(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の防振グリップ410は、第1の伸縮部411および第2の伸縮部413をダンパとし、第1のマス形成部414をマスとする1自由度の振動系として構成されるので、操作者に伝わる振動を十分に抑制できない。また、操作者が把持するマスの振動に対する減衰効果も小さい。
【0005】
本発明の目的は、操作者に伝わる振動を良好に抑制でき、かつ減衰効果が大きな携帯型作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の携帯型作業機は、パイプ状のグリップ装着部に装着された防振グリップを有する携帯型作業機であって、前記防振グリップの振動モデルは、第1のダンパと、第1のマスと、第2のダンパと、第2のマスと
、第3のダンパとを少なくとも備える多自由度振動系として構成され、前記振動モデルを実体化した前記防振グリップでは、前記第1のダンパ
、前記第2のダンパ
、および前記第3のダンパはそれぞれ、第1の伸縮部
、第2の伸縮部
、および第3の伸縮部で形成され、前記第1のマスおよび前記第2のマスはそれぞれ、第1のマス形成部および第2のマス形成部で形成され、
前記第1の伸縮部、前記第2の伸縮部、および前記第3の伸縮部は、胴部が径方向に膨らんだ短管状に形成され、前記第1のマス形成部は、
前記第1の伸縮部と前記第2の伸縮部との間に筒状に形成され、前記グリップ装着部との間に当該第1のマス形成部の軸方向に連続する空間を形成して当該グリップ装着部を囲い、
前記第2のマス形成部は、前記第2の伸縮部と前記第3の伸縮部との間に配置されたリング部材を備え、前記第1のマス形成
部が操作者に把持されることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、携帯型作業機のグリップ装着部が振動するのに伴い、グリップ装着部と第1のマスおよび第2のマスとの間に相対変位が発生すると、その相対変位が第1のマスまたは第2のマスを形成する第1のマス形成部および第2のマス形成部のうちの操作者に把持されていない方(以下、操作者に把持されていない方を「副振動系」といい、操作者に把持されている方を「主振動系」という。)の振動に変換される。副振動系が振動すると、その慣性効果により、副振動系の見かけの質量(等価質量)が実際の質量に対して増幅される。それにより、副振動系の質量に比して大きな反力(慣性力)が発生し、主振動系の振動を良好に抑制できる。また、第1および第2のダンパにより、主振動系の振動に対して減衰効果が大きくなっている。
【0008】
本発明によれば、筒状の第1のマス形成部が操作者に把持されるので、第1のマス形成部が主振動系となり、第2のマス形成部が副振動系として慣性力を発生させることで、操作者に伝わる振動を良好に抑制できる。また、防振グリップは、第2のマス形成部が第2の伸縮部と第3の伸縮部との間に配置されたリング部材を備えるので、副振動系の一部を形成するリング部材の振動に対して、第2の伸縮部および第3の伸縮部により減衰効果を大きくすることができる。
【0009】
本発明の携帯型作業
機は、
パイプ状のグリップ装着部に装着された防振グリップを有する携帯型作業機であって、前記防振グリップの振動モデルは、第1のダンパと、第1のマスと、第2のダンパと、第2のマスとを少なくとも備える多自由度振動系として構成され、前記振動モデルを実体化した前記防振グリップでは、前記第1のダンパは、第1の伸縮部および第3の伸縮部で形成され、
前記第2のダンパは、第2の伸縮部で形成され、前記第1のマスおよび前記第2のマスはそれぞれ、第1のマス形成部および第2のマス形成部で形成され、前記第1のマス形成部は、前記グリップ装着部との間に当該第1のマス形成部の軸方向に連続する空間を形成して当該グリップ装着部を囲い、前記第1のマス形成部および前記第2のマス形成部により2重筒構造が形成され、前記第2の伸縮部は、前記第1のマス形成部および前記第2のマス形成部の間に介在し、2重筒構造を形成する外側のマス形成部が操作者に把持されること
を特徴とする。
本発明によれば、2重筒構造を形成する外側のマス形成部が操作者に把持される主振動系になるので、内側のマス形成部が副振動系として慣性力を発生させ、操作者に伝わる振動を良好に抑制できる。また、第2の伸縮部は、第2重筒構造を形成する1のマス形成部および第2のマス形成部の間に介在するので、例えば第1のマス形成部および第2のマス形成部が直列に設けられ、その間に第2の伸縮部が介在する場合と比較して、防振グリップの全長を短くすることができる。
【0010】
本発明の携帯型作業機では、前記第1の伸縮部および前記第3の伸縮部は前記防振グリップの両端側に設けられるとともに、前記第1の伸縮部および前記第3の伸縮部の外端部には前記グリップ装着部に固定される固定部が設けられることが好ましい。
本発明によれば、防振グリップの第1の伸縮部および第3の伸縮部の外端部に、グリップ装着部に固定される固定部が設けられているので、グリップ装着部の振動を副振動系の振動に確実に変換することができる。それにより、主振動系の制振を良好に行うことができる。
【0011】
本発明によれば、第1のマス形成部が、グリップ装着部との間に空間を形成してグリップ装着部を囲うので、例えば第1のマス形成部がグリップ装着部と並列に配置される場合と比較して、防振グリップを細くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係る防振グリップ10を適用した携帯型作業機を、
図1〜
図6を参照して説明する。本実施形態における携帯型作業機は、
図1に示す刈払機1である。刈払機1は、アウターパイプ4の一端側に設けられた動力部2により、アウターパイプ4の他端側に設けられた円盤状の刈刃5を回転駆動するように構成されている。以下の説明において、アウターパイプ4の軸線方向における動力部2側を「基端側」といい、刈刃5側を「先端側」という。
【0014】
動力部2は、エンジン2Aを備えるとともに、動力部2には、アウターパイプ4を支持するハウジング9が固定されている。エンジン2Aの駆動軸は、ハウジング9内に収容された遠心クラッチ(図示せず)を介して、アウターパイプ4内に回転可能に挿通されたシャフト(図示せず)の一端に連結されている。シャフトの他端には取付部3が連結されており、取付部3には刈刃5が取り付けられている。遠心クラッチは、エンジン2Aの回転数が所定回転数以上のときに連結状態になり、所定回転数未満のときに遮断状態になる。
【0015】
本実施形態の刈払機1は、いわゆるツーグリップタイプのものである。アウターパイプ4の先端側のグリップ装着部4Aおよび基端側のグリップ装着部4Bには、防振グリップ10,10が装着されている。操作者は、防振グリップ10,10を両手で握って、刈払機1を操作する。2つの防振グリップ10,10は、ケーブル等を通す孔等を除けば、互いに同じ構成である。基端側の防振グリップ10は、前述したハウジング9と操作部6との間に挟まれて設けられている。先端側の防振グリップ10は、操作部6の先端側に所定間隔を空けて設けられている。防振グリップ10の詳細な構成については後述する。
【0016】
操作部6には、安全レバー7とスロットルレバー8とが設けられている。スロットルレバー8は、エンジン2Aの回転数を調整するためのものであり、安全レバー7は、スロットルレバー8の操作を有効/無効との間で切り換えるスイッチである。安全レバー7を放した状態では、スロットルレバー8の操作が無効になり、エンジン2Aの回転数が前記所定回転数未満のアイドリング回転数になる。このときには、遠心クラッチが遮断状態になるので、刈刃5は回転しない。一方、安全レバー7を握った状態では、スロットルレバー8の操作が有効になり、スロットルレバー8の操作量に応じてエンジン2Aの回転数が変化し、それに伴い刈刃5の回転数が変化する。
【0017】
次に、防振グリップ10の詳細な構成について説明する。
図2は、本実施形態による防振グリップ10の振動モデルを示している。同図に示すように、防振グリップ10の振動モデルは、2自由度振動系として構成されている。防振グリップ10の振動モデルは、第1のダンパ111と、第1のマス114と、第2のダンパ112と、第2のマス115と、第3のダンパ113とを直列に備えている。また、第1のダンパ111は粘性要素121とばね要素131とを、第2のダンパ112は粘性要素122とばね要素132とを、第3のダンパ113は粘性要素123とばね要素133とを、それぞれ並列に備えている。
【0018】
以下、
図2の振動モデルを実体化した防振グリップ10について説明する。
振動モデルにおける第1〜第3のダンパ111〜113は、実体における第1〜第3の伸縮部11〜13に、振動モデルにおける第1および第2のマス114,115は、実体における第1および第2のマス形成部14,15に、それぞれ対応している。
【0019】
図3は防振グリップ10の斜視図であり、
図4は防振グリップ10の断面図である。
図3、
図4における右側が刈払機1の先端側となる。防振グリップ10は、第1の伸縮部11と、第1のマス形成部14と、第2の伸縮部12と、第2のマス形成部15と、第3の伸縮部13とを先端側から順に備えている。これらは互いの軸線が揃うように配置されている。
【0020】
最も先端側に設けられた第1の伸縮部11は、胴部が径方向に膨らんだ短管状に形成されており、粘性と弾性とを有する部材(例えば粘弾性ゴム)から構成されている。第1の伸縮部11は、軸方向に伸縮可能に構成されており、先端側の端部に径細の固定部11Aが設けられている。固定部11Aは、アウターパイプ4のグリップ装着部4A(4B)を緊締している。固定部11Aはスプリングバンド(図示せず)により締め込まれて、それにより、第1の伸縮部11がグリップ装着部4A(4B)に対してずれないように固定されている。
【0021】
第1のマス形成部14は、防振グリップ10における把持部であり、内筒部14Aと外筒部14Bとを一体に成形したものであり、アウターパイプ4よりも径太の筒状に形成されている。内筒部14Aは、剛性を有する部材(例えばアルミニウム管)から構成されており、剛性を有することで操作者に把持されても変形しないようになっている。外筒部14Bは、弾性を有する部材(例えばゴム)から構成されており、弾性を有することで、触感を向上させるともに滑りを防止している。第1のマス形成部14の基端側の端部は、第2の伸縮部12の先端側の端部に全周にわたって連結されている。
【0022】
第2の伸縮部12は、胴部が径方向に膨らんだ短管状に形成されており、粘性と弾性とを有する部材(例えば粘弾性ゴム)から構成されている。第2の伸縮部12は、縦方向と横方向と軸方向との3方向に伸縮可能に構成されており、間に空間を形成してグリップ装着部4A(4B)を囲っている。第2の伸縮部12の基端側の端部は、第3の伸縮部13の先端側の端部に全周にわたって連結されている。
【0023】
第3の伸縮部13は、前述した第1の伸縮部11と略同一の構成を備え、基端側の端部に径細の固定部13Aが設けられている。固定部13Aはグリップ装着部4A(4B)を緊締している。固定部13Aはスプリングバンド(図示せず)により締め込まれて、それにより、第3の伸縮部13がグリップ装着部4A(4B)に対してずれないように固定されている。
【0024】
第2の伸縮部12と第3の伸縮部13との間には、第2のマス形成部15が設けられている。第2のマス形成部15は、ゴム製の連結部15Aと連結部15Aの外周に嵌め込まれるリング部材15Bで形成されている。リング部材15Bは、
図5に示すように、周方向の一部にスリットを有する略環状に形成されており、例えば鉄等の金属で構成されている。
【0025】
以上の構成を備えた本実施形態の刈払機1によれば、エンジン2Aの運転時に、アウターパイプ4が振動するのに伴い、グリップ装着部4A(4B)と防振グリップ10の第1のマス形成部14および第2のマス形成部15との間に相対変位が発生すると、その相対変位が操作者に把持されていない第2のマス形成部15の3方向の振動に変換される。第2のマス形成部15が振動すると、その慣性効果により、第2のマス形成部15の見かけの質量(等価質量)が実際の質量に対して増幅される。それにより、第2のマス形成部15の実際の質量に比して大きな反力(慣性力)が発生し、操作者に把持されている第1のマス形成部14の振動を良好に抑制できる。また、粘性を有する第1〜第3の伸縮部11〜13により、操作者に把持されている第1のマス形成部14の振動に対して減衰効果が大きくなっている。
【0026】
防振グリップ10の第2のマス形成部15が振動源であるエンジン2Aに近い基端側に配置されているので、先端側に配置されている場合と比較して、第2のマス形成部15による制振効果をより多く得ることができる。また、第2のマス形成部15が防振グリップ10の基端側に配置されていることで、操作部6の安全レバー7やスロットルレバー8を操作する際に、第2のマス形成部15が操作者の手に触れない。それにより、刈払機1の操作を確実に行うことができる。
【0027】
第1の伸縮部11には固定部11Aが、第3の伸縮部13には固定部13Aが、それぞれ設けられており、固定部11A,13Aはスプリングバンドによりグリップ装着部4A(4B)に対してずれないように固定されているので、グリップ装着部4A(4B)の振動を第2のマス形成部15の振動に確実に変換することができる。それにより、第1のマス形成部14の制振を良好に行うことができる。
【0028】
第1のマス形成部14がグリップ装着部4A(4B)との間に空間を形成してグリップ装着部4A(4B)を囲うので、例えば第1のマス14がグリップ装着部4A(4B)と並列に配置される場合と比較して、防振グリップ10を細くすることができる。さらに、第1のマス形成部14と第2のマス形成部15とが直列に設けられているので、第2のマス形成部215が第1のマス形成部14を囲う後述の第2実施形態の防振グリップ210と比較して、防振グリップ10を細くすることができる。
【0029】
リング部材15Bが、連結部15Aの外周に嵌め込まれるので、金属製のリング部材15Bをゴム製の連結部15Aとは別部品として構成して、後から取り付けることができる。それにより、防振グリップ10の製作を容易に行うことができる。
【0030】
図6は、本実施形態の防振グリップ10による効果を確認するために行った試験の結果を、比較例とともに示している。この試験では、振動発生装置に固定したアウターパイプ4と同径のパイプに防振グリップ10を装着して、振動の加速度を一定に保持したままで、振動の周波数F(
図6の横軸)を連続的に変化させて、操作者に把持される第1のマス形成部14における振動の加速度A(
図6の縦軸)を検出した。
【0031】
図6に一点鎖線で示す比較例は、前述した
図9に示す特許文献1(特開2007―068408号公報)の防振グリップ410を振動発生装置のパイプに装着して、上記試験を行ったときの結果である。前述したように、特許文献1の防振グリップ410は、第1の伸縮部411と、第2の伸縮部413と、第1のマス形成部414とを備えている。第1の伸縮部411、第2の伸縮部413、および第1のマス形成部414はそれぞれ、本実施形態の防振グリップ10における第1の伸縮部11、第3伸縮部13、および第1のマス形成部14と同一の構成を備える。しかし、特許文献1の防振グリップ410は、本実施形態の防振グリップ10における第2の伸縮部12に相当する構成と、第2のマス形成部15に相当する構成とを備えていない。
【0032】
両者の結果を比較すると、加速度Aがピークを迎える周波数Fが異なる。本実施形態による防振グリップ10の方が、特許文献1の防振グリップ210よりも加速度Aがピークを迎える周波数Fが低く、約75%の周波数Fで加速度Aがピークを迎えている。一方、ピーク時における加速度Aの大きさはほぼ同じになっている。
【0033】
本試験では、試験装置が振動源であったため、前述のとおり振動の加速度が周波数Fによらず一定であった。しかし、エンジン2Aが振動源である実機の場合には、エンジン2Aの回転数の増加に伴い周波数Fが高くなるとともに、振動の加速度も増加する。周波数Fはエンジン2Aの回転数に比例して高くなるのに対し、振動の加速度はエンジン2Aの回転数の2乗に比例して増加することが知られている。このため、ピーク時における加速度Aの大きさが同じであったとしても、加速度Aがピークを迎える周波数Fが低い方が、操作者に伝わる振動を小さくできる。すなわち、本試験の結果は、本実施形態による防振グリップ10の方が特許文献1の防振グリップ210よりも操作者に伝わる振動を抑制できることを表している。
【0034】
[第2実施形態]
次に、
図7〜
図8を参照しながら、本発明の第2実施形態による防振グリップ210について説明する。防振グリップ210以外の刈払機1の構成は、第1実施形態と同じである。以下、第1実施形態の防振グリップ10と異なる点についてのみ説明するとともに、防振グリップ10と同じ構成については、同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0035】
図7は、本実施形態による防振グリップ210の振動モデルを示している。同図に示すように、防振グリップ210の振動モデルは、2自由度振動系として構成されている。防振グリップ210の振動モデルは、第1のダンパ311と、第1のマス314と、第2のダンパ312と、第2のマス315とを直列に備えている。また、第1のダンパ311は粘性要素321とばね要素331とを、第2のダンパ312は粘性要素322とばね要素332とを、それぞれ並列に備えている。
【0036】
以下、
図7の振動モデルを実体化した防振グリップ210について説明する。
振動モデルにおける第1のダンパ311は、実体における第1の伸縮部11と第3の伸縮部13とを合成したものに対応している。その理由については後述する。また、振動モデルにおける第2のダンパ312は、実体における第2の伸縮部212に対応し、第1および第2のマス314,315は、実体における第1および第2のマス形成部214,215にそれぞれ対応している。
【0037】
図8は、防振グリップ210の断面図である。防振グリップ210は、第1の伸縮部11と、第1のマス形成部214と、第2の伸縮部212,212と、第2のマス形成部215と、第3の伸縮部13とを備えている。前述した第1実施形態の第1のマス形成部14は、内筒部14Aと外筒部14Bとを一体に成形したものであったが、本実施形態の第1のマス形成部214は単一の部材(例えばアルミニウム管)で構成されている。第1の伸縮部11と、第1のマス形成部214と、第3の伸縮部13とは、互いの軸線が揃うように直列に連結されている。第2の伸縮部212,212と第2のマス形成部215とは、第1のマス形成部214の外側に第1のマス形成部214と同心に設けられている。
【0038】
第2のマス形成部215は、防振グリップ210における把持部であり、内筒部215Aと外筒部215Bとを一体に成形したものである。第2のマス形成部215は、アウターパイプ4よりも径太の筒状に形成されており、間に空間を形成して第1のマス形成部14を囲っている。内筒部215Aは、剛性を有する部材(例えばアルミニウム管)から構成されており、剛性を有することで操作者に把持されても変形しないようになっている。外筒部215Bは、弾性を有する部材(例えばゴム)から構成されており、弾性を有することで、触感を向上させるともに滑りを防止している。
【0039】
第2のマス形成部215と第1のマス形成部214との各端部同士の間には、矩形の断面を有し環状に形成された一対の第2の伸縮部212,212が介在している。第2の伸縮部212は、粘性と弾性とを有する部材(例えば粘弾性ゴム)から構成されており、3方向に伸縮可能に構成されている。すなわち、第1のマス形成部214と第2のマス形成部215とは、3方向に相対移動可能になっている。
【0040】
本実施形態の防振グリップ210では、第1の伸縮部11と第3の伸縮部13とのいずれもが、第1のマス形成部214とグリップ装着部4A(4B)とに連結されているため、第1の伸縮部11の延び/縮み量と第3の伸縮部13の縮み/延び量が等しくなる。したがって、振動モデルにおいて、第1の伸縮部11と第3の伸縮部13とを
図7に示すように1つの第1のダンパ311として描くことができる。これが、振動モデルにおける第1のダンパ311が、実体における第1の伸縮部11と第3の伸縮部13とを合成したものに相当する理由である。
【0041】
以上の構成を備えた本実施形態の防振グリップ210によれば、エンジン2Aの運転時に、刈払機1のアウターパイプ4が振動するのに伴い、グリップ装着部4A(4B)と第1のマス形成部214および第2のマス形成部215との間に相対変位が発生すると、その相対変位が操作者に把持されていない第1のマス形成部214の3方向の振動に変換される。第1のマス形成部214が振動すると、その慣性効果により、第1のマス形成部214の等価質量が実際の質量に対して増幅される。それにより、第1のマス形成部214の実際の質量に比して大きな慣性力が発生し、操作者に把持されている第2のマス形成部215の振動を良好に抑制できる。また、粘性を有する第1〜第3の伸縮部11,212,13により、操作者に把持されている第2のマス形成部215の振動に対する減衰効果が大きくなっている。
【0042】
さらに、第2のマス形成部215は、間に空間を形成して第1のマス形成部214を囲っており、第2の伸縮部212は、第1のマス形成部214と第2のマス形成部215との間に介在するので、第1のマス形成部14と第2のマス形成部15とが直列に配置された前述した第1実施形態の防振グリップ10と比較して、全長を短くすることができる。
【0043】
[変形例]
本発明は、前述の実施形態に限定されるものでなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれる。
例えば、第1実施形態では、第2のマス形成部15が基端側になるように防振グリップ10をアウターパイプ4のグリップ装着部4A,4Bに装着したが、第2のマス形成部15が基端側になるように防振グリップ10をグリップ装着部4A,4Bに装着してもよい。
【0044】
実施形態の刈払機1は、先端側のグリップ装着部4Aおよび基端側のグリップ装着部4Bのそれぞれに防振グリップ10(210)を装着したツーグリップタイプの刈払機1であったが、略U字形のハンドルの先端に防振グリップ10(210)を2つ装着した両手ハンドルタイプの刈払機1でもよく、基端側のグリップ装着部4Bに防振グリップ10(210)を1つ装着するとともに先端側にループハンドルが設けられたループハンドルタイプの刈払機1であってもよい。
【0045】
実施形態では、2つの防振グリップ10(210)が同一のものであったが、一方を第1実施形態の防振グリップ10として、他方を第2実施形態の防振グリップ210としてもよい。少なくとも一方を防振グリップ10または防振グリップ210とすればよい。
【0046】
第1実施形態では、第2のマス形成部15が片側(基端側)にのみ設けられていたが、第2のマス形成部15を2つに分割して両側(基端側および先端側)に設けてもよい。その場合には、第1の伸縮部11と第1のマス形成部14との間に新たな伸縮部を追加して、第1の伸縮部11と新たな伸縮部との連結部に、分割した一方の第2のマス形成部15を設ける。つまり、この変形例の防振グリップの振動モデルは、3自由度振動系として構成される。
【0047】
第1実施形態では、リング部材15Bが、周方向の一部にスリットを有する略環状に形成されていたが、スリットの無い環状に形成されていてもよい。
第1実施形態では、リング部材15Bが、連結部15Aの外周に嵌め込まれていたが、連結部15A内に埋め込まれていてもよい。
【0048】
さらに、実施形態は携帯型作業機が刈払機1の例であるが、携帯型作業機がヘッジトリマであってもよい。