【文献】
コーヒー中の過酸化水素生成要因の検討,食衛誌,1991年,Vol. 32, No. 6,p. 504-512
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の焙煎コーヒー豆の製造方法は、粉砕された原料焙煎コーヒー豆に、該原料焙煎コーヒー豆に対して5〜95質量%の過酸化水素水溶液を添加した後、5〜110℃にて保持するものである。
【0010】
本発明で使用する原料焙煎コーヒー豆の豆種としては、例えば、アラビカ種、ロブスタ種、リベリカ種等を挙げることができる。また、コーヒー豆の産地としては特に限定されないが、例えば、ブラジル、コロンビア、タンザニア、モカ、キリマンジェロ、マンデリン、ブルーマウンテン、グァテマラ等が挙げられる。
【0011】
原料焙煎コーヒー豆は、生コーヒー豆を焙煎したものでも、市販品でもよい。コーヒー豆の焙煎方法は特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することが可能である。例えば、焙煎温度は、好ましくは180〜300℃、より好ましくは190〜280℃、更に好ましくは200〜280℃であり、加熱時間は、所望の焙煎度が得られるように適宜設定可能である。また、焙煎装置としては、例えば、焙煎豆静置型、焙煎豆移送型、焙煎豆攪拌型等を使用することができる。具体的には、棚式乾燥機、コンベア式乾燥機、回転ドラム型乾燥機、回転V型乾燥機等が挙げられる。加熱方式としては、直火式、熱風式、半熱風式、遠赤外線式、赤外線式、マイクロ波式、過熱水蒸気式等を挙げることができる。
【0012】
原料焙煎コーヒー豆のL値は、風味の観点から、10以上が好ましく、12以上がより好ましく、15以上が更に好ましく、またヒドロキシハイドロキノン量の低減の観点から、40以下が好ましく、35以下がより好ましく、30以下が更に好ましく、28以下がより更好ましい。かかるL値の範囲としては、好ましくは10〜40、より好ましくは12〜35、更に好ましくは15〜30、より更に好ましくは15〜28である。ここで、本明細書において「L値」とは、黒をL値0とし、また白をL値100として、焙煎コーヒー豆の明度を色差計で測定したものである。色差計として、例えば、スペクトロフォトメーター SE2000((株)日本電色社製)を用いることができる。
【0013】
原料焙煎コーヒー豆は、1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。2種以上の原料焙煎コーヒー豆を使用する場合、豆種や産地の異なるコーヒー豆だけでなく、焙煎度の異なるコーヒー豆を使用することも可能である。焙煎度の異なるコーヒー豆を使用する場合、L値が上記範囲外のものを用いても差し支えないが、L値の平均値が上記範囲内となるように適宜組み合わせて使用することが好ましい。L値の平均値は、使用する原料焙煎コーヒー豆のL値に、当該原料焙煎コーヒー豆の含有比率を乗じた値の総和として求められる。
【0014】
原料焙煎コーヒー豆は、粉砕されたものである。原料焙煎コーヒー豆の粉砕に使用する装置は所望の粒径に粉砕することができれば特に制限されないが、例えば、ミル、グラインダー等を挙げることができる。
【0015】
粉砕された原料焙煎コーヒー豆の平均粒径は、ヒドロキシハイドロキノン量の低減の観点から、5mm以下が好ましく、2.5mm以下がより好ましく、1.9mm以下が更に好ましく、1mm以下がより更に好ましく、また生産効率の観点から、0.001mm以上が好ましく、0.01mm以上がより好ましく、0.05mm以上が更に好ましい。かかる平均粒径の範囲としては、好ましくは0.001〜5mm、より好ましくは0.01〜2.5mm、更に好ましくは0.05〜1.9mm、より更に好ましくは0.05〜1mmである。ここで、本明細書において「平均粒径」とは、レーザ回折・散乱法粒度分布測定装置により測定される体積基準の累積粒度分布曲線において50%(d
50)に相当する粒子径である。なお、Tyler標準篩、ASTM標準篩、JIS標準篩等を用いて平均粒径が上記範囲内となるように分級することも可能であり、また所望する平均粒径がレーザ回折・散乱法粒度分布測定装置の測定範囲外である場合にも前記篩を用いて分級することができる。
【0016】
本発明の製造方法においては、先ず、粉砕された原料焙煎コーヒー豆に過酸化水素水溶液を添加する。
過酸化水素水溶液は市販品を制限なく使用することが可能であり、所望の濃度に水希釈して使用することができる。希釈する際に使用する水は特に限定されず、例えば、水道水、蒸留水、イオン交換水、天然水等を適宜選択することができる。
【0017】
過酸化水素水溶液中の過酸化水素濃度は、ヒドロキシハイドロキノン量の低減の観点から、0.001質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましく、1質量%以上が更に好ましく、またハンドリング性の観点から、35質量%以下が好ましく、33質量%以下がより好ましく、31質量%以下が更に好ましい。かかる過酸化水素濃度の範囲としては、好ましくは0.001〜35質量%、より好ましくは0.05〜33質量%、更に好ましくは0.1〜33質量%、更に好ましくは1〜31質量%である。
【0018】
過酸化水素水溶液の添加方法は特に限定されないが、例えば、過酸化水素水溶液を直接投入する方法、過酸化水素水溶液を噴霧する方法等を挙げることができる。また、過酸化水素水溶液の添加後、あるいは過酸化水素水溶液を添加しながら、原料焙煎コーヒー豆を撹拌混合することが好ましい。なお、過酸化水素水溶液の添加は、常圧下、減圧下及び加圧下のいずれでもよいが、添加のし易さの観点から常圧下がよい。また、過酸化水素水溶液を添加する際の焙煎コーヒー豆の温度は、好ましくは10〜100℃、より好ましくは15〜70℃、更に好ましくは15〜30℃、より更に好ましくは18〜25℃である。
【0019】
過酸化水素水溶液の添加量は、原料焙煎コーヒー豆を過酸化水素水溶液に浸漬させて原料焙煎コーヒー豆からヒドロキシヒドロキノンを抽出するのに十分な量である必要はなく、原料焙煎コーヒー豆の表面の一部を過酸化水素水溶液と接触させることができる量であればよい。具体的には、過酸化水素水溶液の添加量は、原料焙煎コーヒー豆に対して5〜95質量%であるが、ヒドロキシハイドロキノン量の低減の観点から、原料焙煎コーヒー豆に対して、15質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、35質量%以上が更に好ましく、45質量%以上が更に好ましく、またクロロゲン酸類の溶出防止の観点から、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更好ましい。過酸化水素水溶液の添加量の範囲としては、原料焙煎コーヒー豆に対して、好ましくは15〜90質量%、より好ましくは25〜85質量%、更に好ましくは35〜80質量%、より更に好ましくは45〜80質量%である。
【0020】
過酸化水素水溶液は、全量を連続的に添加しても、複数回に分けて添加してもよい。
また、過酸化水素水溶液を添加する際の温度は、後述する保持温度に近い温度がよいが、温度調整のし易さの観点から、好ましくは10〜100℃、より好ましくは15〜70℃、更に好ましくは18〜50℃、より更に好ましくは18〜25℃である。
【0021】
次に、過酸化水素水溶液と接触後の原料焙煎コーヒー豆を、5〜110℃にて保持する。
保持温度は、ヒドロキシハイドロキノン量の低減の観点から、20℃以上が好ましく、25℃以上がより好ましく、30℃以上が更に好ましく、35℃以上がより更に好ましく、45℃以上が殊更に好ましく、また風味、生産効率の観点から、100℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましく、85℃以下が更に好ましく、80℃以下がより更好ましい。かかる保持温度の範囲としては、好ましくは20〜100℃、より好ましくは25〜90℃、更に好ましくは30〜85℃、更に好ましくは35〜85℃、より更好ましくは45〜80℃である。
【0022】
保持時間は保持温度により適宜選択することが可能であるが、ヒドロキシハイドロキノン量の低減の観点から、5分以上が好ましく、10分以上がより好ましく、15分以上が更に好ましく、20分以上がより更に好ましく、またクロロゲン酸類の溶出防止の観点から、200分以下が好ましく、150分以下がより好ましく、120分以下が更に好ましく、90分以下がより更に好ましく、60分以下が殊更に好ましい。かかる保持時間の範囲としては、好ましくは5〜200分、より好ましくは10〜150分、更に好ましくは15〜120分、より更に好ましくは20〜90分、殊更に好ましくは20〜60分である。ここでいう保持時間は、予め所定の温度に制御された装置を使用する場合は、当該装置に原料焙煎コーヒー豆を収容してからの経過時間であり、また装置に原料焙煎コーヒー豆を収容後に温度設定する場合は、所定の温度に到達してからの経過時間である。
【0023】
保持温度が5〜70℃である場合、保持時間は20〜200分が好ましく、20〜150分がより好ましく、30〜90分が更に好ましい。一方、保持温度が70℃超〜110℃である場合、保持時間は15〜90分が好ましく、15〜70分がより好ましく、20〜60分が更に好ましい。
【0024】
なお、本工程においては、過酸化水素水溶液と接触後の原料焙煎コーヒー豆を所望の温度にて所定時間保持するために、例えば、恒温槽、乾燥機、オートクレーブ等の装置を適宜使用することができる。かかる保持工程は、常圧下、加圧下又は減圧下で行うことが可能であるが、常圧下で行うことが好ましい。
【0025】
かかる保持工程は、密封状態で行うことが好ましい。ここで、本明細書において「密閉状態」とは、蒸気や空気等のガスの流通が遮断され、過酸化水素水溶液と接触後の原料焙煎コーヒー豆が開放大気系に直接接触しないことをいい、例えば、過酸化水素水溶液と接触後の原料焙煎コーヒー豆を密閉容器に収容して保持工程を行えばよい。密閉容器はガスの流通を遮断できれば、その形状及び材質は特に限定されないが、加熱により変質せず、かつ加圧に耐え得る容器が好ましく、例えば、金属製容器、ガラス製容器等を挙げることができる。密閉容器の具体例としては、例えば、レトルトパウチ、缶、ビン、ビーカー等が挙げられ、缶、ピン及びビーカーは、栓や蓋により密閉可能で、かつ開閉自在なものが好ましい。
【0026】
保持工程後、装置から焙煎コーヒー豆を取り出し、本発明の焙煎コーヒー豆を得ることができる。保持工程において加熱処理した場合には、焙煎コーヒー豆を冷却することが好ましい。また、保持工程後、焙煎コーヒー豆を乾燥してもよく、乾燥方法としては、例えば、送風ファンを用いて乾燥する方法、減圧乾燥する方法、凍結乾燥する方法等を挙げることができる。なお、乾燥後の焙煎コーヒー豆の含水率は、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましく、5質量%以下がより更に好ましい。なお、含水率は、常圧加熱乾燥法により測定することが可能であり、具体的には、試料約1gを秤量し、それを105℃で6時間加熱処理した後、加熱処理後の試料を秤量し、加熱処理前後の試料の質量から算出することができる。具体的には以下の式を用いて算出することができる。
【0027】
含水率(質量%)=([加熱処理前のコーヒー豆の質量(g)]−[加熱処理後のコーヒー豆の質量(g)])/[加熱処理前のコーヒー豆の質量(g)]×100
【0028】
このようにして得られた焙煎コーヒー豆は、以下の特性を具備することができる。
(1)焙煎コーヒー豆中のヒドロキシハイドロキノンの含有量は、生理効果の観点から、焙煎コーヒー豆100g当たり18mg以下が好ましく、10mg以下がより好ましく、5mg以下が更に好ましく、1mg以下が殊更に好ましい。かかるヒドロキシハイドロキノンの含有量の下限値は特に限定されず、焙煎コーヒー豆100g当たり0mgであってもよい。なお、ヒドロキシハイドロキノンの含有量が0mgとは、後掲の実施例に記載の「ヒドロキシハイドロキノンの分析」において、ヒドロキシハイドロキノンの含有量が検出限界以下である場合も包含する概念である。
(2)焙煎コーヒー豆中のクロロゲン酸類の含有量は、生理効果増強の観点から、焙煎コーヒー豆100g当たり、100mg以上が好ましく、300mg以上がより好ましく、500mg以上が更に好ましく、また風味の観点から、4500mg以下が好ましく、4000mg以下がより好ましく、3500mg以下が更に好ましい。かかるクロロゲン酸類の含有量の範囲としては、焙煎コーヒー豆100g当たり、好ましくは100〜4500mg、より好ましくは300〜4000mg、更に好ましくは500〜3500mgである。ここで、本明細書において「クロロゲン酸類」とは、3−カフェオイルキナ酸、4−カフェオイルキナ酸及び5−カフェオイルキナ酸のモノカフェオイルキナ酸と、3−フェルラキナ酸、4−フェルラキナ酸及び5−フェルラキナ酸のモノフェルラキナ酸を併せての総称であり、本発明においては、上記6種のクロロゲン酸類のうち少なくとも1種を含有すればよい。また、クロロゲン酸類の含有量は、上記6種の合計量に基づいて定義される。
【0029】
なお、本明細書における「焙煎コーヒー豆中のヒドロキシハイドロキノン含有量」及び「焙煎コーヒー豆中のクロロゲン酸類含有量」は、焙煎コーヒー豆から得られたコーヒー抽出液中のヒドロキシハイドロキノン含有量及びクロロゲン酸類含有量に基づいて下記式(i)〜(ii)により求めたものである。
【0030】
(i)焙煎コーヒー豆中のヒドロキシハイドロキノン含有量(mg/100g)=[コーヒー抽出液中のヒドロキシハイドロキノン含有量(mg/100g)]×[コーヒー抽出液の質量(g)]/[焙煎コーヒー豆の質量(g)]
(ii)焙煎コーヒー豆中のクロロゲン酸類含有量[mg/100g]=[コーヒー抽出液中のクロロゲン酸類含有量(mg/100g)]×[コーヒー抽出液の質量(g)]/[焙煎コーヒー豆の質量(g)]
【0031】
なお、コーヒー抽出液の分析条件は、次のとおりである。粉砕焙煎コーヒー豆0.8gに、抽出用水(リン酸1gと、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸(HEDPO)0.03gをイオン交換水1Lに溶解した液)を80g加え、95〜99℃の間に保持しながら10分間浸漬抽出を行う。次に、コーヒー抽出液の上清を採取し、それを後掲の実施例の記載の方法に供して、ヒドロキシハイドロキノン含有量及びクロロゲン酸類含有量を分析する。
【0032】
前述の実施形態に関し、本発明は更に以下の焙煎コーヒー豆の製造方法を開示する。
<1>
粉砕された原料焙煎コーヒー豆に、該原料焙煎コーヒー豆に対して5〜95質量%の過酸化水素水溶液を添加した後、5〜110℃にて保持する、焙煎コーヒー豆の製造方法。
【0033】
<2>
原料焙煎コーヒー豆の豆種が、好ましくはアラビカ種、ロブスタ種及びリベリカ種から選ばれる少なくとも1種であり、原料焙煎コーヒー豆の産地が、好ましくはブラジル、コロンビア、タンザニア、モカ、キリマンジェロ、マンデリン、ブルーマウンテン及びグァテマラから選ばれる少なくとも1種である、前記<1>記載の製造方法
<3>
原料焙煎コーヒー豆が、生コーヒー豆を、好ましくは180〜300℃、より好ましくは190〜280℃、更に好ましくは200〜280℃の温度で焙煎したものである、前記<1>又は<2>記載の製造方法。
<4>
原料焙煎コーヒー豆のL値が、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、更に好ましくは15以上であって、好ましくは40以下、より好ましくは35以下、更に好ましくは30以下、殊更に好ましくは28以下である、前記<1>〜<3>のいずれか一に記載の製造方法。
<5>
原料焙煎コーヒー豆のL値が、好ましくは10〜40、より好ましくは12〜35、更に好ましくは15〜30、殊更に好ましくは15〜28である、前記<1>〜<4>のいずれか一に記載の製造方法。
<6>
原料焙煎コーヒー豆が、好ましくは1種単独であるか、あるいは焙煎度、豆種及び産地のうちの1以上が異なる混合物である、前記<1>〜<5>のいずれか一に記載の製造方法。
<7>
粉砕された原料焙煎コーヒー豆の平均粒径が、好ましくは5mm以下、より好ましくは2.5mm以下、更に好ましくは1.9mm以下、より更に好ましくは1mm以下であって、好ましくは0.001mm以上、より好ましくは0.01mm以上、更に好ましくは0.05mm以上である、前記<1>〜<6>のいずれか一に記載の製造方法。
<8>
粉砕された原料焙煎コーヒー豆の平均粒径が、好ましくは0.001〜5mm、より好ましくは0.01〜2.5mm、更に好ましくは0.05〜1.9mm、より更に好ましくは0.05〜1mmである、前記<1>〜<7>のいずれか一に記載の製造方法。
<9>
好ましくは過酸化水素水溶液の添加後、あるいは過酸化水素水溶液を添加しながら、原料焙煎コーヒー豆を撹拌混合する、前記<1>〜<8>のいずれか一に記載の製造方法。
<10>
過酸化水素水溶液の添加を、好ましくは常圧下で行う、前記<1>〜<9>のいずれか一に記載の製造方法。
【0034】
<11>
過酸化水素水溶液を添加する際の焙煎コーヒー豆の温度が、好ましくは10〜100℃、より好ましくは15〜70℃、更に好ましくは15〜30℃、より更に好ましくは18〜25℃である、前記<1>〜<10>のいずれか一に記載の製造方法。
<12>
過酸化水素水溶液中の過酸化水素濃度が、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、より更に好ましくは1質量%以上であって、好ましくは35質量%以下、より好ましくは33質量%以下、更に好ましくは31質量%以下である、前記<1>〜<11>のいずれか一に記載の製造方法。
<13>
過酸化水素水溶液中の過酸化水素濃度が、好ましくは0.001〜35質量%、より好ましくは0.05〜33質量%、更に好ましくは0.1〜33質量%、更に好ましくは1〜31質量%である、前記<1>〜<12>のいずれか一に記載の製造方法。
<14>
過酸化水素水溶液を添加する際の温度が、好ましくは保持温度と略同一の温度、より好ましくは10〜100℃、更に好ましくは15〜70℃、より更に好ましくは18〜50℃、殊更に好ましくは18〜25℃である、前記<1>〜<13>のいずれか一に記載の製造方法。
<15>
過酸化水素水溶液の添加量が、原料焙煎コーヒー豆に対して、好ましくは15質量%以上、より好ましくは25質量%以上、更に好ましくは35質量%以上、より更に好ましくは45質量%以上であって、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である、前記<1>〜<14>のいずれか一に記載の製造方法。
<16>
過酸化水素水溶液の添加量が、原料焙煎コーヒー豆に対して、好ましくは15〜90質量%、より好ましくは25〜85質量%、更に好ましくは35〜80質量%、より更に好ましくは45〜80質量%である、前記<1>〜<15>のいずれか一に記載の製造方法。
<17>
保持温度が、好ましくは20℃以上、より好ましくは25℃以上、更に好ましくは30℃以上、更に好ましくは35℃以上、より更に好ましくは45℃以上であって、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、更に好ましくは85℃以下、より更に好ましくは80℃以下である、前記<1>〜<16>のいずれか一に記載の製造方法。
<18>
保持温度が、好ましくは20〜100℃、より好ましくは25〜90℃、更に好ましくは30〜85℃、更に好ましくは35〜85℃、より更好ましくは45〜80℃である、前記<1>〜<17>のいずれか一に記載の製造方法。
<19>
保持時間が、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上、更に好ましくは15分以上、より更に好ましくは20分以上であって、好ましくは200分以下、より好ましくは150分以下、更に好ましくは120分以下、より更に好ましくは90分以下、殊更に好ましくは60分以下である、前記<1>〜<18>のいずれか一に記載の製造方法。
<20>
保持時間が、好ましくは5〜200分、より好ましくは10〜150分、更に好ましくは15〜120分、より更に好ましくは20〜90分、殊更に好ましくは20〜60分である、前記<1>〜<19>のいずれか一に記載の製造方法。
【0035】
<21>
保持温度が5〜70℃である場合、保持時間は、好ましくは20〜200分、より好ましくは20〜150分、更に好ましくは30〜90分である、前記<1>〜<16>のいずれか一に記載の製造方法。
<22>
保持温度が70℃超〜110℃である場合、保持時間は、好ましくは15〜90分、より好ましくは15〜70分、更に好ましくは20〜60分である、前記<1>〜<16>のいずれか一に記載の製造方法。
<23>
保持工程を、好ましくは常圧下で行う、前記<1>〜<22>のいずれか一に記載の製造方法。
<24>
保持工程を、好ましくは密封状態で行う、前記<1>〜<23>のいずれか一に記載の製造方法。
<25>
保持工程後、好ましくは焙煎コーヒー豆を乾燥する、前記<1>〜<24>のいずれか一に記載の製造方法。
<26>
乾燥後の焙煎コーヒー豆の含水率が、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、殊更に好ましくは5質量%以下である、前記<25>記載の製造方法。
<27>
当該焙煎コーヒー豆は、焙煎コーヒー豆100g当たりのヒドロキシハイドロキノンの含有量が、好ましくは18mg以下、より好ましくは10mg以下、更に好ましくは5mg以下、より更に好ましくは1mg以下、殊更に好ましくは0mgである、前記<1>〜<26>のいずれか一に記載の製造方法。
<28>
当該焙煎コーヒー豆は、焙煎コーヒー豆100g当たりのクロロゲン酸類の含有量が、好ましくは100mg以上、より好ましくは300mg以上、更に好ましくは500mg以上であって、好ましくは4500mg以下、より好ましくは4000mg以下、更に好ましくは3500mg以下である、前記<1>〜<27>のいずれか一に記載の製造方法。
<29>
当該焙煎コーヒー豆は、焙煎コーヒー豆100g当たりのクロロゲン酸類の含有量が、好ましくは100〜4500mg、より好ましくは300〜4000mg、更に好ましくは500〜3500mgである、前記<1>〜<28>のいずれか一に記載の製造方法。
<30>
クロロゲン酸類が、好ましくは3−カフェオイルキナ酸、4−カフェオイルキナ酸、5−カフェオイルキナ酸、3−フェルラキナ酸、4−フェルラキナ酸及び5−フェルラキナ酸から選ばれる少なくとも1種である、前記<28>又は<29>記載の製造方法。
【実施例】
【0036】
1.焙煎コーヒー豆の分析
粉砕焙煎コーヒー豆0.8gに、抽出用水〔リン酸1gと、1−ヒドロキシ1,1−ジホスホン酸(HEDPO)0.03gをイオン交換水1Lに溶解した液〕を80g加え、95〜99℃の間に保持しながら10分間浸漬抽出を行い、上清を採取し、コーヒー抽出液を得た。得られたコーヒー抽出液に基づいて、焙煎コーヒー豆の分析を行った。
【0037】
2.HPLC−電気化学検出器によるヒドロキシハイドロキノン(HHQ)の分析
分析機器はHPLC−電気化学検出器(クーロメトリック型)であるクーロアレイシステム(モデル5600A、米国ESA社製)を使用した。装置の構成ユニットの名称・型番は次の通りである。
・アナリティカルセル:モデル5011(ESA)、
・クーロアレイエレクトロニクスモジュール・ソフトウエア:クーロケムIII(ESA)、
・溶媒送液ポンプ:LC−20AD(島津製作所社製)、イナートミキサー20A(島津製作所社製)
・オートサンプラー:SIL−20AC(島津製作所社製)、ピークパルスダンパー、
・デガッサー:DGU−20A−5(島津製作所社製)、
・カラムオーブン:CTO−20AC、
・カラム:CAPCELL PAK C18 AQ 内径4.6mm×長さ250mm 粒子
径5μm(資生堂社製)。
【0038】
分析条件は次の通りである。
・サンプル注入量:10μL、
・流量:1.0mL/min、
・電気化学検出器の印加電圧:200mV、
・カラムオーブン設定温度:40℃、
・溶離液A:0.1(W/V)%リン酸、0.1mM 1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、5(V/V)%メタノール溶液、
・溶離液B:0.1(W/V)%リン酸、0.1mM 1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、50(V/V)%メタノール溶液。
【0039】
溶離液A及びBの調製には、高速液体クロマトグラフィー用蒸留水(関東化学社製)、高速液体クロマトグラフィー用メタノール(関東化学社製)、リン酸(特級、和光純薬工業社製)、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸(60%水溶液、東京化成工業社製)を用いた。
【0040】
濃度勾配条件
時間 溶離液A 溶離液B
0.0分 100% 0%
10.0分 100% 0%
10.1分 0% 100%
20.0分 0% 100%
20.1分 100% 0%
50.0分 100% 0%
【0041】
コーヒー抽出液4mLをボンドエルートSCX(固相充填量:500mg、リザーバ容量:3mL、アジレントテクノロジー社製)に通液し、初通過液約0.5mLを除いて通過液を得た。この通過液2mLについて、メンブレンフィルター(GLクロマトディスク25A、孔径0.45μm、ジーエルサイエンス社製)にて濾過し、速やかに分析に供した。
【0042】
HPLC−電気化学検出器の上記の条件における分析において、ヒドロキシハイドロキノンの保持時間は6.3分であった。得られたピークの面積値から、ヒドロキシハイドロキノン(和光純薬工業社製)を標準物質とし、ヒドロキシハイドロキノン含量(mg/kg)を求めた。
【0043】
3.クロロゲン酸類(CGA)の分析
分析機器はHPLCを使用した。装置の構成ユニットの型番は次の通りである。
・UV−VIS検出器:SPD20A(島津製作所社製)、
・カラムオーブン:CTO−20AC(島津製作所社製)、
・ポンプ:LC−20AT(島津製作所社製)、
・オートサンプラー:SIL−20AC(島津製作所社製)、
・カラム:Cadenza CD−C18 内径4.6mm×長さ150mm、粒子径3μm(インタクト社製)、
・デガッサー:DGU−20A−5(島津製作所社製)。
【0044】
分析条件は次の通りである。
・サンプル注入量:10μL、
・流量:1.0mL/min、
・UV−VIS検出器設定波長:325nm、
・カラムオーブン設定温度:35℃、
・溶離液C:0.05M 酢酸、0.1mM HEDPO、10mM 酢酸ナトリウム、5(V/V)%アセトニトリル溶液、
・溶離液D:アセトニトリル。
【0045】
濃度勾配条件
時間 溶離液C 溶離液D
0.0分 100% 0%
10.0分 100% 0%
15.0分 95% 5%
20.0分 95% 5%
22.0分 92% 8%
50.0分 92% 8%
52.0分 10% 90%
60.0分 10% 90%
60.1分 100% 0%
70.0分 100% 0%
【0046】
HPLCでは、コーヒー抽出液を、メンブレンフィルター(GLクロマトディスク25A、孔径0.45μm、ジーエルサイエンス社製)にて濾過後、分析に供した。
クロロゲン酸類の保持時間(単位:分)
・モノカフェオイルキナ酸:5.3、8.8、11.6の計3点
・モノフェルラキナ酸:13.0、19.9、21.0の計3点
ここで求めた6種のクロロゲン酸類の面積値から5−カフェオイルキナ酸を標準物質とし、クロロゲン酸類含有量(質量%)を求めた。
【0047】
4.L値の測定
試料を、色差計(スペクトロフォトメーター SE2000、日本電色社製)を用いて測定した。
【0048】
5.平均粒径の測定
平均粒径は、レーザ回折・散乱法粒度分布測定装置(LS13 320、BECKMAN COULTER社製)を用いて体積基準の平均径を測定した。
【0049】
実施例1
ブラジル産アラビカ種のL18の原料焙煎コーヒー豆を、粉砕機〔ワンダーブレンダーWB−1、大阪ケミカル(株)〕にて粉砕し、平均粒経0.30mmの粉砕原料焙煎コーヒー豆を得た。次に、ガラスビーカーに粉砕原料焙煎コーヒー豆20g計量した。
次に、粉砕原料焙煎コーヒー豆20gに、過酸化水素水溶液7.8g(過酸化水素濃度0.01質量%)を加え、薬さじにて均一に混合を行った。ガラスビーカーを密栓した後に、40℃の恒温槽にて60分間静置を行い、焙煎コーヒー豆を得た。得られた焙煎コーヒー豆を、凍結乾燥機(EYELA、FDU−1110)にて凍結乾燥し、含水率3質量%の焙煎コーヒー豆を得た。前述の「焙煎コーヒー豆の分析」に基づいて、得られた焙煎コーヒー豆の分析を行った。その結果を表1に示す。
【0050】
実施例2〜4
表1に示す過酸化水素濃度に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作にて焙煎コーヒー豆を得た。そして、得られた焙煎コーヒー豆について実施例1と同様の操作にて分析を行った。その結果を表1に示す。
【0051】
実施例5〜8
表1に示す、過酸化水素濃度及び保持時間に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作にて焙煎コーヒー豆を得た。そして、得られた焙煎コーヒー豆について実施例1と同様の操作にて分析を行った。その結果を表1に示す。
【0052】
比較例1
過酸化水素水溶液を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様の操作にて焙煎コーヒー豆を得た。そして、得られた焙煎コーヒー豆について実施例1と同様の操作にて分析を行った。その結果を表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
実施例9〜13
実施例5において、過酸化水素濃度を5質量%とし、表2に示す保持温度に変更したこと以外は、実施例5と同様の操作にて焙煎コーヒー豆を得た。そして、得られた焙煎コーヒー豆について実施例1と同様の操作にて分析を行った。その結果を表2に示す。
【0055】
比較例2
過酸化水素水溶液を添加しなかったこと以外は、実施例10と同様の操作にて焙煎コーヒー豆を得た。そして、得られた焙煎コーヒー豆について実施例1と同様の操作にて分析を行った。その結果を表2に示す。
【0056】
【表2】
【0057】
実施例14〜17
実施例11において、表3に示す過酸化水素水溶液の添加量に変更したこと以外は、実施例11と同様の操作にて焙煎コーヒー豆を得た。そして、得られた焙煎コーヒー豆について実施例1と同様の操作にて分析を行った。その結果を実施例11の結果とともに表3に示す。
【0058】
比較例3
過酸化水素水溶液を添加しなかったこと以外は、実施例14と同様の操作にて焙煎コーヒー豆を得た。そして、得られた焙煎コーヒー豆について実施例1と同様の操作にて分析を行った。その結果を表3に示す。
【0059】
【表3】
【0060】
実施例18〜21
ブラジル産アラビカ種のL18の原料焙煎コーヒー豆を粉砕機〔ワンダーブレンダーWB−1、大阪ケミカル社製〕にて1秒間粉砕し、TESTING SIEVE(TOKYO SCREEN社製、JIS Z8801)を用いて、表4に示すフラクションに分級した。なお、表4の「篩メッシュ」において表中の各数値は篩目の大きさを示し、例えば、実施例18では、粉砕原料焙煎コーヒー豆の粒子径が目開き3.6mmの篩をパスし、目開き2.9mmの篩にオンする大きさであることを意味する。
次に、実施例11において、平均粒経0.30mmの粉砕原料焙煎コーヒー豆の代わりに、表4に示すフラクションの原料焙煎コーヒー豆を用いたこと以外は、実施例11と同様の操作にて焙煎コーヒー豆を得た。そして、得られた焙煎コーヒー豆について、粉砕機〔ワンダーブレンダーWB−1、大阪ケミカル社製〕にて粉砕し、実施例1と同様の操作にて分析を行った。その結果を表4に示す。
【0061】
比較例4
実施例18において、ブラジル産アラビカ種の未粉砕の原料焙煎コーヒー豆を用いたこと以外は、実施例18と同様の操作にて焙煎コーヒー豆を得た。そして、得られた焙煎コーヒー豆について、粉砕機〔ワンダーブレンダーWB−1、大阪ケミカル社製〕にて粉砕し、実施例1と同様の操作にて分析を行った。その結果を表4に示す。
【0062】
【表4】
【0063】
表4から、未粉砕の原料焙煎コーヒー豆に微量の過酸化水素水溶液を添加した後、その状態を所定の温度にて保持したとしても、ヒドロキシハイドロキノン量の低減が不十分となることがわかる。一方、表1〜3から、粉砕された原料焙煎コーヒー豆に微量の過酸化水素水溶液を添加した後、その状態を所定の温度にて保持することで、クロロゲン酸類量を損なうことなく、ヒドロキシハイドロキノ量を選択的に低減した焙煎コーヒー豆が得られることがわかる。