特許第6404032号(P6404032)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6404032建物ユニット輸送用治具及び建物ユニット輸送時の連結構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6404032
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】建物ユニット輸送用治具及び建物ユニット輸送時の連結構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/348 20060101AFI20181001BHJP
   E04G 21/16 20060101ALI20181001BHJP
   B60P 3/022 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   E04B1/348 X
   E04G21/16
   B60P3/022
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-167798(P2014-167798)
(22)【出願日】2014年8月20日
(65)【公開番号】特開2016-44419(P2016-44419A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2017年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 直哉
【審査官】 富士 春奈
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−140860(JP,A)
【文献】 実開平05−024629(JP,U)
【文献】 特開2012−132204(JP,A)
【文献】 特開平10−024763(JP,A)
【文献】 実開昭58−008640(JP,U)
【文献】 実開昭56−129328(JP,U)
【文献】 米国特許第04435927(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/348
B60P 3/022
E04G 21/14−21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物ユニットの柱の下面と接触する一方の面と、
荷台の上面と接触する他方の面と、
前記一方の面と前記柱の下面とが接触する際、前記一方の面と前記柱の下面との面方向の相対位置を決定し固定する第1固定部と、
前記他方の面と前記荷台の上面とが接触する際、前記荷台に予め形成されている嵌合孔の面方向の位置と前記第1固定部が決定する前記柱の下面に予め形成されている孔の面方向の位置とが異なる位置になるように、前記他方の面と前記荷台の上面との面方向の相対位置を決定し固定する第2固定部と、
を備え
前記第1固定部は、前記一方の面から立設し、前記柱に予め形成されている孔に挿入される位置決めピンであり、
前記第2固定部は、前記他方の面から開口され、トラック積載用ボルトが螺合されるボルト取付け孔であり、
前記第2固定部が複数存在する、
建物ユニット輸送用治具。
【請求項2】
前記複数の第2固定部が、荷台に載置される際の車幅方向に沿って配置されている、
請求項1に記載の建物ユニット輸送用治具。
【請求項3】
前記一方の面及び前記他方の面に平行な複数の層で構成されており、そのうち少なくとも1つの層が、弾性材料で形成されている、
請求項1又は請求項2に記載の建物ユニット輸送用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物ユニット輸送用治具及び建物ユニット輸送時の連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、建物ユニット(住宅ユニット)を輸送車両の荷台に積載して輸送する際に、荷台と建物ユニットとの間に介在させる治具が開示されている。この治具は、まず、建物ユニットを構成する柱の下面にボルトにより取付けられる。次に、柱の下面に取付けられた治具を荷台に形成されている嵌合穴に嵌合させるように、建物ユニットが荷台に載置される。そして、荷台の下からボルトにより治具が固定されて、建物ユニットの積載が完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−24629
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般に建物ユニットのユニットサイズは幾つかのサイズに決められているが、最近の需要者ニーズを反映して外壁一枚分だけでもユニットサイズを拡張した建物ユニットを用いることが検討されている。この場合、建物ユニットの柱の位置や間隔が従来と異なるため、輸送車両の荷台への積載構造が煩雑化する。
【0005】
このような場合、上記の治具を使用した輸送では、その変更後の柱の位置に対応した位置に嵌合穴が形成されている荷台を新たに製造する必要がある。また、予めそれぞれの建物ユニットに応じた荷台の輸送車両を用意していたとしても、輸送車両の稼働率の変動により、迅速に対応できない場面が想定される。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮し、柱の位置や間隔が異なる建物ユニットを輸送する場合に、荷台を変更することなく、建物ユニットを輸送車両に積載し輸送できる建物ユニット輸送用治具及び建物ユニット輸送時の連結構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様に係る建物ユニット輸送用治具は、建物ユニットの柱の下面と接触する一方の面と、荷台の上面と接触する他方の面と、前記一方の面と前記柱の下面とが接触する際、前記一方の面と前記柱の下面との面方向の相対位置を決定し固定する第1固定部と、前記他方の面と前記荷台の上面とが接触する際、前記荷台に予め形成されている嵌合孔の面方向の位置と前記第1固定部が決定する前記柱の下面に予め形成されている孔の面方向の位置とが異なる位置になるように、前記他方の面と前記荷台の上面との面方向の相対位置を決定し固定する第2固定部と、を備えている。
【0008】
この建物ユニット輸送用治具は、建物ユニットの柱の下面と接触する一方の面と、荷台の上面と接触する他方の面と、を備えている。そのため、輸送車両の荷台に建物ユニットを積載して輸送する際、建物ユニット輸送用治具の一方の面と他方の面とを介して、荷台に柱が載置される。また、この建物ユニット輸送用治具は、第1固定部を備えている。第1固定部は、一方の面と柱の下面とが接触する際、一方の面と柱の下面との面方向の相対位置を決定し固定する。そのため、荷台に建物ユニットを積載して輸送する際、建物ユニット輸送用治具の一方の面と柱の下面とは、面方向で決まった相対位置に固定される。また、この建物ユニット輸送用治具は、第2固定部を備えている。第2固定部は、他方の面と荷台の上面とが接触する際、他方の面と荷台の上面との面方向の相対位置を決定し固定する。そのため、荷台に建物ユニットを積載して輸送する際、建物ユニット輸送用治具の他方の面と荷台の上面とは、面方向で決まった相対位置に固定される。
【0009】
したがって、この建物ユニット輸送用治具による輸送では、建物ユニット輸送用治具の一方の面と柱の下面との相対位置と、建物ユニット輸送用治具の他方の面と荷台の上面との相対位置とが、共に、面方向で固定される。すなわち、建物ユニット輸送用治具の一方の面及び他方の面を介して、荷台の上面と柱の下面との相対位置が面方向で固定される。
【0010】
ここで、この建物ユニット輸送用治具では、他方の面と荷台の上面との面方向の相対位置は、荷台に予め形成されている嵌合孔の面方向の位置と第1固定部が決定する柱の下面に予め形成されている孔の面方向の位置とが異なる位置になるように固定される。そのため、荷台に建物ユニットを積載して輸送する際、荷台に予め形成されている嵌合孔と柱の下面に予め形成されている孔とは、面方向での位置が異なっている。
【0011】
したがって、この建物ユニット輸送用治具によれば、荷台に予め形成されている嵌合孔と柱の下面に予め形成されている孔との位置がずれていても、荷台に建物ユニットの柱を載置した状態で面方向(水平方向)の位置を固定できる。すなわち、柱の位置に対応した嵌合孔が形成されている荷台を用意することなく、建物ユニットを荷台に積載し輸送できる。
【0012】
第2の態様に係る建物ユニット輸送用治具は、第1の態様において、前記第1固定部は、前記一方の面から前記他方の面まで貫通し、前記柱の下面に予め設けられた孔に取付用ボルトが共締めされるボルト挿通孔であり、前記ボルト挿通孔の前記他方の面側は、前記取付用ボルトの頭が収まる大きさに拡径されており、前記第2固定部は、前記他方の面から開口され、トラック積載用ボルトが螺合されるボルト取付け孔である。
【0013】
この態様では、第1固定部は、一方の面から他方の面まで貫通するボルト挿通孔であり、柱の下面に予め設けられた孔に取付用ボルトが共締めされる。そのため、柱の下面に予め設けられた孔とボルト挿通孔とが位置合わせされた状態で、柱の下面と一方の面とを接触させ、取付用ボルトが他方の面側から挿入されて共締めされることにより、一方の面と柱の下面との面方向の相対位置が決定されて固定される。
【0014】
また、ボルト挿通孔の他方の面側は、ボルトの頭が収まる大きさに拡径されているので、この拡径された部分にボルトの頭が収まり、他方の面から取付用ボルトの頭部が突出しない。そのため、他方の面と荷台の上面との接触を、取付用ボルトの頭部が阻害しない。
【0015】
これにより、建物ユニットを吊り上げた状態で、柱の下面に建物ユニット輸送用治具を取付用ボルトにより取付けることができる。すなわち、建物ユニットを積載する手順に関して、柱に対する建物ユニット輸送用治具の取付を、荷台に対する建物ユニット輸送用治具の取付よりも先に行うことができる。
【0016】
また、第2固定部は、他方の面から開口されたボルト取付け孔であり、トラック積載用ボルトが螺合される。そのため、荷台に予め形成された嵌合孔に、トラック積載用ボルトを嵌合させることにより、他方の面と荷台の上面との相対位置の固定が容易になる。これにより、柱に建物ユニット輸送用治具及びトラック積載用ボルトを取り付けた後、建物ユニットを荷台に積載する作業が容易になる。
【0017】
第3の態様に係る建物ユニット輸送用治具は、第2の態様において、前記ボルト挿通孔の前記一方の面側も、前記取付用ボルトの頭が収まる大きさに拡径されており、前記ボルト取付け孔は、前記一方の面まで貫通している。
【0018】
この態様では、ボルト挿通孔は、一方の面側及び他方の面側の両側が、取付用ボルトの頭が収まる大きさに拡径されている。そのため、取付用ボルトを一方の面側及び他方の面側のいずれの側から挿入しても、ボルトの頭部はその拡径された部分に収まる。また、ボルト取付け孔は、他方の面から一方の面まで貫通する孔であるので、トラック積載用ボルトをいずれの面側からも螺合できる。これにより、建物ユニット輸送用治具は両面使用が可能になる。
【0019】
第4の態様に係る建物ユニット輸送用治具は、第1の態様において、前記第1固定部は、前記一方の面から立設し、前記柱に予め形成されている孔に挿入される位置決めピンであり、前記第2固定部は、前記他方の面から開口され、トラック積載用ボルトが螺合されるボルト取付け孔である。
【0020】
この態様では、建物ユニット輸送用治具の一方の面と柱の下面との面方向の相対位置の決定及び固定は、一方の面から立設した位置決めピンを柱に予め設けられた孔に挿入することで行われる。そのため、建物ユニットを積載する手順に関して、荷台に対して建物ユニット輸送用治具を取り付けた後に、建物ユニットを積載することができる。これにより、建物ユニットを吊り上げた状態で、柱の下面に建物ユニット輸送用治具を取付用ボルトにより取付けるという作業を省略できる。
【0021】
第5の態様に係る建物ユニット輸送用治具は、第1の態様〜第4の態様において、前記第2固定部が、複数存在している。
【0022】
この態様では、他方の面と荷台の上面とが接触する際、互いの相対位置を決定し固定する第2固定部を、複数の第2固定部の中から選択することができる。そのため、間接的に、荷台の嵌合孔と柱との面方向の相対位置を選択することができる。これにより、柱の位置や間隔の異なる複数種類の建物ユニットを輸送することができる。
【0023】
第6の態様に係る建物ユニット輸送用治具は、第5の態様において、前記複数の第2固定部が、荷台に載置される際の車幅方向に沿って配置されている。
【0024】
この態様では、複数の第2固定部を使い分けることで、柱を固定する位置が車幅方向で変化する。これにより、輸送の際に車幅方向に載置される柱の間隔、すなわち妻方向の柱の間隔が異なる複数種類の建物ユニットの輸送することができる。
【0025】
第7の態様に係る建物ユニット輸送用治具は、第1の態様〜第6の態様において、前記一方の面及び前記他方の面に平行な複数の層で構成されており、そのうち少なくとも1つの層が、弾性材料で形成されている。
【0026】
この態様では、建物ユニット輸送用治具の他方の面に荷台から入力された振動が、建物ユニット輸送用治具の弾性材料により構成されている層により減衰されて、一方の面から建物ユニットに伝達される。これにより、建物ユニット輸送時に建物ユニットへ伝わる振動を軽減できる。
【0027】
第8の態様に係る建物ユニット輸送時の連結構造は、第2の態様又は第3の態様の建物ユニット輸送用治具が備えている前記ボルト挿通孔と前記柱の下面に予め形成されている孔とが前記取付用ボルトにより共締されることで、前記柱の下面と前記一方の面とが連結され、前記ボルト取付け孔に前記トラック積載用ボルトが螺合されることで、前記建物ユニット輸送用治具に前記トラック積載用ボルトが取り付けられ、前記取り付けられたトラック積載用ボルトが前記荷台に予め形成された嵌合孔に嵌合させられることで、前記他方の面と前記荷台の上面とが連結されている。
【0028】
第9の態様に係る建物ユニット輸送時の連結構造は、第4の態様の建物ユニット輸送用治具が備えている前記ボルト取付け孔に前記トラック積載用ボルトが螺合されることで、前記建物ユニット輸送用治具に前記トラック積載用ボルトが取り付けられ、前記取り付けられたトラック積載用ボルトが前記荷台に予め形成された嵌合孔に嵌合させられることで、前記他方の面と前記荷台の上面とが連結され、前記位置決めピンが前記柱の下面に予め形成されている孔に挿入されることで、前記柱の下面と前記一方の面とが連結されている。
【0029】
これらの建物ユニット輸送時の連結構造では、荷台に形成されている嵌合孔と柱とが平面視で異なる位置にある状態で、建物ユニットが荷台に載置固定されている。これにより、建物ユニットの柱の位置と荷台の嵌合孔との位置がずれていても、建物ユニットを荷台に積載し輸送することができる。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したとおり、本発明は、柱の位置や間隔が異なる建物ユニットを輸送する場合に、荷台を変更することなく、建物ユニットを輸送車両に積載し輸送できるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】第1実施形態に係る建物ユニット輸送時の連結構造を示す分解斜視図である。
図2図1において、連結された状態を示す一部断面図である。
図3】第1実施形態に係る建物ユニット輸送用治具に取付用ボルトが挿入された状態を示す図であり、(A)は平面図、(B)は底面図である。
図4図3において、さらに輸送車両積載用治具が取り付けられた状態を示す断面図であり、(A)〜(C)は、取付けの3パターンを示す断面図である。
図5】第1実施形態に係る建物ユニット輸送時の連結構造を輸送車両の荷台の後方から視た模式図であり、(A)は柱の両外側に外壁パネルが取り付けられた状態での適用例を示す縦断面図であり、(B)は片側の外壁パネルが取り外された状態での適用例を示す縦断面図である。
図6】第2実施形態に係る建物ユニット輸送治具を示す斜視図である。
図7】第2実施形態に係る建物ユニット輸送時の連結構造を示す一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
〔第1実施形態〕
以下、図1図5を用いて、本発明に係る建物ユニット輸送用治具及び建物ユニット輸送時の連結構造の第1実施形態について説明する。
【0033】
(建物ユニット)
図5(A)に示されるように、建物ユニット10は、箱型に形成された躯体フレーム12とその躯体フレーム12の外側に取付けられた外壁パネル14とを備えた構成とされている。躯体フレーム12は、四隅に立設された柱16(図に示すのはそのうちの2本)と、柱16の上端部同士を連結する天井大梁(図示省略)と、柱16の下端部同士を連結する床大梁18と、によって構成されている。なお、図には表れていないが、柱16は、一例として、下部の床仕口と上部の天井仕口とそれらを上下に連結する柱本体とにより構成されている。
【0034】
また、図1に示されるように、柱16の底部には、方形のプレート状に形成されたベースプレート20が溶接により取り付けられている。このベースプレート20の下面20Bが、本発明の「柱の下面」に相当する。ベースプレート20の中央には、内周面に雄ねじが形成された貫通孔である基準孔22が形成されている。
【0035】
ところで、建物内部の室内空間を広げるため、建物ユニット10を構成する柱16の間隔を広くしたいというニーズがある。他方、建物ユニット10は工場で製造され輸送車両(トラック)で建築地に輸送されるため、建物ユニット10のサイズは、道路法や道路交通法の制限を受ける。そのため、多くの場合、図5(A)に示されるように、柱16の両外側(躯体フレーム12の桁側の二側面)に外壁パネル14がそれぞれ取り付けられた状態で、建物ユニット10の妻方向の幅が道路交通法等の幅制限と略同一となるように妻方向の柱16の間隔が設定されている。
【0036】
一方、図5(B)に示すように、柱16の外側に取り付けられた外壁パネル14のうち、片側の外壁パネル14が取り外された状態で輸送することも考えられる。この場合には、取り外された外壁パネル14の厚さの分だけユニットサイズに余裕が生まれるので、この建物ユニット100では、妻方向の柱16の間隔が上述した建物ユニット10よりも広く設定されている。
【0037】
(荷台)
図1に示されるように、輸送車両の荷台30の上面30Aは、略平坦に形成されている。荷台30の上面30A側には、略円錐台を逆さにした形状の空間を有する嵌合孔32が設けられている。さらに、嵌合孔32の底部には、固定用ボルト34が挿通する固定用孔36が設けられており、この固定用孔36は、荷台30の下面まで貫通している。
【0038】
(トラック積載用ボルト)
図1及び図2に示されるように、トラック積載用ボルト40は、略円錐台形状を逆さにした形状の嵌合部40Aと、嵌合部40Aの上面から立設されたネジ部40Bと、を備えている。嵌合部40Aは、荷台30の嵌合孔32に嵌合されている。ネジ部40Bは、後述する建物ユニット輸送用治具50のボルト取付け孔54に螺合するように外周面に雄ねじが形成されている。そして、トラック積載用ボルト40は全体として、嵌合部40Aが嵌合孔32に嵌合された状態で、嵌合部40Aが荷台30の上面30Aから突出せずネジ部40Bのみが鉛直方向に突出するように、形成されている。一方、嵌合部40Aの下面側には、連通孔42が形成されている。この連通孔42の内周面には雌ねじが形成されおり、嵌合部40Aが嵌合孔32に嵌合した状態で、固定用孔36と連通するようになっている。
【0039】
(建物ユニット輸送用治具)
【0040】
建物ユニット輸送用治具50は、建物ユニット10を荷台30に積載する際、荷台30と建物ユニット10との間に介在させる治具である。換言すると、荷台30に建物ユニット輸送用治具50が載置され、さらに、建物ユニット輸送用治具50にベースプレート20が載置される。以下、この建物ユニット輸送用治具50について詳細に説明する。
【0041】
図1に示されているのは、建物ユニット輸送用治具50の概略的な構造である。図1に示されるように、建物ユニット輸送用治具50は、方形のプレート状に形成されており、治具上面50Aと、治具下面50Bと、ボルト挿通孔52と、ボルト取付け孔54と、を備えている。治具上面50Aは、建物ユニット輸送用治具50の上面に位置する平坦な面であり、建物ユニット輸送用治具50にベースプレート20が載置された状態でベースプレート20の下面20Bが当接(接触)する面である。この治具上面50Aが、本発明の「一方の面」に相当する。治具下面50Bは、治具上面50Aの裏側に位置する平坦な面であり、建物ユニット輸送用治具50が荷台30に載置された状態で荷台の上面と当接(接触)する面である。この治具下面50Bが、本発明の「他方の面」に相当する。ボルト挿通孔52は、治具上面50Aから治具下面50Bまで貫通している貫通孔であり、治具下面50Bの側から(図の下方から)取付用ボルト56を挿通可能に形成されている。また、このボルト挿通孔52は、治具下面50Bの側に、取付用ボルト56の頭部56Aが収まる拡径部52Rを有している。このボルト挿通孔52が、本発明の「第1固定部」に相当する。ボルト取付け孔54は、治具下面50Bから治具上面50Aまで貫通している貫通孔であり、その内周面に雌ねじが形成されて、トラック積載用ボルト40のネジ部40Bを螺合可能とされている。このボルト取付け孔54が、本発明の「第2固定部」に相当する。
【0042】
図2には、建物ユニット輸送用治具50の詳細な断面構造が示されている。この図に示されるように、建物ユニット輸送用治具50は、第1制振部58、本体部60及び第2制振部62という3つの層により構成されている。本体部60は、金属で形成されており、他方、第1制振部58及び第2制振部62は、ゴムなどの弾性材料で形成されている。3つの層は、接着剤などにより強固に接着されて一体となっている。
【0043】
前述したボルト挿通孔52は、具体的には、第1制振部58の挿通孔52aと、本体部60の挿通孔52bと、第2制振部62の頭部挿通孔52cと、が連通した貫通孔として形成されている。
【0044】
第1制振部58の挿通孔52aは、第1制振部58の中心に形成された貫通孔であり、取付用ボルト56のネジ部56Bが通過可能にネジ部56Bより若干拡径に形成されている。本体部60の挿通孔52bは、本体部60の中心に形成された貫通孔であり、取付用ボルト56のネジ部56Bと略同径に形成されて、ネジ部が通過可能とされている。なお、本体部60の挿通孔52bの内周面には、取付用ボルト56が螺合する雌ねじが形成されていてもよい。そして、第2制振部62の頭部挿通孔52cは、第2制振部62の中心に形成された貫通孔であり、第1制振部58の挿通孔52aよりも拡径に形成されて、取付用ボルト56の頭部56Aを挿入可能とされている。また、第2制振部62の厚みは、取付用ボルト56の頭部56Aが第2制振部62の頭部挿通孔52cに完全に収まるように、取付用ボルト56の頭部56Aの厚みと同一かそれよりも厚く形成されている。この頭部挿通孔52cが前述したボルト挿通孔52の拡径部52Rを形成している。
【0045】
また、前述したボルト取付け孔54は、具体的には、第1制振部58の取付け孔54aと、本体部60の取付け孔54bと、第2制振部62の取付け孔54cと、が連通した貫通孔として形成されている。
【0046】
本体部60の取付け孔54bは、内周面に雌ねじが形成された貫通孔であり、トラック積載用ボルト40のネジ部40Bが螺合可能とされている。第1制振部58の取付け孔54a及び第2制振部62の取付け孔54cは、トラック積載用ボルト40のネジ部40Bの径より若干拡径に形成された貫通孔であり、トラック積載用ボルト40のネジ部40Bを通過可能とされている。
【0047】
図3(A)・(B)は、建物ユニット輸送用治具50に取付用ボルト56が挿入された状態を示している。これらの図に示されるように、建物ユニット輸送用治具50には、ボルト挿通孔52とは平面視で異なる位置に、各々貫通孔であるボルト取付け孔54が複数個(本実施形態では3個)形成されている。この3個のボルト挿通孔52は、一方向に沿って並んで形成されている。建物ユニット輸送用治具50を使用する際には、これらのボルト挿通孔52の軸心を結んだ方向が輸送車両の車幅方向となるように建物ユニット輸送用治具50がセットされる。
【0048】
(本実施形態の作用・効果)
次に、建物ユニット10の荷台30への積載(連結)手順の説明を通して、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0049】
積載手順としては、まず、建物ユニット10がクレーンで吊り上げられて、取付用ボルト56により、ベースプレート20の下面20Bに建物ユニット輸送用治具50が取付けられる。具体的には、ボルト挿通孔52と基準孔22とを位置合わせするように、治具上面50Aとベースプレート20の下面20Bとを対向させ、取付用ボルト56を建物ユニット輸送用治具50の治具下面50Bの側から挿入して、建物ユニット輸送用治具50をベースプレート20に共締めする。
【0050】
以上のように、ボルト挿通孔52は、ベースプレート20の基準孔22と位置合わせされた状態で取付用ボルト56が挿入されることで、治具上面50Aとベースプレート20の下面20Bとの面方向の相対位置を決定し固定する。
【0051】
次に、建物ユニット輸送用治具50にトラック積載用ボルト40が取り付けられる。具体的には、トラック積載用ボルト40のネジ部40Bが、建物ユニット輸送用治具50のボルト取付け孔54に治具下面50Bの側から挿入され、本体部60の取付け孔54bに螺合する。なお、この作業は、前述した取付用ボルト56による取付作業と順序を逆にしてもよい。
【0052】
続いて、建物ユニット10が荷台30に積載される。具体的には、建物ユニット輸送用治具50及びトラック積載用ボルト40が取り付けられた状態の建物ユニット10が、トラック積載用ボルト40の嵌合部40Aが荷台30の嵌合孔32に嵌合するように、荷台30に載置される。さらに、トラック積載用ボルト40の連通孔42と荷台30の固定用孔36とが連通して形成された孔に荷台の下方から固定用ボルト34が螺合され、トラック積載用ボルト40及び建物ユニット輸送用治具50を介して、荷台30に建物ユニット10が固定される。
【0053】
以上のように、ボルト取付け孔54は、荷台30に形成された嵌合孔32に嵌合する嵌合部40Aを有するトラック積載用ボルト40のネジ部40Bが螺合されることで、治具下面50Bと荷台30の上面30Aとの面方向の相対位置を決定し固定する。
【0054】
以上説明した積載手順により、建物ユニット10が輸送車両の荷台30に連結され、建物ユニット10の積載が完了する。そして、建物ユニット10は、この状態で工場から建築地へ輸送される。建築地では、ベースプレート20から建物ユニット輸送用治具50が取り外され、ベースプレート20の基準孔22を利用して建築地に据え付けられる。
【0055】
ここで、本実施形態の建物ユニット輸送用治具50では、ボルト取付け孔54が、ボルト挿通孔52とは平面視で異なる位置に形成されている。そのため、図2に示されるように、ベースプレート20の基準孔22と荷台30の嵌合孔32との位置が水平方向でずれている状態で、輸送車両の荷台30に建物ユニット10を積載できる。
【0056】
また、本実施形態では、第2制振部62の頭部挿通孔52cは、取付用ボルト56の頭部56Aを挿入可能とされている。また、第2制振部62の厚みは、取付用ボルト56の頭部56Aが第2制振部62の頭部挿通孔52cに完全に収まるように、取付用ボルト56の頭部56Aの厚みと同一かそれよりも厚く形成されている。そのため、取付用ボルト56をボルト挿通孔52に挿入した際、取付用ボルト56の頭部56Aは、第2制振部62の頭部挿通孔52cに完全に収まる。その結果、取付用ボルト56が挿入された状態の建物ユニット輸送用治具50が荷台30に載置されるときに、取付用ボルト56の頭部56Aが荷台30に接触しない。
【0057】
さらに、本実施形態では、トラック積載用ボルト40の嵌合部40Aの形状は、略円錐台形状を逆さにした形状になっている。そのため、建物ユニット10を荷台30に積載する際の位置合わせが容易である。
【0058】
また、本実施形態では、建物ユニット輸送用治具50の第1制振部58及び第2制振部62は、ゴムなどの弾性材料で形成されている。そのため、建物ユニット10の輸送中に荷台30が振動して建物ユニット輸送用治具50の治具下面50Bに入力された振動は、第1制振部58及び第2制振部62により減衰されて、治具上面50Aから建物ユニット10に伝達される。その結果、輸送中に建物ユニット10へ伝わる振動を軽減できる。
【0059】
さらに、本実施形態では、建物ユニット輸送用治具50は、3つのボルト取付け孔54を備えている。そのため、図4に示されるように、トラック積載用ボルト40を取り付けるボルト取付け孔54を選択することにより、取付用ボルト56とトラック積載用ボルト40との位置関係が異なる3パターンを選択できる。さらに、ボルト取付け孔54は、一方向に沿って配置されている。そのため、この方向と輸送車両の車幅方向を一致させるように載置して使用することで、車幅方向に対応する柱16の間隔(通常は、妻方向の間隔)が異なる複数の建物ユニット10の輸送について使用可能である。
【0060】
より具体的に説明すると、図5(A)においては、左の建物ユニット輸送用治具50は図4(C)のパターンで使用され、右の建物ユニット輸送用治具50は図4(A)のパターンで使用されている。これに対し、図5(B)においては、図5(A)と同じ荷台を用いたまま、左の建物ユニット輸送用治具50が図4(A)のパターンに変更使用されていることで、図5(A)の建物ユニット10よりも妻方向の柱16の間隔が広い建物ユニット100が積載されている。このように、本実施形態の建物ユニット輸送用治具50によれば、荷台30を変更することなく、柱16の間隔が異なる建物ユニット10、100を輸送することができる。これにより、新たな荷台30を製造するコストを削減することができ、また、荷台30を用意する時間を削減できて迅速な対応が可能となる。
【0061】
〔第2実施形態〕
次に、図6及び図7を用いて、本発明に係る建物ユニット輸送用治具及び建物ユニット輸送時の連結構造の第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0062】
図6には、第2実施形態の建物ユニット輸送用治具70の概略的な構造が示されている。この図に示されるように、第2実施形態に係る建物ユニット輸送用治具70は、第1固定部として、治具上面50Aの中央に立設された位置決めピン72を備えている。なお、位置決めピン72の上端部は、円錐台形状に形成されている。
【0063】
図7には、建物ユニット輸送用治具70の詳細な断面構造が示されている。この図に示されるように、建物ユニット輸送用治具70は、弾性材料により形成された制振部74と、金属により形成された本体部60と、により2層構造とされている。
【0064】
(作用・効果)
第2実施形態における積載手順を説明すると、まず、ボルト取付け孔54を使用して建物ユニット輸送用治具50にトラック積載用ボルト40が取り付けられる。次に、トラック積載用ボルト40の嵌合部40Aを荷台30に形成された嵌合孔32に嵌合させて、さらに、荷台30の下方から固定用ボルト34により、建物ユニット輸送用治具70が荷台30に固定される。
【0065】
この状態、すなわち、荷台30に建物ユニット輸送用治具70が載置された状態で、ベースプレート20に設けられた基準孔22に、建物ユニット輸送用治具70の位置決めピン72が挿入されるように位置合わせをして、建物ユニット10が荷台30に積載される。
【0066】
以上のように、位置決めピン72は、ベースプレート20の基準孔22に挿入されることで、治具上面50Aとベースプレート20の下面20Bとの面方向の相対位置を決定し固定する。
【0067】
このように、第2実施形態では、積載手順に関して、建物ユニット10をクレーンなどで吊り上げた状態にしたまま、ベースプレート20の下面20Bに建物ユニット輸送用治具50を取り付けるという工程を省略できる。
【0068】
また、位置決めピン72は、上端部が円錐台形状に形成されているので、位置決めピン72を利用して、ベースプレート20の位置合わせが容易である。また、第2実施形態では、積載の際に取付用ボルト56を使用しないため、第1実施形態のような頭部挿通孔52c(ボルト挿通孔52の拡径部52R)を設ける必要がない。そのため、建物ユニット輸送用治具70は、制振部74と本体部60という2層構造となっている。
【0069】
〔上記実施形態の補足説明〕
上述した各実施形態では、第1固定部として、ボルト挿通孔52や位置決めピン72を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、治具下面まで貫通していない孔でもよいし、また、孔の形状は円筒形状でなくてもよい。
【0070】
また、第2固定部として、ボルト取付け孔54を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、孔の形状は円筒形状でなくてもよい。
【0071】
さらに、ボルト取付け孔54が貫通孔である例を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ボルト取付け孔54は、治具下面50Bから開口されてトラック積載用ボルト40のネジ部40Bを螺合できればよく、治具上面50Aまで貫通していなくてもよい。
【0072】
また、第1実施形態では、第1制振部58の挿通孔52aが、取付用ボルト56のネジ部40Bより若干拡径に形成されている態様を説明したが、変形例として、挿通孔52aが第2制振部62の頭部挿通孔52cと同じ径に形成されていてもよい。この場合、建物ユニット輸送用治具50の治具上面50Aの側からも取付用ボルト56を挿入することが可能になる。また、ボルト取付け孔54は、そもそも貫通孔であるため、トラック積載用ボルト40を治具下面50Bの側からだけでなく、治具上面50Aの側からも取付けることができる。そのため、この変形例の建物ユニット輸送用治具は、両面使用が可能になる。
【0073】
さらに、ボルト取付け孔54が3つ形成されているものを説明したが、本発明の適用はこれに限られず、1つのみ形成されていてもよいし、2つや4つ以上形成されていてもよい。1つのみの場合には、柱の位置や間隔が異なる建物ユニットを輸送する場合に、その建物ユニット輸送用治具のみでは対応できないが、別の位置にボルト取付け孔が形成された建物ユニット輸送用治具を製造することで対応することができる。したがって、荷台を新たに製造する場合よりもコストを抑えることができる。
【0074】
また、建物ユニット輸送用治具50、70が材質の異なる複数層で構成されているものを説明したが、本発明の適用はこれに限られず、単一材料により構成されていてもよい。
【0075】
さらに、建物ユニット輸送用治具50、70の大きさ・形状は、ベースプレート20の形と略同一の大きさ・形状のものを説明したが、本発明の適用はこれに限られず、ベースプレート20を載置可能な範囲で適宜変更可能である。
【0076】
また、基準孔22の内周面に雌ねじが形成されているものを説明したが、ベースプレート20の上面にナットが溶接してあってもよい。
【符号の説明】
【0077】
10 建物ユニット
16 柱
20 ベースプレート
20B 下面(柱の下面)
22 基準孔(柱の下面に予め形成されている孔)
30 荷台
30A 上面(荷台の上面)
32 嵌合孔
40 トラック積載用ボルト
50 建物ユニット輸送用治具
50A 治具上面(一方の面)
50B 治具下面(他方の面)
52 ボルト挿通孔(第1固定部)
52R 拡径部
54 ボルト取付け孔(第2固定部)
56 取付用ボルト
56A 頭部
56B ネジ部
58 第1制振部
60 本体部
62 第2制振部
70 建物ユニット輸送用治具
72 位置決めピン
74 制振部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7