特許第6404004号(P6404004)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6404004
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】汎用コンバイン
(51)【国際特許分類】
   A01D 57/04 20060101AFI20181001BHJP
   A01F 12/46 20060101ALI20181001BHJP
   A01D 67/00 20060101ALI20181001BHJP
   A01D 69/00 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   A01D57/04
   A01F12/46
   A01D67/00 D
   A01D69/00 302L
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-120106(P2014-120106)
(22)【出願日】2014年6月11日
(65)【公開番号】特開2015-231356(P2015-231356A)
(43)【公開日】2015年12月24日
【審査請求日】2017年3月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康仁
【審査官】 田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−233108(JP,A)
【文献】 特開平01−262724(JP,A)
【文献】 特公平02−015169(JP,B2)
【文献】 実開昭54−042618(JP,U)
【文献】 特開2012−205540(JP,A)
【文献】 特開2014−087279(JP,A)
【文献】 特開平07−312960(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01330948(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 57/00−57/30
A01D 67/00−69/12
A01D 41/12
A01F 12/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置を備える機体に操縦部と脱穀部とグレンタンクを設けると共に、機体の前方に高さ調節自在な掻込リール、刈刃、プラットホームオーガ、及びフィーダからなるヘッダ部を昇降自在に設ける汎用コンバインおいて、前記グレンタンクは収穀した穀粒を排出する排出オーガを備え、該排出オーガはヘッダ部上に臨む収納位置から排出位置に向けて昇降及び旋回自在に構成され、一方、機体が走行中において、ヘッダ部の上昇操作、又は排出オーガの収納位置への下降操作に伴い掻込リールと排出オーガと衝突する虞があると掻込リールと排出オーガとの距離に基づいて判定した場合には、制御装置が掻込リールを標準速で強制的に下降させて、両者の衝突を回避するように構成してあると共に機体が走行停止中において、ヘッダ部の上昇操作、又は排出オーガの収納位置への下降操作に伴い掻込リールと排出オーガとが衝突する虞があると掻込リールと排出オーガとの距離に基づいて判定した場合には、制御装置が掻込リールを前記標準速より低速で強制的に下降させて、両者の衝突を回避するように構成してあることを特徴とする汎用コンバイン。
【請求項2】
前記掻込リールを強制的に下降させる際には、掻込リールの下降させる前の高さを記憶し、掻込リールが排出オーガと衝突する虞がなくなった場合には、記憶した掻込リールの高さまで制御装置が上昇させるように構成してあることを特徴とする請求項1に記載の汎用コンバイン。
【請求項3】
前記掻込リールを強制的に下降させる際の下降速度を遅くした際には、ヘッダ部の上昇速度、又は排出オーガの下降速度を遅くするように構成してあることを特徴とする請求項1に記載の汎用コンバイン。
【請求項4】
走行装置を備える機体に操縦部と脱穀部とグレンタンクを設けると共に、機体の前方に高さ調節自在な掻込リール、刈刃、プラットホームオーガ、及びフィーダからなるヘッダ部を昇降自在に設ける汎用コンバインおいて、前記グレンタンクは収穀した穀粒を排出する排出オーガを備え、該排出オーガはヘッダ部上に臨む収納位置から排出位置に向けて昇降及び旋回自在に構成され、一方、機体が走行中において、ヘッダ部の上昇操作、又は排出オーガの収納位置への下降操作に伴い掻込リールと排出オーガと衝突する虞があると掻込リールと排出オーガとの距離に基づいて判定した場合には、制御装置が掻込リールを強制的に下降させて、両者の衝突を回避するように構成してあると共に機体が走行停止中において、ヘッダ部の上昇操作、又は排出オーガの収納位置への下降操作に伴い掻込リールと排出オーガとが衝突する虞があると掻込リールと排出オーガとの距離に基づいて判定した場合には、制御装置が前記掻込リールの強制的な下降を禁止すると共に、ヘッダ部の上昇作動、又は排出オーガの下降作動を不能にするように構成してあることを特徴とする汎用コンバイン。
【請求項5】
前記排出オーガの収納位置をヘッダ部上から外れた第2収納位置に変更可能に構成し、該第2収納位置に排出オーガの収納位置が変更されている際には、掻込リールの強制的な下降を行わないように構成してあることを特徴とする請求項1乃至請求項4に記載の汎用コンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麦、そば、菜種、大豆、或いは水稲等の作物を刈取って脱穀・選別処理した後、グレンタンクに穀粒を一時的に貯留すると共に、グレンタンクに貯留した穀粒を排出オーガによってコンテナ等に移送する汎用コンバインに係り、詳しくは、汎用コンバインのヘッダ部(刈取部)に設ける掻込リールと、上記排出オーガとの衝突を未然に防止する汎用コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、汎用コンバインは、走行装置を備える機体に操縦部と脱穀部とグレンタンクを設けると共に、機体の前方に高さ調節可能な掻込リール、刈刃、プラットホームオーガ、及びフィーダからなるヘッダ部を昇降自在に設けている。また、上記脱穀部はフィーダによって搬送されてきた穀稈を投入する扱室と、扱室の下方に設ける選別室とを備え、扱室に設けた扱胴と受網によって穀稈を脱粒させ、受網から漏下した処理物を選別室に設けた揺動選別体とファンの選別風によって穀粒と塵埃に選別するように構成している。
【0003】
さらに、前記脱穀部によって選別された穀粒はグレンタンクに貯留され、その後、グレンタンクに収穀された穀粒は、排出オーガによってコンテナに向けて移送して排出される。そして、上記排出オーガは、そのオーガ出口がヘッダ部上に臨む収納位置からコンテナ上に臨む排出位置に向けて昇降及び旋回自在に構成され、上記排出位置からオーガレストに支持される収納位置に向けて下降させる際、掻込リールの高さによってはオーガ出口と掻込リールが衝突して両者が破損する虞があった。
【0004】
即ち、刈取作業中にグレンタンクが満杯になると、取扱い説明書等では禁止されているにも係わらず、作業を中断して排出オーガを収納位置から上昇させ、また、ヘッダ部を上昇させて、そのままコンテナの場所に移動して穀粒を排出した後、再び排出オーガを収納位置に下降させる場合がある。その場合、作業の中断前はヘッダ部が下降していて掻込リールの高さが低くオーガ出口と干渉していなかった掻込リールが、ヘッダ部の上昇と共に高くなり、これに気付かず排出オーガを下降させた場合に両者が衝突する。
【0005】
また、長稈のヒエやアワ、キビ等の雑穀を刈り取る場合には、掻込リールの高さを高くして精度よく穂先を掻き込んで収穫作業を行う。そのため、これらの作物を刈り取る場合には掻込リールとオーガ出口との間隔が元々少なくなっている。そうした中、圃場に障害物等があった場合に、これらの障害物との衝突を回避するために緊急でヘッダ部を上昇させることがある。しかし、その場合には掻込リールがヘッダ部の上昇と共に高くなり、収納位置にある排出オーガに衝突する虞がある。
【0006】
そこで、排出オーガを収納位置に下降させたり、ヘッダ部を上昇させた際の掻込リールと排出オーガとの衝突を回避するために、掻込リールの機体に対する相対高さを検出すると共に、掻込リールが予め定めた所定高さ以上に上昇していることが検出された場合には、排出オーガの下降を不能にすること(例えば、特許文献1参照。)、また、掻込リールが上昇位置にあることを検出した場合、ヘッダ部の上昇を禁止し、或いはヘッダ部が上昇位置にあることを検出した場合、掻込リールの上昇を禁止し、さらに、掻込リールが所定高さ以上になるようにヘッダ部及び掻込リールを上昇操作した場合、排出オーガを連動して上昇制御すること(例えば、特許文献2参照。)が知られている。
【0007】
そして、ヘッダ部及び/または掻込リールが所定の上昇量を超えるとヘッダ部の上昇を停止させた後に、掻込リールを下降させて掻込リールと排出オーガの両者間をさらに離間させること(例えば、特許文献3参照。)、更には、排出オーガが掻込リールと平面視でラップする第1収納位置と、ラップしない第2収納位置の2つの収納位置を設定すると共に、排出オーガを収納位置で支持するオーガレストを各収納位置に切換可能に構成し、以って、排出オーガを第2収納位置に収納することによって、掻込リールの上昇による排出オーガとの接触を回避すること(例えば、特許文献4参照。)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012−187075号公報
【特許文献2】特開2012−205540号公報
【特許文献3】特開2013−233108号公報
【特許文献4】特開2012−191898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述の通り、掻込リールと排出オーガとの衝突を回避するために特許文献4に記載されているように、作業中は排出オーガを掻込リールと平面視でラップしない第2収納位置に収納することが望ましい。しかし、第2収納位置に排出オーガを収納するためには、オーガレストの収納位置の変更が必要となり、その切換え作業には煩わしさが伴うと共に、切換えを忘れる場合もあり、掻込リールと排出オーガとの衝突を回避するうえで完璧なものではない。そこで、次善の対策として、特許文献1乃至3の技術が提案されている。
【0010】
しかしながら、特許文献1乃至3に記載されているように、掻込リールと排出オーガとが衝突する虞があるときに、これを回避するために排出オーガの下降を不能にしたり、ヘッダ部の上昇を禁止すると、意図した操作が行えないため作業性が悪化する。また、取扱い説明書等では禁止されているにも係わらず、排出オーガを起立(上昇)させたまま走行した際に、立木の枝や電線等に排出オーガが衝突する虞がある場合や、圃場に障害物がある場合に、緊急の危険回避のために排出オーガの下降操作やヘッダ部の上昇操作が行えなくなり、これらの障害物に排出オーガやヘッダ部が衝突して、逆に重大な破損事故等を引き起こす虞がある。
【0011】
また、特許文献2に記載されているように、掻込リールが所定高さ以上になるようにヘッダ部及び掻込リールを上昇操作した場合、排出オーガを連動して上昇制御すれば、圃場に障害物等がある場合にはヘッダ部を上昇させて危険を回避することができる。しかし、長尺で重量のある排出オーガを即座に上昇させることは困難であると共に、逆に排出オーガを上昇させることによって、枝に衝突する等の不測な事態が発生する虞もあり、これを直ちに推奨することができない。
【0012】
そこで、本発明は、排出オーガを下降させたり、ヘッダ部を上昇させたりする際に、掻込リールと排出オーガとの衝突を回避することができると共に、掻込リールと排出オーガとが衝突する虞があるときに、排出オーガの下降を不能にしたり、ヘッダ部の上昇を禁止することなく、排出オーガの下降作動、又はヘッダ部の上昇作動を継続して行うことができるようにして、作業性を損なうことがなく、また、緊急時の危険回避操作を妨げることがない汎用コンバインを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記課題を解決するため第1に、走行装置を備える機体に操縦部と脱穀部とグレンタンクを設けると共に、機体の前方に高さ調節自在な掻込リール、刈刃、プラットホームオーガ、及びフィーダからなるヘッダ部を昇降自在に設ける汎用コンバインおいて、前記グレンタンクは収穀した穀粒を排出する排出オーガを備え、該排出オーガはヘッダ部上に臨む収納位置から排出位置に向けて昇降及び旋回自在に構成され、一方、機体が走行中において、ヘッダ部の上昇操作、又は排出オーガの収納位置への下降操作に伴い掻込リールと排出オーガと衝突する虞があると掻込リールと排出オーガとの距離に基づいて判定した場合には、制御装置が掻込リールを標準速で強制的に下降させて、両者の衝突を回避するように構成してあると共に機体が走行停止中において、ヘッダ部の上昇操作、又は排出オーガの収納位置への下降操作に伴い掻込リールと排出オーガとが衝突する虞があると掻込リールと排出オーガとの距離に基づいて判定した場合には、制御装置が掻込リールを前記標準速より低速で強制的に下降させて、両者の衝突を回避するように構成してあることを特徴とする。
【0014】
本発明は、第2に、前記掻込リールを強制的に下降させる際には、掻込リールの下降させる前の高さを記憶し、掻込リールが排出オーガと衝突する虞がなくなった場合には、記憶した掻込リールの高さまで制御装置が上昇させるように構成してあることを特徴とする。
また、本発明は、第3に、前記掻込リールを強制的に下降させる際の下降速度を遅くした際には、ヘッダ部の上昇速度、又は排出オーガの下降速度を遅くするように構成してあることを特徴とする。
さらに、本発明は、第4に、走行装置を備える機体に操縦部と脱穀部とグレンタンクを設けると共に、機体の前方に高さ調節自在な掻込リール、刈刃、プラットホームオーガ、及びフィーダからなるヘッダ部を昇降自在に設ける汎用コンバインおいて、前記グレンタンクは収穀した穀粒を排出する排出オーガを備え、該排出オーガはヘッダ部上に臨む収納位置から排出位置に向けて昇降及び旋回自在に構成され、一方、機体が走行中において、ヘッダ部の上昇操作、又は排出オーガの収納位置への下降操作に伴い掻込リールと排出オーガと衝突する虞があると掻込リールと排出オーガとの距離に基づいて判定した場合には、制御装置が掻込リールを強制的に下降させて、両者の衝突を回避するように構成してあると共に機体が走行停止中において、ヘッダ部の上昇操作、又は排出オーガの収納位置への下降操作に伴い掻込リールと排出オーガとが衝突する虞があると掻込リールと排出オーガとの距離に基づいて判定した場合には、制御装置が前記掻込リールの強制的な下降を禁止すると共に、ヘッダ部の上昇作動、又は排出オーガの下降作動を不能にするように構成してあることを特徴とする。
【0015】
そして、本発明は、第5に、前記排出オーガの収納位置をヘッダ部上から外れた第2収納位置に変更可能に構成し、該第2収納位置に排出オーガの収納位置が変更されている際には、掻込リールの強制的な下降を行わないように構成してあることを特徴とする
【発明の効果】
【0016】
本発明の汎用コンバインによれば、ヘッダ部の上昇操作、又は排出オーガの収納位置への下降操作に伴い掻込リールと排出オーガと衝突する虞がある場合には、制御装置が掻込リールを強制的に下降させて、両者の衝突を回避するように構成してあるから、排出オーガを下降させたり、ヘッダ部を上昇させたりする際に、掻込リールと排出オーガとが衝突することを防止することができる。また、排出オーガの収納位置への下降操作、又はヘッダ部の上昇操作に伴い掻込リールと排出オーガとが衝突する虞がある場合に、排出オーガの下降作動、又はヘッダ部の上昇作動を継続して行うことができるから、オペレータが意図した操作を中断することなく行えるので作業性を損なうことがなく、しかも、障害物との衝突を回避するために行う排出オーガの下降操作やヘッダ部の上昇操作を妨げないから、重大な破損事故等を未然に防止することができる。
【0017】
また、本発明の汎用コンバインによれば、掻込リールを強制的に下降させる際には、掻込リールの下降させる前の高さを記憶し、掻込リールが排出オーガと衝突する虞がなくなった場合には、記憶した掻込リールの高さまで制御装置が上昇させるように構成してあるから、刈取作業を再開する場合に、掻込リールの高さを調整し直す必要がなく、以前の掻込リールの高さで精度よく穂先を掻き込んで能率的に収穫作業を行うことができる。
【0018】
さらに、汎用コンバインでは、枕地部分の手刈りした穀稈や、刈取中にこぼれた穀稈を未刈稈の上にバラまいて収穫することが推奨されているが、手作業でヘッダ部のプラットホームに直接投入することが行われる場合もある。また、刈取中に掻込リールのタインによって穀稈が上方に巻き上げられてヘッダ部上に撒き散らされたり、掻込リール等に穀稈が巻き付いた場合に、これらの除去作業を行わなければならないことがある。そして、これらの作業を補助作業者が機体の走行を停止した合間をぬって行うことがあり、これをオペレータが知らずに、ヘッダ部の周囲をよく確認しないまま、例えば、グレンタンクからの穀粒の排出を終えて、排出オーガを収納位置に下降させるようなことがないとは言い切れない。
【0019】
しかし、このような場合に、掻込リールが前述の構成によって自動的に下降すると、補助作業者に危険を与える虞がある。また、ヘッダ部の不測な上昇によっても同様の事態が発生する虞がある。そこで、本発明の汎用コンバインによれば、掻込リールを強制的に下降させる際の下降速度を、機体の走行を停止して刈取り作業を行わない非作業時には遅くするように構成する。また、掻込リールを強制的に下降させる際の下降速度を遅くした際には、ヘッダ部の上昇速度、又は排出オーガの下降速度を遅くするように構成する。従って、仮に補助作業者が前述した作業を行っている際にも、これらの遅くした各部の作動に気付いて、速やかにヘッダ部の周囲から離れて危険を回避することができる。
【0020】
しかも、本発明の汎用コンバインによれば、掻込リールの強制的な下降を機体の走行を停止して刈取り作業を行わない非作業時には禁止すると共に、ヘッダ部の上昇作動、又は排出オーガの下降作動を不能にするように構成する。そして、このように構成すると、補助作業者が前述の作業を行っている際の危険性を根本から回避することができる。
【0021】
さらに、本発明の汎用コンバインによれば、排出オーガの収納位置をヘッダ部上から外れた第2収納位置に変更可能に構成し、該第2収納位置に排出オーガの収納位置が変更されている際には、掻込リールの強制的な下降を行わないように構成してあるから、補助作業者が前述の作業を行っている際の危険性を同様に回避することができると共に、長稈のヒエやアワ、キビ等の雑穀を刈り取る場合に排出オーガを第2収納位置に忘れずに変更するだけで、掻込リールと排出オーガの衝突を防止することができる。また、長稈作物以外は排出オーガの収納位置を切り換える煩わしさから解放されて、刈取作業を能率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】汎用コンバインの側面図である。
図2】汎用コンバインの平面図である。
図3】掻込リールを最大に上昇させた状態を示す汎用コンバインの側面図である。
図4】ヘッダ部を最大に上昇させた状態を示す汎用コンバインの側面図である。
図5】掻込リールとヘッダ部を共に最大に上昇させた状態を示す汎用コンバインの側面図である。
図6】排出オーガを最大に上昇させた状態を示す汎用コンバインの側面図である。
図7】第1収納位置に切換えたオーガレストの斜め前方側から見た斜視図である。
図8】第1収納位置に切換えたオーガレストの斜め後方側から見た斜視図である。
図9】第2収納位置に切換えたオーガレストの斜め前方側から見た斜視図である。
図10】第2収納位置に切換えたオーガレストの斜め後方側から見た斜視図である。
図11】排出オーガの旋回作動範囲を示す模式図である。
図12】掻込リールと排出オーガの衝突防止に係わる制御ブロック図である。
図13】掻込リールと排出オーガの衝突防止に係わるメインフロー図である。
図14】接触防止制御のフローチャートである。
図15】第2実施例の接触防止制御のフローチャートである。
図16】リール復帰制御のフローチャートである。
図17】リール昇降制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように汎用コンバインは、左右のクローラ式走行装置1と、走行装置1のトラックフレーム2の上方に設ける四角枠形状の機体フレーム3によって機体が構成され、機体フレーム3に対して左右の走行装置1は、図示しない姿勢制御用の油圧シリンダによって昇降自在に取り付けられている。また、機体フレーム3の進行方向左側には作物の脱穀及び選別処理を行う脱穀部4を設け、右側には操縦部5と穀粒を貯留するグレンタンク6を前後に設けている。さらに、脱穀部4と操縦部5の前方には作物を刈取って脱穀部4に搬送するヘッダ部(刈取部)7を設けている。なお、操縦部5とグレンタンク6の間にはエンジンを搭載し、エンジンはクローラ式走行装置1、脱穀部4、グレンタンク6、ヘッダ部7等を駆動する動力源となる。
【0024】
ここで、各部の構成をより詳細に説明すると、機体の前方側に設けるヘッダ部7は、フィーダハウス8とオーガーフレーム9とリールフレーム10を一体的に連結して構成している。この内、オーガーフレーム9には、鉄板を湾曲させて形成するプラットホーム11を設け、プラットホーム11上には、左右方向に延びる円柱状のオーガ12(プラットホームオーガ)を回転駆動可能に軸架している。また、オーガーフレーム9の前部には、左右のデバイダ13とレシプロ式の刈刃14を設けている。さらに、箱枠状に形成したフィーダハウス8内には、駆動軸15に取り付けた後部の駆動スプロケット16と前部のドラム17間に左右の搬送チェン18を巻回すると共に、左右の搬送チェン18間に所定間隔を有して複数のスラット19を横架したフィーダFを設けている。
【0025】
また、リールフレーム10には、掻込リールRを設けており、掻込リールRはリールフレーム10の左右先端部に回転自在に軸支した駆動軸と、この駆動軸と一体回転する側面視多角形状(実施例では6角形状)の左右の回転支持体20とを備えている。さらに、左右の回転支持体20の頂点部には、左右方向に伸延する複数のタイン取付け杆21が回転自在に架設されていて、各タイン取付け杆21には所定間隔毎にバネ式のタイン22が垂下状に取り付けられている。そして、上記回転支持体20の一方の横外側には、上記駆動軸の軸芯とは偏倚した軸芯廻りに回転する姿勢保持用回転体23が設けられ、姿勢保持用回転体23の各頂点に設けた枢支体24とタイン取付け杆21の一側端とをリンクを介して連結することにより、タイン22が回転支持体20の回転にかかわらず常時下方を向くように姿勢保持される。
【0026】
なお、リールフレーム10は、オーガーフレーム9の上部に回動自在に枢支した左右の揺動アーム25の先端に後部が回動自在に枢支され、フィーダハウス8に一端を取り付けた前後移動用の油圧シリンダ26を伸縮作動させることによって、掻込リールRを揺動アーム25を介してオーガーフレーム9に対して前後に位置調節することができる。また、リールフレーム10の中ほどとオーガーフレーム9との間には、昇降用の油圧シリンダ27が設けてあり、この油圧シリンダ27を伸縮作動させることによって、掻込リールRをオーガーフレーム9に対して上下に高さ調節することができる。
【0027】
そして、以上のように構成するヘッダ部7は、前記フィーダFの駆動軸15を中心として機体フレーム3の前部に回動自在に支承されると共に、フィーダハウス8と機体フレーム3との間に設けた昇降用油圧シリンダ28の伸縮作動によって、ヘッダ部7の前部側を下降させた状態と上昇させた状態に姿勢変更することができる。さらに、エンジンから図示しない脱穀クラッチ及び刈取クラッチを介して、フィーダFの駆動軸15に伝達された動力は、フィーダFに伝達されて搬送チェン18が駆動されると共に、駆動軸15から更に図示しないスプロケット、チェン、リール・刈刃クラッチ、無段変速装置等の伝動装置を介して、プラットホームオーガ12、刈刃14、掻込リールRに伝達されて、これによりヘッダ部7の各部は駆動される。
【0028】
従って、ヘッダ部7を下降させた状態として機体を走行させると、圃場の植立穀稈が左右のデバイダ13によって刈取対象と非刈取対象とに分草され、その内、刈取対象の植立穀稈が掻込リールRによってプラットホーム11内に掻き込まれながら刈刃14で刈取られる。また、プラットホーム11内に掻き込まれた穀稈は、プラットホームオーガ12によってフィーダハウス8の前方に横送りされ、さらに、フィーダハウス8に横送りされた穀稈は、搬送チェン18に取り付けたスラット19に係止されながらフィーダハウス8の下部を通過して、刈取られた穀稈の全体が脱穀部4に投入される。
【0029】
なお、ヘッダ部7には、リールフレーム10の前端に前照灯29が取り付けられていると共に、方向指示器30とバックミラー31がオーガーフレーム9から立設したステー32に取り付けられている。また、33はプラットホーム11の側方を覆うカバー、34は掻込リールRの伝動部を覆うカバーである。さらに、フィーダハウス8の後部側の側方には、機体フレーム3からハシゴ35を立設している。
【0030】
また、脱穀部4は、ヒンジを介して上方に開閉自在なロータカバー36と、側方に開閉自在なロータサイドカバー37と、着脱自在な脱穀カバー(前カバー38、後カバー39)によって上方及び左側方を覆い、後方は前後に開閉自在な排塵カバー40で覆っている。さらに、グレンタンク6の後方には、グレンタンク6に貯留した穀粒をコンテナ等に向けて排出するオーガ41を設けている。そして、操縦部5には座席42と、座席42の前方に設けたフロントパネル43と、フロントパネル43から突出するマルチステアリングレバー44(ヘッダ部7の昇降と機体の操向を行う)と、座席42の側方に設けたサイドパネル45と、サイドパネル45に設けた静油圧式無段変速装置を操作する走行変速レバー46等を設ける他、メータパネルやモニタ、自動制御及び手動制御用のスイッチやボリューム、各種の操作レバー等の操作具を集中して設けている。
【0031】
さらに、脱穀部4についてより詳細に説明すると、脱穀部4はフィーダFによって搬送されてきた穀稈が投入される扱室47と、扱室47の下側に形成された選別室48とを備える。この内、扱室47内には機体の前後方向軸芯周りに回転する扱胴49が軸架してあり、扱胴49の下方には、前記フィーダFによって搬送されてきた穀稈を受け入れる入口受板に引き続いて、扱胴49の下部周辺を覆うように円弧状の受網が周設されている。そして、扱室47に投入された穀稈は扱胴49によって機体後方側に揉み解されながら搬送され、また、扱胴49の外周上を周回する間に受網に擦り付けられて脱粒処理が行われる。
【0032】
一方、扱室47の下側に形成した選別室48には揺動選別体50が設けられ、この揺動選別体50は、その前後をリンクと駆動リンク等で構成される揺動機構によって前後揺動自在に支持され、前後に揺動することで処理物が比重選別される。また、揺動選別体50の下方には、揺動選別体50に向かう選別風を発生させる唐箕ファン51とターボファン52を設けており、これらのファン51、52によって生成された選別風によって処理物は揺動選別体50において風選される。そして、揺動選別体50から漏下した穀粒は一番螺旋53上に落下する。また、二番物は二番螺旋54上に落下する。
【0033】
さらに、揺動選別体50の終端まで移送された藁屑等の塵埃は、受網の後端部まで搬送された排藁等と共に、機体後部に設けた排出口55から機外に排出される。なお、一番螺旋53によって横送りされた穀粒は、図示しないバケットコンベアと上方横螺旋によってグレンタンク6内に揚送されると共に、二番螺旋54によって横送りされた二番物は、図示しないスラットコンベアと還元横螺旋によって扱室47の前部に還元して、再度脱粒処理を行うか、又は還元横螺旋筒の中途に設けた蓋を開いて、二番物を揺動選別体50上に再び落下させて、再選別処理を行うことができる。
【0034】
次に、前述したグレンタンク6に貯留した穀粒をコンテナ等に向けて排出するオーガ41とヘッダ部7との関係について説明する。先ず、排出オーガ41はグレンタンク6の底部に設置された横螺旋に引き続いて穀粒を移送する縦螺旋を備え、この縦螺旋は大きく分けて下部側と上部側の螺旋で構成され、それぞれ外周を縦パイプ56,57で覆っている。また、下部側の縦パイプ56の基部はグレンタンク6後方に設けた横螺旋終端のケースに回動自在に立設され、オーガモータ58によって縦パイプ56は回転駆動される。そして、上部側の縦パイプ57の基部はギヤケース59を介して下部側の縦パイプ56の上端に起伏(昇降)自在に連結され、オーガ昇降シリンダ60によってその先端側が上下方向に昇降駆動される。
【0035】
また、倒伏状態となした上部側の縦パイプ57の中途部は、エンジンと脱穀部4の間に設けたオーガレスト61に載置される。このオーガレスト61は、脱穀部フレーム62とエンジンカバーフレーム63の上部を連結するブラケット64の上面に固定する支柱部61aと、支柱部61aの先端部と支柱部61aから斜め上方に延びる補強部材61bで支持され、水平方向に延設されるスライド部61cと、スライド部61cに摺動自在に支持される受部61dとを備えている。該受部61dは、上方に向けて略V字型で、排出オーガ41の上部側の縦パイプ57が載置可能に構成される。また、該受部61dの上面にはゴムや樹脂等の弾性部材が取り付けられており、縦パイプ57が載置されていても走行中に振動音を発生することが防止される。
【0036】
さらに、前記受部61dは、ピン65及びRピン66でスライド部61cに固定され、スライド部61c上の、図7及び図8で示す第1収納位置(非作業位置)と、図9及び図10で示す第2収納位置(作業位置)でピン65及びRピン66を抜き差しして受部61dを所定の位置に切換えて固定する。そして、上記第1収納位置、又は第2収納位置に切換えたオーガレスト61に上部側の縦パイプ57を載置した際には、上部側の縦パイプ57の先端側のオーガ出口41aが、それぞれ第1収納位置では図2の鎖線で示す掻込リールRの上方に臨み、第2収納位置では図2の実線で示す掻込リールRの上方から左側に逸れた位置に臨む。
【0037】
従って、図5に示すように掻込リールR及びヘッダ部7を最大に上昇させても、第2収納位置ではそれらと上部側の縦パイプ57の先端側は干渉しない。しかし、第1収納位置では、図1で示す掻込リールR及びヘッダ部7を下降させた際、図3で示すヘッダ部7を下降させた状態で掻込リールRを最大に上昇させた際、及び図4で示す掻込リールRを下降させた状態でヘッダ部7を最大に上昇させた際には、何れも掻込リールR及びヘッダ部7と上部側の縦パイプ57の先端側は干渉しないが、掻込リールR及びヘッダ部7を最大に上昇させた図5に示す状態では、掻込リールRと上部側の縦パイプ57の先端側が干渉し、掻込リールR又はヘッダ部7を上昇させると掻込リールRは上部側の縦パイプ57の先端側と衝突して両者は破損することになる。
【0038】
なお、前記オーガレスト61の受部61dには排出オーガ固定リング67が設けられており、この排出オーガ固定リング67を上部側の縦パイプ57に固定したフック57aに掛けることによって排出オーガ41をオーガレスト61に載置した収納状態に固定することができる。また、受部61dにはアーム68の一端が支持され、アーム68の他端は、前記補強部材61bに支持され、これによりアーム68は受部61dをスライドさせても上方に抜けないように規制している。さらに、受部61dには、オーガレスト61の第1収納位置、又は第2収納位置の切換え位置を検出するオーガレストスイッチ69が設けてあり、図10に示すように、オーガレストスイッチ69が、スライド部61cの先端に設けたプレート61eと接当することで、オーガレストスイッチ69が入りとなり、図8に示すように、プレート61eから離れるとオーガレストスイッチ69が切りとなる。
【0039】
以上、主に排出オーガ41がオーガレスト61に載置された収納状態について説明したが、次に、グレンタンク6に収穀した穀粒をコンテナ等に排出する際の作動を説明する。即ち、排出オーガ41を作動させる際には、前述の排出オーガ固定リング67をフック57aから外しておく必要がある。そして、排出オーガ41は、図示しない操縦部5に設けるオーガリモコンによって遠隔操作することができ、このオーガリモコンによって排出オーガ41は昇降作動及び旋回作動させることができる。
【0040】
具体的には、排出オーガ41(上部側の縦パイプ57)の昇降作動範囲は、オーガレスト61に載置された収納状態の略水平位置(0度)からオーガ昇降シリンダ60によって、図6に示すように斜め上方に略45度傾斜させた位置まで上昇させることができる。また、排出オーガ41(上部側の縦パイプ57)の旋回作動範囲は、図11に示すようにオーガレスト61の第2収納位置に載置されたA位置から、オーガモータ58によって下部側の縦パイプ56を中心として、時計回りに最大で機体の左側を向くF位置まで旋回させることができる。
【0041】
なお、旋回途中のBの位置は排出オーガ41が第1収納位置で収納される位置、Cの位置は掻込リールRの右端側と排出オーガ41の先端側が干渉する虞がある最右端の位置で、Bの若干A寄りの位置からCの範囲に旋回させた排出オーガ41をそのまま下降作動させると、掻込リールRと排出オーガ41の先端側が衝突する虞がある。但し、B位置を越えた位置から機体の右側を向くD位置の間は、排出オーガ41がグレンタンク6や操縦部5において立ち上がったオペレータに接触するのを回避するために、排出オーガ41を上限(略45度傾斜)まで上昇させなければ旋回できない下降規制範囲であり、実質的に排出オーガ41をそのまま下降作動させて、掻込リールRと排出オーガ41の先端側が衝突する虞がある位置は、第1収納位置であるB位置近辺となる。
【0042】
また、前記下降規制範囲によって実際に排出オーガ41を下降させて穀粒を排出できる範囲は、D位置を越えた位置から機体の後方となるE位置、そして、機体の左側を向くF位置に亘る機体後方側の略180度の範囲となる。なお、前記オーガリモコンには、排出オーガ41の昇降及び旋回操作を手動で行うオーガ手動スイッチと、旋回操作を自動で行うオーガ自動旋回スイッチと、オーガ自動旋回スイッチで旋回駆動される旋回位置の設定をするオーガ旋回位置選択スイッチと、グレンタンク6に貯蔵された穀粒を排出する排出スイッチ等が設けられている。
【0043】
ここで、オーガ旋回位置選択スイッチで、前記D、E、Fの何れかの排出位置を選択した後、オーガ自動旋回スイッチを押すと排出オーガ41は上限(略45度傾斜)まで上昇作動して、選択した排出位置まで旋回して停止する。そこで、オペレータはオーガ手動スイッチを操作して、オーガ出口41aがコンテナ上に臨む位置まで下降させ、排出スイッチを押すとグレンタンク6から穀粒が回転駆動された横螺旋と縦螺旋によって移送され、オーガ出口41aからコンテナに向けて排出される。また、排出が終わったら排出スイッチを再度、押すと螺旋の駆動が停止する。
【0044】
そして、再びオーガ自動旋回スイッチを押すと、元のオーガレスト61の収納位置に向けて、排出オーガ41は上昇作動、旋回作動、及び下降作動する。なお、排出オーガ41の昇降及び旋回操作を手動で行うオーガ手動スイッチは、上げ下げスイッチと左右旋回スイッチで構成され、各スイッチを操作して排出オーガ41をオーガレスト61の収納位置から排出位置に向けて、或いは排出位置から収納位置に向けて作動させることができる。
【0045】
次に、前述した掻込リールRと排出オーガ41の衝突(接触)を防止する制御装置について説明する。図12は、掻込リールRと排出オーガ41との衝突防止に係わる制御ブロック図を示し、制御装置は、マイクロコンピュータからなるエレクトロニックコントロールユニット(ECU)70を備えている。上記ECU70の入力側には、掻込リールRの昇降位置を検出するリール高さポテンショメータ71と、ヘッダ部7の昇降位置を検出する刈取部高さポテンショメータ72と、排出オーガ41の旋回位置を検出するオーガ旋回ポテンショメータ73と、排出オーガ41の昇降位置を検出するオーガ高さポテンショメータ74、或いはこれに替えて排出オーガ41が上限位置にあることを検出するオーガ上限スイッチを接続している。
【0046】
また、ECU70の入力側には、例えば、走行変速レバー46の操作位置を検出するポテンショメータによって機体が走行中か停止中であるかを検出する走行検出手段75と、例えば、操縦部5に設ける図示しないパワークラッチスイッチによって脱穀クラッチ及び刈取クラッチの何れも入り状態に設定されているかを検出する脱穀クラッチ検出手段76と、掻込リールRと刈刃14へ動力を伝達するリール・刈刃クラッチの入り切りを検出するリール・刈刃クラッチ検出手段77と、掻込リールRを昇降操作するリール昇降スイッチ78と、マルチステアリングレバー44の前後動によってヘッダ部7を昇降操作する刈取部昇降スイッチ79と、排出オーガ41を昇降操作、並びに旋回操作するオーガ手動スイッチ80と、排出オーガ41を収納位置と排出位置へ作動させるオーガ自動スイッチ81と、オーガレストスイッチ69を接続している。
【0047】
そして、ECU70の出力側には、掻込リールRを昇降する油圧シリンダ27のソレノイドバルブ82と、ヘッダ部7を昇降する油圧シリンダ28のソレノイドバルブ83と、排出オーガ41を昇降するオーガ昇降シリンダ60のソレノイドハルブ84と、排出オーガ41を旋回するオーガモータ58と、ブザー85と、ランプ86を接続している。そして、以上のように接続した制御装置は、図13に示すリール復帰制御、リール昇降制御、刈取部昇降制御、オーガ手動制御、オーガ自動制御、及び接触防止制御の各サブルーチンを繰り返して実行し、その内、接触防止制御の詳細を図14に示す。
【0048】
すなわち、接触防止制御は、掻込リールRと排出オーガ41とが衝突(接触)する虞がある場合に、掻込リールRを強制的に下降させて両者の衝突を防止するものであり、制御装置の入力側に接続したポテンショメータやスイッチの検出結果に基づいて出力側に接続したソレノイドバルブやブザーやランプを作動させ、先ず、刈取部(ヘッダ部7)の上昇操作、或いはこの上昇操作に基づいて刈取部(ヘッダ部7)が上昇作動した時、又は排出オーガ41の手動下降操作や自動収納指令、或いはこの下降操作や指令信号に基づいて排出オーガ41が下降作動した時(ステップS1)には、オーガレスト61の位置を判断する(ステップS2)。また、刈取部(ヘッダ部7)が上昇操作、並びに排出オーガ41が下降操作されていなければ、掻込リールRと排出オーガ41が衝突しないので、掻込リールRの作動制御を行わない。
【0049】
上記ステップS2では、オーガレスト61の位置が第2収納位置であれば、排出オーガ41が収納位置に下降していても掻込リールR上に臨まないので、掻込リールRの作動制御を行わない。また、オーガレスト61の位置が第1収納位置であれば、リールとオーガとの距離を判断する(ステップS3)。このステップS3では、排出オーガ41の先端側の高さからヘッダ部7に対する掻込リールRの高さと機体フレーム3に対するヘッダ部7の高さを減算した値に基づいて掻込リールRと排出オーガ41との距離を算出し、この距離をヘッダ部7の上昇速度、排出オーガ41の下降速度、並びに掻込リールRの下降速度から勘案して決定された衝突を回避できる判定距離と比較し、このままでは衝突を回避できない(<=判定距離)と判断するとリール下降前高さ記憶(ステップS4)に進み、衝突を回避できる(>判定距離)と判断すると掻込リールRの作動制御を行わない。
【0050】
なお、前述の排出オーガ41の先端側の高さはオーガ高さポテンショメータ74から得ることができる。しかし、オーガ高さポテンショメータ74に替えて排出オーガ41が上限位置にあることを検出するオーガ上限スイッチを用いる場合には、オーガ上限スイッチがオンであれば、排出オーガ41が最大に上昇した際の高さを用い、また、オーガ上限スイッチがオフであれば、オーガレスト61に収納された際の高さを簡便的に用いることで、掻込リールRと排出オーガ41との距離を安全サイドにみて算出することができる。
【0051】
そして、ステップS4では、現在、本接触防止制御における掻込リールRの強制的な下降制御を行っているか、行っていないかを判断して、未だ下降制御を行っていない場合は、現在の掻込リールRの高さ(リール下降前高さ)を記憶する(ステップS5)。次に、機体が走行中か停止中かの判断(ステップS6)に進み、走行中であればステップS7において、排出オーガ41との衝突を回避すべく掻込リールRを通常の速度(標準速)で下降させる。また、停止中であれば掻込リールRを通常の速度(標準速)より低速で下降させ(ステップS8)、ブザー85を吹鳴させると共にランプ86を点滅させ(ステップS9)、さらに、ヘッダ部7が上昇操作されている際にはヘッダ部7の上昇速度を減速させ、また、排出オーガ41が下降操作されている際には排出オーガ41の下降速度を減速させる(ステップS10)。
【0052】
従って、掻込リールRと排出オーガ41が衝突(接触)する虞がある場合に、機体が走行している際には、掻込リールRの周辺に元々補助作業者が近寄っておらず、掻込リールRを下降させても補助作業者に危害を加えることが無いと想定されるから、通常の速度(標準速)で掻込リールRを下降させて掻込リールRと排出オーガ41の衝突を回避する。しかし、機体が停止している際には、掻込リールRの周辺に補助作業者が近寄っていることも想定される。そこで、掻込リールRを通常の速度(標準速)より低速で下降させることにより、補助作業者の掻込リールR近辺からの退避時間を確保し、また、ブザー85を吹鳴させると共にランプ86を点滅させることにより、補助作業者に退避を促し、また、オペレータにこの事態を知らせて緊急事態であればヘッダ部7の上昇操作、或いは排出オーガ41の下降操作の中止等の回避行動を促す。
【0053】
さらに、掻込リールRを低速で下降させることによって生ずる掻込リールRと排出オーガ41の衝突の虞は、ヘッダ部7の上昇速度の減速、また、排出オーガ41の下降速度の減速で対応することができる。なお、掻込リールR、ヘッダ部7、並びに排出オーガ41の昇降速度の変更は、通常のソレノイドバルブへの連続通電に換えて間欠的な通電によって実現できると共に、電磁比例流量制御弁等を油圧回路に付加し、これらの昇降速度を変更するようにしてもよい。
【0054】
次に、接触防止制御の第2実施例を図15に基づいて説明すると、第2実施例は、図14に示す第1実施例のステップS7までは全く同じフローを実行するので、ステップS7までの説明は省略する。そこで、ステップS8から説明すると、ステップS8では脱穀クラッチの接続状態を判断する。この場合、脱穀クラッチが接続(ON)されていれば、リール・刈刃クラッチの接続状態を判断する(ステップS9)。そして、ステップS9でリール・刈刃クラッチが接続(ON)されていれば、ステップ7に戻って排出オーガ41との衝突を回避すべく掻込リールRを通常の速度(標準速)で下降させる。また、ステップS8で脱穀クラッチが切断(OFF)されている場合、或いはステップS9でリール・刈刃クラッチが切断(OFF)されている場合は、ステップ10に進む。
【0055】
上記ステップ10では、ヘッダ部7が上昇操作されている際にはヘッダ部7の上昇作動を禁止してヘッダ部7の上昇を停止させ、また、排出オーガ41が下降操作されている際には排出オーガ41の下降作動を禁止して排出オーガ41の下降を停止させる。さらに、ブザー85を吹鳴させると共にランプ86を点滅させる(ステップS11)。なお、前記ステップS8における脱穀クラッチの判断は、脱穀クラッチ検出手段76によって脱穀クラッチ及び刈取クラッチの何れも接続されている状態をONとし、また、脱穀クラッチ及び刈取クラッチの何れも切断されている状態をOFFとするものであって、脱穀クラッチのみの断続を意味するものではない。
【0056】
従って、接触防止制御の第2実施例では、第1実施例の機体の走行中の判断に加えて、脱穀クラッチ及び刈取クラッチ、更にはリール・刈刃クラッチの接続状態の判断に基づいて、掻込リールRと排出オーガ41が衝突(接触)する虞がある場合には、掻込リールRを下降させて掻込リールRと排出オーガ41の衝突を回避する。しかも、この場合、機体が停止していても脱穀クラッチ、刈取クラッチ、及びリール・刈刃クラッチの何れもが接続されている状態であれば掻込リールRの強制的な下降制御は実行される。即ち、この場合は、作物を前にしてオペレータが刈高さをヘッダ部7の昇降によって調節したり、作物の掻込み高さを掻込リールRの昇降によって調節する、刈取開始時の事前の準備段階であるから、掻込リールRの周辺に補助作業者が近寄ることはなく、掻込リールRを下降させても補助作業者に危害を加えることが無いと想定される場合である。
【0057】
一方、機体が停止していて脱穀クラッチ及び刈取クラッチが接続され、また、リール・刈刃クラッチが切断されている状態は、補助作業者が手刈り穀稈をプラットホームに投入する際の状況を意味し、掻込リールRの周辺に補助作業者が近寄っていて、掻込リールRを下降させたら補助作業者に危害を加える虞があると想定される場合である。そこで、第2実施例ではより安全性を担保するために、第1実施例の掻込リールRを通常の速度(標準速)より低速で下降させることに替えて、ヘッダ部7の上昇作動を禁止してヘッダ部7の上昇を即座に停止させ、また、排出オーガ41の下降作動を禁止して排出オーガ41の下降を即座に停止させている。なお、第2実施例の脱穀クラッチ及び刈取クラッチ、また、リール・刈刃クラッチの判断を第1実施例に付加してもよく、或いは、第1実施例の掻込リールRを通常の速度(標準速)より低速で下降させることに替えて、第2実施例の刈取部上昇又はオーガ下降作動禁止を盛り込むこともできる。
【0058】
次に、接触防止制御によって掻込リールRを強制的に下降させた後の、掻込リールRを元の位置に戻すリール復帰制御について説明する。すなわち、図16に示すようにリール復帰制御は、先ず、掻込リールRが接触防止制御によって強制的な下降制御がされている状態であるかをリール下降前高さの記憶に基づいて判断する(ステップS1)。そして、下降前高さが記憶されていて強制的な下降制御がされている状態であればステップS2に進み、記憶されていなければ掻込リールRを復帰させる作動制御を行わない。
【0059】
また、ステップS2では、刈取部(ヘッダ部7)の下降操作、或いはこの下降操作に基づいて刈取部(ヘッダ部7)が下降作動したか、又は排出オーガ41の手動上昇操作や自動排出位置への移動指令、或いはこの上昇操作や指令信号に基づいて排出オーガ41が上昇作動したかが判断され、何れの操作又は作動も検出されない場合は、掻込リールRを復帰させる作動制御を行わない。しかし、何れかの操作又は作動が検出された場合は、前述した掻込リールRと排出オーガ41との距離が判定される(ステップS3)。そして、ステップS3において、未だに衝突する虞がある距離(<=判定距離)と判断すると、掻込リールRを復帰させる作動制御を行わない。また、衝突する虞がない距離(>判定距離)と判断すると、ステップS4に進み、掻込リールRを記憶した下降前の高さに戻すように上昇側への作動制御を行う。
【0060】
従って、接触防止制御によって掻込リールRが強制的に下降させられた後、リール復帰制御において、掻込リールRと排出オーガ41の衝突の虞が無くなると下降前の高さまで自動的に掻込リールRが戻されるので、掻込リールRの高さを手動で調節し直す煩わしさから解放されて、刈取り作業を迅速に再開することができる。
【0061】
ところで、掻込リールRを手動操作した際のリール昇降制御について説明すると、図17に示すようにリール昇降制御は、掻込リールRを昇降操作するリール昇降スイッチ78の上昇操作がステップS1において検出されると、前述した掻込リールRと排出オーガ41との距離が判定される(ステップS2)。そして、ステップS2において、排出オーガ41と衝突する虞がない距離(>判定距離)であると判断すると、ステップS3に進んで掻込リールRを上昇作動させる。
【0062】
しかし、衝突する虞がある距離(<=判定距離)であると判断すると、掻込リールRの上昇作動を禁止して停止させる(ステップS4)。一方、ステップS1において上昇操作が検出されなければ、下降操作の有無が判断され(ステップS5)、ここで下降操作が検出されると、掻込リールRを下降作動させる(ステップS6)。また、下降操作が行われていなければ、前記ステップS4に進んで、掻込リールRの作動が停止される。
【0063】
従って、掻込リールRを手動で上昇操作した際にも、掻込リールRが排出オーガ41と衝突する虞が出てきた場合は、強制的に掻込リールRの上昇作動が停止されるので、掻込リールRと排出オーガ41の衝突を防止することができる。なお、刈取部昇降制御、オーガ手動制御、及びオーガ自動制御においては、本発明に係る掻込リールRと排出オーガ41の衝突を防止する制御を格別、盛り込んでおらず、前述した接触防止制御において対応しているので、その説明を割愛する。
【0064】
以上、本発明の実施形態を説明したが、掻込リールRを強制的に下降させるだけでは、掻込リールRと排出オーガ41の衝突を防止することができない場合は、掻込リールRを強制的に下降させると共に、ヘッダ部の上昇作動を禁止する、或いはヘッダ部を強制的に下降させることもできる。また、本発明では、掻込リールRを強制的に下降させた際に、補助作業者を危険にさらさないように、その下降速度を遅くするといった制御を、機体の走行を停止して刈取り作業を行わない非作業時をもって行っているが、より正確を期すためにヘッダ部7周辺に補助作業者がいないか赤外線センサ等で構成する人体検知センサで検出して、補助作業者の存在が確認されれば前記制御を行わせてもよく、本発明は、前記実施形態に限定するものではない。
【符号の説明】
【0065】
1 クローラ式走行装置
3 機体フレーム
4 脱穀部
5 操縦部
6 グレンタンク
7 ヘッダ部
F フィーダ
R 掻込リール
12 プラットホームオーガ
14 刈刃
41 排出オーガ
61 オーガレスト
70 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17