(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フィラメントワインディング装置では、フィラメントが巻回されたボビンからフィラメントを巻き出している状態では、巻き出したフィラメントの速度やボビンの回転速度等から、ボビンに巻回されているフィラメントの個所の径であるボビン径を適宜求め、フィラメントの残量表示等を行っている。
しかし、新しいボビンをフィラメントワインディング装置に取り付けた場合では、まだフィラメントを巻き出していないので、巻き出し速度やボビンの回転速度を検出することができず、ボビン径を求めることができない。そこで、従来では、新しいボビンをフィラメントワインディング装置に取り付けた場合、作業者がノギス等を用いて、ボビンにおけるフィラメントが巻回されている個所の径であるボビン径を測定してフィラメントワインディング装置に初期ボビン径を入力している。フィラメントワインディング装置は、入力された初期ボビン径に基づいて、取り付けられたボビンのフィラメントの残量表示や、フィラメントの巻き出しの開始時におけるボビンの回転速度制御やアクティブダンサーの張力制御の初期パラメータの設定等を行っている。
特許文献1には、新しいボビンをフィラメントワインディング装置に取り付けた場合のボビン径の測定についての記載がないので、作業者がノギス等を用いてボビン径を求める必要がある。作業者の手作業でのボビン径の測定は、作業者に負担がかかるとともに、測定結果のバラツキも発生するので、好ましくない。
また特許文献2では、巻取ボビン径検出手段を備えることで、ボビン径を検出している。この巻取ボビン径検出手段をフィラメントワインディング装置に適用すれば、作業者がノギス等を用いてボビン径を測定する作業を省略することができるが、フィラメントワインディング装置における適切な位置に巻取ボビン径検出手段を取り付けなければならないため、手間と時間と費用がかかり、好ましくない。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、新たにボビン径の検出手段を追加することなく、新しいボビンを取り付けた際、フィラメントが巻回されている個所のボビンの径であるボビン径を自動的に検出することができる、フィラメントワインディング方法及びフィラメントワインディング装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明に係るフィラメントワインディング方法及びフィラメントワインディング装置は次の手段をとる。
まず、本発明の第1の発明は、フィラメントが巻回されたボビンが取り付けられて当該ボビンを回転駆動するボビン回転駆動手段と、前記ボビンから巻き出されたフィラメントに一定の張力を付与するために揺動するダンサーと、前記ボビン回転駆動手段を制御する制御手段と、を用いたフィラメントワインディング方法において、新しいボビンが前記ボビン回転駆動手段に取り付けられた際に、前記ダンサーを経由させて巻き出されたフィラメントの先端が前記ダンサーの先で固定されて巻き出されたフィラメントが張られている状態を維持しながら、前記制御手段から前記ボビンを回転させて前記ダンサーを揺動させ、前記制御手段にて、前記ダンサーの長さと前記ダンサーの揺動角度と前記ボビンの回転角度とに基づいて、前記ボビン回転駆動手段に取り付けられた
前記ボビンの
径であるボビン径を求
め、前記ボビンを回転させて前記ダンサーを揺動させる際、前記ボビン回転駆動手段を用いて前記ボビンから前記フィラメントが巻き出される順方向に前記ボビンを回転させて、巻き出された前記フィラメントに応じた揺動順方向に前記ダンサーを揺動させ、前記ボビン回転駆動手段を用いて前記ボビンが前記フィラメントを巻き取る逆方向に前記ボビンを回転させて、巻き取られた前記フィラメントに応じた揺動逆方向に前記ダンサーを揺動させ、前記ボビン径を求める際、前記ボビンの前記順方向の回転によって前記ボビンから巻き出された前記フィラメントの長さと、前記ボビンの前記逆方向の回転によって前記ボビンが巻き取った前記フィラメントの長さと、を合計したボビン側合計長さは、前記ダンサーの前記揺動順方向の揺動によって前記ダンサーが引き出した前記フィラメントの長さと、前記ダンサーの前記揺動逆方向の揺動によって前記ダンサーが戻した前記フィラメントの長さと、を合計したダンサー側合計長さと等しい関係にあることと、前記ダンサーの長さと前記ダンサーの揺動角度と前記ボビンの回転角度とに基づいて、前記ボビン回転駆動手段に取り付けられた新しい前記ボビンの前記ボビン径を求める、フィラメントワインディング方法である。
【0006】
この第1の発明では、新しいボビンが取り付けられてダンサーを経由させて巻き出されたフィラメントの先端がダンサーの先で固定されてフィラメントが張られている状態を維持しながら、ボビンを回転させてダンサーを揺動させ、ダンサーの長さとダンサーの揺動角度とボビンの回転角度とに基づいてボビン径を求める。
これにより、新たにボビン径の検出手段を追加することなく、新しいボビンを取り付けた際、フィラメントが巻回されている個所のボビンの径であるボビン径を自動的に検出することができる。
【0007】
次に、本発明の第2の発明は、上記第1の発明に係るフィラメントワインディング方法であって、前記ボビン径を求める際、前記ダンサーを、揺動可能範囲の一方端または一方端の近傍から、前記揺動可能範囲の他方端または他方端の近傍まで揺動させる。
【0008】
この第2の発明では、ボビン径を求める際、ダンサーを、揺動可能範囲の一方端(または一方端の近傍)から、他方端(または他方端の近傍)まで揺動させる。
これにより、ダンサーをできるだけ大きく揺動させて、より正確にボビン径を求めることができる。
【0009】
次に、本発明の第3の発明は、上記第1の発明または第2の発明に係るフィラメントワインディング方法であって、前記制御手段にて、求めたボビン径に基づいて、フィラメントの残量表示と、前記ボビン回転駆動手段による巻き出し開始時の初期パラメータの設定と、の少なくとも一方を自動的に行う。
【0010】
この第3の発明では、新しいボビンを取り付けた際、取り付け時点のボビン径の測定から、測定したボビン径に基づいた処理を自動的に行う。
これにより、作業者の手間と時間を低減し、強化繊維プリフォームを形成する作業をより効率よく行うことができる。また作業者がノギス等を用いて測定していた従来と比較して、測定したボビン径のバラツキの低減と精度の向上が期待できるとともに、新たにボビン径の検出手段を追加することもないので、コストの上昇も抑えることができる。
【0011】
次に、本発明の第4の発明は、フィラメントが巻回されたボビンが取り付けられて当該ボビンを回転駆動するボビン回転駆動手段と、前記ボビン回転駆動手段の回転角度を検出可能な回転角度検出手段と、前記ボビンから巻き出されたフィラメントに一定の張力を付与するために揺動するダンサーと、前記ダンサーの揺動角度を検出可能な揺動角度検出手段と、前記ボビン回転駆動手段を制御する制御手段と、を備えたフィラメントワインディング装置である。
前記フィラメントワインディング装置は、新しいボビンが前記ボビン回転駆動手段に取り付けられた際に、前記ダンサーを経由させて巻き出されたフィラメントの先端が前記ダンサーの先で固定されて、巻き出されたフィラメントが張られている状態を維持しながら、前記制御手段は、前記ボビンを回転させて前記ダンサーを揺動させて、前記回転角度検出手段からの検出信号に基づいた前記ボビン回転駆動手段の回転角度と、前記揺動角度検出手段からの検出信号に基づいた前記ダンサーの揺動角度と、前記ダンサーの長さと、に基づいて、前記ボビン回転駆動手段に取り付けられた
前記ボビンの
径であるボビン径を算出
し、前記制御手段は、前記ボビンを回転させて前記ダンサーを揺動させる際、前記ボビン回転駆動手段を用いて前記ボビンから前記フィラメントが巻き出される順方向に前記ボビンを回転させて、巻き出された前記フィラメントに応じた揺動順方向に前記ダンサーを揺動させ、前記ボビン回転駆動手段を用いて前記ボビンが前記フィラメントを巻き取る逆方向に前記ボビンを回転させて、巻き取られた前記フィラメントに応じた揺動逆方向に前記ダンサーを揺動させ、前記ボビン径を算出する際、前記ボビンの前記順方向の回転によって前記ボビンから巻き出された前記フィラメントの長さと、前記ボビンの前記逆方向の回転によって前記ボビンが巻き取った前記フィラメントの長さと、を合計したボビン側合計長さは、前記ダンサーの前記揺動順方向の揺動によって前記ダンサーが引き出した前記フィラメントの長さと、前記ダンサーの前記揺動逆方向の揺動によって前記ダンサーが戻した前記フィラメントの長さと、を合計したダンサー側合計長さと等しい関係にあることと、前記ダンサーの長さと前記ダンサーの揺動角度と前記ボビンの回転角度とに基づいて、前記ボビン回転駆動手段に取り付けられた新しい前記ボビンの前記ボビン径を算出する。
【0012】
この第4の発明では、第1の発明と同様、新しいボビンが取り付けられてダンサーを経由させて巻き出されたフィラメントの先端がダンサーの先で固定されてフィラメントが張られている状態を維持しながら、ボビンを回転させてダンサーを揺動させ、ダンサーの長さとダンサーの揺動角度とボビンの回転角度とに基づいてボビン径を求める。
これにより、新たにボビン径の検出手段を追加することなく、新しいボビンを取り付けた際、フィラメントが巻回されている個所のボビンの径であるボビン径を自動的に検出することができるフィラメントワインディング装置を実現することができる。
【0013】
次に、本発明の第5の発明は、上記第4の発明に係るフィラメントワインディング装置であって、前記制御手段は、前記ボビン径を求める際、前記揺動角度検出手段からの検出信号を取り込みながら前記ボビン回転駆動手段を制御して、前記ダンサーを、揺動可能範囲の一方端または一方端の近傍から、前記揺動可能範囲の他方端または他方端の近傍まで揺動させる。
【0014】
この第5の発明では、第2の発明と同様、ボビン径を求める際、ダンサーを、揺動可能範囲の一方端(または一方端の近傍)から、他方端(または他方端の近傍)まで揺動させる。
これにより、ダンサーをできるだけ大きく揺動させて、より正確にボビン径を求めるフィラメントワインディング装置を実現することができる。
【0015】
次に、本発明の第6の発明は、上記第4の発明または第5の発明に係るフィラメントワインディング装置であって、前記制御手段は、算出したボビン径に基づいて、フィラメントの残量表示と、前記ボビン回転駆動手段による巻き出し開始時の初期パラメータの設定と、の少なくとも一方を自動的に行う。
【0016】
この第6の発明では、第3の発明と同様、新しいボビンを取り付けた際、取り付け時点のボビン径の測定から、測定したボビン径に基づいた処理を自動的に行う。
これにより、作業者の手間と時間を低減し、強化繊維プリフォームを形成する作業をより効率よく行うことが可能であり、測定したボビン径のバラツキの低減と精度の向上が期待でき、コストの上昇も抑えることができるフィラメントワインディング装置を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明を実施するための形態を図面を用いて説明する。
●[フィラメントワインディング装置1の全体構成(
図1)]
まず
図1を用いてフィラメントワインディング装置1の全体構成について説明する。
フィラメントワインディング装置1は、ボビン回転駆動手段20、ガイドローラ41〜45、ダンサー30、計測用ローラ40、アクティブダンサーローラ50、制御手段60、入力手段61、表示手段62等を備えている。
なおフィラメントとは、樹脂等に含浸させたセラミック繊維、ガラス繊維、炭素繊維等の線状繊維である。
【0019】
ボビン回転駆動手段20は、例えば電動モータであり、フィラメントが巻回されたボビン10が取り付けられ、制御手段60からの制御信号にて駆動されて、取り付けられたボビン10を回転させる。また回転速度や回転角度等は、エンコーダ等の回転検出手段23(回転角度検出手段に相当)から制御手段60に出力される。
ボビン10から巻き出されたフィラメント11は、ガイドローラ41、ガイドローラ42を経由してダンサー30のダンサーローラ32に掛けられ、ガイドローラ43を経由して計測用ローラ40に掛けられ、ガイドローラ44を経由してアクティブダンサーローラ50に掛けられ、ガイドローラ45を経由して巻回対象物へと供給される。そして巻回対象物にフィラメント11が巻回されて強化繊維プリフォームが形成される。
【0020】
ダンサー30は張力調整手段であり、ダンサーアーム31、ダンサーローラ32、支持部材33、揺動角度検出手段34、ピストン35、エアシリンダ36、エア配管37等にて構成されて、ボビン10から巻き出されたフィラメント11に、所定の張力を付与する。なお本実施の形態では、張力を付与する構成として、ピストン35、エアシリンダ36、エア配管37を有する例を示したが、他の構成で張力を付与するようにしてもよい。
支持部材33は、揺動可能に支持されたダンサーアーム31の支点を提供している。
ダンサーアーム31は、支持部材に支持された個所を支点として揺動可能(
図1の例では上下に揺動可能)であり、先端には回転可能に支持されたダンサーローラ32が取り付けられている。またダンサーアーム31にはエアシリンダ36内に収容されるピストン35が接続されており、エアシリンダ36には、エア配管37から所定圧力のエアが供給されている。この構成により、ダンサー30は、フィラメント11に所定の(一定の)張力を付与することができる。
また揺動角度検出手段34(揺動角度センサ等)は、ダンサーアーム31の角度位置に応じた検出信号を制御手段60に出力する。
【0021】
計測用ローラ40には、例えば張力検出手段(張力センサ等)や速度検出手段(エンコーダ等)が接続され(図示省略)、検出信号を制御手段60に出力する。
アクティブダンサーローラ50は、ダンサー30の追従遅れ(揺動遅れ)を補正するように、制御手段60からの制御信号に基づいて移動し(
図1の例では上下に移動)、フィラメント11に所定の(一定の)張力を付与することを支援する。
制御手段60は、回転検出手段23からの検出信号や、揺動角度検出手段34からの検出信号や、計測用ローラ40の張力検出手段や速度検出手段からの検出信号や、入力手段61からの入力を取り込み、ボビン回転駆動手段20や、アクティブダンサーローラ50や、表示手段62や、エアシリンダ36にエアを供給するコンプレッサ(図示省略)等に制御信号を出力する。
制御手段60及び入力手段61及び表示手段62には、例えばパーソナルコンピュータを用いることができる。
【0022】
従来のフィラメントワインディング装置では、フィラメントが巻回されたボビンからフィラメントを巻き出している状態では、巻き出したフィラメントの速度やボビンの回転速度等から、ボビンに巻回されているフィラメントの個所の径であるボビン径を適宜求め、フィラメントの残量表示等を行っている。
しかし、新しいボビン10をボビン回転駆動手段に取り付けた状態では、まだ巻き出し速度もボビン回転速度も検出できないので、巻き出し速度とボビン回転速度からボビン径を求めることができない。従って従来では、取り付けたボビン10におけるフィラメントが巻回されている個所の径であるボビン径を作業者が測定して、入力手段からボビン径を入力する必要があった。
そして制御手段は、入力されたボビン径に基づいて表示手段にフィラメントの残量表示を行ったり、入力されたボビン径と、設定された巻き出し速度と、に基づいた適切な回転速度にてボビン回転駆動手段の回転速度を制御するための初期パラメータの設定等を行ったりしていた。
また、新しいボビンを取り付けた際に測定するボビン径は、作業者がノギス等を用いて測定していたので、手間と時間がかかり、測定結果の精度もバラツキが発生していた。
本発明のフィラメントワインディング方法及びフィラメントワインディング装置は、ボビンを取り付ける位置にボビン径測定手段を新たに設けることなく、新しいボビンを取り付けた際に自動的にボビン径を求めることが可能であり、作業者の手間と時間を低減し、測定したボビン径のバラツキの低減と精度の向上を期待できるものである。
【0023】
●[新しいボビンを取り付けた際のボビン径の測定の処理手順(
図2〜
図4)]
次に
図2に示すフローチャートを用いて、新しいボビンを取り付けた際のボビン径の測定の処理手順について説明する。なお、このボビン径の測定の処理を行う場合、アクティブダンサーローラ50の動作は停止させておく。
ステップS10にて、作業者は、フィラメントワインディング装置に取り付けられたボビンに巻回されているフィラメントが無くなった場合(あるいは無くなる直前にて)、装置を一時的に停止してフィラメントが無くなった(あるいは無くなる直前の)ボビンを取り外し、新しいボビンを取り付ける。
そしてステップS15にて、作業者は、フィラメントワインディング装置(ボビン回転駆動手段)に取り付けたボビンから引き出したフィラメントを、
図3(A)に示すように、ガイドローラ41、ガイドローラ42、ダンサーローラ32、ガイドローラ43、計測用ローラ40、ガイドローラ44、アクティブダンサーローラ50、ガイドローラ45を経由させて、フィラメント11の先端を接続個所11T(巻回対象物等)に接続して固定する。そして作業者が、ボビンの交換完了の指示を入力手段から入力すると、制御手段60は、ステップS20以降の処理を自動的に行う。
なお、以上のステップS10、S15の処理は、作業者が行う例として説明したが、自動的に行われるように構成されていてもよい。
【0024】
ステップS20にて制御手段60は、
図3(A)に示すように、ダンサー30のエアシリンダ36に、ボビン径計測用の圧力(強化繊維プリフォームの形成時に設定する圧力よりも低い圧力)に設定したエアを供給してダンサー30を動作させてフィラメント11に張力を付与して、フィラメント11が弛むことなく張られた状態にしてステップS25に進む。
ステップS25にて制御手段60は、ダンサーアーム31の揺動位置が、
図3(A)に示すようにダンサーアーム基準位置(STD)となるように(この場合、水平位置となるように)、ボビン回転駆動手段20を制御してボビン10を回転させる。そして制御手段60は、
図3(A)に示す揺動角度検出手段34からの検出信号を取り込んでダンサーアーム基準位置(STD)の揺動角度を検出して記憶し、回転検出手段23からの検出信号を取り込んでボビン基準位置(STB)の回転角度を検出して記憶し、ステップS30に進む。
【0025】
ステップS30にて制御手段60は、揺動角度検出手段34からの検出信号を取り込んでダンサーアーム31の揺動角度を検出しながら、ボビン回転駆動手段20に制御信号を出力してボビン10を順方向(フィラメントを巻き出す方向であり、
図3(B)の例では時計回り方向)に徐々に回転させてフィラメント11を少しずつ巻き出してダンサーアーム31を上方に揺動させてステップS35に進む。
ステップS35にて制御手段60は、ダンサーアームの揺動角度が(順方向において)第1所定角度以上に達したか否かを判定する。揺動角度が(順方向において)第1所定角度以上に達している場合(Yes)はステップS40に進み、揺動角度が(順方向において)第1所定角度に達していない場合(No)はステップS30に戻る。
なお第1所定角度は、ダンサーアーム31の揺動可能範囲における一方端または一方端の近傍に相当する角度である。
ステップS40に進んだ場合、ダンサー30の状態及びボビン10の状態は、
図3(B)に示した状態である。ステップS40にて制御手段60は、ボビン回転駆動手段20の動作を停止させ、揺動角度検出手段34からの検出信号に基づいてダンサーアーム31の揺動角度を検出し、回転検出手段23からの検出信号に基づいてボビンの回転角度を検出する。
そして制御手段60は、ステップS40にて検出したダンサーアーム31の揺動角度からステップS25にて検出したダンサーアーム基準位置(STD)の揺動角度の差分である揺動角度θ1(
図3(B)参照)を算出して記憶する。また制御手段60は、ステップS40にて検出したボビンの回転角度からステップS25にて検出したボビン基準位置(STB)の回転角度の差分である回転角度θa(
図3(B)参照)を算出して記憶し、ステップS45に進む。
【0026】
ステップS45にて制御手段60は、揺動角度検出手段34からの検出信号を取り込んでダンサーアーム31の揺動角度を検出しながら、ボビン回転駆動手段20に制御信号を出力してボビン10を逆方向(フィラメントを巻き取る方向であり、
図4(A)の例では反時計回り方向)に徐々に回転させてフィラメント11を少しずつ巻き取ってダンサーアーム31を下方に揺動させてステップS50に進む。
ステップS50にて制御手段60は、ダンサーアームの揺動角度が(逆方向において)第2所定角度以上に達したか否かを判定する。揺動角度が(逆方向において)第2所定角度以上に達している場合(Yes)はステップS55に進み、揺動角度が(逆方向において)第2所定角度に達していない場合(No)はステップS45に戻る。
なお第2所定角度は、ダンサーアーム31の揺動可能範囲における他方端または他方端の近傍に相当する角度である。
ステップS55に進んだ場合、ダンサー30の状態及びボビン10の状態は、
図4(A)に示した状態である。ステップS55にて制御手段60は、ボビン回転駆動手段20の動作を停止させ、揺動角度検出手段34からの検出信号に基づいてダンサーアーム31の揺動角度を検出し、回転検出手段23からの検出信号に基づいてボビンの回転角度を検出する。
そして制御手段60は、ステップS55にて検出したダンサーアーム31の揺動角度からステップS25にて検出したダンサーアーム基準位置(STD)の揺動角度の差分である揺動角度θ2(
図4(A)参照)を算出して記憶する。また制御手段60は、ステップS55にて検出したボビンの回転角度からステップS25にて検出したボビン基準位置(STB)の回転角度の差分である回転角度θb(
図4(A)参照)を算出して記憶し、ステップS60に進む。
【0027】
ステップS60にて制御手段60は、ダンサーアーム31の揺動角度θ1、θ2と、ボビンの回転角度θa、θbと、ダンサーアーム長さLD(
図3(B)、
図4(A)参照)と、に基づいて、ボビン10におけるフィラメントが巻回されている個所の径であるボビン径を、以下の(式1)を用いて算出してステップS65に進む。
ここで、ボビンの半径をRx、ボビンの回転角度である(θa+θb)=θcとすると、以下の式を得ることができる。
ボビンの回転によって巻き出されたフィラメントの長さ(LX)=ダンサーアームの揺動によって巻き出されたフィラメントの長さ(LY)
LX=2πRx*θc/360
LY=2*LD*[sin(θ1)+sin(θ2)]
LX=LYであるので、
2πRx*θc/360=2*LD*[sin(θ1)+sin(θ2)]
従って、ボビン径(半径)=Rx=360*LD*[sin(θ1)+sin(θ2)]/(π*θc) (式1)
また、上記の(式1)にてボビン径(半径)を算出する方法の他の方法としては、予め、ボビンの回転角度とダンサーアームの揺動角度とダンサーアームの長さに基づいたボビン径のマップ等を制御手段に接続された記憶手段に記憶しておき、予め判っているダンサーアームの長さと、求めたボビンの回転角度とダンサーアームの揺動角度と、マップ等に基づいて、ボビン径を求めるように構成することも可能である。
【0028】
ステップS65にて制御手段60は、
図4(B)に示すように、ダンサーアーム31の揺動位置がダンサーアーム基準位置(STD)となるように、ボビン回転駆動手段20を制御してボビン10を回転させる。そしてエアシリンダ36に、強化繊維プリフォームの形成用の張力を付与するための所定圧力のエアを供給してステップS70に進む。
ステップS70にて制御手段60は、初期設定等を実行し、ステップS75に進む。例えば制御手段60は、求めたボビン径に基づいたフィラメントの残量を表示手段に表示(残量表示)させたり、設定された巻き出し速度と求めたボビン径とに基づいたボビン回転駆動手段等を制御するための初期パラメータの設定等を行ったりする。なお、残量表示と初期パラメータ設定の少なくとも一方を、制御手段60にて自動的に行うようにしてもよい。
ステップS75にて制御手段60は、ステップS70にて設定した初期パラメータに基づいて、ボビン回転駆動手段の制御を開始してフィラメントの巻き出し制御を開始する。
なお、以降の処理は、ボビン径を自動的に算出しない既存の制御と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0029】
以上、本実施の形態にて説明したフィラメントワインディング方法を実施することで、新しいボビンを取り付けた際、自動的にボビン径を算出させることができる。また、新たにボビン径の検出手段を追加する必要もない。
これにより、作業者の手間と時間を低減し、強化繊維プリフォームを形成する作業を、より効率よく行うことができる。また作業者がノギス等を用いて測定していた従来と比較して、測定したボビン径のバラツキの低減と精度の向上が期待できるとともに、新たにボビン径の検出手段を追加することもないので、コストの上昇も抑えることができる。
また、ダンサーアームを、揺動可能範囲内でより大きな角度範囲で揺動させることで、より正確なボビン径を求めることができる。
また、ボビン径を自動的に求めた後、求めたボビン径を用いて、フィラメントの残量表示と初期パラメータの設定の少なくとも一方を自動的に行うことで、作業者の手間と時間を低減するとともに、作業者の入力ミスを回避し、強化繊維プリフォームを形成する作業を、より効率よく行うことができる。
また、
図2のフローチャートを用いて説明したフィラメントワインディング方法を実施するためのフィラメントワインディング装置を、
図1に示した構成にて実現することが可能である。
【0030】
本発明のフィラメントワインディング方法及びフィラメントワインディング装置1の処理、構成、構造、形状等は、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
また、以上(≧)、以下(≦)、より大きい(>)、未満(<)等は、等号を含んでも含まなくてもよい。