(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電解質層と前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極とをそれぞれ含み、前記燃料極に面する燃料室が形成された電気化学反応単位が前記第1の方向に3つ以上並べて配置された電気化学反応ブロックを備える電気化学反応セルスタックにおいて、
3つ以上の前記電気化学反応単位は、1つ以上の上流の電気化学反応単位と、2つ以上の下流の電気化学反応単位と、を含んでおり、
前記電気化学反応ブロックには、前記電気化学反応ブロックの外部から内部に燃料ガスを導入する導入ガス流路と、前記電気化学反応ブロックの内部から外部に燃料ガスを排出する排出ガス流路と、中継ガス流路とが形成されており、
前記上流の電気化学反応単位には、当該上流の電気化学反応単位に形成された上流の前記燃料室と前記導入ガス流路とを連通する上流の導入連通路と、前記上流の燃料室と前記中継ガス流路とを連通する上流の排出連通路と、が形成されており、
前記下流の電気化学反応単位には、当該下流の電気化学反応単位に形成された下流の前記燃料室と前記中継ガス流路とを連通する下流の導入連通路と、前記下流の燃料室と前記排出ガス流路とを連通する下流の排出連通路と、が形成されており、
2つ以上の前記下流の電気化学反応単位のそれぞれについて、前記下流の導入連通路と前記下流の排出連通路との合計体積は、前記上流の導入連通路と前記上流の排出連通路との合計体積より小さいことを特徴とする、電気化学反応セルスタック。
【発明を実施するための形態】
【0015】
A.第1の実施形態:
A−1.構成:
(燃料電池スタック100の構成)
図1から
図7は、本実施形態における燃料電池スタック100の構成を概略的に示す説明図である。
図1には、燃料電池スタック100の外観構成が示されており、
図2には、燃料電池スタック100の上側の平面構成が示されており、
図3には、燃料電池スタック100の下側の平面構成が示されており、
図4には、
図1から
図3のIV−IVの位置における燃料電池スタック100の断面構成が示されており、
図5には、
図1から
図3のV−Vの位置における燃料電池スタック100の断面構成が示されており、
図6には、
図1から
図3のVI−VIの位置における燃料電池スタック100の断面構成が示されており、
図7には、
図1から
図3のVII−VIIの位置における燃料電池スタック100の断面構成が示されている。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向と呼び、Z軸負方向を下方向と呼ぶものとするが、燃料電池スタック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。
図8以降についても同様である。
【0016】
燃料電池スタック100は、複数の(本実施形態では8つの)発電単位102と、熱交換部103と、一対のエンドプレート104,106とを備える。8つの発電単位102は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向)に並べて配置されている。ただし、8つの発電単位102の内、下から1つ目から6つ目までの6つの発電単位102は互いに隣接するように配置され、残りの上から1つ目および2つ目の2つの発電単位102も互いに隣接するように配置されている。上記6つの発電単位102と上記残りの2つの発電単位102との間に熱交換部103が配置されている。すなわち、熱交換部103は、8つの発電単位102と熱交換部103とから構成される集合体において上から3つ目の位置に配置されている。一対のエンドプレート104,106は、8つの発電単位102と熱交換部103とから構成される集合体を上下から挟むように配置されている。以下、上記6つの発電単位102を「第1の発電ブロック102G1」といい、上記残りの2つの発電単位102を「第2の発電ブロック102G2」という。また、8つの発電単位102の内、下から3つ目および4つ目の2つの発電単位102を「下流の発電単位102D」といい、残りの6つの発電単位102を「上流の発電単位102U」という。以下、8つの発電単位102について、下から順に、発電単位102−1、発電単位102−2、発電単位102−3、・・・といった枝番付きの符号を付すものとする(
図4から
図10参照)。なお、上記配列方向(上下方向)は、特許請求の範囲における第1の方向に相当し、上流の発電単位102Uは、特許請求の範囲における上流の電気化学反応単位に相当し、下流の発電単位102Dは、特許請求の範囲における下流の電気化学反応単位に相当する。また、第1の発電ブロック102G1は、特許請求の範囲における電気化学反応ブロックに相当する。
【0017】
燃料電池スタック100を構成する各層(発電単位102、熱交換部103、エンドプレート104,106)のZ方向回りの周縁部には、上下方向に貫通する複数の(本実施形態では8つの)孔が形成されており、各層に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、一方のエンドプレート104から他方のエンドプレート106にわたって上下方向に延びる連通孔108を構成している。以下の説明では、連通孔108を構成するために燃料電池スタック100の各層に形成された孔も、連通孔108と呼ぶ場合がある。
【0018】
各連通孔108には上下方向に延びるボルト22が挿入されており、ボルト22とボルト22の両側に嵌められたナット24とによって、燃料電池スタック100は締結されている。なお、
図4から
図7に示すように、ボルト22の一方の側(上側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の上端を構成するエンドプレート104の上側表面との間、および、ボルト22の他方の側(下側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の下端を構成するエンドプレート106の下側表面との間には、絶縁シート26が介在している。ただし、後述のガス通路部材27が設けられた箇所では、ナット24とエンドプレート106の表面との間に、ガス通路部材27とガス通路部材27の上側および下側のそれぞれに配置された絶縁シート26とが介在している。絶縁シート26は、例えばマイカシートや、セラミック繊維シート、セラミック圧粉シート、ガラスシート、ガラスセラミック複合剤等により構成される。
【0019】
各ボルト22の軸部の外径は各連通孔108の内径より小さい。そのため、各ボルト22の軸部の外周面と各連通孔108の内周面との間には、空間が確保されている。
図2から
図5に示すように、燃料電池スタック100のZ方向回りの外周における1つの頂点(Y軸負方向側およびX軸負方向側の頂点)付近に位置するボルト22(ボルト22A)と、そのボルト22Aが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から酸化剤ガスOGが導入されるガス流路である酸化剤ガス導入マニホールド161として機能し、燃料電池スタック100のZ方向回りの外周における1つの辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22C)と、そのボルト22Cが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、熱交換部103から排出された酸化剤ガスOGを各発電単位102に向けて運ぶガス流路である酸化剤ガス供給マニホールド163として機能する。また、
図2、
図3および
図5に示すように、燃料電池スタック100のZ方向回りの外周における1つの辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22B)と、そのボルト22Bが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102から排出された酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する。なお、本実施形態では、酸化剤ガスOGとして、例えば空気が使用される。
【0020】
また、
図2、
図3および
図6に示すように、燃料電池スタック100のZ方向回りの外周における1つの頂点(X軸正方向側およびY軸負方向側の頂点)付近に位置するボルト22(ボルト22F)と、そのボルト22Fが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から燃料ガスFGが導入され、その燃料ガスFGを上流の各発電単位102Uに供給する燃料ガス導入マニホールド171として機能し、燃料電池スタック100のZ方向回りの外周における1つの辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22D)と、そのボルト22Dが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、上流の各発電単位102Uの燃料室176から排出されたガスである燃料中間ガスFMGを、下流の各発電単位102Dに向けて運ぶガス流路である燃料ガス中継マニホールド172として機能する。燃料中間ガスFMGには、上流の各発電単位102Uの燃料室176において発電反応に利用されなかった水素等が含まれる。
図2、
図3および
図7に示すように、燃料電池スタック100のZ方向回りの外周における1つの辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22E)と、そのボルト22Eが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、下流の各発電単位102Dの燃料室176から排出されたガスである燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する燃料ガス排出マニホールド173として機能する。なお、本実施形態では、燃料ガスFGとして、例えば都市ガスを改質した水素リッチなガスが使用される。また、燃料ガス導入マニホールド171は、特許請求の範囲における導入ガス流路に相当し、燃料ガス中継マニホールド172は、特許請求の範囲における中継ガス流路に相当する。燃料ガス排出マニホールド173は、特許請求の範囲における排出ガス流路に相当する。
【0021】
図4から
図7に示すように、燃料電池スタック100には、4つのガス通路部材27が設けられている。各ガス通路部材27は、中空筒状の本体部28と、本体部28の側面から分岐した中空筒状の分岐部29とを有している。分岐部29の孔は本体部28の孔と連通している。各ガス通路部材27の分岐部29には、ガス配管(図示せず)が接続される。また、
図4に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161を形成するボルト22Aの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス導入マニホールド161に連通しており、
図5に示すように、酸化剤ガス排出マニホールド162を形成するボルト22Bの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス排出マニホールド162に連通している。また、
図6に示すように、燃料ガス導入マニホールド171を形成するボルト22Fの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス導入マニホールド171に連通しており、
図7に示すように、燃料ガス排出マニホールド173を形成するボルト22Eの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス排出マニホールド173に連通している。
【0022】
(エンドプレート104,106の構成)
一対のエンドプレート104,106は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばステンレスにより形成されている。一方のエンドプレート104は、最も上に位置する発電単位102の上側に配置され、他方のエンドプレート106は、最も下に位置する発電単位102の下側に配置されている。一対のエンドプレート104,106によって複数の発電単位102が押圧された状態で挟持されている。上側のエンドプレート104は、燃料電池スタック100のプラス側の出力端子として機能し、下側のエンドプレート106は、燃料電池スタック100のマイナス側の出力端子として機能する。
【0023】
(発電単位102の構成)
図8から
図13は、発電単位102の詳細構成を示す説明図である。
図8には、
図5に示す断面と同一の位置における互いに隣接する下流の1つの発電単位102Dと上流の1つの発電単位102UとのXZ断面構成が示されており、
図9には、
図6に示す断面と同一の位置における互いに隣接する上流の2つの発電単位102UのYZ断面構成が示されており、
図10には、
図7に示す断面と同一の位置における互いに隣接する下流の2つの発電単位102DのYZ断面構成が示されている。また、
図11には、
図8のXI−XIの位置における発電単位102のXY断面構成が示されており、
図12には、
図8のXII−XIIの位置における上流の発電単位102UのXY断面構成が示されており、
図13には、
図8のXIII−XIIIの位置における下流の発電単位102DのXY断面構成が示されている。
【0024】
図8から
図10に示すように、発電の最小単位である発電単位102は、単セル110と、セパレータ120と、空気極側フレーム130と、空気極側集電体134と、燃料極側フレーム140と、燃料極側集電体144と、発電単位102の最上層および最下層を構成する一対のインターコネクタ150とを備えている。セパレータ120、空気極側フレーム130、燃料極側フレーム140、インターコネクタ150におけるZ方向回りの周縁部には、上述したボルト22が挿入される連通孔108に対応する孔が形成されている。
【0025】
インターコネクタ150は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばフェライト系ステンレスにより形成されている。インターコネクタ150は、発電単位102間の電気的導通を確保すると共に、発電単位102間での反応ガスの混合を防止する。なお、本実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合、1つのインターコネクタ150は、隣接する2つの発電単位102に共有されている。すなわち、ある発電単位102における上側のインターコネクタ150は、その発電単位102の上側に隣接する他の発電単位102における下側のインターコネクタ150と同一部材である。また、燃料電池スタック100は一対のエンドプレート104,106を備えているため、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えておらず、最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていない(
図4から
図7参照)。
【0026】
単セル110は、電解質層112と、電解質層112を挟んで上下方向(発電単位102が並ぶ配列方向)に互いに対向する空気極(カソード)114および燃料極(アノード)116とを備える。なお、本実施形態の単セル110は、燃料極116で電解質層112および空気極114を支持する燃料極支持形の単セルである。
【0027】
電解質層112は、略矩形の平板形状部材であり、少なくともZrを含んでおり、例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)、CaSZ(カルシア安定化ジルコニア)等の固体酸化物により形成されている。空気極114は、略矩形の平板形状部材であり、例えば、ペロブスカイト型酸化物(例えばLSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物)、LSM(ランタンストロンチウムマンガン酸化物)、LNF(ランタンニッケル鉄))により形成されている。燃料極116は、略矩形の平板形状部材であり、例えば、Ni(ニッケル)、Niとセラミック粒子からなるサーメット、Ni基合金等により形成されている。このように、本実施形態の単セル110(発電単位102)は、電解質として固体酸化物を用いる固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。
【0028】
セパレータ120は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔121が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。セパレータ120における孔121の周囲部分は、電解質層112における空気極114の側の表面の周縁部に対向している。セパレータ120は、その対向した部分に配置されたロウ材(例えばAgロウ)により形成された接合部124により、電解質層112(単セル110)と接合されている。セパレータ120により、空気極114に面する空気室166と燃料極116に面する燃料室176とが区画され、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリークが抑制される。なお、セパレータ120が接合された単セル110をセパレータ付き単セルともいう。
【0029】
空気極側フレーム130は、
図8から
図11に示すように、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔131が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、マイカ等の絶縁体により形成されている。空気極側フレーム130は、セパレータ120における電解質層112に対向する側とは反対側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面の周縁部とに接触している。空気極側フレーム130の孔131は、空気極114に面する空気室166を構成する。また、空気極側フレーム130によって、発電単位102に含まれる一対のインターコネクタ150間が電気的に絶縁される。また、空気極側フレーム130には、酸化剤ガス導入マニホールド161と空気室166とを連通する酸化剤ガス供給連通孔132と、空気室166と酸化剤ガス排出マニホールド162とを連通する酸化剤ガス排出連通孔133とが形成されている。
【0030】
燃料極側フレーム140は、
図8から
図10、
図12および
図13に示すように、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔141が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。燃料極側フレーム140の孔141は、燃料極116に面する燃料室176を構成する。燃料極側フレーム140は、セパレータ120における電解質層112に対向する側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面の周縁部とに接触している。
図9および
図12に示すように、上流の各発電単位102Uの燃料極側フレーム140には、燃料ガス導入マニホールド171と燃料室176とを連通する燃料ガス供給連通孔142Uと、燃料室176と燃料ガス中継マニホールド172とを連通する燃料ガス排出連通孔143Uとが形成されている。
図10および
図13に示すように、下流の各発電単位102Dの燃料極側フレーム140には、燃料ガス中継マニホールド172と燃料室176とを連通する燃料ガス供給連通孔142Dと、燃料室176と燃料ガス排出マニホールド173とを連通する燃料ガス排出連通孔143Dとが形成されている。なお、燃料ガス供給連通孔142Uは、特許請求の範囲における上流の導入連通路に相当し、燃料ガス排出連通孔143Uは、特許請求の範囲における上流の排出連通路に相当する。燃料ガス供給連通孔142Dは、特許請求の範囲における下流の導入連通路に相当し、燃料ガス排出連通孔143Dは、特許請求の範囲における下流の排出連通路に相当する。
【0031】
空気極側集電体134は、
図8から
図11に示すように、空気室166内に配置されている。空気極側集電体134は、所定の間隔をあけて並べられた複数の略四角柱状の導電性部材から構成されており、例えば、フェライト系ステンレスにより形成されている。空気極側集電体134は、空気極114における電解質層112に対向する側とは反対側の表面と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面とに接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えていないため、当該発電単位102における空気極側集電体134は、上側のエンドプレート104に接触している。空気極側集電体134は、このような構成であるため、空気極114とインターコネクタ150(またはエンドプレート104)とを電気的に接続する。なお、空気極側集電体134とインターコネクタ150とが一体の部材として形成されていてもよい。
【0032】
燃料極側集電体144は、
図8から
図10、
図12および
図13に示すように、燃料室176内に配置されている。燃料極側集電体144は、インターコネクタ対向部146と、複数の電極対向部145と、各電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ連接部147とを備えており、例えば、ニッケルやニッケル合金、ステンレス等により形成されている。各電極対向部145は、燃料極116における電解質層112に対向する側とは反対側の表面に接触しており、インターコネクタ対向部146は、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面に接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていないため、当該発電単位102におけるインターコネクタ対向部146は、下側のエンドプレート106に接触している。燃料極側集電体144は、このような構成であるため、燃料極116とインターコネクタ150(またはエンドプレート106)とを電気的に接続する。なお、電極対向部145とインターコネクタ対向部146との間には、例えばマイカにより形成されたスペーサー149が配置されている。そのため、燃料極側集電体144が温度サイクルや反応ガス圧力変動による発電単位102の変形に追随し、燃料極側集電体144を介した燃料極116とインターコネクタ150(またはエンドプレート106)との電気的接続が良好に維持される。
【0033】
(熱交換部103の構成)
図14には、配列方向に直交する方向における熱交換部103の断面構成が示されている。
図4から
図7および
図14に示すように、熱交換部103は、矩形の平板形状部材であり、例えば、フェライト系ステンレスにより形成されている。熱交換部103の中央付近には、上下方向に貫通する孔182が形成されている。また、熱交換部103には、中央の孔182と酸化剤ガス導入マニホールド161を形成する連通孔108とを連通する連通孔184と、中央の孔182と酸化剤ガス供給マニホールド163を形成する連通孔108とを連通する連通孔186とが形成されている。熱交換部103は、熱交換部103の上側に隣接する発電単位102(102−7)に含まれる下側のインターコネクタ150と、熱交換部103の下側に隣接する発電単位102(102−6)に含まれる上側のインターコネクタ150とに挟持されている。これらのインターコネクタ150間において、孔182と連通孔184と連通孔186とにより形成される空間は、後述する熱交換のために酸化剤ガスOGを流す熱交換流路188として機能する。
【0034】
A−2.燃料電池スタック100の動作:
図4に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して酸化剤ガスOGが供給されると、酸化剤ガスOGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して酸化剤ガス導入マニホールド161に供給される。酸化剤ガス導入マニホールド161に供給された酸化剤ガスOGは、
図4および
図14に示すように、熱交換部103内に形成された熱交換流路188内に流入し、熱交換流路188を通って酸化剤ガス供給マニホールド163へと排出される。熱交換部103は、上側および下側について発電単位102に隣接している。また、後述するように、発電単位102における発電反応は発熱反応である。そのため、酸化剤ガスOGが熱交換部103内の熱交換流路188を通過する際に、酸化剤ガスOGと発電単位102との間で熱交換が行われ、酸化剤ガスOGの温度が上昇する。なお、酸化剤ガス導入マニホールド161は、各発電単位102の空気室166には連通していないため、酸化剤ガス導入マニホールド161から各発電単位102の空気室166に酸化剤ガスOGが供給されることはない。酸化剤ガス供給マニホールド163へと排出された酸化剤ガスOGは、
図4、
図5、
図8および
図11に示すように、酸化剤ガス供給マニホールド163から各発電単位102の酸化剤ガス供給連通孔132を介して、空気室166に供給される。
【0035】
また、
図6、
図9および
図12に示すように、燃料ガス導入マニホールド171の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料ガスFGが供給されると、燃料ガスFGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して燃料ガス導入マニホールド171に供給され、燃料ガス導入マニホールド171から上流の各発電単位102Uの燃料ガス供給連通孔142Uを介して、上流の各発電単位102Uの燃料室176に供給される。なお、燃料ガス導入マニホールド171は、下流の各発電単位102Dの燃料室176には連通していないため、燃料ガス導入マニホールド171から下流の各発電単位102Dの燃料室176に燃料ガスFGが供給されることはない。上流の各発電単位102Uの燃料室176から排出された燃料中間ガスFMGは、燃料ガス排出連通孔143Uを介して燃料ガス中継マニホールド172に排出される。
図7、
図10および
図13に示すように、下流の各発電単位102Dの燃料室176には、この上流の各発電単位102Uから排出された燃料中間ガスFMGが、燃料ガス中継マニホールド172、および、下流の各発電単位102Dの燃料ガス供給連通孔142Dを介して供給される。
【0036】
上流の各発電単位102Uの空気室166に酸化剤ガスOGが供給され、上流の各発電単位102Uの燃料室176に燃料ガスFGが供給されると、上流の各発電単位102Uの単セル110において酸化剤ガスOGおよび燃料ガスFGの電気化学反応による発電が行われる。また、下流の各発電単位102Dの空気室166に酸化剤ガスOGが供給され、下流の各発電単位102Dの燃料室176に燃料中間ガスFMGが供給されると、下流の各発電単位102Dの単セル110において酸化剤ガスOGおよび燃料中間ガスFMGの電気化学反応による発電が行われる。これらの発電反応は発熱反応である。各発電単位102において、単セル110の空気極114は空気極側集電体134を介して一方のインターコネクタ150に電気的に接続され、燃料極116は燃料極側集電体144を介して他方のインターコネクタ150に電気的に接続されている。また、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102は、熱交換部103を介しているものの、電気的に直列に接続されている。そのため、燃料電池スタック100の出力端子として機能するエンドプレート104,106から、各発電単位102において生成された電気エネルギーが取り出される。なお、SOFCは、比較的高温(例えば700℃から1000℃)で発電が行われることから、起動後、発電により発生する熱で高温が維持できる状態になるまで、燃料電池スタック100が加熱器(図示せず)により加熱されてもよい。
【0037】
図5、
図8および
図11に示すように、下流および上流の各発電単位102U,102Dの空気室166から排出された酸化剤オフガスOOGは、酸化剤ガス排出連通孔133を介して酸化剤ガス排出マニホールド162に排出され、さらに酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。また、
図7、
図10および
図13に示すように、下流の各発電単位102Dの燃料室176から排出された燃料オフガスFOGは、燃料ガス排出連通孔143Dを介して燃料ガス排出マニホールド173に排出され、さらに燃料ガス排出マニホールド173の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示しない)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。このように、燃料電池スタック100の燃料ガスFGの流路構成は、外部から導入された燃料ガスFGが、上流の複数の発電単位102に並列に供給され、上流の各発電単位102Uから排出された燃料中間ガスFMGが、燃料ガス中継マニホールド172を介して、下流の複数の発電単位102Dに並列に供給される、いわゆる並直列型になっている。
【0038】
A−3.吸熱部材(熱交換部103、エンドプレート104,106)について:
熱交換部103とエンドプレート104,106とは、隣接する各発電ブロック102G1,102G2が発した熱を吸収する吸熱部材である。具体的には、上述したように、熱交換部103は、第1の発電ブロック102G1と第2の発電ブロック102G2とに隣接しており、酸化剤ガスOGが熱交換部103の熱交換流路188を通過する際に、酸化剤ガスOGと発電単位102との間で熱交換が行われ、酸化剤ガスOGの温度が上昇する。熱交換部103内を通過する酸化剤ガスOGの温度が、発電単位102との熱交換により上昇することは、熱交換部103が、少なくとも、当該熱交換部103に隣接する各発電単位102−6,7(各発電ブロック102G1,102G2)が発した熱を吸収していることを意味する。また、各エンドプレート104,106は、一方の面だけが発電単位102に隣接しており、他方の面は発電単位102に隣接していない。すなわち、各エンドプレート104,106の一方の面は、発電ブロック102G1,102G2の発電反応により相対的に温度が高くなっている高温環境下に面しており、他方の面は、当該高温環境下に面しておらず、各発電ブロック102G1,102G2よりも相対的に温度が低い低温環境下(例えば外気)に面している。このため、各エンドプレート104,106に隣接する発電ブロック102G1,102G2と外気との間で熱交換が行われ、各エンドプレート104,106に隣接する発電単位102の温度が若干低下する。このことは、エンドプレート104,106が、当該エンドプレート104,106に隣接する各発電単位102−1,8(各発電ブロック102G1,102G2)が発した熱を吸収していることを意味する。なお、熱交換部103とエンドプレート104,106とは、総じて第1の吸熱部材、第2の吸熱部材と呼ぶことがあり、熱交換部103は、熱交換部材と呼ぶこともある。
【0039】
A−4.発電単位102と吸熱部材との位置関係について:
燃料電池スタック100では、下流の発電単位102Dは、上流の発電単位102Uを介して吸熱部材から離間した位置に配置されている。具体的には、第1の発電ブロック102G1において、互いに隣接する2つの下流の発電単位102D(102−3,4)の内、熱交換部103に最も近い位置に配置されている下流の発電単位102D(102−4)と、熱交換部103との間には、2つの上流の発電単位102U(120−5,6)が配置されている。また、エンドプレート106に最も近い位置に配置されている下流の発電単位102D(102−3)と、エンドプレート106との間にも、2つの上流の発電単位102U(102−1,2)が配置されている。なお、第2の発電ブロック102G1には、下流の発電単位102Dは含まれておらず、上流の発電単位102U(120−7,8)のみが含まれている。
【0040】
A−5.燃料室176の導入連通路と排出連通路との合計体積について:
本実施形態では、各下流の発電単位102Dのそれぞれについて、燃料ガス供給連通孔142D(下流の導入連通路)と燃料ガス排出連通孔143D(下流の排出連通路)との合計体積(以下、「下流の連通体積」という)は、上流の発電単位102Uにおける燃料ガス供給連通孔142U(上流の導入連通路)と燃料ガス排出連通孔143U(上流の排出連通路)との合計体積(以下、「上流の連通体積」という)より小さい。具体的には、燃料ガス供給連通孔142Dおよび燃料ガス排出連通孔143Dの開口面積(または、単セル110に平行な幅寸法)が、燃料ガス供給連通孔142Uおよび燃料ガス排出連通孔143Uの開口面積より小さい。また、燃料ガス供給連通孔142Dおよび燃料ガス排出連通孔143Dのガスの流れ方向に沿った長さが、燃料ガス供給連通孔142Uおよび燃料ガス排出連通孔143Uのガスの流れ方向に沿った長さより短くてもよい。
【0041】
ここで、各発電単位102における燃料ガス供給連通孔142と燃料ガス排出連通孔143との合計体積(連通体積)が小さいほど、各発電単位102における燃料ガスFGの圧力損失が大きくなる。その一方で、各発電単位102における連通体積が小さいほど、各発電単位102における燃料利用率の低下率が小さくなる分だけ、複数の発電単位102間における燃料利用率の差が小さくなる傾向がある。そこで、本実施形態によれば、各下流の発電単位102Dのそれぞれにおける下流の連通体積は、いずれの上流の発電単位102Uにおける上流の連通体積より小さい。これにより、上流の発電単位102Uへの十分な燃料ガスFGの供給を確保しつつ、下流の発電単位102Dにおける燃料ガスFGの圧力損失の差による燃料枯れを抑制することによって、燃料電池スタック100全体としての性能低下を抑制することができる。すなわち、下流の発電単位102Dにおいて燃料枯れに起因した局所的な発電反応が起きることによってセル面内の温度分布がばらつき、温度分布のバラツキにより生じる熱応力によって単セル110に割れが生じるなどの問題が生じることを抑制することができる。
【0042】
また、
図15は、燃料利用率の低下率ΔUf(%)と下流の発電単位102の圧力損失(kPa)との関係を示す説明図であり、
図16は、下流の連通体積(mm
3)と下流の発電単位102の圧力損失との関係を示す説明図であり、
図17は、燃料利用率の低下率と下流の連通体積との関係を示す説明図である。
図15に示すように、下流の発電単位102Dの圧力損失が大きくなるほど燃料利用率の低下率が小さくなっていくことがわかる。さらに、下流の発電単位102Dの圧力損失が1(kPa)付近で燃料利用率の低下率はほぼ一定になる。また、
図16に示すように、下流の連通体積を小さくすることで、下流の発電単位102Dの圧力損失を大きくすることができる。さらに、
図17に示すように、下流の連通体積を小さくすることで、燃料利用率の低下率が小さくなっていくことがわかる。また、下流の連通体積が60(mm
3)付近で燃料利用率の低下率はほぼ一定になる。したがって、上述のように、各下流の発電単位102Dのそれぞれにおける下流の連通体積を、いずれの上流の発電単位102Uにおける上流の連通体積より小さくすることで、燃料利用率の低下率が抑制されるため、下流の発電単位102Dにおける燃料枯れを抑制することができる。具体的には、下流の連通体積が60(mm
3)より大きい場合には、上述したように、下流の発電単位102の圧力損失が小さくなり、燃料利用率の低下率が大きくなる。しかし、下流の連通体積が60(mm
3)以下である場合には、下流の連通体積が小さいほど、下流の発電単位102の圧力損失が大きくなるものの(
図16参照)、下流の連通体積の大小に関係なく、燃料利用率の低下率はほぼ一定になる(
図17参照)。このことは、複数の発電単位102Dのそれぞれの下流の連通体積が60(mm
3)以下である場合、複数の発電単位102Dにおける燃料利用率が略均一になるため、一部の下流の発電単位102Dに燃料枯れが生じる可能性が低いことを意味する。そこで、本実施形態では、下流の連通体積は、60(mm
3)以下であることが好ましい。また、下流の連通体積は、50(mm
3)以下であることがより好ましく、40(mm
3)以下であることがさらに好ましい。これにより、複数の発電単位102Dにおける燃料利用率の差が抑制されることによって、燃料電池スタック100全体としての性能低下を、より確実に抑制することができる。なお、
図15中の「燃料利用率の低下率ΔUf(%)」は、複数の下流の発電単位102Dの中で、最も高い燃料利用率の発電単位102Dと最も低い燃料利用率の発電単位102Dとの燃料利用率の差である。
【0043】
加えて、上述したように、下流の各発電単位102Dの燃料室176には、上流の各発電単位102Uから排出された燃料中間ガスFMGが、燃料ガス中継マニホールド172を介して供給される。このため、下流の各発電単位102Dの燃料室176に供給される燃料ガスFGの水素濃度は、上流の各発電単位102Uの燃料室176に供給される燃料ガスFGの水素濃度に比べて低い。ここで、仮に、下流の各発電単位102Dが吸熱部材に隣接するように配置された場合、下流の各発電単位102Dでは、燃料ガスFGの水素濃度が低いことに加えて、下流の各発電単位102Dの温度が低下することによって、発電反応が起こりにくくなり、発電性能が低下するおそれがある。
【0044】
これに対して、本実施形態では、下流の発電単位102Dは、上流の発電単位102Uを介して吸熱部材から離間した位置に配置されている。このため、下流の発電単位102Dが吸熱部材に隣接している場合に比べて、吸熱部材の吸熱による下流の発電単位102Dの温度低下が抑制されることによって、下流の各発電単位102Dの発電性能の低下を抑制することができる。一方、吸熱部材に隣接する上流の発電単位102Uの温度は、吸熱部材の吸熱によって低下する。しかし、上流の各発電単位102Uでは、下流の各発電単位102Dに比べて、燃料室176に供給される燃料ガスFGの水素濃度が高いため、発電反応が多く起こり、発熱量が多い。このため、上流の各発電単位102Uでは、下流の各発電単位102Dに比べて、吸熱部材の吸熱が発電性能に与える影響が小さい。以上により、本実施形態によれば、第1の発電ブロック102G1(燃料電池スタック100)全体として発電性能の低下を抑制することができる。
【0045】
しかも、本実施形態では、下流の発電単位102Dと吸熱部材との間には2つの上流の発電単位102Uが配置されているため、下流の発電単位102Dと吸熱部材との間に2つ未満の上流の発電単位102Uが配置された場合に比べて、下流の発電単位102Dの発電性能の低下がより確実に抑えられ、その結果、第1の発電ブロック102G1(燃料電池スタック100)全体として発電性能の低下を効果的に抑制することができる。
【0046】
B.第2の実施形態:
図18は、第2の実施形態の燃料電池スタック100Bにおける発電単位102と熱交換部103とエンドプレート104,106との位置関係を示す説明図である。
図18では、発電単位102の構成が簡略化されているとともに、燃料ガス導入マニホールド171、燃料ガス中継マニホールド172および燃料ガス排出マニホールド173が点線で示されている。第2の実施形態の燃料電池スタック100Bの構成の内、上述した第1の実施形態の燃料電池スタック100と同一の構成については、同一符号を付すことによって、その説明を省略する。
【0047】
図18に示すように、燃料電池スタック100Bは、45つの発電単位102(102−1〜45)と、3つの熱交換部103(103−1〜3)と、一対のエンドプレート104,106とを備える。45つの発電単位102は、第1の発電ブロック102G1と、第2の発電ブロック102G2と、第3の発電ブロック102G3と、第4の発電ブロック102G4とを含む。
【0048】
(第1の発電ブロック102G1について)
第1の発電ブロック102G1は、エンドプレート106と第1の熱交換部103−1との間に配置されている。第1の発電ブロック102G1は、上下方向に互いに隣接するように配置された13つの発電単位102(102−1〜13)を有している。13つの発電単位102の内、下から2つ目から11つ目までの10つの発電単位102−2〜11が、下流の発電単位102Dである。以下、10つの下流の発電単位102Dを、「第1の下流発電単位群102DG1」という。この第1の下流発電単位群102DG1とエンドプレート106との間に位置する1つの発電単位102−1と、第1の下流発電単位群102DG1と第1の熱交換部103−1との間に位置する2つの発電単位102−12,13とが、上流の発電単位102Uである。すなわち、第1の下流発電単位群102DG1は、1つの上流の発電単位102Uを介して、吸熱部材であるエンドプレート106から離間して配置されており、また、2つの上流の発電単位102Uを介して、吸熱部材である第1の熱交換部103−1から離間して配置されている。さらに、第1の発電ブロック102G1における各下流の発電単位102Dのそれぞれについて、燃料ガス供給連通孔142Dと燃料ガス排出連通孔143Dとの合計体積(下流の連通体積)は、上流の発電単位102Uにおける燃料ガス供給連通孔142Uと燃料ガス排出連通孔143Uとの合計体積(上流の連通体積)より小さい。このため、複数の発電単位102Dにおける燃料利用率の差が抑制されることによって、燃料電池スタック100全体としての性能低下を、より確実に抑制することができる。加えて、下流の発電単位102Dが吸熱部材に隣接している場合に比べて、吸熱部材の吸熱による下流の発電単位102Dの温度低下が抑制されることによって、下流の各発電単位102Dの発電性能の低下を抑制することができる。
【0049】
ここで、発電単位102は、燃料ガス排出マニホールド173に連通する排出孔173Aに近い位置に配置されているほど、当該発電単位102に形成された燃料室176から燃料ガスFGが排出され易く、これに伴って、燃料室176に燃料ガスFGが供給され易くなる。本実施形態では、第1の発電ブロック102G1の上下方向の中央位置(発電単位102−7の位置)と第1の発電ブロック102G1の下端との間である下側領域には、5つの下流の発電単位102D(102−2〜6)が配置されている。また、第1の発電ブロック102G1の上下方向の中央位置と第1の発電ブロック102G1の上端との間である上側領域には、4つの下流の発電単位102D(102−8〜11)が配置されている。すなわち、燃料ガス排出マニホールド173において、排出孔173Aに近い下側領域に配置された下流の発電単位102Dの数(以下、「排出孔側発電単位数」という)が、排出孔173Aから遠い上側領域に配置された下流の発電単位102Dの数(以下、「反対側発電単位数」という)より多い。これにより、排出孔側発電単位数が反対側発電単位数より少ない場合に比べて、燃料枯れが抑制されることによって、燃料電池スタック100B全体としての性能低下を、より確実に抑制することができる。
【0050】
(第2の発電ブロック102G2について)
第2の発電ブロック102G2は、第1の熱交換部103−1と第2の熱交換部103−2との間に配置されている。第2の発電ブロック102G2は、上下方向に互いに隣接するように配置された10つの発電単位102(102−14〜23)を有している。10つの発電単位102の内、下から3つ目から8つ目までの6つの発電単位102−16〜21が、下流の発電単位102Dである。以下、6つの下流の発電単位102Dを、「第2の下流発電単位群102DG2」という。この第2の下流発電単位群102DG2と第1の熱交換部103−1との間に位置する2つの発電単位102−14,15と、第2の下流発電単位群102DG2と第2の熱交換部103−2との間に位置する2つの発電単位102−22,23とが、上流の発電単位102Uである。すなわち、第2の下流発電単位群102DG2は、2つの上流の発電単位102Uを介して、吸熱部材である第1の熱交換部103−1および第2の熱交換部103−2のそれぞれから離間して配置されている。また、第2の発電ブロック102G2における各下流の発電単位102Dのそれぞれについて、下流の連通体積は、上流の連通体積より小さい。このため、第2の発電ブロック102G2においても、複数の発電単位102Dにおける燃料利用率の差が抑制されることによって、燃料電池スタック100全体としての性能低下を、より確実に抑制することができる。加えて、下流の発電単位102Dが吸熱部材に隣接している場合に比べて、吸熱部材の吸熱による下流の発電単位102Dの温度低下が抑制されることによって、下流の各発電単位102Dの発電性能の低下を抑制することができる。
【0051】
(第3の発電ブロック102G3について)
第3の発電ブロック102G3は、第2の熱交換部103−2と第3の熱交換部103−3との間に配置されている。第3の発電ブロック102G3は、上下方向に互いに隣接するように配置された11つの発電単位102(102−24〜34)を有している。11つの発電単位102の全てが、上流の発電単位102Uである。
【0052】
(第4の発電ブロック102G4について)
第4の発電ブロック102G4は、第3の熱交換部103−3とエンドプレート104との間に配置されている。第4の発電ブロック102G4は、上下方向に互いに隣接するように配置された11つの発電単位102(102−35〜45)を有している。11つの発電単位102の全てが、上流の発電単位102Uである。
【0053】
(第1の下流発電単位群102DG1と第2の下流発電単位群102DG2とについて)
第1の下流発電単位群102DG1に含まれる発電単位102Dの数は10つであり、第2の下流発電単位群102DG2に含まれる発電単位102Dの数は6つである。また、第1の下流発電単位群102DG1は、第2の下流発電単位群102DG2よりも、燃料ガス排出マニホールド173において排出孔173Aに近い位置に配置されている。すなわち、第1の下流発電単位群102DG1は、第2の下流発電単位群102DG2に比べて、含まれる発電単位102Dの数が多く、かつ、排出孔173Aに近い位置に配置されている。これにより、第1の下流発電単位群102DG1を、第2の下流発電単位群102DG2より排出孔173Aから遠い位置に配置した場合に比べて、燃料枯れが抑制されることによって、燃料電池スタック100B全体としての性能低下を、より確実に抑制することができる。なお、第1の下流発電単位群102DG1は、特許請求の範囲における第2の電気化学反応単位群に相当し、第2の下流発電単位群102DG2は、特許請求の範囲における第1の電気化学反応単位群に相当する。
【0054】
C.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0055】
上記第1の実施形態において、下流の発電単位102Dと吸熱部材との間に、1つまたは3つ以上の上流の発電単位102Uが配置されているとしてもよい。また、熱交換部103は、エンドプレート104,106に比べて吸熱能力が高い(吸熱量が多い)。そこで、熱交換部103と下流の発電単位102Dとの間に配置される上流の発電単位102Uの数を、エンドプレート104,106と下流の発電単位102Dとの間に配置される上流の発電単位102Uの数より多くしてもよい。要するに、第1の吸熱能力を有する吸熱部材と下流の発電単位102Dとの間に配置される上流の発電単位102Uの数は、上記第1の吸熱能力より低い第2の吸熱能力を有する吸熱部材と下流の発電単位102Dとの間に配置される上流の発電単位102Uの数より多くてもよい。このような構成であれば、吸熱部材の吸熱能力に応じた適切な数の上流の発電単位102Uを配置することにより、吸熱部材の吸熱による下流の発電単位102Dの温度低下を効果的に抑制することができる。なお、上記各実施形態において、下流の発電単位102Dと吸熱部材との間に、上流の発電単位102Uが配置されていないとしてもよい。
【0056】
吸熱部材は、熱交換部103やエンドプレート104,106に限られず、例えばターミナスプレートなどでもよい。要するに、吸熱部材は、電気化学反応単位に近接して配置されており、電気化学反応セルスタックの動作中において、電気化学反応単位が発した熱を吸収する部材であればよい。
【0057】
上記実施形態では、電気化学反応セルスタックが複数の電気化学反応ブロックを含む場合、少なくとも1つの電気化学反応ブロックについて本発明を適用すればよく、必ずしも全ての電気化学反応ブロックについて本発明を適用しなくてもよい。2つ以上の下流の電気化学反応単位のそれぞれについて、下流の導入連通路と下流の排出連通路との合計体積は、1つ以上の各上流の電気化学反応単位における前記上流の導入連通路と前記上流の排出連通路との合計体積より小さければよい。
【0058】
また、上記実施形態において、第1の下流発電単位群102DG1と第2の下流発電単位群102DG2とは、熱交換部103を介して離間しているとしたが、これに限定されず、第1の下流発電単位群102DG1と第2の下流発電単位群102DG2とは、熱交換部103などの吸熱部材とは異なる部材によって離間しているとしてもよい。
【0059】
第1の実施形態において、下流の連通体積は上流の連通体積より小さく設定すれば、下流の連通体積は、60(mm
3)より大きくてもよい。
【0060】
また、上記実施形態において、燃料電池スタック100に含まれる発電単位102の個数は、あくまで一例であり、発電単位102の個数は燃料電池スタック100に要求される出力電圧等に応じて適宜決められる。また、上流の発電単位102Uの個数や下流の発電単位102Dの個数も、あくまでも一例である。ただし、下流の発電単位102Dでは、上流の発電単位102Uに比べて、燃料室176に供給されるガス(燃料ガスFG、燃料中間ガスFMG)の水素濃度が低い。従って、下流の発電単位102Dでのガスの供給不足を抑制するため、下流の発電単位102Dの個数は、上流の発電単位102Uの個数より少ないことが好ましい。
【0061】
上記実施形態において、燃料電池スタック100の締結に使用されるボルト22の個数は、あくまで一例であり、ボルト22の個数は燃料電池スタック100に要求される締結力等に応じて適宜決められる。
【0062】
また、上記実施形態では、ボルト22の両側にナット24が嵌められているとしているが、ボルト22が頭部を有し、ナット24はボルト22の頭部の反対側にのみ嵌められているとしてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、エンドプレート104,106が出力端子として機能するとしているが、エンドプレート104,106の代わりに、エンドプレート104,106のそれぞれと接続された別部材(例えば、エンドプレート104,106のそれぞれと発電単位102との間に配置された導電板)が出力端子として機能するとしてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、各ボルト22の軸部の外周面と各連通孔108の内周面との間の空間を各マニホールドとして利用しているが、これに代えて、各ボルト22の軸部に軸方向の孔を形成し、その孔を各マニホールドとして利用してもよい。また、各マニホールドを各ボルト22が挿入される各連通孔108とは別に設けてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合には、1つのインターコネクタ150が隣接する2つの発電単位102に共有されるとしているが、このような場合でも、2つの発電単位102がそれぞれのインターコネクタ150を備えてもよい。また、上記実施形態では、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102の上側のインターコネクタ150や、最も下に位置する発電単位102の下側のインターコネクタ150は省略されているが、これらのインターコネクタ150を省略せずに設けてもよい。
【0066】
また、上記実施形態において、燃料極側集電体144は、空気極側集電体134と同様の構成であってもよく、燃料極側集電体144と隣接するインターコネクタ150とが一体部材であってもよい。また、空気極側フレーム130ではなく燃料極側フレーム140が絶縁体であってもよい。また、空気極側フレーム130や燃料極側フレーム140は、多層構成であってもよい。
【0067】
また、上記実施形態における各部材を形成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により形成されてもよい。
【0068】
また、上記実施形態において、都市ガスを改質して水素リッチな燃料ガスFGを得るとしているが、LPガスや灯油、メタノール、ガソリン等の他の原料から燃料ガスFGを得るとしてもよいし、燃料ガスFGとして純水素を利用してもよい。
【0069】
本明細書において、部材(または部材のある部分、以下同様)Aを挟んで部材Bと部材Cとが互いに対向するとは、部材Aと部材Bまたは部材Cとが隣接する形態に限定されず、部材Aと部材Bまたは部材Cとの間に他の構成要素が介在する形態を含む。例えば、電解質層112と空気極114との間に他の層が設けられた構成であっても、空気極114と燃料極116とは電解質層112を挟んで互いに対向すると言える。
【0070】
また、上記実施形態では、燃料電池スタック100は複数の平板形の発電単位102が積層された構成であるが、本発明は、他の構成、例えば特開2008−59797号に記載されているように、複数の略円筒形の燃料電池単セルが直列に接続された構成にも同様に適用可能である。
【0071】
また、上記実施形態では、燃料ガスに含まれる水素と酸化剤ガスに含まれる酸素との電気化学反応を利用して発電を行うSOFCを対象としているが、本発明は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形の電解セル(SOEC)の最小単位である電解セル単位や、複数の電解セル単位を備える電解セルスタックにも同様に適用可能である。なお、電解セルスタックの構成は、例えば特開2016−81813号公報に記載されているように公知であるためここでは詳述しないが、概略的には上述した実施形態における燃料電池スタック100と同様の構成である。すなわち、上述した実施形態における燃料電池スタック100を電解セルスタックと読み替え、発電単位102を電解セル単位と読み替えればよい。ただし、電解セルスタックの運転の際には、空気極114がプラス(陽極)で燃料極116がマイナス(陰極)となるように両電極間に電圧が印加されると共に、連通孔108を介して原料ガスとしての水蒸気が供給される。これにより、各電解セル単位において水の電気分解反応が起こり、燃料室176で水素ガスが発生し、連通孔108を介して電解セルスタックの外部に水素が取り出される。このような構成の電解セルスタックにおいても、本発明を適用することによって上述の効果を得ることができる。