(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記それぞれの収容セルが、前記収容セル内に前記薬剤を収容する溶解性の層を備え、前記セル起動要素は前記溶解性の層の上に密封シールを形成し、前記起動トリガの受信に応じて前記溶解性の層をその周囲環境に対して露出するように構成される、請求項1〜13のいずれか一項に記載の涙点プラグ。
【背景技術】
【0002】
眼疾病及び眼疾患の治療には、多くの場合、活性薬剤が眼に投与される。活性薬剤を眼に送達する従来の手段は、眼表面に対する局所投与を含む。眼は、活性薬剤が適切に構成されている場合、局所適用されたその薬剤が角膜を貫通し、眼内で治療的濃度レベルまで上昇できるため、局所投与に比類なく好適である。眼疾病及び眼疾患用の活性薬剤は経口で、又は注射により投与することができるが、経口投与では活性薬剤が所望の薬理効果を有するには低すぎる濃度で眼に到達する可能性があり、活性薬剤の効用は、有意な全身性副作用により悪化され、また注射は、感染症の危険をもたらすことから、それらの投与経路は不都合である。
【0003】
大部分の眼用活性薬剤は、現在、点眼薬により局所投与され、点眼薬はある用途には有効であるが非効率である。液滴が眼に滴下された際、液滴は眼と眼瞼との間のポケットである結膜嚢を過充填し、眼瞼縁から頬上へ溢れるため、液滴の相当の部分が損失する。加えて、眼表面上に残留した液滴の相当の部分が涙点内に排出されて、薬物の濃度が希釈される。
【0004】
患者は多くの場合、点眼液を処方通りに使用しないことから、上記問題は更に複雑になる。このコンプライアンスの低下は、多くの場合、点眼による刺痛感又は灼熱感に起因するものである。眼を保護するための正常な反射に一部起因して、使用者が自身の目に点眼液を滴下することは確実に困難になり得る。したがって、時として1滴又は2滴以上の薬滴を目に適用し損なうことになる。高齢の患者は、関節炎、不安定さ、及び視力の衰えによって、液滴の注入に追加的な問題を有する場合がある。また、小児患者及び精神病患者も困難を呈する。
【0005】
これまでの局所持続放出系には、点眼液と同様の方法で、ただし、より低頻度で眼に適用される、溶液形態又は軟膏形態のいずれかの徐放性製剤が収容される。このような製剤は、例えば、米国特許第3,826,258号(Abrahamに対し発行)及び米国特許第4,923,699号(Kaufmanに対し発行)に開示される。しかしながら、その適用方法に起因し、これらの製剤は、上記の従来の点眼液に関する問題の多くと同様の問題が生じる。軟膏製剤の場合、視覚に対するぼかし効果、及び軟膏基剤の粘度の高さに起因するべたつき感に対する不快感などの、更なる問題が生じる。
【0006】
あるいは、持続放出系は、下眼瞼と眼との間の結膜円蓋の中に配置されるよう構成されている。このようなユニットは、典型的には、薬剤の拡散を制御する疎水性のコポリマー膜により包囲された薬剤含有リザーバコアを含有する。このようなデバイスの例は、米国特許第3,618,604号(Nessに対し発行)、同第3,626,940号(Zaffaroniに対し発行)、同第3,845,770号(Theeuwesらに対し発行)、同第3,962,414号(Michaelsに対し発行)、同第3,993,071号(Higuchiらに対し発行)、及び同第4,014,335号(Arnoldに対し発行)に開示される。しかしながら、それらの位置決めに起因して、ユニットは不快であり得、この場合も同様に患者には許容されにくい。
【0007】
例えば涙点のような個人の眼の1つ又は2つ以上の開口部内に挿入し得るデバイスを使用して、活性薬剤を送達することが公知である。そのようなデバイスを使用して薬剤を送達する欠点の1つは、デバイスを眼内に挿入したとき、薬剤が徐々に、より直線的に送達されるのではなく、薬剤の大半が最初に大量急速投与により送達され得ることである。他の方法では、長期間にわたる薬剤の溶出(eluding)を可能にする。しかしながら、一部の薬剤は、所定の投与量で定期的に送達されるときが最も有効である。したがって、目の周囲に薬剤を送達するための代替的な方法及び装置は、特に個別の用量を長期間にかけて送達することができるのであれば、有益であり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、電圧印加要素及び、その要素によって電圧が印加される、涙点プラグの本体内に収容された回路の使用によって、眼周囲に薬剤を放出するための装置に関する。
【0009】
それぞれの収容セルが薬剤を収容するように構成され、起動トリガの受信に応じてその収容セル内の薬剤を放出するように構成されたセル起動要素を備える、収容セルのアレイを備える半導体素子が提供され得る。
【0010】
半導体素子は、収容セルを既定時に起動するように構成された制御回路を備えることができる。
【0011】
制御回路は、振動子と、計数器と、多重変換装置と、を備えることができ、振動子は計数器の値を増加するように構成され、計数器は多重変換装置に計数を出力するように構成され、多重変換装置は計数を前記収容セルのアドレスにデコードするように構成される。
【0012】
半導体素子は、制御回路によって選択された前記収容セルに起動トリガを送るように構成された相互接続回路を備えることができる。
【0013】
相互接続回路は、それぞれの収容セルのセル起動要素へのアドレス可能な接続を定義する複数のワード線とビット線を備えることができる。
【0014】
相互接続回路は、それぞれの収容セルのセル起動要素のための独自の出力線を含むことができる。
【0015】
制御回路は、起動トリガを前記選択された収容セルに送るように相互接続回路を構成するように動作可能であり得る。
【0016】
それぞれのセル起動要素は、そのセル内に薬剤を収容するように、かつ溶融されたときにその薬剤を放出するように構成された可溶性のカバーを備えることができる。
【0017】
それぞれの可溶性カバーは、対応する収容セルの上又は周囲に密封シールを形成することができる。
【0018】
可溶性カバーは、例えば、ステンレス鋼、コバルトクロム、チタン系合金、ニチノール、又は金のような、しかし好ましくは金である、生体適合性金属など生体適合性の導電体を備えることができる。
【0019】
この半導体素子は、制御回路によって選択された前記収容セルの可溶性カバーを通して溶融電流を通過させるように構成された溶融回路を備えることができ、この溶融電流は起動トリガを定める。
【0020】
制御回路は、既定時に溶融電流のスイッチを入れるように構成され得る。
【0021】
溶融回路は、充電し、充電間隔の後に溶融電流を形成するように構成することができ、それにより、この充電間隔は既定時を定める。
【0022】
相互接続回路は、溶融回路からの溶融電流を前記選択された収容セルの可溶性カバーに送るように構成され得る。
【0023】
半導体素子は、既定期間の後に溶融電流のスイッチを切るように構成されたタイミング回路を備えることができる。
【0024】
それぞれの収容セルは、収容セル内に薬剤を収容する溶解性の層を備え、そのセル起動要素は溶解性の層の上に密封シールを形成し、起動トリガの受信に応じて溶解性の層を周囲環境に対して露出するように構成される。
【0025】
半導体素子は、1つ又は2つ以上の既定の条件の検出に応じて半導体素子を稼動するように構成された係合回路を備えることができる。
【0026】
既定時に薬剤の個別の用量を放出するように構成された涙点プラグが提供され得る。
【0027】
また、既定時に収容セル内に収容されている薬剤を放出するように、アレイの1つ又は2つ以上の収容セルを起動するように構成された制御回路を備える涙点プラグも提供され得る。
【0028】
更に、既定時に、収容セル内に収容されている薬剤を放出するために、起動トリガをアレイの1つ又は2つ以上の選択された収容セルに送るように構成された相互接続回路を備える涙点プラグが提供され得る。
【0029】
また、更なる涙点プラグが提供され得、この涙点プラグは、
その内部に空洞を有する涙点プラグ本体と、
電圧印加装置と、
涙点プラグ内の回路への電圧印加装置の接続を起動する係合要素と、
既定時間にわたり計算するタイミング要素と、
タイミング計数を、指定された収容セルにデコードする多重変換装置と、
個々の要素が、薄い密封シールフィルムで覆われている収容アレイと、を備える。
【0030】
本明細書に記載又は請求されるすべての涙点プラグは、本明細書に記載の半導体素子を備えることができる。
【0031】
半導体素子の製造方法は、それぞれの収容セルが薬剤を収容するように構成され、それぞれの収容セルが、起動トリガの受信に応じてその収容セル内の薬剤を放出するように構成されたセル起動要素を備える、収容セルのアレイを提供することを含むことができる。
【0032】
本明細書に記載の半導体素子は、皮下使用のために適応され得る。
【0033】
別の実施形態は、以下の明細書及び請求項、並びに添付図面の範囲内に含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
涙点プラグはここ数十年間、ドライアイの状態を治療するために使用されてきた。更に最近では、涙点プラグは、眼疾患及び眼の状態を治療する際の薬剤送達系としての使用に関し注目を集めている。有効に作用しつつ副作用が制限されるような望ましい日用速度及び/又は投与量で放出されるように薬剤を処方することに関し、幾つかの問題点が存在する。代替的な又は補足的な放出戦略は、個々の用量の送達を制御及び実行するために、電圧が印加される電子機器の使用を伴う。
【0036】
薬剤送達系に基づく拡散は薬剤の放出速度により特徴づけられ、放出速度は、不活性な非水溶性膜バリアを介する拡散に依存する。リザーバデバイス及びマトリックスデバイスという、基本的に2つの拡散設計が存在する。リザーバデバイスでは、薬剤のコアはポリマー膜により包囲される。膜の性質が、系からの薬剤の放出速度を決定する。拡散プロセスは概して、フィックの拡散の第一法則により解釈される一連の等式により説明される。マトリックスデバイスは、典型的には、ポリマー全体に均一に分散された薬剤を含む。
【0037】
リザーバ及びマトリックス型薬剤送達系は、持続放出系に基づく拡散系であり、長期間にわたり薬剤を提供する任意の剤形を構成すると考えられる。持続放出系の目的は、長期にわたり薬剤の治療濃度を維持するというものであり、通常は持続放出系からのゼロオーダーの放出が得られるよう企図することで得られる。持続放出系は、概してこのような種類の放出プロファイルは獲得しないが、ゆっくりとした最初の放出様式で放出させることで近似させることができる。リザーバ及びマトリックス持続放出系からの薬物放出速度は経時的に減少し、治療に有効なものではなくなる。
【0038】
ゼロオーダーの薬剤放出は、定常持続的な薬剤放出速度での薬剤送達系からの薬剤放出を構成し、即ち、薬剤送達系から放出される薬剤の量は、同様の時間間隔内で減少すること無く、治療レベルに留まる。この「定常持続放出型薬剤送達系」は、ゼロオーダーの薬剤送達系として参照され、その制御された放出により、実際の治療の制御をもたらす可能性がある。
【0039】
他の薬剤放出プロファイルは、パルス型薬剤送達と呼ばれる。パルス型薬剤送達は、治療量の治療薬を一定間隔で放出することが意図される。活性薬剤を散布するための場所は、涙液内にその活性薬剤が放出され、かつ、好ましくは鼻涙管内への放出が最小限になるように配置される。パルスパターンは、チューブなどのキャリア内に、水溶性封入ビーズ、又はその他パルス送達ユニットを直線状に配列し、涙液などの水性溶液への各パルス送達ユニットの曝露を制御することにより、達成される。第1のパルス送達ユニットを水性溶液に曝露し、溶解すると、続いてパルス送達ユニット内に封入された薬剤が鼻涙管内に放出される。第1のパルス送達ユニットを溶解し、その結果薬剤の初回投与量が放出されると、続いて水性溶液に対して第2のパルス送達ユニットが曝露される。直線状に配列されたパルス送達ユニットが溶解し、次のユニットが水性溶液に曝露されるため、ユニット自体がこのパターンを繰り返す。
【0040】
第1の末端部と第2の末端部とを有する涙点プラグ本体と、これら2つの末端部の間に延びる表面と、涙点プラグ本体内に収容されるリザーバと、備える、涙点プラグを形成するための装置及び方法が提供され得、リザーバは、活性薬剤含有物質及び活性薬剤を含み、活性薬剤は、パルス投与ビーズ内に直線状に存在する。涙点プラグは、例えば涙点プラグの開口部などの画定された領域を追加で含んでもよく、涙点プラグ空洞から涙点プラグ隣接領域へと活性薬剤が溶出又はその他散布するのにいっそう役立つ。涙点プラグは、活性薬剤の入った空洞の直径よりも小さい直径を有する開口部を含む、活性薬剤の散布に役立つ領域を含むことができる。
【0041】
制御された様式で、涙点プラグの表面に位置付けられた空洞のアレイに活性薬剤を送達するために使用可能な装置、及びそれらの使用方法並びに製造方法が提供され得る。涙点プラグ内に同じく収容された電子回路に電圧を印加するように動作可能な主涙点プラグ空洞内に電圧印加要素を組み込むことによって、薬剤用量の新規な送達が実現され得る。
【0042】
ロッド、又はその他の剛性若しくは準剛性物品を挿入することによって涙点プラグ内の空洞を充填する方法が知られている。このロッドには、製薬上の物質又はその他の薬剤が含まれ得る。しかしながら、既知の投与は、プラグから溶出する活性薬剤に頼っていた。薬剤収容セルのアレイは、硬い基板に形成することができ、それぞれの収容セルは、印加される電気信号の作用によって有孔にされ得る密封手段によって封じられている。このアレイ及びそれに付随する電圧印加、電子機器及びその他の構成要素は、前述の空洞の充填と同様の様式で涙点プラグに挿入することができる。
【0043】
用語
本明細書で使用されるとき、用語「活性薬剤」は、疾患又は疾病を治療、抑制又は予防することができる薬剤を指す。例示的な活性薬剤には、医薬品及び栄養補助食品が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい活性薬剤は、眼、鼻及び咽喉のうちの1つ又は2つ以上の疾患又は疾病を治療、抑制又は予防することができる。
【0044】
本明細書で使用されるとき、用語「涙点プラグ」は、それぞれ下又は上涙点を介して眼の下又は上涙小管内に挿入するのに適した寸法及び形状を有するデバイスを指す。
【0045】
本明細書において使用するとき、用語「開口部」とは、活性薬剤が通過することができる大きさ及び形状の、涙点プラグの本体における開口部を指す。活性薬剤のみが開口部を通過できることが好ましい。開口部は、膜、メッシュ又は格子106で覆われてもよく、又は覆われてなくてもよい。膜、メッシュ又は格子は、多孔質、半多孔質、透過性、半透過性及び生分解性のうちの1つ又は2つ以上であってもよい。
【0046】
電圧が印加される涙点プラグ
図1を参照すると、電圧が印加される涙点プラグである項目100が図示されている。図示される涙点プラグ100は、電圧印加要素と、それらの電圧印加要素によって電圧が印加され得る構成要素とを両方有する。項目135は涙点プラグの代表的な本体を示す。それは、先の開示において記述されてきたような典型的な形を有する。この涙点プラグの本体内の空洞は、電圧印加要素と薬剤分配要素とで満たされる。
【0047】
項目140は、電圧印加要素を包含し得るケースを示している。この例では、電圧印加要素は電池として描かれており、より具体的には、アルカリ電池としてモデル化され得る。項目150は、電池の陰極を示しており、代表的にはこの陰極は物理的に金属ケース材料140の上に接触させて配置することができる。更に電池内において、要素145は電解質機能を有する分離要素を描くことができる。次に、項目160は電池の陽極を示すことができ、ここで、陽極への電気接触要素は要素130として示され得る。類似した様式で、項目120は頂部の層の陰極接点を表すことができる。電圧印加要素は、この要素の頂部の密封キャップを表す項目125をもって完成される。
【0048】
アルカリ電池は電圧印加要素として示されている。一般性を欠くことなく、例えば、その他のタイプの電池、燃料電池、誘導結合エネルギー源、及び電圧が印加される収容アレイ装置を有する涙点プラグ内の他の構成要素に電気エネルギーを提供し得るこのタイプの要素などを含む、電圧印加要素として作用できる多くの他の要素が、涙点プラグ本体内に収容され得る。
【0049】
電圧印加要素は、相互接続要素であり得る項目170という次の特徴に接続され得る。それは、様々な様式で電圧印加要素接点120及び130に接続され得る。相互接続要素をこれらの接点に接続する多くの方法が可能であり、代表的な例として、はんだ付け接続、導電性エポキシ、及び導線結合が挙げられる。相互接続要素は、電圧印加要素によって充電可能な電力貯蔵要素を所望により含んでもよい。
【0050】
相互接続装置上に描かれている項目180は、半導体要素を表すことができ、この半導体要素はその本体内部に項目190である収容セルのアレイを収容している。後の説明に記述するように、これらの収容セルの上には、収容セルの内部の材料を電気媒介により放出することを可能にし得る機構を載せることができる。この半導体要素をその上に装着される相互接続要素に接続するには多くの方法が可能であり、半導体素子内のビアを通したはんだ玉接続することが含まれ、又は、
図1の項目195に図示されているように、半導体素子の側部に沿って走り半導体素子の頂部の相互接続位置に接続する可撓性の継ぎ手の使用によって相互接続を形成することもできる。
【0051】
図1に示されているように、項目115は涙点プラグの本体上に接続される密封蓋を示すことができる。この密封蓋要素は、涙点プラグの内部の固定された位置に電圧印加要素、相互接続アレイ及び半導体素子を位置付けて収容することができる。密封蓋の位置付けと固定には多くの方法があり得、例えばエポキシシーラント又は他のタイプのシーラントの適用が挙げられる。この蓋は、所定の位置に押圧されたときに機械的なインターロックによって涙点プラグ装置とインターロックするように形成され得る。
【0052】
図1に描かれている別の要素である項目110は、係合装置である。涙点プラグ100は電圧印加要素を包含しているので、涙点プラグは、電圧印加要素から電流が流れ出る可能性があるときに制御する手段を含むことができる。係合装置は、貯蔵中は「オフ」の位置にあり、何らかの起動手段によって「オン」の位置に切り替えられる要素であり得る。この条件下でのみ、装置内の多様な構成要素に電位が印加され得る。
【0053】
係合装置をその「オン」の位置に切り替えることを可能にする多くの方法がある。例えば、装置は、水分、特に水中のイオンのイオン(ionic ion)を含む環境に置かれていることを感知することが可能であって、例えばそのような流体の導電性によって「オン」の状態を起動してもよい。加えて、表面保護機能を装置から取り除くことによって装置を起動してもよい。涙点プラグはヒトであるホストに挿入されるので、プラグを眼の涙点に挿入するために使用される装置は、次いで装置と係合するような何らかの様式で係合装置に作用する構成要素もまた含むことができる。
【0054】
係合装置は、タイミング回路及び制御回路を、電池から引き出される電流をできる限り少なくする状態である貯蔵モードにするために、電池スイッチを備えてもよい。係合装置は、オンチップ光検出器による可視光及び赤外線検出に対応することができ、したがって、電池スイッチを起動するための1つの方法は入射光を伴う。その他の方法としては、機械的に挟み込むこと、曲げること、及び無線周波(RF)が挙げられる。
【0055】
薬剤収容アレイ
図2に進むと、収容アレイとともに、半導体素子の上面(項目210)の大写しである項目200が描かれている。前述したように、シリコン部品は回路を包含することができ、この回路は、収容アレイの制御のために重要であり、かつそれぞれの収容セルが係合されてその薬剤を適切な頻度で分配することを確実に行うようにする。電子機器、孔、又はビアを含まないシリコンの領域をシリコン内に形成して、薬剤を充填することができる。回路が位置付けられているシリコンの上の側面において、相互接続金属形成物を使用して、孔又はビアの上に重なるマトリックスの領域を画定することができる。項目220は、孔の上に横たわる金属の領域を示し得る。後のセクションで、孔の上に直接に非常に薄い金属の層を形成する方法が可能であることについて説明する。項目230が示すように、電流が薄膜を横切って方向付けられ得るような様式でその薄い層に接続する金属の相互接続であってもよい。この電流は薄い金属を溶かすか又は蒸発させて、いずれにせよ、下にある収容セルを露出することができる。
【0056】
図5を参照すると、収容アレイの上に個々の金属フィルム層を接続することを可能にする金属線の経路を描いた項目500が示されている。個々のセルカバー層は、例えば項目510である正方形のアレイとして示され、その1つの例は項目510である。アレイ全体の実際の寸法に依存して、この図には描かれていない多くの追加的なセルがあってもよい。また、図には4本の横線(520、521、522、及び523)の組み合わせも示されており、これは例示を目的として、メモリセルのための経路と同様の様式で、「ワード線」として分類することができる。また、4本の縦線(530、531、532及び533)は、アレイの「ビット線」のサブセットとして描かれている。ビット線及びワード線がすべての収容セルにアドレスすることが可能な構成にセルを配列することによって、効率的なスキームが実現され得る。例えば、セル510の下に位置付けられている薬剤を放出することが望まれる場合は、電流が項目530を通ってからセルキャップ510を通り520から出るようにすることができる。
【0057】
タイミング回路及び制御回路
ここで
図6を参照すると、特定の収容セルを起動するための代表的な回路が描かれている。この回路は電源630を有する。この電源は、例えばアルカリ電池であり得る。電力は電源から係合要素620に送ることができる。この要素は、涙点プラグが眼周囲に置かれたときに「オン」の状態に設定することができる。「オン」の状態に設定されたとき、要素620を通して電源を他の回路要素へ送ることができる。項目621及び622は、振動回路要素(610)への経路指示であり得る。項目623及び624は、計数要素(640)への経路指示であり得る。項目625及び626は、多重化要素(660)への経路指示でり得る。そして、項目627及び628は、電力貯蓄要素(650)への経路指示であり得る。
【0058】
電圧が印加された涙点プラグにいったん電力が係合されると、振動回路はその特定の頻度の振動を開始する。要素610の出力は項目611及び612として計数要素へと送られ得る。計数要素は、入力線612の特定のサイクル数を数える負荷サイクルを有することができる。代表的な例として、振動の頻度と、計数要素の出力が1つ増分するまでに必要とされる計数との組み合わせを、1日のうちの時間に対応させることができる。したがって、この例では、1日に1回、要素640の出力は1計数増えることになる。この計数を、計数要素640からデータバス645を通して多重化要素660に渡される8ビットの数字にコード化することができる。
【0059】
多重化要素660はその8ビットの数字を受信し、その数字を第1のワード線661と第1のビット線662との独自の組み合わせにデコードすることができる。例えば661である特定のワード線が起動されると、電流に対してパワートランジスターである項目670をオンにすることができる。ビット線662はパワートランジスターである項目680をオンにすることができる。
図5に示したように、ビット線とワード線との組み合わせは、収容アレイの独自のアレイ要素のアドレスを指定することができる。パワートランジスターが係合されると、電力は電力蓄積要素(650)から線651を通り、次いでセル690を通って線671から出る。セル起動要素(起動セルを覆っている薄膜)を通じて電力が通ると、金属の薄膜が溶解し、収容セルの内部の可溶性の層が露出され、用量の薬剤が眼周囲に対して露出され得る。
【0060】
このタイプの回路を用いて可能な多くのバリエーションがあり得る。例えば、1つのセルの露出から別のセルの露出までのタイミングを決定する抵抗要素と協調して項目650の充電時間を使用することにより、振動回路の必要をなくすことが可能である。その他の可能なバリエーションとしては、例えば、すべての収容セルに対して独自の出力線にアドレスを指定する多重化要素が挙げられる。加えて、回路は、特定の時間に単一のセルを送達することができる。当業者には、非限定的な例として、プログラムされた異なる速度で空洞から個別の薬剤用量を送達すること、及び非限定的な例として、複数の空洞をプログラムして特定の時間帯に用量を送達することなど、電子制御された分配から様々な多様なことが派生され得ることは明確であろう。
【0061】
電圧が印加される収容アレイの電子機器の形成
図3を参照すると、制御要素、及び薬剤が充填された収容アレイを形成するための一般的な工程の流れが示されている。工程301で、半導体回路を金属層で処理して、収容セルの金属フィルムキャップと接続する。代表的な工程の流れでは、収容セルの場所の周囲の領域は、回路処理の第1の金属層に埋め込まれた正方形の形体を有することができる。次いで、第1の金属層(M1として分類され得る)を第1の絶縁層で封入することができる。この第1の絶縁層内のビアは孔を画定することができ、この孔を通して、開かれた収容セルは薬剤を提供することができる。
【0062】
その後の処理工程において、第2の金属層からビット線を形成することができる。第2のイメージ化された層がエッチングで除去され、次いで第2の絶縁層で封入されると、第2のビアが形成されて、M2すなわち第2の金属層への接続が可能となり得る。次いで、2つのビア形体にわたって、金属の薄い層が堆積され、次いで、エッチングによって個別の形体にされ、M1金属層の上に座っている薄い金属層によって孔がカバーされる。
【0063】
工程302に進み、ウェハを試験し、次いで、ハンドリングウェハをウェハの上面に取り付ける又は接着することができる。取り付けられたウェハを、次いで、標準的な半導体処理工程によって薄くして、平坦な表面を有する薄くされたシリコン層をもたらすことができる。次いで、工程303で、スルーシリコンビアをイメージ化し、エッチングによって収容セルのアレイを画定することができる。エッチングプロセスは、シリコン層及び次いで絶縁層を完全に貫通するようにエッチングして、特定のセルの上の正方形の金属形成物の上で最終的に止まるように行うことができる。
【0064】
次工程304において、開かれたスルーシリコンビアに対して、それぞれのスルーシリコンビアの下に露出されている金属層(M1)をエッチングすることが可能な化学エッチングを行うことができる。エッチング化学は、M1層の金属をエッチングするが薄膜層の金属のエッチングには有効でないものを選択することができる。
【0065】
工程305に進むと、次にスルーシリコンビアの内部又は下に存在する金属の側壁及び薄層を可溶性のコーティングで被覆することができる。これは、シリコン材料を薬剤から隔離する目的を果たすことができ、また、金属層が溶解又は蒸発したときの熱の影響から薬剤を隔離する目的も果たすことができる。工程306で、セルのそれぞれを適切な量の薬剤で充填する。次いで、溶解性材料でセルをキャップすることができる。その後、研磨工程を使用して背面を平面化し、裸のシリコンになるまで露出することができる。次いで、第3の金属コーティングの堆積によって背面をコーティングしてもよく、他の密封シール手段を採用してもよい。この代表的な流れにおいて、電子機器及び収容アレイが形成され得る。当業者にとって、数々の代替実施形態が本発明の範囲内で可能であることが明白であり得る。
【0066】
電圧が印加される収容アレイを有する涙点プラグの組み立て
ここで
図4を参照すると、電圧が印加される収容アレイを有する涙点プラグの構成要素を組み立てるための代表的な工程の流れが描かれている。工程401で、涙点プラグが形成される。この部品は、プラスチック成形プロセスによって形成することができる。工程402に進むと、涙点プラグの空洞にぴったり嵌るように電池要素を製造することができる。次いで、工程403において、相互接続層を電池要素に取り付けることができる。この取り付けを行う様々な方法が可能であるが、非限定的な例として、それらの要素の間をはんだ玉で接続することができる。
【0067】
工程404に進むと、
図3に描いた工程の流れによって形成されたものであり得る構成要素が相互接続層に接続される。シリコン構成要素と相互接続層とを、たわみ継手を使って互いに電気接続することができる。複数の要素を形成して得られた構成要素を、次いで、工程405に記述したように涙点プラグの空洞内に挿入することができる。その後、工程406で、涙点プラグの上に、すべての要素を固定された場所で把持するために有用であり得る頂部把持部品を配置することができる。
【0068】
電気制御された薬剤放出
ここで
図7の項目700を参照すると、電圧が印加される収容アレイを有する代表的な涙点プラグの利用について、いくらかの詳細とともに説明することができる。前の文節で言及したように、形成された、電圧が印加される涙点プラグは、
図7に項目710、720、730、740、750、760、770として示されている要素のすべてを包含することができる。これらの要素が使用中にどのように機能し得るかを考慮することが有益であり得る。
【0069】
涙点プラグ710は、患者の眼の涙点に埋め込むことができる。涙点プラグを眼に配置するプロセスでは、係合要素770を「オン」の状態に設定することができる。これは、電圧印加要素740からすべての他の要素へ送電することを可能にする。振動子要素及び計数要素(項目720)は、計数を開始することができる。1日後に、計数要素は位置を指数化することができ、次いで多重変換装置730は、単一のワード線と単一のビット線を構成して、電流をもたらすことができる。この組み合わせは、収容アレイ750内のアレイ要素を画定することになり、電流はこの第1の収容要素の上の薄い金属キャップの溶解を引き起こすことができる。このアレイ要素の開口は、セルに涙液が流入して溶解性材料を溶かし去ることを可能にし得る。次いで、よく制御された様式で、薬剤を急速に眼周囲に放出することができる。第2の計数器は、薄膜の溶解の失敗によって一定の電流の引き出しが引き起こされた場合に電池要素が放電しないように、特定の計数に達した後に多重変換装置の係合を解除することができる。
【0070】
〔実施の態様〕
(1) それぞれの収容セルが薬剤を収容するように構成され、起動トリガの受信に応じて前記収容セル内の前記薬剤を放出するように構成されたセル起動要素を備える、収容セルのアレイを備える半導体素子。
(2) 前記収容セルを既定時に起動するように構成された制御回路を備える、実施態様1に記載の半導体素子。
(3) 前記制御回路が、振動子と、計数器と、多重変換装置と、を備え、前記振動子は前記計数器の値を増加する(increment the counter)ように構成され、前記計数器は前記多重変換装置に計数を出力するように構成され、前記多重変換装置は前記計数を前記収容セルのアドレスにデコードするように構成される、実施態様2に記載の半導体素子。
(4) 前記制御回路によって選択された前記収容セルに起動トリガを送るように構成された相互接続回路を備える、実施態様2又は3に記載の半導体素子。
(5) 前記相互接続回路が、前記それぞれの収容セルのセル起動要素へのアドレス指定可能な接続を画定する複数のワード線及びビット線を備える、実施態様4に記載の半導体素子。
【0071】
(6) 前記相互接続回路が、前記それぞれの収容セルのセル起動要素に関して独自の出力線を備える、実施態様4に記載の半導体素子。
(7) 前記制御回路が、前記起動トリガを前記選択された収容セルに送るように前記相互接続回路を構成するように動作可能である、実施態様2〜6のいずれかに記載の半導体素子。
(8) 前記それぞれのセル起動要素が、前記セル内に前記薬剤を収容するように、かつ溶融されたときに前記薬剤を放出するように構成された可溶性カバーを備える、実施態様1〜7のいずれかに記載の半導体素子。
(9) 前記それぞれの可溶性カバーがそれぞれ対応する収容セルの上又は周囲に密封シールを形成する、実施態様8に記載の半導体素子。
(10) 前記それぞれの可溶性カバーが生体適合性の導電体を備える、実施態様8又は9に記載の半導体素子。
【0072】
(11) 前記制御回路によって選択された前記収容セルの前記可溶性カバーを通じて溶融電流を流すように構成された溶融回路を備え、前記溶融電流が前記起動トリガを定める、実施態様2〜7のいずれかに依存するときの実施態様8〜10のいずれかに記載の半導体素子。
(12) 前記制御回路が、前記既定時に前記溶融電流のスイッチをオンにするように構成される、実施態様11に記載の半導体素子。
(13) 前記溶融回路が、充電し、充電間隔の後に前記溶融電流を形成するように構成され、それによって前記充電間隔が前記既定時を定める、実施態様11に記載の半導体素子。
(14) 前記相互接続回路が、前記溶融回路からの溶融電流を前記選択された収容セルの前記可溶性カバーに送るように構成される、実施態様4〜6のいずれかに依存するときの実施態様11〜13のいずれかに記載の半導体素子。
(15) 既定時間の後に前記溶融電流のスイッチをオフにするように構成されたタイミング回路を備える、実施態様11〜14のいずれかに記載の半導体素子。
【0073】
(16) 前記それぞれの収容セルが、前記収容セル内に前記薬剤を収容する溶解性の層を備え、前記セル起動要素は前記溶解性の層の上に密封シールを形成し、前記起動トリガの受信に応じて前記溶解性の層をその周囲環境に対して露出するように構成される、実施態様1〜15のいずれかに記載の半導体素子。
(17) 1つ又は2つ以上の既定条件の検出に応じて前記半導体素子を稼動するように構成された係合回路を備える、実施態様1〜16のいずれかに記載の半導体素子。
(18) 実施態様1〜17のいずれかに記載の半導体素子を備える、涙点プラグ。
(19) 既定時に薬剤の個別の用量を放出するように構成された、涙点プラグ。
(20) 既定時に収容セル内に収容されている薬剤を放出するように、アレイの1つ又は2つ以上の収容セルを起動するように構成された制御回路を備える、涙点プラグ。
【0074】
(21) 収容セル内に収容されている薬剤を既定時に放出するために、アレイの1つ又は2つ以上の選択された収容セルに起動トリガを送るように構成された相互接続回路を備える、涙点プラグ。
(22) 内部に空洞を有する涙点プラグ本体と、
電圧印加装置と、
前記涙点プラグ内の回路への電圧印加装置の接続を起動する係合要素と、
既定時間にわたり計算するタイミング要素と、
そのタイミング計数を、指定された収容セルにデコードする多重変換装置と、
個々の要素が薄い密封シールフィルムで覆われている収容アレイと、を備える、涙点プラグ。
(23) 実施態様1〜17のいずれかに記載の半導体素子を備える、実施態様19〜22のいずれかに記載の涙点プラグ。
(24) それぞれの収容セルが薬剤を収容するように構成され、それぞれの収容セルが、起動トリガの受信に応じてその収容セル内の前記薬剤を放出するように構成されたセル起動要素を備える、収容セルのアレイを提供することを含む、半導体素子の製造方法。