンクロリド、4−(3−ベンジル−1,3−ベンゾチアゾル−3−イウム−2−イル)−N,N−ジメチルアニリンクロリド、4−(3−メチル−5−エトキシ−1,3−ベンゾチアゾル−3−イウム−2−イル)−N,N−ジメチルアニリンクロリド、4−(3−ベンジル−5−エトキシ−1,3−ベンゾチアゾル−3−イウム−2−イル)−N,N−ジメチルアニリンクロリド、4−(3−ベンジル−5−エトキシ−1,3−ベンゾチアゾル−3−イウム−2−イル)−N,N−ジメチルアニリンクロリド、4−(6−メチル−1,3−ベンゾチアゾル−3−イウム−2−イル)−N,N−ジエチルアニリンクロリド、4−(3−ベンジル−6−メチル−1,3−ベンゾチアゾル−3−イウム−2−イル−N,N−ジエチルアニリンクロリド、4−(3,6−ジメチル−1,3−ベンゾチアゾル−3−イウム−2−イル)−N,N−ジエチルアニリンクロリド、4−(3−ベンジル−5−メチル−1,3−ベンゾチアゾル−3−イウム−2−イル)−N,N−ジエチルアニリンクロリド、4−(3,5−ジメチル−1,3−ベンゾチアゾル−3−イウム−2−イル)−N,N−ジエチルアニリンクロリド、4−(3−メチル−6−エトキシ−1,3−ベンゾチアゾル−3−イウム−2−イル)−N,N−ジエチルアニリンクロリド、4−(3−ベンジル−1,3−ベンゾチアゾル−3−イウム−2−イル)−N,N−ジエチルアニリンクロリド、4−(3−メチル−5−エトキシ−1,3−ベンゾチアゾル−3−イウム−2−イル)−N,N−ジエチルアニリンクロリド、4−(3−ベンジル−5−エトキシ−1,3−ベンゾチアゾル−3−イウム−2−イル)−N,N−ジエチルアニリンクロリド、4−(3−ベンジル−5−エトキシ−1,3−ベンゾチアゾル−3−イウム−2−イル)−N,N−ジエチルアニリンクロリド、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0017】
式Iによるエッチングリファイナーの群のうち特に好ましいものは、4−(3,6−ジメチル−1,3−ベンゾチアゾル−3−イウム−2−イル)−N,N−ジメチルアニリンクロリドであり、これはチオフラビンT.としても知られている。
【0018】
好ましい一実施形態において、組成物はさらにCu2+イオンの少なくとも1種の供給源を含む。
【0019】
Cu2+イオンの適した供給源は、CuSO、CuBr、CuO、Cu(OH)、およびそれらの混合物を含む群から選択される。本発明の組成物中の銅イオンの量は、1〜300g/lの範囲であり、より好ましくは10〜50g/lの範囲であり、最も好ましくは20〜40g/lの範囲である。
【0020】
一実施形態において、組成物はさらにFe2+イオンの少なくとも1種の供給源を含む。
【0021】
好ましい一実施形態において、本発明の組成物中のFe2+イオンの濃度とFe3+イオンの濃度とは同一である。
【0022】
一実施形態において、Fe2+イオンの供給源はFeSOであり、かつFe3+イオンの供給源はFe(SOである。
【0023】
本発明の組成物中のFe2+イオンおよびFe3+イオンの量は、1〜100g/lの範囲であり、好ましくは1〜50g/lの範囲であり、より好ましくは1〜30g/lの範囲である。
【0024】
本発明の組成物のpH値は、3未満であり、好ましくは2未満であり、より好ましくは1.5未満である。
【0025】
他の実施形態において、組成物は、100mg/l未満、好ましくは50mg/l未満、より好ましくは25mg/l未満のCl1−イオンを含む。
【0026】
一実施形態において、組成物は、有機酸および有機酸の塩を実質的に含まない。
【0027】
一実施形態において、式Iによるエッチングリファイナーの濃度は、1〜1000mg/lの範囲であり、好ましくは1〜300mg/lの範囲であり、より好ましくは1〜100mg/lの範囲である。
【0028】
一実施形態において、Brイオンの濃度は、1〜200mg/lの範囲であり、好ましくは1〜100mg/lの範囲であり、より好ましくは1〜25mg/lの範囲である。
【0029】
イメージングレジストは、液体またはドライフィルムのいずれかとして適用される感光性ポリマー系である。ソルダーマスクは、PCBの銅または銅合金の表面のための持続的な保護コーティングを提供する高分子材料の堆積物である。
【0030】
さらに本発明の目的は、上述の組成物を用いて銅または銅合金の表面をマイクロエッチングすることによって、こうした表面に付着させるべきイメージレジストまたはソルダーマスクの密着性を向上させる方法によっても解決される。前述の方法は、以下の方法ステップを特徴とする:
i)銅または銅合金の表面を有する基材を準備するステップ、
ii)前記表面を洗浄剤組成物と接触させるステップ、
iii)前記表面を、第1の槽内で、先行する請求項のいずれか1つに記載の組成物と接触させるステップ、
その際、接触時に銅が酸化されてCu2+イオンとなり、前記Cu2+イオンは前記組成物中に顕れ、一方で同時にFe3+イオンが還元されてFe2+イオンとなるものとする。
【0031】
この本発明による方法は、銅または銅合金の表面を上述の組成物と接触させることにより行われる。基材を溶液中に浸漬してもよいし、溶液を基材の銅または銅合金の表面上に吹き付けてもよい。この目的のために、通常の水平方向または垂直方向の機器を利用することができる。
【0032】
噴霧器を用いる場合には、溶液を、銅または銅合金の表面を有する基材に1〜10バールの圧力で吹き付ける。
【0033】
どちらの方法(吹き付けまたは溶液)であっても、本方法は好ましくは10〜60℃の範囲の温度で行われ、より好ましくは20〜50℃の範囲の温度で行われ、最も好ましくは30〜45℃の範囲の温度で行われる。処理時間は、10〜360秒間の範囲であり、より好ましくは20〜200秒間の範囲であり、最も好ましくは30〜90秒間の範囲である。
【0034】
このようにして銅または銅合金の表面を処理した後に、この銅または銅合金の表面を、水、例えば脱イオン水でリンスし、次いで例えば熱風で乾燥させる。
【0035】
エッチングされた銅または銅合金の表面をリンスした後に、任意に、希釈された酸で、好ましくは10体積%の塩酸または希硫酸で、5〜300秒間処理することもできる。酸で処理した後に、銅表面を再び好ましくは脱イオン水でリンスする。
【0036】
好ましくは、本発明によるエッチング組成物を試料に吹き付けることによって試料を処理する。所望の機器に応じて、組成物を垂直モードで吹き付けても水平モードで吹き付けてもよい。あるいは、試料をエッチング組成物中に浸漬することもできる。吹き付けと同一の粗さ値を達成するためには、例えば組成物に空気をバブリングすることにより該組成物に酸素を通すことが必要である。
【0037】
本方法の好ましい一実施形態において、本方法はさらに以下の方法ステップを含むことを特徴とする:
iv)前記組成物の一部を基材との接触後に第2の槽に移すステップ、
ここで、前記第2の槽は、アノードおよびカソードを含むものとする、および、
v)前記アノードと前記カソードとの間に電流を印加することにより、前記Cu2+イオンを還元して銅にし、一方でFe2+イオンを酸化してFe3+イオンにするステップ。
【0038】
使用中に、組成物においてCu2+イオン富化が生じる(このイオンは、本発明による組成物中に配置される)。同時に、Fe3+イオンが還元されてFe2+イオンとなる。Cu2+イオンは組成物の性能に悪影響を与える。Cu2+イオンによってマイクロエッチング溶液の濃度および粘度が増加し、それによりマイクロエッチング挙動に悪影響が及ぼされる。エッチング速度や側壁部のエッチング性能が低下しうる。さらに、Cu2+イオン錯体の析出が生じうる。こうした析出物は、エッチング組成物との接触時に装置や表面に機械的な危険性を引き起こす。
【0039】
従来技術による方法においては、添加されたCu2+イオンの一部またはすべてが、適量のエッチング溶液のブリーディング(除去)と残りの溶液への新鮮なエッチング液の添加(フィーディング)とによって、除去される。
【0040】
溶液からCu2+イオンを除去するための特定の方法の一つは、Cu2+イオンを電解還元して金属銅にすることである。
【0041】
原則として、電気分解には、アノードとカソードと整流器とを備えた第2の槽が必要である。
【0042】
本発明による組成物の一部は、第1の槽(この第1の槽において、またはこの第1の槽から、銅または銅合金の層のマイクロエッチングが行われる)から、電気分解のために備えられた第2の槽へと移される。電気分解時にCu2+イオンがカソードで還元されて金属銅となると同時に、Fe2+イオンがアノードで酸化されてFe3+イオンとなる。
【0043】
この金属銅を、回収して再利用することができる。電解再生セルがない場合には、マイクロエッチング溶液に酸化剤(Fe3+イオン)を連続的に添加する必要があるであろう。上記の再生を適用することによって、消費されたFe3+イオンがアノードで再生され(Fe2+が酸化されてFe3+となる)、それによりエッチング溶液の使用時に酸化剤を添加すること(フィーディング)が不要となる。
【0044】
こうした再生サイクルのためには、特定の条件が満たされていることが必須である。本発明の組成物の無機酸を確実に高度に解離させるために、pH値が低くなければならない。したがって、こうした好適な方法のこうした再生サイクルを実行することが意図されている場合には、組成物は有機酸も有機酸の塩も含まなくてもよい。
【0045】
さらに、Fe3+イオンおよびCu2+イオンの濃度を理想的にはその場で測定できる測定装置が第2の槽に備えられている場合には、それは有用である。Fe3+イオンの濃度が低くなりすぎた場合に測定装置はそれを検出して後続の第2の槽内で電流の印加を開始し、それによってこの第2の槽内の浴組成の再生が開始される。Fe3+イオンの濃度が所定の基準値をまだ上回っている場合には、浴組成はまだ再生を必要としない。その場合には、浴組成の一部は電気分解を全く行わずに第1の槽に戻される。ユーザーは、自身の系に応じて所定の基準値を設定することができる。
【0046】
こうした測定装置によって測定できるCu2+イオンの濃度についても、原則的には同様のことが該当する。しかしこの場合には、Cu2+イオンの濃度はこの濃度が高すぎるかどうかを調べるために観察される。Cu2+イオンの濃度が所定の基準値を超えた場合には、上記のようにCu2+イオンを銅として析出させるために、浴組成の再生が必要である。
【0047】
本方法の好ましい一実施形態において、マイクロエッチング組成物はさらに、最初からCu2+イオンの供給源およびFe2+イオンの供給源を含み、その際、組成物にすでに含まれているFe2+イオンの濃度とFe3+イオンの濃度とは同一である。このことによって、本方法の最初から、Fe2+/Fe3+およびCu/Cu2+のレドックスペアについて組成物中で平衡がもたらされ、それにより再生サイクルを直接開始することが可能となる。
【0048】
出発組成物がFe2+イオンおよびCu2+イオンを含まない場合には、これらのイオンが存在しないため、マイクロエッチング法を行うことはできるものの再生サイクルを行うことはできない。その場合、ユーザは、十分なFe3+イオンが還元されてFe2+イオンとなるまで(待機時間は所定の基準値に依存する)、および/または、方法ステップiii)においてマイクロエッチング組成物によって処理される基材の銅表面から銅が酸化されることによって十分なCu2+イオンが生成されるまで、待機しなければならない。
【0049】
測定装置は、分光装置、好ましくはUV分光装置、および滴定装置、好ましくはオンラインUV滴定装置を含む群から選択される。
【0050】
したがって本発明は、特にプリント回路基板の製造において銅および銅合金の表面に対するイメージングレジストかまたはソルダーマスクのいずれかの密着性を向上させる問題に対処するものである。
【0051】
以下の非限定的な実施例は、本発明の実施形態を説明し、かつ本発明の理解を容易にするために提供されるものである。
【0052】
実施例
添付の特許請求の範囲の範囲内にあるかまたはない様々な組成物でマイクロエッチングされた銅表面の性能粗さ値を、原子間力顕微鏡を用いて測定した。銅張積層基材(CCI)を、それぞれ実験1〜4を通して使用した。測定ウィンドウは、10μm×10μmであった。
【0053】
実験1〜4を通して使用した処理シーケンスは、以下の通りであった:
1.銅表面の洗浄(Softclean UC 168、Atotech Deutschland GmbHの製品、t=20秒、T=35℃)、
2.この銅基材にマイクロエッチング組成物を吹き付けることによってこの銅表面をマイクロエッチングする、
3.このマイクロエッチングされた銅表面を乾燥させる、
4.原子間力顕微鏡(AFM)を用いてこの銅表面の粗さを測定する。
【0054】
実施例1〜4において、銅表面のマイクロエッチング深度を1μmに調節した。実験1〜4から得られる性能粗さ値を、第1表にまとめる(下記参照)。
【0055】
様々なマイクロエッチング組成物とCCI型基材とを、35℃の温度で40秒間接触させる。これらのマイクロエッチング組成物は、以下のものからなる:
CuSO 30g/l(Cu2+イオンに関して)
FeSO 15g/l(Fe2+イオンに関して)
Fe(SO 15g/l(Fe3+イオンに関して)
硫酸(50%) 160ml/l
NaCl 10mg/l(Cl1−イオンに関して)
NaBr 0mg/l、または8mg/l(Brイオンに関して)
チオフラビンT 0mg/l、または5mg/l、または200mg/l
【表1】
【0056】
原子間力顕微鏡法によって得られた銅の表面粗さを表すパラメータRSAIは、添付の特許請求の範囲の範囲外にある組成物(実施例1および2)と比較して、実施例3および4による本発明の組成物が最も高い値を示している。特に、変更された表面粗さ値を得るためには、式Iによる特定のエッチングリファイナーの存在と、臭化物イオンの供給源の存在とが必要であることが明らかに実証されている。同時に、一定濃度の塩化物イオンは、少なくともこの濃度が10mg/lでは明らかに、達成される銅の表面粗さに顕著な影響を及ぼさないことに注目すべきである。
【0057】
添付の特許請求の範囲の範囲内にあるかまたはない様々なマイクロエッチング組成物を密着性能試験に使用し、その際、マイクロエッチングされた銅表面に、ソルダーマスク(Elpemer SG 2467、Petersの製品)が十字の形で付着している。この十字は10本の線×10本の線の形状からなり、ここで、これらはすべて同一の径を有する。5つの十字を用いて実験を行い、その際、異なる十字の十字線のそれぞれの径は、10μm、20μm、30μm、40μm、および50μmである。ここでもCCI型の銅基材を使用する。銅表面のマイクロエッチング深度を、すべての実験を通して1μmに調整する。
【0058】
より良好な検出を目的として、十字線の間の領域を選択的な仕上げにより処理し、第1の実験系列では無電解スズめっきによって処理し、第2の実験系列ではENIG(lectroless ickel old)によって処理する。
【0059】
適用されたマイクロエッチング組成物によって予め粗面化された下方の銅表面に対する密着性が低いために十字線のソルダーマスクが部分的または完全に剥がれたどうかを調べるために、光学的な定性的評価を行った。
【0060】
双方の実験系列について得られた定性的評価は全体的に同等であることが判明した。これを第2表(下記参照)にまとめる。
【0061】
様々なマイクロエッチング組成物とCCI型基材とを、35℃の温度で40秒間接触させる。これらのマイクロエッチング組成物は、以下のものからなる:
CuSO 30g/l(Cu2+イオンに関して)
FeSO 15g/l(Fe2+イオンに関して)
Fe(SO 15g/l(Fe3+イオンに関して)
硫酸(50%) 160ml/l
NaCl 10mg/l(Cl1−イオンに関して)
NaBr 0mg/l、または8mg/l、または100mg/l(Brイオンに関して)
チオフラビンT 0mg/l、または5mg/l、または200mg/l
【表2】
【0062】
第2表に示す評価から導き出すことができるように、AFMの結果は、予め本発明のマイクロエッチング組成物によって粗面化された銅表面に対するソルダーマスクの良好な密着性を達成するためには、式Iによるエッチングリファイナーの存在と臭化物イオンの存在とが必須であることを裏付けている。200mg/lというチオフラビンTの極めて高い濃度でも依然として、良好な密着性の結果がもたらされる。
【0063】
上述の2つの実験系列の密着性能をさらに、IPC−TM−650の8/97、revision Dに従ってテープ試験を適用することにより、選択された数の第2表の個々の実験について分析する。
【0064】
適用されたマイクロエッチング組成物によって予め粗面化された下方の銅表面に対する密着性が低いために十字線のソルダーマスクが部分的または完全に剥がれたかどうかを調べるために、再び光学的な定性的評価を行った。
【0065】
双方の実験系列について得られた定性的評価は全体的に同等であることが判明した。これを第3表(下記参照)にまとめる。
【0066】
【表3】
【0067】
第3表の結果から、本発明による組成物で処理しかつテープ試験を適用した銅表面に対するソルダーマスクの優れた密着性が明らかである。それぞれの十字のほぼすべてのソルダーマスク線が、その線径にかかわらず、テープ試験の実行後に、粗面化された銅表面上に少なくとも定性的な光学的評価の後に残っており;添付の特許請求の範囲の範囲外にあるマイクロエッチング組成物については、ソルダーマスクのそれぞれの線が銅表面から剥がれている。
【0068】
マイクロエッチングされた銅表面に対するソルダーマスクドットの密着性試験から得られた結果は、添付の特許請求の範囲の範囲外にある組成物(実施例1、2、5、6、10、および11)に比べて、本発明のマイクロエッチング組成物(実施例3、4、7、8、9、および12)の性能が優れていることを示している。本発明のマイクロエッチング組成物の優れたソルダーマスク密着性能は、特にテープ試験の適用後に明らかである。
【0069】
当然のことながら、本明細書に記載の実施形態は単なる例示であり、当業者は本発明の範囲から逸脱することなく多くの変更および修正を行うことができる。上述のものを含めたそうしたあらゆる変更形態および修正形態が、添付の特許請求の範囲により定められる本発明の範囲内に含まれることが意図される。