(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被プレス成形品としての素材に対して、その両壁面の少なくとも一方を相対向する内側に凹ますプレス加工を行った後、該プレス加工時に素材内に沿わせていた受け側金型を取り出し可能とするアンダーカット処理機構であって、
前記受け側金型は、前記素材の一端側開口からの進退方向と交差する厚さ方向に複数に分かれ、前記素材内に一端側開口より進入して前記両壁面を内側から支える一対の保持部と、各保持部間に配された中間部と、を少なくとも備え、
前記各保持部は、前記プレス加工時に素材内に沿わせる外面側に、前記素材の両壁面の少なくとも一方にある被加工部に対応して内側に凹んだ逃げ部が設けられ、
前記各保持部は、互いに厚さ方向に離隔して前記逃げ部を除く外面側が前記両壁面の内側に対接する支え位置と、互いに厚さ方向に接近して外面側が前記両壁面の内側から離脱する逃げ位置とに、それぞれ移動可能に支持され、
前記中間部は、前記各保持部間で前記進退方向に移動可能に支持され、前記各保持部間に進入すると各保持部は前記支え位置に移動する一方、前記各保持部間から退出すると各保持部は前記逃げ位置に移動し、
前記各保持部は、互いに対向する内面側に厚さ方向に噛み合う凹凸が設けられ、前記支え位置では前記凹凸の凸部位が前記中間部に当接する一方、前記逃げ位置では前記凹凸が噛み合って、各保持部が合わさった厚さが前記凹凸の凸部位同士を突き合わせた寸法より小さく設定されたことを特徴とするアンダーカット処理機構。
前記各保持部のうち前記逃げ部の周囲における前記凸部位を含む厚さは、前記被プレス成形品の内側に凹んだ被加工部の深さよりも大きく、前記凹凸が噛み合って前記各保持部が合わさった厚さは、前記両壁面の少なくとも一方にある被加工部間の寸法より小さく設定されたことを特徴とする請求項1に記載のアンダーカット処理機構。
前記支持ベースに、前記各保持部の一端側をそれぞれ前記中間部の進退方向と交差して、互いに接近ないし離隔する方向へ案内するガイド手段を設けたことを特徴とする請求項4に記載のアンダーカット処理機構。
前記支持ベースと前記中間部の駆動手段とは、それぞれ基台上に取り付けられて一体のユニットとして形成されたことを特徴とする請求項4または5に記載のアンダーカット処理機構。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のプレス成形装置としては、例えばバーリング加工装置が知られている。すなわち、穴の縁にフランジを成形する加工装置である。これは、金属である被プレス成形品としての素材に予め下穴を穿設しておき、該下穴に対して、その内径よりも大きな外径のバーリングパンチを押し込み、下穴の縁を広げながらフランジを成形するものであった。
【0003】
かかるバーリング加工装置においては、素材の被加工部に下穴を開ける穿設作業時の押圧力と、バーリング加工時のバーリングパンチによる押圧力や引き上げ力が働くことにより、被加工部に歪みや変形が生じやすく、これらの不具合を防ぐために、素材の被加工部の内側にダイス(受け側金型)を配置した状態で、下穴の穿設作業やバーリング加工を行う工夫がなされている。
【0004】
ただし、素材が単純な板状のものではなく、相対向する両壁面を有するような立体形状として、例えば管状であったり、さらに途中で屈曲しているような場合には、次のような問題があった。すなわち、管状の素材に対して内側に対向するようなバーリング加工を行うと、素材内に沿わせていたダイスが被加工部に干渉することになり、ダイスを被プレス成形品の外部へ取り外すことができないという問題があった。
【0005】
このような問題を解消し得る従来の技術として、例えば、特許文献1に記載されたハイドロフォームを用いた装置が知られている。これは、ハイドロフォーム金型に、金属管の一部を穿孔する穿孔手段と、該穿孔手段の周囲に円筒状で外側が凸状の肩部を有する分割金型を組み込み、前記金属管に内圧を負荷してハイドロフォーム加工を行った後に、前記穿孔手段により金属管の一部を穿孔した後、肩部により前記穿孔した穴の周囲を金属管の内面側に押し込み、内面側にバーリング加工する装置である。
【0006】
同様に、前述の問題を解消し得る従来の技術として、他にも例えば、特許文献2に記載された入れ子および鋼球を使用したバーリング加工装置が知られている。これは、下穴が形成された金属管の内部に傾斜部を有する治具を挿入するように配置して、治具の傾斜部を下穴の位置に合わせて治具と金属管とを固定した後、金属管の内部でこの傾斜部に下穴よりも直径の大きな鋼球を押し付けることにより、下穴の位置から鋼球を金属管の外部に押し出すことによりバーリング加工を行う装置である。
【0007】
しかしながら、前述した特許文献1に記載された従来の技術では、成形サイクルが長く加工に多くの時間がかかるという問題があった。また、穿孔手段や凸状の肩部を含むパンチ圧入機構が複雑で高価なものになり、コスト高を招くという問題があった。さらに、高圧を生成するための特別な設備も必要となり、装置全体が大型で高価なものとなり、汎用に適さないという問題もあった。
【0008】
また、前述した特許文献2に記載された従来の技術では、特許文献1の場合と同様に、成形サイクルが長く加工に多くの時間がかかるという問題があった。また、複数箇所において同時に成形加工することはできないという問題があった。さらに、金属管の外側に突出するようなバーリング形状しか成形することができないという問題もあった。
【0009】
以上のような従来のプレス成形装置の問題に鑑みて、本件出願人は、特許文献3に記載されたアンダーカット処理機構を既に提案している。これは、素材の両壁面を相対向する内側に凹ますプレス加工時に素材内に沿わせる受け側金型として、素材に対する進退方向と交差する厚さ方向に3分割され、素材内に一端側開口より挿入されて両壁面を内側から支える一対の保持部と、各保持部間に挟まれて各保持部を互いに厚さ方向に接近ないし離隔させる中間部と、を備えるものであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述した特許文献3に示す従来の技術では、
図8に原理を模式的に示すように、一対の保持部1,2と、各保持部1,2間に挟まれた中間部3と、を備えている。
図8(a)に示すプレス加工時には、各保持部1,2間に中間部3が進入して各保持部1,2は互いに厚さ方向に離隔し、それぞれ外面側が図示省略した素材の両壁面の内側に対接する。ここで、プレス加工時における受け側金型の全体の厚さは図中のL1である。
【0012】
一方、
図8(b)に示す型抜き時には、各保持部1,2間から中間部3が退出して各保持部1,2は互いに厚さ方向に近接して、それぞれ外面側が素材の両壁面の内側から離脱する。このような型抜き時においては、互いに近接した各保持部1,2の先端同士がぶつかるため(図中の楕円囲い)、受け側金型の全体の厚さは図中のL2となり、これより縮めることはできなかった。
【0013】
より具体的には、
図9に示す一例において、
図9(a)に示すプレス加工時には、上下の各保持部1A,2Aは、中間部3Aを間に挟んで互いに厚さ方向に離隔しており、図示省略したパンチが嵌入する凹んだ逃げ部を除く外面側が素材4の両壁面の内側に対接している。これにより、プレス加工時には、素材4の被加工部(穴の縁のフランジ)の周囲に歪みや変形が生じることを防止することができる。
【0014】
しかしながら、素材4の被加工部の寸法(穴の縁のフランジの深さ)によっては、
図9(b)に示す型抜き時に、素材4(の穴の縁のフランジ)が各保持部1A,2Aの逃げ部の端に引っ掛かり、型抜きができない虞があった。これは、前述の
図8(b)でも説明したように、各保持部1A,2Aの先端同士が衝突することにより、それ以上は受け側金型の先端側全体の厚さを縮めることができないことが原因であった。
【0015】
このような問題の改善策として、例えば、
図10に示すような工夫も考えられる。
図10(a)では、各保持部1A,2Aの先端側の板厚を全体的に薄くしている。かかる場合には、素材4の被加工部である穴の縁のフランジが各保持部1A,2Aの逃げ部を通じて中間部3Aに干渉しやすくなるため(図中の楕円囲い)、当該フランジの深さが極めて限定されてしまう。よって、プレス加工時に各保持部1A,2Aが、本来のダイスとしての役割を果たすことができないという問題がある。また、各保持部1A,2Aの先端側の強度も著しく低下するという問題もある。
【0016】
また、
図10(b)では、各保持部1A,2Aの最初に対接する先端部分の板厚だけを薄くしている。かかる場合には、各保持部1A,2Aの先端部分と中間部3Aとの間に隙間が生じてしまう(図中の楕円囲い)。よって、プレス加工時のパンチの押圧力に対して、中間部3Aと接していない各保持部1A,2Aの先端側では荷重に耐えきれない虞があった。これにより、素材4も変形してしまい、期待通りの成形が困難になるという新たな問題が生じていた。
【0017】
本発明は、以上のような従来の技術が有する問題点に着目してなされたもので、成形サイクルが短くて済み、構成が簡単で組み立てに手間と時間がかからず、コストダウンを実現することができ、コンパクトに構成することが可能となり省スペース化の要請に応じることができ、しかも、構造上の強度低下を招くことなく、プレス加工時に素材を強固に保持して変形を防止することができると共に、型抜き時には広い寸法範囲でアンダーカットとなる被加工部を容易に型抜きすることができるアンダーカット処理機構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前述した目的を達成するための本発明の要旨とするところは、以下の各項の発明に存する。
[1]被プレス成形品としての素材(70)に対して、その両壁面の少なくとも一方を相対向する内側に凹ますプレス加工を行った後、該プレス加工時に素材(70)内に沿わせていた受け側金型(20)を取り出し可能とするアンダーカット処理機構であって、
前記受け側金型(20)は、前記素材(70)の一端側開口からの進退方向と交差する厚さ方向に複数に分かれ、前記素材(70)内に一端側開口より進入して前記両壁面を内側から支える一対の保持部(21,22)と、各保持部(21,22)間に配された中間部(30)と、を少なくとも備え、
前記各保持部(21,22)は、前記プレス加工時に素材(70)内に沿わせる外面側に、前記素材(70)の両壁面の少なくとも一方にある被加工部に対応して内側に凹んだ逃げ部(23)が設けられ、
前記各保持部(21,22)は、互いに厚さ方向に離隔して前記逃げ部(23)を除く外面側が前記両壁面の内側に対接する支え位置と、互いに厚さ方向に接近して外面側が前記両壁面の内側から離脱する逃げ位置とに、それぞれ移動可能に支持され、
前記中間部(30)は、前記各保持部(21,22)間で前記進退方向に移動可能に支持され、前記各保持部(21,22)間に進入すると各保持部(21,22)は前記支え位置に移動する一方、前記各保持部(21,22)間から退出すると各保持部(21,22)は前記逃げ位置に移動し、
前記各保持部(21,22)は、互いに対向する内面側に厚さ方向に噛み合う凹凸(26)が設けられ、前記支え位置では前記凹凸(26)の凸部位(26a)が前記中間部(30)に当接する一方、前記逃げ位置では前記凹凸(26)が噛み合って、各保持部(21,22)が合わさった厚さが前記凹凸(26)の凸部位(26a)同士を突き合わせた寸法より小さく設定されたことを特徴とするアンダーカット処理機構。
【0019】
[2]前記各保持部(21,22)のうち前記逃げ部(23)の周囲における前記凸部位(26a)を含む厚さは、前記被プレス成形品の内側に凹んだ被加工部の深さよりも大きく、前記凹凸(26)が噛み合って前記各保持部(21,22)が合わさった厚さは、前記両壁面の少なくとも一方にある被加工部間の寸法より小さく設定されたことを特徴とする前記[1]に記載のアンダーカット処理機構。
【0020】
[3]前記中間部(30)の両面には、前記各保持部(21,22)の間に進入するに連れて各保持部(21,22)の間の距離を拡げるテーパーがつけられ、
前記各保持部(21,22)の内面側は、前記凹凸(26)を含めて前記テーパーの傾斜に合わせて傾斜していることを特徴とする前記[1]または[2]に記載のアンダーカット処理機構。
【0021】
[4]前記各保持部(21,22)は、それぞれ一端側が支持ベース(40)に案内されるように支持され、
前記中間部(30)は、前記進退方向に駆動可能に支持され、前記支持ベース(40)を介して前記各保持部(21,22)間に配されたことを特徴とする前記[1],[2]または[3]に記載のアンダーカット処理機構。
【0022】
[5]前記支持ベース(40)に、前記各保持部(21,22)の一端側をそれぞれ前記中間部(30)の進退方向と交差して、互いに接近ないし離隔する方向へ案内するガイド手段(42)を設けたことを特徴とする前記[4]に記載のアンダーカット処理機構。
【0023】
[6]前記支持ベース(40)と前記中間部(30)の駆動手段(50)とは、それぞれ基台(60)上に取り付けられて一体のユニットとして形成されたことを特徴とする前記[4]または[5]に記載のアンダーカット処理機構。
【0025】
前記本発明は次のように作用する。
前記[1]に記載のアンダーカット処理機構によれば、素材(70)にプレス加工を行う時は、予め受け側金型(20)を素材(70)内で位置決めした後、受け側金型(20)の一対の保持部(21,22)間に中間部(30)を進入させる。このとき、各保持部(21,22)は、互いに厚さ方向に離隔し、外面側(逃げ部(23)を除く)が素材(70)の両壁面に内側から対接する支え位置に移動する。このような状態で、素材(70)の両壁面の少なくとも一方にある被加工部を外側から押圧し、被加工部を内側に凹ますプレス加工を行う。ここで素材(70)の両壁面は、上下の壁面でも両側の壁面でもかまわない。
【0026】
プレス加工時に、素材(70)の両壁面は、被加工部の周囲も含めて加工が妨げられない範囲で、前記各保持部(21,22)によって内側から支えられている。ここで、各保持部(21,22)の間には前記中間部(30)が挟まっており、これらを合わせた受け側金型(20)において、プレス加工により荷重を受ける部位では、その厚さ方向に各保持部(21,22)と中間部(30)が重なり合った状態にある。これにより、プレス加工に伴って被加工部の周囲が過度に内側に撓んで変形する虞はなく、被加工部の周囲における歪みや変形を防止することができる。
【0027】
プレス加工後は、受け側金型(20)の中間部(30)を各保持部(21,22)間から退出させることにより、各保持部(21,22)は互いに厚さ方向に接近し、それぞれ外面側が素材(70)の両壁面から離脱する逃げ位置に移動する。各保持部(21,22)は間に中間部(30)が介在しない箇所では、互いに対向する内面側が対接するが、それぞれの内面側には、厚さ方向に噛み合う凹凸(26)が設けられている。よって、各保持部(21,22)の内面側は、前記支え位置では凹凸(26)の凸部位(26a)で中間部(30)に当接することになるが、逃げ位置では前記凹凸(26)が噛み合うことになる。
【0028】
これにより、前記逃げ位置で各保持部(21,22)が合わさった実際の厚さは、前記凹凸(26)の凸部位(26a)同士を突き合わせた時の厚さよりも、小さく抑えることができる。従って、各保持部(21,22)における構造上の強度低下を招くことなく、型抜き時には被プレス成形品の被加工部を回避するための厚さの伸縮幅を大きく確保することが可能となる。そのため、受け側金型(20)は被プレス成形品内で被加工部に引っ掛かることなく、容易に外部に取り出すことができる。なお、「前記凹凸(26)の凸部位(26a)同士を突き合わせた」という表現は、実際の凹凸(26)において凸部位(26a)同士が突き合うことはないが、便宜上仮定の動作での寸法と対比するためのものである。
【0029】
前記[2]に記載のアンダーカット処理機構によれば、前記各保持部(21,22)のうち逃げ部(23)の周囲における凹凸(26)の凸部位(26a)を含む箇所の厚さは、被プレス成形品の内側に凹んだ被加工部の深さよりも大きい。従って、プレス加工時に被加工部の先端が、各保持部(21,22)にある逃げ部(23)を通じて中間部(30)に干渉する虞はない。
【0030】
また、各保持部(21,22)の凹凸(26)が互いに噛み合って重なり合ったときの厚さは、被プレス成形品の両壁面の少なくとも一方にある被加工部間の寸法より小さい。従って、型抜き時に受け側金型(20)を取り出すときに、各保持部(21,22)の上下端が被プレス成形品内で被加工部に引っ掛かることはなく、容易に取り出すことができる。
【0031】
前記[3]に記載のアンダーカット処理機構によれば、受け側金型(20)の中間部(30)の両面には、各保持部(21,22)の間に進入するに連れて各保持部(21,22)の間の距離を拡げるテーパーがつけられている。また、各保持部(21,22)の内面側は、前記凹凸(26)を含めてテーパーの傾斜に合わせて傾斜している。
【0032】
このような簡易な構成により、中間部(30)を各保持部(21,22)の間に進退させることで、各保持部(21,22)を互いに離隔する支え位置と互いに接近する逃げ位置に容易に移動させることができる。なお、前述したように各保持部(21,22)の内面側は、前記支え位置では凹凸(26)の凸部位(26a)が中間部(30)に当接するが、凸部位(26a)の高さを前記テーパーの傾斜面に揃えることで、中間部(30)に対する接触面積を増やすことができる。
【0033】
前記[4]に記載のアンダーカット処理機構によれば、各保持部(21,22)は、それぞれ一端側が支持ベース(40)に案内されるように支持される。また、中間部(30)は、各保持部(21,22)に対して進退方向に駆動可能に支持されており、前記支持ベース(40)を介して各保持部(21,22)間に配される。このような構成により、受け側金型(20)の複数のパーツを支持ベース(40)を介してユニットとしてまとめることができる。
【0034】
前記[5]に記載のアンダーカット処理機構によれば、前記支持ベース(40)に、前記各保持部(21,22)の一端側をそれぞれ前記中間部(30)の進退方向と交差して、互いに接近ないし離隔する方向へ案内するガイド手段(42)を設けた。これにより、中間部(30)を各保持部(21,22)の間に進退させるに伴って、各保持部(21,22)を互いに離隔する支え位置と互いに接近する逃げ位置とに確実に案内することができる。また、各保持部(21,22)の各位置における位置ずれを防止することができる。
【0035】
前記[6]に記載のアンダーカット処理機構によれば、支持ベース(40)と中間部(30)の駆動手段(50)とを、それぞれ基台(60)上に取り付けて一体のユニットとして形成する。これにより、受け側金型(20)を支持ベース(40)と中間部(30)の駆動手段(50)ごとまとめて取り扱うことができ、容易にプレス加工前の素材(70)に対して位置調整を行うことができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明に係るアンダーカット処理機構によれば、被プレス成形品としての素材の両壁面を相対向する内側に凹ますプレス加工を行った後、該プレス加工時に素材内に沿わせていた受け側金型を外部に容易に取り出すことができ、成形サイクルが短くて済み、構成が簡単で組み立てに手間と時間がかからず、コストダウンを実現することができ、コンパクトに構成することが可能となり省スペース化の要請に応じることができる。
しかも、受け側金型の構造上の強度低下を招くことなく、プレス加工時に素材を強固に保持して変形を防止することができると共に、型抜き時には広い寸法範囲でアンダーカットとなる被加工部を容易に型抜きすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面に基づき本発明を代表する実施の形態を説明する。
先ず、
図1に基づいてアンダーカット処理機構の基本的な原理を説明する。本アンダーカット処理機構は、被プレス成形品としての素材に対して、その両壁面の少なくとも一方を相対向する内側に凹ますプレス加工を行った後、該プレス加工時に素材内に沿わせていた受け側金型10を取り出し可能とするものである。
【0039】
図1は、アンダーカット処理機構の要部である受け側金型10の動作を模式的に示す説明図である。
図1(a)は、プレス加工時における受け側金型10の状態を、図中左から斜視図、側面図、正面図で示し、同図(b)は、型抜き途中の工程における受け側金型10の状態を、同じく図中左から斜視図、側面図、正面図で示す。また、同図(c)は、型抜き時における受け側金型10の状態を、同じく図中左から斜視図、側面図、正面図で示している。
【0040】
図1で模式的に示した受け側金型10は、厚さ方向に複数に分かれており、一対の保持部11,12と、各保持部11,12間に配された中間部13と、を少なくとも備えて成る。ここで各保持部11,12および中間部13は、それぞれ1つの部品から成るものに限定されることはなく、複数の部品を組み合わせて構成しても良い。例えば中間部13を、左右に分かれた2部品から構成するようにしても構わない。
【0041】
各保持部11,12は、互いに厚さ方向に離隔した支え位置と、厚さ方向に接近した逃げ位置とに、それぞれ移動可能に支持される。中間部13は、各保持部11,12間で進退方向(
図1の側面図中で左右の方向)に移動可能に支持され、各保持部11,12間への進入に伴い各保持部11,12を支え位置に移動させる一方、各保持部11,12間からの退出に伴い各保持部11,12を逃げ位置に移動させる。また、中間部13の両面には、各保持部11,12の間に進入するに連れて各保持部11,12の間の距離を拡げるテーパーがつけられている。各保持部11,12の内面側は、中間部13のテーパーの傾斜に合わせて傾斜している。
【0042】
そして、各保持部11,12には、互いに対向する内面側に厚さ方向に噛み合う凹凸14が設けられている。かかる凹凸14は、保持部11,12の水平に配された外面側と平行な内面側の基準面に対して前記テーパーの傾斜分だけ突出した凸部位14aと、各凸部位14a間で前記テーパーの傾斜分の深さとなる凹部位14bとが、それぞれ交互に並んで進退方向と平行に延びている。凸部位14aと凹部位14bは、互いに噛み合う矩形断面に形成されている。
【0043】
各保持部11,12の凹凸14は、上下で1つ分ずつ両側にずれており、重なり合ったときに噛み合うように設定されている。これにより、各保持部11,12の凹凸14は、前記支え位置では凸部位14aの端面が中間部13の両面に当接するが、前記逃げ位置では互いに噛み合って、各保持部11,12が合わさった厚さ(
図1(c)中のL3)は、凹凸14の凸部位14aの先端同士を突き合わせた寸法(
図1(b)中のL2)よりも小さくなるように設定されている。
【0044】
次に、
図2〜
図5に基づいてアンダーカット処理機構の具体的な構成の一例について説明する。本アンダーカット処理機構は、被プレス成形品としての素材70(
図4参照)に対して、その両壁面を相対向する内側に凹ますプレス加工を行った後、該プレス加工時に素材70内に沿わせていた受け側金型20を素材70外に取り出し可能とするものである。ここで素材70は、両端と一側端側が開口した略コ字形断面のレール状の部材である。この素材70の上下に対向した両壁面に、プレス加工としてバーリング加工を施す場合を例に以下説明する。
【0045】
図2は、アンダーカット処理機構の要部である受け側金型20を示す斜視図である。
図3は、受け側金型20を示す分解斜視図である。
図4は、受け側金型20の動作を示す説明図である。
図4(a)は、プレス加工時における受け側金型20の状態を図中左から斜視図、縦断面図、正面図で示し、同図(b)は、型抜き途中の工程における受け側金型20の状態を同じく図中左から斜視図、縦断面図、正面図で示す。また、同図(c)は、型抜き時における受け側金型20の状態を同じく図中左から斜視図、縦断面図、正面図で示している。
図5は、受け側金型20を含むユニット全体の動作を示す説明図である。
【0046】
図4に示すように、素材70の両壁面には、それぞれ対向する円穴71が予め汎用のパンチング等により穿設されている。前記バーリング加工とは、素材70の両壁面にある円穴71の縁にそれぞれ同時に素材70内に突出するフランジを成形することである。
図4中では図示省略したが、素材70に対して上下より接近可能な一対のバーリングパンチ(
図10(b)参照)が配され、各バーリングパンチは、油圧シリンダ50のピストンロッド51に取り付けられている。
【0047】
前記油圧シリンダ50の駆動によって、素材70の両壁面にある円穴71に各バーリングパンチの先端部が外側から強挿され、同時に上下の円穴71の縁に内側に向うフランジが形成される。このとき、素材70は図示省略した治具等によって固定されている。ここで油圧シリンダ等の構成は一般的であるので詳細な説明は省略する。なお、素材70の具体的な材質は、アルミニウムあるいはアルミニウム合金等、プレス加工が可能な金属であれば何でも良い。
【0048】
なお、素材70の具体的な形状は、図示した略コ字形断面のレール状のものに限らず、略C字形断面のものや、その他、円形または角形の断面を問わず管状の閉鎖断面の素材であっても良い。また、両壁面も互いに対向している部位であれば足り、平面あるいは湾曲した形状であるか否かは問わない。また、被加工部である円穴71の形状も、図示したものに限定されるわけではなく、貫通した孔ではなく単なる凹みも含まれる。さらに、被加工部は、素材70の両壁面に必ず設ける必要はなく、何れか一方の壁面だけに設けるようにしても良い。
【0049】
図2および
図3に示すように、受け側金型20は、素材70の一端側開口からの進退方向と交差する厚さ方向に3つに分かれている。3つに分かれた受け側金型20は、素材70内に一端側開口より進入して、両壁面の被加工部である円穴71周囲を内側から支える一対の保持部21,22と、各保持部21,22間に配された中間部30とから成る。各保持部21,22と中間部30は、3段に重なった状態で素材70の内部空間に合致する略立方体形状のダイスとなる。
【0050】
各保持部21,22には、プレス加工時に素材70の両壁面の内側に沿わせる外面側に、素材70の両壁面にある被加工部(円穴71周囲)に対応して内側に凹む逃げ部23が設けられている。かかる逃げ部23は、円穴71周囲に形成されるフランジとバーリングパンチの先端が、それぞれフランジの高さ分だけ嵌入し得る丸穴として形成されている。
【0051】
各保持部21,22は、互いに厚さ方向に離隔して前記逃げ部23を除く外面側が素材70の両壁面の内側に対接する支え位置と、互いに厚さ方向に接近して外面側が素材70の両壁面の内側から離脱する逃げ位置とに、それぞれ移動可能に支持される。中間部30は、各保持部21,22間で進退方向に移動可能に支持され、各保持部21,22間への進入に伴い各保持部21,22を前記支え位置に移動させる一方、各保持部21,22間からの退出に伴い各保持部21,22を前記逃げ位置に移動させるものである。
【0052】
各保持部21,22は、それぞれ素材70の両壁面の内側に沿わせる外面側のある部位の他、その一端側には後述する支持ベース40によって支持される基端部24,25が一体に設けられている。また、中間部30は、その先端に向って漸次厚さが薄くなる先細りの縦断面形状に形成されている。すなわち、中間部30の上下両面には、各保持部21,22の間に進入するに連れて各保持部21,22の間の距離を拡げるテーパーがつけられている。各保持部21,22の内面側も、中間部30のテーパーの傾斜に合わせて傾斜している。
【0053】
そして、各保持部21,22には、互いに対向する内面側に厚さ方向に噛み合う凹凸26が設けられている。かかる凹凸26は、前述した凹凸14と同様に、保持部21,22の水平に配された外面側と平行な内面側の基準面に対して前記テーパーの傾斜分だけ突出した凸部位26aと、各凸部位26a間で前記テーパーの傾斜分の深さとなる凹部位26bと、が交互に並んで平行に延びるように形成されている。ここで、各凹部位26bの底面は前記基準面上に並んでおり、各凸部位26aの端面は前記テーパーの傾斜面上に並ぶことになる。
【0054】
各保持部21,22の凹凸26も、上下で1つ分ずつ両側にずれており、重なり合った時に、上方の凸部位26aは下方に重なる凹部位26b内に、下方の凸部位26aは上方に重なる凹部位26b内に、それぞれ噛み合うように設定されている。これにより、各保持部21,22の凹凸26は、前記支え位置では凸部位26aの端面が中間部30の両面に当接するが、前記逃げ位置では互いに噛み合って、各保持部21,22が合わさった厚さ(
図4(c)中のL3)は、凹凸26の凸部位26aの先端同士を突き合わせた寸法(
図4(b)中のL2)よりも小さくなるように設定されている。
【0055】
以上のように、
図4(a)に示すプレス加工時には、各保持部21,22の間に中間部30が挟まれており、受け側金型20の先端側全体の厚さをL1だけ稼ぐことができる。また、
図4(b)に示す型抜き途中の工程は、各保持部21,22の先端同士が水平面を間に接するタイミングであり、仮に凹凸26がなければ本来は当該位置で各保持部21,22の先端同士が当接し、このとき受け側金型20の先端側全体の厚さはL2となる。ただし、各保持部21,22に凹凸26を設けたことにより、この噛み合い分だけ受け側金型20の先端側全体の厚さを小さく抑えることができ、
図4(c)に示す型抜き時における受け側金型20の先端側全体の厚さはL3(<L2)となる。
【0056】
図2に示すように、受け側金型20は、素材70(
図4参照)の一端側開口に対向させる支持ベース40より延び出た状態で素材70内に進入させるものである。各保持部21,22は、前記支え位置と前記逃げ位置とに移動可能に、それぞれ一端側が支持ベース40に支持されている。詳しく言えば各保持部21,22の一端側には、前記支持ベース40の内側に挟持された状態で、前記支え位置と前記逃げ位置とに上下方向に案内される基端部24,25が一体的に設けられている。
【0057】
支持ベース40は、左右に対向する一対の板材41,41から成る。各板材41の内面には、それぞれ各保持部21,22の基端部24,25が上下方向に移動可能に案内されるガイド手段が設けられている。かかるガイド手段は、互いに対向する一対の凹溝42,42である。なお、後述するが支持ベース40は、中間部30の駆動手段である油圧シリンダ50と一体のユニットとして形成されている。
【0058】
各保持部21,22の基端部24,25の両側端面には、それぞれ前記各凹溝42に摺動可能に嵌合する一対の凸条27,27が突設されている。ここで各凸条27は、支持ベース40と各保持部21,22との何れに設けても良く、何れか他方に凹溝42を設けることになる。要するに、各保持部21,22が互いに接近ないし離隔する方向へ案内される構造であれば良く、支持ベース40側に設けられた方がガイド手段に該当する。
【0059】
図5に示すように、受け側金型20の中間部30は、前記支持ベース40に対して進退方向に駆動可能に支持される。
図5(a)は、プレス加工時における受け側金型20を含むユニット全体の状態を示し、同図(b)は、型抜き時における受け側金型20を含むユニット全体の状態を示している。支持ベース40と油圧シリンダ50とは、それぞれ基台60上に取り付けられて一体のユニットとして形成されている。
【0060】
中間部30の基端部は、駆動手段である油圧シリンダ50のピストンロッド51に一体に連結されている。かかる油圧シリンダ50の駆動によって、中間部30は、支持ベース40内を通り各保持部21,22間に挟まれた状態で進退方向に移動し、素材70に対しても一端側開口より進退する。ここで油圧シリンダ50は、基台60の基端側に取り付けられており、支持ベース40は、基台60の先端側に取り付けられている。
【0061】
次に、
図2〜
図4に示したアンダーカット処理機構の作用について説明する。
図4において、先ず素材70にプレス加工を行う時は、受け側金型20を素材70内で予め位置決めする。このとき、中間部30を一対の保持部21,22間から退出させて、各保持部21,22を互いに厚さ方向に接近した逃げ位置としておく。受け側金型20の各保持部21,22が素材70の両壁面に内側から沿うように位置決めした後、中間部30を各保持部21,22間に進入させる。
【0062】
中間部30が各保持部21,22間に進入するに連れて、各保持部21,22は互いに厚さ方向に離隔する。そして、各保持部21,22の外面側にある逃げ部23が素材70の両壁面にある円穴71に合致し、当該部位を除いて各保持部21,22の外面側が素材70の両壁面に内側から対接する。かかる支え位置では、受け側金型20の先端側全体の厚さL1が、素材70の両壁面間の寸法に合致する。そして、素材70の両壁面にある円穴71を同時にバーリングパンチによって外側から押圧し、
図4(a)に示すように、円穴71の縁をそれぞれ内側に突出させてフランジを成形するプレス加工(バーリング加工)を行う。
【0063】
このようなプレス加工時には、素材70の両壁面は、被加工部(円穴71周囲)の周囲も含めて加工が妨げられない範囲で、各保持部21,22によって内側から支えられている。ここで、各保持部21,22の間には中間部30が挟まっており、これらを合わせた受け側金型20の先端側において、プレス加工により荷重を受ける部位では、その厚さ方向に各保持部21,22と中間部30が重なり合った状態にある。これにより、プレス加工に伴って被加工部の周囲が過度に内側に撓んで変形する虞はなく、被加工部の周囲における歪みや変形を防止することができる。
【0064】
また、各保持部21,22のうち、逃げ部23の周囲における凹凸26の凸部位26aを含む箇所の厚さは、被プレス成形品(素材70)の内側に凹んだ被加工部の深さ、すなわち、円穴71周囲に形成されるフランジの高さよりも大きい。従って、プレス加工時に被加工部であるフランジの先端が、各保持部21,22にある逃げ部23を通じて中間部30に干渉する虞はない。
【0065】
プレス加工後は、受け側金型20の中間部30を各保持部21,22間から退出させる。すると、各保持部21,22は互いに厚さ方向に接近し、それぞれの外面側が素材70の両壁面から離脱する逃げ位置に向かって移動する。
図4(b)に示す型抜き途中の工程は、各保持部21,22の先端同士が水平面を間に接するタイミングであり、仮に凹凸26がなければ本来は当該位置で各保持部21,22の先端同士が当接し、この時の受け側金型20の先端側全体の厚さはL2となる。
【0066】
各保持部21,22は、これらの間に中間部30が介在しない箇所では、互いに対向する内面側が対接するが、それぞれの内面側には、厚さ方向に噛み合う凹凸26が設けられている。よって、各保持部21,22の内面側は、前記支え位置では凹凸26の凸部位26aが中間部30に当接することになるが、逃げ位置では上下の凹凸26同士が互いに噛み合うことになる。
【0067】
図4(c)に示すように、型抜き時に各保持部21,22が逃げ位置に到達すると、各保持部21,22が合わさった実際の厚さL3は、凹凸26の凸部位26a同士を突き合わせた時の寸法L2よりも、小さく抑えることができる。特に、各保持部21,22の凹凸26が噛み合って重なり合った際の厚さL3は、被プレス成形品の両壁面にある被加工部間の寸法より小さい。
【0068】
これにより、各保持部21,22における構造上の強度低下を招くことなく、型抜き時には被プレス成形品の被加工部を回避するための厚さの伸縮幅を大きく確保することができる。よって、型抜き時に受け側金型20を取り出す際に、受け側金型20の各保持部21,22の上下端が被プレス成形品(素材70)内で被加工部に引っ掛かることなく、外部に容易に取り出すことが可能となる。なお、被プレス成形品とは、素材70をプレス加工した後のものを意味する。
【0069】
また、受け側金型20の中間部30の両面には、各保持部21,22の間に進入するに連れて各保持部21,22の間の距離を拡げるテーパーがつけられている。一方、各保持部21,22の内面側は、前記凹凸26を含めてテーパーの傾斜に合わせて傾斜している。従って、中間部30を各保持部21,22の間に進退させることで、各保持部21,22を互いに離隔する支え位置と互いに接近する逃げ位置に容易に移動させることができる。なお、凹凸26のうち凸部位26aが中間部30に当接するが、凸部位26aの高さをテーパーの傾斜面に揃えることで、中間部30に対して確実に摺接させることができる。
【0070】
さらに、受け側金型20の各保持部21,22は、それぞれ一端側が支持ベース40に案内されるように支持される。また、中間部30は、各保持部21,22に対して進退方向に駆動可能に支持されており、支持ベース40を介して各保持部21,22間に配される。このような構成により、受け側金型20の複数のパーツを支持ベース40を介してユニットとしてまとめることができる。
【0071】
支持ベース40の一対の板材41,41には、それぞれ各保持部21,22の基端部24,25の凸条27が上下方向に移動可能に嵌合して案内されるガイド手段として凹溝42が設けられている。これにより、中間部30を各保持部21,22の間に進退させるに伴って、各保持部21,22を互いに離隔する支え位置と互いに接近する逃げ位置とに確実に案内することができる。また、各保持部21,22の各位置における位置ずれを防止することができる。
【0072】
また、
図5に示すように、支持ベース40と中間部30の駆動手段である油圧シリンダ50とは、それぞれ基台60上に取り付けられて一体のユニットとして形成されている。これにより、受け側金型20を支持ベース40と油圧シリンダ50ごとまとめて取り扱うことができ、容易にプレス加工前の素材70に対して位置調整を行うことができる。なお、支持ベース40や油圧シリンダ50を基台60に対して、例えば進退方向に位置調整が可能に取り付けても良い。あるいは、基台60をさらに別の加工台(図示せず)に対して、例えば進退方向に位置調整が可能に取り付けても良い。これにより、いっそう素材70側に対する位置調整が容易となる。
【0073】
図6は、別の実施の形態に係るアンダーカット処理機構の受け側金型15の動作を模式的に示す説明図である。
図6(a)は、プレス加工時における受け側金型15の状態を図中左から斜視図、側面図、正面図で示し、同図(b)は、型抜き時における受け側金型15の状態を同じく図中左から斜視図、側面図、正面図で示している。
【0074】
この別の実施の形態に係る受け側金型15では、中間部18の両面に、前述した中間部13や中間部30にあるテーパーがつけられておらず、中間部18は板厚が均等な平板状に形成されている。同様に各保持部16,17も、凹凸19を含めて板厚が均等な平板状に形成されている。すなわち、各保持部16,17において、凹凸19のうち凸部位19aは全て同じ高さであり、凹部位19bは全て同じ深さに形成されている。
【0075】
各保持部16,17は、互いに厚さ方向に離隔した支え位置(
図6(a)参照)と、接近した逃げ位置(
図6(b)参照)とに、それぞれ移動可能に支持されている。中間部18は、前記各保持部16,17間で進退方向に移動可能に支持されている。中間部18は図示省略した駆動手段によって進退方向に駆動され、中間部18が各保持部16,17間へ進入するとき、各保持部16,17は支え位置に移動し、中間部18が各保持部16,17間から退出すると、各保持部16,17は逃げ位置に移動するように設定されている。
【0076】
各保持部16,17は、支え位置では凹凸19の凸部位19aが中間部18に当接する一方、逃げ位置では前記凹凸19が噛み合うことになる。このとき、各保持部16,17が合わさった厚さ(
図6(b)中のL2)は、受け側金型15全体の厚さ(
図6(a)中のL1)のみならず、各保持部16,17の凹凸19のうち凸部位19a同士を突き合わせたときの厚さよりも小さくなる。
【0077】
図7は、前述した凹凸14,19,26の別の形状のバリエーションを示す模式図である。
図7(a)〜(d)に示した上下に並ぶ板状の部材は、それぞれ一対の保持部16,17に相当している。なお、
図6の場合と同様に、各保持部16,17の適所にあるべき逃げ部23は図示省略している。また、傾斜のある各保持部21,22についても、同様な凹凸のバリエーションを適用することができる。
【0078】
このように、一対の保持部の内面側に設ける凹凸は、前述した凹凸14,19,26のように矩形断面の凸部位と凹部位に限らず、
図7(a),(b)に示すように、台形断面や三角形断面のものを交互に並べたり、あるいは、
図7(c),(d)に示すように、互いに対向する内面側で厚さ方向に噛み合う形状であれば何でも良い。要は、凹凸の凸部位が中間部に当接する一方、凹凸が互いに噛み合ったときの厚さが、凸部位の先端同士を突き合わせた寸法より小さくなれば良い。
【0079】
また、前述した中間部30に関しては、両面を滑面として形成したが、この中間部30の両面にも、例えば各保持部21,22にある凹凸26が進退方向には移動可能に嵌合するような凹凸を設けて、互いに相対的に移動可能に案内されるように形成しても良い。これにより、中間部30を各保持部21,22の間でスムーズに進退するように案内することができる。
【0080】
なお、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は前述した各実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。例えば、素材70や被加工部である円穴71の形状は、具体的に図示したものに限定されることはなく、貫通した孔ではなく単なる凹みも含まれる。さらに、被加工部は、素材70の両壁面に必ず設ける必要はなく、何れか一方の壁面だけに設けるようにしても良い。
【0081】
また、前記素材70(被プレス成形品)の具体的な形状は、図示した略コ字形断面のレール状のものに限らず管状の閉鎖断面の素材も含まれることは前述したが、全体的に進退方向に真っ直ぐ延びる形状である必要はなく、途中で所定角度に折れ曲がっていてもかまわない。すなわち、素材の一端側開口から被加工部に至る部位が、少なくとも進退方向と同一軸心上に延びる形状であれば良く、他端側の形状は、進退方向と交差する方向に折れ曲がっていたり、張り出したり広がるような形状でもかまわない。
【0082】
さらに、前記支持ベース40には、各保持部21,22の凸条27を案内するガイド手段として凹溝42を設けたが、ガイド手段の具体的な構成は、凸条と凹溝のような嵌合関係に限られることはない。例えば、支持ベース40側にガイド手段としてピンを設けて、このピンが相対的に移動可能に貫通する孔を各保持部21,22に設けたり、逆の態様として、各保持部21,22にピンを設けて、このピンが相対的に移動可能に貫通する孔をガイド手段として支持ベース40側に設けても良い。