(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリオキシエチレングリコール(以下、PEGという)/ポリオキシプロピレングリコール(以下、PPGという)共重合体と、ステアリン酸ポリグリセリルと、ポリビニルアルコール(以下、PVAという)とを必須成分として含有し、前記ステアリン酸ポリグリセリルの含有量は1〜30質量%、前記PVAの含有量は0.1〜15質量%であるシャワー用化粧剤。
前記PEG/PPG共重合体とステアリン酸ポリグリセリル又はステアリン酸塩とは均一に分散され、常温にて固形状である請求項1又は請求項2に記載のシャワー用化粧剤。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明を具体化した実施形態を詳細に説明する。
この実施形態のシャワー用化粧剤(単に化粧剤ともいう)は、PEG/PPG共重合体とステアリン酸又はその誘導体とを必須成分として含有するものである。このシャワー用化粧剤には、PVAを含有することが好ましい。シャワー用化粧剤には、さらに着色剤を含有することが好ましい。加えて、シャワー用化粧剤には、美容剤、その他の成分が含まれていてもよい。
【0014】
次に、シャワー用化粧剤の各成分について説明する。
(PEG/PPG共重合体)
PEG/PPG共重合体は、分子中にポリオキシエチレングリコール(ポリエチレングリコール)単位と、ポリオキシプロピレングリコール(ポリプロピレングリコール)単位とを有するブロック共重合体である。このPEG/PPG共重合体は、ノニオン(非イオン)界面活性剤であって、保湿効果を有する。シャワー用化粧剤に用いられるPEG/PPG共重合体としては、常温で固体であるものが好適である。
【0015】
このPEG/PPG共重合体を構成するPEG単位は、水(冷水又は温水)に対するシャワー用化粧剤の溶解性を高めるように機能し、PPG単位は水に対するシャワー用化粧剤の溶解性を抑制するように機能する。従って、これらのPEG単位とPPG単位の双方を有することにより、冷水及び温水に対するシャワー用化粧剤の溶解性を抑制し、溶出の持続性を図ることができる。
【0016】
PEG/PPG共重合体におけるPEGとPPGとの共重合比は特に制限されないが、PEG/PPG(質量比)=150〜200/35〜70の範囲であることが好ましい。この共重合比が150/35よりもPEGの割合が大きくなると、冷水及び温水に対するシャワー用化粧剤の溶解性が高くなり過ぎる傾向を示す。その一方、共重合比が200/70よりもPEGの割合が小さくなると、冷水及び温水に対するシャワー用化粧剤の溶解性が不十分となって好ましくない。
【0017】
ちなみに、PEG/PPG共重合体=150/35の凝固点は例えば52℃、PEG/PPG共重合体=200/70の凝固点は例えば55℃である。
なお、PEG/PPG共重合体の分子量(重合度)が高くなれば、冷水又は温水に対するシャワー用化粧剤の溶出速度が抑えられ、膨潤も抑制されるが、シャワー用化粧剤の使用時における体感(ぬめり感)が悪くなるため、それらを考慮してPEG/PPG共重合体の分子量が適宜設定される。
【0018】
PEG/PPG共重合体としては、下記のものを挙げることができる(数字は質量比を示す)。
PEG/PPG−3/17共重合体、PEG/PPG−5/30共重合体、PEG/PPG−5/35共重合体、PEG/PPG−8/55共重合体、PEG/PPG−10/30共重合体、PEG/PPG−10/65共重合体、PEG/PPG−12/35共重合体、PEG/PPG−16/17共重合体、PEG/PPG−20/9共重合体、PEG/PPG−20/20共重合体、PEG/PPG−20/60共重合体、PEG/PPG−22/25共重合体、PEG/PPG−25/30共重合体、PEG/PPG−30/35共重合体、PEG/PPG−35/40共重合体、PEG/PPG−50/40共重合体、PEG/PPG−150/35共重合体、PEG/PPG−160/30共重合体、PEG/PPG−190/60共重合体、PEG/PPG−200/40共重合体、PEG/PPG−200/70共重合体、PEG/PPG−240/60共重合体、PEG/PPG−300/55共重合体。
【0019】
(ステアリン酸又はその誘導体)
このステアリン酸(C
17H
35COOH)又はその誘導体は、主にシャワー用化粧剤を使用したときの体感(ぬめり感)を向上させるために配合される。このステアリン酸の誘導体としては、ステアリン酸ポリグリセリルのほか、ステアリン酸塩、例えばステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等が用いられる。ステアリン酸ポリグリセリルとして具体的には、ステアリン酸とポリグリセリン−5(5量体)のエステルであるステアリン酸ポリグリセリル−5〔CAS登録番号:37349-34-1(Generic)〕、ステアリン酸とポリグリセリン−10(10量体)のエステルであるステアリン酸ポリグリセリル−10(CAS登録番号:79777-30-3)等が挙げられる。
【0020】
(PVA)
PVAは、多数の水酸基を有することから親水性が非常に強く、特に温水に可溶という特性がある。このPVAの水に対する溶解度は温度に応じて変化し、冷水よりも温水に対する溶解度が高い。そのため、PVAの含有量を調節することによって、冷水や温水に対するシャワー用化粧剤全体の溶解度を調節することができる。また、PVAを添加することによって、シャワー用化粧剤の膨潤性を抑制することができる。
【0021】
このPVAは、ポリ酢酸ビニルのケン化反応により得られ、下記の一般式で示される。
−〔CH
2−CH(OH)〕
m−〔CH
2−CH(OCOCH
3)〕
n
ここで、PVAの重合度はm+n、ケン化度はm/(m+n)で表される。
【0022】
シャワー用化粧剤に用いられるPVAとしては、温水に対する溶解性を高めることができるとともに、膨潤性を抑えることができる点から、部分ケン化PVAが好ましい。この部分ケン化PVAは、ケン化度が好ましくは86〜90モル%、重合度が好ましくは1800〜2000のものである。ケン化度が86モル%未満又は重合度が1800未満の場合には、シャワー用化粧剤が冷水や温水に対して膨潤しやすくなる傾向が強くなって好ましくない。その一方、ケン化度が90モル%より大きく又は重合度が2000より大きい場合には、冷水や温水に対するシャワー用化粧剤の溶解性が低下して好ましくない。
【0023】
(着色剤)
着色剤は、シャワー用化粧剤がシャワーヘッドの化粧剤カートリッジに収容されて通水が継続されると、水を含んで膨潤して次第に透明になり、化粧剤カートリッジ内のシャワー用化粧剤の残量の視認が困難になるのを抑制するために使用される。
【0024】
この着色剤としては、白色を示す酸化チタン、黒色、赤色等を示す酸化鉄等の酸化金属系着色剤、赤色2号、黄色4号等のタール系着色剤、顔料等のレーキ系着色剤等が用いられる。
【0025】
(美容剤)
美容剤としては、コラーゲン、セラミド、プラセンタ、各種ビタミン(ビタミンC、ビタミンE等)、天然香料、合成香料、調合香料(フレグランス等)、油剤、保湿剤、香料、消臭剤、制汗剤、色素、防腐剤、乳化剤、アミノ酸、水等を挙げることができる。美容剤の種類は限定されるものではなく、公知のものを使用してもよい。
【0026】
シャワー用化粧剤中の特にPEG/PPG共重合体及びPVAにより、美容剤は無駄に溶出することなく、長期間に亘って溶出することができる。
(その他の成分)
その他の成分としては、粘度調整剤、賦形剤等が挙げられる。
【0027】
以上のシャワー用化粧剤は化粧剤カートリッジに収納されるとともに、管理を容易にするために、常温で固形状であることが好ましい。すなわち、シャワー用化粧剤をシャワーで使用しない場合に形状を維持するために常温において固形状であることが好ましい。
【0028】
また、PEG/PPG共重合体、ステアリン酸又はその誘導体、PVA、着色剤、美容剤等は、均一に分散されることにより、使用時に化粧剤カートリッジから溶出する場合に、含まれる成分を均一に溶出させることができるため好ましい。
【0029】
(シャワー用化粧剤の組成)
シャワー用化粧剤を構成するPEG/PPG共重合体は、シャワー用化粧剤の主成分であって、シャワー用化粧剤中に80〜97質量%含まれることが好ましい。このPEG/PPG共重合体の含有量が80質量%を下回ると、冷水や温水に対するシャワー用化粧剤の適度な溶解性を得ることが難しく、また保湿性を得ることも難しくなる。その一方、PEG/PPG共重合体の含有量が97質量%を上回ると、ステアリン酸又はその誘導体やPVAの含有量が相対的に減少し、それらの成分に基づく効果が得られず、好ましくない。
【0030】
前記ステアリン酸又はその誘導体は、シャワー用化粧剤中に1〜30質量%含まれることが好ましい。ステアリン酸又はその誘導体の含有量が1質量%を下回る場合、シャワー用化粧剤を含むシャワーを浴びたときの体感を良好にすることが難しく、好ましくない。一方、ステアリン酸又はその誘導体の含有量が30質量%を上回る場合、ステアリン酸又はその誘導体が過剰となって、PEG/PPG共重合体の含有量が相対的に減少し、シャワー用化粧剤の溶出量や持続性を向上させることができず、好ましくない。
【0031】
また、PVAは、シャワー用化粧剤中に0.1〜15質量%含まれることが好ましく、3.5〜15質量%含まれることがさらに好ましい。PVAの含有量が0.1質量%未満の場合には、シャワー用化粧剤の使用時に冷水又は温水に接触したとき、シャワー用化粧剤が膨潤しやすくなって好ましくない。その一方、PVAの含有量が15質量%を超える場合には、PEG/PPG共重合体及びステアリン酸又はその誘導体の含有量が相対的に少量になり、それらの成分に基づく効果が十分に発揮されず、好ましくない。
【0032】
前記着色剤は、シャワー用化粧剤中に0.1〜1質量%含まれることが好ましい。着色剤の含有量が0.1質量%より少ない場合には、通水の継続に伴うシャワー用化粧剤の透明化を抑え、視認性の向上を図ることが難しくなる。その一方、着色剤の含有量が1質量%より多い場合には、シャワー用化粧剤の溶解に伴って化粧剤カートリッジ内から着色剤が溶出したりして好ましくない。
【0033】
さらに、美容剤は、シャワー用化粧剤中に2〜7質量%含まれることが好ましい。美容剤の含有量が2質量%より少ない場合には、美容剤の機能に基づく保湿性、芳香性等の効果を十分に発現することができない。一方、美容剤の含有量が7質量%より多い場合には、PEG/PPG共重合体やステアリン酸又はその誘導体の含有量が相対的に少なくなってそれらの成分による機能の発現が不足し、シャワー用化粧剤として好ましくない。
【0034】
加えて、その他の成分が配合される場合には、シャワー用化粧剤中に5質量%以下であることが望ましい。その他の成分の含有量が5質量%を超えると、前述した各成分の含有量が低下し、シャワー用化粧剤の本来の効果が得られず好ましくない。
【0035】
(化粧剤カートリッジ及びシャワーヘッド)
次に、実施形態の化粧剤カートリッジ(以下、単にカートリッジともいう)50が組み込まれるシャワーヘッド10と、カートリッジ50の構成を
図1〜
図4に基づいて説明する。
【0036】
図1(a),(b)に示すように、シャワーヘッド10は、ヘッド部11とグリップ部12とから構成されている。ヘッド部11にはグリップ部12内の水路70を
図2(a),(b)に示す下流側の流路71,72のうちのいずれか一方と連通させるために切替え操作される切替部20が設けられている。流路71,72は切替部20の下流側で合流されている。この切替部20は、第1操作部材45及び第2操作部材48を備えている。ヘッド部11の先端部には多数の散水孔16が形成されている。
【0037】
図2(a),(b)に示すように、前記グリップ部12の水路70の内部には、前記カートリッジ50が交換可能に収容されている。グリップ部12の内周面とカートリッジ50の外周面との間における水路70には通水間隙12cが形成されている。ヘッド部11とグリップ部12とは螺合部12dを介して連結され、その螺合を解除することにより、水路70の図示上部が開放されてカートリッジ50を脱着できるようになっている。
【0038】
図3(a),(b)に示すように、水路70の下流側の底部には、複数の嵩上げ部12eが形成されている。
図2(a),(b)に示すように、この嵩上げ部12e上にカートリッジ50を載置することによって、冷水及び温水が、水路70内に拡散される。グリップ部12の内周面には、カートリッジ50の外周面に係合して、カートリッジ50を水路70の中心位置において位置決めする複数の位置決めリブ部12fが形成されている。
【0039】
図4(a),(b)に示すように、カートリッジ50は蓋部材61を有する。カートリッジ50は、有底筒体形状のカートリッジケース51を備える。カートリッジケース51の底壁には、複数のスリット部51aが形成されている。
図4(b)に示すように、カートリッジケース51の底壁の中心には、スリット部51aと連通する円柱形状の弁室51bが形成されている。この弁室51bは、図示上端の開口51cを介して後述する内管53と連通する。開口51cは、流入口に相当し、内管53は通水路に相当する。
【0040】
図2(a),(b)及び
図4(b)に示すように、弁室51b内には、逆止弁として機能するゴム等の弾性材よりなるダックビル弁52が配置されている。ダックビル弁52の先端部52bは2つに割れて、その先端部52bは弾性接触される。
【0041】
図2(a),(b)及び
図4(b)に示すように、カートリッジケース51の軸心部には、下部が前記弁室51bと一体化された円筒形状の内管53が配置されている。内管53には、周方向に、かつ長さ方向の全長にわたって多数の連通孔53cが所定ピッチで透設されている。連通孔53cは連通部に相当する。内管53及び弁室51bとカートリッジケース51との間には、化粧剤収納部54が区画されている。カートリッジケース51の下流側端部には筒状の出口部材55が嵌合され、その内部には内管53の端部が嵌入されて、出口部材55と内管53とが連通されている。化粧剤収納部54の収納空間内には、固形で水溶性のシャワー用化粧剤100が収容されている。前記化粧剤収納部54の収納空間は収納室に相当する。
【0042】
そして、シャワー用化粧剤100が溶解されていない初期状態においてシャワー用化粧剤100の上流側端部と、出口部材55の上端との間には空間101が形成されている。本実施形態では、シャワー用化粧剤100の美容剤として、例えば保湿成分を含む保湿剤を用いる。このシャワー用化粧剤100は、内管53の連通孔53cを介して導入された冷水及び温水によって溶解されて、保湿液を生成する。そして、保湿液は、出口部材55を介してカートリッジ50の外に流出する。
【0043】
図4(b)に示す内管53の図示上端部と出口部材55との間には、網状のストレーナ57が配置されている。このストレーナ57は金網等よりなり、微細な孔が多数形成されている。このストレーナ57は、固形状態のシャワー用化粧剤100から分離するとともに、連通孔53cから流出した粒体をヘッド部11側に流出しないように留める。ストレーナ57は、全体として逆カップ状をなし、
図4(b)の上端側つまり下流側に向かって膨出されている。
【0044】
次に、以上のように構成されたカートリッジ50及びその中に収容されたシャワー用化粧剤100の作用について説明する。
前記保湿液を含まないシャワーを利用する場合には、
図2(a)に示すように、第2操作部材48を押し込む。このようにすれば、水路70の通水間隙12c側の流路71が開放されるとともに、内管53側の流路72が閉鎖されて、冷水や温水が、シャワーホースを介し、通水間隙12cを通ってヘッド部11の流路71に流れ、散水孔16から放出される。この場合、内管53の下流側の流路72が閉塞されているため、ダックビル弁52は開放されず、カートリッジ50の内管53の内部には、水が流入しない。従って、この状態において、ダックビル弁52が自身の弾性によって閉塞されており、内管53内の水圧がダックビル弁52の上流側の水圧より高くなったとしても、その圧力差はダックビル弁52に対して弁閉鎖方向に作用する。従って、内管53内の保湿液がシャワーヘッド10の外部のシャワーホース側に逆流することを回避できる。
【0045】
その一方、保湿液を含むシャワーを利用する場合には、第1操作部材45の押圧部45aを押圧すると、流路72が開放される。従って、冷水又は温水は、前記通水間隙12cから流路71側へ流れるだけではなく、ダックビル弁52の上流側の流路72が開放されるため、
図2のダックビル弁52が開かれて、カートリッジ50の内管53の内部に流入する。内管53内に流入した冷水又は温水は、内管53の連通孔53cを介して、化粧剤収納部54に流入される。化粧剤収納部54に流入された冷水又は温水は、化粧剤収納部54のシャワー用化粧剤100を溶解し、保湿液となる。その保湿液は連通孔53cから内管53内に流出し、ストレーナ57を介して、出口部材55内から流路72に流入する。そして、この流路72内の保湿液は、切替部20の下流側において通水間隙12cから流路71内を流れてきた冷水又は温水と混合されて、希釈された保湿液となる。
【0046】
そして、この希釈された保湿液は、散水孔16から放出される。なお、弁室51bの壁には孔が形成されていないが、シャワー用化粧剤100が溶解によって小さくなれば、連通孔53cを通して化粧剤収納部54に入り込んだ冷水や温水が小さくなったシャワー用化粧剤100の周囲で乱流になったり、小さくなったシャワー用化粧剤100が浮き上がったりする。このため、弁室51bの壁に孔が形成されていなくても、シャワー用化粧剤100は適切に溶解されて連通孔53cから流出される。
【0047】
以上のように、第1,第2操作部材45,48の選択操作により、保湿液を含まない通常のシャワーと保湿液を含むシャワーとを得ることができる。この場合、適切濃度の保湿液が得られるように、前記内管53の内径,連通孔53cの開口の大きさや数、或いは配置位置等が設定される。このようにすれば、化粧剤収納部54内に流入した冷水又は温水によってシャワー用化粧剤100が少しずつ削り取られて、瞬時に溶解される。
【0048】
加えて、シャワー用化粧剤100の下流側に空間101が形成され、しかもシャワー用化粧剤100の上端とストレーナ57との間に間隔が形成され、さらにストレーナ57が下流側に膨出状に形成されているため、シャワー用化粧剤100から剥離して遊離状態になった大きめ粒体がストレーナ57の上流側において水流によって乱舞するように動く。このため、大きめの粒体がストレーナ57内側に付着して流路が塞がれることを防止できる。
【0049】
そして、シャワー用化粧剤100には必須成分としてPEG/PPG共重合体が含まれていることから、冷水又は温水に対する溶解性を抑えつつ、一定の溶解性を発現することができる。また、シャワー用化粧剤100には必須成分であるステアリン酸又はその誘導体が含まれているため、シャワー使用時においてぬるっとした感触が得られ、体感を良好にすることができる。
【0050】
さらに、シャワー用化粧剤100にはPVAが含まれている。このPVAの水に対する溶解度は温度に応じて変化し、冷水よりも温水に対する溶解度が高い。そのため、PVAの含有量を調節することによって、冷水や温水に対するシャワー用化粧剤100全体の溶解度を調節することができる。また、PVAを添加することによって、シャワー用化粧剤100の膨潤性を抑制することができる。
【0051】
その上、シャワー用化粧剤100には酸化チタン等の着色剤が含まれていることから、シャワー用化粧剤100が膨潤して透明化しても白色等の着色により、シャワー用化粧剤100の残量を簡単に視認することができる。加えて、美容剤としての保湿剤により、シャワーを浴びた後の肌のしっとり感を発現することができる。
【0052】
このように、本実施形態のシャワー用化粧剤100によれば、冷水又は温水に対する過度の溶解性を抑えることができると同時に、一定の溶出量で長期間に亘って安定した状態で溶出させることができる。その上、シャワー使用中における心地良い体感を得ることができる。
【0053】
よって、この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態のシャワー用化粧剤は、PEG/PPG共重合体と、ステアリン酸又はその誘導体とを必須成分として含有する。このため、PEG/PPG共重合体は、分子中にPEG単位とPPG単位とを有し、両重合単位の相乗的な働きによって水や温水に対する一定の溶解性と、過度の溶解性を抑える機能を発現することができる。従って、シャワー用化粧剤に配合された各成分を無駄に溶出させることなく、長期間に亘って持続的に溶出させることができる。
【0054】
一方、ステアリン酸又はその誘導体は、シャワー用化粧剤の使用時におけるぬめり感を発現させて心地良くシャワーを浴びることができる。
よって、本実施形態のシャワー用化粧剤によれば、水や温水に対する一定の溶出量を確保できる一方、過度の溶解性を抑制して十分な持続性を得ることができるとともに、使用時における体感を向上させることができるという効果を奏する。
【0055】
(2)前記PEG/PPG共重合体とステアリン酸又はその誘導体とは均一に分散され、常温にて固形状である。このため、シャワー用化粧剤をシャワーで使用しない場合にその形状を維持することができるとともに、使用時にはシャワー用化粧剤に含まれる成分を化粧剤カートリッジから均一に溶出させることができる。
【0056】
(3)このステアリン酸又はその誘導体の含有量は1〜30質量%である。この場合、他成分の働きを阻害することなく、ステアリン酸又はその誘導体の機能を十分に発揮することができるとともに、使用時にシャワー用化粧剤が冷水又は温水に触れて膨潤することを抑制することができる。
【0057】
(4)シャワー用化粧剤にはPVAが含まれている。このPVAは水酸基が多く、親水性が高いため、冷水又は温水に対する溶解性に優れるとともに、特に35℃以上の温水に対する溶解性が良好である。従って、有効成分として前記PEG/PPG共重合体とPVAとを組合せることにより、シャワー用化粧剤は、冷水又は温水に対する溶解性を抑制しつつ、一定の溶解性を確保することができる。
【0058】
(5)前記PVAの含有量が0.1〜15質量%であることにより、PVAとPEG/PPG共重合体との協働作用を良好に発揮することができる。
(6)シャワー用化粧剤は着色剤を含有する。この結果、シャワー用化粧剤を化粧剤カートリッジに収納して使用を継続したとき、シャワー用化粧剤の透明化を抑え、着色剤に基づく着色により化粧剤カートリッジ内のシャワー用化粧剤の残量を明瞭に認識することができる。
【0059】
(7)本実施形態の化粧剤カートリッジは、冷水又は温水を取り込む開口51c(流入口)と、開口51cに連通する内管53(通水路)と、シャワー用化粧剤を収納する収納空間(収納室)を有している。前記収納空間と前記内管53(通水路)を連通して内管53(通水路)を通過する冷水又は温水が前記収納空間を出入り可能な連通孔53c(連通部)を有する化粧剤収納部54が設けられている。この化粧剤収納部54には、上記シャワー用化粧剤100が収納されている。
【0060】
この結果、本実施形態によれば、冷水や温水に対する一定の溶出量を確保できると同時に、過度の溶解性を抑制し、シャワー用化粧剤を長期に亘って持続的に使用することができ、さらに、シャワー用化粧剤の使用時における体感を向上させることができる。
【0061】
(変更例)
・前記PEG/PPG共重合体には、PEG/PPG=150〜200/35〜70の範囲外のPEG/PPG共重合体が含まれていても差し支えない。
【0062】
・前記ステアリン酸又はその誘導体として、2種類以上のステアリン酸又はその誘導体を組合せて使用してもよい。
・前記PVAとしては、ケン化度が86〜90モル%以外の部分ケン化PVAが含まれていてもよい。
【0063】
・上記実施形態において、カートリッジ50に収容されるシャワー用化粧剤100としては、香水、スリミング剤、美白作用を有する化粧水、制汗剤などの他の化粧用添加剤、ニキビ、アトピー、皮膚病対策用の薬剤であってもよい。また、上記実施形態においては、固形の薬剤を用いたが、薬剤の形状はこれに限定されず、例えば、ジェル状等であってもよい。
【0064】
・上記実施形態においては、シャワーヘッド10から水のみを散布する場合には、カートリッジ50に水が流入しないように、カートリッジ50にダックビル弁52を設けた。水のみを散布する際にカートリッジ50に水が流入しないようにする逆止弁は、このダックビル弁52以外の構成であってもよい。また、水のみを散布する場合に、カートリッジ50においてシャワー用化粧剤100が溶解した溶液が流出しない構成であれば、カートリッジ50に水が流入する構成にしてもよい。
【0065】
(請求項以外の技術的思想)
前記実施形態によって把握される技術的思想を以下に記載する。
(A)前記PEG/PPG共重合体のPEGとPPGの質量比は、PEG/PPG=150〜200/35〜70である請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のシャワー用化粧剤。この場合、冷水又は温水に対するシャワー用化粧剤の溶解性を適切なものにでき、その結果溶出量の持続性を確保することができる。
【0066】
(B)前記PVAは、ケン化度が86〜90モル%の部分ケン化PVAである請求項2乃至請求項6のいずれか1項に記載のシャワー用化粧剤。この構成によれば、冷水や温水に対するシャワー用化粧剤の良好な溶解性を図ることができるとともに、シャワー用化粧剤の膨潤を抑え、適度な通水性を維持することができる。
【0067】
(C)前記PEG/PPG共重合体、ステアリン酸又はその誘導体、PVA、着色剤或いは美容剤は、均一に分散され、常温にて固形状である請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のシャワー用化粧剤。この構成により、シャワー用化粧剤の使用前における形状を維持して取扱性を良好にできるとともに、シャワー用化粧剤の使用時に、化粧剤カートリッジからこれらの成分を均一に溶出させることができる。
【実施例】
【0068】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1、2及び比較例1、2)
実施例1においては、PEG/PPG−150/35共重合体90.5質量%と、ステアリン酸ポリグリセリル9.5質量%とを、下記に示す製造方法により混合してシャワー用化粧剤を調製した。また、実施例2においては、PEG/PPG共重合体として、PEG/PPG−200/70共重合体を使用した以外は、実施例1と同様にしてシャワー用化粧剤を調製した。
【0069】
上記ステアリン酸ポリグリセリルは、ステアリン酸ポリグリセリル−10(CAS登録番号:79777-30-3)を使用した。
(製造方法)
シャワー用化粧剤の製造方法について説明する。
【0070】
上記の2成分を真空乳化釜に投入し、パドルで攪拌しながら真空状態で、80℃に加温し、均一に溶解した。なお、加温温度は本実施例では80℃であるが、溶解するのに適切な温度であればよい。次いで、パドルで攪拌しながら、真空状態で冷却を開始し、所定温度(例えば65℃程度)まで低下した後、さらに攪拌しながら冷却を継続して、前記所定温度よりもさらに低下した取り出し温度になった時点で取り出して、所定形状に成形した。取り出したシャワー用化粧剤は、常温(例えば、25℃)では、固形状となる。なお、前記取り出し温度は、釜から取り出し易い温度(本実施例では65℃としている。)であれば制限されない。
【0071】
所定形状としては、このシャワー用化粧剤を装填するカートリッジに収納できる形状であれば限定されるものではない。例えば、前記カートリッジに収納できるシャワー用化粧剤の形状としては、粉末、粒状、柱状、筒状等の適宜の形状を選択できる。
【0072】
一方、比較例1では、前記実施例1のシャワー用化粧剤において、ステアリン酸ポリグリセリルを配合することなく、PEG/PPG−150/35共重合体のみでシャワー用化粧剤を調製した。
【0073】
また、比較例2では、前記実施例2のシャワー用化粧剤において、ステアリン酸ポリグリセリルを配合することなく、PEG/PPG−200/70共重合体のみでシャワー用化粧剤を調製した。
【0074】
なお、実施例と比較例のシャワー用化粧剤の形状は、形状を同一条件とするために、同一の筒形状とした。
(試験方法)
そして、実施例1、2及び比較例1、2のシャワー用化粧剤を、前記カートリッジ50に充填し、シャワーヘッドより9L/分の流量で35℃、40℃及び45℃の温水を次のような試験サイクルで散水した。すなわち、試験サイクルは、1分間温水を通水し、1時間室温で放置し、次いで15分間温水を通水し、40℃で8時間乾燥後、カートリッジ50の質量を測定して、カートリッジ50内のシャワー用化粧剤の減量(g)を測定し、溶出濃度(ppm)を求めた。その結果を表1及び
図5、
図6に示した。
【0075】
図5において、○は実施例1、△は比較例1及び
図6において、○は実施例2、△は比較例2を示す。
【0076】
【表1】
表1及び
図5に示したように、実施例1においては、温水の温度にかかわらず、シャワー用化粧剤の溶出濃度を4.7〜27.1ppmという低い濃度に抑えることができた。その一方、比較例1の場合には、温水の温度が35℃のとき溶出濃度が27.6ppmという比較的高い溶出濃度を示し、45℃のときには溶出濃度が55.3ppmまで上昇した。
【0077】
また、表1及び
図6に示したように、実施例2においては、温水の温度にかかわらず、シャワー用化粧剤の溶出濃度を3.4〜11.6ppmという低い濃度に抑えることができた。一方、比較例2においても、温水の温度にかかわらず、シャワー用化粧剤の溶出濃度を5.6〜10.7ppmという低い濃度に抑えることができた。
【0078】
また、実施例1、2及び比較例1、2のシャワー用化粧剤に関し、シャワー使用中の体感(ぬめり感)、乾燥後の保湿感及び固形形状維持性について測定し、それらの結果を表2に示した。表2において、○は良好、△はやや良好、×は変化なし又は形状を維持できないことを意味する。
【0079】
【表2】
表2に示したように、実施例1及び2では、シャワー使用中の体感は良好であるとともに、乾燥後の保湿感も概ね良好であり、固形形状維持性も、水による膨潤はなく、概ね良好な結果が得られた。一方、比較例1及び2の場合には、乾燥後の保湿感及び固形形状維持性は概ね良好であったが、シャワー使用中のぬめり感は得られず、体感の悪い結果であった。
【0080】
(実施例3)
この実施例3においては、PEG/PPG−150/35共重合体71.6質量%と、ステアリン酸ポリグリセリル28.4質量%とを、前記実施例1に示す製造方法により混合してシャワー用化粧剤を調製した。
【0081】
得られたシャワー用化粧剤について、実施例1と同様にしてカートリッジ50内のシャワー用化粧剤の減量(g)から溶出濃度(ppm)を求め、その結果を前記表1に示した。
【0082】
表1に示したように、実施例3においては、ステアリン酸ポリグリセリルの含有量を増加させたが、温水の温度にかかわらず、シャワー用化粧剤の溶出濃度を8.5〜18.5ppmという十分低い濃度に抑えることができた。
【0083】
また、実施例3のシャワー用化粧剤に関し、シャワー使用中の体感(ぬめり感)、乾燥後の保湿感及び固形形状維持性について実施例1と同様にして測定し、それらの結果を表2に示した。その結果、実施例3では、使用中の体感、使用後の保湿感及び固形形状維持性がそれぞれ実施例1及び2と同等であった。
【0084】
(実施例4〜6)
実施例4においては、PEG/PPG−150/35共重合体92.0質量%と、ステアリン酸ポリグリセリル1.0質量%と、PVA7.0質量%とを、前記実施例1に示す製造方法により混合してシャワー用化粧剤を調製した。実施例5においては、PEG/PPG−150/35共重合体86.5質量%と、ステアリン酸ポリグリセリル10.0質量%と、PVA3.5質量%とを、前記実施例1に示す製造方法により混合してシャワー用化粧剤を調製した。また、実施例6においては、PEG/PPG−200/70共重合体90.3質量%と、ステアリン酸ポリグリセリル9.5質量%と、PVA0.2質量%とを、前記実施例1に示す製造方法により混合してシャワー用化粧剤を調製した。
【0085】
実施例4〜6において、PVAは、ケン化度が86〜90モル%、重合度が1800〜2000のものを使用した。
得られたシャワー用化粧剤について、実施例1と同様にしてカートリッジ50内のシャワー用化粧剤の減量(g)から溶出濃度(ppm)を求め、その結果を表3に示した。
【0086】
【表3】
表3に示したように、実施例4においては、温水の温度にかかわらず、シャワー用化粧剤の溶出濃度を10.7〜22.2ppmという低い濃度に抑えることができたが、PVAを7.0質量%配合したため、実施例1に比べて35℃の温水に対するシャワー用化粧剤の溶解性が高くなった。実施例5においては、温水の温度にかかわらず、シャワー用化粧剤の溶出濃度を12.0〜28.2ppmという低い濃度に抑えることができたが、PVAを3.5質量%配合したため、実施例1に比べて温水に対するシャワー用化粧剤の溶解性が若干高くなった。実施例6においては、温水の温度にかかわらず、シャワー用化粧剤の溶出濃度を3.4〜11.6ppmという低い濃度に抑えることができた。この実施例6では、PVAの含有量が0.2質量%という少量であったため、温水に対するシャワー用化粧剤の溶解性は実施例2とほぼ同等であった。
【0087】
また、実施例4〜6のシャワー用化粧剤に関し、シャワー使用中の体感(ぬめり感)、乾燥後の保湿感及び固形形状維持性について実施例1と同様にして測定した。その結果、実施例4〜6では、使用中の体感、使用後の保湿感及び固形形状維持性がそれぞれ実施例1及び2とほぼ同等であった。
【0088】
(実施例7及び8)
実施例7においては、PEG/PPG−150/35共重合体91.2質量%と、ステアリン酸ポリグリセリル5.0質量%と、PVA3.5質量%と、着色剤としての酸化チタン0.3質量%とを、前記実施例1に示す製造方法により混合してシャワー用化粧剤を調製した。また、実施例8においては、PEG/PPG−150/35共重合体90.9質量%と、ステアリン酸ポリグリセリル5.0質量%と、PVA3.5質量%と、着色剤としての酸化チタン0.6質量%とを、前記実施例1に示す製造方法により混合してシャワー用化粧剤を調製した。
【0089】
得られたシャワー用化粧剤について、実施例1と同様にしてカートリッジ50内のシャワー用化粧剤の減量(g)から溶出濃度(ppm)を求め、その結果を表4に示した。
【0090】
【表4】
表4に示したように、実施例7においては、温水の温度にかかわらず、シャワー用化粧剤の溶出濃度を13.4〜36.9ppmという低い濃度に抑えることができた。実施例8においては、温水の温度にかかわらず、シャワー用化粧剤の溶出濃度を10.6〜39.1ppmという低い濃度に抑えることができた。
【0091】
また、実施例7及び8のシャワー用化粧剤に関し、シャワー使用中の体感(ぬめり感)、乾燥後の保湿感及び固形形状維持性について実施例1と同様にして測定した。その結果、実施例7及び8では、使用中の体感及び固形形状維持性がそれぞれ実施例1とほぼ同等であった。
【0092】
さらに、カートリッジ50内のシャワー用化粧剤の色調を目視により観察した。その結果、実施例7及び8においては、シャワー用化粧剤の色調は、酸化チタンに基づく白色が良好に維持され、十分な視認性が得られた。