特許第6404057号(P6404057)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジェイアール東日本コンサルタンツ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6404057-ナビゲーションシステム 図000002
  • 特許6404057-ナビゲーションシステム 図000003
  • 特許6404057-ナビゲーションシステム 図000004
  • 特許6404057-ナビゲーションシステム 図000005
  • 特許6404057-ナビゲーションシステム 図000006
  • 特許6404057-ナビゲーションシステム 図000007
  • 特許6404057-ナビゲーションシステム 図000008
  • 特許6404057-ナビゲーションシステム 図000009
  • 特許6404057-ナビゲーションシステム 図000010
  • 特許6404057-ナビゲーションシステム 図000011
  • 特許6404057-ナビゲーションシステム 図000012
  • 特許6404057-ナビゲーションシステム 図000013
  • 特許6404057-ナビゲーションシステム 図000014
  • 特許6404057-ナビゲーションシステム 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6404057
(24)【登録日】2018年9月21日
(45)【発行日】2018年10月10日
(54)【発明の名称】ナビゲーションシステム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/26 20060101AFI20181001BHJP
   G08G 1/005 20060101ALI20181001BHJP
   G09B 29/10 20060101ALI20181001BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20181001BHJP
【FI】
   G01C21/26 P
   G08G1/005
   G09B29/10 A
   G09B29/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-198364(P2014-198364)
(22)【出願日】2014年9月29日
(65)【公開番号】特開2016-70737(P2016-70737A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】592145268
【氏名又は名称】JR東日本コンサルタンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(72)【発明者】
【氏名】小林 三昭
(72)【発明者】
【氏名】荒井 義雄
【審査官】 久保田 創
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−192670(JP,A)
【文献】 特開2010−049252(JP,A)
【文献】 特開2011−215019(JP,A)
【文献】 特開2003−172632(JP,A)
【文献】 特開2001−005994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00−21/36
23/00−25/00
G08G 1/00−99/00
G09B 29/00
G09B 29/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報配信サーバと、当該情報配信サーバと通信する移動通信端末とを備えるナビゲーションシステムであって、
前記情報配信サーバは、経路案内対象エリアにある施設の3次元空間モデルデータを記憶する記憶手段を備え、前記3次元空間モデルデータは、前記施設の各構造物に対応したオブジェクトデータと前記オブジェクトデータに基づいて移動可能空間を規定した移動可能空間データとを有し、前記オブジェクトデータは、施設の3次元空間に対応した3次元座標と、移動時に障害となる構造物であるか否かを定義した属性とを有し、
前記移動通信端末は、前記移動可能空間データに基づいて、移動可能空間を介して現在位置と目的位置とを結ぶ最短の経路を探索する経路探索手段と、現在位置を基準とした視界空間に含まれる前記オブジェクトデータに基づいて3次元アニメーション画像を生成し、前記経路探索手段により探索された最短の経路を前記3次元アニメーション画像上に重ねたナビゲーション画像を生成する描画処理手段と、前記描画処理手段で生成された前記ナビゲーション画像を表示する表示手段とを備え
前記記憶手段は、経路案内時に目標となる目標物の画像データを、前記オブジェクトデータにリンクさせて記憶し、前記描画処理手段は、前記3次元アニメーション画像内に前記目標物の画像データをはめ込んで表示させることを特徴とするナビゲーションシステム。
【請求項2】
前記移動可能空間データは、前記移動可能空間が、各フロアを構成する構造物の前記オブジェクトデータの属性に基づいてフロア平面内で規定されると共に、フロア間を結ぶ前記オブジェクトデータの属性に基づいてフロア立体空間で規定されることを特徴とする請求項1に記載のナビゲーションシステム。
【請求項3】
前記記憶手段は、前記目標物の画像データを、前記3次元空間モデルデータから独立して個別に更新可能に構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のナビゲーションシステム。
【請求項4】
前記経路探索手段は、前記目的位置が現在位置と異なるフロアにある場合、現在位置フロアにおいて目的位置フロアへ通じる移動可能ポイントを検索し、前記現在位置と前記移動可能ポイントとの間で前記移動可能空間を通過する最短距離のフロア内経路を検索することを特徴とする請求項2に記載のナビゲーションシステム。
【請求項5】
前記移動通信端末は、方位取得手段を備え、
前記描画処理手段は、前記表示手段に表示する前記視界空間に対応した前記3次元アニメーション画像の視界空間を、前記方位取得手段による検出方位に応じて切り替えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のナビゲーションシステム。
【請求項6】
情報配信サーバと、当該情報配信サーバと通信する移動通信端末とを備えるナビゲーションシステムであって、
前記情報配信サーバは、経路案内対象エリアにある施設の3次元空間モデルデータを記憶する記憶手段と、現在位置と目的位置とを結ぶ経路を探索する経路探索手段と、ナビゲーション画像を生成する描画処理手段と、前記描画処理手段で生成された前記ナビゲーション画像を前記移動通信端末へ配信する配信手段とを備え、
前記移動通信端末は、前記情報配信サーバからリアルタイムで配信される前記描画処理手段で生成された前記ナビゲーション画像を表示する表示手段を備え、
前記記憶手段は、前記3次元空間モデルデータとして、前記施設の各構造物に対応したオブジェクトデータと前記オブジェクトデータに基づいて移動可能空間を規定した移動可能空間データとを有し、前記各オブジェクトデータは、施設の3次元空間に対応した3次元座標と、移動時に障害となる構造物であるか否かを定義した属性とを有し、
前記経路探索手段は、前記移動可能空間データに基づいて、移動可能空間を介して現在位置と目的位置とを結ぶ最短の経路を探索し、
前記描画処理手段は、現在位置を基準とした視界空間に含まれる前記オブジェクトデータに基づいて3次元アニメーション画像を生成し、前記経路探索手段により探索された最短の経路を前記3次元アニメーション画像上に重ねたナビゲーション画像を生成し、
前記記憶手段は、経路案内時に目標となる目標物の画像データを、前記オブジェクトデータにリンクさせて記憶し、前記描画処理手段は、前記3次元アニメーション画像内に前記目標物の画像データをはめ込んで表示させることを特徴とするナビゲーションシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者等の被誘導者の現在位置から目的位置までの経路を案内するナビゲーションシステムに関し、特に、大規模駅建屋等の施設内を移動する歩行者等の現在位置から目的位置までの移動経路を案内するナビゲーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多層階構造を有する駅構内において、歩行者の現在位置から所望の目的位置までの経路案内を行う歩行者用のナビゲーションシステムが提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載のナビゲーションシステムにおいては、情報配信サーバが、移動通信端末から送信される歩行者の現在位置情報に基づいて、要求される駅構内の所定の目的位置までの経路案内を実施する。
【0003】
情報配信サーバは、予め、駅構内の3次元地図データを保有しており、歩行者の現在位置及び目的位置をその3次元地図データ上に特定してプロットする。この3次元地図データは、立方体に形成される複数の空間ブロックをXYZ方向に繋げて構成される。経路案内をする場合には、隣接する空間ブロックの連結状態(通行可/不可)を認識して目的位置までの最短経路を探索する。例えば、隣接する空間ブロック間の境界面が通行不可の場合には、通行できない空間ブロックを避けるような経路が選択される。
【0004】
また、経路探索結果は歩行者の移動通信端末上に画像表示される。例えば、歩行者の現在位置と目的位置とを1つの画面上で把握できるように、駅構内の概略的な鳥瞰図が表示される。これにより、歩行者は現在位置から目的位置までの経路を鳥瞰図から把握する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−10563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のナビゲーションシステムは、3次元地図データが複数の空間ブロックで構成されるため、空間ブロックのピッチを小さくすれば経路案内の精度が上がるものの、高い精度を実現しようとすると空間ブロック数が増えるため経路案内の処理速度が低下する。一方、空間ブロックのピッチを大きくすれば空間ブロック数が減るため、経路案内の処理速度が上がるものの、経路案内の精度が低下する。このように、3次元地図データを複数の空間ブロックで構成する場合、経路案内の処理速度と経路案内の精度とがトレードオフの関係にあったので、経路案内の高精度化が難しかった。
【0007】
また、特許文献1に記載のナビゲーションシステムは、移動通信端末に表示される経路案内画像が鳥瞰図で表示されるため、歩行者の見ている現実空間とは大きく異なっており、必ずしも高精度なナビゲーションが実現されていなかった。
【0008】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、経路案内の処理速度を低下させることなく、被誘導者の現実の視界にリンクした施設の3次元アニメーション画像に目的位置に向かう移動経路を表示でき、経路案内の精度を高めることができるナビゲーションシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のナビゲーションシステムは、情報配信サーバと、当該情報配信サーバと通信する移動通信端末とを備えるナビゲーションシステムであって、前記情報配信サーバは、経路案内対象エリアにある施設の3次元空間モデルデータを記憶する記憶手段を備え、前記3次元空間モデルデータは、前記施設の各構造物に対応したオブジェクトデータと前記オブジェクトデータに基づいて移動可能空間を規定した移動可能空間データとを有し、前記オブジェクトデータは、施設の3次元空間に対応した3次元座標と、移動時に障害となる構造物であるか否かを定義した属性とを有し、前記移動通信端末は、前記移動可能空間データに基づいて、移動可能空間を介して現在位置と目的位置とを結ぶ最短の経路を探索する経路探索手段と、現在位置を基準とした視界空間に含まれる前記オブジェクトデータに基づいて3次元アニメーション画像を生成し、前記経路探索手段により探索された最短の経路を前記3次元アニメーション画像上に重ねたナビゲーション画像を生成する描画処理手段と、前記描画処理手段で生成された前記ナビゲーション画像を表示する表示手段とを備え、前記記憶手段は、経路案内時に目標となる目標物の画像データを、前記オブジェクトデータにリンクさせて記憶し、前記描画処理手段は、前記3次元アニメーション画像内に前記目標物の画像データをはめ込んで表示させることを特徴とする。
【0010】
本発明のナビゲーションシステムは、情報配信サーバと、当該情報配信サーバと通信する移動通信端末とを備えるナビゲーションシステムであって、前記情報配信サーバは、経路案内対象エリアにある施設の3次元空間モデルデータを記憶する記憶手段と、現在位置と目的位置とを結ぶ経路を探索する経路探索手段と、ナビゲーション画像を生成する描画処理手段と、前記描画処理手段で生成された前記ナビゲーション画像を前記移動通信端末へ配信する配信手段とを備え、前記移動通信端末は、前記情報配信サーバからリアルタイムで配信される前記描画処理手段で生成された前記ナビゲーション画像を表示する表示手段を備え、前記記憶手段は、前記3次元空間モデルデータとして、前記施設の各構造物に対応したオブジェクトデータと前記オブジェクトデータに基づいて移動可能空間を規定した移動可能空間データとを有し、前記オブジェクトデータは、施設の3次元空間に対応した3次元座標と、移動時に障害となる構造物であるか否かを定義した属性とを有し、前記経路探索手段は、前記移動可能空間データに基づいて、移動可能空間を介して現在位置と目的位置とを結ぶ最短の経路を探索し、前記描画処理手段は、現在位置を基準とした視界空間に含まれる前記オブジェクトデータに基づいて3次元アニメーション画像を生成し、前記経路探索手段により探索された最短の経路を前記3次元アニメーション画像上に重ねたナビゲーション画像を生成し、前記記憶手段は、経路案内時に目標となる目標物の画像データを、前記オブジェクトデータにリンクさせて記憶し、前記描画処理手段は、前記3次元アニメーション画像内に前記目標物の画像データをはめ込んで表示させることを特徴とする。
【0011】
これらの構成によれば、3次元空間モデルデータを、施設の各構造物に対応したオブジェクトデータとオブジェクトデータに対応させて移動可能空間を規定した移動可能空間データとで構成し、現在位置を基準とした視界空間の3次元アニメーション画像を移動通信端末に表示し、移動可能空間データに基づいて、移動可能空間を介して現在位置と目的位置とを結ぶ最短の経路を探索するように構成した。これにより、地図データを準備することなく、3次元空間モデルデータを用いて経路探索することができ、3次元空間モデルデータに基づいて現実空間を擬した3次元アニメーション画像を表示できる。したがって、ナビゲーション画像に基づく経路案内は、現実空間と略同じ3次元アニメーション画像上で行うことができ、経路案内の処理速度を低下させることなく、経路案内の精度を高めることができる。また、3次元アニメーション画像上に目標物の情報が表示されることで、被誘導者が目的位置までの経路を認識し易くなり、高精度な経路案内を実現することができる。
【0012】
また、本発明の上記ナビゲーションシステムにおいて、前記移動可能空間データは、前記移動可能空間が、各フロアを構成する構造物の前記オブジェクトデータの属性に基づいてフロア平面内で規定されると共に、フロア間を結ぶ前記オブジェクトデータの属性に基づいてフロア立体空間で規定される。これにより、移動可能空間データがフロア内平面とフロア立体空間とで規定されるので、3次元空間モデルデータ上で経路探索して、フロア間を跨いだ目的位置までの経路案内を実現することができる。
【0014】
また、本発明の上記ナビゲーションシステムにおいて、前記記憶手段は、前記目標物の画像データを、前記3次元空間モデルデータから独立して個別に更新可能に構成されている。これにより、施設内に新しい店舗が出店される等、目標物に変更があった場合に、変更内容に対応して新規構造物のオブジェクトデータを新規に作成することなく、目標物の画像データのみを更新するだけで、現実空間を擬した3次元アニメーション画像を表示できる。よって、目標物の更新時における情報配信サーバ等の負荷を最小限に抑えることができる。
【0015】
また、本発明の上記ナビゲーションシステムにおいて、前記経路探索手段は、前記目的位置が前記現在位置と異なるフロアにある場合、現在位置フロアにおいて目的位置フロアへ通じる移動可能ポイントを検索し、前記現在位置と前記移動可能ポイントとの間で前記移動可能空間を通過する最短距離のフロア内経路を検索する。これにより、現在位置と目的位置とが異なるフロアに存在しても、現在位置フロアにおいて目的位置フロアへ通じる移動可能ポイントを検索することで、フロア間を跨いだ目的位置までの最短経路で経路案内を実現することができる。
【0016】
また、本発明の上記ナビゲーションシステムにおいて、前記移動通信端末は、方位取得手段を備え、前記描画処理手段は、前記表示手段に表示する前記視界空間に対応した前記3次元アニメーション画像を前記方位取得手段による検出方位に応じて切り替える。これにより、被誘導者(移動通信端末)の向きに応じて3次元アニメーション画像を被誘導者の視界空間に連動するように変化させることができ、より被誘導者の現実の視界にリンクした3次元アニメーション画像を表示することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、目的位置までの経路探索と3次元アニメーション画像の描画処理とを3次元空間モデルデータで実施することにより、経路案内の処理速度を低下させることなく、被誘導者の現実の視界にリンクした施設の3次元アニメーション画像に目的位置に向かう移動経路を表示でき、経路案内の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施の形態に係るナビゲーションシステムの全体構成を示す図である。
図2】本実施の形態に係る情報配信サーバの構成例を示す機能ブロック図である。
図3】本実施の形態に係る移動通信端末の構成例を示す機能ブロック図である。
図4】ナビゲーションエリアとなる駅施設を構成する各構造物の階層関係を示す概念図である。
図5】構造物の3次元空間モデルデータを構成するオブジェクトデータのデータ構成例を示す図である。
図6】3次元空間モデルデータを構成する移動可能空間データのデータ構造の概念図である。
図7】ナビゲーションエリアとなる駅施設の3次元空間モデルデータを駅施設を含む3次元空間の基準座標上に配置した一例を示す図である。
図8図7の3次元空間モデルデータの一部を切り出した上面図である。
図9】本実施の形態に係るオブジェクトデータをポリゴン表示したときの一例を示す図である。
図10】本実施の形態に係る経路探索フローを示す図である。
図11】本実施の形態に係る経路探索の一例を示す模式図である。
図12】本実施の形態に係る3次元アニメーション画像の描画フローを示す図である。
図13】本実施の形態に係る移動通信端末に表示されるナビゲーション画像の遷移図である。
図14】変形例に係るオブジェクトデータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るナビゲーションシステムの実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。図1から図3を参照して、本実施の形態に係るナビゲーションシステムの構成について説明する。図1は、本実施の形態に係るナビゲーションシステムの全体的なシステム構成を示す図である。図2は、本実施の形態に係るナビゲーションシステムにおける情報配信サーバの構成例を示す図である。図3は、本実施の形態に係るナビゲーションシステムにおける移動通信端末の構成例を示す図である。本実施の形態では、ナビゲーション可能な施設として大規模駅建屋を例にして説明するが、大規模駅建屋に限定されるものではなく、美術館、博物館、スポーツ施設、商業施設等の各種施設に適用可能である。また、ナビゲーションの被誘導者として、歩行者を例にして説明するが、これに限定されるものではなく、例えば、車椅子、二輪移動装置、その他の移動手段を介して施設内を移動する者にも適用可能である。
【0020】
図1に示すように、ナビゲーションシステム1は、情報配信サーバ11と、移動通信端末12とを含んで構成される。情報配信サーバ11と移動通信端末12とは、ネットワーク13を介して通信可能に接続される。移動通信端末12は、3次元アニメーション画像に基づいたナビゲーションを実現するソフトウェアを搭載しており、例えば、携帯電話機又はタブレット型端末を用いることができる。また、移動通信端末12は、駅建屋の所定箇所に複数設けられるアクセスポイント(AP)14を介してネットワーク13に接続される。移動通信端末12は、アクセスポイント(AP)14との間の通信方式としてWiFi(Wireless Fidelity)を用いている。さらに、移動通信端末12は、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)衛星15から発せられるGPS電波を受信して現在位置を取得する機能を備えている。本実施の形態では、移動通信端末12の3次元空間内での現在位置の取得方法は、屋内測位の方法として、WiFiの電波強度を用いているが、GPS測位と組み合わせたり、通信環境に応じて置き換えてもよいし、さらにBluetooth(登録商標)、音波ビーコン等を用いてもよい。
【0021】
情報配信サーバ11は、センターシステム16とオンラインで接続される。センターシステム16は、本実施の形態では、例えば、TID装置(列車運行情報表示装置:Traffic Information Display)、列車制御に用いられるCTC装置(列車集中制御装置:Centralized Traffic Control)を含んで構成される。ネットワーク13は、インターネット、モバイルネットワーク、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等の様々なネットワークを含む。情報配信サーバ11は、移動通信端末12からの要求に応じて、ナビゲーションに必要な情報として、経路案内対象エリアにある駅建屋の3次元空間モデルデータを配信する機能を有する。
【0022】
次に、情報配信サーバ11について説明する。図2に示すように、情報配信サーバ11は、記憶手段20と、更新手段21と、配信手段22と、通信手段23と、認証手段24と、位置計算手段25とを含んで構成される。なお、図2では、本実施形態におけるナビゲーションに関連する機能ブロックを主に示しており、情報配信サーバ11は、他の処理に必要な他の機能ブロックも適宜有している。
【0023】
記憶手段20は、3次元アニメーション画像に基づいたナビゲーションに必要な施設の全構造物に関する施設情報を記憶している。施設情報は、施設を構成する個々の構造物(例えば、床、壁、柱、改札、エスカレータ等の固定構造物)の3次元空間モデルデータ26と、3次元アニメーション画像内にはめ込んで表示させる目標物の画像を構成するはめ込みデータ27とを備えている。3次元空間モデルデータ26は、駅建屋を構成する各構造物に対応したオブジェクトデータ28と、オブジェクトデータ28に基づいて移動可能空間を規定した移動可能空間データ29とで構成される(図6参照)。はめ込みデータ27は、経路案内時に目標となる目標物の画像データと、目的位置又は目印位置を示す任意の文字情報(数字、記号等含む)から構成され、オブジェクトデータ28にリンクしている。なお、記憶手段20は、メモリ、ハードディスク等により構成されていて、3次元空間モデルデータ26から独立してはめ込みデータを個別に更新可能に構成されている。
【0024】
更新手段21は、記憶手段20に記憶されたはめ込みデータ27を、主に固定構造物から作成されている3次元空間モデルデータ26から独立して個別に更新する。例えば、駅建屋に新しい店舗が出店されたときに店舗写真を更新する要請にこたえるため、新規店舗の店舗写真がはめ込みデータ27として準備される。また、工事中の仮設区域の仮設構造物を3次元CG表示するために作成したオブジェクトデータをはめ込みデータ27として準備する。工事終了後に現状のレイアウトに合わせて仮設構造物のオブジェクトデータを削除する。また、情報配信サーバ11には、外部サーバから遠隔で又はパーソナルコンピュータから直接的にはめ込みデータ27の更新情報が入力される。
【0025】
認証手段24は、情報配信要求したユーザの認証を行う。例えば、ホームページ上で当該ナビゲーションサービスを受けるためのユーザ登録を行い、ユーザ情報に基づいてユーザ登録されているか否か判断する。配信手段22は、移動通信端末12からの情報配信要求に応じて3次元空間モデルデータ26及びはめ込みデータ27を呼び出して移動通信端末12に応答として返す。通信手段23は、情報配信サーバ11の外部通信インターフェースを構成する。通信手段23は、ネットワーク13を介して、移動通信端末12に対して3次元空間モデルデータ26、はめ込みデータ27、移動通信端末12の位置情報等を送信する。
【0026】
位置計算手段25は、移動通信端末12と通信している1つ又は複数のアクセスポイント14から電波状況データを取り込み、予め構築した屋内Wifi測位ライブラリを元に移動通信端末12の現在位置を計算する。情報配信サーバ11は、記憶手段20に予め、駅建屋内の各アクセスポイント14の位置情報(座標(X,Y,Z(フロアID)))をリスト化して記憶している。また、情報配信サーバ11は、アクセスポイントの識別情報となる基地局ID、観測電波状況を示す情報を登録し、測位補正を実施するための各種パラメータをライブラリ化して記憶している。各種パラメータは、空間の構造、狭隘等による電波強度の減衰率の違いを考慮して設定される。
【0027】
具体的な測位位置(移動通信端末12の位置)の計算方法としては、ライブラリ化された各種パラメータが呼び出されるタイミングで測定される電波強度に基づいて実施される。例えば、フロアの決定については、電波強度が最大の基地局(アクセスポイント)14が属するフロアが測定の対象となる。2つの異なるフロアID(Z座標)が検出された場合には、2つのフロア間を結ぶ階段又はエスカレータに属すると判断される。このとき、階段又はエスカレータの位置情報に基づいて補正が実施され、フロアが決定される。位置の決定については、電波強度が基地局からの距離の2乗に反比例する事を利用する。属するフロアに補助情報(上述した各種パラメータ)が設定されている場合には、その補助情報を利用して補正計算を行い、移動通信端末12の位置が決定される。
【0028】
次に、移動通信端末12について説明する。図3に示すように、移動通信端末12は、操作手段30と、表示手段31と、記憶手段32と、方位取得手段33と、通信手段34と、経路探索手段35と、描画処理手段36とを含んで構成される。なお、図3では、本実施形態におけるナビゲーションに関連する機能ブロックを主に示しており、移動通信端末12は、他の処理に必要な他の機能ブロックも有している。
【0029】
操作手段30は、キーボード、マウス、タッチパネル等のユーザからの操作入力を電気信号に変換可能なデバイスで構成され、移動通信端末12に対する入力を受け付け、入力結果を経路探索手段35に出力する。ナビゲーションに関連する入力内容は、目的位置となる施設の名称(例えば、駅構内のショップ名、改札、ホーム番号、ロッカー、エレベータ、エスカレータ等)が挙げられる。
【0030】
表示手段31は、ナビゲーションに必要な各種画像を表示する。表示手段31は、例えば、後述するナビゲーション用のアプリケーション(以下、ナビゲーションアプリと記す)を起動したときのメニュー画面、描画処理手段36で生成された3次元アニメーション画像を表示する。表示手段31は、ディスプレイ、モニタ等の表示装置により構成される。また、ナビゲーションアプリ起動中に、3次元アニメーション画像の表示に合わせて、スピーカー等の出力装置により経路案内を音声で出力してもよい。
【0031】
記憶手段32は、情報配信サーバ11(図2参照)からダウンロードした3次元空間モデルデータ26及びはめ込みデータ27(いずれも図2参照)を記憶する。また、記憶手段32は、経路探索手段35によって探索された目的位置までの経路情報を一時的に記憶する。記憶手段32は、メモリ、ハードディスク等により構成される。なお、記憶手段32は外部記憶装置(例えば、外部サーバ)に搭載されてもよく、移動通信端末12は、通信手段34により、ネットワーク13を介して外部サーバの記憶手段を用いる構成としてもよい。
【0032】
方位取得手段33は、移動通信端末12の水平面内の方位(以下、単に方位と記す)と、床面に対して垂直な垂直面内の角度(以下、単に角度と記す)とを検出する。方位取得手段33は、例えば、方位センサ及び角度センサで構成される。
【0033】
通信手段34は、アクセスポイント14(図1参照)及び無線基地局(不図示)との間で無線通信する無線モジュールで構成される。通信手段34は、アクセスポイント14及びネットワーク13を介して情報配信サーバ11(図2参照)に情報配信要求を送信する一方、情報配信サーバ11から送信されるナビゲーションに必要な情報(3次元空間モデルデータ26及びはめ込みデータ27)を受信する。また、通信手段34は、情報配信サーバ11から移動通信端末12の現在位置情報を取得する。
【0034】
経路探索手段35は、移動通信端末12のプロセッサが経路探索のアプリケーションソフトを実行することにより実現される機能であり、3次元空間モデルデータ26を用いて、移動通信端末12の現在位置から目的位置までの経路を探索する機能を提供する。詳細は後述するが、経路探索手段35は、3次元空間モデルデータ26(より具体的には、移動可能空間データ29(図6参照))に基づいて、移動可能空間を介して現在位置と目的位置とを結ぶ最短の経路を探索する。
【0035】
描画処理手段36は、移動通信端末12のプロセッサが3次元CG処理のアプリケーションソフトを実行することにより実現される機能であり、3次元空間モデルデータ26を用いて、現在位置を基準とした視界空間に対応した3次元アニメーション画像を生成する。また、描画処理手段36は、経路探索手段35による経路探索結果に基づいて視界空間内に対応した3次元アニメーション画像に表示すべき移動経路を重ねた3次元ナビゲーション画像を生成する。さらに、描画処理手段36は、時系列的に変化する移動通信端末12の現在位置情報を取り込んで、移動通信端末12の移動に追従して3次元アニメーション画像を更新することで、3次元アニメーション動画を提供する。
【0036】
以下、図4から図9を参照して、本実施形態において用いる3次元空間モデルデータについて説明する。図4は、ナビゲーションエリアにある施設となる駅建屋を構成する各構造物の階層関係を示す概念図である。図4に示すように、駅建屋は、B1、1F、2F、3F…のように複数のフロアで構成された階層構造を有している。例えば、1Fは、床、壁、柱、改札、階段、エスカレータ等、駅を構成する複数の構造物によって構成される。他のフロア(B1、2F、3F…)も同様に、構造物の配置、数、種類は異なるが、複数の構造物によって構成される。3次元空間モデルデータは、オブジェクトデータ及び移動可能空間データで構成されている。個々の構造物は、3次元アニメーション画像を描画するためのオブジェクトデータが用意されている。以下、3次元モデルデータを構成するオブジェクトデータ及び移動可能空間データについて説明する。
【0037】
図5を参照して、オブジェクトデータについて説明する。図5Aは、構造物となる壁のオブジェクトデータを示し、図5Bは床のオブジェクトデータを示している。図5に示すように、駅建屋の3次元空間モデルデータは、各構造物のオブジェクトデータを含んで構成される。本実施の形態においては、ナビゲーションエリアとなる施設(駅建屋)を構成している全ての構造物について、オブジェクトデータが作成されている。オブジェクトデータには、例えば、Name(名称)、Tag(タグ)、属性、位置情報(3次元座標)が含まれる。
【0038】
Name(名称)は、構造物を構成するオブジェクトの名称を示している。具体的には、壁、柱、床、階段、エスカレータ、エレベータ、改札、ロッカー、ホーム、ショップ、トイレ等がNameとして設定される。1フロア内であっても壁、柱、階段等の構造物は複数存在するので、区別可能に固有番号が付される。図5Aでは、Nameが「壁1」と設定され、図5Bでは、Nameが「床2」と設定されている。これらのNameは、経路探索時に目的位置を特定する際の候補を示すキーワードに利用することができる。
【0039】
Tag(タグ)は、Nameと同様に、経路探索時に目的位置を特定する際の候補を示すキーワードになっている。具体的には、そのオブジェクトの配置位置近傍の構造物名称、配置フロア、目的位置となる周辺の目標物の名称等がTagとして設定される。図5Aでは、Tagが「1F北口改札」と設定され、図5Bでは、Tagが「2F南口トイレ」と設定されている。これらのTagは、経路探索時に目的位置を特定する際の候補を示すキーワードになっている。経路探索の際に、目的位置として、例えば、「北口改札」が入力されると、Tagの情報に基づいて3次元空間モデルデータ内で該当するオブジェクトが検索される。その結果、入力された目的位置に対応したオブジェクトデータが候補として検出される。
【0040】
属性は、そのオブジェクトデータが被誘導者の移動時に障害物となる構造物であるか否かを示している。具体的には、障害物、移動可能空間が属性として定義される。図5Aでは、属性が「障害物」と定義され、図5Bでは、属性が「移動可能空間」と定義されている。この属性に基づいて移動可能空間データが定義される。
【0041】
位置情報は、駅建屋を含む空間に対応した3次元座標(X,Y,Z)を表しており、3次元CGによる描画時に3次元空間内にそのオブジェクトを配置する際の基準座標となる。図5Aでは、位置情報が(X,Y,Z)と設定され、図5Bでは、位置情報が(X,Y,Z)と設定されている。例えば、Z座標によって、そのオブジェクトデータが配置されるフロアが特定される。このように、位置情報(3次元座標)に基づいて、3次元空間モデルデータと同じ空間座標上でのオブジェクトデータの位置が特定される。
【0042】
このように、各構造物のオブジェクトデータには、上記したName、Tag、属性、位置情報等の情報が定義されており、これらの情報に基づいて目的位置までの経路探索や、現在位置の視界空間に対応した3次元アニメーション画像の描画処理が実施される。なお、NameとTagは経路探索に用いる観点からは同一用途であるので、いずれか一方の項目に他方の項目を包含させてもよい。
【0043】
図6を参照して、移動可能空間データについて説明する。図6に示すように、移動可能空間データ29は、オブジェクトデータ28に定義された属性及び位置情報に基づいて作成される。例えば、3次元空間内に各オブジェクトを配置し、各オブジェクトの属性(障害物又は移動可能空間)に基づいて、オブジェクトを区分けする。そして、配置されたオブジェクトのうち、属性が「障害物」のオブジェクトは、移動不可能な空間として、移動可能空間から除外される。そして、残された空間をそのフロア内で被誘導者が移動可能な移動可能空間と定義する。この移動可能空間をメッシュデータとして保持する。但し、移動可能空間を定義する方式はメッシュデータに限定されない。例えば、空間を示すベクタデータとしてエリアデータ、ポリゴンデータであってもよい。
【0044】
また、隣接するフロア同士を連結する、例えば、階段、エスカレータ、エレベータを構成するオブジェクトも同様に、隣接するフロア間を被誘導者が移動可能な移動可能空間として定義される。このように、フロア内の移動可能空間(フロア平面)とフロア間の移動可能空間(フロア立体空間)とによって、移動可能空間データが規定される。これにより、フロア間を跨いだ目的位置までの経路案内を実現することができる。また、階段、エスカレータ、エレベータ等によってフロア同士が連結される連結部分の入口及び出口は、後述する経路探索処理における移動可能ポイントを構成する。
【0045】
図7を参照して、オブジェクト(3次元空間モデルデータ)を駅建屋を含む3次元空間(以下、施設空間という)に配置した例について説明する。図7に示すように、各オブジェクトデータは、定義された位置情報(基準座標)に基づいて施設空間の所定位置に配置される。図7では、床40、床41、壁42、壁43、アーチ44、エスカレータ45、階段46、階段47、柱48、柱49、柱50が施設空間に配置されている。また、はめ込みデータについても同様に、それぞれ、位置情報が定義されており、その位置情報に基づいてリンク先のオブジェクト(例えば、床)の所定位置にはめ込まれる。図7では、はめ込みデータとして、案内表示51及び店舗画像52が所定位置にはめ込まれている。
【0046】
なお、本実施の形態においては、施設情報が、駅建屋の構造物の主要な3次元空間モデルデータ26と、比較的更新の頻度が多いと想定される施設内の店舗情報(写真)や、仮設区域の構造物で構成されるはめ込みデータ27とで別々に構成されている。これにより、施設内に新しい店舗が出店される等、目標物に変更があった場合に、変更内容に対応して新規構造物のオブジェクトデータを新規に作成することなく、はめ込みデータ27のみを更新するだけで、現実空間を擬した3次元アニメーション画像を表示できる。例えば、柱、エスカレータ等のレイアウト変更がないと予想される固定構造物に影響を与えることなく、はめ込みデータのみ変更できるので、データ更新作業が簡素化される利点がある。また、データ更新の周期は、特に限定されるものではなく、例えば、一か月に1回、又は、店舗情報等の変更に応じて、随時更新可能である。
【0047】
次に、図8を参照して、フロア内の移動可能空間について説明する。図8は、図7の3次元空間モデルデータの一部(空間A部)を切り出した上面図である。図8に示すように、柱48は、属性が「障害物」として定義されており、床41は、属性が「移動可能空間」として定義されている。移動可能空間41aは、複数のポリゴン(三角形)を繋げたメッシュデータで構成される。また、「移動可能空間」として定義された床41のうち、柱48(障害物)の外周から所定距離(例えば、50cm)離れた空間41bは、移動不可として定義され、移動可能空間から除外される。所定距離は、歩行者が障害物にぶつからない距離であれば、どのような距離でもよい。このように、柱48から所定距離離れた空間を移動可能空間41aとして定義したことにより、後述する経路探索処理において、移動可能空間内で、障害物を避けるような最短経路を探索することが可能になり、探索経路と被誘導者が移動可能なラインとを正確に一致させることができ、本来的な意味での最短距離を経路案内できることになる。
【0048】
次に、図9を参照して、オブジェクトデータを画像表示する描画原理について説明する。図9では、柱のオブジェクトデータを例に説明する。図9に示すように、オブジェクトデータから描画される柱は、厳密には多角柱で形成され、複数のポリゴン(三角形)を繋げたサーフェスモデルデータで構成される。柱の位置情報は、例えば、底面の中心を基準座標(X,Y,Z)として定義される。柱自体は、実際は円柱で構成されるが、多角柱で近似したサーフェスモデルとすることにより、後述する描画処理の負荷を抑えることが可能になっている。
【0049】
次に、図10及び図11を参照して、本実施の形態に係るナビゲーションシステムにおける経路探索処理について説明する。図10は、経路探索処理を実現するフロー図である。図11は、経路探索の一例を示す模式図である。なお、移動通信端末は、予め、情報配信サーバから3次元空間モデルデータをダウンロードし、3次元空間モデルデータを移動通信端末の記憶手段に記憶している。また、ナビゲーションのアプリケーションが起動された後、移動通信端末12は、定期的に情報配信サーバ11と通信し、移動通信端末12(歩行者)の現在位置情報を随時更新している。なお、以下においては、経路探索処理が移動通信端末12側で実施される場合について説明するが、これに限定されず、情報配信サーバ11側で経路探索処理を実施し、その経路探索結果を移動通信端末12に送信してもよい。これらを前提として、以下、経路探索フローについて説明する。
【0050】
図10に示すように、先ず、移動通信端末12(図3参照)上では、移動通信端末12にインストールされたナビゲーションアプリ(ソフトウェア)が起動される(開始)。ナビゲーションアプリが起動されると、移動通信端末12の経路探索手段35は、情報配信サーバ11(図2参照)から移動通信端末12の現在位置情報を取得すると共に、移動通信端末12の表示手段31(図3参照)には、目的位置を入力するためのメニュー画面が表示される。これにより、操作手段30(図3参照)で目的位置を入力することが可能になる。なお、目的位置としては、駅建屋のショップ、改札、ホーム、トイレ、ロッカー、エレベータ、エスカレータ等が挙げられる。また、目的位置の入力は、これらに限定されず、例えば、表示手段31に表示される駅建屋の鳥瞰図上で目的位置を直接タッチすることによって目的位置を入力してもよい。
【0051】
所望の目的位置が入力されると(ステップST101)、経路探索手段35は、記憶手段32(図3参照)に記憶された3次元空間モデルデータ26(図2参照)内において、目的位置に対応するオブジェクトデータを検索する(ステップST102)。このとき、オブジェクトデータは、オブジェクトデータに定義されたNameやTagに基づいて検索される。例えば、最初にTagに基づいて目的位置に対応するオブジェクトデータを検索し、候補となるオブジェクトデータが検索されなかったら、次にNameに基づいてオブジェクトデータを検索してもよい。このように、検索の際にName及びTagに優先順位を設定してもよい。そして、目的位置に対応するオブジェクトデータが検索されると、そのオブジェクトデータの位置情報から、駅建屋を含む3次元空間に対応した目的位置の座標が特定される。また、複数の対象オブジェクトが検索された場合、複数の候補を表示手段31上に表示し、その候補の中から目的位置を選択可能にしてもよい。
【0052】
次に、経路探索手段35は、現在位置に対応するオブジェクトデータのZ座標と、目的位置に対応するオブジェクトデータのZ座標とを比較する(ステップST103)。現在位置のZ座標と目的位置のZ座標とが異なる場合(ステップST104:No)、経路探索手段35は、現在位置と目的位置とが同一フロア内に存在しないと判断する。そして、経路探索手段35は、現在位置に対応するフロア内で、目的位置に対応するフロアに通じ、現在位置から最も近い移動可能ポイントを検索する(ステップST105)。
【0053】
例えば、図11においては、現在位置に対応するフロア(1F)内で目的位置に対応するフロア(2F)に通じる構造物である階段60の位置情報に基づいて、移動可能ポイントPinが検索される。なお、移動可能ポイントPinを検索する際には、予め、フロア間を移動する手段(階段、エスカレータ、エレベータ)のうち、どの手段を使用するかを経路探索時の探索条件(オプション)として選択しておき、その探索条件に基づいて移動可能ポイントを検索してもよい。また、移動可能ポイントは、オブジェクトデータのName、Tag及び位置情報に基づいて検索される。
【0054】
経路探索手段35は、移動可能ポイントを検索すると、その移動可能ポイントの位置情報に基づいて現在位置と移動可能ポイントとを最短距離で結ぶフロア内経路を探索する(ステップST106)。このとき、経路探索手段35は、記憶手段20からそのフロア内の移動可能空間データを読み込み、移動可能空間データに基づいて障害物を避けながら、現在位置と移動可能ポイントとを移動可能空間内において最短距離で結ぶ経路(フロア内経路)を探索する。また、現在位置に対応するフロアと目的位置に対応するフロアとを連結するフロア間経路も合わせて探索される。図11では、現在位置と移動可能ポイントPinとを直線で結び、その直線の途中に存在する柱61を避けるように、柱61から所定距離離れた移動可能空間を通るフロア内経路R1が探索される。このとき、1Fの移動可能ポイントPinと2Fの移動可能ポイントPout(すなわち、階段60の出口)とを連結するフロア間経路R2も探索される。
【0055】
そして、経路探索手段35は、目的位置に対応するフロアにおいて、目的位置に対応するフロアの移動可能ポイントから目的位置までの最短経路を探索する(ステップST107)。ステップST107においても、ステップST106と同様に、経路探索手段35は、移動可能空間データに基づいて障害物を避けながら、移動可能ポイントと目的位置とを移動可能空間内において最短距離で結ぶ経路(フロア内経路)を探索する。図11では、移動可能ポイントPoutと目的位置とを直線で結び、その直線の途中に存在する柱62を避けるように、柱62から所定距離離れた移動可能空間を通るフロア内経路R3が探索される。
【0056】
そして、経路探索手段35は、探索された全ての経路(フロア内経路R1、フロア間経路R2、フロア内経路R3)を連結し(ステップST108)、現在位置から目的位置までの案内経路Rを確定する(ステップST109)。以上により、経路探索手段35は、経路探索処理を終了する(終了)。このように、現在位置と目的位置とが異なるフロアに存在しても、現在位置フロアにおいて目的位置フロアへ通じる移動可能ポイントを検索することで、フロア間を跨いだ目的位置までの最短経路で経路案内を実現することができる。
【0057】
なお、図11においては、1Fの現在位置から2Fの目的位置までの最短経路を探索する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、2Fを現在位置とし、5Fを目的位置とした複数のフロアを跨ぐ経路案内であっても、フロアごとに移動可能ポイントに基づいてフロア内経路を探索し、各フロアのフロア内経路と各フロア間のフロア間経路とを連結することで現在位置から目的位置までの最短経路を探索することができる。また、この場合、経路探索の条件としてエレベータを選択することにより、2Fから5Fに直接移動する経路も探索可能である。
【0058】
また、ステップST104において、現在位置のZ座標と目的位置のZ座標とが同一である場合(ステップST104:Yes)、経路探索手段35は、現在位置と目的位置とが同一フロア内に存在すると判断する。そして、経路探索手段35は、同一フロア内で、現在位置と目的位置とを最短距離で結ぶ経路を検索する(ステップST110)。ステップST110においても、ステップST106と同様に、経路探索手段35は、移動可能空間データに基づいて障害物を避けながら、現在位置と目的位置とを移動可能空間内において最短距離で結ぶ経路(フロア内経路)を探索する。このようにして、経路探索手段35は、案内経路を確定し(ステップST109)、経路探索処理を終了する(終了)。
【0059】
次に、図12及び図13を参照して、本実施の形態に係るナビゲーションシステムにおける3次元アニメーション画像の描画処理について説明する。図12は、本実施の形態に係る3次元アニメーション画像の描画フローを示す図である。図13は、本実施の形態に係る移動通信端末に表示される3次元アニメーション画像の遷移図である。3次元アニメーション画像描画処理においては、ナビゲーションアプリが起動され、上述した経路探索処理が終了し、現在位置から目的位置までの経路が確定しているものとする。
【0060】
図12に示すように、ナビゲーションアプリが起動している状態で、移動通信端末12(図3参照)の表示手段31(図3参照)上で、経路案内開始を選択すると、描画処理手段36(図3参照)は、3次元アニメーション画像描画処理を開始する(開始)。3次元アニメーション画像生成処理を開始すると、描画処理手段36は、方位取得手段33(図3参照)から移動通信端末12の方位及び角度を取得し、現在位置、被誘導者の向き(方位及び角度)に基づいて、表示手段31上に表示すべき視界空間を決定する(ステップST201)。視界空間の範囲は予め設定されているものとする。
【0061】
視界空間を決定すると、描画処理手段36は、記憶手段32(図3参照)に記憶された3次元空間モデルデータ26及びはめ込みデータ27(いずれも図2参照)を読み込む(ステップST202)。ステップST202において、描画処理手段36は、ステップST201で決定した視界空間に含まれる3次元座標を有するオブジェクトデータを読み込む。描画処理手段36は、3次元空間モデルデータ26のオブジェクトデータを、現在位置に対応した位置情報に基づいて読み込む。また、描画処理手段36は、はめ込みデータ27中の各種画像データを、リンクされたオブジェクトデータと共に読み込む。これらにより、描画処理手段36は、表示すべきオブジェクトデータ及びはめ込みデータ27を特定する。
【0062】
次に、描画処理手段36は、3次元アニメーション画像生成処理(3次元CG処理)を実施する(ステップST203)。ステップ203において、描画処理手段36は、そのときの移動通信端末12の現在位置、方位及び角度に対応して、サーフェスデータで構成されるオブジェクトデータを回転、平行移動、拡大又は縮小等させることによって、オブジェクトデータの位置情報(3次元座標)を視界空間(ディスプレイ画面)に対応したスクリーン座標に変換した構造物の3次元アニメーション画像を生成する。
【0063】
このとき、描画処理手段36は、レンダリング処理を実施する。レンダリング処理では、オブジェクトデータの表面の質感や想定光源(現実空間の光源位置)に対する光の反射具合が計算され3次元アニメーション画像に反映される。また、描画処理手段36は、上述した経路探索処理で探索した案内経路のうち、視界空間に含まれるフロア内経路又はフロア間経路を3次元アニメーション画像上に重ねる。そして、描画処理手段36は、生成した3次元アニメーション画像を表示手段31上に表示する(ステップST204)。図13Aから図13Cでは、視界空間に対応した3次元アニメーション画像70上に、床71、柱72、柱73、壁74、階段75に加え、目的位置に向かう経路が矢印Bで表示されたナビゲーション画像を示している。
【0064】
ステップST204でナビゲーション画像(3次元アニメーション画像)を表示手段31に表示し、所定時間経過すると、描画処理手段36は、移動通信端末12の現在位置、方位、角度を再び読み込む(ステップST205)。そして、描画処理手段36は、位置計算手段25(図2参照)が検出した現在位置や、方位取得手段33の検出した方位、角度に変化があるか否かを判断する(ステップST206)。移動通信端末12の現在位置、方位、角度に変化がなかった場合(ステップST206:No)、所定時間待機した後、描画処理手段36は、再びステップST205の処理を実施する。なお、上述した所定時間は適宜変更可能であり、所定時間を短くした場合は、滑らかな3次元アニメーション画像を表示することができる。一方、所定時間を長くした場合は、3次元アニメーション画像の生成処理、表示処理等の負荷が低減される。
【0065】
一方、移動通信端末12の現在位置、方位、角度に変化があった場合(ステップST206:Yes)、ステップST201に戻り、再び、上記ステップST201からステップST204の処理が実施される。このようにして、描画処理手段36は、表示手段31に表示するナビゲーション画像(3次元アニメーション画像)の視界空間を、現在位置及び方位取得手段33による検出方位、角度に応じて切り替えることにより、歩行者の移動及び方向変換に応じて歩行者の視界空間に連動するように3次元アニメーション画像を変化(更新)させることができる。よって、より歩行者の現実の視界にリンクした3次元アニメーション画像を表示することができる。また、図13図13C)に示すように、3次元アニメーション画像70内に目標物の画像データ76や文字情報77をはめ込んで表示させることにより、歩行者が目的位置までの経路を認識し易くなり、高精度な経路案内を実現することができる。なお、描画処理が移動通信端末12側で実施される場合について説明したが、これに限定されず、情報配信サーバ11側で移動通信端末12のセンサ情報(方位、角度)を取り込み、現在位置と組み合わせて視界空間を特定して3次元アニメーション画像をリアルタイムで生成し(リアルタイムレンダリング)、情報配信サーバ11に備えた配信部から対象となる移動通信端末12にリアルタイムで配信して表示してもよい。また、現在位置の計算が情報配信サーバ11側で実施される場合について説明したが、これに限定されず、移動通信端末12側で現在位置の計算を実施してもよい。
【0066】
以上のように、本実施の形態に係るナビゲーションシステム1では、3次元空間モデルデータ26を、駅建屋の各構造物に対応したオブジェクトデータ28とオブジェクトデータ28に対応させて移動可能空間を規定した移動可能空間データ29とで構成し、現在位置を基準とした視界空間の3次元アニメーション画像70を移動通信端末12に表示し、移動可能空間データ29に基づいて、移動可能空間を介して現在位置と目的位置とを結ぶ最短の経路を探索するように構成した。これにより、地図データを準備することなく、3次元空間モデルデータ26を用いて経路探索することができると共に3次元空間モデルデータ26に基づいて現実空間を擬した3次元アニメーション画像70を表示できる。したがって、探索結果に基づく経路案内は、現実空間と略同じ3次元アニメーション画像70上で行うことができ、経路案内の処理速度を低下させることなく、経路案内の精度を高めることができる。
【0067】
次に、図14を参照して、変形例に係るオブジェクトデータについて説明する。図14は、変形例に係るオブジェクトデータを示す図である。図14においては、構造物として、ホームを例にして説明する。また、図14に示すオブジェクトデータでは、属性として、移動可能空間の他に、駅建屋内に入り込む列車の列車番号を定義し、位置情報にホームに進入する各車両の扉の座標を定義した点で、本実施の形態と相違する。
【0068】
図14に示すように、変形例に示すオブジェクトデータでは、Nameとして「ホーム1」が設定されている。Tagには「●●線、▲▲番ホーム、■■両目(車両番号)」が設定されている。また、属性として、「移動可能空間」と「列車番号◆◆」とが設定されている。そして、位置情報には、ホーム1上に進入する各列車の扉位置の座標が定義されている。図1において説明したセンターシステム16では、各駅における列車の運行情報が随時更新される。移動通信端末12は、目的位置として列車名が入力されると、情報配信サーバ11に対しては、入力列車名(目的位置)が入線するホーム番号を問い合わせる。情報配信サーバ11は、ホーム番号を問い合わせを受けると、センターシステム16から当該駅の運行情報を取得し、入力列車名(目的位置)が入線するホーム番号を特定する。そして、特定したホーム番号を移動通信端末12に通知する。移動通信端末12は、情報配信サーバ11から通知されたホーム番号のホームを目的位置に指定する。このとき、列車名と共に号車番号まで指定されれば、該当ホームにおける車両番号の扉位置を目的位置に指定する。これにより、ホーム上の特定の車両の扉位置までの経路を探索することが可能になる。例えば、列車の乗り換え時にホームに通じる階段から最も近い車両の扉位置までの経路を探索することができ、列車乗り換え時の移動距離を短縮することができる。
【0069】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状、方向等については、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、大規模駅建屋等の施設内を移動する歩行者等の現在位置から目的位置までの移動経路を案内するナビゲーションシステムに有用である。
【符号の説明】
【0071】
1 ナビゲーションシステム
11 情報配信サーバ
12 移動通信端末
20 記憶手段
26 3次元空間モデルデータ
28 オブジェクトデータ
29 移動可能空間データ
31 表示手段
33 方位取得手段
35 経路探索手段
36 描画処理手段
70 3次元アニメーション画像
in、Pout 移動可能ポイント
R 経路
R1、R3 フロア内経路
R2 フロア間経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14