特許第6403950号(P6403950)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6403950粘土鉱物を含有する噴霧用の皮膚保湿用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6403950
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】粘土鉱物を含有する噴霧用の皮膚保湿用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/25 20060101AFI20181001BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20181001BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20181001BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20181001BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20181001BHJP
   A61K 8/894 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   A61K8/25
   A61K8/02
   A61Q19/00
   A61K8/34
   A61K8/891
   A61K8/894
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-253134(P2013-253134)
(22)【出願日】2013年12月6日
(65)【公開番号】特開2015-110535(P2015-110535A)
(43)【公開日】2015年6月18日
【審査請求日】2016年10月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】赤塚 秀貴
【審査官】 松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−128586(JP,A)
【文献】 特開平09−241115(JP,A)
【文献】 特開平11−005715(JP,A)
【文献】 特開平03−070788(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3144826(JP,U)
【文献】 特開平11−029459(JP,A)
【文献】 特表2007−526224(JP,A)
【文献】 特開2004−346046(JP,A)
【文献】 特表2003−506472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00− 90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘土鉱物からなる保湿剤と炭素数が2〜4である揮発性のアルコールと、揮発性油剤と、非イオン性界面活性剤を含み、
前記非イオン性界面活性剤がポリエーテル変性シリコーンであり、
前記アルコールの含有量が40〜99質量%であることを特徴とする、噴霧用の皮膚保湿用組成物。
【請求項2】
前記粘土鉱物と前記アルコールの重量比が、1:70〜1:8であることを特徴とする、請求項1に記載の噴霧用の皮膚保湿用組成物。
【請求項3】
前記揮発性油剤が揮発性シリコーン油であることを特徴とする請求項1又は2に記載の噴霧用の皮膚保湿用組成物。
【請求項4】
前記ポリエーテル変性シリコーンが、ポリエチレングリコール変性シリコーン、及び/又はポリグリセリン変性シリコーンであることを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の噴霧用の皮膚保湿用組成物。
【請求項5】
前記粘土鉱物の含有量が0.2〜5質量%であることを特徴とする、請求項1〜の何れか1項に記載の噴霧用の皮膚保湿用組成物。
【請求項6】
前記粘土鉱物が有機変性されていてもよいヘクトライトであることを特徴とする、請求項1〜の何れか1項に記載の噴霧用の皮膚保湿用組成物。
【請求項7】
水を含まないことを特徴とする、請求項1〜の何れかに記載の噴霧用の皮膚保湿用組成物。
【請求項8】
請求項1〜の何れかに記載の噴霧用の皮膚保湿用組成物を噴霧容器に収容してなることを特徴とする皮膚保湿用の噴霧製品。
【請求項9】
前記噴霧容器がエアゾール容器であり、該エアゾール容器にさらに噴射剤を充填してなることを特徴とする、請求項に記載の皮膚保湿用の噴霧製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘土鉱物を保湿剤として含む噴霧用の皮膚保湿用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
粘土鉱物は、保湿性、吸着性、結合性、懸濁性、膨潤性、皮膜形成性、増粘性、乳化作用などの性質を有することから、従来、化粧料の成分として利用されてきた。例えば、特許文献1及び2には、粘土鉱物の持つ乳化作用を利用した継時的に安定な油中水型乳化組成物が開示されている。また、特許文献3及び4には粘土鉱物の持つ保湿性を利用した皮膚外用剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−29459号公報
【特許文献2】特開2010−30933号公報
【特許文献3】WO2003/041664号パンフレット
【特許文献4】特開2002−121128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の特許文献1〜4に記載される粘土鉱物を含む皮膚外用剤は、保湿性に優れたものであるが、使用時にべたつき感を生じるものであった。そこで、本発明の解決しようとする課題は、高い保湿性を有し、しっとりとした使用感とさっぱりとした使用感を両立した皮膚保湿用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する本発明は、粘土鉱物からなる保湿剤と炭素数が2〜4であるアルコールを含む、噴霧用の皮膚保湿用組成物である。
ここで、「噴霧用の皮膚保湿組成物」とは、噴霧して用いられる皮膚保湿用組成物であって、噴霧のために使用する空気やガスなどの噴射剤以外の成分からなる組成物をいう。
本発明の噴霧用の皮膚保湿用組成物は、皮膚に噴霧することにより使用する。当該組成物を皮膚に噴霧すると、皮膚表面で当該組成物中のアルコールが揮発し、皮膚表面に粘土鉱物の被膜が形成される。
本発明によれば、さっぱりとした使用感と、しっとりとした使用感を両立した噴霧用の皮膚保湿用組成物を提供することができる。
【0006】
本発明の好ましい形態では、皮膚保湿用組成物における粘土鉱物の含有量は0.2〜5質量%である。粘土鉱物の含有量の下限値を上記数値とすることにより、しっとりとした使用感がより優れたものとなる。また、粘土鉱物の含有量の上限値を上記数値とすることにより、噴霧用の皮膚保湿用組成物の噴霧が容易になる。その結果、皮膚に噴霧したときに均一に皮膚上に粘土鉱物の被膜が形成され、さっぱりとした使用感が増す。
ここで「被膜を形成」とは皮膚を粘土鉱物が隙間なく覆っている状態だけではなく、間隔をもって皮膚上に粘土鉱物が分布している状態もいう。
【0007】
本発明の好ましい形態では、粘土鉱物が有機変性されていてもよいヘクトライトである。
上記の粘土鉱物は水膨潤性粘土鉱物であり、水分を保持する機能がある。そのため、本発明における粘土鉱物を上記のものにすることによって、しっとりとした使用感に優れた噴霧用の皮膚保湿用組成物を提供することができる。
【0008】
本発明の好ましい形態では、噴霧用の皮膚保湿用組成物は揮発性油剤を含む。
このような形態とすることによって、粘土鉱物の分散性が向上する。また、揮発性油剤はさっぱりとした使用感を与える。その結果、使用時に粘土鉱物が均一に分布した噴霧質として噴霧され、皮膚上で揮発油が揮発することにより、皮膚にまんべんなくしっとりとした使用感とさっぱりとした使用感を与えることができる。
【0009】
本発明の好ましい形態では、前記揮発性油剤が揮発性シリコーン油である。揮発性シリコーン油は特に揮発性が高いため、かかる形態の本発明の皮膚保湿用組成物は、しっとりとした使用感に優れる。
【0010】
本発明の好ましい形態では、噴霧用の皮膚保湿用組成物が揮発性油剤を含む場合に、さらに非イオン性界面活性剤を含む。非イオン性界面活性剤を含むことによって揮発性油剤の粘土鉱物への取り込みが促進される。その結果、噴霧時の粘土鉱物の分布の均一性がより一層向上し、さっぱりとした使用感をより強くすることができる。
また、非イオン性界面活性剤自体が、粘土鉱物とともに皮膚上に被膜を形成するため、かかる形態の本発明の噴霧用の皮膚保湿用組成物は、しっとりとした使用感により優れる。
【0011】
本発明の好ましい形態では、前記非イオン性界面活性剤がシリコーン系界面活性剤であることを特徴とする。
より好ましくは、前記シリコーン系界面活性剤はポリエーテル変性シリコーンであることを特徴とする。
さらに好ましくは、前記ポリエーテル変性シリコーンが、ポリエチレングリコール変性シリコーン、又はポリグリセリン変性シリコーンであることを特徴とする。
これらの非イオン性界面活性剤は皮膚にべたつき感を与えないものであるので、かかる形態の本発明の皮膚保湿用組成物は、さっぱりとした使用感に優れたものとなる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、水を含まないことを特徴とする。
このような形態とした皮膚保湿用組成物は、さっぱりとした使用感に優れる。
【0013】
上記の本発明の噴霧用の皮膚保湿用組成物は、噴霧容器に収容して、皮膚保湿用の噴霧製品として提供することができる。
かかる形態とすることで、本発明の噴霧用の皮膚保湿用組成物を容易に噴霧することができ、さっぱりとした使用感としっとりとした使用感を皮膚に与えることができる。
ここで噴霧容器とは、液体を噴霧質として吐出できるように構成された容器のことであり、例えば外部の空気圧を利用するスプレーボトル、内部の高圧ガスを利用したエアゾール容器、電動ポンプなどを利用する電動スプレー容器などが挙げられる。
【0014】
また、本発明の皮膚保湿用の噴霧製品の好ましい形態は、前記噴霧容器がエアゾール容器であり、該エアゾール容器にさらに噴射剤を充填した、いわゆるエアゾール製品である。
ここでエアゾール容器とは、噴射剤の圧力を利用して使用目的の液体を弁から放出できる構造を持つ容器をいう。
このような形態とすることによって、極めて細かい粒子の噴霧質として噴霧用の皮膚保湿用組成物を噴霧することが可能になり、さっぱりとした使用感としっとりとした使用感の著しい向上を実現することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、さっぱりとした使用感としっとりとした使用感を両立した、噴霧用の皮膚保湿用組成物及び噴霧製品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について詳述する。
【0017】
<1>噴霧用の皮膚保湿用組成物
本発明は、粘土鉱物からなる保湿剤と炭素数が2〜4であるアルコールを含む、噴霧用の皮膚保湿用組成物である。
以下、本発明の噴霧用の皮膚保湿用組成物の各構成要素について詳述する。
【0018】
<粘土鉱物>
本発明における粘土鉱物は、化粧料などの皮膚外用剤に用いられるものであれば特に制限なく用いることができる。例えば、スメクタイト系のヘクトライト;ベントナイトやモンモリロナイト;カオリナイト;イライト;マリーン粘土鉱物(海泥);デザートローズ粘土鉱物;パスカライトなどが好ましく挙げられる。
【0019】
本発明において、これらの粘土鉱物は有機変性されていても良い。ここで有機変性とは、粘土鉱物の一部に有機化合物の一部を共有結合乃至はイオン結合を介して強固乃至は緩やかな結合を生ぜしめ、有機化合物の性質の一部乃至は全部を粘土鉱物に付与させることを意味し、この様な変性としては4級アミノ基と粘土鉱物のアニオン部分を結合させる方法、カルボキシル基と粘土鉱物のカチオン部分を結合させる方法等が例示でき、4級アミノ基と粘土鉱物のアニオン部分を結合させる方法が特に好ましく例示できる。
粘土鉱物を変性させる4級アミノ基を有する化合物としては、特に限定されるわけではないが、クオタニウムと称される化合物(クオタニウム化合物)が例示される。クオタニウム化合物とは、低分子の置換第4級アンモニウム塩であって、国際基準化粧品原材料(INCI)に登録された化粧料原料が好ましい。さらに、粘土鉱物を変性させる4級アミノ基を有する化合物は、クオタニウム化合物のなかでも、従来の皮膚外用剤に含有されるクオタニウム化合物であることが好ましい。従来の皮膚外用剤で使用されているクオタニウム化合物としては、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ジメチルジステアリルアンモニウムクロリド等が好ましく例示される。
本発明の噴霧用の皮膚保湿用組成物に含有される4級アミノ基を有する化合物で変性された粘土鉱物の製造方法の一例を以下に説明する。
未変性の粘土鉱物を分散媒に分散させる。該分散剤は水系の溶媒であることが好ましく、水であってもよい。分散未有機変性粘土鉱物を含む分散液に、さらに4級アミノ基を有する化合物を加え、よく撹拌する。4級アミノ基を有する化合物は、水に溶解されて加えられてもよい。加えられる4級アミノ基を有する化合物の量は、分散未有機変性粘土鉱物の量に対して0.1〜20質量%であることが好ましく、0.5〜15質量%であることがより好ましい。この様な構成を取ることにより、好ましい使用感を呈するためである。撹拌後、分散質を濾取し、脱水、乾固することにより本発明における有機変性粘土鉱物を得ることができる。あるいは、分散質を濾取することなく、減圧濃縮することにより分散剤を除去して乾固させることにより、本発明における有機変性粘土鉱物を得ることもできる。得られた有機変性粘土鉱物は、好ましくは所望のサイズ(粒径が1〜1000μmであることが好ましい)に粉砕され、本発明の皮膚外用剤に含有される。
本発明における有機変性粘土鉱物は、前述したように調製して使用されることもできるが、市販されているものを使用することもできる。市販されている有機変性粘土鉱物としては、例えば、「ベンゲルFW」(ベントナイト 株式会社ホージュン製)、「ラポナイトXLG」、「ラポナイトXLS」(合成ヘクトライト ROCKWOOD社製)、「ベントン38V」(ジメチルジステアリルアンモニウム変性ヘクトライト エレメンティス社製)等が挙げられる。
【0020】
本発明の噴霧用の皮膚保湿用組成物における前記粘土鉱物の含有量は、好ましくは0.1〜8質量%、より好ましくは0.2〜5質量%、さらに好ましくは1〜2.5質量%、とする。
粘土鉱物の含有量の下限値を上記数値とすることにより、しっとりとした使用感がより優れたものとなる。また、粘土鉱物の含有量の上限値を上記数値とすることにより、噴霧用の皮膚保湿用組成物の噴霧が容易になる。その結果、皮膚に噴霧したときに均一に皮膚上に粘土鉱物の被膜が形成され、さっぱりとした使用感が増す。
【0021】
<アルコール>
本発明においては、炭素数が2〜4のアルコールを用いる。このうち、エタノール、n−プロピルアルコール、及びイソプロパノールを好適に例示することができる。
本発明の噴霧用の皮膚保湿用組成物におけるアルコールの含有量は、好ましくは40〜99質量%、より好ましくは50〜95質量%、さらに好ましくは60〜90質量%とする。アルコールの含有量を上記範囲とすることによって、噴霧後の皮膚保湿組成物中のアルコールの揮発による粘土鉱物の被膜が形成されやすくなり、結果、より強いしっとりとした使用感をもたらすことができる。
【0022】
本発明においては、粘土鉱物とアルコールの重量比は、好ましくは1:99〜1:5、より好ましくは1:70〜1:8、さらに好ましくは1:50〜1:10とする。粘土鉱物とアルコールの重量比を上記比率とすることにより、アルコールの揮発による粘土鉱物の被膜が形成されやすくなり、結果、より強いしっとりとした使用感をもたらすことができる。
【0023】
<揮発性油剤>
本発明の好ましい実施形態では、皮膚保湿用組成物は揮発性油剤を含むことを特徴とする。揮発性油剤としては、化粧料として一般的に用いられているものであれば特に制限されない。揮発性油剤としては、揮発性シリコーン油、揮発性炭化水素油、揮発性エステル油、揮発性天然動植物油、揮発性フッ素油等が好ましく挙げられる。
【0024】
揮発性のシリコーン油としては、低重合度のジメチコン、環状ジメチコンの4量体又は5量体が好ましく例示でき、市販のものを用いても良い。市販の揮発性シリコーンとしては、「シリコーンKF96L−1cs」(低重合度 信越化学株式会社製)、「ジメチコンシリコーンDC344」(環状ジメチコン4量体 東レ・ダウコーニング株式会社製)、「シリコーンKF995」(環状ジメチコン5量体 信越化学株式会社製)が好ましく例示できる。
【0025】
本発明の噴霧用の皮膚保湿用組成物における揮発性油剤としては、上述した油剤のうち揮発性シリコーン油を用いることが特に好ましい。揮発性シリコーン油は特に良好な揮発性を示す。そのため、皮膚保湿用組成物を噴霧後に速やかに揮発し、粘土鉱物の被膜の形成を促進し、結果、より高い水準でのしっとりとした使用感とさっぱりとした使用感の両立を実現することができる。
【0026】
本発明の実施形態では、噴霧用の皮膚保湿用組成物における揮発性油剤の含有量は、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは2.5〜40質量%、さらに好ましくは5〜25質量%とする。揮発性油剤の含有量を上記の範囲とすることによって、組成物中における粘土鉱物の分散性が高まり、また、組成物の噴霧後には速やかに揮発し粘土鉱物の被膜の形成を促進する。その結果、極めて高い水準でのしっとりとした使用感とさっぱりとした使用感の両立を実現することができる。
【0027】
本発明の実施形態では、皮膚保湿用組成物における粘土鉱物と揮発性油剤の質量比は、好ましくは1:0.5〜1:20、より好ましくは1:1〜1:15、さらに好ましくは1:1.5〜1:10とする。粘土鉱物と揮発性油剤の質量比を上記の範囲とすることによって、皮膚保湿組成物中における粘土鉱物の分散性が高まる。そのため、皮膚保湿用組成物を噴霧した後に、皮膚上で粘土鉱物のより均一な被膜が形成され、さっぱりとした使用感がもたらされる。
【0028】
<非イオン性界面活性剤>
本発明の好ましい形態では、噴霧用の皮膚保湿用組成物が揮発性油剤を含む場合に、さらに非イオン性界面活性剤を含む。非イオン性界面活性剤を含むことによって揮発性油剤の粘土鉱物への取り込みが促進される。その結果、皮膚保湿用組成物における、粘土鉱物及び揮発性油剤の分散が促進される。また、非イオン系界面活性剤自体も粘土鉱物と共に皮膚上で被膜を形成する。
本発明における非イオン性界面活性剤としては、一般的な非イオン性界面活性剤であれば特に限定されず、シリコーン界面活性剤、脂肪酸エステル系界面活性剤、高級アルコール系界面活性剤、アルキルフェノール系界面活性剤が例示できる。
【0029】
本発明において非イオン性界面活性剤のHLBは6以下であることが好ましい。
また、上記非イオン性界面活性剤のうち、本発明においてはシリコーン界面活性剤を好ましく用いることができ、その中でもポリオキシエチレン(ポリエチレングリコール)変性シリコーン、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピル共重合体変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン等を特に好ましく例示できる。具体的には、ポリエチレングリコール−10ジメチコン、ポリエチレングリコール−12ジメチコン、ポリグリセリル−3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン等が例示できる。本発明における非イオン性界面活性剤としては市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、「ニッコールDGMO−90」(ジグリセリンモノレート 日光ケミカルズ株式会社製)、「シリコーンKF6017」(ポリエチレングリコール−10ジメチコン 信越化学株式会社製)、「シリコーンSH3775M」(ポリエチレングリコール−12ジメチコン 東レダウコーニング株式会社製)、「シリコーンKF6104」(ポリグリセリル−3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 信越化学株式会社製)等が好ましく例示できる。
【0030】
また、本発明において脂肪酸エステル系界面活性剤も好ましく用いることができる。特にポリグリセリンの脂肪酸エステルを好ましく用いることができる。ポリグリセリンの脂肪酸エステルとしては、脂肪酸の炭素数が12〜18であり、ポリグリセリンの重合度が1〜6のものを特に好ましく用いることができる。
例えば、ラウリン酸グリセリル、ラウリン酸ポリグリセリル−2、オレイン酸グリセリル、セスキオレイン酸ポリグリセリル−2、トリオレイン酸ポリグリセリル−5、ヘキサステアリン酸ポリグリセリル−5が好ましく用いられる。
【0031】
本発明の好ましい実施形態では、皮膚保湿用組成物における非イオン性界面活性剤の含有量は0.5〜30質量%、より好ましくは1〜20質量%、さらに好ましくは2.5〜10質量%である。
また、本発明の好ましい実施形態では、皮膚保湿用組成物における粘土鉱物と非イオン性界面活性剤の質量比は、1:10〜1:1、より好ましくは1:5〜1:1.5、さらに好ましくは1:3〜1:4とする。粘土鉱物と非イオン性界面活性剤の含有量の比率を上記の範囲とすることによって、皮膚上で形成される粘土鉱物と非イオン性界面活性剤による被膜がより保湿性の強いものとなり、しっとりとした使用感のさらなる向上を実現することができる。
また、本発明の好ましい実施形態では、皮膚保湿用組成物における非イオン性界面活性剤と揮発性油剤の質量比は、1:10〜1:0.1、より好ましくは1:7〜1:0.5、さらに好ましくは1:4〜1:1とする。非イオン性界面活性剤と揮発性油剤の含有量の比率を上記の範囲とすることによって、皮膚保湿用組成物において非イオン性界面活性剤による揮発性油剤の分散がより効果的に行われ、結果的により強いさっぱりとした使用感を実現することができる。
【0032】
本発明の好ましい形態では、噴霧用の皮膚保湿用組成物における、上述した成分(粘土鉱物、アルコール、揮発性油剤、非イオン性界面活性剤)の占める割合が好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上である。
【0033】
<その他の成分>
本発明の噴霧用の皮膚保湿用組成物には任意の有効成分を含ませても良い。例えば、α−オレフィンオリゴマー、プリスタン、オゾケライト、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン、ポリブデン等の難揮発性又は不揮発性の油剤を含む炭化水素類;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体等のオルガノポリシロキサン等の難揮発性又は不揮発性のシリコーン油;2−エチルヘキサン酸トリグリセリド、2−エチルヘキサン酸セチル、2−エチルヘキサン酸ペンタエリトリトール、2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、パルミチン酸2−エチルヘキシル、イソノナン酸イソセチル、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル等の不揮発性エステル油;ホホバ油、オリーブ油、マカデミアナッツ油、綿実油、茶実油、サフラワー油、米糠油などの不揮発性天然動植物油;ポリエチレングリコール、グリセリン、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、2,4−ヘキサンジオール等の多価アルコール類;ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類;パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤;アントラニル酸系紫外線吸収剤;サリチル酸系紫外線吸収剤;桂皮酸系紫外線吸収剤;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤;糖系紫外線吸収剤;2−(2'−ヒドロキシ−5'−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−メトキシ−4'−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類;フェノキシエタノール等の抗菌剤などが好ましく例示できる。
本発明の好ましい実施形態では、皮膚保湿用組成物中の水の含有量は、5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは0質量%である。水の含有量を上記のものとすることによって、皮膚保湿用組成物を使用した時のべたつきが低減され、さっぱりとした使用感をさらに向上させることができる。
【0034】
また本発明の好ましい実施形態では、粘土鉱物以外の固形物の含有量が、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0質量%である。
ここで固形物とは、組成物の溶液中において固相にある成分のみならず、溶液中では液相にあるが、噴霧した後、溶媒であるエタノールが揮発すると固形化する成分も含む。
このような固形物としては、化粧料用の粉体や、造膜性のポリマーなどが挙げられる。
化粧料用の粉体としては、例えば、表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類;表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類;表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類;レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類;ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類等が挙げられる。
造膜性のポリマーとしては、以下のものが例示できる。両性ポリマーである造膜性ポリマーとしては、例えばジアルキルアミノエチルメタクリレート/メタクリル酸アルキルエステル共重合体のモノクロル酢酸両性化物、アクリル酸ヒドロキシプロピル/メタクリル酸ブチルアミノエチル/アクリル酸オクチルアミド共重合体などが挙げられる。アニオンポリマーである造膜性ポリマーとしては、例えばメチルビニルエーテル/無水マレイン酸アルキルハーフエステル共重合体、酢酸ビニル/クトロン酸共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸/ネオデカン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸/プロピオン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/マレイン酸モノブチルエステル/イソボロニルアクリレート共重合体、(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸/アクリル酸アルキルエステル/アルキルアクリルアミド共重合体、ポリビニルピロリドン/アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体などが挙げられる。カチオンポリマーである造膜性ポリマーとしては、例えばビニルイミダゾリウムトリクロライド/ビニルピロリドン共重合体、ヒドロキシエチルセルロース/ジメチルジアリルアンモニウムクロリド、ビニルピロリドン/四級化ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体、ポリビニルピロリドン/アルキルアミノアクリレート共重合体、ポリビニルピロリドン/アルキルアミノアクリレート/ビニルカプロラクタム共重合体、ビニルピロリドン/メタクリルアミドプロピル塩化トリメチルアンモニウム共重合体、アルキルアクリルアミド/アクリレート/アルキルアミノアルキルアクリルアミド/ポリエチレングリコールメタクリレート共重合体などが挙げられる。ノニオンポリマーである造膜性ポリマーとしては、例えばポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニル/プロピオン酸ビニル三元共重合体、酢酸ビニル/N−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン共重合体などが挙げられる。
【0035】
本発明の皮膚保湿用組成物は、上述した成分を常法により混合することで製造することができる。
【0036】
本発明の噴霧用の皮膚保湿用組成物は、皮膚外用剤として用いることができる。皮膚外用剤としては、医薬や化粧料が挙げられるが、本発明の噴霧用の皮膚保湿用組成物は、特に化粧料として用いることが好ましい。
【0037】
<2>噴霧製品
本発明は上記の噴霧用の皮膚保湿用組成物を噴霧容器に収容してなることを特徴とする皮膚保湿用の噴霧製品にも関する。本発明の実施形態では、噴霧容器として、例えば外部の空気圧を利用するスプレーボトル、内部の高圧ガスを利用したエアゾール容器、電動ポンプなどを利用する電動スプレー容器などが挙げられる。
そして、本発明のより好ましい形態では、上記の噴霧用の皮膚保湿用組成物と噴射剤をエアゾール容器に充填してなる、皮膚保湿用のエアゾール製品とする。
本発明の皮膚保湿用のエアゾール製品において、噴射剤としては、液化ガスまたは圧縮ガスを用いることができる。液化ガスとしては液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル(DME)又はフッ化炭化水素等を用いることが好ましい。圧縮ガスとしては、二酸化炭素、窒素、又は亜酸化窒素を好ましく用いることができる。
【0038】
本発明の皮膚保湿用のエアゾール製品の特に好ましい実施形態では、噴射剤として液化石油ガスを用いる。噴射剤として液化石油ガスを用いれば、本発明のエアゾール製品の使用時には皮膚保湿組成物と液化石油ガスの混合物が噴霧される。噴霧されたかかる混合物が皮膚に付着すると、混合物中のアルコールと液化石油ガスが速やかに揮発し、粘土鉱物の被膜が極めて短時間の間に皮膚上に形成され、さっぱりとした使用感の著しい向上につながる。
この場合、エアゾール容器に充填した噴霧用の皮膚保湿用組成物と石油液化ガスの混合物において、液化石油ガスの含有量は、好ましくは30〜90質量%、より好ましくは40〜80質量%、さらに好ましくは50〜70質量%とする。液化石油ガスの含有量を上記範囲とすることによって、粘土鉱物の被膜の形成が著しく促進される。
【実施例】
【0039】
<実施例1〜7、比較例1、2>
表1の処方に従って実施例1〜7及び比較例1、2の噴霧用の皮膚保湿用組成物及びエアゾール製品を調製した。すなわち成分(イ)を室温で攪拌し均一混合し噴霧用の皮膚保湿用組成物を調製した後、エアゾール容器に充填した。その後、容器に成分(ロ)すなわち噴射剤(LPG)を充填し、本発明のエアゾール製品及び比較例のエアゾール製品を得た。
<比較例3>
表2の成分を室温で攪拌混合し、比較用の皮膚保湿用組成物とした。
【表1】
(単位:質量%)
【表2】
(単位:質量%)

*1)「ベントン38V」 エレメンティス社製
*2)「ベンゲルFW」 株式会社ホージュン製
*3)「シリコーンKF6017」 信越化学株式会社製
*4)「シリコーンKF6104」 信越化学株式会社製
【0040】
<試験例1>粘着性の測定
実施例1〜7及び比較例1〜2のエアゾール製品より、充填されていた混合液0.1mlを、スライドガラス上の1.2cmφの面積に噴霧した。また、比較例3の組成物0.1mlを1.2cmφの面積に指でスライドガラス上に塗布した。そして、ローションの使用中の状態を意識し、40℃、相対湿度60%で一時間乾燥し、試験膜を作成した。この試験膜の粘着性をハンディー圧着試験器KES−G5((株)カトーテック製)を用いて評価した。粘着性は装置のヘッドを塗布膜から引き剥がす際の粘着力(g)で表した。すなわち、この値が高いほど塗布膜の粘着性が高いことを表している。結果を表3に示す。
【0041】
<試験例2>肌保湿能力の評価
ボランティアのパネラーの前腕内側部を水洗し、乾燥後、テバメーター(Tewameter TM210 Courage+Khazaka社製)を用いて経皮水分蒸散量(TEWL)を測定した。その後、SLS0.5%水溶液で処理し、実施例1〜7又は比較例1〜2の各組成物を噴霧、又は比較例3の組成物を指で塗布し、翌日同一部位のTEWLを測定した。SLS処理前のTEWLを100とした場合のクリーム塗布部位の値を求め、回復率とした。結果を表3に示す。数字が100に近いほど、TEWLが回復していることすなわち肌保湿性が高いことを意味する。結果を表3に示す。
【0042】
<試験例3>使用感の評価
熟練評価者5名により、肌上に塗布中の実施例1〜7の組成物及び比較例1〜2の組成物を肌に噴霧し、比較例3の組成物を指で塗布した場合のさっぱりとした使用感及びしっとりとした使用感を以下の評価基準で官能評価した。

さっぱりとした使用感が比較例2の組成物と比較して かなりない:1点、ややない2点、同等:3点、ある:4点、かなりある:5点
しっとりとした使用感が比較例1の組成物と比較して かなりない:1点、ややない2点、同等:3点、ある:4点、かなりある:5点
なお5名の評点の平均値をサンプルの評点とした。結果を表3に示す。

【表3】
【0043】
<結果>
(1)試験例1の結果
粘土鉱物を含まない比較例1の組成物は粘着性が4.1gと比較的低い数値を示す。一方、粘土鉱物を含有している組成物を比較すると、アルコールを含有している実施例1〜7の組成物は、アルコールを含有していない比較例2の組成物よりも、粘着性が低いことがわかる。
この結果より、粘土鉱物を含有することにより組成物の粘着性は上昇してしまうが、アルコールを含有することにより、その粘着性の上昇を抑制できることがわかる。
また、エアゾール容器に充填し噴霧することで塗布した実施例1〜7の組成物は、指により塗布した比較例3の組成物に比べ粘着性が大幅に低いことがわかる。
この結果より、エアゾール用容器に充填して噴霧して塗布することで、組成物が形成する塗布膜の粘着性が低減することがわかる。
以上の結果より、粘土鉱物と炭素数2〜4のアルコールの組み合わせ、及び噴霧するという使用形態によって、粘着性の低い、つまり、べたつかない試験膜が得られることがわかる。
したがって、さっぱりとした使用感(べたつきのない使用感)をもたらす皮膚保湿用組成物を得るためには、粘土鉱物と炭素数2〜4アルコールの組み合わせ、そして噴霧するという使用形態が重要であることがわかる。
【0044】
(2)試験例2の結果
試験例2のTEWL回復率の試験結果より、粘土鉱物を含む実施例1〜7の組成物は、粘土鉱物を含まない比較例1の組成物よりも、高いTWEL回復率を示すことがわかる。
すなわち、組成物中の粘土鉱物の存在がTEWL回復率、つまり肌保湿に大きく寄与することがわかる。
【0045】
(3)試験例3の結果
試験例3の使用感の評価結果より、粘土鉱物と炭素数2〜4のアルコールを含み、且つ噴霧により皮膚に塗布した実施例1〜7の組成物は、さっぱりとした使用感としっとりとした使用感を、何れも評点4以上という高い水準で両立していることがわかる。
【0046】
(4)結果のまとめ
試験例1〜3の結果より、本発明の噴霧用の皮膚保湿用組成物は、粘土鉱物と炭素数2〜4のアルコールの組み合わせと、噴霧という使用形態によって、べたつかずさっぱりとした使用感と、高い肌保湿性としっとりとした使用感を極めて高い水準で両立していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の噴霧用の皮膚保湿用組成物によれば、さっぱりした使用感としっとりとした使用感を両立した化粧用のスプレー製剤を提供することができる。