(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記2枚のシートには、前記吸水性樹脂の膨潤により剥がれる接合力で互いに接合された複数の接合部が形成されており、前記吸水性樹脂は、前記接合部と前記2枚のシートとに囲まれた複数ブロックの空間に小分けにされて保持されている請求項2に記載の土嚢。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
吸水性樹脂を吸水させて用いる土嚢は緊急時に用いられるものであるから、より短時間で必要な大きさまで膨潤する必要がある。しかしながら、特許文献1に記載の技術においては、吸水させるときに外側の吸水性樹脂が膨潤してゲルブロッキングを起こすため、内側の吸水性樹脂まで水分が行きわたらずに素早く膨潤することができない。また、特許文献2に記載の吸収材においては、シート状に吸水性樹脂が担持されているため、吸水時に吸水性樹脂と水との接触面積が小さくなり、膨潤する速度が遅くなる。
【0006】
また、洪水の現場では、土嚢を膨潤させた後、土嚢を何層にも重ねたりする場合がある。そのため、土嚢は重ねやすいように均一に膨らむことが必要である。しかしながら、吸水性樹脂は土嚢内でよれたり偏ったりしやすく、吸水した後に膨潤した吸水性樹脂を手で均さなければならない。
【0007】
本発明の課題は、より素早く均一に膨潤する土嚢を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
透水性の袋の中に、水分を吸収して膨潤する吸水性樹脂が封入された土嚢において、
前記吸水性樹脂は、前記袋の中に複数のブロックに小分けにされた状態で封入されており、
前記袋には、更に前記吸収性樹脂の膨潤後の前記袋の側面に対応する板状部材が封入され、
前記袋には、更に前記袋の上面及び下面に対応する板状部材が封入され、前記側面に対応する板状部材は内側に折りたたまれた状態で前記袋に封入されている。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記袋の中には、透水性又は水解性の2枚のシートの間に前記吸水性樹脂が保持された複数のブロックが配列されてなる吸水体が封入されている。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、
前記2枚のシートには、前記吸水性樹脂の膨潤により剥がれる接合力で互いに接合された複数の接合部が形成されており、前記吸水性樹脂は、前記接合部と前記2枚のシートとに囲まれた複数ブロックの空間に小分けにされて保持されている。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、
前記複数の接合部は、格子状に形成されている
。
【発明の効果】
【0012】
本発明の土嚢によれば、吸水性樹脂が袋の中に複数のブロックに小分けにされた状態で封入されて構成されているので、吸水性樹脂がゲルブロッキングしにくく、吸水時に全ての吸水性樹脂に水が行きわたりやすくなり、吸水性樹脂がより素早く水分を吸収して膨潤することが可能となる。また、吸水性樹脂が偏りなく均一に膨潤することが可能となる。
さらに、吸収性樹脂が膨潤しても側面が板状部材により平らに維持されるため、積み上げやすく、また積み上げたときに隣り合う土嚢同士の隙間のない土嚢を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0015】
[土嚢1の構成]
まず、本発明の実施形態における土嚢1の構成について説明する。
図1は、土嚢1の吸水前の平面図、
図2は、土嚢1の吸水前のII-II断面を示す図である。
図1、2に示すように、土嚢1は、外袋2の中に、外袋2のサイズより一回り小さいサイズの、吸水性樹脂32が充填された吸水体3が封入され、外袋2の開口部がミシン止め(
図1のMの部分)されて構成されている。
【0016】
外袋2は、例えば、麻のように透水性が高く、かつ強度が強い素材でできた袋である。外袋2は、吸水性樹脂32が外に漏れ出さない程度の目の細かい素材であることが好ましい。
【0017】
吸水体3は、2枚のシート31の間に吸水性樹脂32が略均一に小分けにされた状態で挟み込まれて構成されている。
シート31としては、パルプ繊維でできた紙、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタラート)、レーヨン等を原料とするスパンボンド、スパンレース等の不織布、ポリビニルアルコールを原料とする水溶性のフィルム等の、透水性若しくは水解性のシートが好適に用いられる。シート31は、複数層であってもよい。
吸水性樹脂32としては、例えば、ポリアクリル酸塩系、ポリアクリロニトリル系、ポリエチレンオキサイド架橋物系、デンプン系、CMC(カルボキシメチルセルロース)系等の樹脂が好適に用いられる。樹脂の平均粒子径は、150〜850μmが好ましい。この範囲を下回ると、乾燥時に吸水体3からこぼれてくる樹脂が多くなり、正しく機能しない。また、吸水時は外袋2から吸水性樹脂32が漏れ出てしまうことが考えられる。また、この範囲を上回ると、吸水性樹脂32の総表面積が狭くなり、吸水時に吸水性樹脂32が水と接触する面積が減るため、膨潤する速度が遅くなる。吸水時に膨潤するための補助剤としてパルプ繊維等を混載してもよい。
【0018】
図3は、吸水体3の平面図である。
図3に示すように、2枚のシート31は、互いに格子状の接合部33(
図3の白い太線部分)により接合されており、接合部33と2枚のシート31に囲まれた複数ブロックの空間Sに、吸水性樹脂32が小分けにされて保持されている。
【0019】
接合部33は、シート31が紙の場合、デンプン糊等の水溶性の糊により接着されている。シート31が不織布の場合、接合部33は、熱融着や超音波接着、或いはニードルパンチ等で物理的に交絡されている。シート31が水溶性フィルムである場合、接合部33は、熱融着されている。何れの場合においても、接合部33は、吸水性樹脂32が膨潤したときに接合部33がはがれる程度の弱い強度で接合されている。各空間S内の吸水性樹脂32は、乾燥時には接合部33により阻まれて隣接する空間Sと互いに行き来できなくなっているが、吸水により吸水性樹脂32が膨潤すると、接合部33の接合が外れるようになっている。
【0020】
吸水体3において、空間Sは、吸水体3の全面に均一に配列されている。これにより、外袋2の中の全面に吸水性樹脂32が均一に配列されることとなるので、吸水時に吸水性樹脂32が均一に膨潤し、手で均すことなく、重ねやすく平な土嚢が出来上がる。また、吸水性樹脂32が小分けにされているので、ゲルブロッキング現象も発生しにくく、すばやい膨潤が可能となる。また、吸水性樹脂32はシート状の吸水体3に保持されているので、乾燥時に土嚢1の中で吸水性樹脂32が移動して偏ることがなく、取扱いが容易である。
【0021】
なお、空間Sの数は、4つ以上であることが好ましい。空間Sの数が4つより少ないと、吸水時に外側の吸水性樹脂32が膨潤してゲルブロッキングを起こすため、内側の吸水性樹脂32は水が接することができなくなり、膨潤する速度が遅くなるためである。
【0022】
[土嚢1の作用]
次に、土嚢1の作用について説明する。
図4は、吸水後の土嚢1の断面を示す図である。
図5は、吸水前と吸水後の土嚢1の斜視図である。
土嚢1を吸水させると、外袋2に封入されている吸水体3の吸水性樹脂32が吸水することにより膨潤する。このとき、吸水性樹脂32は複数ブロックの空間Sに小分けにされているため、吸水性樹脂32がゲルブロッキングしにくくなることにより全ての吸水性樹脂32に水が行きわたりやすくなり、吸水性樹脂32が素早く水分を吸収して膨潤することが可能となる。また、吸水性樹脂32が小分けにされているので、偏りなく均一に膨潤することが可能となり、
図5に示すように、手で均さなくても平らで重ねやすい土嚢1を得ることが可能となる。更に、
図4に示すように、吸水して膨潤した吸水性樹脂32により接合部33の接合がはずれて空間S同士の境界が開放されるため、吸水性樹脂32間に隙間ができ、より一層水を浸透しやすくすることができる。
【0023】
以上説明したように、本実施形態における土嚢1によれば、吸水性樹脂32が外袋2の中に複数のブロックに小分けにされた状態で封入されて構成されている。従って、吸水性樹脂32がゲルブロッキングしにくくなるため、吸水時に全ての吸水性樹脂32に水が行きわたりやすくなり、より素早く膨潤することが可能となる。また、吸水性樹脂32が小分けにされているので、偏りなく均一に膨潤することが可能となる。
【0024】
具体的に、外袋2の中には、透水性又は水解性の2枚のシート31の間に吸水性樹脂32が保持された複数のブロックが配列されてなる吸水体3が封入されている。従って、乾燥時においても土嚢1の中で吸水性樹脂32が移動して偏ることがなく、取扱いが容易である。また、吸水性樹脂32が吸水時に偏りなく均一に膨潤することが可能となる。
【0025】
また、吸水体3の2枚のシート31には、吸水性樹脂32の膨潤により剥がれる接合力で互いに接合された複数の接合部33が形成されており、吸水性樹脂32は、接合部33と2枚のシート31とに囲まれた複数ブロックの空間Sに小分けにされて保持されている。従って、吸水して膨潤した吸水性樹脂32により接合部33の接合がはずれて空間S同士の境界が開放されるため、吸水性樹脂32間に隙間ができ、より一層水を浸透しやすくすることができる。
【0026】
また、接合部33を格子状とすることで、吸水性樹脂32を保持する空間Sを均一に配列することが可能となる。
【0027】
なお、上記実施形態においては、吸水体3に接合部33を格子状に設けることとしたが、空間Sが吸水体3の全面に配列される態様であれば、これに限定されない。
【0028】
また、上記実施形態においては、空間Sが24個設けられている場合を図示しているが、空間Sの数は特に限定されない。
また、上記実施形態においては、より好ましい実施形態として、空間Sの大きさが均一である場合を例にとり説明したが、必ずしも全ての空間Sが同じ大きさでなくても構わない。
【0029】
[変形例]
以下に、上記実施形態の土嚢1の変形例について説明する。なお、各変形例において、土嚢1の各部と同一の構成については同一の符号を付し、土嚢1と異なる部分のみを説明する。また、同一名称の構成については、上記実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0030】
(変形例1)
図6(a)は、上記実施形態の変形例1の土嚢1Aの吸水前の断面を示す図であり、
図6(b)は、土嚢1Aの吸水後の断面を示す図である。
図6(a)に示すように、土嚢1Aは、外袋2の中に、吸水体3、及び複数枚(ここでは2枚)の補強板4Aが封入されて構成されている。2枚の補強板4Aは、それぞれ吸水性樹脂32の膨潤後の外袋2の上面、下面に対応するように、吸水体3を挟んで外袋2の上面側と下面側に封入されている。外袋2の側面には、吸水性樹脂32が膨潤したときに側面を起立させるためのマチ部21が形成されている。
【0031】
補強板4Aは、例えば、プラスチック板等により構成される板状部材である。補強板4Aには、吸水性樹脂32に吸収させる水が中に入るのを阻害しないようにするために、水が通過できる構造であることが好ましい。
例えば、補強板4Aは、
図7(a)に示すように、水を通すための微細な穴が開いている構造であることが好ましい。
または、補強板4Aは、
図7(b)に示すように、格子形状であることが好ましい。この場合、水を通すための開口部分41が大きいため、膨潤したときに吸水性樹脂32この開口部分41を介して補強板4Aを通り抜けてしまい、補強板4Aを所定の位置まで押し上げることができない。そこで、開口部分41は、例えば、通水性のある不織布で塞がれた構造とする。
または、補強板4Aは、
図7(c)に示すように、プラスチック板ではなく、例えば、業務用玄関マットのように樹脂やワイヤーを曲げて板状に構成したものとしてもよい。即ち、補強板4Aは、通水性を有する板状の部材であれば特に限定されない。
【0032】
土嚢1Aを吸水させると、吸水体3の吸水性樹脂32が膨潤する。この膨潤する力により、接合部33の接合がはずれ(剥がれ)、上面側の補強板4Aがマチ部21の高さまで押し上げられてマチ21が起立する。土嚢1Aは吸水体3の構造により均一に膨潤するが、補強板4Aにより土嚢1Aの上面及び下面はより平ら(均一)に保たれる。これにより、
図6(b)に示すように、吸水性樹脂32の膨潤後、土嚢1Aの形状は略直方体に維持されるので、手で均さなくても平らでより一層積み重ねやすい土嚢1Aを得ることが可能となる。
【0033】
なお、補強板4Aを予め外袋2に固定しておくと、補強板4Aが外袋2内で動くことがないので好ましい。例えば、
図8(a)、(b)に示すように、補強板4Aを外袋2に縫い付けて固定する(
図8(a)、(b)の縫い付け部5参照。
図8(a)は、土嚢1Aの吸水後の斜視図)。吸水性樹脂32が膨潤した時に、外袋2は直方体を形成するが、補強板4Aは、その直方体の上面、下面と同じ大きさになるサイズとすることが望ましい。
【0034】
(変形例2)
図9(a)は、上記実施形態の変形例2の土嚢1Bの吸水前の断面を示す図であり、
図9(b)は、土嚢1Bの吸水後の断面を示す図である。
図9(a)に示すように、吸水前の土嚢1Bにおいて、複数の補強板4Bのそれぞれは、吸水性樹脂32の膨潤時に起立するように、外袋2の側面のマチ部21に対応して配置されている。
【0035】
土嚢1Bを吸水させると、吸水体3の吸水性樹脂32が膨潤する。この膨潤する力により、接合部33の接合がはずれ(剥がれ)、外袋2の上面がマチ部21の高さまで押し上げられ、マチ部21及び補強板4Bが一体的に起立する。これにより、
図9(b)に示すように、土嚢1Bの形状が略直方体に維持される。変形例2では、吸水体3により土嚢1Bの上面及び下面が均一となるだけでなく、側面が補強板4Bにより平らに維持されるため、複数の土嚢1Bを積み上げたときの隣り合う土嚢1B同士の隙間をより一層低減することができる。
【0036】
なお、補強板4Bを予め外袋2のマチ部21に固定しておくと、吸水性樹脂32の膨潤時に起立しやすくなるので好ましい。固定の手法は、上記実施形態で説明したものと同様に、補強板4Bを外袋2のマチ部21に縫い付けて固定する。吸水性樹脂32が膨潤した時に、外袋2は直方体を形成するが、補強板4Bは、その直方体に対応する側面と同じ大きさになるサイズとすることが望ましい。
【0037】
(変形例3)
図10(a)は、上記実施形態の変形例3の土嚢1Cの吸水前の断面を示す図であり、
図10(b)は、土嚢1Cの吸水後の断面を示す図である。
図10(a)に示すように、吸水前の土嚢1Cは、外袋2の上面に対応する補強板4C1、下面に対応する補強板4C2、及び側面に対応する補強板4C3を有し、側面に対応する補強板4C3は、例えばヒンジ等を用いて内側に折り畳まれた状態で、吸水体3を囲むようにして外袋2に封入されている。
【0038】
土嚢1Cを吸水させると、吸水体3の吸水性樹脂32が膨潤する。この膨潤する力により、接合部33の接合がはずれ(剥がれ)、上面の補強板4C1がマチ部21の高さまで押し上げられることにより折り畳まれていた側面の補強板4C3が展開して起立する。これにより、
図10(b)に示すように、土嚢1Cに直方体の骨組みができるため、土嚢1Cは表面が均一となり、安定的に直方体の形状に維持され、土嚢1Cをブロックのように取り扱うことができる。即ち、より一層積み上げやすく、また、積み上げたときに隣り合う土嚢同士の隙間のない土嚢を提供することが可能となる。
【0039】
なお、補強板4C1及び4C2は、予め外袋2に固定しておくこととしてもよい。例えば、上記実施形態で説明したものと同様に、補強板4C1及び4C2を外袋2に縫い付けて固定する。これにより、補強板4C1及び4C2の外袋2内での動きを抑制できるので好ましい。吸水性樹脂32が膨潤した時に、外袋2は直方体を形成するが、補強板4C1、4C2は、その直方体の上面、下面と同じ大きさになるサイズとすることが望ましい。
【0040】
本発明は、上記した実施形態及び変形例のものに限るものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。