(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6404015
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】耐力壁フレーム
(51)【国際特許分類】
E04B 2/56 20060101AFI20181001BHJP
【FI】
E04B2/56 643A
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-137658(P2014-137658)
(22)【出願日】2014年7月3日
(65)【公開番号】特開2016-14294(P2016-14294A)
(43)【公開日】2016年1月28日
【審査請求日】2017年6月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086793
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅士
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(72)【発明者】
【氏名】西村 健
(72)【発明者】
【氏名】永田 篤史
(72)【発明者】
【氏名】坂口 知弘
【審査官】
新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−066064(JP,A)
【文献】
特開平07−331746(JP,A)
【文献】
特開2010−265648(JP,A)
【文献】
特開2008−169609(JP,A)
【文献】
特開昭62−006073(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0107352(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/56
E04B 1/24
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣合う一対の鉛直な柱の対向する側面に耐力ユニットの両端がボルトで接合されてなり、前記耐力ユニットは、上下に離れた一対の横桟と、これら上下の横桟間に介在したせん断力負担部材とを有する耐力壁フレームであって、
前記耐力ユニットの前記上下一対の横桟の両端と前記柱とをそれぞれ前記ボルトで接合する4箇所の接合部のうち、前記上下の各横桟のいずれも、いずれか一端の前記接合部は上下方向を向くボルトで接合され、他端の前記接合部は前記横桟の長手方向を向くボルトで接合されたことを特徴とする耐力壁フレーム。
【請求項2】
請求項1に記載の耐力壁フレームにおいて、いずれか一方の前記柱に接合されている上下いずれか一方の前記横桟の前記接合部が前記上下方向を向くボルトで、上下いずれか他方の前記横桟の前記接合部が前記長手方向を向くボルトで接合された耐力壁フレーム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の耐力壁フレームにおいて、前記各接合部のうち、上下方向を向くボルトで接合する接合部、および前記横桟の長手方向を向くボルトで接合する接合部は、それぞれ2本のボルトを用いたボルト接合構造とした耐力壁フレーム。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の耐力壁フレームにおいて、前記上下方向を向くボルトで接合する接合部は、前記柱の前記耐力ユニット接合側の側面に突出して接合されて前記横桟の上下面にそれぞれ接する上下一対の接合金物と、前記横桟の上下面をそれぞれ構成する横桟上下面形成部とに渡って前記上下方向を向くボルトを貫通させた構造であり、前記横桟の長手方向を向くボルトで接合する接合部は、前記柱の前記耐力ユニット接合側の側面に突出して接合された接合金物と前記横桟に設けられた端板とに渡って前記横桟の長手方向を向くボルトを貫通させた構造である耐力壁フレーム。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の耐力壁フレームにおいて、前記耐力ユニットの前記せん断力負担部材が、前記上下の横桟間に長手方向の複数箇所でそれぞれ接合された複数の縦桟である耐力壁フレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄骨系等の建物に適用される耐力壁フレームに関し、特にその耐力ユニットを柱に接合する構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
建物に用いられる耐力壁フレームとして、2本の平行に立てられる金属製の縦材と、これら縦材間に上下に並べて架設された複数の金属製の横材とを備えるはしご形耐力壁フレームが知られている。この他に、左右の柱間に、ウェブ部に無数の孔を設けた断面H形の鋼材からなる横材を溶接で接合したもの(特許文献1)や、左右の柱間に、開口部を有する板状の建築用固定金具を接合したもの(特許文献2)が提案されている。
【0003】
従来のはしご形の耐力壁フレームは、幅が狭いと有効であるが、広いと有効に効かない場合がある。すなわち、従来のはしご形の耐力壁フレームは、地震や風の水平力に対して、横方向に配置された横桟のせん断破壊を先行させるために、0.5P(1Pは、0.8〜1.1m程度)幅などの幅の狭い耐力壁フレームとされている。そのため、このような幅の狭い場合は有効であったが、耐力壁の幅が広くなる場合は、縦桟と横桟の曲げ破壊、または接合部の破壊が支配的になるため、はしご形状の耐力壁フレームの効果がそれほど期待できなくなる可能性がある。
耐力要素の断面を大きくすれば、幅の広い耐力壁においても適用は可能であるが、耐力壁の両側の柱間の中間に耐力壁フレームが存在するため、耐力壁を配置する外壁面に開口を設けることが難しい。そのため、建物の間取りのプラン上の制約が生じる。
また、はしご形の耐力壁フレームは、建物の軸柱を兼ねるはしごの縦桟と横桟とが接合されているため、大地震等で耐力壁フレームが損傷した場合は、耐力壁フレームの全体を交換する必要がある。
【0004】
特許文献1のウェブ部に無数の孔を設けた断面H形の鋼材からなる横材を溶接したものや、特許文献2の開口部を有する板状の建築用固定金具を接合したものは、いずれも横材または板状の建築用固定金具の全体が一体の部材である。そのため、各種の建物の耐力壁の各種の幅寸法等に適合したものや、建物に要求される適切な水平抵抗力のものを製造するには、前記横材や建築用固定金具の全体を別のものに製作する必要があり、寸法や要求強度への適合性が低いという問題点がある。
【0005】
これらの問題点を解決するものとして、特許文献4が提案されている。同文献の耐力壁フレームでは、
図9(a)のように、隣合う一対の柱22,22に耐力ユニット23の両端を接合してなり、耐力ユニット23は、上下に離れた一対の横桟24,25と、これら上下の横桟24,25間に介在したせん断力負担部材26とを有する。ここでは、前記耐力ユニット23は、前記上下に離れた一対の横桟24,25と、これら横桟24,25間に長手方向の複数箇所でそれぞれ接合されて前記せん断力負担部材26となる複数の縦桟31とでなるはしご形とされている。
【0006】
前記耐力ユニット23は、
図9(b)に拡大して示すように、耐力壁の壁面に対して垂直方向に向くボルト27で前記柱22にボルト接合している。詳しくは、前記上下の横桟24,25の両端に設けた平面形状T字形の柱接合金物30と、前記柱22の側面に溶接して取付けられ前記横桟24,25の長手方向に向けて突出するユニット取付片31とを互いに重ねて、この重ね合わせ部を耐力壁の壁面に対して垂直方向に向くボルト27により接合することで、耐力ユニット23を前記柱22に接合している。
【0007】
この構成によると、地震等により建物に作用する水平力は、両側の柱22から耐力ユニット23の上下の横桟24,25に伝わるが、この耐力ユニット23の上下の横桟24,25間に介在したせん断力負担部材26により前記水平力が負担され、水平力に抵抗する架構を構成できる。また、前記耐力ユニット23のせん断力負担部材26および上下の横桟24,25、並びに左右の柱22,22からなる耐力壁フレームの全体に応力が分散し、そのため、変形能力が高くてねばり強い架構を構成でき、建物に優れた耐震性能を与えることができる。
【0008】
また、前記耐力ユニット23は、左右の柱22,22間に横方向に延びて設けるため、左右の柱間に上下方向に沿って介在させるものと異なり、左右の柱間に渡る幅の広い開口部を設けることができ、かつ前記のように応力が分散して支持されるため、左右の柱22,22間の幅が広くても適用することができる。
さらに、前記耐力ユニット23は、上下の横桟24,25とこれらを繋ぐせん断力負担部材26とで構成されるため、耐力ユニットを一体の部材で構成するものと異なり、せん断力負担部材26の個数や断面形状の調整、および単純な形状の部材である上下の横桟24,25の長さの調整により、要求される各種の寸法や強度への対応が容易に行える。
【0009】
また、前記耐力ユニット23は、前記上下の横桟24,25の両端を前記柱22にボルト27で接合しているので、大きな水平荷重を受けたときに建物の他の部分よりも耐力ユニット23が先に損傷するように設計しておくことで、その損傷した耐力ユニット23を交換するだけで修復が行え、修復が簡単となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−325637号公報
【特許文献2】特開2007−154423号公報
【特許文献3】特開平10−184074号公報
【特許文献4】特開2014−066064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献4の例では、上記のように種々の優れた利点が得られる。しかし、柱22への耐力ユニット23の接合を、
図9(b)のように耐力壁の壁面に対して垂直方向に向くボルト27で行っているため、水平力作用時に、ボルト孔の内周とボルト外周との間に生じる遊びの範囲で、左右および上下方向へのすべりが起こり、剛性にロスが生じるという課題がある。この剛性ロスの解決策として、高力ボルトを用いた摩擦接合とすることは可能であるが、高力ボルトによる接合は品質管理が難しいため、住宅等の量産が必要な建物では採用が困難である。なお、ボルト接合に変えて溶接接合するのでは、大地震後に耐力ユニットを交換する場合に柱の交換も必要になる。
【0012】
この発明の目的は、開口部の形成が可能でかつ建物に優れた耐震性能を与えることができる耐力壁フレームを、中ボルト等によるボルト接合で、耐力ユニットの左右上下方向へのすべりによる剛性ロスの問題を生じることなく実現できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明の耐力壁フレームは、隣合う一対の
鉛直な柱
の対向する側面に耐力ユニットの両端
がボルトで接合
されてなり、前記耐力ユニットは、上下に離れた一対の横桟と、これら上下の横桟間に介在したせん断力負担部材とを有する耐力壁フレームであって、
前記耐力ユニットの前記上下一対の横桟の両端と前記柱とをそれぞれ前記ボルトで接合する4箇所の接合部のうち、
前記上下の各横桟のいずれも、いずれか一端の前記接合部は上下方向を向くボルトで接合され、他端の前記接合部は前記横桟の長手方向を向くボルトで接合されたことを特徴とする。
【0014】
この構成によると、耐力ユニットの上下一対の横桟の両端と柱とをそれぞれ接合する4箇所の接合部のうち、少なくとも1箇所の接合部を上下方向を向くボルトで接合し、少なくとも他の1箇所の接合部は横桟の長手方向を向くボルトで接合している。そのため、耐力ユニットの上下方向および長手方向に作用する2方向の荷重をボルトの引っ張り耐力で負担する接合構造となる。したがって、前記ボルトに中ボルトを使用しても、ボルト孔の内周とボルトの外周との間の遊びですべりを生じることがなく、2方向のすべりを抑制した接合となって、すべりによる剛性ロスの問題が生じることが回避される。また、耐力ユニットと柱との接合は全てボルト接合であるため、大地震等で耐力壁フレームが損傷した場合に、損傷した耐力ユニットを交換するのみで復元できる。
特に、前記上下の各横桟の一端を前記上下方向を向くボルトで接合し、他端を前記横桟の長手方向を向くボルトで接合しているため、上下の各横桟毎に、ボルト接合部における上下方向および長手方向の滑りをそれぞれ両端で抑制できる。
また、この耐力壁フレームは、隣合う一対の柱に耐力ユニットの両端をボルトで接合してなる構成のため、耐力ユニットを避けた上下位置に開口を設けることにより、耐力壁フレームでありながら、開口部の形成が可能である。
前記耐力ユニットは、上下に離れた一対の横桟と、これら上下の横桟間に介在したせん断力負担部材とを有する構成であるため、地震等により建物に作用する水平力は、両側の柱耐力ユニットの上下の横桟に伝わるが、これら上下の横桟間に介在したせん断力負担部材により前記水平力が負担され、水平力に抵抗する。また、前記耐力ユニットのせん断力負担部材および上下の横桟、並びに左右の柱からなる耐力壁フレームの全体に応力が分散する。そのため、変形能力が高くてねばり強い架構を構成でき、建物に優れた耐震性能を与えることができる。
この発明において、いずれか一方の前記柱に接合されている上下いずれか一方の前記横桟の前記接合部が前記上下方向を向くボルトで、上下いずれか他方の前記横桟の前記接合部が前記長手方向を向くボルトで接合されていてもよい。
【0015】
この発明において、前記各接合部のうち、前記上下方向を向くボルトで接合する接合部、および前記横桟の長手方向を向くボルトで接合する接合部は、2本のボルトを用いたボルト接合構造としても良い。
上記のようにボルトの引っ張り耐力で荷重を負担するボルト接合部において、それぞれ2本のボルトを用いることで、少ないボルト本数で確実なすべり防止、および確実な接合が行える。
【0016】
この発明において、前記上下方向を向くボルトで接合する接合部は、前記柱の前記耐力ユニット接合側の側面に突出して接合されて前記横桟の上下面にそれぞれ接する上下一対の接合金物と、前記横桟の上下面をそれぞれ構成する横桟上下面形成部とに渡って前記上下方向を向くボルトを貫通させた構造であり、前記横桟の長手方向を向くボルトで接合する接合部は、前記柱の前記耐力ユニット接合側の側面に突出して接合された接合金物と前記横桟に設けられた端板とに渡って前記横桟の長手方向を向くボルトを貫通させた構造であっても良い。
このように各接合金物を設けることで、上下方向を向くボルトおよび長手方向を向くボルトにより、各方向の荷重を引っ張り耐力で負担してすべりを無くす接合構造が、簡素な構成で実現できる。
【0019】
この発明において、前記耐力ユニットの前記せん断力負担部材が、前記上下の横桟間に長手方向の複数箇所でそれぞれ接合された複数の縦桟であっても良い。
前記耐力ユニットの前記せん断力負担部材が複数の縦桟からなるはしご形であると、これら複数の縦桟で分担してせん断力を負担するため、応力が分散され、塑性変形能力が向上して、より一層ねばり強い架構を構成できる。
【発明の効果】
【0020】
この発明の耐力壁フレームは、隣合う一対の
鉛直な柱
の対向する側面に耐力ユニットの両端
がボルトで接合
されてなり、前記耐力ユニットは、上下に離れた一対の横桟と、これら上下の横桟間に介在したせん断力負担部材とを有する耐力壁フレームであって、前記耐力ユニットの前記上下一対の横桟の両端と前記柱とをそれぞれ前記ボルトで接合する4箇所の接合部のうち、
前記上下の各横桟のいずれも、いずれか一端の前記接合部は上下方向を向くボルトで接合され、他端の前記接合部は前記横桟の長手方向を向くボルトで接合されたため、開口部の形成が可能でかつ建物に優れた耐震性能を与えることができる耐力壁フレームを、中ボルト等によるボルト接合で、耐力ユニットの左右上下方向へのすべりによる剛性ロスの問題を生じることなく実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】この発明の第1の実施形態にかかる耐力壁フレームの構成を示す正面図である。
【
図2】(a)は耐力ユニットの部分破断正面図、(b)は同図(a)におけるIIB部の拡大図、(c)は同図(a)におけるIIC部の拡大図、(d)は同図(a)におけるIIA部の拡大平面図である。
【
図3】耐力ユニットにおけるせん断負担部材の詳細を示す部分正面図である。
【
図4】耐力壁フレームの概略構成を示す正面図である。
【
図5】耐力ユニットに作用する曲げモーメントの説明図である。
【
図6】
提案例にかかる耐力ユニットの部分破断正面図である。
【
図7】(a)は
他の提案例にかかる耐力ユニットの部分破断正面図、(b)は同図(a)のVIIB部の拡大図、(c)は同図(a)のVIIB部の拡大平面図である。
【
図8】この発明の耐力ユニット接合構造を用いた耐力ユニットの耐力試験結果を示すグラフである。
【
図9】(a)は従来例の耐力壁フレームの正面図、(b)は同図(a)におけるB部の拡大詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明の第1の実施形態を
図1ないし
図5と共に説明する。
図1は、この実施形態にかかる耐力壁フレームの建物への設置例を示す。この耐力壁フレーム1は、隣合う一対の柱2,2に耐力ユニット3の両端を接合したものである。柱2は、建物の強度の負担をするいわゆる軸柱であり、角形鋼管等の形鋼からなる。隣合う柱2,2間には、複数の耐力ユニット3が高さ方向に並べて架設される。
【0023】
図4は、この耐力壁フレーム1の模式図を示す。各柱2は、上端が梁7に接合され、下端が梁8または基礎または土台に接合される。上記の建物は鉄骨の柱および梁7,8をピン接合した軸組構造であり、この耐力壁フレーム1を複数箇所に設けることで、またはさらにブレース(図示せず)を併用することで、水平力を負担する架構とされる。上記建物は、例えば、戸建住宅、集合住宅、または事務所や校舎、商業施設用等の低層の建物である。
【0024】
図1において、各耐力ユニット3は、上下に離れた一対の横桟4,5と、これら上下の横桟4,5間に介在したせん断力負担部材6とを有する。上下の横桟4,5は角形鋼管等の鋼材からなる。せん断力負担部材6は、建物に過大な水平力等が作用した場合に、他の各部材よりも先に損傷する強度のものとされる。同図の例では、せん断力負担部材6は、上下の横桟4,5間の長手方向の複数箇所にそれぞれ接合した縦桟11とされ、耐力ユニット3は横向きのはしご形となっている。なお、せん断力負担部材6は、前記縦桟11以外のもの、例えば面材であっても良い。
【0025】
各耐力ユニット3では、上下一対の横桟4,5の両端と柱2とをそれぞれ接合する4箇所の接合部12A〜12Dのうち、少なくとも1箇所の接合部を上下方向を向くボルト9(
図2)で接合し、少なくとも他の1箇所の接合部は横桟4,5の長手方向を向くボルト10(
図2)で接合するボルト接合構造とされている。
【0026】
具体的には、
図2(a)のように、上下一対の横桟4,5の両端と柱2とをそれぞれ接合する4箇所の接合部12A〜12Dのうち、上の横桟4の左端と柱2との接合部12A、および下の横桟5の右端と柱2との接合部12Dが、それぞれ上下方向を向く2本のボルト9で接合するボルト接合構造とされている。また、上の横桟4の右端と柱2との接合部12B、および下の横桟5の左端と柱3との接合部12Cは、それぞれ横桟4,5の長手方向を向く2本のボルト10で接合するボルト接合構造とされている。ボルト9,10は、この例では中ボルトである。
【0027】
上下方向を向くボルト9によるボルト接合構造では、
図2(c),(d)に拡大断面図および拡大平面図で示すように、柱2の耐力ユニット接合側の側面に突出して溶接などにより接合されて横桟4,5の上下面にそれぞれ接する上下一対の接合金物13,13と、横桟4,5の上下面をそれぞれ構成する横桟上下面形成部14a,14bとに渡って、前記上下方向を向くボルト9を貫通させている。ここでは、上下の横桟4,5が角形鋼管からなる例を示しているので、前記横桟上下面形成部14a,14bは角形鋼管の上下の管壁部分となる。横桟4,5がI形鋼やH形鋼からなる場合には、これらの上下フランジが、前記横桟上下面形成部14a,14bとなる。
【0028】
図2(b)に拡大断面図で示すように、横桟4,5の長手方向に向くボルト10によるボルト接合構造では、柱2の耐力ユニット接合側の側面に突出して溶接などにより接合された接合金物15と、横桟4,5に設けられた端板16とに渡って、前記長手方向に向くボルト10を貫通させている。柱2側の接合金物15として、ここでは耐力壁の壁面に対して垂直方向に開口する角形鋼管の切断片を用いているが、溝形鋼などの他の形状の鋼材を用いても良い。
【0029】
図2(a)において、耐力ユニット3のせん断力負担部材6は、上下の横桟4,5間の長手方向の複数箇所にそれぞれ接合した前記縦桟11からなるが、この縦桟11には溝形鋼が用いられている。
図3に拡大して示すように、溝形鋼からなる縦桟11は、ウェブ外面を横桟4,5の側面と同一平面に配置し、別の接合プレート17を縦桟11の端部と横桟4,5の側面とに跨がって重ねて、これら縦桟11と横桟4,5とに溶接などで接合している。これにより、縦桟11と横桟4,5とを接合している。縦桟11には、耐力低下用の孔18が、接合プレート17の重ならない範囲で複数設けられている。
【0030】
この構成の耐力壁フレーム1によると、隣合う一対の柱2,2に耐力ユニット3の両端を接合してなり、耐力ユニット3は、上下に離れた一対の横桟4,5と、これら上下の横桟4,5間に介在したせん断力負担部材6とを有するため、応力が分散し、塑性変形能力が向上して、ねばり強い架構を構成できる。ここでは、耐力ユニット3が複数の縦桟11を有するはしご形であるため、これら複数の縦桟11で分担してせん断力を負担する。そのため、より一層ねばり強い架構を構成できる。
はしご形の耐力ユニットは、一般的には、縦形として上下の梁間に接続する構成のものとされているが、このように横形に使用することで、耐力壁に、両側の柱2,2間に渡る幅の広い開口部(図示せず)を設けることができ、かつ柱2,2間の幅が広い場合にも適用できる構成としながら、はしご形の利点である応力分散の作用が得られる。
【0031】
特に、この耐力壁フレーム1では、柱2への耐力ユニット3の接合構造において、上下一対の横桟4,5の両端と柱2とをそれぞれ接合する4箇所の接合部12A〜12Dのうち、2箇所の接合部12A,12Dを上下方向を向くボルト9で接合し、他の2箇所の接合部12B,12Dは横桟4,5の長手方向を向くボルト10で接合するボルト接合構造とされている。
このため、耐力壁フレームにおいて耐力壁の壁面に対して垂直方向に向くボルトで耐力ユニットの端部を柱に接合した従来例(
図9)と異なり、ボルト9,10に中ボルトを用いながら、水平力作用時に、左右および上下方向にボルト接合部ですべりが生じることがなく、その耐力試験結果を
図8にグラフで示すように、剛性ロスが生じない。なお、
図5には、はしご形とした前記耐力ユニット3に作用する曲げモーメントを示している。
【0032】
また、この実施形態では、耐力ユニット3の上下両端を全てボルト9,10で柱2に接合する構成となるため、大きな水平荷重を受けたときに建物の他の部分よりも耐力ユニット3が先に損傷するように設計しておくことで、その損傷した耐力ユニット3を交換するだけで修復が行え、修復が簡単となる。
【0033】
図6は、
参考提案例を示す。この
提案例では、
図1〜
図5に示した先の実施形態において、柱2への前記耐力ユニット3の端部の接合構造として、前記上下一対の横桟4,5のうち上下いずれか一方の横桟(ここでは下の横桟5)の両端を前記上下方向を向くボルト9で接合し、他方の横桟(ここでは上の横桟4)の両端を横桟4,5の長手方向を向くボルト10で接合している。その他の構成は先の実施形態の場合と同様である。
【0034】
この
提案例の場合も、柱2への耐力ユニット3の接合構造において、上下一対の横桟4,5の両端と柱2とをそれぞれ接合する4箇所の接合部12A〜12Dのうち、2箇所の接合部12C,12Dを上下方向を向くボルト9で接合し、他の2箇所の接合部12A,12Bは横桟4,5の長手方向を向くボルト10で接合するボルト接合構造とされているため、前記従来例(
図9)の耐力壁フレームの場合に比べて、水平力作用時に、ボルト接合部で左右および上下方向にすべりが生じることがなく、剛性ロスが生じない。その他の作用効果は、先の実施形態の場合と同様である。
【0035】
図7は、
他の参考提案例を示す。この
提案例では、
図1〜
図5に示した先の実施形態において、柱2への前記耐力ユニット3の端部の接合構造として、前記上下一対の横桟4,5のうち上下いずれか一方の横桟(ここでは上の横桟4)の右端を前記上下方向を向くボルト9で柱2に接合し、他方の横桟(ここでは下の横桟5)の左端を横桟4,5の長手方向を向くボルト10で柱2に接合している。
【0036】
前記上下一対の横桟4,5の他端は、
図9の従来例の耐力壁フレームと同様に、耐力壁の壁面に対して垂直方向に向くボルト19で柱2に接合している。具体的には、上の横桟4の左端の柱2への接合部12Aでは、
図7(b),(c)に拡大正面図および拡大平面図で示すように、横桟4の左端に設けた平面形状T字形の柱接合金物20と、柱2の側面に溶接などで接合した平面形状T字形のユニット取付片21とを重ね、その重ね合わせ部に前記耐力壁の壁面に対して垂直方向に向くボルト19を貫通させている。横桟4の左端に設けられる柱接合金物20は、端板20aとこの端板20aから突出した縦片20bとからなり、その縦片20aが柱2側のユニット取付片21に重ねられる。下の横桟5の右端の柱2への接合部12Dでも同様に、横桟5の右端に設けた平面形状T字形の柱接合金物20と、柱2側の側面に溶接などで接合した平面形状T字形のユニット取付片21とを重ね、その重ね合わせ部に前記耐力壁の壁面に対して垂直方向に向くボルト19を貫通させている。その他の構成は先の実施形態の場合と同様である。
【0037】
この
提案例の場合も、柱2への耐力ユニット3の接合構造において、上下一対の横桟4,5の両端と柱2とをそれぞれ接合する4箇所の接合部12A〜12Dのうち、1箇所の接合部12Bを上下方向を向くボルト9で接合し、他の1箇所の接合部12Cは横桟4,5の長手方向を向くボルト10で接合するボルト接合構造とされているため、
図9の従来例の耐力壁フレームの場合に比べて、水平力作用時に、ボルト接合部で左右および上下方向にすべりが生じることがなく、剛性ロスが生じない。その他の作用効果は、先の実施形態の場合と同様である。
【符号の説明】
【0038】
1…耐力壁フレーム
2…柱
3…耐力ユニット
4,5…横桟
6…せん断力負担部材
9,10…ボルト
11…縦桟
12A〜12D…接合部
13…接合金物
14a,14b…横桟上下面形成部
15…接合金物
16…端板