特許第6404019号(P6404019)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6404019耐力壁フレームおよび耐力壁フレーム使用建物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6404019
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】耐力壁フレームおよび耐力壁フレーム使用建物
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/56 20060101AFI20181001BHJP
【FI】
   E04B2/56 643A
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-143032(P2014-143032)
(22)【出願日】2014年7月11日
(65)【公開番号】特開2016-17389(P2016-17389A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2017年6月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086793
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅士
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(72)【発明者】
【氏名】西村 健
(72)【発明者】
【氏名】永田 篤史
(72)【発明者】
【氏名】坂口 知弘
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−066064(JP,A)
【文献】 特開平09−256514(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0107352(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/56
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣合う一対の柱に上下に並ぶ複数の耐力ユニットの各両端が接合され、前記複数の耐力ユニットのうちのいずれか2つの耐力ユニット間に窓用の開口部が形成された耐力壁フレームであって、
前記2つの耐力ユニットは、いずれも上下に離れた一対の横桟と、これら上下の横桟間に介在するせん断負担部材とを有し、かつ互いに前記一対の横桟間の上下高さが異なり、 前記各耐力ユニットは、いずれも前記横桟の両端がそれぞれ前記隣合う一対の柱に直接に接合されている、ことを特徴とする耐力壁フレーム。
【請求項2】
請求項1に記載の耐力壁フレームにおいて、前記耐力ユニットは、前記上下に離れた一対の横桟と、これら横桟間に長手方向の複数箇所でそれぞれ接合されて前記せん断負担部材となる複数の縦桟とでなるはしご形である耐力壁フレーム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の耐力壁フレームにおいて、前記開口部の上側に配置される前記耐力ユニットの数および下側に配置される前記耐力ユニットの数のうちのいずれか一方または両方が複数である耐力壁フレーム。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の耐力壁フレームを複数備えた建物であって、前記耐力壁フレームとして、互いに前記開口部の上下寸法および上下位置のいずれか一方または両方が異なり、かつ同じ構造性能値を持つ複数の仕様の耐力壁フレームを含む耐力壁フレーム使用建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄骨系等の建物に適用され、高さ方向の中間部に窓用の空間部を有する耐力壁フレームおよび耐力壁フレーム使用建物に関する。
【背景技術】
【0002】
窓用の開口部を設けることが可能な耐力壁フレームとして、図12に示すように、隣合う一対の柱2間にはしご形の耐力ユニット3を架け渡して設けた構成が知られている(例えば特許文献1)。はしご形の耐力ユニット3は、上下に離れた一対の横桟4,5と、これら上下の横桟4,5に上下両端がそれぞれ接合された複数の縦桟6とでなり、これら複数の縦桟6がせん断力負担部材として機能する。
【0003】
上記はしご形の耐力ユニット3を備えた耐力壁フレーム1は、地震等により建物に作用する水平力が、両側の柱2から耐力ユニット3の上下の横桟4,5に伝わり、せん断力負担部材である複数の縦桟6により前記水平力が負担されるため、水平力に抵抗する架構を構成する。また、耐力ユニット3の複数の縦桟6および上下の横桟4,5、並びに左右の柱2からなる耐力壁フレーム1の全体に応力が分散するため、変形能力が高くてねばり強い架構となる。これらのことから、建物に優れた耐震性能を与えることができる。
【0004】
耐力ユニット3が左右の柱2間に横方向に延びて設けられるため、上下の耐力ユニット3間に、左右の柱2間に亘る幅の広い開口部10を設けることができる。しかも、この耐力壁フレーム1は、前記のように応力が分散して支持されるため、左右の柱2間の幅が広くても適用することができる。
【0005】
また、同特許文献1には、開口部の位置や大きさが異なる耐力壁フレームを、同じ仕様の耐力ユニットの設置位置や設置個数を異ならせることで構成した例が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−066064号公報
【特許文献2】特開2014−047469号公報
【特許文献3】特開2013−144909号公報
【特許文献4】特開2005−325637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、はしご形の耐力ユニットを備えた耐力壁フレームの例(同文献の図7図12図19)のいずれについても、1つの耐力フレームに設けられる複数の耐力ユニットがすべて同じ仕様である。各耐力ユニットの仕様が同じであると、1棟の建物に開口部の上下寸法や上下位置が互いに異なる複数の耐力壁フレームを設ける場合、それぞれの耐力壁フレームで構造性能値(剛性等)を揃えるのが難しい。適切な設計を行わなければ、開口部の種類に対してその種類だけの構造性能値を持つ耐力壁フレームとなる。各耐力壁フレームで構造性能値が異なっていると、建物全体の構造計算が煩雑となる。開口部の種類だけ耐力壁フレームの構造性能値を持てば、耐力壁フレームの種類が多くなり、構造計画上煩雑となる。
【0008】
この発明の目的は、窓用の開口部の上下寸法や上下位置が違っていても構造性能値を同じにすることができる耐力壁フレームを提供することである。
この発明の他の目的は、外壁が耐力壁フレームからなる部屋ごとに窓の大きさや高さを異ならせることができる耐力壁フレーム使用建物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の耐力壁フレームは、隣合う一対の柱に上下に並ぶ複数の耐力ユニットの各両端が接合され、前記複数の耐力ユニットのうちのいずれか2つの耐力ユニット間に窓用の開口部が形成された耐力壁フレームであって、前記2つの耐力ユニットは、いずれも上下に離れた一対の横桟と、これら上下の横桟間に介在するせん断負担部材とを有し、かつ互いに前記一対の横桟間の上下高さが異なり、前記各耐力ユニットは、いずれも前記横桟の両端がそれぞれ前記隣合う一対の柱に直接に接合されている、ことを特徴とする。
【0010】
この構成によると、地震等により建物に作用する水平力が、両側の柱から耐力ユニットの上下の横桟に伝わり、上下の横桟間に介在するせん断力負担部材により前記水平力が負担されるため、水平力に抵抗する架構を構成できる。また、耐力ユニットのせん断力負担部材および上下の横桟、並びに左右の柱からなる耐力壁フレームの全体に応力が分散するため、変形能力が高くてねばり強い架構を構成できる。これらのことから、建物に優れた耐震性能を与えることができる。
【0011】
開口部の上下両側に配置される2つの耐力ユニットとして、開口部の上下寸法や上下位置の違いに応じて、互いに一対の横桟間の上下高さが異なる適正な耐力ユニットをそれぞれ選択することにより、1棟の建物に設けられる複数の耐力フレームの開口部の上下寸法や上下位置が互いに違っていても、各耐力壁フレームの各構造性能値を揃えることができる。それにより、建物全体の構造計算が簡略になる。
【0012】
この発明において、前記耐力ユニットは、前記上下に離れた一対の横桟と、これら横桟間に長手方向の複数箇所でそれぞれ接合されて前記せん断負担部材となる複数の縦桟とでなるはしご形であっても良い。
前記耐力ユニットが複数の縦桟を有するはしご形であると、これら複数の縦桟で分担してせん断力を負担するため、応力が分散し、塑性変形能力が向上して、より一層ねばり強い架構を構成できる。
【0013】
この発明において、前記開口部の上側に配置される前記耐力ユニットの数および下側に配置される前記耐力ユニットの数のうちのいずれか一方または両方が複数であっても良い。
この場合、開口部の上下寸法や上下位置の違いに応じて、開口部の上側と下側にそれぞれ配置される耐力ユニットの仕様、数、並び順等の適正な組み合わせを選択することにより、1棟の建物に設けられる複数の耐力壁フレームの各構造性能値をより一層揃え易くなる。
【0014】
この発明の耐力壁フレーム使用建物は、前記耐力壁フレームを複数備え、前記耐力壁フレームとして、互いに前記開口部の上下寸法および上下位置のいずれか一方または両方が異なり、かつ同じ構造性能値を持つ複数の仕様の耐力壁フレームを含む。
1棟の建物に複数の仕様の耐力壁フレームを設けることで、外壁が耐力壁フレームからなる部屋ごとに窓の大きさや高さを異ならせることができ、各部屋の使用目的に応じて多様な建物設計をすることができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明の耐力壁フレームは、隣合う一対の柱に上下に並ぶ複数の耐力ユニットの各両端が接合され、前記複数の耐力ユニットのうちのいずれか2つの耐力ユニット間に窓用の開口部が形成された耐力壁フレームであって、前記2つの耐力ユニットは、いずれも上下に離れた一対の横桟と、これら上下の横桟間に介在するせん断負担部材とを有し、かつ互いに前記一対の横桟間の上下高さが異なり、前記各耐力ユニットは、いずれも前記横桟の両端がそれぞれ前記隣合う一対の柱に直接に接合されているため、窓用の開口部の上下寸法や上下位置が違っていても構造性能値を同じにすることができる。
【0016】
この発明の耐力壁フレーム使用建物は、前記耐力壁フレームを複数備えた建物であって、前記耐力壁フレームとして、互いに前記開口部の上下寸法および上下位置のいずれか一方または両方が異なり、かつ同じ構造性能値を持つ複数の仕様の耐力壁フレームを含むため、外壁が耐力壁フレームからなる部屋ごとに窓の大きさや高さを異ならせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】この発明の一実施形態にかかる耐力壁フレームの正面図である。
図2】(A),(B),(C)は同耐力壁フレームに用いられる互いに仕様が異なる各耐力ユニットの正面図である。
図3図2(A)に示す耐力ユニットの部分平面図および部分分解斜視図である。
図4図2(B)に示す耐力ユニットの部分平面図および部分分解斜視図である。
図5図2(C)に示す耐力ユニットの部分平面図および部分分解斜視図である。
図6】この発明の異なる実施形態にかかる耐力壁フレームの正面図である。
図7】この発明のさらに異なる実施形態にかかる耐力壁フレームの正面図である。
図8】はしご形以外の耐力ユニットの例を示す正面図である。
図9】はしご形以外の耐力ユニットの他の例を示す正面図である。
図10】はしご形以外の耐力ユニットのさらに他の例を示す正面図である。
図11】この発明の一実施形態にかかる耐力壁フレーム使用建物の概略構成図である。
図12】従来の耐力ユニットを備えた耐力壁フレームの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は、この発明の第1の実施形態を示す。この耐力壁フレーム1は、隣合う柱2,2間に複数の耐力ユニット3A,3B,3Cを高さ方向に並べて架設したものであり、下側の2つの耐力ユニット3A,3Bと上側の1つの耐力ユニット3Cとの間に、窓用の開口部10が設けられている。この開口部10に設けられる窓は「腰窓」と呼ばれるもので、室内で立っている居住者の目線の高さに位置する。柱2は、建物の強度の負担をするいわゆる軸柱である。柱2は、角パイプまたはその他の形鋼からなる。各柱2は、上端が梁(図示せず)に接合され、下端が梁または基礎または土台(図示せず)に接合される。この耐力壁フレーム1は、例えば柱長さ2630mm、天井高2400mmの建物に適用される。
【0019】
前記各耐力ユニット3A,3B,3Cはいずれも、上下に離れた一対の横桟4,5と、これら上下の横桟4,5間に長手方向の複数箇所でそれぞれ接合された複数の縦桟6とでなる横向きのはしご形である。上下の横桟4,5の両端は、柱2に溶接またはボルト接合によって接合される。複数の縦桟6は、耐力壁フレーム1に過大な水平力等が作用した場合に、他の各部材よりも先に損傷するせん断力負担部材である。
【0020】
図2は、耐力ユニット3A,3B,3Cをそれぞれ個別に示す図である。各耐力ユニット3A,3B,3Cは共にはしご形である点では共通するが、それぞれの上下の横桟4,5間の上下高さが異なる点で互いに別仕様となっている。例えば、耐力ユニット3Aの横桟4,5間の上下高さは150mmであり、耐力ユニット3Bの同上下高さは250mmであり、耐力ユニット3Cの同上下高さは375mmである。
【0021】
各耐力ユニット3A,3B,3Cの詳細について個別に説明する。
<耐力ユニット3A>
図2(A)および図3(A),(B)に示すように、上下の横桟4,5は角形鋼管からなり、各縦桟6は溝形鋼からなる。溝形鋼からなる縦桟6の上下両端部は、フランジ部6bが全幅に亘って切り欠かれていて、ウェブ部6aは残されている。縦桟6のフランジ部6bにおける切欠きの縁となるフランジ部6bの上下の端縁を横桟4の下面および横桟5の上面にそれぞれ突き合わせて接合し、かつフランジ部6bよりも上下に突出したウェブ部6aの突出部6aaを横桟4,5の側面に接合することにより、縦桟6と横桟4,5とを接合している。縦桟6のウェブ部6aには、耐力低下用の孔7が1箇所に設けてある。
【0022】
<耐力ユニット3B>
図2(B)および図4(A),(B)に示すように、耐力ユニット3Bの縦桟6の上下寸法が耐力ユニット3Aの縦桟6の上下寸法よりも長いことを除けば、耐力ユニット3Bは、耐力ユニット3Aと同じ構成である。縦桟6のウェブ部6aには、耐力低下用の孔7が長手方向に並んで2箇所に設けてある。
【0023】
<耐力ユニット3C>
図2(C)および図5(A),(B)に示すように、前記耐力ユニット3A,3Bと同様に、上下の横桟4,5は角形鋼管からなり、各縦桟6は溝形鋼からなる。縦桟6は、ウェブ部6aの外面を横桟4,5の壁外向きの側面と同一平面に配置し、縦桟6よりも壁幅方向に若干幅広の接合プレート8を縦桟6の端部と横桟4,5の壁外向きの側面とに跨って重ねて、これら縦桟6と横桟4,5とに接合している。縦桟6のウェブ部6aには、耐力低下用の孔7が、接合プレート8と重ならない範囲で長手方向に並んで2箇所に設けてある。
【0024】
この構成の耐力壁フレーム1は、各耐力ユニット3A,3B,3Cが複数の縦桟6を有するはしご形であるため、これら複数の縦桟6で分担してせん断力を負担する。そのため、応力が分散し、塑性変形能力が向上して、ねばり強い架構を構成できる。このように、はしご形の耐力ユニット3A,3B,3Cを上下方向に並べて配置することで、耐力壁に、両側の柱2,2間に亘る幅の広い開口部10を設けることができ、かつ柱2,2間の幅が広い場合にも適用できる構成としながら、はしご形の利点である応力分散の作用が得られる。
【0025】
また、この例では、せん断力負担部材である縦桟6に孔7を形成することによって弱くしてあるため、地震等によって過大な水平力が作用した場合に、縦桟6が先に破断して柱2や梁(図示せず)は健全な状態を保てる。縦桟6に形成される孔7の数は、縦桟6の上下長さに応じて決定される。
【0026】
このようなはしご形の耐力ユニットでは、一般に、縦桟6の水平断面形状が同じであれば、横桟4,5間の上下高さが高いほど、耐力ユニットとしての曲げ変形が大きく、かつせん断変形が小さい。上記各耐力ユニット3A,3B,3Cを比較した場合、互いに縦桟6と横桟4,5との接合部の構成が少し異なるが前記一般論が適用され、耐力ユニット3A、耐力ユニット3B、耐力ユニット3Cの順に、曲げ変形が大きく、かつせん断変形が小さくなる。この特性を利用して、希望する開口部10の上下寸法や上下位置に合わせて、各耐力ユニット3A,3B,3Cの組み合わせ、数、および配置を変えて耐力壁フレーム1を構成することにより、要求される構造性能値とすることが可能である。
【0027】
図6および図7は、耐力ユニット3A,3B,3Cの組み合わせ、数、および配置を変えた耐力壁フレームを示す。
図6の耐力壁フレーム1は、上側の1つの耐力ユニット3Aと下側の2つの耐力ユニット3C,3Cとの間に、窓用の開口部10が設けられている。すなわち、開口部10の上側と下側とに、互いに仕様が異なる2種類の耐力ユニット3A,3Cが配置されている。図6の耐力壁フレーム1の開口部10は、図1の耐力壁フレーム1の開口部10よりも、少しだけ高さ位置が高く、上下寸法が小さいものとなる。この耐力壁フレーム1は、例えば前記同様の柱長さ2630mm、天井高2400mmの建物に適用される。
【0028】
図7の耐力壁フレーム1は、上側の2つの耐力ユニット3B,3Bと下側の1つの耐力ユニット3Cとの間に、窓用の開口部10が設けられている。また、下側の1つの耐力ユニット3Cのさらに下側に、隣合う柱2,2間に設けた横桟9が配置される。横桟9の両端は、柱2に溶接またはボルト接合によって接合される。この場合も、開口部10の上側と下側とに、互いに仕様が異なる2種類の耐力ユニット3B,3Cが配置されている。図7の耐力壁フレーム1の開口部10は、下端からの高さ位置、および上下寸法が図1の耐力壁フレーム1の開口部10とほぼ同じとなる。この耐力壁フレーム1は、例えば柱長さ2950mm、天井高2720mmの建物に適用される。
【0029】
図1図6図7のいずれの耐力壁フレーム1についても、開口部10の上側と下側とに、互いに一対の横桟4,5間の上下高さが異なる耐力ユニットを、適正な組み合わせ、数、および配置で設けることにより、1棟の建物に設けられる複数の耐力壁フレームの各構造性能値を揃えることができる。それにより、建物全体の構造計算が簡略になる。また、前記各耐力壁フレーム1のように、開口部10の上側に配置される耐力ユニットの数および下側に配置される耐力ユニットの数のうちのいずれかまたは両方を複数とすると、開口部10の上下寸法や上下位置の違いに応じて、開口部10の上側と下側にそれぞれ配置される耐力ユニットの仕様、数、並び順等の適正な組み合わせを選択することにより、1棟の建物に設けられる複数の耐力壁フレームの各構造性能値をより一層揃え易くなる。
【0030】
上記各実施形態の耐力ユニット3A,3B,3Cは、せん断力負担部材を縦桟6としたが、せん断力負担部材は縦桟6以外のものからなっていても良い。
図8の例では、せん断力負担部材が、上下の横桟4,5にそれぞれ接合されて対向する支持部材20,21と、これら支持部材20,21間に接合されたせん断力負担主部材22とでなる構成とされる。せん断力負担主部材22は、極低降伏点鋼のパネル、または孔明きのスキンパネルとする。
【0031】
図9の例では、せん断力負担部材が、上下の横桟4,5間にX字状に配置されてこれら横桟4,5に端部が接合された一対のブレース23と縦桟24とからなる。縦桟24を省略してブレース23だけとしても良い。せん断力負担部材としてブレース23を設けた場合は、ブレース反力で横桟4,5に曲げモーメントが発生することにより、ある程度の震動エネルギーの吸収が見込める。
【0032】
図10の例では、せん断力負担部材が、上下の横桟4,5にそれぞれ接合されて壁厚方向に対面する一対の支持部材25と、これら支持部材25間に介在させた粘弾性材26からなる粘弾性ダンパーからなる。せん断力負担部材を粘弾性ダンパーとした場合は、震動エネルギーの吸収の効果が得られる。
【0033】
図11は、この発明の耐力壁フレームを備えた耐力壁フレーム使用建物の一例を示す。この耐力壁フレーム使用建物30は、2階建てであり、各階の両端の架構が耐力壁フレーム1とされている。これらの耐力壁フレーム1として、図1図6図7の各耐力壁フレーム1を任意に選択して採用することにより、外壁が耐力壁フレーム1からなる部屋ごとに窓31の大きさや高さを異ならせることができ、各部屋の使用目的に応じて多様な建物設計をすることができる。
【0034】
以上に説明した各耐力壁フレーム1はいずれも、柱2および耐力ユニット3A,3B,3Cが鋼材からなる鉄骨造であるが、この発明は木造の耐力壁フレームにも適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1…耐力壁フレーム
2…柱
3A,3B,3C…耐力ユニット
4…上の横桟
5…下の横桟
6…縦桟(せん断力負担部材)
20,21…支持部材(せん断力負担部材)
22…せん断力負担主部材(せん断力負担部材)
23…ブレース(せん断力負担部材)
24…縦桟(せん断力負担部材)
25…支持部材(せん断力負担部材)
26…粘弾性材(せん断力負担部材)
30…耐力壁フレーム使用建物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12