特許第6403868号(P6403868)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6403868エンジン出力を開ループ制御及び/又は閉ループ制御する方法、当該方法を実施する出力制御装置及び当該方法を実施するためのプログラムコードを含むコンピュタープログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6403868
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】エンジン出力を開ループ制御及び/又は閉ループ制御する方法、当該方法を実施する出力制御装置及び当該方法を実施するためのプログラムコードを含むコンピュタープログラム
(51)【国際特許分類】
   F02D 11/10 20060101AFI20181001BHJP
   B60K 26/02 20060101ALI20181001BHJP
   F02D 43/00 20060101ALI20181001BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   F02D11/10 F
   B60K26/02
   F02D43/00 310A
   F02D43/00 310Z
   F02D45/00 320A
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-503815(P2017-503815)
(86)(22)【出願日】2015年6月8日
(65)【公表番号】特表2017-522493(P2017-522493A)
(43)【公表日】2017年8月10日
(86)【国際出願番号】EP2015062673
(87)【国際公開番号】WO2016012148
(87)【国際公開日】20160128
【審査請求日】2017年1月23日
(31)【優先権主張番号】102014214380.2
(32)【優先日】2014年7月23日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ウード ズィーバー
(72)【発明者】
【氏名】マークス ダイスラー
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ バウアー
【審査官】 田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/110761(WO,A1)
【文献】 特開2013−119264(JP,A)
【文献】 特開平5−71375(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/110758(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 9/00 − 11/10
F02D13/00 − 28/00
F02D41/00 − 45/00
B60K25/00 − 28/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(910)の出力を開ループ制御及び/又は閉ループ制御する方法であって、
・初期ポジション(A)と最終ポジション(E)との間を移動可能なアクセルペダル(100)の動作ポジション(S)を検出するステップと、
・前記動作ポジション(S)と出力要求(PS)との第1の依存関係(510)を適用して、前記エンジン(910)に対する出力要求(PS)を求めるステップと、
を含む方法において、
前記アクセルペダル(100)は、当該アクセルペダル(100)に作用するアクチュエータ部材(300)が設けられたアクティブアクセルペダルであり、
規定のイベントの発生後、前記エンジン(910)に対する出力要求(PS)を、前記動作ポジション(S)と前記出力要求(PS)との別の依存関係(550)を適用して求め、
前記規定のイベントは、通常の力を費やしても前記アクセルペダル(100)を、前記初期ポジション(A)と前記最終ポジション(E)との間に位置する第1のポジション(B)までしか動かせない状況であり、
前記規定のイベントが発生してから前記別の依存関係(550)が適用されるまでの移行期間(Δt)中、前記エンジン(910)に対する前記出力要求(PS)を前記アクセルペダル(100)の前記動作ポジション(S)に割り当てるために、前記出力要求(PS)と前記動作ポジション(S)との少なくとも1つの過渡的な依存関係(512,514,516,518)を適用し、
前記動作ポジション(S)の値を有する軸に沿った圧縮及び/又は前記出力要求(PS)の値を有する軸に沿った圧縮により、前記別の依存関係(550)を前記第1の依存関係(510)から生成し、前記動作ポジション(S)の値を有する軸に沿った圧縮と、前記出力要求(PS)の値を有する軸に沿った圧縮とは、それぞれの圧縮係数を適用可能である、
エンジン(910)の出力を開ループ制御及び/又は閉ループ制御する方法。
【請求項2】
前記第1の依存関係(510)は、前記アクセルペダル(100)の動作ポジション(S)の漸次増大する値に、前記エンジン(910)に対する漸次増大する出力要求(PS)を割り当て、
前記アクセルペダル(100)の最終ポジション(E)に、最大出力要求(Pmax)が割り当てられており、
前記別の依存関係(550)において、前記第1のポジション(B)に、前記最大出力要求(Pmax)の90%乃至100%の範囲にある出力要求(PB)が割り当てられる、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記別の依存関係(550)において、前記初期ポジション(A)を起点として前記第1のポジション(B)に至るまで、前記動作ポジション(S)の漸次増大する値に、前記エンジン(910)に対する前記出力要求(PS)の漸次増大する値が割り当てられている、
請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記圧縮は、線形的な圧縮である、
請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記動作ポジション(S)の値各々について、相前後して適用される2つの依存関係(510,512,514,516,518,550)から当該動作ポジション(S)のときに求められる出力要求(PS)の相対的な差は、最大で5%である、
請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記動作ポジション(S)の値各々について、相前後して適用される2つの依存関係(510,512,514,516,518,550)から当該動作ポジション(S)のときに求められる出力要求(PS)の相対的な差は、最大で1%である、
請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記出力要求(PS)と前記動作ポジション(S)との前記第1の依存関係(510)、前記別の依存関係(550)及び前記少なくとも1つの過渡的な依存関係(512,514,516,518)は、ペダル特性曲線として記憶装置に記憶されており、当該ペダル特性曲線において、出力要求の値がペダルポジションの値に割り当てられており、又は、
前記出力要求(PS)と前記動作ポジション(S)との前記第1の依存関係(510)、前記別の依存関係(550)及び前記少なくとも1つの過渡的な依存関係(512,514,516,518)は、特性マップとして記憶装置に記憶されており、当該特性マップにおいて、出力要求の値がペダルポジションの値に割り当てられており、又は、
前記出力要求(PS)と前記動作ポジション(S)との前記第1の依存関係(510)、前記別の依存関係(550)及び前記少なくとも1つの過渡的な依存関係(512,514,516,518)は、1つ又は複数の関数関係として記憶装置に記憶されており、当該1つ又は複数の関数関係に基づき、ペダルポジションの値から前記出力要求の値が算出される、
請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記エンジン(910)は、自動車(900)のエンジン(910)である、
請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
エンジン(910)の出力制御装置であって、
当該出力制御装置において、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法が実施され、
当該出力制御装置は、
・初期ポジション(A)と最終ポジション(E)との間を移動可能なアクセルペダル(100)と、
・前記アクセルペダル(100)の動作ポジション(S)を検出するセンサ(200)と、
・前記エンジン(910)に対する出力要求(PS)を求める制御ユニット(500)と、
を含み、
前記出力要求(PS)を求める前記制御ユニット(500)は、前記出力要求(PS)と前記動作ポジション(S)との第1の依存関係(510)、又は、前記出力要求(PS)と前記動作ポジション(S)との別の依存関係(550)を適用する、
エンジン(910)の出力制御装置。
【請求項10】
前記エンジン(910)の出力制御装置は、自動車(900)のエンジン(910)の出力制御装置である、
請求項記載のエンジン(910)の出力制御装置。
【請求項11】
データ処理装置において実行されるときに、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法を実施するためのプログラムコードを含むコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、方法発明の独立請求項の上位概念に記載された特徴を備えた、エンジン出力を開ループ制御及び/又は閉ループ制御する方法に関する。本発明はさらに、斯かる方法が実施されるエンジンの出力制御装置、及び、データ処理ユニットにおいて実施されるときに、斯かる方法を実施するためのプログラムコードを含むコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
例えば自動車などのエンジンの出力を開ループ制御又は閉ループ制御するための慣用の受動的なアクセルペダルの場合、運転者は、ペダル機構に組み込まれたばねに抗して動作を行う。この場合、ばね力は、ペダルが辿った行程にほぼ比例する。このように比例する力によって、運転者はペダルポジションを正確に調節することができ、ひいてはエンジンに対する出力要求例えば回転トルク要求を正確に配分することができる。
【0003】
電子アクセルペダルは、エンジンに対する出力要求を要求された出力に変換するエンジンの部材例えばスロットルバルブとは、もはや直接、機械的には接続されていない。そうではなく、アクセルペダルには少なくとも1つのセンサが設けられており、アクセルペダルは、エンジンに対する出力要求を要求された出力に変換する部材と、電子的に接続されているだけである。ペダルのポジションからエンジンに対する出力要求を特定し、その要求をエンジンに伝達するために、一般的には制御ユニットにおいて何らかの方法が実施される。
【0004】
この種の方法によれば、初期ポジションと最終ポジションとの間のペダルポジション又はペダルの動作ポジションが、センサによって検出される。さらに次のステップにおいて、動作ポジションとエンジンに対する出力要求との依存関係を適用して、エンジンに対する出力要求が求められる。この場合、一般的に上述の依存関係は、アクセルペダルが最終ポジションに動かされたときに、エンジンに対する出力要求が最大となるように設計されている。その後、求められた出力要求から、制御部材例えばスロットルバルブの制御パラメータを求めて、それを制御部材へ伝達することができる。アクセルペダルの最終ポジションに対し、エンジンの全負荷点を設定することができる。
【0005】
斯かる方法を実施する出力制御装置は、独国特許出願公開第102010062363号明細書(DE10 2010 062 363 A1)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第102010062363号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明の概要
本発明が前提とする認識とは、電子アクセルペダルの場合には、アクセルペダルにおいて機械的な故障が発生すると、エンジンの動作が大幅に制限されるおそれがあり、又は、それどころかまったく不可能になるおそれがある、ということである。例えばアクセルペダル行程が制限され又はアクセルペダル角度が制限され、アクセルペダルをもはや最終ポジションまで変位させることができない場合、慣用の依存関係を適用してもエンジンの全負荷点にもはや到達することができない。アクセルペダル行程又はアクセルペダル角度の制限が大きくなるにつれて、この依存関係において達成可能な出力要求範囲が小さくなる。最悪のケースでは、車両を例えば工場などへ移動させるのに十分な出力を、もはやエンジンに要求できなくなることも起こり得る。
【0008】
アクティブアクセルペダルを用いれば、電子アクセルペダルの可用性が付加的に拡張される。つまり例えば、走行状況に応じて触覚的なフィードバックを、アクセルペダルを介して運転者に伝達する、という可能性を提供することができる。このような触覚的なフィードバックの伝達は例えば、アクセルペダル若しくはアクセルペダルの踏み板に振動を加えることによって行われ、又は、規定の力をアクセルペダルに加えることによって行われ、この力によって運転者に対し、アクセルペダルを例えば走行状況などに応じたポジションからさらに最終ポジションの方向へ動かすために、規定のとおり高めた力を費やすことが要求される。
【0009】
上述のアクティブアクセルペダルは、必要な力をアクセルペダルへ及ぼすために、例えばモータなどのようなアクチュエータ部材を使用することができる。この種のモータ又はアクチュエータ部材がブロックされてしまうと、運転者はアクセルペダルを、通常の力又は妥当な力を費やしても、最終ポジションまで移動させることがもはやできなくなってしまう可能性がある。このため、通常の依存関係では全負荷点への到達はもはや不可能となり、アクチュエータ部材がブロックされてしまった結果として生じるアクセルペダル行程の制限によって、車両を例えば工場などへ移動させるのに十分な出力が供給されなくなる状況に至るおそれがある。
【0010】
よって、以下のようなエンジンの出力制御方法を提供する、という要求が存在すると考えられる。即ち、この方法によって、規定のイベントが発生したときに、例えば電子アクセルペダルの達成可能な最大アクセルペダル行程が制限されたときに、それにもかかわらずエンジンの全負荷点に到達できるようにし、又は、少なくとも、エンジンにより例えば駆動される車両を工場に移動させるのに十分な出力をエンジンから取り出すことができるようにするのである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の利点
斯かる要求は、独立請求項に記載された本発明の構成によって満たすことができる。
【0012】
従属請求項には、本発明の有利な実施形態が記載されている。
【0013】
以下、エンジンの出力を開ループ制御及び/又は閉ループ制御する方法の特徴、詳細及び考えられる利点、エンジンの出力制御装置、並びに、にコンピュータプログラム製品について、本発明の実施形態に従って詳しく説明する。
【0014】
本発明の1つめの観点によれば、エンジン、特に自動車のエンジンの出力を開ループ制御及び/又は閉ループ制御する方法が提案される。この方法によれば、エンジンの全負荷点又はエンジンの少なくとも1つの負荷点の制御が実現され、この方法によって、エンジンに対し所望の出力要求を設定するアクセルペダルのペダル行程が制限されて、アクセルペダルの最終ポジションにもはや到達できないような状況においても、緊急動作が可能となる。
【0015】
「ペダル行程」とは例えば、具体例としてmm又はcmの単位で行程長を検出可能な区間に沿った行程のこととすることができる。但し、ペダル軸を中心とした回転角という意味で「行程」とすることもでき、この場合には、ポジションを角度で検出することができる。
【0016】
このことは、本発明に係る方法が以下のステップを含むことにより達成される。即ち、初期ポジションと最終ポジションとの間を移動可能なアクセルペダルの動作ポジションを検出するステップと、動作ポジションと出力要求との第1の依存関係を適用して、エンジンに対する出力要求を求めるステップとを含むことにより達成される。その際、本発明によれば、規定のイベント発生後、動作ポジションと出力要求との別の依存関係を適用して、エンジンに対する出力要求が求められる。ここで、規定のイベントとは、通常の力を費やしてもアクセルペダルを、初期ポジションと最終ポジションとの間に位置する第1のポジションまでしか動かせない状況のことである。
【0017】
つまり、例えばこのような状況において、第1のポジションを、初期ポジションを起点として、アクセルペダルの最終ポジションと初期ポジションとの間のポジション差の最大で40%の箇所に位置するものとすることができる。従って、このような場合では、通常想定されているペダル行程の少なくとも60%が、もはや使用できなくなってしまう。
【0018】
ここで「通常の力を費やす」という表現を、以下のようなものと捉えることができる。即ち、例えばアクセルペダルと接続されたばねの力の作用に打ち勝つように、又は、アクティブアクセルペダルの場合には、このばね力と、アクチュエータ部材からアクセルペダルに加えられる補助力とに打ち勝つように、動作ポジションから最終ポジション又は初期ポジションの方向へアクセルペダルを変位させるのに一般的に必要とされる力を費やすのと、実質的に変わらない力を費やす、ということである。このようにアクチュエータ部材により加えられる補助力を、例えば「キックダウン」ポイントで調達することができる。例えば、アクセルペダルを変位させるために費やされる力が、目標値から最大で5%又は最大で10%だけ隔たっている場合であっても、(現在のところ)まだ「通常の力が費やされている」とすることができる。従って、目標値からの偏差がさらに大きくなったときには、アクセルペダルをもはや「通常の力を費やしても」、到達しているポジションから動かすことができない状況にある、ということが示される。通常の力を費やしてもアクセルペダルを第1のポジションから移動させることができない、という状況を、例えば力センサを使用せずに検出することもできる。これは例えば、アクセルペダルと接続されたアクチュエータ部材がブロックされており、到達可能なアクセルペダル行程範囲が制限されている、ということが例えば制御ユニットにより識別される場合である。斯かるブロック状態に基づき、到達可能なアクセルペダルポジションが制限されており、通常の力を費やしてもアクセルペダルを例えば第1のポジションまでしか移動させることができない、ということを、制御装置によって識別することができる。
【0019】
従来技術とは異なり本発明により得られる利点とは、アクセルペダルがかろうじて第1のポジションに到達することしかできない、という状況が発生した後、動作ポジションと出力要求との依存関係の変更を、著しく簡単かつ著しく迅速に実行できるようにすることで、例えばエンジンの出力範囲全体を、又は、少なくとも安全な緊急動作に必要とされるエンジンの出力範囲を、本発明に係る方法によって運転者に提供することができる、ということである。従って、運転者は有利には、アクセルペダルの最終ポジションへの到達を制限する狭められたペダル行程範囲しか利用できないにもかかわらず、依然としてエンジン負荷範囲の広い範囲で、エンジンを開ループ制御又は閉ループ制御することができる。
【0020】
本発明に係る方法の1つの実施形態によれば、第1の依存関係は、アクセルペダル動作ポジションの漸次増大する値に、エンジンに対する漸次増大する出力要求を割り当て、アクセルペダルの最終ポジションには、最大出力要求が割り当てられている。さらにこの場合、別の依存関係において、第1のポジションに、最大出力要求の90%乃至100%の範囲にある出力要求が割り当てられる。ここで、最大出力要求を、例えばエンジンの全負荷点に対応させることができる。このようにして、有利には以下のことが実現される。即ち、アクセルペダルを第1のポジションまでしか移動させることができなくても、エンジンの出力範囲全体を又はエンジンの出力範囲のほぼ全体を、運転者が取り出すことができるようになる。このようにすることで、例えばエンジンを備える車両の使用が、有利にはごく僅かにしか又はまったく制限されず、従って、アクセルペダルがブロックされた状況に起因する車両の動作停止を、有利には回避できるようになる。例えばこのようにすることで、アクセルペダルを第1のポジションから移動することができない場合でも、高速な走行又は良好な加速値を、たとえ満載状態の車両であっても達成することができる。
【0021】
別の依存関係において、初期ポジションを起点として第1のポジションまで、動作ポジションの漸次増大する値に、エンジンに対する出力要求の漸次増大する値が割り当てられていることによって、有利には、運転者はアクセルペダルを引き続き通常どおりに使用できるようになり、制限されたペダル行程範囲において、別の依存関係により提供されるエンジンの出力範囲を完全に利用し尽くすことができるようになる。
【0022】
本発明の1つの実施形態によれば、動作ポジションの値を有する軸に沿った圧縮により、特に線形的な圧縮により、別の依存関係を第1の依存関係から生成する。これによって有利には、運転者は自身が望む出力要求に関して、通常の状況によく近似した走行特性をアクセルペダルポジションに従って見出す、ということが実現される。このようにすれば、制限されたアクセルペダル行程に運転者が慣れるだけでよいので、斯かる状況において有利には安全性を向上させることができる。
【0023】
上述の「圧縮」という表現を、第1の依存関係では初期ポジションから最終ポジションまでのペダル行程範囲に属するペダル行程の値に割り当てられていた出力要求の同じ値を、別の依存関係では初期ポジションから第1のポジションまでのペダル行程範囲に属するペダル行程の値に割り当てることである、と捉えることができる。一方の軸(例えばx軸)にペダルポジションを、これと直交する他方の軸(例えばy軸)に出力要求が記載されたグラフに、上述の依存関係を書き込んだならば、このことは、ペダルポジション又はペダルの動作ポジションの値を有する軸に沿った圧縮を行う、ということに相当する。斯かる圧縮を例えば、第1の依存関係に属する動作ポジションの値をそれぞれ比例係数で乗算することによって、実現することができる。適切な比例係数(a)は例えば、初期ポジション(A)から第1のポジション(B)までの第1の行程距離(SB)と、初期ポジション(A)から最終ポジション(E)までの第2の行程距離(SE)との商、即ち、a=SB/SEによって得られる。この場合、比例係数aを定数としてもよいし、又は、例えばここでもペダルポジションに依存するものとしてもよい。
【0024】
従って、斯かる圧縮において第1の依存関係から別の依存関係を、以下のようにして得ることができる。即ち、初期ポジションについては、別の依存関係と第1の依存関係とで同じ出力要求の値になるようにし、別の依存関係における第1のポジションについては、第1の依存関係では最終ポジションに対するものであったのと同じ出力要求の値、例えば最大出力要求つまり全負荷点となるようにする。
【0025】
本発明の1つの実施形態によれば、出力要求の値を有する軸に沿った圧縮により、特に線形的な圧縮により、別の依存関係を第1の依存関係から生成する。このようにすることで、例えばアクセルペダル行程が著しく強く制限されて、第1のポジションが、初期ポジションから最終ポジションに至る全行程の例えばもはや10%又は例えば20%の箇所にあるときに、この方法により運転者に対しエンジンの全負荷点が提供されてしまうことが、有利には阻止される。その理由は、アクセルペダル行程がこのように制限されてしまっていると、エンジンに対しほとんど又は全く出力要求が課されないアクセルペダルの初期ポジションと、エンジンが全負荷点で駆動されることになるアクセルペダルの第1のポジションとの間の範囲が、エンジン出力の有効な制御を実現するには狭すぎてしまう、ということによる。むしろ、このような状況であるときは、エンジン及び他の車両コンポーネントが、過度に急速な負荷の変化によって損傷してしまう、というリスクが生じてしまう。同時に、車両がそのエンジン出力についてもはや意味なく開ループ制御又は閉ループ制御されてしまうことから、運転者、同乗者及び他の交通関与体の安全が脅かされる、というリスクが生じてしまう。このため、出力要求の値を有する軸に沿った圧縮によって、有利には、以下のような別の依存関係を生成することができる。即ち、この別の依存関係によれば、エンジン出力範囲の有効な部分が、まだ使用可能なアクセルペダル行程範囲によって制御され、このようにすることで例えば信頼性を伴って安全に一種の緊急動作モードとして、工場へ向かわせることができるようになる。この場合、エンジン出力範囲の達成可能な部分を、まだ使用可能なアクセルペダル行程範囲において、第1の依存関係に基づき得られる達成可能な出力範囲よりも、別の依存関係においては著しく大きなものとすることができる。
【0026】
斯かる「圧縮」という表現を、以下のように捉えることができる。即ち、第1の依存関係において出力要求の値が割り当てられているペダルポジション又はアクセルペダルの動作ポジションの同じ値について、別の依存関係においては、それよりも低減された又は比例して低減された出力要求の値が割り当てられる、と捉えることができる。一方の軸(例えばx軸)にペダルポジションを、これと直交する他方の軸(例えばy軸)に出力要求が記載されたグラフに、このような依存関係を書き込んだならば、このことは、出力要求の値を有する軸(例えばy軸)に沿った圧縮を行う、ということに相当する。斯かる圧縮を例えば、第1の依存関係に属する出力要求の値をそれぞれ比例係数bで乗算することによって、実現することができる。この場合、比例係数bを例えば1以下とすることができる。この比例係数を定数としてもよいし(線形的な圧縮)、又は、ここでもアクセルペダルの動作ポジションに依存させてもよい。
【0027】
本発明の1つの実施形態によれば、規定のイベントが発生してから別の依存関係を適用するまでの移行期間において、出力要求と動作ポジションとの少なくとも1つの過渡的な依存関係が適用される。これにより有利には、規定のイベントの検出後、急激に変更された依存関係に運転者が突然、直面するようなことがなくなる。従って、例えば、規定のイベントが検出されたときにアクセルペダルが第1のポジションにあるケースでは、車両の相応の加速に伴いエンジンの急激な出力増大が発生してしまうことを、回避することができる。斯かる状況が発生する可能性があるのは、以下のような場合である。即ち、アクセルペダルの第1のポジションについて例えば中程度の出力要求が、エンジンに課される又はエンジンのために求められる第1の依存関係から、第1のポジションにおいて例えば全負荷点が生じる別の依存関係に、急激に切り換えられる場合である。ここで提案される本発明の実施形態によれば、例えば数秒乃至数10秒、例えば少なくとも5秒、好ましくは少なくとも10秒、特に好ましくは少なくとも30秒にわたる少なくとも1つの移行期間において、エンジンに対する出力要求を求めるために少なくとも1つの過渡的な依存関係が適用される。少なくとも1つの過渡的な依存関係は、好ましくは、アクセルペダルポジション又は動作ポジションに従って本発明に係る方法により求められる出力要求の値に関して、第1の依存関係から別の依存関係へソフトな移行を実現することができるように構成されている。
【0028】
動作ポジションの値各々について、相前後して適用される2つの依存関係又は過渡的な依存関係に基づき、それらの動作ポジションに対して求められる各出力要求の相対的な差分を、最大で5%とし、特に最大で1%とすれば、有利には、既述の別の依存関係を適用するまで、アクセルペダルを操作したときにエンジン特性に急激な変化が発生せず、アクセルペダルポジションとエンジンに要求される出力要求との関係が、実質的に連続的かつ恒常的に変化するようになる。
【0029】
本発明の1つの実施形態によれば、アクセルペダルは、このアクセルペダルに作用するアクチュエータ部材が設けられたアクティブアクセルペダルとして構成されている。これにより有利には、アクチュエータ部材がブロックされ、アクセルペダル行程の達成可能な範囲を制限してしまう故障が発生したときに、それを簡単に受けとめることができ、その際に運転者は例えば少なくとも、このような故障が発生した車両を最寄りの工場まで運転していくことができる状態におかれる。
【0030】
本発明による1つの実施形態によれば、出力要求と動作ポジションとの依存関係を、ペダル特性曲線として記憶装置に記憶させておくことができ、この場合、ペダル特性曲線において、出力要求の値がペダルポジションの値に割り当てられている。これと同時に又は別の選択肢として、依存関係を特性マップとして記憶装置に記憶させておくこともでき、この場合、特性マップにおいて、出力要求の値がペダルポジションの値に割り当てられている。さらにこれと同時に又は別の選択肢として、依存関係を1つ又は複数の関数関係として記憶装置に記憶させておくこともでき、この場合、1つ又は複数の関数関係から、ペダルポジションの1つの値に対し出力要求の1つの値を計算又は決定又は算出することができる。このようにすることで有利には、例えば制御装置又は制御ユニットが、簡単かつ高速な手法で依存関係にアクセスできるようになる。
【0031】
第1の依存関係から別の依存関係への移行が、アクセルペダルを操作する側に明確になるよう、警告ランプ又は警告信号を設けることができる。さらに、以下のようにすることが考えられる。即ち、第1の依存関係から別の依存関係への移行を、アクセルペダルを操作する側の能動的な操作に従って行うようにすることができ、例えばこれをボタン、スイッチパネル、あるいは、一般的には触覚的又は音響的又は光学的な入力部材に従って行うようにすることができる。安全性を高めるために考えられるのは、別の依存関係の適用を、規定のイベント発生後にアクセルペダルがその初期ポジションに少なくとも一度は戻ったことを前提とすることである。また、規定された保持期間にわたりアクセルペダルがその初期ポジションに保持されるということも、規定のイベント発生後、本発明に係る方法によってエンジンに対する出力要求を求めるために別の依存関係を適用するための前提とすることができる。この場合、規定の保持期間は、例えば少なくとも3秒であり、好ましくは少なくとも5秒、さらに特に好ましくは少なくとも10秒である。
【0032】
本発明の2つめの観点によれば、エンジン、特に自動車のエンジンの出力制御装置が提案され、この出力制御装置において、上述の実施形態による方法が実施又は実行される。この出力制御装置によれば、例えばエンジンの全負荷点又はエンジンの少なくとも1つの負荷点の制御が実現され、この装置によって、エンジンに対し所望の出力要求を設定するアクセルペダルのペダル行程が制限されて、アクセルペダルの最終ポジションにもはや到達できないような状況においても、緊急動作が可能となる。
【0033】
このことは、出力制御装置が、初期ポジションと最終ポジションとの間を移動可能なアクセルペダルを含み、さらにアクセルペダルの動作ポジションを検出するセンサと、エンジンに対する出力要求を求める制御ユニットとを含むことによって達成される。この場合、出力要求を求める制御ユニットは、出力要求と動作ポジションとの第1の依存関係を、又は、出力要求と動作ポジションとの別の依存関係を適用する。その際、第1の依存関係又は別の依存関係は、規定のイベントの発生に従って適用され、これは上述の方法によって決定される。
【0034】
従来技術とは異なり、本発明に係る出力制御装置によれば、アクセルペダルの最終ポジションに到達できない若しくはもはや到達できない状況であっても、有利には少なくとも緊急動作が可能となり、又は、エンジンの全負荷に至るまでの動作も可能となる。これによって、運転者は、故障発生時に少なくとも工場まで運転していくことができるようになる。
【0035】
本発明の3つめの観点によれば、データ処理装置において実行されるときに、上述の実施形態のうちいずれか1つの実施形態による方法を実施するためのプログラムコードを含むコンピュータプログラム製品が提案される。これによって有利には、本発明に係る方法を広範囲にわたり自動化して、例えば制御ユニットにおいて実施することができるようになる。
【0036】
当業者であれば、例示的な実施形態の以下の説明に基づき添付の図面を参照しながら、本発明のその他の特徴及び利点を読み取ることができる。但し、それらの実施形態は、本発明を限定するものと解されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1a】自動車エンジンの出力制御装置を概略的に示す図。
図1b】出力要求と動作ポジションとの第1の依存関係をペダル特性曲線として示す図。
図2a】出力要求と動作ポジションとの第1の依存関係及び別の依存関係をペダル特性曲線として1つの共通のグラフに示す図。
図2b図2aによるグラフの第1の依存関係と別の依存関係との間に、複数の過渡的な依存関係を加えて示す図。
図3】別の依存関係について別の実施形態をペダル特性曲線として示す図。
【0038】
すべての図面は、本発明に係る方法、装置若しくはコンピュータプログラム製品、又は、それらの構成要素を、本発明の実施例に従って概略的に示したものにすぎない。特に間隔及び大きさの関係は、これらの図面では原寸通りには再現されていない。それぞれ異なる図面において、対応する要素には同じ参照符号が付されている。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1には、出力制御装置950をごく簡単に描いた図が示されている。出力制御装置950を例えば、エンジン910を備えた自動車900において使用することができ、このエンジン910を、例えば内燃機関及び/又は電動機として実装することができる。出力制御装置950を介して、例えば運転者の足140により操作される電子アクセルペダル100を用いることで、エンジン910の出力を開ループ制御及び/又は閉ループ制御することができる。この目的で、センサ200によりアクセルペダル100又はガスペダル100の動作ポジション(S)が検出され、アクセルペダル100の動作ポジション(S)に応じて、自動車900のエンジン910の出力が、開ループ制御及び/又は閉ループ制御される。エンジン910が内燃機関であるならば、例えばここには図示されていない絞り部材例えばスロットルバルブがアクチュエータによって動かされ、電動機であるならば、電動機に供給される電力がそれ相応に開ループ制御及び/又は閉ループ制御される。アクセルペダル100が初期ポジション(A)にある場合には、例えばアイドリング状態としてエンジン910に対し最小出力が要求される一方、アクセルペダル100が最終ポジション(E)にある場合には、エンジン910に対し例えば最大出力要求(Pmax)が要求され、これをエンジンの全負荷点に対応させることができる。このように自動車900は、電子ガスシステム又は電子アクセルペダルを有している。
【0040】
図示の実施形態の場合、アクセルペダル100は、支承部110の部位で回転軸112を中心にして、初期ポジション(A)と最終ポジション(E)との間で旋回可能に支承されている。例えばばね121として構成可能な弾性部材120によって、アクセルペダル100に対し初期ポジション(A)の方向で復帰力を加えることができる。この場合、ばね121は、ばね支承部124とアクセルペダル100とに取り付けられており、これによって復帰機構が形成される。例えばホールセンサ又は抵抗式ポテンショメータとして構成可能なセンサ200により、例えばアクセルペダル100の回転角130(α)として、アクセルペダル100の動作ポジション(S)が検出される。別の実施形態によれば、アクセルペダル100によって直線運動を発生させることもでき、例えばアクセルペダル100が移動した行程距離を検出するように、センサ200を構成することができる。アクセルペダル100の動作ポジション(S)についてセンサ200により検出されたデータは、図1aに略示されている信号ライン210を介して、制御ユニット500へ伝達される。制御ユニット500を例えば、自動車900の制御装置又は車載コンピュータとして構成することができる。この場合、制御ユニット500は、データ及び/又は機能を記憶するための図示されていない記憶装置と、図示されていないプロセッサとを有することができる。アクセルペダル100の動作ポジション(S)についてセンサ200により検出されたデータに従い、例えば記憶装置に記憶されている出力要求(PS)と動作ポジション(S)との第1の依存関係510を適用して、アクセルペダル100の動作ポジション(S)に応じて自動車900のエンジン910の出力が開ループ制御及び/又は閉ループ制御される。
【0041】
図1aの場合、アクセルペダル100は、実線で示されたその初期ポジション(A)の箇所で描かれている。アクセルペダル100は、その最終ポジション(E)については破線で描かれており、参照符号100bで表されている。初期ポジション(A)と最終ポジション(E)との間に位置するアクセルペダル100の動作ポジション(S)は、一点鎖線として描かれ、参照符号100aで表されている。最終ポジション(E)の場合、ばね121として構成された弾性部材120は、圧縮された形態として破線で描かれている。
【0042】
図示の実施例によれば、出力制御装置500のアクセルペダル100は、アクティブアクセルペダルとして構成されている。このため、アクセルペダル100の下方において足140とは反対側に、アクチュエータ部材300が設けられている。アクチュエータ部材300を例えばモータとして構成することができ、このモータは、伝達部材310を介して、アクセルペダル100において足140とは反対側に力を供給し、この力は弾性部材120の力に加えて作用する。この場合、アクチュエータ部材及び伝達部材310による力を、状況に応じて加えることができ、例えばこれを、現時点の走行状況(速度、加速度、先行車両との間隔等)及び/又はアクセルペダルの特定の動作ポジション(S)への到達に依存させることができる。
【0043】
動作中、以下のことが発生する可能性がある。即ち、アクチュエータ部材300がもはや制御不能となり、図示されていない特定のポジションでブロックされてしまい、そのようにブロックされたポジションにおいて伝達部材310により、アクセルペダル100を初期ポジション(A)と最終ポジション(E)との間の任意の動作ポジション(S)に到達できるようにすることが妨げられてしまう。このような状況では、例えば通常の力を費やしても、即ち、アクセルペダルの現時点のポジションのときに一般的に費やされる力によっても、最終ポジション(E)にはもはや到達できなくなる。この場合、最大の動作ポジション(S)として、初期ポジション(A)を起点として、初期ポジション(A)と最終ポジション(E)との間に位置する第1のポジション(B)までしか到達できない。このような状況は、当然ながら、アクティブアクセルペダルではない通常の電子アクセルペダル100の場合も、発生する可能性がある。このような状況又はこのように規定されたイベントを、例えばアクチュエータ部材300からエラー信号が送信されるようにして、例えば制御ユニット500によって検出することができる。よって、本発明に係る方法は、それ以降、エンジン910の出力制御のために、動作ポジション(S)と出力要求(PS)との別の依存関係550を適用しようというものである。このようにすることで、到達可能なアクセルペダル100の動作ポジション(S)の範囲が制限されたとしても、依然として、できるかぎり有効に又は完全に、エンジン出力を利用し尽くすことができるようになる。
【0044】
第1の依存関係510を例えば、出力要求(PS)の値が動作ポジション(S)の値に対応づけられたペダル特性曲線とすることができる。さらに第1の依存関係510を、出力要求(PS)の値が動作ポジション(S)又はペダルポジションの値に対応づけられた特性マップとすることができる。第1の依存関係510を、動作ポジション(S)又はペダルポジションの値から出力要求(PS)に対する値を算出可能な関数関係とすることができる。斯かる依存関係、例えば第1の依存関係510を、以下のようなグラフとして表すことができる。即ち、このグラフによれば、例えばx軸上には、ペダルポジション又はアクセルペダルの動作ポジション(S)の値が示されており、y軸上には、これらの値に割り当てられた出力要求(PS)の値が示されている。図1b乃至図3には、第1の依存関係510及び別の依存関係に関するこのようなグラフ形態の表現が描かれている。
【0045】
図1bには、第1の依存関係510がグラフで示されており、このグラフによれば、x軸上には、センサ200により検出された動作ポジション(S)又はペダルポジションが示されている。この場合、動作ポジション(S)は、原点に示された初期ポジション(A)と最終ポジション(E)との間にあるものとすることができる。アクセルペダルの実施形態によれば、動作ポジション(S)を、例えば回転角αとして角度の単位で測定することができ、又は、例えば行程距離sとして長さの単位例えばミリメートルで測定することができる。y軸上には、エンジン910に対して要求される出力PがNmの単位で示されており、又は、要求される回転トルクTがNmの単位で示されている。動作ポジション(S)各々に、出力要求(PS)が割り当てられている。動作ポジション(S)と出力要求(PS)との関係を、第1の依存関係510に関するペダル特性曲線の図示の実線に基づき、読み取ることができ又は求めることができる。アクセルペダルが最終ポジション(E)に達したときに、最大出力要求(Pmax)に到達する。この依存関係によれば、アクセルペダルポジションが上昇すると出力要求が上昇し、最終ポジション(E)のときに最大出力要求に到達する。
【0046】
図2aには、図1bによる第1の依存関係510と、規定のイベント発生後に本発明に係る方法により適用される別の依存関係550とが、単一のグラフに示されている。x軸上には、規定のイベント発生後もなお最大に達成可能なアクセルペダル100の第1のポジション(B)が示されている。図示されているグラフの場合、この別の依存関係550は、第1の依存関係510をx軸に沿って圧縮することで、第1の依存関係510から得られる。その際、初期ポジション(A)に関しては、第1の依存関係510と別の依存関係550の出力要求(P)の値は同じである。
【0047】
図示のグラフでは、仮想の動作ポジション(F)のときに最大出力要求(Pmax)に到達し、このケースでは、仮想の動作ポジション(F)は、第1のポジション(B)に対応している。従って、この図に示されている別の依存関係550によれば、初期ポジション(A)から第1のポジション(B)に至る到達可能なペダル行程内で、エンジン910の完全な出力範囲又は完全な出力要求を利用し尽くすことができる。図2aによれば、初期ポジション(A)と第1のポジション(B)との間に位置する動作ポジション(S)について、第1の依存関係510の場合に所定の出力要求(PS0)を求めることができる。これに対し、規定のイベント発生後に別の依存関係550を適用した場合には、同じ動作ポジション(S)について、これよりも大きい出力要求(PS5)の値となる。例えば、第1の依存関係510から、出力要求の各値についてペダルポジションの対応する値に比例係数aを乗算することによって、別の依存関係550を得ることができる。この場合、比例係数aを定数としてもよいし又は動作ポジション(S)に依存するものとしてもよい。例えば比例係数aを、次式から求めることができる。
a=SB/SE
但し、SBは、第1のポジション(B)と初期ポジション(A)とのポジション差に対応し、SEは、最終ポジション(E)と初期ポジション(A)とのポジション差に対応する。
【0048】
同様に、第1の依存関係510をy軸に沿って圧縮することによって、別の依存関係550を形成してもよい。あるいは、x軸とy軸とに沿った圧縮によって形成してもよく、その際、x軸に沿った圧縮とy軸に沿った圧縮とについて、例えばそれぞれ異なる圧縮係数又は比例定数を適用することができる。このようにすることで例えば、図2aのグラフにおいて、y軸に沿って付加的に圧縮した場合には、アクセルペダル100が第1のポジション(B)のときに最大出力要求(Pmax)が取り出されない、というようにすることができる。むしろ、その際に求められるのは、最大出力要求(Pmax)よりも低いが、それと同時にこの方法によって第1の依存関係510を適用したときに第1のポジション(B)について求められる出力要求よりも高い値である。
【0049】
図2bには、図2aに基づくグラフが新たに描かれている。但し、このグラフには、さらに具体例として4つの過渡的な依存関係512,514,516,518が書き込まれている。これらの過渡的な依存関係512,514,516,518は例えば、やはり第1の依存関係510をペダルポジション軸又はx軸に沿って徐々に圧縮していくことによって得られるものである。過渡的な依存関係512,514,516,518は、第1の依存関係510と別の依存関係550との間に位置している。この方法は、動作ポジション(S)からエンジン910に対する出力要求を求める目的で、第1の依存関係510と別の依存関係550との間において、規定のイベントが発生してから別の依存関係550が適用されるまでの移行期間Δt中、相前後して過渡的な依存関係512,514,516,518を適用することができる。この場合、過渡的な依存関係512,514,516,518各々について、最終ポジション(E)から別の依存関係550の仮想の動作ポジション(F)に向かって段階的に移動するそれぞれ1つの仮想の動作ポジション(F1,F2,F3,F4)に対する最大出力要求(Pmax)が設定される。これらの過渡的な依存関係512,514,516,518によって達成されるのは、第1の依存関係510から別の依存関係550への移行が急激に行われるのではなく、段階的な適応が行われることであり、これによって、運転者は、この方法の新たな状況に適合できるようになる。従って、第1のポジション(B)に相応する動作ポジションにおいて、ある依存関係からそのつど次の依存関係への移行時に、それぞれ出力要求の漸増による上昇が発生し、このような漸増による上昇は図2bにおいて、参照符号ΔP1,ΔP2,ΔP3,ΔP4及びΔP5が付されたy軸に沿った区間によって表されている。
【0050】
1つの固定的な動作ポジション(S)において、ある依存関係から次の依存関係へそのつど移行するときに生じるエンジンに対する出力要求の上昇は、以下で説明するようにして漸増により行われる。第1の依存関係510から第1の過渡的な依存関係512へ移行すると、固定的な動作ポジション(S)における出力要求はPS0からPS1へと上昇する。ついで、第1の過渡的な依存関係512から第2の過渡的な依存関係514へと移行すると、出力要求はPS2に上昇し、第2の過渡的な依存関係514から第3の過渡的な依存関係516へと移行すると、出力要求は値PS3に上昇し、さらに第3の過渡的な依存関係から第4の過渡的な依存関係518へと移行すると、出力要求はPS3からPS4に上昇する。最後に別の依存関係550が適用され、この別の依存関係550のときには、このグラフに例示された固定的な動作ポジション(S)に対し出力要求PS5が用いられる。
【0051】
好ましくはこれらの過渡的な依存関係は、以下のように互いに緊密に段階づけられる。即ち、初期ポジション(A)と第1のポジション(B)との間の固定的な動作ポジション(S)各々に対し、相前後する2つの依存関係の間で漸増する出力要求上昇率が、5%よりも大きくならないようにし、理想的な1%よりも大きくならないようにする。
【0052】
その際、第1の依存関係510から別の依存関係550までを適用する移行期間を、数秒乃至数10秒とすることができ、例えば30秒までとしてもよいし、又は、それどころか60秒までとしてもよい。なお、過渡的な依存関係の個数を第1のポジションの位置に応じて設定することができる。即ち、第1のポジション(B)が初期ポジション(A)に近づけば近づくほど、例えばいっそう多くの過渡的な依存関係を設けることができる。これらの過渡的な依存関係をそのつど所定の期間にわたり、例えば数ms乃至数10ms、具体例として10msから、数秒例えば5秒までの期間にわたり、適用することができ、その後、次の依存関係が適用される。
【0053】
図3には、別の依存関係550のさらに他の実施形態によるグラフが示されている。ここに示した別の依存関係550は、仮想の動作ポジション(F)のときに最大出力要求(Pmax)を有している。この場合、仮想の動作ポジション(F)は、アクセルペダル100が実際にまだ到達可能な第1のポジション(B)と最終ポジション(E)との間に位置している。別の依存関係550は、第1の依存関係510から、例えばx軸に沿った圧縮により得られる。この場合、ここに描かれている別の依存関係550は、アクセルペダル100が第1のポジション(B)のときに、最大で達成可能な出力要求(PSmax)を生じさせる結果となり、これは最大出力要求(Pmax)よりも低減されている。このようにすれば、仮想の動作ポジション(F)を導入することで、以下のような別の依存関係550を簡単に生成することができる。即ち、この別の依存関係550の場合、第1のポジション(B)のときに達成可能な最大出力要求(PSmax)は、最大出力要求(Pmax)よりも低減されているが、但し、第1の依存関係510の場合よりは大きい。これと同時にこのようにすれば、別の依存関係550を生成する目的で、y軸に沿った第1の依存関係510の(付加的な)圧縮を省くことができる。
【0054】
ここで提案した方法を、例えばコンピュータプログラム製品として制御ユニット500の記憶装置に記憶させておくことができ、制御ユニット500のプロセッサにおいて、様々な入力パラメータに応じて実行させることができる。
【0055】
ここで提案した方法乃至ここで提案した出力制御装置950は、一般的には出力要求を求めるために適用することができ、又は、電子アクセルペダル乃至電子ガスペダルが用いられる自動車におけるエンジンの開ループ制御若しくは閉ループ制御において適用することができる。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3