特許第6404001号(P6404001)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6404001板材の周縁加工装置及び曲面板の周縁加工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6404001
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】板材の周縁加工装置及び曲面板の周縁加工方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 49/04 20060101AFI20181001BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20181001BHJP
   B24B 9/00 20060101ALI20181001BHJP
   B24B 7/24 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   B24B49/04 Z
   B24B49/12
   B24B9/00 601B
   B24B7/24 Z
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-117965(P2014-117965)
(22)【出願日】2014年6月6日
(65)【公開番号】特開2015-229231(P2015-229231A)
(43)【公開日】2015年12月21日
【審査請求日】2017年6月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000212566
【氏名又は名称】中村留精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078673
【弁理士】
【氏名又は名称】西 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】冨沢 卓弥
(72)【発明者】
【氏名】小幡 智昭
(72)【発明者】
【氏名】斉田 一
(72)【発明者】
【氏名】竹下 昌孝
【審査官】 須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−038327(JP,A)
【文献】 特開2011−173188(JP,A)
【文献】 特開2012−045691(JP,A)
【文献】 特開2013−035089(JP,A)
【文献】 特開2005−030813(JP,A)
【文献】 特開2013−180372(JP,A)
【文献】 特開2005−349546(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0155787(US,A1)
【文献】 特開2003−340697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B1/00−1/04
B24B5/00−19/28
B24B41/00−51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のワークを水平に保持するテーブルと、前記テーブルに対する相対移動により前記ワークの周縁を加工する工具と、制御器と、当該制御器からの指令値に基づいて前記テーブルに対する工具の相対位置及び相対高さを制御する送り装置と、前記ワークの角部の位置と高さとを計測するセンサとを備えた板材の周縁加工装置において、
ワーク載置面を加工しようとする曲面板の中央部の板面に密着する曲面とした前記テーブルと、回転中心軸を中心軸とする2個の球状の砥石面を対向配置した前記工具とを備え、、前記制御器は、前記センサが取得した少なくとも2箇所のワーク角部の位置及び高さと当該制御器に登録された前記ワークの形状式とにより、ワーク加工中の前記工具の相対位置及び相対高さの指令値を補正する補正手段を備えている、板材の周縁加工装置。
【請求項2】
前記工具の相対位置が、前記テーブルの鉛直軸回りの回転と、当該鉛直軸に接近及び離隔する方向の工具の移動とにより設定され、前記補正手段は、前記センサが取得した少なくとも2箇所のワーク角部の位置及び少なくとも3箇所のワーク角部の高さと当該制御器に登録されたワークの形状式とにより、前記工具の移動位置及び高さ並びに前記テーブル回転角の指令値を補正する、請求項1記載の板材の周縁加工装置。
【請求項3】
前記センサが、前記ワークの板面と直交する方向から前記角部を撮影する3Dカメラである、請求項1又は2記載の板材の周縁加工装置。
【請求項4】
前記センサが、前記鉛直軸と平行な方向から前記角部を撮影する2Dカメラと、前記鉛直軸と直交する方向から前記角部を撮影する2Dカメラとである、請求項1又は2記載の板材の周縁加工装置。
【請求項5】
ワークを負圧により吸着して固定する前記テーブルと、当該テーブルの上方に当該テーブルと同軸で回転しかつ昇降動作により前記テーブルとの間で前記ワークを挟持するクランパを備えている、請求項2記載の板材の周縁加工装置。
【請求項6】
面上の全ての方向について板面が屈曲している曲面板の周縁を加工する方法であって、請求項1、2、3、4又は5記載の板材の周縁加工装置を用い、ワークが前記テーブルに固定されたあと、前記センサでワークの前記角部の位置と高さとを計測し、計測した位置から演算したワークの搬入誤差と、計測したワークの前記角部の高さと、制御器に登録されたワークの形状式とから演算した補正値で前記砥石の高さの指令値を補正しながら加工することを特徴とする、曲面板の周縁加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガラス板その他の板材の周縁を加工する装置及び方法に関するもので、特に、部分球面のように面上の全ての方向に屈曲している板面を備えたガラス板その他の硬質脆性板(以下、「曲面板」と言う。)の周縁を加工するのに好適な上記装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
板材の周縁加工装置には、ワークに対する砥石の相対位置を直交する2方向に移動して加工を行う直角座標系(特許文献1参照)の装置と、ワークを保持するテーブルの回転角と当該回転の半径方向に移動する砥石の位置とを関連づけて制御して加工を行う極座標系(特許文献2参照)の装置とがある。直角座標系の装置は、テレビ受像器のディスプレイパネル用のガラス板のように、比較的大型で矩形の板材の加工に適している。一方、極座標系の装置は、携帯端末のディスプレイパネルに用いるガラス板のような、比較的小型の板材の加工に適しており、直角座標系の装置に比べて加工形状の自由度が大きいこと及び装置を小型にできるという特徴がある。
【0003】
ワークの周縁の加工を正確に行うためには、その前提として、ワークをテーブル上に正確に位置決めして固定する必要がある。しかし、板状ワークの周縁全体を加工する装置では、周縁の位置や方向を決めるガイドなどを設けることができず、板面を吸着するか上下に挟持するかして固定しなければならないので、ワークの中心をテーブルの中心に正確に一致させることや、ワークの方向を所定の方向に設定することが困難である。そのため、テーブル上に搬入されたワークの中心位置や方向に搬入誤差が生ずる。
【0004】
直角座標系の装置では、この搬入誤差を補正してワークを正確に加工するために、ワークとなるガラス板の所定の2箇所に位置決めマークを設けておき、装置に設けた2個のカメラで位置決めマークを読取ってガラス板の側辺の位置と傾きとを検出する。そして、ガラス板の幅方向に対向して配置した左右の砥石を移動して、検出された側辺の位置に合せる。更にガラス板を載置したテーブルを鉛直軸回りに回転して、ガラス板の方向を修正する。このようにして搬入誤差を修正したあと、テーブル又は砥石をガラス板の側辺の方向に送って、ガラス板の両側辺を同時に加工する。
【0005】
一方、極座標系の装置について本願出願人が特許文献2で提案した手段は、鉛直軸回りに回転するテーブルと、このテーブルに接近離隔する方向に移動してワークの周縁を加工する工具と、ワークの角部の画像を取得する1個のカメラを備える。そしてテーブルにワークが搬入されたとき、カメラでワークの第1の角部と180度対向する第2の角部の画像を取得し、それらの角部のあるべき位置からの2次元平面方向の偏差を検出し、それらの偏差から、テーブル中心に対するワークの中心の位置誤差及び角度誤差を演算し、その演算結果に基づいて、制御器からの工具位置及びテーブル回転角の指令値を補正するというものである。
【0006】
近年、カバーガラス、反射鏡、液晶パネルなどのガラス基板において、板面を弓形に屈曲させる湾曲化が進行している。すなわち、映像を立体的に見せることや画像の投影表面(スクリーンに相当する表面)の湾曲に応じた反射面を得るために、平板を弓形に屈曲した部分円筒面のような面としたガラス基板を使用するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−340697号公報
【特許文献2】特開2013−035089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような湾曲形状の板面を備えたワークにおいても、周縁のチッピングや欠けを除去するためにその周縁の研削加工が必要である。湾曲した周縁の加工においては、工具をワークに対して2次元平面(X−Y平面)で相対移動させると共に、この2次元平面と直交するZ方向にも相対移動させる必要がある。
【0009】
また、湾曲形状の板面を備えたワークの場合は、テーブル上へのワークの搬入誤差によりワークがテーブル上面から浮き上がってZ軸方向(高さ方向)にもずれたり、ワークとテーブル上面との間に隙間が生じてワークを吸着できないということが起こる。このような場合には、ワークの周縁のZ方向の位置を演算で求めることができず、Z方向のワークのずれを補正することができないから、精度の良い周縁加工が出来ないという問題が起こる。
【0010】
また、特許文献2で提案したような従来技術では、ワークをテーブル上に搬入したときに、ワーク中心がテーブル中心からずれてしまった場合、ワークの角部の位置を検出するカメラの焦点が合わずにワークの縁を正確に検出できなくなる問題も生じる。すなわち、湾曲形状の板面を備えたワークや曲面板の周縁加工においては、ワークをテーブルに搬入したときの搬入誤差により、ワークをテーブルに吸着できずにワークが浮いてしまい、ワークの角部の位置が変わって正確な計測ができないとか、計測値がばらついて、正確な補正値を求めることができず、精度の高い加工が不可能になるという問題がある。
【0011】
この発明は、このような問題を解決して、湾曲形状の板面を備えたワークやそれを更に発展させた部分球面、部分回転楕円面その他の回転二次曲線面などの板面を備えた曲面板である場合でも、板面が平らな平面板と同様に高い精度で周縁加工を行うことができる加工装置及び加工方法を得ることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、加工機械のテーブルに搬入されたワークの角部を3次元方向に計測して位置決めマークの読み取りや外形計測を行うことにより、搬入されたワークの角部のX、Y、Z方向の偏倚量を読み取りないし演算してワークの搬入誤差に起因するワーク周縁の位置及び高さを補正する周縁加工装置を提供するものである。
【0013】
この発明の周縁加工装置は、板状のワークwを水平に保持するテーブル12と、テーブル12に対する相対移動によりワークwの周縁を加工する工具3、3d、3eと、制御器6と、当該制御器からの指令値に基づいてテーブル12に対する工具3、3d、3eの相対位置及び相対高さを制御する横送り台21、21d、21e及び縦送り台25、25d、25eと、ワーク12の角部A、B、Cの位置と高さとを計測するセンサ5(5a〜5e)とを備え、制御器6は、センサ5が取得した少なくとも2箇所のワーク角部A、Bの位置及び高さと制御器6に登録されたワークwの形状式とにより、ワーク加工中の工具3、3d、3eの相対位置及び相対高さの指令値を補正する補正手段を備えている。
【0014】
装置の設置面積の点や機械構造がシンプルで高い加工精度を実現しやすい点から言えば、極座標系の周縁加工装置とするのが好ましい。また、カメラ5で3箇所以上の角部の高さを計測すれば、テーブル上面13からのワークwの浮き上がりや傾きに起因する誤差も補正できるので、より高精度の加工が可能である。
【0015】
テーブル12は、着脱可能で、板面が平面及び曲面のワークの種類毎に、その板面の形状に合わせて上面(ワーク載置面)を平面及び曲面に加工した専用のものを用いる。センサ5は、テーブル12にワークwが搬入されて固定されたあと、ワークの対角方向の第1の角部Aと第2の角部Bの位置と高さを計測する。この計測値から、ワークの搬入誤差を演算できる。更にワークの第3の角部Cの高さを計測すれば、ワークの形状式を用いてワーク周縁を加工する際の工具高さの補正値を演算できる。制御器6は、加工プログラムの指令値を演算された補正値で補正して、ワーク加工中におけるテーブル12の回転角、工具3、3d、3eの相対位置及び相対高さを制御する。
【0016】
ワークの面形状の式(形状式)はCADデータから取得できる。また、Z方向の工具位置の制御は、工具をZ軸方向に移動させる昇降装置を設けて、ワークのCADデータを読み込んだNC装置でこの昇降装置を制御することにより可能である。
【0017】
板面が正確な部分球面のワークであれば、搬入位置に誤差があっても、ワークはテーブル上面に密着した状態で保持され、ワークがテーブル上面から浮き上がったり傾いて保持されることはない。この場合は、ワークの周縁の位置(テーブル中心からの距離)が分かれば、ワークの形状式から高さ(テーブル上面との相対高さ)が演算できるので、搬入誤差が分かれば、工具の高さの補正を行うことができる。このように、テーブル上面からのワークの浮き上がりや傾きが無いワークやその浮き上がりや傾きを無視できるワークの場合には、2箇所の角部を計測して工具の高さの指令値を補正することができる。
【0018】
好ましいセンサは、光軸をテーブルの回転中心軸bと平行にして設けた、光軸方向の被写体までの距離も計測可能な3Dカメラ5a、5d、5eや、ワークの板面と側面とを撮影するように設けられた一組の2Dカメラ5b、5cである。板面を部分球面とみなすことができる曲面板の加工においては、光軸をテーブルの回転中心軸bと平行にして設けた1個の2Dカメラ5bとすることもできる。
【0019】
曲面板wの周縁の面取加工は、回転中心軸aを中心軸とする2個の球状の砥石面3a、3bを対向配置した砥石、好ましくは、2個の球状の砥石面3a、3bの内径端に連接する円筒砥石面3cを備えた砥石を用いる。球状砥石面3a、3bは、球帯、回転楕円帯などの面を含み、中心が砥石の回転中心軸線上にある球ないし球と同等の面で、面全体に亘ってワークに向けて凸状となっている砥石面である。
【0020】
平面板の面取りでは、板面と砥石の中心軸aとの直交状態が保持される。これに対して曲面板の面取り加工においては、砥石中心軸aと直交する面に対してワーク周縁が傾斜した状態で面取り加工が行われるようになる。上記のような砥石を用いることにより、ワーク周縁が傾斜したときでも、面取幅が変動するのを防止することができる。
【0021】
通常、周縁加工装置のテーブル12は、上面13に載置されたワークを負圧により吸着して固定する構造のものが用いられている。曲面板を加工する場合には、上面を当該曲面板の板面形状に合わせたテーブルを用いるが、曲面板の板面には形状誤差があり、また搬入誤差によりテーブル上面とワークとが密着しないで固定が不十分になることも起こりうるので、クランプシリンダ41等を設けてワークを固定することにより、加工中の負荷によるワークのずれを防ぐことも必要に応じて採用する。
【発明の効果】
【0022】
この発明により、板面が曲面の曲面板精度良く加工できる周縁加工装置を得ることができる。
【0023】
平面板の加工のみが可能な従来装置に対し、2次元方向の計測のみを行う従来のセンサを3次元方向の計測が可能なセンサに置き換え、テーブルの回転中心軸bと平行な方向の工具の位置制御手段を制御器に付加し、ワーク載置面を加工しようとする曲面板の中央部の板面に密着する曲面としたテーブルと、回転中心軸を中心軸とする2個の球状の砥石面を対向配置した工具とを準備することにより、この発明の周縁加工装置を得ることができるので、装置を安価に提供できる。特にセンサとして2Dカメラを用いたもので
は、装置をより安価に提供できる。
【0024】
更に、ワークを3次元方向に計測することで、ワークの全体形状を把握できるから、ワークのCADデータとの比較や、多数のワークに対する計測値を統計処理することにより、ワーク形状の精度やワーク毎のばらつきも計測でき、例えばテーブルの上面形状を実際のワークに正確に合致させることも可能になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施例の周縁加工装置の模式的な立面図
図2図1の装置におけるワークと工具とカメラの位置関係を示す平面図
図3】テーブルの模式的な斜視図
図4】カメラの画像の例を示す図
図5】ワークの高さ方向の偏倚を誇張して示すワーク対角方向の断面図
図6】第2実施例の要部の立面図
図7】第3実施例の要部の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、この発明の実施例を示す図面を参照して、この発明を具体的に説明する。極座標系の周縁加工装置の例を示す図1〜3において、主軸1は、鉛直方向の中空軸で、図示しない装置フレームに固定の軸受11で回転自在に軸支されている。主軸1の上端にはテーブル12が装着されている。テーブル12の上面13は、加工するガラス板wの面に対応する曲面のワーク保持面となっている。テーブル12上に搬送されたガラス板wは、主軸の中空孔を通して供給される負圧により、真空吸着されて保持される。主軸1の下端には、主軸モータ(サーボモータ)15が連結されている。主軸モータ15は、サーボアンプ61を介してNC装置6に接続され、NC装置6の指令によって主軸1の回転角が制御されている。
【0027】
テーブル12は、主軸1の上端に着脱自在で、ワークの種類毎にワーク形状に合わせて製作した専用のものが用いられる。テーブルの上面(ワーク載置面)13は、ワークが平面板であれば平面であり、曲面板であればその中心部分における面の曲率に合わせた曲面となっている。曲面板用のテーブル12は、図3に示すように、主体12aを金属か硬度の高い合成樹脂製とし、負圧による吸着孔14を設けた上面13、すなわちワークを載置する面に弾性の大きい、例えばウレタン、硬質PVCなどの合成樹脂を0.5〜1mm程度の厚さに積層12bした構造とするのが好ましい。曲面板は、その面の形状精度に誤差を含んでいる可能性があるので、テーブルのワーク載置面13に弾性を持たせることにより、その誤差が吸収されて、負圧によるテーブル上面へのワークの吸着固定をより確実に行うことができるようになるからである。
【0028】
また、曲面板の板面の形状精度のばらつきにより、テーブル12へのワークの吸着固定が十分に行われない場合があることも考慮して、図示実施例の装置では、テーブル12の上方にクランパ4を設けて曲面板wをテーブル12とクランパ4とで挟んで固定することもできるようになっている。クランパ4は、クランプシリンダ41で昇降する昇降台42に主軸1と同軸に回転自在に支持され、かつ主軸1と同期回転させる回転連結装置43、44、45が設けられている。
【0029】
ここで43は、図示しない装置フレームに主軸と平行に軸支された伝達軸であり、44は、主軸回転を伝達軸43に伝達する歯車対、45は、伝達軸43の回転をクランパ軸46に伝達する歯車対である。歯車対45の伝達軸側の歯車45aは、クランパ4が昇降しても噛み合いが外れないように軸方向に長い歯車となっている。
【0030】
21は、主軸1の上方に位置する横送り台である。横送り台21は、装置フレームに設けた水平方向の横ガイド(図示されていない)に移動自在に案内され、横送りモータ(サーボモータ)23で回転駆動される横送りねじ24に螺合している。横送りモータ23は、サーボアンプ62を介してNC装置6に接続されており、横送り台21の移動位置がNC装置6によって制御されている。
【0031】
25は縦送り台である。縦送り台25は、横送り台21に固定した鉛直方向、すなわち主軸1と平行な方向の縦ガイド(図示されていない)に移動自在に装着され、縦送りモータ(サーボモータ)26で回転駆動される縦送りねじ27に螺合している。縦送りモータ26は、サーボアンプ63を介してNC装置6に接続されており、縦送り台21の移動位置がNC装置6によって制御されている。
【0032】
3は周縁加工砥石である。周縁加工砥石3は、縦送り台25に軸受34で軸支された鉛直方向の、従って主軸1と平行な方向の砥石軸31の下端に装着されている。砥石軸31の上端は、歯付ベルト32により砥石モータ33に連結されている。
【0033】
周縁加工砥石3は、円筒砥石面3cと、当該砥石面を挟んで対向する2個の球帯砥石面3a、3bを備えている。
【0034】
球帯砥石面3a及び3bは、砥石の回転中心軸aと直交する平面との交線が砥石中心軸aを中心とする真円の凸曲面である。球帯砥石面3a、3bの内径端、すなわち円筒砥石面3cと連接する位置における球帯砥石面3a、3bの母線と円筒砥石面3cの母線(回転中心軸と平行な線)とがなす角は、105度〜135度である。
【0035】
5は3Dカメラ(ステレオカメラ)である。3Dカメラ5aは、光軸を主軸1と平行な下向きにして、横送り台21の定位置(図の例では、砥石軸31の軸心と主軸1の軸心を含む平面s上の位置)に固定的に設けられている。主軸1の軸心、砥石軸31の軸心a及び3Dカメラ5aの光軸は、横送り台21の移動方向と平行な同一鉛直面s上に位置している。
【0036】
平面板を加工するときは、縦送り台25を所定高さに保持して、横送り台21の移動位置と主軸1の回転角とを関連付けて同期制御して周縁加工を行う。曲面板を加工するときは、横送り台21の移動位置と主軸1の回転角とを関連付けて同期制御すると共に、縦送り台25の高さと主軸1の回転角とを関連付けて同期制御して周縁加工を行う。縦送り台25の高さは、砥石3の円筒部3cの軸方向の中心が現に加工しているワーク周縁の板厚中心となる高さである。
【0037】
次に、上記の周縁加工装置で曲面板wの周縁の面取加工を行う方法を説明する。まず段取り作業として、周縁加工機の主軸1の上端に加工しようとする曲面板用に準備されたテーブル12を装着し、砥石軸31の下端に前述した構造の砥石3を装着する。
【0038】
テーブル12に曲面板wが搬入されて固定されたら、CADデータから求めたワークの対角寸法Lの1/2だけテーブル中心Oから離れた位置に3Dカメラ5aが来るように横送り台21を移動し、かつその対角線のX軸に対する角度αだけテーブル12を回転して、第1の角部Aが3Dカメラ5aの撮影領域に入るようにする。そして、3Dカメラ5aで第1の角部Aの画像を取得する。
【0039】
カメラ5aで取得した図4に示すような画像から角に隣接する2本の直線の交点Ca、あるいは角の円弧中心Qaを求め、これらの点のあるべき位置Co又はQoからのX、Y方向の位置偏差Δxa、Δyaを求める。
【0040】
次にテーブル12を180度回動すると、ワークの第2の角部Bが3Dカメラ5aの撮影領域に来るから、同様にして第2の角部Bの画像を取得して、角部Bの位置偏差を求める。そして角部A及び角部Bの位置偏差から、テーブル中心とワーク中心とのX、Y方向の位置偏差Δx、Δy及びテーブル12の基準方向からのワークの角度偏差Δθを演算する。
【0041】
また、上記の対角位置にある2つの角部A、Bの高さと形状式から演算される当該角部の高さ(ワークが正しい位置に置かれたときの高さ)との差Δha、Δhbから、ワーク中心Pの高さの偏差Δhpと、当該対角方向のワークの傾きφ=Asin(Δha−Δhb)/Lとを形状式を用いて演算することができる。対角位置にある2個の角部の計測だけでは、その対角線と直交する方向のワークの傾きを検出することができないので、テーブル12を回動して他の1個の角部Cの高さを3Dカメラ5aで計測することにより、両対角方向の傾きからX及びY方向のワークの傾きφx、φyを演算する。好ましくは、更にテーブルを180度回動して、残りの1つの角部Dの高さを計測することにより、個々のワークの誤差も加味したワーク周縁の高さをより正確に計測することができる。
【0042】
このようにしてテーブル12上に固定されたワークの誤差や姿勢を検出したら、それらの検出値と曲面板の形状式とから、ワーク周縁の位置及び高さを正確に求めることができるので、演算されたΔθの値により、テーブルの回転角を補正し、テーブル中心Oとワーク中心Pの偏差Δx、Δyに基づいて、テーブルの回転角に対する横送り台21の位置を補正し、ワーク中心Pの高さΔhpとX及びY方向のワークの傾きφx、φy及び形状式から、テーブル12の回転角に対する縦送り台25の位置を補正して周縁加工を行う。
【0043】
すなわち、曲面板wの平面形状に応じて主軸1の回転と横送りモータ23の回転とをNC装置6で同期制御すると共に、研削する部分のテーブル12上における曲面板周縁の高さの変化に応じて主軸1の回転角と縦送りモータ26の回転とをNC装置6で同期制御しながら主軸1を1回転させることにより、曲面板wの周縁の上下の稜を同時加工する。
【0044】
この面取面の研削の際に、対向する球帯砥石面3a、3bの間に設けた円筒砥石面3cで曲面板周縁の端面を仕上研削することができる。
【0045】
上述したワークの偏倚量Δx、Δy、Δθ、Δhp、φx、φyの検出は、ワークwがテーブル12に搬入される毎に行われ、ワーク毎に得られた補正値を用いてワークの加工が行われる。以上の手順により、ワークの搬入誤差に影響されない曲面板の正確な周縁加工を行うことができる。
【0046】
以上はセンサとして3Dカメラを用いた例であるが、板面を部分球面と見なすことができる曲面板を加工する装置であれば、角部の高さ検出を行わないで、すなわち光軸を主軸1と平行にした2Dカメラでワークの角部の検出を行って、工具の高さ方向の補正を行う加工が可能である。
【0047】
すなわち、板面を部分球面と見なすことができるワークでは、搬入誤差でワーク中心Pとテーブル中心Oがずれてもワークがテーブルから浮き上がることはなく、また、ワークの傾きは、テーブル中心Oとワーク中心Pのずれ量Δx、Δyと形状式を用いて求めることができる。すなわちワークの部分球面の曲率をrとすれば、X軸方向のワークの傾きは、θ=AsinΔx/r、Y方向の傾きは、φ=AsinΔy/rで演算できる。従って、面の形状を部分球面と見なすことができるワークについては、カメラで計測した2次元方向のずれとワークの形状式とによって砥石の高さ方向の位置を制御することで曲面板の正確な周縁加工が可能である。
【0048】
しかし、ワークの曲率が大きいときは、ワーク中心Pとテーブル中心Oのずれによる角部の高さの変動が大きいので、2Dカメラでは焦点深度の関係で高さを正確に計測できないので、そのような場合には、3Dカメラを用いるのがより好ましい。
【0049】
また、ワークの角部の位置と高さは、鉛直方向と水平方向との2個の2次元カメラで計測することもできる。すなわち図6に示すように、主軸軸線と平行な鉛直方向の2Dカメラ5bと、これに直交する水平方向の2Dカメラ5cとを縦送り台25に装着し、カメラ5cが取得したワークの端面の画像によって、ワークの角部A、B、Cの高さを計測するのである。この場合、ワークの端面に同軸照明を当てることにより、カメラ5cの画像に端面が白く写り、端面の高さを正確に計測できる。
【0050】
更に、ワーク角部の高さを計測するセンサとしては、レーザ測長器、TOF(タイムオブフライ)と呼ばれる赤外光を用いた測長器、近接センサを用いて計測を行うことも可能である。これらのセンサは、2次元カメラと併用するか、あるいはX、Y、Z、3方向でワークの角部の位置と高さを計測するように設ける。角部が金属コーティングされたガラス板であれば、近接センサとして静電容量センサなども用いることができる。
【0051】
以上は極座標系の周縁加工装置の例であるが、直角座標系の装置でも同様な方法で曲面板wの面取加工を行うことができる。
【0052】
図7は直角座標系の周縁加工装置の搬入誤差検出用の2個のカメラを3Dカメラ5d、5eとしたこの発明の周縁加工装置を模式的に示した斜視図である。ワークwを固定するテーブル12は、図にCで示す鉛直軸回りに旋回可能かつ図のY方向に送り移動可能で、その旋回モータ及び送りモータにはサーボモータが用いられて、NC装置により旋回角と移動位置が制御されている。
【0053】
テーブル12の送り直角方向(図のX方向)両側には、X方向に個別に移動可能な横送り台21d、21eが配置され、それぞれの横送り台21d、21eに縦送り台25d、25eが設けられ、各縦送り台25d、25eに軸支した鉛直方向の砥石軸31d、31eの下端に図1で説明したと同様な構造の砥石3d、3eが装着されている。横送り台21d、21e及び縦送り台25d、25eの送りモータにはサーボモータが用いられて、NC装置によりそれぞれの移動位置が個別に制御されている。
【0054】
ワークwには、対角位置にある角部A、Bと他の1つの角部Cとに、搬入誤差検出用のマークMa、Mb、Mcが付されており、これらのマークを読み取る3Dカメラ5d、5eがそれぞれの側の横送り台21d、21eの定位置に装着されている。
【0055】
テーブル12は、その上面が加工しようとするワークwの曲面に等しい曲面の、ワークwより縦横寸法が少し狭い大きさで、搬入されたワークwは、周縁がテーブル12からはみ出した状態で保持される。ワークwがテーブル12に固定されたら、マークMa、Mcがカメラ5d、5eの撮影領域に入る位置までテーブル12をY方向に移動して、マークMa、Mcの画像を取得すると共に当該画像までのZ方向の距離を計測する。次に、マークMbがカメラ5eの撮影領域に入る位置までテーブル12をY方向に移動して、マークMbの画像を取得すると共に当該画像までのZ方向の距離を計測する。
【0056】
以上の操作で、テーブル12上に搬入された曲面板wの対角位置にある角部A、Bの位置と高さ及び他の1つの角部Cの高さとが計測できるから、搬入誤差を演算して角度の搬入誤差分だけテーブル12を回動して固定し、X方向の位置の搬入誤差分だけ横送り台21d、21eのX方向の基準位置を補正する。そして、横送り台21d、21e及び縦送り台25d、25eの移動位置とを、演算された補正値で補正しながら砥石3d、3eのX及びZ方向の移動量とテーブル12のY方向の送り量とを関連づけて制御することにより、対向側縁d、eの面取加工を行う。
【0057】
次に、テーブル12を90度回動し、同様の手順で他方の対向側辺f、gの面取加工を行う。
【符号の説明】
【0058】
1 主軸
3、3d、3e 砥石
5(5a〜5e) カメラ
6 制御器
12 テーブル
13 テーブルの上面
21、21d、21e 横送り台
25、25d、25e 縦送り台
A、B、C ワークの角部
a 工具の回転中心軸
b テーブルの回転中心軸
w 曲面板(ワーク)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7