(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
本明細書において、ある部材の「表面」は、被着体と接する側と反対側の面を指し、「裏面」は、被着体と接する側の面を指す。筒状ラベルにあっては、表面はその筒体の外側の面を指す。「平面視形状」は、フィルムの表面に対して鉛直方向から見た形状をいう。また、用語の前に、「第1」、「第2」などを付す場合があるが、この語は、用語を区別するために付加されたものであり、その優劣や順序などを意味しない。さらに、「PPP〜QQQ]という記載は、「PPP以上QQQ以下」を意味する。
また、熱収縮性を有する積層フィルムを「熱収縮性積層フィルム」と記し、自己伸縮性を有する積層フィルムを「自己伸縮性積層フィルム」と記す。
なお、各図において、厚みや比率などは、実際のものと異なっていることに留意されたい。
【0015】
[第1実施形態]
第1実施形態は、熱収縮性積層フィルム及びそれを筒状に形成した熱収縮性筒状ラベルに関する。
図1は、本発明の熱収縮性筒状ラベルを構成する基本部材である、熱収縮性積層フィルムを有するラベル基材の平面図であり、
図2は、それを主延伸方向と直交する方向(第2方向)に沿って切断した断面図である。
ラベル基材1は、表層21と中間層22と裏層23とを有する熱収縮性積層フィルム2と、意匠印刷層(図示せず)と、を有する。ラベル基材1は、必要に応じて、熱収縮性積層フィルム2の裏面に、さらに光反射層3を有する。また、ラベル基材1は、これらの層以外の機能層を有していてもよい。前記機能層としては、表面保護用のオーバーコート層、滑り性を向上させるための滑り層、表面の艶を抑制する艶消し層などが挙げられる。前記意匠印刷層、光反射層、他の機能層は、通常、成膜・延伸処理して得られた熱収縮性積層フィルム2に対して設けられる。
前記熱収縮性積層フィルム2の表層21及び裏層23は、それぞれレーザー発色剤を含んでいる。
以下、具体的に説明する。
【0016】
<熱収縮性積層フィルム>
熱収縮性積層フィルム2は、少なくとも第1方向(第1方向は、筒状に形成された際に周方向となる)に熱収縮する熱収縮性を有するフィルムである。
熱収縮性は、所定の温度(例えば、70℃〜150℃)に加熱されると収縮する性質をいう。熱収縮性積層フィルム2は、第2方向(第2方向は、フィルムの面内で前記第1方向に直交する方向)にも若干熱収縮又は熱伸張するものを用いてもよい。熱収縮性積層フィルム2は、前記少なくとも第1方向に熱収縮性を有していることを条件として、自己伸縮性をも併有していてもよい。
熱収縮性積層フィルム2の熱収縮率は、特に限定されない。熱収縮性積層フィルム2の、90℃に加熱した際の第1方向における熱収縮率は、例えば、30%以上であり、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上である。
なお、熱収縮性積層フィルム2が第2方向にも若干熱収縮又は熱伸張する場合、その90℃に加熱した際の第2方向における熱収縮率は、例えば、−3%〜15%である。前記第2方向の熱収縮率のマイナスは、熱伸張を意味する。
【0017】
前記90℃に加熱した際の熱収縮率は、加熱前のフィルムの長さ(元の長さ)と、フィルムを90℃の温水中に10秒間浸漬した後のフィルムの長さ(浸漬後の長さ)の割合であり、下記式に代入して求められる。
式:熱収縮率(%)=[{(第1方向(又は第2方向)の元の長さ)−(第1方向(又は第2方向)の浸漬後の長さ)}/(第1方向(又は第2方向)の元の長さ)]×100。
【0018】
熱収縮性積層フィルム2は、表層21、中間層22、裏層23がこの順で積層された熱収縮性を有するフィルムである。これらの層21,22,23の全てが熱収縮性を有していてもよいし、或いは、熱収縮性積層フィルム2が熱収縮性を有していることを条件として、これらの層21,22,23の中の一部の層が熱収縮性を有し且つ残る層が熱収縮性を有していなくてもよい。もっとも、良好な熱収縮特性を示すことから、表層21、中間層22及び裏層23の何れもが熱収縮性を有することが好ましい。
図2に示す熱収縮性積層フィルム2は、表層21、中間層22及び裏層23がそれぞれも単一の層からなる3層構造である。熱収縮性積層フィルム2の表面(表層21の表面)及び裏面(裏層23の裏面)は、いずれも平滑である。
【0019】
表層21、中間層22及び裏層23からなる熱収縮性積層フィルム2は、各層の形成材料を対応する押出機(通常、3台の押出機。表層及び裏層が同材質又は表層、中間層及び裏層が同材質の場合には、2台又は1台の押出機でもよい)からそれぞれ共押出し、ロールに引き取ることにより製膜し、さらに、少なくとも第1方向(主たる熱収縮方向)に延伸することにより得ることができる。必要に応じて、成膜後、第1方向及び第2方向に延伸してもよい。従って、熱収縮性積層フィルム2を構成する表層21、中間層22及び裏層23は、通常、延伸処理が施されたものである。かかる製法で得られた表層21、中間層22及び裏層23は、何れも熱収縮性を有する。
延伸は、テンター法、チューブラー法などの公知の方法で行うことができる。延伸処理は、通常、70℃〜110℃の温度で、第1方向に2.0〜8.0倍、好ましくは3.0〜7.0倍程度延伸すればよい。さらに、必要に応じて、第2方向にも、例えば1.5倍以下の低倍率で延伸処理を行ってもよい。
【0020】
表層21及び裏層23の厚みは、特に限定されないが、それぞれ独立して、例えば、2μm以上であり、好ましくは3μm以上であり、より好ましくは4μm以上である。表層21及び裏層23が余りに薄いと、印字の濃さが薄くなるおそれがる。他方、表層21及び裏層23の厚みは、それぞれ独立して、例えば、25μm以下であり、好ましくは20μm以下であり、より好ましくは15μm以下である。表層21及び裏層23が余りに厚いと、レーザー光の照射時に熱収縮性積層フィルム2の内部に生じる気泡に含まれる気体が外部へと抜け難くなるおそれがある。
中間層22の厚みは、特に限定されず、例えば、10μm〜90μmであり、好ましくは、20μm〜60μmである。
表層21、中間層22及び裏層23の厚みの比率は、特に限定されず、例えば、表層:中間層:裏層=1:1:1〜1:10:1であり、好ましくは、1:2:1〜1:8:1であり、より好ましくは、1:3:1〜1:6:1である。
【0021】
表層21、中間層22及び裏層23の各形成材料は、特に限定されないが、一般的には、熱可塑性樹脂が用いられる。なお、表層21及び裏層23の形成材料は、樹脂材料の他にレーザー発色剤が含まれているが、レーザー発色剤については、後述する。
表層21、中間層22及び裏層23を形成する各樹脂材料は、同種でもよいし又は互いに異なっていてもよい。好ましくは、少なくとも表層21及び裏層23は同種の樹脂材料から形成される。
表層21、中間層22及び裏層23の各樹脂材料は、レーザー光を十分に透過させる樹脂が好ましい。例えば、表層21及び中間層22(又は中間層22及び裏層23)が、レーザー光の多くを吸収する樹脂材料から形成されている場合、熱収縮性筒状ラベルの表面側(又は裏面側)からレーザー光を照射した際に、裏層23(又は表層21)に入射されるレーザー光が少なくなる。
なお、前記レーザー光を十分に透過させる樹脂は、入射されるレーザー光(波長=1,064nm)を、50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上を透過する樹脂をいう。前記レーザー光の透過率は、測定対象の樹脂をTダイから溶融押出することによって45μmの樹脂フィルムを製膜し、その樹脂フィルムを近赤外分光計((株)島津製作所製の商品名「3100A」)を用いて測定した値である。
【0022】
表層21、中間層22及び裏層23の各樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、共重合ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートなどのポリエステル系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、環状オレフィンなどのオレフィン系樹脂;塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられる。これらは、1種単独で、又は2種以上を併用できる。
好ましくは、表層21及び裏層23の各樹脂材料の主成分として、ポリエステル系樹脂又はポリスチレン系樹脂が用いられ、より好ましくは、表層21、中間層22及び裏層23の各樹脂材料の主成分として、ポリエステル系樹脂又はポリスチレン系樹脂が用いられる。ポリエステル系樹脂を含む表層21及び裏層23を有する熱収縮性積層フィルム2を用いることにより、耐油性に優れた熱収縮性筒状ラベルを得ることができる。また、ポリスチレン系樹脂を含む表層21及び裏層23を有する熱収縮性積層フィルム2を用いることにより、レーザー発色性に優れた熱収縮性筒状ラベルを得ることができる。
例えば、表層21/中間層22/裏層23の例として、(1)ポリエステル系樹脂層/ポリエステル系樹脂層/ポリエステル系樹脂層、(2)ポリスチレン系樹脂層/ポリスチレン系樹脂層/ポリスチレン系樹脂層、(3)ポリスチレン系樹脂層/ポリエステル系樹脂層/ポリスチレン系樹脂層、(4)ポリエステル系樹脂層/ポリスチレン系樹脂層/ポリエステル系樹脂層などが挙げられる。表層21及び裏層23の双方がポリエステル系樹脂層である場合には、中間層22もポリエステル系樹脂層であることが好ましい。
なお、前記主成分は、各層を構成する樹脂が単一の場合には、その樹脂成分を、各層を構成する樹脂が2種以上の混合物である場合には、その中で最も多い量(質量基準)のものをいう。
【0023】
前記ポリエステル系樹脂は、特に限定されないが、好ましくはポリエチレンテレフタレート系樹脂である。前記ポリエチレンテレフタレート系樹脂としては、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を用い、ジオール成分としてエチレングリコールを用いたポリエチレンテレフタレート(PET);ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を用い、ジオール成分としてエチレングリコールを主成分、1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)を共重合成分として用いた共重合ポリエステル(CHDM共重合PET)、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を用い、ジオール成分としてエチレングリコールを主成分、ネオペンチルグリコール(NPG)を共重合成分として用いた共重合ポリエステル(NPG共重合PET)、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を用い、ジオール成分としてエチレングリコールを主成分、ジエチレングリコールを共重合成分として用いた共重合ポリエステルなどのジオール変性PET;ジカルボン酸成分において、テレフタル酸を主成分にイソフタル酸及び/又はアジピン酸で変性したジカルボン酸変性PET;ジカルボン酸成分及びジオール成分の両方を変性したジカルボン酸及びジオール変性PET;などが挙げられる。これらの中では、ジオール変性PET、ジカルボン酸変性PET、ジカルボン酸及びジオール変性PETなどの共重合成分を有する変性PETが好ましい。
【0024】
前記ポリスチレン系樹脂としては、例えば、スチレンの単独重合体である一般ポリスチレン(GPPS)などのスチレン系単量体の単独重合体又は共重合体;合成ゴムにスチレン系単量体をグラフト重合させた高衝撃性ポリスチレン(HIPS);スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBSなど)に代表される、スチレン系単量体とブタジエンやイソプレン等のジエン系単量体(共役ジエン)からなる共重合体であるスチレン−共役ジエン共重合体;スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル系単量体などの共重合体であるスチレン−重合性不飽和カルボン酸エステル共重合体;スチレン−共役ジエン−重合性不飽和カルボン酸エステル共重合体;スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル系単量体との共重合体をゴム成分にグラフト重合させた透明・高衝撃性ポリスチレン(グラフトHIPS)、及びこれらの混合物等が挙げられる。これらの中では、所定のポリスチレン系樹脂として、スチレン−共役ジエン共重合体を含むことが好ましい。このスチレン−共役ジエン共重合体にはその水添物を含む。
【0025】
前記(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル系単量体は、1種単独で、又は、2種以上併用できる。前記(メタ)アクリルは、メタクリル又はアクリルを意味する。
【0026】
前記スチレン系単量体としては、特に限定されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、p−イソブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、クロロメチルスチレンなどが挙げられる。中でも、強度、成形性などの物性の観点から、スチレンが特に好ましい。なお、これらスチレン系単量体は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
前記共役ジエンとしては、特に限定されないが、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、クロロプレンなどが挙げられる。中でも、脆性改良、柔軟性付与の観点から、1,3−ブタジエン、イソプレンが特に好ましい。なお、これら共役ジエンは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
前記スチレン−共役ジエン共重合体の共重合の形態としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体など特に限定されないが、ブロック共重合体が好ましく、スチレン(S)−共役ジエンブロック(D)型、S−D−S型、D−S−D型、S−D−S−D型等が挙げられる。
【0029】
前記スチレン−共役ジエン共重合体としては、例えば、水添又は非水添のスチレン−ブタジエンブロック共重合体、水添又は非水添のスチレン−イソプレンブロック共重合体、水添又は非水添のスチレン−ブタジエン−イソプレンブロック共重合体などが挙げられる。これらの中では、水添又は非水添のスチレン−ブタジエンブロック共重合体が好ましい。前記水添は、「水素添加された」という意味であり、非水添は、「水素添加されていない」という意味である。
前記水添又は非水添のスチレン−ブタジエンブロック共重合体としては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレン共重合体(SBBS)などが例示される。
【0030】
レーザー光の照射によって生じる所望の印字を視認できるようにするため、少なくとも表層21は透明であることが好ましく、さらに、少なくとも表層21及び裏層23が透明であることがより好ましく、表層21、中間層22及び裏層23の何れもが透明であることが特に好ましい。
本発明において、透明は、有色透明又は無色透明を含むが、好ましくは無色透明である。
前記透明性の度合いは、所望の印字を熱収縮性積層フィルム2の表面側から視認できる程度であれば特に限定されない。表層21の可視光領域の全光線透過率は、例えば、70%以上であり、好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上である。また、表層21、中間層22及び裏層23が透明である場合、熱収縮性積層フィルム2の全光線透過率は、例えば、70%以上であり、好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上である。前記全光線透過率は、JIS K7105(プラスチックの光学的特性試験方法)に準拠した測定法によって測定される値をいう。
熱収縮性積層フィルム2の厚みは、特に限定されないが、一般に、20μm〜100μmであり、好ましくは30μm〜90μm、より好ましくは35μm〜80μmである。
【0031】
表層21、中間層22及び裏層23は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記主成分となる樹脂成分以外の熱可塑性樹脂及び各種添加剤を含んでいてもよい。前記添加剤としては、例えば、充填剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、核剤、難燃剤などが挙げられる。
このような他の熱可塑性樹脂及び添加剤を配合する場合、その量は、形成材料中、0を超え50質量%以下が好ましく、0を超え20質量%以下がより好ましい。
【0032】
<レーザー発色剤>
レーザー発色剤は、表層21及び裏層23のそれぞれに含まれている。
レーザー発色剤は、レーザー光の照射によって発熱する機能を有するものであれば、特に限定されず、レーザー光の照射によって、それ自身が発色するでもよいし、或いは、それ自身は発色しないものでもよい。レーザー発色剤が発熱することにより、少なくともその周辺の表層等形成材料が炭化し、表層21及び裏層23の少なくとも一方に所望の印字が表れる。また、それ自身発色するレーザー発色剤を用いることにより、レーザー発色剤の発色とフィルムの形成材料が炭化することによって生じる炭化物とが相乗して、濃く視認性に優れた印字を表すことができる。レーザー発色剤が発色する場合、その色彩は特に限定されないが、好ましくは、黒、紺、茶を含む濃色に発色し得るレーザー発色剤が好ましい。
【0033】
レーザー発色剤としては、例えば、銅、錫、コバルト、ニッケル、ビスマスなどの金属化合物;金属化合物又は金属化合物を含む材料で被覆された雲母又はシリカ;金属塩化合物;ロイコ染料などが挙げられる。
前記金属塩化合物としては、例えば、乳酸ニッケル、次亜リン酸ニッケル、ギ酸ニッケルなどのニッケル化合物;炭酸銅、シュウ酸銅などの銅化合物;ケイ酸ジルコニウムなどのジルコニウム化合物;塩基性亜リン酸鉛などの鉛化合物などが挙げられる。
前記ロイコ染料としては、フルオラン系、フェノチアジン系、スピロピラン系、トリフェニルメタフタリド系、ローダミンラクタム系などが挙げられる。ロイコ染料の具体例としては、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−アミノフタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ニトロフタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3,3−ビス(3−ジメチルアミノ)−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオランなどが挙げられる。
【0034】
表層21及び裏層23の透明性を損なわず、且つ良好な印字が表れることから、レーザー発色剤として銅、錫、コバルト、ニッケル、ビスマスなどの金属化合物を用いることが好ましく、さらに、ビスマス及び付加的金属を含む金属酸化物を用いることがより好ましい。前記付加的金属としては、元素記号で、Zn、Ti、Fe、Cu、Al、Zr、P、Sn、Sr、Si、Y、Nb、La、Ta、Pr、Ca、Mg、Mo、W、Sb、Cr、Ba、Nd、Gdなどが挙げられる。特に、前記金属酸化物は、一般式:Bi
(1−x)M
xO
y、で表されるものが好ましい。前記一般式において、Mは、ガドリウム及びネオジムから選択される少なくとも1つの金属を表し、x及びyは、0.001<x<0.5、1<y<2.5の関係を有する値を表す。
かかる一般式で表されるビスマスネオジム(又はビズマスガドリウム)酸化物からなるレーザー発色剤は、それを構成する元素の酸化物、あるいは熱を加えることにより酸化物となる化合物を、所定の割合で配合した原料配合物を粉砕機で乾式処理することにより、メカノケミカル反応を起こすに充分なエネルギーをその原料配合物に与える工程、及びそれを300℃以上の温度で焼成する工程を有して得ることができる。
前記ビスマスネオジム(又はビズマスガドリウム)酸化物からなるレーザー発色剤は、特許第5227733号公報の[0017]乃至[0032]、[0048]乃至[0049]などに記載されている。(前記公報の記載を本明細書に記載したものとして)本明細書では、紙面の都合上、前記公報の記載を省略する。ただし、本明細書には、前記公報の記載をそのままは取り込めるものとする。
前記ビスマスネオジム(又はビズマスガドリウム)酸化物は、レーザー光の照射によって、それ自身発色すると共に発熱するものである。また、前記ビスマスネオジム(又はビズマスガドリウム)酸化物は、比較的少量でも良好に発色及び発熱するので、表層21及び裏層23の透明性を損なうことなく本発明の効果を十分に発揮できる。
【0035】
前記レーザー発色剤が金属化合物などの粒状である場合、その平均粒径(体積基準のメジアン径)が0を超え5μm以下、好ましくは3μm以下、より好ましくは2μm以下の粒状のレーザー発色剤を用いることが好ましい。このような粒径のレーザー発色剤を用いることにより、透明性に優れた表層21及び裏層23を構成できる。
【0036】
前記レーザー発色剤の含有量は、特に限定されないが、余りに少ないと、発色し難いことから、表層21(又は裏層23)の全体を100質量%とした場合に、レーザー発色剤が0.01質量%以上含まれていることが好ましく、さらに、0.02質量%以上がより好ましい。他方、レーザー発色剤が余りに多く含まれていると、表層21の表面(又は裏層23の裏面)の印刷適正が低下し、さらに、透明性が低下するおそれがあり、それに意匠印刷層などの各種の機能層を良好に形成できないおそれがある。かかる観点から、表層21(又は裏層23)の全体を100質量%とした場合に、レーザー発色剤が10質量%以下含まれていることが好ましく、さらに、5質量%以下がより好ましく、1質量%以下が特に好ましく、0.5質量%以下が最も好ましい。
【0037】
なお、中間層22には、実質的にレーザー発色剤は含まれていない。前記「実質的にレーザー発色剤を含まない」とは、不可避的に含まれる程度の微量のレーザー発色剤の混入は許容され、有意な量の混入は除外されるという意味である。
前記有意な混入とは、レーザー光を照射したときに、表層又は裏層に含まれるレーザー発色剤に起因してそれらの層に印字が生じる前に又はそれと同時に、中間層に印字が生じる程度の混入をいう。
【0038】
<意匠印刷層>
意匠印刷層は、所望のデザインを表すために、熱収縮性積層フィルム2に必要に応じて設けられる。意匠印刷層は、公知の印刷インキを、熱収縮性積層フィルム2の表面(表層21の表面)及び/又は裏面(裏層23の裏面)に印刷することにより形成できる。傷付き難くなることから、熱収縮性積層フィルム2の裏面(裏層23の裏面)に意匠印刷層を設けることが好ましい。
意匠印刷層を熱収縮性積層フィルム2の裏面に設ける場合には、意匠印刷層のデザイン表示が光反射層3によって隠蔽されないようにするために、熱収縮性積層フィルム2の裏面と光反射層3の間に意匠印刷層が設けられる。
【0039】
<光反射層>
光反射層3は、所望の印字を熱収縮性積層フィルム2の表面側から見えやすくするために、必要に応じて熱収縮性積層フィルム2の裏面に積層される。また、前記光反射層3を設けることにより、熱収縮性積層フィルム2の表面側からレーザー光を照射した際に、所望の印字が生じ易くなる。
光反射層3としては、所定色のインキを熱収縮性積層フィルム2の裏面にベタ状に塗工することにより熱収縮性積層フィルム2の裏面に設けられた背景印刷層、熱収縮性積層フィルム2の裏面に蒸着されたアルミニウム膜などの金属蒸着膜、熱収縮性積層フィルム2の裏面に積層されたアルミニウム箔などの金属箔などが挙げられる。
【0040】
前記背景印刷層の色彩は、光を反射することを条件として特に限定されず、通常、白色、淡黄色などの淡色又は銀色であり、好ましくは白色である。前記白色又は淡黄色の色彩を呈する背景印刷層は、酸化チタンを含んでいるものが好ましく、さらに、40質量%〜80質量%の酸化チタンを含むものがより好ましい。酸化チタンは、レーザーを吸収し難いので、酸化チタンを含む光反射層3はレーザー照射によって消失しにくくなる。前記バインダー樹脂としては、従来公知の印刷インキに用いられている樹脂成分を用いることができ、例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂などが挙げられる。
背景印刷層の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.2μm〜15μmである。
【0041】
前記ラベル基材1(熱収縮性積層フィルム2)の表面側又は裏面側からレーザー光を照射することにより、表層21の一部分及び/又は裏層23の一部分に炭化物を生じる。この炭化物(通常、黒色)からなる所望の印字5が、表層21及び裏層23の少なくとも一方に、好ましくは表層21及び裏層23の双方に表れる(
図3及び
図4参照。なお、表層21及び裏層23のそれぞれに印字が表れる場合、両印字は、フィルムの厚み方向で重なっており、熱収縮性積層フィルム2の表面側又は裏面側から見ると、1つの印字5として視認される。表層21及び裏層23のそれぞれに表れた印字は、それを表面側又は裏面側から見たときには、表層21又は裏層23の何れか一方のみに印字が表れる場合よりも濃く見えるようになる。
レーザー光としては、YAGレーザー光線(イットリウム・アルミニウム・ガーネットレーザー光線。波長=1,064nm)や、YVO
4レーザー光線(イットリウム・バナデートレーザー光線。波長=1,064nm)などを使用できる。鮮明な印字を形成できることから、YAGレーザー光線又はYVO
4レーザー光線を用いることが好ましい。
レーザー光の照射条件は、適宜設定される。
レーザー光の周波数は、例えば、20kHz〜100kHz、好ましくは20kHz〜40kHzである。周波数(エネルギー)が小さすぎると表層21及び裏層23が十分に炭化せず、他方、周波数が大きすぎると表層21及び裏層23が焼け過ぎて部分的に破断するおそれがある。
【0042】
表層21及び裏層23にレーザー発色剤が含まれている本発明の熱収縮性積層フィルム2は、レーザー光を照射することにより、シャープな輪郭を有する鮮明な印字を表すことができる。これは、下記のような作用によるものと推定される。
従来のように、中間層にレーザー発色剤が含まれているフィルムにあっては、レーザー光が中間層に入射することにより、レーザー発色剤が発熱し、その発色剤の周辺における中間層の形成材料(主として樹脂成分)が炭化し、中間層内に炭化物と気泡が生じる(
図5(a)参照)。中間層に生じた気体は、外部に出難いので、気泡が成長してさらに大きな気泡(空洞)を生じる。炭化物は気泡の周囲に生じるので、気泡が大きいほど炭化物が肥大化した状態となる。炭化物の視認が印字であるが、前記のように膨れて肥大化した炭化物からなる印字は、ぼやけた感じに見える。
一方、本発明においても、レーザー光が表層に入射すると、レーザー発色剤が発熱し、その発色剤の周辺における表層の形成材料が炭化し、表層内に炭化物と気泡が生じる。表層は、熱収縮性積層フィルムの最外側に配置されているので、前記表層の一部分から生じた気体が表層21の表面から外部へと抜け出やすい。つまり、表層21の内部(表層の厚み方向のうち、表面に比較的近い部分又は表面から比較的離れている部分)に生じた気体が、表層21の表面から抜け出るようになる。このため、表層21の内部には、気泡が存在するが、その気泡の一部分と表層21の表面との間には、外部に繋がる微細な通路が形成されている。このようにレーザー光の照射と略同時に生じた気泡が外部に逐次連通することにより、その気泡が大きく成長しない又は気泡が潰れるため、気泡の周囲に生じる炭化物も肥大化し難いと考えられる(
図5(b)参照)。
本発明によれば、レーザー光の照射部分に集中的に炭化物が生じ、それが肥大化し難いので、その印字は、シャープな輪郭を有して鮮明に見えるようになる。なお、本発明の裏層23においても、前記表層21と同様の作用によって、シャープな輪郭を有する鮮明な印字が表れる。
特に、表層21及び裏層23の厚みが25μm以下である場合、その薄さに起因して表層21及び裏層23から生じた気体が外部に抜け易くなる。
また、レーザー光の照射時に中間層22に大きな気泡が生じないので、熱収縮性積層フィルム2の強度が低下するおそれがない。
【0043】
前記所望の印字は、特に限定されず、適宜設定できる。印字は、商品名や絵柄などの予め決まったデザインを表すものでもよいし、又は、オンデマンド的なものを表すものでもよい。
オンデマンド的な印字には、例えば、製造年月日、賞味期限、製造コードなどのトレーサビリティに関する印字、懸賞キャンペーンを行っている場合の懸賞応募IDを表す印字、アタリ又はハズレのような籤を表す印字などが含まれる。通常、このようなオンデマンド的な印字は、数字、文字、記号などで表される。
【0044】
本発明の熱収縮性筒状ラベルは、被着体に外嵌する前から筒状に形成されているもの(第1の熱収縮性筒状ラベル)でもよいし、或いは、被着体に外嵌すると同時に筒状に形成されるもの(第2の熱収縮性筒状ラベル)でもよい。
【0045】
例えば、
図6に示すように、本発明の第1の熱収縮性筒状ラベル11は、前記熱収縮性積層フィルム2を有するラベル基材1の裏面側を内側にして丸め、第1方向(主たる熱収縮方向)が周方向となるように、ラベル基材1の第1側端部1aの表面に第2側端部1bの裏面を重ね合わせて接着することにより、筒状に形成されている。
【0046】
また、
図8に示すように、本発明の第2の熱収縮性筒状ラベル12は、前記熱収縮性積層フィルム2を有するラベル基材1の第1側端部1aの裏面を被着体6に接着し、且つ熱収縮性積層フィルム2の第1方向(主たる熱収縮方向)が周方向となるように、ラベル基材1を被着体6の周囲に巻き付けた後、前記第1側端部1aの表面に第2側端部1bの裏面を重ね合わせて接着することにより、筒状に形成されている。
図7は、第2の熱収縮性筒状ラベル12の形成過程を示し、ラベル基材1の第1側端部1aの裏面を被着体6に接着し、ラベル基材1を被着体6に巻き付ける前の状態を示している。
なお、前記第1側端部1aは、ラベル基材1の第1方向両側において第2方向に延びる両側部のうちの一方であり、第2側端部1bは、その両側部のうちの他方である。
【0047】
第1及び第2の熱収縮性筒状ラベル11,12は、ラベル基材1を筒状に形成する前に、レーザー光を照射して所望の印字5を形成してもよいし、ラベル基材1を筒状に形成した後に、その表面側からレーザー光を照射して所望の印字5を形成してもよい。
第1の熱収縮性筒状ラベル11は、通常、ラベル基材1を筒状に形成して筒状体とした後、レーザー光を照射して熱収縮性積層フィルム2に所望の印字5が形成される。
第2の熱収縮性筒状ラベル12は、熱収縮性積層フィルム2の内部に所望の印字5が形成されたラベル基材1を用いて、被着体6を利用して筒状に形成される。
【0048】
第1の熱収縮性筒状ラベル11は、被着体に外嵌した後、所定の温度に加熱することにより、周方向に収縮して被着体に密着する。
第2の熱収縮性筒状ラベル12は、既に被着体に外嵌されているので、所定の温度に加熱することにより、周方向に収縮して被着体に密着する。
被着体は、特に限定されず、代表的には、飲料容器、調味料容器、化粧品容器、医薬品容器などの各種容器が挙げられる。
本発明の熱収縮性積層フィルム及びそれを有する熱収縮性筒状ラベルによれば、レーザー光により所望の印字を鮮明に表すことができる。この印字は、フィルムの形成材料の炭化物によって構成されるので、ラベルが擦れても、それによって印字が消失し難い。さらに、中間層22を有するので、レーザー光を照射した際に、熱収縮性積層フィルムが不用意に破断するおそれもない。また、レーザー光を使用するので、熱収縮性積層フィルム及び熱収縮性筒状ラベルが濡れていても所望の印字を表すことができる。
【0049】
本発明の熱収縮性筒状ラベルに用いられる熱収縮性積層フィルムは、上記実施形態に限られず、本発明の意図する範囲で様々に設計変更できる。
例えば、上記実施形態では、中間層22は、単一の層からなるが、中間層22が複数の層から構成されていてもよい。例えば、
図9に示すように、中間層22が、第1中間層221、第2中間層222及び第3中間層223の3層から構成されていてもよい。また、特に図示しないが、中間層が2層又は4層以上で構成されていてもよい。中間層が複数の層から構成されている場合、その複数の層を形成する各樹脂材料は、同種でもよいし又は互いに異なっていてもよい。
また、上記実施形態では、熱収縮性積層フィルム2の裏面(つまり、裏層23の裏面)に光反射層3が設けられているが、
図9に示すように、光反射層を有さない熱収縮性積層フィルム2を用いてもよい。
【0050】
[第2実施形態]
第2実施形態は、自己伸縮性積層フィルム及びそれを筒状に形成した自己伸縮性筒状ラベルに関する。
以下、第2実施形態について説明するが、上記第1実施形態と同様の構成及び効果は、(それぞれ説明したものとして)その説明を省略する。
なお、自己伸縮性は、拡張力を加えたときに伸張し、拡張力を解除した後に、ほぼ元のように復元する性質をいう。
【0051】
本発明の自己伸縮性筒状ラベルは、自己伸縮性積層フィルムを有するラベル基材を筒状に形成したものである。すなわち、自己伸縮性積層フィルムを有するラベル基材の裏面側を内側にして丸め、第1方向(主たる伸縮方向)が周方向となるように、ラベル基材の第1側端部の表面に第2側端部の裏面を重ね合わせて接着することにより、自己伸縮性ラベルが構成される。自己伸縮性ラベルの態様は、熱収縮性積層フィルムが自己伸縮性積層フィルムである点を除いて、
図6と同様である。
自己伸縮性ラベルは、拡張力を加えて径外方向に拡径して被着体に被せた後、前記拡張力を解除することにより、被着体に装着できる。
【0052】
自己伸縮性ラベルを構成するラベル基材は、熱収縮性積層フィルムが自己伸縮性積層フィルムである点を除いて、上記第1実施形態と同様である。
自己伸縮性積層フィルムは、少なくとも第1方向(第1方向は、筒状に形成された際に周方向となる)に伸縮する自己伸縮性を有するフィルムである。自己伸縮性積層フィルムは、第2方向(第2方向は、フィルムの面内で前記第1方向に直交する方向)にも若干伸縮するものを用いてもよい。また、自己伸縮性積層フィルムは、前記少なくとも第1方向に自己伸縮性を有していることを条件として、熱収縮性をも併有していてもよい。
【0053】
自己伸縮性積層フィルムは、表層、中間層、裏層がこの順で積層された自己伸縮性を有するフィルムである。その態様は、
図2や
図9などと同様である。
前記表層、中間層及び裏層の全てが自己伸縮性を有していてよいし、自己伸縮性積層フィルムが自己伸縮性を有してことを条件として、表層、中間層及び裏層の中の一部の層が自己伸縮性を有し且つ残る層が自己伸縮性を有していなくてもよい。もっとも、良好な自己伸縮特性を示すことから、表層、中間層及び裏層の何れもが自己伸縮性を有することが好ましい。
自己伸縮性積層フィルムにおいても、表層及び裏層のそれぞれにレーザー発色剤が含まれ、中間層には実質的にレーザー発色剤は含まれていない。レーザー発色剤の種類及び含有量は、上記第1実施形態と同様である。
【0054】
自己伸縮性積層フィルムの表層、中間層及び裏層の各形成材料は、特に限定されないが、一般的には、ポリエチレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂のような熱可塑性樹脂が用いられる。自己伸縮性積層フィルムの表層、中間層及び裏層を形成する各樹脂材料は、同種でもよいし又は互いに異なっていてもよい。
前記ポリエチレン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン系ポリエチレン(メタロセン系触媒を用いた重合により得られる直鎖状低密度ポリエチレン)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、アイオノマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上を併用できる。
また、自己伸縮性積層フィルムの厚み、並びに、表層、中間層及び裏層の各厚みも、上記第1実施形態と同様である。
【0055】
自己伸縮性積層フィルム及び自己伸縮性筒状ラベルも、上記第1実施形態と同様に、レーザー光を照射することにより、シャープな輪郭を有する鮮明な印字が表れる。
【0056】
[他の実施形態]
上記第1及び第2実施形態においては、熱収縮性積層フィルム又は自己伸縮性積層フィルムを用いた、筒状ラベルを例示したが、本発明の熱収縮性積層フィルム及び自己伸縮性積層フィルムの用途は、筒状ラベルに限られず、その他のラベルの基材として用いてもよい。
その他のラベルとしては、被着体に貼り付ける表示ラベル、被着体に一部分を貼り付け且つ一部分を突出させるPOPラベルなどが挙げられる。前記表示ラベルやPOPラベルは、例えば、粘着剤又は接着剤を用いて被着体に貼り付けられる。
また、本発明の熱収縮性積層フィルム及び自己伸縮性積層フィルムは、ラベル用途に限られず、物品を包む包材としても使用できる。例えば、前記熱収縮性積層フィルムをオーバーラップフィルム(ピロー包装フィルムなどとも呼ばれる)として使用してもよい。
【実施例】
【0057】
以下、実施例を示して、本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0058】
[実施例1]
表層及び裏層の形成材料(以下、材料Aという)として、99.975質量部のスチレン系樹脂(旭化成ケミカルズ(株)製、商品名「アサフレックス860」)、及び、0.025質量部のレーザー発色剤(東罐マテリアル・テクノロジー(株)製、商品名「42−920A」)の混合物を用いた。
中間層の形成材料(以下、材料Bという)として、スチレン系樹脂(旭化成ケミカルズ(株)製、商品名「アサフレックス860」)を用いた。
材料Aを220℃の押出機に入れ、他方、材料Bを220℃の押出機に入れ、材料Bの両側に材料Aがそれぞれ配置されるように合流させながらTダイから押し出した後、冷却したキャスティングドラムにて急冷することにより、レーザー発色剤を含む表層(材料A)/中間層(材料B)/レーザー発色剤を含む裏層(材料A)からなる2種3層の未延伸積層フィルムを得た。前記未延伸積層フィルムを第1方向に4倍の延伸処理を行うことにより、熱収縮性積層フィルムを得た。この熱収縮性積層フィルムの表層/中間層/裏層の各厚みは、5μm/30μm/5μmであった。
【0059】
[実施例2]
表層及び裏層の形成材料(以下、材料Cという)として、99.9質量部のスチレン系樹脂(旭化成ケミカルズ(株)製、商品名「アサフレックス860」)、及び、0.1質量部のレーザー発色剤(東罐マテリアル・テクノロジー(株)製、商品名「42−920A」)の混合物を用いた。
そして、実施例1の材料Aに代えて材料Cを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、表層(材料C)/レーザー発色剤を含む中間層(材料B)/裏層(材料C)からなる2種3層の未延伸積層フィルムを得、同様に延伸処理して、5μm/30μm/5μmの熱収縮性積層フィルムを得た。
【0060】
[比較例]
実施例1の材料Aを中間層の形成材料として用いたこと、及び、実施例1の材料Bを表層及び裏層の形成材料として用いたこと以外は、実施例1と同様にして、表層(材料B)/レーザー発色剤を含む中間層(材料A)/裏層(材料B)からなる2種3層の未延伸積層フィルムを得、同様に延伸処理して、5μm/30μm/5μmの熱収縮性積層フィルムを得た。
【0061】
実施例1、2及び比較例の各熱収縮性積層フィルムの表面側から下記条件のレーザー光を、数字の1234を描くように照射した。
レーザー光照射後の実施例1の熱収縮性積層フィルムを、その表面側から目視にて観察したところ、
図10に示すように、シャープな印字が表れていた。実施例2の熱収縮性積層フィルムも同様にシャープな印字が表れていた。
一方、レーザー光照射後の比較例の熱収縮性積層フィルムを、その表面側から目視にて観察したところ、
図12に示すように、ぼやけた感じの印字が表れていた。
図11は、実施例1の熱収縮性積層フィルムを、印字を含む箇所で厚み方向に切断し、1000倍に拡大した撮像した写真であり、
図13は、比較例の熱収縮性積層フィルムの同様な箇所の切断写真である。
図11から明らかなように、実施例1では、表層及び裏層の一部分に炭化物が集中し且つ気泡は殆ど発生していなかった。一方、
図13から明らかなように、比較例では中間層に大きな気泡が生じており、その周囲に不均一に炭化物が生じていた。
なお、実施例1及び2の熱収縮性積層フィルムは、レーザー光の照射前及び照射後において、それぞれ良好な透明性を有していた。
【0062】
[レーザー照射条件]
レーザー:YAGレーザー
走査速度:500mm/秒
Q−スイッチ周波数:40kHz
レーザーパワー:80%