(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記スラリーのシャワーノズルからの提供を行う際に、前記ハニカム基材の上部からのスラリーの漏出を防ぐためのガイドを使用することを含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の製造方法。
前記シャワーノズルの中央部の前記間隔aの平均を1とした場合、外周部の前記間隔aの平均が、0.25以上1.0未満である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の製造方法。
前記シャワーノズルの中央部の前記吐出口の孔径の平均を1とした場合、外周部の前記吐出口の孔径の平均が、1.0超4.0以下である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の製造方法。
前記シャワーノズルの内部に、前記スラリーを前記ハニカム基材の上部の全面に渡って均等に提供するための整流プレートが存在している、請求項1〜10のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来技術では、触媒層を形成するためのスラリーの粘度を高くすることでハニカム基材上部にスラリーを貯留させて、その後、ハニカム基材下部側からスラリーを吸引してハニカム基材にスラリーをコーティングしていた。そして、従来技術では、スラリーをハニカム基材に均一にコーティングするために、ハニカム基材上部にスラリーを均一に堆積させることが課題とされていた。
【0009】
しかし、スラリーの粘度を高くすると、製造装置にスラリーが付着し、ハニカム基材に触媒成分の全量をコーティングすることができないという課題があった。また、従来技術では、スラリーの粘度を高くするために増粘剤を使用するため、そのコストが高いという課題があった。
【0010】
そこで、本発明は、低粘度のスラリーを用いてもハニカム基材にスラリーを均一にコーティングすることができる排ガス浄化装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、以下の態様を有する本発明により、上記課題を解決できることを見出した。
《態様1》
ハニカム基材の上部に触媒層形成用スラリーをシャワーノズルから提供すること、
前記ハニカム基材に前記スラリーをコーティングすること、及び
前記スラリーがコーティングされたハニカム基材を焼成すること
を含む、排ガス浄化装置の製造方法であって、
前記スラリーのせん断速度4s
−1での粘度が800mPa・s以下であり、
前記シャワーノズルが、前記スラリーを吐出するための複数の吐出口を有し、前記吐出口の間隔aと、前記スラリーの提供を開始した際に形成される液玉の直径bとが0.85<a/bの関係を有し、かつ
前記スラリーの提供を開始して前記ハニカム基材上にスラリーが広がった際のスラリーの面の等価直径cが、前記吐出口の間隔a以上である、排ガス浄化装置の製造方法。
《態様2》
前記スラリーのせん断速度4s
−1での粘度が10mPa・s以上300mPa・s以下であり、かつ前記吐出口の前記間隔aと前記液玉の前記直径bとが0.95<a/b<1.25の関係を有する、態様1に記載の製造方法。
《態様3》
前記スラリーのせん断速度4s
−1での粘度が300mPa・s超800mPa・s以下であり、かつ前記吐出口の前記間隔aと前記液玉の前記直径bとが0.90≦a/b≦1.35の関係を有する、態様1に記載の製造方法。
《態様4》
前記吐出口の孔径が2mm未満である、態様1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
《態様5》
前記シャワーノズルの吐出口が、前記シャワーノズルの面の凸状部分に存在している、態様1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
《態様6》
前記吐出口の前記間隔aが、3.25mm以上4.25mm以下である、態様1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
《態様7》
前記コーティングを行う際に、前記ハニカム基材の下部から吸引を行うことを含む、態様1〜6のいずれか一項に記載の製造方法。
《態様8》
前記スラリーのシャワーノズルからの提供を行う際に、前記ハニカム基材の上部からのスラリーの漏出を防ぐためのガイドを使用することを含む、態様1〜7のいずれか一項に記載の製造方法。
《態様9》
前記シャワーノズルの中央部の前記間隔aの平均を1とした場合、外周部の前記間隔aの平均が、0.25以上1.0未満である、態様1〜8のいずれか一項に記載の製造方法。
《態様10》
前記シャワーノズルの中央部の前記吐出口の孔径の平均を1とした場合、外周部の前記吐出口の孔径の平均が、1.0超4.0以下である、態様1〜9のいずれか一項に記載の製造方法。
《態様11》
前記シャワーノズルの内部に、前記スラリーを前記ハニカム基材の上部の全面に渡って均等に提供するための整流プレートが存在している、態様1〜10のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の排ガス浄化装置の製造方法は、ハニカム基材の上部に触媒層形成用スラリーをシャワーノズルから提供すること、ハニカム基材にスラリーをコーティングすること、及びスラリーがコーティングされたハニカム基材を焼成することを含む。ここで、スラリーのせん断速度4s
−1での粘度は、800mPa・s以下であり、かつシャワーノズルは、スラリーを吐出するための複数の吐出口を有し、吐出口の間隔aと、スラリーの提供を開始した際に形成される液玉の直径bとが0.85<a/bの関係を有し、かつスラリーの提供を開始してハニカム基材上にスラリーが広がった際のスラリーの面の等価直径cが、吐出口の間隔a以上である。ここで、上記a、b及びcは、平均値である。
【0014】
本発明者らは、従来技術の排ガス浄化装置の製造方法において、上記のような低粘度のスラリーを使用すると、スラリーを提供した直後にハニカム基材の開孔にスラリーが流出してしまうことが分かった。したがって、上記のような低粘度のスラリーを用いた場合には、ハニカム基材上部にスラリーを貯留することができず、スラリーが提供されないハニカム基材上部の位置において、未塗工部分が生じることが分かった。
【0015】
そこで、本発明者らは、ハニカム基材上部にスラリーを貯留する検討を重ねたが、スラリーの粘度が低くなれば低くなるほど、未塗工部分を減らすことが困難となった。そこで、本発明者らは、ハニカム基材に未塗工部分を生じないようにハニカム基材上部にスラリーを直接的に均一に提供する検討を行った。しかし、この場合にも、様々な課題が生じることが分かった。すなわち、シャワーノズルの吐出口を多数設けて、かつその開孔径を大きくすれば、シャワーノズルからハニカム基材上部に提供されるスラリー面積が大きくなるため、ハニカム基材上部にスラリーを直接的に均一に提供できると考えたが、スラリーの粘度が低い場合には、隣接する吐出口から流出するスラリー同士がくっ付いてスラリーが集束し(
図1(b)参照)、ハニカム基材上部にスラリーを直接的に均一に提供することができなくなることが分かった。
【0016】
そこで、本発明者らは、さらに鋭意検討を重ねたところ、シャワーノズルの吐出口と吐出口との間隔aと、スラリーの提供を開始した際に形成される液玉の直径bとの関係を特定すると共に、スラリーの提供を開始してハニカム基材上にスラリーが広がった際のスラリーの面の等価直径と間隔aとの関係を特定することによって、ハニカム基材上部にスラリーを直接的に均一に提供できるようになることを見出した。
【0017】
さらに、本発明者らは、低粘度のスラリーを使用してハニカム基材をコーティングすると、特にウォールフロータイプのハニカム基材において、圧力損失を大きく低下できることを見出した。これは、低粘度のスラリーを使用することで、多孔質体であるハニカム基材の壁の内部にまでスラリーが浸透しやすくなったためであると考えられる。また、スラリーに増粘剤が含まれない又は非常に少ないため、触媒層が密に充填されたためと考えられる。
【0018】
図1(a)は、シャワーノズル(10)の吐出口(11)と吐出口(11)との間隔aと、スラリー(20)の提供を開始した際に形成される液玉(21)の直径bとを説明する図である。吐出口(11)の間隔aが狭すぎる場合、かつ/又は液玉(21)の直径bが大きい場合には、
図1(b)に示すように、スラリーが集束してしまう。
【0019】
図2は、実施例で用いられたシャワーノズルからスラリーの提供を開始した際に形成された液玉をハイスピードカメラで撮影した写真である。そのシャワーノズルの吐出口の孔径は1.0mmであり、液玉の直径bは3.4mm程度である。
【0020】
等価直径cは、
図3(a)に示すように、ハニカム基材上にスラリーが広がった際のスラリーの面の広さを表す。
図3(b)に示すように、等価直径cは、シャワーノズルの1孔部分のみからハニカム基材にスラリーを投入し、基材上に広がったスラリーをハイスピードカメラで撮影することによって測定する。この場合、シャワーノズルの他の孔からはスラリーを基材に投入しないようにする。
【0021】
〈比a/b〉
本発明の方法では、シャワーノズルの吐出口を、最も近くに位置する吐出口と、間隔aを隔てて位置させる。そうすることによって、吐出口から吐出されたスラリーの集束を防止することができる。一方で、間隔aが大きい場合には、ハニカム基材上部にスラリーの未塗工部分が生じるため、間隔aは、ある程度小さくする必要がある。間隔aの小ささの程度は、スラリーの提供を開始した際に形成される液玉の直径bとの関係で決めることができる。
【0022】
本発明者らの検討によれば、間隔aと直径bとは、0.85<a/bの関係を有する場合に、スラリーの集束を実質的に防止でき、かつスラリーの未塗工部分を非常に少なくできることが分かった。比a/bは、0.88以上、0.90以上、0.92以上、0.95以上、0.98以上、1.00以上、1.02以上、又は1.05以上であってもよく、1.50以下若しくは1.50未満、1.40以下、1.35以下、1.30以下、1.25以下、1.20以下、又は1.15以下であってもよい。
【0023】
特に、スラリーのせん断速度4s
−1での粘度が10mPa・s以上300mPa・s以下の場合には、比a/bは、0.95超1.25未満、好ましくは0.98以上1.20以下とすることができる。また、スラリーのせん断速度4s
−1での粘度が300mPa・s超800mPa・s以下の場合には、比a/bは、0.85超1.50未満、好ましくは0.90以上1.35以下であってよい。
【0024】
間隔aの適切な範囲としては、スラリーの提供を開始した際に形成される液玉の直径b及びスラリーの粘度によっても異なるが、2.6mm以上、2.8mm以上、3.0mm以上、3.2mm以上、3.4mm以上、又は3.6mm以上であってもよく、5.5mm以下、5.0mm以下、4.8mm以下、4.5mm以下、4.3mm以下、又は4.1mm以下であってもよい。
【0025】
隣接する吐出口と吐出口の間隔aは、吐出口が存在するシャワーノズルの面内で全て実質的に均一であってもよい。ただし、本発明の有利な効果を大きく損なわない範囲では、間隔aは、全てが均一でなくてもよく、間隔aよりも狭い間隔又は広い間隔で吐出口と吐出口とが隣接していてもよい。例えば、隣接する吐出口と吐出口との間隔の全数のうちの、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、98%以上の数の間隔が、上記の間隔aを有していてもよい。間隔aよりも狭い間隔又は広い間隔で吐出口と吐出口とが隣接している場合、その間隔a’は、間隔aの80%〜120%の範囲、90〜110%の範囲、又は95〜105%の範囲の長さとすることができる。
【0026】
各吐出口からスラリーが同程度の圧力で吐出される場合には、間隔aは、シャワーノズルの面内で実質的に均一であることが好ましいが、以下に説明されるように、シャワーノズルの面内で、各吐出口の間隔aを微調整することが好ましい場合がある。
【0027】
これに関して、本発明者らは、低粘度のスラリーを使用してハニカム基材をコーティングする場合には、ハニカム基材上部へのスラリー提供がわずかに不均一になっただけで、ハニカム基材を均一にコーティングできず、スラリーの波打ち現象が発生しやすいことを発見した。波打ち現象は、
図7(a)に示すように、スラリーがハニカム基材の一部(この場合は中央部)を偏在的にコーティングする現象であり、スラリーによるコーティング厚さには大きなバラツキは生じないものの、基材の各セルがコーティングされる長さにバラツキを生じさせる。この現象は、低粘度のスラリーがハニカム基材上部に提供されると、そのままスラリーがハニカム基材内部に流れていくこと、及びそのスラリーがハニカム基材上部に均等に分配されずに提供されていることで発生すると考えられる。このような波打ち現象は、スラリーが高粘度である場合には、ほとんど発生していなかった。これは、
図7(b)に示すように、スラリーが高粘度である場合には、ハニカム基材上部にスラリーが一度貯留することで、スラリーの液面の高さが一定程度は平坦化されるためである。
【0028】
さらに、本発明者らは、シャワーノズルの面内に均等に同一の吐出口を設けた場合には、スラリーはノズルの中央部に比較的多く提供され、かつその外周部に比較的少なく提供されるため、波打ちが発生しやすいことを発見した。そこで、本発明者らは、シャワーノズルの外周部において吐出口と吐出口との間隔を大きくすることで、スラリーをハニカム基材上部の全面に渡って均等に提供でき、これにより波打ちを防げることを見出した。
【0029】
この波打ちを発生させないように、吐出口と吐出口の間隔aは、シャワーノズルの中央部において、その外周部よりも大きくすることができる。例えば、本発明の有利な効果が得られる範囲であれば、中央部の間隔aの平均を1とした場合、外周部の間隔の平均を、0.25以上、0.3以上、0.4以上、0.5以上、0.6以上、0.7以上、又は0.8以上とすることができ、また1.0未満、0.95以下、0.90以下、0.85以下、0.80以下、又は0.75以下とすることができる。また、シャワーノズルの中心からシャワーノズルの縁部にわたって、吐出口と吐出口の間隔aを徐々に小さくすることができる。
【0030】
ここで、シャワーノズルの面内で吐出口が存在する吐出口存在領域とした場合、その吐出口存在領域の中心を同心とする、吐出口存在領域の等価直径の1/2、1/3又は1/4の長さの直径を有する円で囲まれる領域を中央部とすることができる。そして、吐出口存在領域のうち、その中央部を除いた領域を外周部とすることができる。なお、等価直径とは、その面の外周長さと等しい外周長さを有する正円の直径をいう。特に、シャワーノズルが略円形である場合には、その円と同心とする、その等価直径の1/2、1/3又は1/4の直径を有する正円で囲まれた領域を中央部とすることができ、それ以外の領域を外周部とすることができる。
【0031】
特に、スラリーのせん断速度4s
−1での粘度が10mPa・s以上300mPa・s以下の場合には、間隔aは、3.2mm以上4.3mm以下とすることができる。また、スラリーのせん断速度4s
−1での粘度が300mPa・s超800mPa・s以下の場合には、間隔aは、2.6mm以上5.5mm以下とすることができる。
【0032】
スラリーの提供を開始した際に形成される液玉の直径bは、吐出口の孔径及び形状、吐出圧力、スラリーの粘度等によって影響を受ける。液玉の直径bは、スラリーの提供を開始した際にスピードカメラで撮影した画像から測定することができ、複数の液玉の平均直径から決めることができる。
【0033】
吐出口の孔径は、特に限定されないが、スラリーを提供しようとしていない場合でもシャワーノズルの吐出口からスラリーが液垂れしてこないように、孔径が小さいことが好ましい。液垂れは、スラリーのせん断速度4s
−1での粘度が10mPa・s以上300mPa・s以下の場合には顕著に発生することが分かった。
【0034】
吐出口の孔の形状は、特に限定されない。例えば、孔径は、等価直径で、2.0mm未満であることが好ましく、0.30mm以上、0.50mm以上、0.70mm以上、又は0.90mm以上であってもよく、1.80mm以下、1.50mm以下、1.30mm以下、1.10mm以下であってもよい。また、吐出口の孔径及び形状は、全ての孔が同じである必要はなく、本発明の効果が得られる範囲で様々であってもよい。
【0035】
波打ちを発生させないように、吐出口の孔径は、本発明の有利な効果が得られる範囲であれば、中央部の吐出口の孔径の平均を1とした場合、外周部の吐出口の孔径の平均を、1.0超、1.1以上、1.3以上、1.5以上、1.8以上、又は2.0以上とすることができ、また4.0以下、3.0以下、2.0以下、又は1.5以下とすることができる。また、
図8に例示するように、シャワーノズルの中心からシャワーノズルの縁部にわたって、吐出口の孔径を徐々に大きくすることができる。
【0036】
シャワーノズルは、ハニカム基材の真上に存在し、吐出口は、その下側に位置するハニカム基材の上面全体に渡って、略均等の間隔で存在していることが好ましい。この場合、吐出口は、格子状に略均等に配置していてもよく、また同心円状に略均等に配置していてもよい。また、例えば、吐出口は、特許文献2に記載のように様々な態様で略均等に配置していてもよい。ただし、
図3で示す1つの態様のように、本発明で用いられるシャワーノズルは、特許文献2に開示されているシャワーノズルよりも、吐出口の孔径が小さく、かつその間隔aが小さい傾向となる。
【0037】
吐出口は、シャワーノズルの面の凸状部分に存在していてもよい。凸状部分に吐出口が存在している場合、吐出口から出たスラリーは、凸部の先端幅までしか広がらなくなり、スラリーの集束が発生しにくくなるため好ましい。例えば、
図3に示すように、シャワーノズル(10)の面に複数の突起(12)が存在し、吐出口がこの突起の略中心部に存在していてもよい。この突起の等価直径も、液玉の直径bに影響を与えうる。この突起の形状は、
図4に示すような台形の形状に限られず、スラリーの集束を防ぐことができれば特に限定されない。
【0038】
〈スラリー面の等価直径c〉
スラリーの提供を開始してハニカム基材上にスラリーが広がった際のスラリーの面の等価直径cは、大きければ大きいほど、ハニカム基材上部の未塗工部分が少なくなるため好ましい。一方で、等価直径cは、液玉の直径bに影響を受けるため、スラリーの集束を防止するためには、大きくするのに制限がある。また、等価直径cは、スラリーの粘度に大きく影響を受ける。スラリーを高粘度にすれば等価直径cを大きくすることができるが、上述のとおりスラリーを高粘度にすると、製造装置にスラリーが付着するという課題があり、また増粘剤に起因してコストが高くなる課題がある。したがって、この点についても等価直径cを大きくすることには制限がある。なお、等価直径とは、その面の外周長さと等しい外周長さを有する正円の直径をいう。
【0039】
等価直径cは、吐出口の間隔a以上であることが好ましい。例えば、比c/aは、1.00以上、1.10以上、1.15以上、1.20以上、1.30以上、又は1.40以上であってもよく、3.0以下、2.5以下、2.0以下、又は1.5以下であってもよい。具体的には、等価直径cは、3.0mm以上、3.5mm以上、4.0mm以上又は4.5mm以上であってもよく、6.0mm以下、5.5mm以下、5.0mm以下、又は4.5mm以下であってもよい。
【0040】
〈整流プレート〉
波打ちを発生させないように、シャワーノズルの内部に、
図9に示すような整流プレートを設けることができる。整流プレートは、スラリーをハニカム基材上部の全面に渡って均等に提供するためであれば、その形態は限定されない。例えば、整流プレートは、上記のシャワーノズルの吐出面と同様の孔を有するプレートであってもよく、特許文献2に記載のデフレクタであってもよい。
【0041】
したがって、整流プレートは、上記の範囲の間隔aを有し、かつ上記の範囲の孔径を有する、複数の孔を有するプレートであってよい。
【0042】
〈スラリー〉
本発明の方法で使用されるスラリーは、せん断速度4s
−1での粘度が800mPa・s以下であり、かつ排ガス浄化装置の触媒層を形成するためのスラリーであれば、特に限定されない。触媒層としては、ガソリンエンジン用の三元触媒装置のための触媒層であってもよく、ディーゼルエンジン又はリーンバーンエンジン用の浄化装置のための公知の触媒層であってもよく、これらは本分野で知られている触媒層であってよい。このようなスラリーは、アルミナ、ジルコニア、セリア等の無機酸化物又は無機複合酸化物担体、及びそれに担持された触媒金属粒子が分散された水系分散体である。
【0043】
スラリーの粘度は、従来技術で使用されていたスラリーよりも低く、せん断速度4s
−1での粘度が800mPa・s以下であり、例えばせん断速度4s
−1での粘度が、10mPa・s以上、20mPa・s以上、50mPa・s以上、100mPa・s以上、又は200mPa・s以上であってもよく、700mPa・s以下、600mPa・s以下、500mPa・s以下、400mPa・s以下、300mPa・s以下、250mPa・s以下、又は200mPa・s以下であってもよい。ここで、粘度の測定は、E型粘度計(TVE−35H、東機産業株式会社製)を用いて、ロータ種:1° 34’×R24を使用し、測定温度25℃で行う。
【0044】
スラリーには、粘度を調整するために1.0重量%以下、0.5重量%以下、0.3重量%以下、又は0.1重量%以下で増粘剤が含まれていてもよいが、好ましくは増粘剤が含まれていない。増粘剤としては、水溶性有機ポリマーを挙げることができる。
【0045】
〈ハニカム基材〉
本発明の方法で使用されるハニカム基材としては、本分野で知られている排ガス浄化装置用のハニカム基材であれば特に限定されない。具体的には、ハニカム基材としては、多数のセルを有するハニカム基材を使用することができ、例えば、コージェライト(2MgO・2Al
2O
3・5SiO
2)、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素等の耐熱性を有するセラミックス材料や、ステンレス鋼等の金属箔からなるメタル材料を使用することができる。
【0046】
ハニカム基材は、ウォールフロータイプのハニカム基材であってもよく、ストレートフロータイプのハニカム基材であってもよい。また、ハニカム基材は、フロント側(エンジン側)のセルの開口径と、リア側のセルの開口径が異なっていてもよい。本発明の方法においてウォールフロータイプのハニカム基材を用いて得られた排ガス浄化装置は、特に圧力損失が低くなるため有利である。
【0047】
ハニカム基材のセル数は、例えば、300セル/in
2以上、500セル/in
2以上、800セル/in
2以上、1000セル/in
2以上、又は1200セル/in
2以上であってもよく、2000セル/in
2以下、1500セル/in
2以下、1200セル/in
2以下、1000セル/in
2以下、又は800セル/in
2以下であってもよい。ハニカム基材のセル数は、スラリーの提供を開始してハニカム基材上にスラリーが広がった際のスラリーの面の等価直径cに影響を与える場合があり、ハニカム基材のセル数に応じて、各種の条件を調整してもよい。
【0048】
〈スラリーの提供工程〉
スラリーを提供する工程は、上述したような本発明の特徴に従って行われるが、本発明の特徴と関係のない部分については、従来技術と同様にしてこの工程を行うことができる。例えば、本発明の方法の特徴と関係のない部分については、特許文献2を参考にすることができる。
【0049】
スラリーを提供する工程においては、ハニカム基材の上部からのスラリーの漏出及びハニカム基材の外側面をスラリーが流れ落ちることを防ぐためのガイドを使用することができる。このようなガイドは、特許文献2においても開示されてはいるものの、特許文献2においては基材上部に提供されたスラリーの液面を均一にすることを目的としているため、本発明で用いるようなガイドとは、その目的が異なっており、それに応じて構造が異なっていてもよい。
【0050】
〈スラリーのコーティング工程〉
ハニカム基材の上部に提供したスラリーを、ハニカム基材にコーティングする工程においては、特許文献1及び2に記載のように、ハニカム基材の下部側から吸引を行って、スラリーの流下を促進してもよい。しかし、本発明の方法においては、スラリーが低粘度であるため、吸引を行わなくてもよい。
【0051】
〈焼成工程〉
スラリーでコーティングされた基材の焼成条件は、特に限定はされないが、例えば、400〜1000℃程度で、約1〜4時間程度の焼成を行う。これにより、目的の触媒層を形成することができる。焼成前に乾燥を行ってもよく、その条件については特に限定されないが、例えば、80〜300℃の温度で1〜12時間程度で乾燥を行うことができる。
【0052】
本発明を以下の実施例でさらに具体的に説明をするが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【実施例】
【0053】
実験1.粘度の異なるスラリーを用いた場合のスラリーロスの評価
表1に記載の様々な粘度を有するスラリーを調製した。増粘剤を使用していない参考例1〜3では、粘度は固形分重量によって調整した。
【0054】
直径160mmで高さ180mmのウォールフロータイプのハニカム基材を、
図6に記載のような装置に設置し、基材にガイドを取り付けた。吐出口の孔径が1mmで、かつ吐出口の間隔aが5.7mmのシャワーノズルを用いて、ハニカム基材の上部に表1に記載の各スラリー800mlを提供した。その後、ダクトから吸引を1秒間行った。この時のハニカム基材上の風速は、15m/sであった。
【0055】
吸引後にガイドを取り外し、スラリーが付着したガイドの重量を測定し、次の計算式でそれぞれの粘度のスラリーを使用した場合のスラリーロスを計算した:
スラリーロス[%]=(スラリーが付着したガイド重量−初期ガイド重量)[g]/提供した全スラリー重量[g]×100%
【0056】
また、併せて、スラリー液玉の直径b、ハニカム基材上にスラリーが広がったスラリーの等価直径c、及びハニカム基材の上部の未コーティング部分の割合を評価した。
【0057】
さらに、ハニカム基材をコートティングする際のスラリーの波打ち現象を観察した。波打ちは、コーティング後のハニカム基材を軸方向にカットし、コーティング部分の最大コーティング長さと最小コーティング長さの差を、ハニカム基材の長さで除した数値で評価した。
【0058】
結果を表1に示す。
【表1】
【0059】
この結果から、粘度がおおよそ750mPa・s以下である場合には、スラリーロスが十分に低くなることが分かった。
【0060】
実験2.吐出部の間隔a、スラリー液玉の直径b、ハニカム基材上にスラリーが広がったスラリーの等価直径cによる未コーティング部分の有無の評価
表2に記載の様々なシャワーノズルに変更して、実験1で行ったように、ハニカム基材の上部の未塗工部分の割合及びスラリーの波打ちを評価した。同様にスラリーロスも評価した。
【0061】
結果を表2に示す。
【表2】
【0062】
この結果から、粘度が高いと、ハニカム基材上にスラリーが広い範囲に広がって、その等価直径cが大きくなるため、広い範囲のa/bで未コーティング部分をなくすことが可能になる。また、粘度が高いと、スラリーが集束しにくくなることが分かった。
【0063】
実験3.得られた排ガス浄化装置の圧力損失の評価
実験1の参考例5及び実験2の例4で得られたスラリーをコーティングしたウォールフロータイプのハニカム基材を乾燥し、焼成して排ガス浄化装置を製造した。また、ストレートフロータイプのハニカム基材を用いたこと以外は実験1の参考例5及び実験2の例4と同様にしてスラリーをコーティングし、参考例6及び例20の排ガス浄化装置を製造した。
【0064】
これらの排ガス浄化装置の圧力損失を測定し、ハニカム基材のみの圧力損失と比較して、圧力損失の上昇率を計算した。また、実験1で行ったように、ハニカム基材の上部の未塗工部分の割合及びスラリーの波打ちを評価した。
【0065】
結果を表3に示す。
【表3】
【0066】
この結果から、ウォールフロータイプのハニカム基材の場合には、低粘度スラリーを用いることで、圧力損失の上昇を大幅に低下できることが分かった。ストレートフロータイプのハニカム基材の場合には、高粘度スラリーを用いてもそもそも圧力損失の上昇率が低かったが、低粘度スラリーを用いた場合には、圧力損失の上昇率はさらに低くなった。
【0067】
実験4.シャワーノズルの中央部と外周部とで吐出口の孔径を変えた場合の評価
その面内の中央部(内側)と外周部(外側)とで吐出部の孔径を変更したシャワーノズルを使用し、ハニカム基材をコートティングする際のスラリーの波打ち現象を観察した。ここで、中央部とは、その中心部を同心とする直径21mmの円の範囲内であり、外周部とは、その円形面内の上記中央部を除いた領域である。また、シャワーノズルの吐出口は、直径152mmの円形面内に、3.7mmの吐出口間隔aで均等に存在していた。
【0068】
この実験では、約20mPa・sの粘度のスラリーを使用した。また、スラリーの提供を開始してハニカム基材上にスラリーが広がった際のスラリーの面の等価直径cは、4.1mmであった。ハニカム基材の上部の未コーティング部分の割合は、全ての例でほぼ0%であり、かつスラリーロスは、全ての例で約0.2%であった。
【0069】
結果を表4に示す。
【表4】
【0070】
例21〜例36と、表2の例1〜例9とを比較すると、ノズル中央部のa/bをノズル外周部のa/bよりも大きくすることによって、波打ちが概ね抑えられることが分かる。ただし、ノズル中央部のa/bとノズル外周部のa/bとの差が大きすぎる場合には、波打ちが発生しうることが示唆された。
【0071】
実験5.シャワーノズル内部に整流プレートを設けた場合の評価
実験4で用いたシャワーノズル内部に整流プレートを設置し、ハニカム基材をコートティングする際のスラリーの波打ち現象を観察した。その整流プレートには、以下の表5に記載の径で孔が設けられており、シャワーノズルには、1.2mmの孔径の孔が3.7mmの間隔で均等に存在していた。なお、中央部及び外周部とは、上記の実験4に記載のとおりである。
【0072】
この実験では、約20mPa・sの粘度のスラリーを使用した。また、スラリーの提供を開始してハニカム基材上にスラリーが広がった際のスラリーの面の等価直径cは、4.1mmであった。ハニカム基材の上部の未コーティング部分の割合は、全ての例でほぼ0%であり、かつスラリーロスは、全ての例で約0.2%であった。
【0073】
結果を表5に示す。
【表5】
【0074】
例37〜例52と、表4の例33とを比較すると、整流プレートをシャワーノズル内部に設置することで、ハニカム基材をコートティングする際のスラリーの波打ち現象を大きく抑制できることが分かる。
本発明は、ハニカム基材の上部に触媒層形成用スラリーをシャワーノズルから提供すること、前記ハニカム基材に前記スラリーをコーティングすること、及び前記スラリーがコーティングされたハニカム基材を焼成することを含む、排ガス浄化装置の製造方法であって、前記スラリーのせん断速度4s
での粘度が800mPa・s以下であり、前記シャワーノズルが、前記スラリーを吐出するための複数の吐出口を有し、前記吐出口の間隔aと、前記スラリーの提供を開始した際に形成される液玉の直径bとが0.85<a/bの関係を有し、かつ前記スラリーの提供を開始して前記ハニカム基材上にスラリーが広がった際のスラリーの面の等価直径cが、前記吐出口の間隔a以上である、排ガス浄化装置の製造方法に関する。