特許第6404038号(P6404038)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6404038
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】石炭ガス化炉のスラグ監視装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   C10J 3/46 20060101AFI20181001BHJP
【FI】
   C10J3/46 L
【請求項の数】9
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-174078(P2014-174078)
(22)【出願日】2014年8月28日
(65)【公開番号】特開2016-50209(P2016-50209A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2017年6月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】飯田 政巳
(72)【発明者】
【氏名】小山 智規
(72)【発明者】
【氏名】溝脇 豊
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−019975(JP,A)
【文献】 特開2004−091571(JP,A)
【文献】 特開2011−064414(JP,A)
【文献】 特開2002−147731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10J 3/46
F23J 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融したスラグが流出するスラグホール近傍、及び該スラグホールから流出した前記スラグが落下する冷却水の水面近傍を撮像し、それぞれ撮像画像を取得する撮像手段と、
各前記撮像画像に対してウォーターシェッドアルゴリズムを用い、前記スラグの落下筋として推定される稜線を検出する稜線検出手段と、
各前記撮像画像の所定領域において、推定される前記スラグの落下筋と交差する方向に設けられる複数の検出ラインから輝度情報を取得する輝度情報取得手段と、
前記稜線と各前記検出ラインとの交点の前記輝度情報と、各前記検出ラインに沿った前記交点の近傍の前記輝度情報との輝度差が、第1閾値以上である場合に、前記稜線は前記スラグの落下筋であると判定する落下筋判定手段と
を具備する石炭ガス化炉のスラグ監視装置。
【請求項2】
前記落下筋判定手段は、前記交点の近傍の前記輝度情報を、前記交点から前記検出ラインに沿って第1所定間隔離れた第1座標から、該第1座標から前記検出ラインに沿って第2所定間隔離れた第2座標までの区間の輝度の平均値とする請求項1に記載の石炭ガス化炉のスラグ監視装置。
【請求項3】
溶融したスラグが流出するスラグホール近傍、及び該スラグホールから流出した前記スラグが落下する冷却水の水面近傍を撮像し、それぞれ撮像画像を取得する撮像手段と、
各前記撮像画像の所定領域において、前記スラグの落下筋が落下すると推定される方向と交差する方向に設けられる複数の検出ラインから輝度情報を取得する輝度情報取得手段と、
各前記検出ラインの少なくとも一端側から他端側の方向に、前記検出ライン上の隣り合う画素の前記輝度情報を比較し、前記輝度情報の値が下降し始める前記画素をピーク位置として検出するピーク検出手段と、
前記ピーク位置から所定画素数連続で前記輝度情報の値が下降した前記画素である指定ドットを検出する指定ドット検出手段と、
前記ピーク位置の前記輝度情報と前記指定ドットの前記輝度情報との輝度差が第2閾値以上である場合に、前記ピーク位置を前記スラグの落下筋として判定する落下筋判定手段と
を具備する石炭ガス化炉のスラグ監視装置。
【請求項4】
前記落下筋判定手段は、
前記検出ライン毎に前記スラグの落下筋として判定されたスラグの落下筋の数を計数する計数手段を具備し、
前記所定領域において、前記検出ライン毎に計数された前記スラグの落下筋の数のうち最大値を、前記所定領域内の前記スラグの落下筋の数として出力する請求項1から請求項3のいずれかに記載の石炭ガス化炉のスラグ監視装置。
【請求項5】
溶融したスラグが流出するスラグホールから流出した前記スラグが落下する冷却水の水面近傍を撮像し、撮像画像を取得する撮像手段と、
前記撮像画像において、落下する前記スラグの筋毎に設定される所定領域の輝度情報の最大値と平均値とに基づいて、前記所定領域毎に二値化レベルを決定する二値化レベル決定手段と、
決定された前記二値化レベルによって前記所定領域毎に各画素を二値化し、前記二値化レベル以上である前記画素をスラグ領域とし、前記スラグ領域の面積を算出する面積算出手段と
を具備する石炭ガス化炉のスラグ監視装置。
【請求項6】
前記二値化レベル決定手段は、
前記所定領域内の前記輝度情報の前記最大値と前記平均値との差に係数を乗算し、該乗算結果と前記輝度情報の平均値とを加算することにより前記二値化レベルを算出する請求項に記載の石炭ガス化炉のスラグ監視装置。
【請求項7】
溶融したスラグが流出するスラグホール近傍、及び該スラグホールから流出した前記スラグが落下する冷却水の水面近傍を撮像し、それぞれ撮像画像を取得する第1過程と、
各前記撮像画像に対してウォーターシェッドアルゴリズムを用い、前記スラグの落下筋として推定される稜線を検出する第2過程と、
各前記撮像画像の所定領域において、推定される前記スラグの落下筋と交差する方向に設けられる複数の検出ラインから輝度情報を取得する第3過程と、
前記稜線と各前記検出ラインとの交点の前記輝度情報と、各前記検出ラインに沿った前記交点の近傍の前記輝度情報との輝度差が、第1閾値以上である場合に、前記稜線は前記スラグの落下筋であると判定する第4過程とを有する石炭ガス化炉のスラグ監視方法。
【請求項8】
溶融したスラグが流出するスラグホール近傍、及び該スラグホールから流出した前記スラグが落下する冷却水の水面近傍を撮像し、それぞれ撮像画像を取得する第1過程と、
各前記撮像画像の所定領域において、前記スラグの落下筋が落下すると推定される方向と交差する方向に設けられる複数の検出ラインから輝度情報を取得する第2過程と、
各前記検出ラインの少なくとも一端側から他端側の方向に、前記検出ライン上の隣り合う画素の前記輝度情報を比較し、前記輝度情報の値が下降し始める前記画素をピーク位置として検出する第3過程と、
前記ピーク位置から所定画素数連続で前記輝度情報の値が下降した前記画素である指定ドットを検出する第4過程と、
前記ピーク位置の前記輝度情報と前記指定ドットの前記輝度情報との輝度差が第2閾値以上である場合に、前記ピーク位置を前記スラグの落下筋として判定する第5過程と
を有する石炭ガス化炉のスラグ監視方法。
【請求項9】
溶融したスラグが流出するスラグホールから流出した前記スラグが落下する冷却水の水面近傍を撮像し、撮像画像を取得する第1過程と、
前記撮像画像において、落下する前記スラグの筋毎に設定される所定領域の輝度情報の最大値と平均値とに基づいて、前記所定領域毎に二値化レベルを決定する第2過程と、
決定された前記二値化レベルによって前記所定領域毎に各画素を二値化し、前記二値化レベル以上である前記画素をスラグ領域とし、前記スラグ領域の面積を算出する第3過程とを有する石炭ガス化炉のスラグ監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭ガス化炉のスラグ監視装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、石炭をガス化して得られる石炭ガスによりガスタービンを駆動して発電する石炭ガス化複合発電(IGCC;Integrated coal Gasification Combined Cycle)システムは、石炭をガス化するための石炭ガス化炉が使用される。
石炭ガス化炉は、下部のコンバスタ部(燃焼室)と上部のリダクタ部(ガス化室)の2段構成になっており、コンバスタ部では、投入された微粉炭とチャーが燃焼しながら旋回流をつくり、リダクタ部へと上昇するが、この時微粉炭やチャーに含まれている灰の成分は、高温の熱により溶融し、遠心力によって炉の水冷壁に付着し、溶融スラグとなって炉の底に流れ落ちる。溶融スラグは、コンバスタ部の底のスラグホールから、水が溜められたスラグホッパ内に落下して急速に冷やされ、ガラス状のスラグとなって炉外へ排出される。
【0003】
スラグの固化によるスラグホールの閉塞やスラグの流動の不安定化を回避することは、石炭ガス化炉の運転において重要であり、石炭ガス化炉を正常に運転するためにスラグの排出状況の監視が行われている。
下記特許文献1では、滴下するスラグを画像で捕え、画像処理によりスラグの滴下頻度及びスラグ滴の堆積を測定してスラグの流下量を算出してスラグ滴下状態及び炉状態を診断する技術が記載されている。
下記特許文献2では、視覚センサと音響センサの組み合わせによって判定を行い、炉内全体のスラグ動態監視評価を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−24894号公報
【特許文献2】特開平7−34075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、映像等によってスラグ監視をする場合、実証機を長期運用することにより炉内燃焼状況(全体的に明るい、暗い等)の変化や、機器の経年劣化、監視窓の汚れなどが生じるため、画像のレベル低下や画像が不鮮明な状況となり、スラグの認識率が悪くなり、検出精度が低下するという問題があった。
しかしながら従来の方法では、画像レベルが低下したり、画像にボケが生じたりした場合の対処はなされておらず、スラグの認識率が悪くなることを解決できなかった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、スラグ評価精度を向上させる石炭ガス化炉のスラグ監視装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、溶融したスラグが流出するスラグホール近傍、及び該スラグホールから流出した前記スラグが落下する冷却水の水面近傍を撮像し、それぞれ撮像画像を取得する撮像手段と、各前記撮像画像に対してウォーターシェッドアルゴリズムを用い、前記スラグの落下筋として推定される稜線を検出する稜線検出手段と、各前記撮像画像の所定領域において、推定される前記スラグの落下筋と交差する方向に設けられる複数の検出ラインから輝度情報を取得する輝度情報取得手段と、前記稜線と各前記検出ラインとの交点の前記輝度情報と、各前記検出ラインに沿った前記交点の近傍の前記輝度情報との輝度差が、第1閾値以上である場合に、前記稜線は前記スラグの落下筋であると判定する落下筋判定手段とを具備する石炭ガス化炉のスラグ監視装置を提供する。
【0008】
本発明の構成によれば、溶融したスラグが流出するスラグホール近傍、及びスラグホールから流出したスラグが落下する冷却水の水面近傍が撮像されたそれぞれの撮像画像に対して、ウォーターシェッドアルゴリズムを用いてスラグの落下筋として推定される稜線が検出され、撮像画像の所定領域において、推定されるスラグの落下筋と交差する方向に設けられる複数の検出ラインから、検出ライン上の輝度情報が取得される。ウォーターシェッドアルゴリズムから検出された稜線と検出ラインとの交点の輝度情報と、該交点の近傍の輝度情報との輝度差が、第1閾値以上である場合に、当該稜線はスラグの落下筋であると判定される。
【0009】
ウォーターシェッドアルゴリズムは、輝度の変化により領域分割するので雑音や影などの微細な変化に対しても領域分割され、スラグの落下筋以外の箇所でも稜線が検出されることもあるが、本発明は、ウォーターシェッドアルゴリズムによる稜線検出に加え、所定領域の検出ライン毎に取得される輝度情報を組み合わせて判定するので、より正確にスラグを判定できる。
【0010】
上記石炭ガス化炉のスラグ監視装置の前記落下筋判定手段は、前記交点の近傍の前記輝度情報を、前記交点から前記検出ラインに沿って第1所定間隔離れた第1座標から、該第1座標から前記検出ラインに沿って第2所定間隔離れた第2座標までの区間の輝度の平均値とすることとしてもよい。
【0011】
このように、交点の近傍の輝度情報は、第2所定間隔の区間の輝度平均値を用いることにより、交点との輝度差をより正確なものとして求めることができる。
【0012】
本発明は、溶融したスラグが流出するスラグホール近傍、及び該スラグホールから流出した前記スラグが落下する冷却水の水面近傍を撮像し、それぞれ撮像画像を取得する撮像手段と、各前記撮像画像の所定領域において、前記スラグの落下筋が落下すると推定される方向と交差する方向に設けられる複数の検出ラインから輝度情報を取得する輝度情報取得手段と、各前記検出ラインの少なくとも一端側から他端側の方向に、前記検出ライン上の隣り合う画素の前記輝度情報を比較し、前記輝度情報の値が下降し始める前記画素をピーク位置として検出するピーク検出手段と、前記ピーク位置から所定画素数連続で前記輝度情報の値が下降した前記画素である指定ドットを検出する指定ドット検出手段と、前記ピーク位置の前記輝度情報と前記指定ドットの前記輝度情報との輝度差が第2閾値以上である場合に、前記ピーク位置を前記スラグの落下筋として判定する落下筋判定手段とを具備する石炭ガス化炉のスラグ監視装置を提供する。
【0013】
本発明の構成によれば、溶融したスラグが流出するスラグホール近傍、及び該スラグホールから流出したスラグが落下する冷却水の水面近傍をそれぞれ撮像して取得された撮像画像の所定領域において、推定されるスラグの落下筋と交差する方向に設けられる複数の検出ラインから輝度情報が取得される。検出ラインの少なくとも一端側から他端側の方向に向かって、検出ライン上の隣り合う画素の輝度情報が比較され、輝度情報の値が下降し始める画素がピーク位置として検出される。検出されたピーク位置から所定画素数連続で輝度情報の値が下降した画素である指定ドットが検出されると、指定ドットの輝度情報とピーク位置の輝度情報との輝度差が比較され、輝度差が第2閾値以上である場合に、当該ピーク位置がスラグの落下筋として判定される。
このように、ピーク位置から所定画素数連続で輝度が下降して指定ドットがあり、かつ、ピーク位置と指定ドットとの輝度差が第2閾値以上である場合に、ピーク位置をスラグ筋であると判定するので、より正確にスラグの落下筋を判定できる。
【0014】
上記石炭ガス化炉のスラグ監視装置の前記落下筋判定手段は、前記検出ライン毎に前記スラグの落下筋として判定されたスラグの落下筋の数を計数する計数手段を具備し、前記所定領域において、前記検出ライン毎に計数された前記スラグの落下筋の数のうち最大値を、前記所定領域内の前記スラグの落下筋の数として出力することとしてもよい。
【0015】
最大数をスラグの落下筋の数として決定することにより、スラグ数を少なく見積もることがないので、安全側に対処できる。
【0016】
本発明の参考例は、溶融したスラグが流出するスラグホール近傍、及び該スラグホールから流出した前記スラグが落下する冷却水の水面近傍を撮像し、それぞれ撮像画像を取得する撮像手段と、各前記撮像画像の輝度の平均値に応じて設定される二値化レベルを決定する二値化レベル決定手段と、決定された前記二値化レベルによって、前記撮像画像の所定監視対象の各画素を二値化し、前記二値化レベル以上である前記画素をスラグ領域とし、前記スラグ領域の面積を算出する面積算出手段とを具備する石炭ガス化炉のスラグ監視装置を提供する。
【0017】
本発明の構成によれば、溶融したスラグが流出するスラグホール近傍、及びスラグホールから流出したスラグが落下する冷却水の水面近傍をそれぞれ撮像して取得した撮像画像が、輝度の平均値に応じて二値化レベルが設定され、各画素が二値化レベルに基づいて撮像画像が二値化される。二値化された撮像画像の所定監視対象において、二値化レベル以上である画素をスラグ領域として面積が算出される。
【0018】
このように、それぞれの撮像画像の輝度の平均値に応じて二値化レベルを設定するので、スラグホール近傍を撮像した撮像画像と、スラグが落下する水面近傍を撮像した撮像画像とで、それぞれ二値化レベルが設定できる。また、各撮像画像が撮像された状況(バックグラウンドの輝度)に応じて二値化レベルが変化することになるので、固定の二値化レベル値を用いる場合と比較して、撮像画像に応じて、より精度よくスラグ筋を判定できる。
【0019】
本発明は、溶融したスラグが流出するスラグホールから流出した前記スラグが落下する冷却水の水面近傍を撮像し、撮像画像を取得する撮像手段と、前記撮像画像において、落下する前記スラグの筋毎に設定される所定領域の輝度情報の最大値と平均値とに基づいて、前記所定領域毎に二値化レベルを決定する二値化レベル決定手段と、決定された前記二値化レベルによって前記所定領域毎に各画素を二値化し、前記二値化レベル以上である前記画素をスラグ領域とし、前記スラグ領域の面積を算出する面積算出手段とを具備する石炭ガス化炉のスラグ監視装置を提供する。
【0020】
本発明の構成によれば、溶融したスラグが流出するスラグホールから流出したスラグが落下する冷却水の水面近傍を撮像して取得した撮像画像において、推定されるスラグ毎に設定される所定領域の輝度情報の最大値と平均値とに基づいて二値化レベルが決定され、決定された二値化レベルによって所定領域の各画素を二値化し、二値化レベル以上である画素をスラグ領域とし、スラグ領域の面積が算出される。
【0021】
本発明によれば、1つの撮像画像に複数のスラグ筋が含まれている場合には、それぞれのスラグ筋に対して異なる所定領域が設定され、所定領域毎に二値化レベルが求められ、二値化が所定領域毎に行われる。これによって、例えば、2つのスラグ筋のうち、一方は明確にスラグ筋が判別(輝度が高い)でき、他方はぼやけている(輝度が低い)ような場合であっても、それぞれの輝度に応じた二値化レベルが設定されるため、正しくスラグ筋の面積算出ができる。
【0022】
長期間運転され経年劣化によって監視窓の汚れ等が生じて画像にボケが発生する場合や、複数のスラグがあり撮像手段からそれぞれのスラグまでの距離が異なる(遠近がある)場合等には、一方のスラグに焦点を当てると他方のスラグの認識率が低下するという問題があった。本発明によれば、スラグ筋を含む所定領域に応じて二値化レベルを求めるので、スラグ毎に適切な二値化レベルが設定され、より正確にスラグを判定できる。
【0023】
上記石炭ガス化炉のスラグ監視装置の前記二値化レベル決定手段は、前記所定領域内の前記輝度情報の最大値と前記所定領域内の前記輝度情報の平均値との差に係数を乗算し、該乗算結果と前記輝度情報の平均値とを加算することにより前記二値化レベルを算出することが好ましい。
【0024】
これにより、所定領域内の輝度状況に応じた二値化レベルが簡便に設定でき、スラグ筋の面積を正確に求めることができる。
【0025】
本発明は、溶融したスラグが流出するスラグホール近傍、及び該スラグホールから流出した前記スラグが落下する冷却水の水面近傍を撮像し、それぞれ撮像画像を取得する第1過程と、各前記撮像画像に対してウォーターシェッドアルゴリズムを用い、前記スラグの落下筋として推定される稜線を検出する第2過程と、各前記撮像画像の所定領域において、推定される前記スラグの落下筋と交差する方向に設けられる複数の検出ラインから輝度情報を取得する第3過程と、前記稜線と各前記検出ラインとの交点の前記輝度情報と、各前記検出ラインに沿った前記交点の近傍の前記輝度情報との輝度差が、第1閾値以上である場合に、前記稜線は前記スラグの落下筋であると判定する第4過程とを有する石炭ガス化炉のスラグ監視方法を提供する。
【0026】
本発明は、溶融したスラグが流出するスラグホール近傍、及び該スラグホールから流出した前記スラグが落下する冷却水の水面近傍を撮像し、それぞれ撮像画像を取得する第1過程と、各前記撮像画像の所定領域において、前記スラグの落下筋が落下すると推定される方向と交差する方向に設けられる複数の検出ラインから輝度情報を取得する第2過程と、各前記検出ラインの少なくとも一端側から他端側の方向に、前記検出ライン上の隣り合う画素の前記輝度情報を比較し、前記輝度情報の値が下降し始める前記画素をピーク位置として検出する第3過程と、前記ピーク位置から所定画素数連続で前記輝度情報の値が下降した前記画素である指定ドットを検出する第4過程と、前記ピーク位置の前記輝度情報と前記指定ドットの前記輝度情報との輝度差が第2閾値以上である場合に、前記ピーク位置を前記スラグの落下筋として判定する第5過程とを有する石炭ガス化炉のスラグ監視方法を提供する。
【0027】
本発明の参考例は、溶融したスラグが流出するスラグホール近傍、及び該スラグホールから流出した前記スラグが落下する冷却水の水面近傍を撮像し、それぞれ撮像画像を取得する第1過程と、各前記撮像画像の輝度の平均値に応じて設定される二値化レベルを決定する第2過程と、決定された前記二値化レベルによって、前記撮像画像の所定監視対象の各画素を二値化し、前記二値化レベル以上である前記画素をスラグ領域とし、前記スラグ領域の面積を算出する第3過程とを有する石炭ガス化炉のスラグ監視方法を提供する。
【0028】
本発明は、溶融したスラグが流出するスラグホールから流出した前記スラグが落下する冷却水の水面近傍を撮像し、撮像画像を取得する第1過程と、前記撮像画像において、落下する前記スラグの筋毎に設定される所定領域の輝度情報の最大値と平均値とに基づいて、前記所定領域毎に二値化レベルを決定する第2過程と、決定された前記二値化レベルによって前記所定領域毎に各画素を二値化し、前記二値化レベル以上である前記画素をスラグ領域とし、前記スラグ領域の面積を算出する第3過程とを有する石炭ガス化炉のスラグ監視方法を提供する。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、スラグの評価精度を向上できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の第1の実施形態に係るスラグ監視装置の全体構成図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係るウォーターシェッドアルゴリズムを用いて稜線を求める過程で得られる画像の一例である。
図3】スラグホールカメラ及び水面カメラによって得られた画像の一例を示す図である。
図4】スラグホール画像及び水面画像の関心領域の検出ラインの一例を示す図である。
図5】1つの検出ラインから得られる座標に対する輝度情報を示した図の一例である。
図6】各検出ラインから検出されたスラグ筋数を一覧表示した図の一例である。
図7】本発明の第1の実施形態に係るスラグ監視装置の動作フローである。
図8】本発明の第2の実施形態に係るスラグ監視装置の全体構成図である。
図9】本発明の第2の実施形態に係るスラグ監視装置で検出ラインのピーク輝度追跡を説明するための図である。
図10】本発明の第2の実施形態に係るスラグ監視装置の動作フローである。
図11】(a)第1の実施形態に係るスラグ監視装置によって、スラグホールのスラグ筋数を計測した結果と第2の実施形態に係るスラグ監視装置によってスラグ筋数を計測した結果、(b)図11(a)のうち数の多い方をスラグ筋数として出力した結果、(c)従来の方法によってスラグ筋数を計測した結果の比較の図の一例である。
図12】(a)第1の実施形態に係るスラグ監視装置によって、水面のスラグ筋数を計測した結果と第2の実施形態に係るスラグ監視装置によってスラグ筋数を計測した結果、(b)図12(a)のうち数の多い方をスラグ筋数として出力した結果、(c)従来の方法によってスラグ筋数を計測した結果の比較の図の一例である。
図13】本発明の第3の実施形態に係るスラグ監視装置の全体構成図である。
図14】本発明の第3の実施形態に係るスラグ監視装置の二値化レベル決定部が有するFx設定の図の一例である。
図15】本発明の第3の実施形態に係るスラグ監視装置の動作フローである。
図16】(a)本発明の第3の実施形態に係るスラグ監視装置によって、スラグホールのスラグ筋の面積率を算出した結果と、(b)従来の方法によって算出された面積率の結果との比較図の一例である。
図17】(a)本発明の第3の実施形態に係るスラグ監視装置によって、水面のスラグ筋の面積率を算出した結果と、(b)従来の方法によって算出される面積率の結果との比較図の一例である。
図18】本発明の第4の実施形態に係るスラグ監視装置の全体構成図である。
図19】本発明の第4の実施形態に係るスラグ監視装置の動作フローである。
図20】(a)従来の方法によって算出される面積率の結果と、(b)本発明の第3の実施形態に係るスラグ監視装置によって水面のスラグ筋の面積率を算出した結果と、(c)本発明の第4の実施形態に係るスラグ監視装置によって、水面のスラグ筋の面積率を算出した結果との比較図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、本発明に係る石炭ガス化炉のスラグ監視装置及び方法の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、実施形態の説明においては、本発明の石炭ガス化炉のスラグ監視装置が、石炭ガス化複合発電プラントに適用されるものを想定して説明するが、本発明の石炭ガス化炉のスラグ監視装置は、これに限定されるものではない。
【0032】
〔第1の実施形態〕
図1は、本実施形態に係る石炭ガス化炉のスラグ監視装置100の全体構成図である。
石炭ガス化炉のスラグ監視装置(以下、「スラグ監視装置」という)100は、石炭ガス化炉1において石炭をガス化する過程で発生するスラグの流動状況を監視する装置である。石炭ガス化炉1は、石炭とガス化剤(空気、酸素富化空気、O2等)とが投入され、石炭を燃焼させるコンバスタ1Cと、石炭が投入され、ガス化させるリダクタ1Rと、コンバスタ1Cから排出される溶融スラグを回収するスラグ排出筒4とを含んでいる。
コンバスタ1Cは、スラグタップ2と、スラグホール3とが設けられている。
【0033】
コンバスタ1Cは、内部に投入された微粉炭やチャーを燃焼させ、石炭から可燃ガスを発生させるものである。さらに、燃焼後の灰分が溶けた溶融スラグは、コンバスタ1C内で生成される。コンバスタ1Cの内部では旋回流れが形成されるため、溶融スラグはコンバスタ1C本体の内周面に付着して下方のスラグタップ2に向かって流れ落ちる。
スラグタップ2には、燃焼後の灰分が溶融スラグとなって溜まる。スラグタップ2の略中央には、溶融スラグをスラグホッパ(後述する)5の冷却水に導くスラグホール3が配置されている。
【0034】
スラグタップ2は、コンバスタ1Cの下方に配置される円錐状の部材であって、コンバスタ1C本体の中央に向かって下方に傾く面を有する。このように構成することで、コンバスタ1Cから流れ落ちてきた溶融スラグはコンバスタ1C本体の中央のスラグホール3に導かれる。
スラグホール3は、スラグタップ2からスラグホッパ5の冷却水に溶融スラグを導くものであり、スラグホール3の縁には、堰と、排出されるスラグの流出を案内する溝(流出案内溝)が複数(例えば2つ、180度間隔で対向する位置)形成される。流出案内溝の断面積は、2条のスラグ流が定常的に流下するように設計されている。
【0035】
溶融スラグは、石炭ガス化炉1の運転状態、つまり、コンバスタ1Cの内部条件によって、連続して冷却水中に落下したり、断続的に落下したりする。
スラグ排出筒4は、図1に示すように、石炭ガス化炉1の下方(鉛直方向側)に設けられる。スラグ排出筒4の下方には、スラグホッパ5を備えており、スラグホール3から排出された溶融スラグを冷却する冷却水が貯留される。
スラグ排出筒4の下部には、スラグ溜め7が設けられており、スラグホッパ5に落下して固化したスラグ(固化スラグ)8Rが溜められる。
溶融スラグは、スラグホール3から排出されて、スラグホッパ5の冷却水中に堆積され、堆積量が多くなると冷却水の水面5H付近及び水面5Hを超えて堆積される。
【0036】
スラグ監視装置100は、例えば、図示しないCPU(中央演算装置)、RAM(Random Access Memory)、コンピュータ読み取り可能な記録媒体等の補助記憶装置、キーボードやディスプレイやスピーカなどの入出力装置、及び外部の機器と通信を行うことにより情報の授受を行う通信装置などを備えている。後述の各種機能を実現するための一連の処理の過程は、プログラムの形式で記録媒体等に記録されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、後述の各種機能が実現される。
具体的には、スラグ監視装置100は、撮像部(撮像手段)101と、稜線検出部(稜線検出手段)102と、輝度情報取得部(輝度情報取得手段)103と、落下筋判定部(落下筋判定手段)104とを備えている。
【0037】
撮像部101は、溶融したスラグが流出するスラグホール近傍、及び該スラグホール3から流出したスラグが落下する冷却水の水面近傍を撮像し、それぞれ撮像画像を取得する。撮像部101は、例えば、カメラを含む。具体的には、撮像部101は、溶融したスラグが流出するスラグホール近傍を撮像したスラグホール画像を取得するためのスラグホールカメラ11と、スラグホール3から流出したスラグが落下する冷却水の水面近傍を撮像した水面画像を取得するための水面カメラ12とを含む。
【0038】
スラグホールカメラ11は、スラグ排出筒4の側壁の外側に設けられている。スラグホールカメラ11は、スラグ排出筒4の側壁に設けられているスラグホール監視窓を介してスラグホール3及びスラグホール3の近傍(周辺)を撮像し、スラグホール画像を生成する。スラグホール画像は、輝度分布データを含んでおり、スラグホール3の輝度分布データは、スラグホール画像に含まれる各画素の輝度を示すデータで構成されている。
【0039】
水面カメラ12は、スラグ排出筒4の側壁の外側に設けられている。水面カメラ12は、スラグ排出筒4の側壁に設けられている水面監視窓を介して冷却水の水面5Hを撮像し、水面画像を生成する。水面画像は、輝度分布データを含んでおり、水面5Hの輝度分布データは、水面画像に含まれる各画素の輝度で構成されている。
【0040】
稜線検出部102は、各撮像画像(スラグホール画像及び水面画像)に対してウォーターシェッドアルゴリズム(分水嶺方式、分水界方式)を用い、スラグの落下筋として推定される稜線を検出する。ウォーターシェッドアルゴリズムは、領域分割手法の1つであり、画像の輝度勾配を山に見立て、画像(画素)の輝度値を山の標高、輝度値の極小値、極大値をそれぞれ谷底、尾根とみなし、尾根の位置から水が流れ込む区域を一つの領域として領域分割するアルゴリズムであり、周知の技術である。
【0041】
図2は、ウォーターシェッドアルゴリズムを用いて、スラグホール画像から得られる稜線Xを含む画像の一例である。
具体的には、稜線検出部102は、スラグホールカメラ11及び水面カメラ12から取得される画像(例えば、カラー動画像)を取得すると、取得した各動画像から所定回数(例えば、10回)連続キャプチャして平均画像を作成する。稜線検出部102は、キャプチャされた所定枚数(例えば、10枚)の平均画像を白黒変換して、1枚の白黒画像を生成し、白黒画像をスムージング関数等によって平滑化する。
【0042】
ウォーターシェッドアルゴリズムは、輝度の変化で領域分割するため、雑音や影などの微細な変化に対しても領域分割することになる。結果として過剰分割になるため、過剰分割を防ぐために、雑音や影の影響を軽減するようにスムージング関数等が用いられて予め入力画像に対して平滑化処理が行われている。
稜線検出部102は、スラグホール画像及び水面画像に対してウォーターシェッド処理をする。ウォーターシェッド処理では、設定パラメータをMv(Min variation)値とし、デフォルトを「1」とする。
【0043】
ウォーターシェッドアルゴリズムでは、Mv値を増加させると、スラグホール画像及び水面画像に設定された関心領域(後述する)の稜線Xが徐々に減少するが、Mv値を1ずつインクリメントしたときに、連続して2回関心領域の稜線数が変化しないときの値を稜線として決定し、処理を終了する。
このようなウォーターシェッドアルゴリズムが適用されることにより、図2に示されるように稜線X(ひび割れのように示されている線)が検出される。
【0044】
ここで、関心領域とは、スラグホール画像及び水面画像に設定される、処理対象となる画像領域である。
【0045】
図3には、スラグホールカメラ11によって取得されたスラグホール画像9Hと、水面カメラ12によって取得された水面画像9Wと、関心領域ROI(Region Of Interest)が示されている。スラグホール画像9Hには、スラグホール3とその近傍(周辺)が含まれており、水面画像9Wには、スラグの筋(以下「スラグ筋」という)が流れ落ちる水面5H近傍が含まれている。
【0046】
スラグホール画像9Hには、関心領域としてROI(1)、ROI(2)、ROI(s)、ROI(SL)が設定され、水面画像9Wには、関心領域としてROI(3)、ROI(4)、ROI(5)、ROI(w)、ROI(WL)が設定される。
スラグの流動状況を監視する場合、スラグホール3から流下するスラグ筋8A、8Bを検出し、着目する。
【0047】
ROI(s)は、スラグホール3及びスラグの流下筋8A,8Bを含む領域とする。具体的には、ROI(s)は、ROI(1)とROI(2)とROI(SL)とを含む領域である。
ROI(1)は、ROI(s)で設定された領域内のスラグホール3と、スラグ筋8A,8Bを含む矩形状領域である。ROI(1)の高輝度部面積及び低輝度部面積を評価パラメータとして算出することにより、スラグ流動判定及びスラグホール監視カメラ窓水洗浄ガイダンスの評価を行える。ROI(1)の高輝度部面積とは、ROI(1)において所定値よりも輝度が高い領域の面積である。また、ROI(1)の低輝度面積とは、ROI(1)において所定値よりも輝度が低い領域の面積である。
【0048】
ROI(2)は、スラグホール3の開口部の監視域を含む矩形状領域である。ROI(2)の高輝度部面積を評価パラメータとして算出することにより、スラグホール閉塞(スラグ落下注意)及びスラグ溶融バーナ点火ガイダンスの評価を行える。ROI(2)の開口部高輝度面積とは、ROI(2)において所定値よりも輝度が高い領域の面積である。
なお、スラグホール3を撮像するスラグホールカメラ11は、スラグホール3を斜め下から撮像するので、スラグホール画像9Hにおいてスラグホール3は楕円状で示される。
【0049】
ROI(SL)は、スラグホール3から流下されるスラグ筋を検出する所定領域である。スラグの流動状況を監視する場合に用いられる評価パラメータは、スラグホール3から流下するスラグ筋の本数である。
【0050】
ROI(w)は、水面に落下するスラグ筋を含む領域である。具体的には、ROI(w)は、ROI(3)とROI(4)とROI(5)とROI(WL)とを含む領域である。
ROI(3)は、水面部のスラグ落下状況(例えば、2筋)を含む矩形状領域であり、スラグの流動状況を監視する際に用いられる評価パラメータは、時間域輝度変動量及び低輝度部面積である。時間域輝度変動量とは、ROI(3)において、処理周期毎の輝度の変動量である。また、ROI(3)の低輝度面積とは、ROI(3)において、所定値よりも輝度が低い領域の面積である。
ROI(4)は、水面5Hに落下するスラグ筋2筋のうちの1本(紙面左側;8A)の水面5Hへの突入域を含む領域であり、ROI(5)は、水面5Hに落下するスラグ筋2筋のうちの1本(紙面右側;8B)の水面5Hへの突入域を含む領域である。
【0051】
ROI(4)及びROI(5)の高輝度部面積を評価パラメータとして算出することにより、水面部スラグ堆積注意が判定できる。ROI(4)、ROI(5)の高輝度面積とは、スラグ筋8A、8Bが水面5Hへ落下する領域を示すROI(4)、ROI(5)において、所定値よりも輝度が高い領域の面積である。
ROI(WL)は、水面へ落下するスラグ筋を検出する所定領域である。
なお、スラグ筋の本数は、基本的には、スラグホール3の縁に形成される流出案内溝の本数による。
【0052】
輝度情報取得部103は、各撮像画像(スラグホール画像及び水面画像)の所定領域において、推定されるスラグの落下筋と交差する方向に設けられる複数の検出ラインから輝度情報を取得する。例えば、図4に示されるように、輝度情報取得部103は、スラグホール画像9Hに対して、ROI(SL)を所定領域とし、水面画像9Wに対して、ROI(WL)を所定領域とし、スラグ筋が鉛直方向(紙面の上下方向)に落下している場合には、水平方向に複数(例えば、10本)の検出ラインPを設け、設けられた複数の検出ラインPのそれぞれから輝度情報を取得する。
【0053】
スラグ筋の検出は、ROI内の平均輝度が、下記(1)式の時に検出モードとする。
B1(=20)<検出範囲<B2(=200) (1)
ここで、B1及びB2の値は、輝度レベル(8Bit分解能で0〜255の値)に対して設定している。
B1及びB2はパラメータであり、任意に設定されるものとする。括弧内の数字はデフォルト値とする。B1設定は、監視窓汚れが発生した場合、B2はカメラ映像の飽和現象を想定した対策で、誤検出防止を目的としている。
【0054】
落下筋判定部104は、稜線Xと各検出ラインPとの交点の輝度情報と、各検出ラインPに沿った交点の近傍の輝度情報との輝度差が、第1閾値以上である場合に、稜線Xはスラグの落下筋であると判定する。また、落下筋判定部104は、交点の近傍の輝度情報を、交点から検出ラインPに沿って第1所定間隔離れた第1座標e1から、該第1座標e1から検出ラインPに沿って第2所定間隔離れた第2座標e2までの区間の輝度の平均値とする。
【0055】
図5及び図6を用いて、落下筋判定部104について説明する。
スラグホールカメラ11及び水面カメラ12から取得した映像信号は、A/D変換8ビット分解能で0から255の値を有しており、ROI(SL)及びROI(WL)内の全ての検出ラインPから輝度情報(輝度分布)が得られるようになっている。
図5は、関心領域ROI(SL)内の1つの検出ラインPから得られる輝度情報の一例を示しており、横軸に検出ラインPの座標、縦軸に輝度レベルが示されている(図5の実線を参照)。稜線検出部102によりウォーターシェッドアルゴリズムによって検出した稜線Xの座標と検出ラインPの輝度情報との交点は、点(・)を付している。図5では、輝度情報のグラフの2つの頂点と重なっている。
【0056】
ここで、第1所定間隔をLとし、第2所定間隔をΔLとする。稜線Xの座標と検出ラインPの輝度情報との交点から、検出ラインPに沿って第1所定間隔L離れた第1座標e1から、第1座標e1から検出ラインPに沿って交点とは反対側に第2所定間隔ΔL離れた第2座標e2までの区間の輝度の平均値を求める。
交点の輝度情報と上記求めた平均値との輝度差を算出し、輝度差が第1閾値以上であれば、この交点(点・を付した位置)はスラグ筋であると判断する。交点が複数あれば、各交点に対してそれぞれ輝度差を算出して、全ての交点がスラグ筋であるか否かを判断する。
なお、第1所定間隔L及び第2所定間隔ΔLは、プラントの大きさや現地でスラグ筋の大きさ等の状況を見ながら、監視員によってプラント毎に設定される値とする。
【0057】
また、落下筋判定部104は、検出ラインP毎にスラグの落下筋として判定されたスラグの落下筋の数を計数する計数部(計数手段)110を具備しており、所定領域において、検出ライン毎に計数されたスラグの落下筋の数のうち最大値を、所定領域内の前記スラグの落下筋の数として出力する。
図6は、関心領域ROI(SL)内の10本の検出ラインPのそれぞれにおいて、判断されたスラグ筋の本数の一例が記載されている。ここで示されるスラグ筋の最大数を、当該関心領域ROIにおけるスラグ筋の本数であると決定する。図6においては、最大数が「2」なので、当該関心領域ROI(SL)では、検出されたスラグ筋を「2」本として出力する。
スラグ監視装置100は、このように検出されたスラグ筋の本数をデータ管理するとともに、炉内スラグ評価の一パラメータとする。
【0058】
また、スラグ監視装置100は、さらに分光計10及び落下音センサ13を備える。
分光計10は、スラグ排出筒4の側壁の外側に設けられている。分光計10は、スラグホール3の中心部(微少域)を視野にして、スラグホール観察窓を通して、スラグホール3の中心部の温度を測定する。
落下音センサ13は、スラグが冷却水の水面5Hに落下した音を観測する。
落下音センサ13は、スラグホッパ5の冷却水の水中に設けられている。落下音センサ13としては、例えば、ハイドロホンを用いることができる。落下音センサ13は、自身に入力される音を電気信号に変換して出力する。
【0059】
分光計10は、専用IFボード(図示略)に接続されており、測定されたスラグホール3の中心温度を示す温度データが、専用IFで生成されるようになっている。
【0060】
落下音センサ13が出力する電気信号は、増幅器(図示略)で増幅され、スラグがスラグホッパ5の冷却水に落下するときに発生する落下音の帯域成分を含む所定帯域の信号が通過され、アナログ信号からディジタル信号に変換される。
スラグ監視装置100は、落下音センサ13により検出される落下音から、スラグホール3からスラグが連続して落下しているか、断続的に落下しているか、あるいは落下していないかを判定する。
【0061】
スラグ溜め7の周囲には、スラグ溜め7の冷却水中に存在する固化したスラグ(固化スラグ)8Rを観測する水中スラグ観測部14が設けられる。水中スラグ観測部14は、落下音センサ13の下方に配置される。本実施形態において、水中スラグ観測部14は、検出波を発信する複数(本実施形態では4個)の送波センサ14Tと、送波センサ14Tが発信した検出波を受信する、複数(本実施形態では4個)の受波センサ14Rとで構成される。水中スラグ観測部14は、送波センサ14Tから発信した検出波の減衰度合いを受波センサ14Rで検出することにより、スラグ溜め7内の固化スラグ8Rを観測する。固化スラグ8Rの存在により、検出波が減衰することを利用して、送波センサ14Tから発信された検出波が大きく減衰している受波センサ14Rが存在する場合、この受波センサ14Rと、検出波を発信した送波センサ14Tとの間に固化スラグ8Rが存在すると判定できる。
【0062】
次に、本実施形態に係るスラグ監視装置100の作用を図1から図7を用いて説明する。図7は、本実施形態に係るスラグ監視装置100の動作フローである。
スラグホールカメラ11はスラグホール近傍をカラー動画によって撮像しており、水面カメラ12は水面5H近傍をカラー動画によって撮像している。解析開始指令を取得すると、スラグホールカメラ11及び水面カメラ12から取得される動画像から10枚の画像キャプチャが行われる(図7のステップSA1)。キャプチャされた10枚の画像から白黒変換された白黒画像が1枚生成される(図7のステップSA2)。
【0063】
生成された白黒画像はスムージング関数によって平滑化される(図7のステップSA3)。ウォーターシェッド処理によって稜線検出される(図7のステップSA4)。ウォーターシェッド処理によって検出された稜線Xと、関心領域の各検出ラインPから検出された輝度情報とに基づいて決定される交点の輝度情報と、交点から所定距離離れた交点の近傍の輝度情報とに基づいてスラグ筋が決定される(図7のステップSA5)。関心領域のスラグ筋が決定されると、このスラグ筋の数について評価が行われる(図7のステップSA6)。
【0064】
以上説明してきたように、本実施形態に係る石炭ガス化炉1のスラグ監視装置100及び方法によれば、溶融したスラグが流出するスラグホール3近傍、及びスラグホール3から流出したスラグが落下する冷却水の水面5H近傍が撮像されたそれぞれの撮像画像に対して、ウォーターシェッドアルゴリズムを用いてスラグの落下筋として推定される稜線Xが検出され、撮像画像の所定領域において、推定されるスラグの落下筋と交差する方向に設けられる複数の検出ラインPから、検出ラインP上の輝度情報が取得される。ウォーターシェッドアルゴリズムから検出された稜線Xと検出ラインPとの交点の輝度情報と、該交点の近傍の輝度情報との輝度差が、第1閾値以上である場合に、当該稜線Xはスラグの落下筋であると判定され、落下筋の数が出力される。
【0065】
ウォーターシェッドアルゴリズムでは、輝度の変化により領域分割するので雑音や影などの微細な変化に対しても領域分割され、スラグの落下筋以外の箇所でも稜線Xが検出されることも推定されるが、本発明は、ウォーターシェッドアルゴリズムによる稜線Xの検出に加え、所定領域の検出ライン毎に取得される輝度情報を組み合わせて判定するので、より正確にスラグを判定でき、より正確なスラグ落下筋の数が出力される。
【0066】
これにより、炉内燃焼状況の変化(全体的に明るい、暗い)や、機器状況の変化(経年劣化や監視窓の汚れ等)により取得画像のレベル低下やボケ等が発生した場合であっても、確実にスラグ筋を識別することができる。
ガス化炉内のスラグ動態の診断に関し、スラグホールからの排出及びスラグ排出塔内のスラグ状況を一連監視することによりガス化炉内のスラグ動態をリアルタイムで総合的に監視評価する装置において、炉内評価精度が向上する。
【0067】
〔第2の実施形態〕
以下、本発明の第2の実施形態について図8から図12を用いて説明する。本第2の実施形態に係るスラグ監視装置は、関心領域の検出ラインから検出される輝度情報の値を追いかけることによってスラグ筋を判定する点で第1の実施形態と異なる。以下、第1の実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0068】
図8には、本実施形態に係るスラグ監視装置100aの全体構成図が示されている。スラグ監視装置100aは、撮像部(撮像手段)101と、輝度情報取得部(輝度情報取得手段)103と、ピーク検出部(ピーク検出手段)105と、指定ドット検出部(指定ドット検出手段)106と、落下筋判定部(落下筋判定手段)104aとを備えている。
撮像部101は、溶融したスラグが流出するスラグホール近傍を撮像したスラグホール画像、及び該スラグホールから流出したスラグが落下する冷却水の水面近傍を撮像した水面画像をそれぞれ取得する。
【0069】
輝度情報取得部103は、スラグホール画像及び水面画像の所定領域において、スラグの落下筋が落下すると推定される方向と交差する方向に設けられる複数の検出ラインから輝度情報を取得する。本実施形態においては、スラグホール画像の所定領域を、関心領域ROI(SL)に設定し、水面画像の所定領域を、関心領域ROI(WL)に設定する。
【0070】
ピーク検出部105は、各検出ラインの少なくとも一端側から他端側の方向に、検出ライン上の隣り合う画素の輝度情報を比較し、輝度情報の値が下降し始める画素をピーク位置として検出する。
指定ドット検出部106は、ピーク位置から所定画素数連続で輝度情報の値が下降した画素である指定ドットを検出する。
【0071】
落下筋判定部104aは、ピーク位置の輝度情報と指定ドットの輝度情報との輝度差が第2閾値以上である場合に、ピーク位置をスラグの落下筋として判定する。また、落下筋判定部104aは、検出ライン毎にスラグの落下筋として判定されたスラグの落下筋の数を計数する計数部(計数手段)110を具備しており、所定領域において、検出ライン毎に計数されたスラグの落下筋の数のうち最大値を、所定領域内の前記スラグの落下筋の数として出力する。
【0072】
次に、本実施形態に係るスラグ監視装置100aの作用を図8から図10を用いて説明する。ここでは、スラグホール画像9Hの関心領域ROI(SL)からスラグ筋を判定する場合を例に挙げて説明する。図9は、横軸は、スラグホール画像9Hの関心領域ROI(SL)の検出ラインの座標とし、縦軸には、ROI(SL)内の10本の検出ラインのうち、1つの検出ライン上の座標で得られた輝度情報を輝度レベルとし、座標と輝度レベルの関係を示す一例を示している。
スラグホールカメラ11はスラグホール近傍をカラー動画によって撮像しており、水面カメラ12は水面5H近傍をカラー動画によって撮像している。解析開始指令を取得すると、スラグホールカメラ11及び水面カメラ12から取得される動画像から10枚の画像キャプチャが行われる(図10のステップSB1)。キャプチャされた10枚の画像から白黒変換された白黒画像が1枚生成される(図10のステップSB2)。
【0073】
生成された白黒画像はスムージング関数によって平滑化される(図10のステップSB3)。平滑化された画像は、関心領域ROI(SL)及び関心領域ROI(WL)が設定され、複数の検出ラインのそれぞれから輝度情報が取得される(図10のステップSB4)。検出ラインの輝度情報のうち、紙面左側から座標中央に向かって画素毎に輝度レベルが比較され、追跡される(図10のステップSB5)。検出ライン上の隣り合う画素の輝度情報が比較され、輝度情報の値が下降し始める画素がピーク位置として検出され、ピーク位置から所定画素数連続で輝度情報の値が下降した画素である指定ドットが検出される(図10のステップSB6)。同様に、紙面右側から座標中央に向かって画素毎に輝度レベルを比較して追跡し、ピーク位置及び指定ドットが検出される(図10のステップSB5及びステップSB6を繰り返す)。
【0074】
ピーク位置の輝度情報と指定ドットの輝度情報との輝度差が第2閾値以上であると判定された場合に、ピーク位置がスラグ筋であると判定される(図10のステップSB7)。ROI内の全ての検出ラインについて、ステップSB5からステップSB7が繰り返され、それぞれスラグ筋の本数の判定がなされ、ROI内で最も大きい値が、当該ROIのスラグ本数と決定される(図10のステップSB8)。関心領域のスラグ筋が決定されると、このスラグ筋の数について評価が行われる(図10のステップSB9)。
本処理は、関心領域ROI(SL)及びROI(WL)の複数の検出ラインに対してそれぞれ行う。
【0075】
以上説明してきたように、本実施形態に係る石炭ガス化炉1のスラグ監視装置100a及び方法によれば、溶融したスラグが流出するスラグホール近傍、及び該スラグホール3から流出したスラグが落下する冷却水の水面近傍をそれぞれ撮像して取得された撮像画像の所定領域において、スラグの落下筋が落下すると推定される方向と交差する方向に設けられる複数の検出ラインから輝度情報が取得される。検出ラインの少なくとも一端側から他端側の方向に向かって、検出ライン上の隣り合う画素の輝度情報が比較され、輝度情報の値が下降し始める画素がピーク位置として検出される。
【0076】
検出されたピーク位置から所定画素数連続で輝度情報の値が下降した画素である指定ドットが検出されると、指定ドットの輝度情報とピーク位置の輝度情報との輝度差が比較され、輝度差が第2閾値以上である場合に、当該ピーク位置がスラグの落下筋として判定され、所定領域のスラグの落下筋の数が出力される。
このように、ピーク位置から所定画素数連続で輝度が下降して指定ドットがあり、かつ、ピーク位置と指定ドットとの輝度差が第2閾値以上である場合に、ピーク位置をスラグ筋であると判定するので、正確にスラグの落下筋を判定でき、スラグの落下筋の正確な本数が出力できる。
【0077】
なお、第1の実施形態と本第2の実施形態の方法を組み合わせ、両者で求めたスラグ筋数の多い方を最終的なスラグ筋として判定してもよく、これにより、より正確なスラグ筋が判定できる。
【0078】
ここで、図11(a)には、本第2の実施形態に係るスラグ監視装置100aによりスラグホールを観測した結果(実線;ピーク輝度追跡)と、第1の実施形態に係るスラグ監視装置100によりスラグホールを観測した結果(点線;WTS+輝度)を重ね合わせて表示している。図11(a)に基づいて、スラグ筋の本数が多い方を最終的なスラグ筋としてグラフ化したのが、図11(b)である。図11(c)は、従来の空間フィルタ法によって観測した結果を示している。
【0079】
図11(a)(b)(c)は、突発的な事象変化による誤検出を回避するためオフディレー動作機能(例えば、“0”本が3回連続で“0”本とし、「3回」は設定値)を組み入れている。図11(b)と図11(c)を比較すると、図11(b)(第1の実施形態と第2の実施形態を組み合わせて検出)の場合は、全て有数(1本以上)のスラグ筋が検出されている。一方、従来法は、高い頻度でスラグ筋の本数が変化しており、スラグ筋の本数も0から2本で推移し、スラグ筋を認識出来ないケースが多々発生している。
このように、従来検出できなかった事象(画像のレベル低下やボケなどが発生した場合)でも、安定した検出が可能である。
【0080】
図12(a)には、本第2の実施形態に係るスラグ監視装置100aにより水面を観測した結果(実線;ピーク輝度追跡)と第1の実施形態に係るスラグ監視装置100により水面を観測した結果(点線;WTS+輝度)とを重ね合わせて表示している。図12(a)に基づいて、スラグ筋の本数が多い方を最終的なスラグ筋としてグラフ化したのが、図12(b)である。図12(c)は、従来の空間フィルタ法によって観測した結果を示している。水面画像においても、図11と同様な傾向が見られた。
【0081】
図12(a)(b)(c)は、突発的な事象変化による誤検出を回避するためオフディレー動作機能(例えば、“0”本が3回連続で“0”本とし、「3回」は設定値)を組み入れている。
図12(b)と図12(c)を比較すると、図12(b)(第1の実施形態と第2の実施形態を組み合わせて検出)の場合は、全て有数(1本以上)のスラグ筋が検出され安定している。一方、従来法は、高い頻度でスラグ筋の本数が変化しており、スラグ筋の本数も0から3本で推移し、スラグ筋を認識出来ないケースが多々発生している。
図11同様に、従来検出できなかった事象(画像のレベル低下やボケなどが発生した場合)でも、安定した検出が可能である。
【0082】
〔第3の実施形態〕
以下、本発明の第3の実施形態について図13から図15を用いて説明する。本第3の実施形態に係るスラグ監視装置は、監視対象とする画像のバックグラウンドの輝度状況から二値化レベルを決定して、スラグ筋の面積を求める点で第1の実施形態、第2の実施形態と異なる。以下、第1の実施形態、第2の実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0083】
図13には、本実施形態に係るスラグ監視装置100bの全体構成図を示している。
図13に示されるように、スラグ監視装置100bは、撮像部(撮像手段)101と、二値化レベル決定部(二値化レベル決定手段)107と、面積算出部(面積算出手段)108とを備えている。
撮像部101は、溶融したスラグが流出するスラグホール近傍を撮像したスラグホール画像、及び該スラグホールから流出したスラグが落下する冷却水の水面近傍を撮像した水面画像をそれぞれ取得する。
【0084】
二値化レベル決定部107は、各撮像画像の輝度の平均値(平均輝度レベル)に応じて設定される二値化レベルを決定する。二値化レベルとは、撮像画像を二値化するための閾値である。具体的には、二値化レベル決定部107は、スラグホール画像に対しては、関心領域ROI(s)の輝度の平均値に対応する二値化レベルを決定し、水面画像に対しては関心領域ROI(w)の輝度の平均値に対応する二値化レベルを決定する。
図14は、横軸をROIの平均輝度レベルとし、縦軸を二値化レベルとしている。
図14に示されるように、二値化レベル決定部107は、画像のバックグラウンドの平均輝度に対して、二値化レベルを出力するためのFx設定(例えば、テーブル、関数等)を有しており、二値化レベル決定部107は、算出された平均輝度が入力されると二値化レベルを出力する。
【0085】
面積算出部108は、決定された二値化レベルによって、撮像画像の所定監視対象の各画素を二値化し、二値化レベル以上である画素をスラグ領域とし、スラグ領域の面積を算出する。所定監視対象とは、二値化レベルを求めた関心領域ROI(s)及び関心領域ROI(w)より小さい範囲である。具体的には、スラグホール画像においては、所定監視対象をROI(1)及びROI(2)とし、水面画像においては、所定監視対象をROI(4)及びROI(5)とする。
ここで、スラグ領域の面積とは、スラグホール画像においては、スラグホール3から流出したスラグ筋の面積となり、水面画像においては、冷却水に堆積して水面5Hまで到達している堆積スラグの面積を含む。
【0086】
次に、本実施形態に係るスラグ監視装置100bの作用を図13から図15を用いて説明する。図15は、スラグ監視装置100の動作フローを示している。
スラグホールカメラ11はスラグホール近傍をカラー動画によって撮像しており、水面カメラ12は水面5H近傍をカラー動画によって撮像している。解析開始指令を取得すると、スラグホールカメラ11及び水面カメラ12から取得される動画像から10枚の画像キャプチャが行われる(図15のステップSC1)。キャプチャされた10枚の画像から白黒変換された白黒画像が1枚生成される(図15のステップSC2)。
【0087】
生成された白黒画像はスムージング関数によって平滑化される(図15のステップSC3)。平滑化された画像は、関心領域ROI(s)及び関心領域ROI(w)のそれぞれの平均輝度レベルが算出される(図15のステップSC4)。Fx設定と、平均輝度レベルとに基づいて、二値化レベルが算出される(図15ステップSC5)。スラグホール画像から算出された二値化レベルに基づいて、ROI(1)、ROI(2)を二値化処理し、水面画像から算出された二値化レベルに基づいて、ROI(4)、ROI(5)を二値化処理される(図15のステップSC6)。二値化レベル以上のスラグ領域に相当する面積率が算出される(図15のステップSC7)。算出された面積率のデータ管理が行われ、評価される。(図15のステップSC8)。
【0088】
以上説明してきたように、本実施形態に係る石炭ガス化炉1のスラグ監視装置100b及び方法によれば、溶融したスラグが流出するスラグホール近傍、及びスラグホール3から流出したスラグが落下する冷却水の水面近傍をそれぞれ撮像して取得した撮像画像において、所定の関心領域ROI(s)及びROI(w)が設定され、所定の関心領域ROI(s)及びROI(w)における輝度の平均値に応じて二値化レベルが設定され、各画素が二値化レベルに基づいて、所定監視領域としてROI(1)、ROI(2)、ROI(4)、ROI(5)が二値化される。二値化された撮像画像において、二値化レベル以上である画素をスラグ領域として面積が算出される。
【0089】
このように、それぞれの撮像画像に設けられる所定の関心領域ROI(w)、ROI(s)の輝度の平均値に応じて、それぞれ二値化レベルを求めるので、スラグホール近傍を撮像した撮像画像と、スラグが落下する水面近傍を撮像した撮像画像とで、二値化レベルがそれぞれ設定できる。また、所定監視画像が撮像された状況(バックグラウンドの輝度)に応じて二値化レベルが変化することになるので、固定の二値化レベル値を用いる場合と比較して、より精度よくスラグ筋を判定できる。
【0090】
図16は、本実施形態に係るスラグ監視装置100bによって、スラグホールを観測し、スラグ筋の面積率を算出した場合と、従来の方法(二値化レベル:固定)によって面積率を算出した場合との比較図の一例である。
ROI(1)、ROI(2)の面積率は、従来法に比べ、本第3の実施形態の方がスラグ面積率の変動が小さく妥当な挙動で炉内状況に相応の安定した結果が得られている。
【0091】
図17は、本実施形態に係るスラグ監視装置100bによって、水面を観測し、スラグ筋の面積率を算出した場合と、従来の方法(二値化レベル:固定)によって面積率を算出した場合との比較図の一例である。
ROI(4)とROI(5)の面積率は、従来法に比べ、本第3の実施形態の方が、スラグ面積率の変動が小さく妥当な挙動で炉内状況に相応の安定した結果が得られている。
【0092】
〔第4の実施形態〕
以下、本発明の第4の実施形態について図18から図20を用いて説明する。本第4の実施形態に係るスラグ監視装置は、スラグ筋を含む所定領域の輝度情報に基づいて二値化レベルを決定する点で第1の実施形態、第2の実施形態、第3の実施形態と異なる。以下、第1の実施形態、第2の実施形態、第3の実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点について主に説明する。なお、本第4の実施形態では、水面画像の処理のみ行う。
【0093】
図18には、本実施形態に係るスラグ監視装置100cの全体構成図が示されている。図18に示されるように、スラグ監視装置100cは、撮像部(撮像手段)101と、二値化レベル決定部107cと、面積算出部108cとを備えている。
撮像部101は、該スラグホールから流出したスラグが落下する冷却水の水面近傍を撮像した水面画像を取得する。
【0094】
二値化レベル決定部107cは、撮像画像において、スラグ毎に設定される所定領域の輝度情報の最大値(最大輝度)と平均値(平均輝度)とに基づいて二値化レベル(二値化のための閾値)を決定する。具体的には、二値化レベル決定部107cは、水面画像の水面5Hに突入するスラグのそれぞれに対する所定の関心領域であるROI(4)及びROI(5)を設定し、ROI(4)及びROI(5)のそれぞれにおいて、輝度情報の最大値と平均値とに基づいて二値化レベルを決定する。
【0095】
より具体的には、二値化レベル決定部107cは、所定領域内の輝度情報の最大値と所定領域内の輝度情報の平均値との差に係数を乗算し、該乗算結果と輝度情報の平均値とを加算することにより二値化レベルを算出する((2)式参照)。ここで、kは係数とする。
二値化レベル=
(ROI内の最大輝度−ROIの平均輝度)×k+ROIの平均輝度 (2)
【0096】
面積算出部108cは、決定された二値化レベルによって所定領域の各画素を二値化し、二値化レベル以上である画素をスラグ領域とし、スラグ領域の面積を算出する。
【0097】
次に、本実施形態に係るスラグ監視装置100cの作用を図18から図19を用いて説明する。図19は、スラグ監視装置100の動作フローを示している。
水面カメラ12は水面5H近傍をカラー動画によって撮像している。解析開始指令を取得すると、水面カメラ12から取得される動画像から10枚の画像キャプチャが行われる(図19のステップSD1)。キャプチャされた10枚の画像から白黒変換された白黒画像が1枚生成される(図19のステップSD2)。
【0098】
生成された白黒画像はスムージング関数によって平滑化される(図19のステップSD3)。平滑化された画像は、関心領域ROI(4)及び関心領域ROI(5)のそれぞれの平均輝度レベルが算出されるとともに、関心領域ROI(4)及び関心領域ROI(5)のそれぞれの輝度情報の最大値が出力される(図19のステップSD4)。関心領域(4)及び関心領域ROI(5)に基づいて二値化レベルが算出される(図19のステップSD5)。算出されたそれぞれの二値化レベルに基づいて、関心領域ROI(4)及び関心領域ROI(5)に二値化処理が行われる(図19のステップSD6)。二値化レベル以上のスラグ領域に相当する面積率が算出される(図19のステップSD7)。算出された面積率のデータ管理が行われ、評価される。(図19のステップSD8)。
【0099】
以上説明してきたように、本実施形態に係る石炭ガス化炉1のスラグ監視装置100c及び方法によれば、溶融したスラグが流出するスラグホール3から流出したスラグが落下する冷却水の水面近傍を撮像して取得した撮像画像に対して、スラグ筋を含む関心領域ROI(4)及び関心領域ROI(5)を設定し、関心領域ROI(4)及び関心領域ROI(5)における輝度情報の最大値と平均値とに基づいて二値化レベルが決定され、決定された二値化レベルによって所定領域の各画素を二値化し、二値化レベル以上である画素をスラグ領域とし、スラグ領域の面積が算出される。
【0100】
このように、輝度情報の最大値と平均値とを勘案して二値化レベルを設定するので、1つの撮像画像にROI(4)とROI(5)にスラグ筋が含まれると推定され、例えば、ROI(4)のスラグ筋は輝度が高く、ROI(5)のスラグ筋は輝度が低いような場合であっても、それぞれの領域に応じた二値化レベルに基づいて撮像画像の二値化が行われる。これにより、関心領域内の輝度に応じた二値化レベルが設定され、正しくスラグ筋の面積算出ができる。
【0101】
図20は、本第4の実施形態に係るスラグ監視装置100cによって、水面を観測し、スラグ筋の面積率を算出した場合(図20(c))と、第3の実施形態に係るスラグ監視装置100bによってスラグ筋の面積率を算出した場合(図20(b))と、従来の方法(二値化レベル:固定)によって面積率を算出した場合(図20(a))との比較図の一例である。
ROI(4)のスラグ堆積面積率(%)(点線)と、ROI(5)のスラグ堆積面積率(%)(実線)は、従来法に比べ、本第4の実施形態の方が、スラグ面積率の変動が小さく妥当な挙動で炉内状況に相応の安定した結果が得られている。また、本第4の実施形態に係るスラグ監視装置100cによるROI(4)及びROI(5)の面積率(図20(c))は、第3の実施形態のスラグ監視装置100bによるROI(4)及びROI(5)の面積率(図20(b))よりさらに高精度な検出結果となっている。
【0102】
以上、本発明の実施形態について説明したが、発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施が可能である。
なお、第1の実施形態から第4の実施形態を適宜組み合わせて実施してもよい。例えば、第1の実施形態の構成に第2の実施形態の構成を組み合わせてもよいし、第1の実施形態の構成から第4の実施形態の構成を組み合わせてもよい。
【0103】
また、第1の実施形態及び第2の実施形態によって得られたスラグ筋の本数の情報や、第3の実施形態及び第4の実施形態によって得られたスラグ筋の面積の情報は、例えば、スラグ流動筋が安定しているか否か、スラグホールが閉塞する虞があるか否か等の判定に用い、判定の結果に基づいて、適宜各種ガイダンスの出力が行われるようにしてもよい。各種ガイダンスを出力するとは、例えば、スラグホールが閉塞する虞があると判定された場合に、その旨をディスプレイやスピーカから報知すること、スラグホールにスラグが堆積したと判定された場合に、スラグ溶融バーナの点火を促す旨を報知すること、スラグホールカメラや水面カメラの監視窓を洗浄する時期であると判定された場合に、ディスプレイやスピーカでその旨を報知すること等である。報知を受けた作業者は、報知に基づいて対処することができる。
また、第1の実施形態から第4の実施形態により得られたスラグ筋本数やスラグ筋面積の結果を、特許第5448669号公報に記載の各種判定ロジックに適用しても良い。
【符号の説明】
【0104】
1 石炭ガス化炉
2 スラグタップ
3 スラグホール
5 スラグホッパ
5H 水面
100,100a,100b,100c スラグ監視装置
101 撮像部
102 稜線検出部
103 輝度情報取得部
104,104a 落下筋判定部
105 ピーク検出部
106 指定ドット検出部
107,107c 二値化レベル決定部
108,108c 面積算出部
P 検出ライン
X 稜線
e1 第1座標
e2 第2座標
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20