(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、燃料供給システム、ジェットエンジン、及び、燃料供給システムの製造方法に関して、添付図面を参照して説明する。
【0027】
(用語の定義)
本明細書において、「螺旋流」とは、流路を流れる流体が、流路の長手方向に沿った運動量成分を有するとともに、流路の長手方向軸まわりに回転する運動量成分を有することを意味する。「螺旋流」には、「ヘリカルフロー」が包含される。
本明細書において、「螺旋」すなわち「へリックス」には、全体として所定の第1方向に向かって延び、第1方向に向かうにつれて第1方向のまわりを回る形状、および、当該形状の一部分が包含される。
【0028】
(燃料供給システムの概要)
図1を参照して、実施形態に係る燃料供給システム1の概要について説明する。
図1は、燃料供給システム1の構成例を示す概略ブロック図である。
【0029】
燃料供給システム1は、燃料タンク10と、燃焼室20と、燃料噴射器24と、燃料改質部30と、第1配管60と、第2配管70とを備える。
【0030】
燃料タンク10は、高炭素数の炭化水素を主成分として含む液体燃料(例えば、JetA−1燃料のようなジェット燃料、炭素数10以上15以下のケロシン、ドデセン、または、これらの組み合わせを含む液体燃料)を貯留する。液体燃料は、第1配管60を介して燃料改質部30に供給される。第1配管60は、燃料タンク10の燃料排出口と、燃料改質部30の燃料流入口42とを接続する配管である。
【0031】
燃料改質部30は、供給された液体燃料を燃焼室20からの熱で熱分解して気体の改質燃料(例えば、水素、メタン、エチレン、エタン、プロピレン、プロパン、または、これらの組み合わせを含む改質燃料)を生成する。燃料改質部30は、高炭素数の炭化水素を主成分として含む液体燃料を熱分解して、低炭素数の炭化水素を主成分として含む気体の改質燃料を生成する。
【0032】
燃焼室20は、液体燃料と燃焼室の壁部との熱交換によって冷却される。また、液体燃料の熱分解は吸熱反応であるため、当該吸熱反応により燃料改質部30および燃焼室20は冷却される。燃料を用いて燃焼室を冷却することは、再生冷却と称されることがある。
【0033】
気体の改質燃料は、第2配管70を介して燃焼室20(より具体的には、燃料噴射器24)に供給される。第2配管70は、燃料改質部30の燃料流出口44と燃料噴射器24とを接続する配管である。燃料噴射器24は、気体の改質燃料Gを、燃焼室20の内部に向けて噴射する。噴射された改質燃料Gは、燃焼室内で燃焼する。
【0034】
(燃料改質部)
図2乃至
図5を参照して、燃料改質部について説明する。
図2は、燃料改質部30の概略斜視図である。
図3Aは、燃料改質部30の一部断面図であり、
図1のA−A矢視断面図である。
図3Bは、燃料改質部の断面図であり、変形例を示す。
図4は、燃料改質部30の燃料改質室に挿入される改質触媒担持シート32の概略斜視図である。
図5は、燃料改質部30の配置の一例を示す概略断面図である。
【0035】
燃料改質部30は、燃料流入口42と、燃料流出口44と、燃料改質室50を囲む改質室壁部52とを備える。燃料改質室50は、改質室壁部52と燃料流入口42と燃料流出口44とによって囲まれた空間である。
図2の例では、4つの燃料改質室50が設けられているが、燃料改質室50の数は任意である。燃料改質室50は、例えば、燃料流入口42から燃料流出口44まで延びる細長い空間である。燃料改質室は、燃料の改質が行われる燃料流路ということもできる。
【0036】
図3Aに示されるように、燃料改質部30は、燃焼室20の壁部26に接して配置される。より具体的には、燃料改質部30の改質室壁部52は、燃焼室20の壁部26に接して配置される。燃料改質室50の内部には、改質触媒担持シート32が配置される。改質触媒担持シート32の少なくとも一部分は、改質室壁部52の壁面から離間して支持される。改質触媒担持シート32の全体が、改質室壁部52の壁面から離間して支持されてもよい。改質触媒担持シート32は、液体燃料を気体の改質燃料に改質するための触媒を担持する。触媒は、例えば、H−ZSM−5触媒のようなゼオライト系触媒、または、プラチナ触媒やパラジウム触媒やロジウム触媒のようなPGM(Platinum Group Metals:白金族)系触媒、あるいは、高表面積の酸化物系触媒のうちの少なくとも一つ若しくはこれらを複合した触媒である。
【0037】
改質室壁部52のうち、燃焼室20に近い燃焼室側壁部52Aは、燃焼室20から遠い非燃焼室側壁部52Bよりも高温となる。換言すれば、改質室壁部52は、燃焼室20に近い部分ほど高温Hであり、燃焼室20から遠い部分ほど低温Cである。改質室壁部52の温度勾配により、燃料改質室50内を流れる燃料にも温度勾配が発生する。このため、温度の高い燃焼室側を流れる液体燃料は、触媒反応温度域の上限温度よりも高温となるおそれがあり、温度の低い非燃焼室側を流れる液体燃料は、触媒反応温度域の下限温度に達しないおそれがある。また、熱膨張率の小さい改質触媒を用いる場合、当該改質触媒が、温度勾配による改質触媒担持シート32の熱膨張に対応できず、改質触媒が改質触媒担持シート32から剥離してしまうおそれがある。いくつかの実施形態では、上記温度勾配により生じる問題に対応するために、燃料(液体燃料、改質燃料、または、液体燃料と改質燃料との混合燃料)の螺旋流を生成する螺旋流生成部を有する。燃料の螺旋流の生成のメカニズムについては後述される。いくつかの実施形態では、改質触媒担持シート32または改質室壁部52によって、受動的に螺旋流が形成されるため、能動的に螺旋流を形成する際に不可欠な駆動機構は不要である。
【0038】
燃料の螺旋流とは、燃料が、細長い燃料改質室50の内部を、燃料流入口42から燃料流出口44に向かって螺旋状に流れることを意味する。燃料の螺旋流によって、燃料の温度勾配は小さくなる。
【0039】
図3Bに、燃料改質部の変形例を示す。
図3Bは、燃料改質部の断面図である。
図3Bに記載の例では、燃料改質部30−1の改質室壁部52が、燃焼室20の壁部として用いられている点で、
図3Aに記載の例とは異なっている。
図3Bに記載の例では、燃料改質部30−1が、燃焼室20と、直接、接することとなる。
図3Bに記載の例では、複数の燃料改質部30−1乃至30−4が設けられている。そして、1つの燃料改質部と、他の燃料改質部とが、互いに、溶接、ろう付け等によって接合されている。なお、
図3Bに記載の例では、燃焼室20の壁部が、すべて、燃料改質部の壁部によって構成されているが、燃焼室20の壁部のうちの一部の壁部のみを、燃料改質部の壁部によって構成することとしてもよい。
【0040】
図4は、改質触媒担持シート32の一例を示す概略斜視図である。
図4の例では、改質触媒担持シート32は、メッシュシートである。改質触媒を担持したメッシュシートを燃料改質室50内に配置する場合、燃料改質室50内に触媒粒子または触媒ペレットを無秩序に直接充填する場合と比較して、燃料改質室50における燃料の背圧の上昇(換言すれば、燃料流路における燃料の背圧の上昇)を抑制することが可能となる。また、改質触媒をメッシュシートに担持させる場合、改質触媒を大きな温度勾配の存在する燃料改質室50の壁面に担持させる場合と比較して、担持部材からの改質触媒の剥離が抑制される。なお、いくつかの実施形態においては、燃料改質室50内に直接触媒粒子または触媒ペレットを充填すること、あるいは、燃料改質室50の壁面に改質触媒を担持させることと、改質触媒担持シート32に改質触媒を担持させることとが併用される。
【0041】
改質触媒担持シート32には、改質触媒担持シートを、燃料改質室50の壁面から離間した状態で支持する支持部33が設けられている。支持部33は、例えば、支持脚であってもよい。支持部33は、例えば、複数の流入口側支持部33Aと、複数の流出口側支持部33Bとを備えてもよい。支持部33は、改質触媒担持シート32を、改質室壁部52に対して相対移動自在に支持してもよい。換言すれば、支持部33は、改質室壁部52に固着されていなくてもよい。改質触媒担持シート32が、改質室壁部52に対して相対移動自在であることにより(換言すれば、非拘束支持であることにより)、改質触媒担持シートには、拘束支持に伴う応力および歪が発生しない。このため、改質触媒担持シート32からの改質触媒の剥離が、より一層抑制される。
【0042】
図5は、燃料改質部の配置の一例を示す概略断面図(燃料流路の長手方向に垂直な面における断面図)である。
図5に示されるように、燃料改質部30は、燃焼室20の全周を囲むように配置されてもよい。燃料改質部30が燃焼室20の全周を囲むように配置された場合、燃焼室20に対する冷却効果が最大となる。代替的に、燃料改質部30は、燃焼室20の一部のみに接するように配置されてもよい。なお、燃料改質部30は、1つであってもよいし、複数の部分(30A乃至30D)に分割されていてもよい。
【0043】
(螺旋流生成部)
図6A乃至
図11Bを参照して、螺旋流生成部について説明する。
【0044】
螺旋流生成部は、例えば、螺旋形状部であってもよい。
図6Aは、改質触媒担持シート32Aの展開図であり、螺旋形状部の一例を示す。
【0045】
図6Aの例では、改質触媒担持シート32Aは、メッシュシートである。メッシュシートは、例えば、金属製である。メッシュシートは、例えば、線状部材34(なお、線状部材には、帯状部材も含まれる)をメッシュ状に配置することによって構成される。なお、改質触媒担持シート32Aは、穴あきシート等、メッシュシート以外のシートであってもよい。
【0046】
改質触媒担持シート32Aには、薄肉部34Aが設けられている。
図6Aの例では、線状部材34に薄肉部34Aが設けられている。当該薄肉部34Aが、螺旋形状部を構成するとともに、螺旋流生成部を構成する。詳細については、後述される。
【0047】
図6Bは、
図6AのD−D矢視断面図である。
図6Cは、
図6AのE−E矢視断面図である。
図6A乃至
図6Cの例では、線状部材34の全体に、改質触媒35が担持されている。
図6A乃至
図6Cの例では、粒子状の改質触媒35が線状部材34に担持されている。代替的に、層状の改質触媒35が線状部材34に担持されていてもよい。
【0048】
図6A乃至
図6Cの改質触媒担持シート32Aを、
図6Aに示されるX軸が長手方向となるように巻いて、円筒形状、多角筒形状、あるいは、渦巻きシート形状にする。そうすると、薄肉部34Aは、長手方向に沿って、螺旋形状を有することとなる。換言すれば、
図6A乃至
図6Cの改質触媒担持シート32Aを、円筒形状、多角筒形状、あるいは、渦巻き形状となるように巻くことにより、改質触媒担持シート32Aは、螺旋状に配置された薄肉部34Aを備えることとなる。当該螺旋状に配置された薄肉部34Aが螺旋形状部に該当する。なお、改質触媒担持シート32Aを、円筒形状、多角筒形状、あるいは、渦巻き形状となるように巻くに際して、薄肉部34Aによって形成される凹部36が、内側となるように巻くとよい。螺旋形状部を有する改質触媒担持シート32Aは、燃料改質室50の内部に配置される。その結果、燃料改質室50内を流れる燃料は、螺旋形状部によって(換言すれば、螺旋状に配置された薄肉部34Aによって)、螺旋流を生成することとなる。
【0049】
燃料の螺旋流を生成することにより、燃料の温度勾配が低減される。また、螺旋流によって燃料が撹拌されることにより、燃料の気相と燃料の液相とが均一に混合される。気相と液相とが均一に混合されることにより、燃料の突沸現象が抑制される。燃料の突沸現象を抑制することで、改質触媒35の改質触媒担持シート32Aからの剥離を抑制することが可能となり、かつ、改質触媒35による分解反応の反応性を高く保つことが可能となる。さらに、燃料の螺旋流を生成することにより、燃料の流れは乱流となる。燃料の流れが乱流である場合、燃料の流れが層流である場合と比較して、改質触媒35と燃料との接触頻度が高くなり、液体燃料の分解反応の反応性が向上する。
【0050】
図6Dに、改質触媒担持シートの変形例を示す。
図6Dは、改質触媒担持シート32Bの展開図であり、螺旋形状部の一例を示す。改質触媒担持シート32Bは、長手方向の中央部分37Bのみに薄肉部34Aが設けられ、流入口側部分37Aおよび流出口側部分37Cには薄肉部34Aが設けられていない点で、
図6Aに示された改質触媒担持シート32Aと異なる。その他の点は、
図6に示された改質触媒担持シート32Aと同様である。
【0051】
流入口側部分37Aは、液体燃料が十分に加熱されていない部分であり、液体燃料の改質があまり行われない部分である。このため、流入口側部分37Aにおいて、燃料の螺旋流を生成する意義は、相対的に低い。以上を考慮して、
図6Dの例では、流入口側部分37Aに薄肉部34Aが設けられていない。なお、流入口側部分37Aには、改質触媒35が担持されていなくてもよい(代替的に、流入口側部分37Aにおける改質触媒35の担持量を相対的に少なくしてもよい)。なお、改質触媒35を改質触媒担持シート32Bに施すに際して、改質触媒35が担持されない部分には、予めマスキングテープを適用する等するとよい。
【0052】
中央部分37Bは、液体燃料が十分に加熱されている部分であり、液体燃料の改質が行われる主たる部分である。中央部分37Bにおいて、燃料の螺旋流を生成することにより、燃料の温度勾配が低減され、かつ、燃料の突沸現象が抑制される。なお、中央部分37Bには、改質触媒35が担持される。
【0053】
流出口側部分37Cは、改質後の改質燃料が通過する部分である。換言すれば、流出口側部分37Cを流れる燃料のうちの大部分は改質燃料であり、改質前の液体燃料の割合は小さい。このため、流出口側部分37Cにおいて、燃料の螺旋流を生成する意義は、相対的に低い。以上を考慮して、
図6Dの例では、流出口側部分37Cに薄肉部34Aが設けられていない。なお、流出口側部分37Cには、改質触媒35が担持されていなくてもよい(代替的に、流出口側部分37Cにおける改質触媒35の担持量を相対的に少なくしてもよい)。
【0054】
図6Dの例では、改質触媒担持シート32Bの中央部分37Bのみに薄肉部34Aが形成されている。このため、薄肉加工を施す部分が少なくなり、コストが低減される。また、中央部分37Bのみに改質触媒を担持させる場合には、必要とされる改質触媒の全体量が低減され、コストが削減される。
【0055】
図6A乃至
図6Dの例では、線状部材34のうちの一部がX軸と平行であり、線状部材34のうちの一部がX軸と垂直である。しかし、実施形態は、
図6A乃至
図6Dの例に限定されない。例えば、
図6Eに示されるように、線状部材34がX軸に対して斜めとなるように配置されていてもよい。
【0056】
図6A乃至
図6Eの例では、メッシュの隙間(網目)の形状が四角形(例えば、長方形)である。しかし、実施形態は、
図6A乃至
図6Eの例に限定されない。メッシュの網目の形状は任意である。改質触媒担持シート32としてメッシュシートを採用することにより、燃料は、メッシュの隙間(網目)を通過することが可能となる。このため、燃料と改質触媒35との接触頻度が高くなり、液体燃料の分解反応の反応性が向上する。
【0057】
なお、メッシュシートとして予め熱処理が施された金属メッシュシートを用いる場合、金属メッシュシートの表面には、微細なウィスカー構造(ひげ状構造)が存在する。この場合、ウィスカー構造を有するメッシュシートと改質触媒とがより立体的に絡み合うことにより、改質触媒35のメッシュシートからの剥離頻度を低減することが可能となる。
【0058】
図6Fに、改質触媒担持シートの変形例を示す。
図6Fは、改質触媒担持シート32Dの展開図であり、螺旋形状部の一例を示す。改質触媒担持シート32Dは、液体燃料が通過可能な穴38が複数設けられた穴あきシートである点で、
図6Aに示された改質触媒担持シート32Aと異なる。その他の点は、
図6に示された改質触媒担持シート32Aと同様である。
【0059】
図7A乃至
図7Cに、螺旋形状部の変形例を示す。
【0060】
図7Aは、改質触媒担持シートの展開図であり、螺旋形状部の一例を示す。
図7Aの例では、改質触媒担持シート32Eは、メッシュシートである。メッシュシートは、例えば、線状部材34(なお、線状部材には、帯状部材も含まれる)をメッシュ状に配置することによって構成される。なお、改質触媒担持シート32Eは、穴あきシート等、メッシュシート以外のシートであってもよい。
【0061】
改質触媒担持シート32Eは、改質触媒を担持しない改質触媒非担持部34Bと、改質触媒を担持する改質触媒担持部34Cとを有する。当該改質触媒非担持部34Bが、螺旋形状部を構成するとともに、螺旋流生成部を構成する。詳細については、後述される。
【0062】
図7Bは、
図7AのF−F矢視断面図である。
図7Cは、
図7AのG−G矢視断面図である。
図7A乃至
図7Cの例では、線状部材34の改質触媒担持部34Cに、改質触媒35が担持されている。他方、線状部材34の改質触媒非担持部34Bには、改質触媒35が担持されていない。
図7A乃至
図7Cの例では、粒子状の改質触媒35が線状部材34に担持されている。代替的に、層状の改質触媒35が線状部材34に担持されていてもよい。なお、
図7Bおよび
図7Cの例では、線状部材34の一方側の表面のみに改質触媒35が担持されているが、線状部材34の他方側の表面にも改質触媒35が担持されていてもよい。換言すれば、線状部材34の全周に改質触媒35が担持されていてもよい。
【0063】
図7A乃至
図7Cの改質触媒担持シート32Eを、
図7Aに示されるX軸が長手方向となるように巻いて、円筒形状、多角筒形状、あるいは、渦巻き形状にする。そうすると、改質触媒非担持部34Bは、長手方向に沿って、螺旋形状を有することとなる。換言すれば、
図7A乃至
図7Cの改質触媒担持シート32Eを、円筒形状、多角筒形状、あるいは、渦巻き形状となるように巻くことにより、改質触媒担持シート32Eは、螺旋状に配置された改質触媒非担持部34Bを備えることとなる。当該螺旋状に配置された改質触媒非担持部34Bが螺旋形状部に該当する。なお、改質触媒担持シート32Eを、円筒形状、多角筒形状、あるいは、渦巻き形状となるように巻くに際して、改質触媒非担持部34Bによって形成される凹部36が、内側となるように巻くとよい。螺旋形状部を有する改質触媒担持シート32Eは、燃料改質室50の内部に配置される。その結果、燃料改質室50内を流れる燃料は、螺旋形状部によって(換言すれば、螺旋状に配置された改質触媒非担持部34Bによって)、螺旋流を生成することとなる。
【0064】
燃料の螺旋流を生成することにより、燃料の温度勾配が低減される。また、螺旋流によって燃料が撹拌されることにより、燃料の気相と燃料の液相とが均一に混合される。気相と液相とが均一に混合されることにより、燃料の突沸現象が抑制される。燃料の突沸現象を抑制することで、改質触媒35の改質触媒担持シート32Eからの剥離を抑制することが可能となり、かつ、改質触媒35による分解反応の反応性を高く保つことが可能となる。さらに、燃料の螺旋流を生成することにより、燃料の流れは乱流となる。燃料の流れが乱流である場合、燃料の流れが層流である場合と比較して、改質触媒35と燃料との接触頻度が高くなり、液体燃料の分解反応の反応性が向上する。
【0065】
また、
図7A乃至
図7Cの例では、改質触媒担持シート32Eに薄肉加工を施す必要がない。このため、コストが低減される。
図7A乃至
図7Cの例では、改質触媒35を改質触媒担持シート32Eに施すに際して、改質触媒非担持部34Bには予めマスキングテープを適用する等すればよい。
【0066】
図8A乃至
図8Bに、螺旋形状部の変形例を示す。
【0067】
図8Aは、改質触媒担持シートの展開図であり、螺旋形状部の一例を示す。
図8Aの例では、改質触媒担持シート32Fは、メッシュシートである。なお、改質触媒担持シート32Fは、穴あきシート等、メッシュシート以外のシートであってもよい。
【0068】
改質触媒担持シート32Fの表面上には、第2線状部材39が配置される。当該第2線状部材37が、螺旋形状部を構成するとともに、螺旋流生成部を構成する。詳細については、後述される。
【0069】
図8Bは、
図8AのH−H矢視断面図である。
図8Aおよび
図8Bの例では、粒子状の改質触媒35が線状部材34に担持されている。代替的に、層状の改質触媒35が線状部材34に担持されていてもよい。なお、第2線状部材39には、改質触媒35が担持されていてもよいし、改質触媒35が担持されていなくてもよい。
【0070】
図8Aおよび
図8Bの改質触媒担持シート32Fを、
図8Aに示されるX軸が長手方向となるように巻いて、円筒形状、多角筒形状、あるいは、渦巻き形状にする。そうすると、第2線状部材39は、長手方向に沿って、螺旋形状を有することとなる。換言すれば、
図8Aおよび
図8Bの改質触媒担持シート32Fを、円筒形状、多角筒形状、あるいは、渦巻き形状となるように巻くことにより、改質触媒担持シート32Fは、螺旋状に配置された第2線状部材39を備えることとなる。なお、改質触媒担持シート32Fを、円筒形状、多角筒形状、あるいは、渦巻き形状となるように巻くに際して、第2線状部材39が、内側となるように巻くとよい。螺旋形状部を有する改質触媒担持シート32Fは、燃料改質室50の内部に配置される。その結果、燃料改質室50内を流れる燃料は、螺旋形状部によって(換言すれば、螺旋状に配置された第2線状部材39によって)、螺旋流を生成することとなる。
【0071】
図9A乃至
図9Cに、螺旋形状部の変形例を示す。
【0072】
図9Aは、改質触媒担持シートの概略斜視図であり、螺旋形状部の一例を示す。
図9Aの例では、改質触媒担持シート32Gは、メッシュシートであってもよいし、穴あきシートであってもよい。改質触媒担持シート32Gは、螺旋状に巻かれている。
図9Aの例では、螺旋形状部が、改質触媒担持シート32Gを螺旋状に巻くことによって形成されている。換言すれば、螺旋状に巻かれた改質触媒担持シート32G自体が螺旋形状部である。
【0073】
図9Bは、
図9AのJ−J矢視断面図である。
図9Cは、
図9AのK−K矢視断面図である。
図9A乃至
図9Cの例では、改質触媒担持シート32Gの一方側の表面のみに改質触媒35が担持されている。代替的に、改質触媒担持シート32Gの他方側の表面にも改質触媒35が担持されていてもよい。
【0074】
改質触媒担持シート32Gは、燃料改質室50の内部に配置される。その結果、燃料改質室50内を流れる燃料は、螺旋形状部によって(換言すれば、螺旋状に巻かれた改質触媒担持シート32Gによって)、螺旋流を生成することとなる。
【0075】
図10に、螺旋形状部の変形例を示す。
【0076】
図10は、改質触媒担持シートの概略斜視図であり、螺旋形状部の一例を示す。
図10の例では、改質触媒担持シート32Hは、帯状のシート(換言すれば、リボン状のシート)である。改質触媒担持シート32Hは、メッシュシートであってもよいし、穴あきシートであってもよい。改質触媒担持シート32Hは、螺旋状に巻かれている。
図10の例では、螺旋形状部が、帯状の改質触媒担持シート32Hを螺旋状に巻くことによって形成されている。換言すれば、螺旋状に巻かれた帯状の改質触媒担持シート32H自体が螺旋形状部である。改質触媒担持シート32Hの表面には、改質触媒35が担持される。
【0077】
改質触媒担持シート32Hは、燃料改質室50の内部に配置される。その結果、燃料改質室50内を流れる燃料は、螺旋形状部によって(換言すれば、螺旋状に巻かれた帯状の改質触媒担持シート32Hによって)、螺旋流を生成することとなる。
【0078】
上記のとおり、
図6A乃至
図10を参照して、改質触媒担持シートによって、螺旋形状部を構成する例について説明した。代替的に、あるいは、付加的に、改質室壁部52に螺旋溝を形成する等により、螺旋形状部を構成してもよい。ただし、改質室壁部52に螺旋形状部を形成するよりも、改質触媒担持シートによって螺旋形状部を構成する方が簡易であって好ましい。
【0079】
(改質触媒担持シートの外形形状)
図11A乃至
図11Fは、改質触媒担持シートの外形形状の例を示す概略断面図である。
図11A乃至
図11Fは、燃料改質室50(換言すれば、燃料流路)の長手方向に垂直な面における断面図である。
【0080】
図11Aの例では、改質触媒担持シート32AAの断面形状は、円形状である。この場合、改質触媒担持シート32AAの全体的な外形形状は、円筒形状となる。改質触媒担持シート32AAの形状を円筒形状とすることで、平板形状を採用する場合と比較して、改質触媒を担持する担持面積を増加させることが可能となる。
【0081】
図11Bの例では、改質触媒担持シート32ABの断面形状は、多角形形状(例えば、三角形形状)である。この場合、改質触媒担持シート32ABの全体的な外形形状は、多角筒形状となる。改質触媒担持シート32ABの形状を多角筒形状とすることで、平板形状を採用する場合と比較して、改質触媒を担持する担持面積を増加させることが可能となる。
【0082】
図11Cの例では、改質触媒担持シート32ACの断面形状は、渦巻き形状である。この場合、改質触媒担持シート32ACの全体的な外形形状は、渦巻きシート形状となる。改質触媒担持シート32ACの形状を渦巻きシート形状とすることで、平板形状を採用する場合と比較して、改質触媒を担持する担持面積を増加させることが可能となる。
【0083】
図11Dの例では、改質触媒担持シート32ADの断面形状は、円32AD1と、多角形32AD2(例えば、三角形形状)との組み合わせ形状である。多角形32AD2は、例えば、円32AD1に内接する。この場合、改質触媒担持シート32ADの全体的な外形形状は、円筒と多角筒との組み合わせ形状となる。改質触媒担持シート32ADは、円筒形状の第1シートと多角筒形状の第2シートとを接合することにより、形成されてもよい。改質触媒担持シート32ADの形状を、円筒と多角筒との組み合わせ形状とすることで、改質触媒を担持する担持面積を更に増加させることが可能となる。
【0084】
図11Eの例では、改質触媒担持シート32AEの断面形状は、直線形状である。この場合、改質触媒担持シート32AEの全体的な外形形状は、板形状となる。板形状を採用することで、改質触媒担持シートの加工が容易となる。
【0085】
図11Fの例では、改質触媒担持シート32AFの断面形状は、曲線形状(例えば、波形形状)である。この場合、改質触媒担持シート32AFの全体的な外形形状は、曲板形状となる。改質触媒担持シート32AFの形状を曲板形状とすることで、平板形状を採用する場合と比較して、改質触媒を担持する担持面積を増加させることが可能となる。
【0086】
(燃料供給システムの製造方法)
図12Aおよび
図12Eを参照して、燃料供給システムの製造方法について説明する。
図12Aは、燃料供給システムの製造工程を示すフローチャートである。
【0087】
第1工程S1において、燃料改質部30の第1部材53A(例えば、燃焼室側部材)と第2部材53B(例えば、非燃焼室側部材)とが準備される(
図12Bを参照。)。第1部材53Aには、燃料改質室50(換言すれば、燃料流路)となる溝部55が設けられている。溝部55の長手方向に垂直な断面形状は、例えば、矩形形状である。溝部55の断面形状を矩形形状とすることで、溝部55の加工が容易となる。
【0088】
第2工程S2において、第1部材53Aと第2部材53Bとを接合する(例えば、溶接、ろう付け等により接合する)。接合により、燃料改質室50が形成される。
【0089】
第3工程S3において、燃焼室20の壁部26に接して燃料改質部30を配置する(
図12Cを参照。)。燃焼室20の壁部26と燃料改質部30(より具体的には、燃料改質部30の第1部材53A)とは接合される。なお、第3工程S3は、第2工程S2の前に実行されてもよい。
【0090】
第4工程S4において、改質触媒担持シート32に改質触媒35を付着させる(
図12Dを参照)。改質触媒35の付着は、例えば、改質触媒担持シート32の改質触媒溶液への浸漬によって行ってもよいし、改質触媒担持シート32にペースト状の改質触媒を塗布することにより行ってもよい。なお、第4工程S4は、第1工程S1、第2工程S2、または、第3工程S3の前に行ってもよいし、第1工程S1、第2工程S2、または、第3工程S3と並行して行ってもよい。
【0091】
第5工程S5において、改質触媒担持シート32を燃料改質室50の内部に配置する。改質触媒担持シート32を配置する工程は、燃料流入口又は燃料流出口から改質触媒担持シート32を燃料改質室50に挿入することにより行う(
図12Eを参照)。なお、第5工程S5を第2工程S2の前に実施してもよい。第5工程S5を第2工程S2の前に実施する場合には、溝部55の上方から、溝部55に(換言すれば、燃料改質室50に)、改質触媒担持シート32を挿入してもよい。ただし、第5工程S5を第2工程S2の前に実施する場合には、第1部材53Aと第2部材53Bとの接合時の温度によって、改質触媒が劣化してしまうおそれがある。このため、第5工程S5は、第2工程S2よりも後に実行することが好ましい。第5工程S5を第3工程S3の前に実施してもよい。ただし、第5工程S5を第3工程S3の前に実施する場合には、燃焼室の壁部26と燃料改質部30との接合時の温度によって、改質触媒が劣化してしまうおそれがある。このため、第5工程S5は、第3工程S3よりも後に実行することが好ましい。
【0092】
代替的に、燃料改質部30の壁部同士を接合することによって、燃焼室を形成する場合(例えば、
図3Bに記載された例の場合)、上述の第3工程S3は、燃料改質部30の壁部同士を接合する工程に置換される。燃料改質部30の壁部同士を接合する工程は、第5工程S5よりも前に実行されてもよいし、後に実行されてもよい。ただし、燃料改質部30の壁部同士を接合する工程を、第5工程S5の後に実行する場合には、燃料改質部30の壁部同士を接合する時の温度によって、改質触媒が劣化してしまうおそれがある。
【0093】
実施形態における燃料供給システムの製造方法では、改質触媒担持シート32を燃料流入口又は燃料流出口から燃料改質室50の内部に配置することによって、燃料改質室50の内部に改質触媒が配置される。このため、燃料供給システムの製造を容易に実行することが可能である。
【0094】
(燃料改質室のサイズ、および、断面形状)
図13Aは、燃料改質室のサイズの一例を示す概略斜視図である。燃料改質室50のサイズは、必要とされる燃焼室の冷却の程度、または、燃料改質室内に過度な温度勾配を生じさせないこと等を考慮して決定される。燃料改質室50の高さH1は、例えば、2mm以上20mm以下である。高さH1が2mmより小さいと、燃焼室の冷却が不十分となるおそれがある。また、高さH1が20mmより大きいと、燃料改質室内に過度な温度勾配が生じるおそれがある。燃料改質室50の長手方向に垂直な面における断面形状は、
図13Aに示されるように、矩形形状であってもよい。矩形形状には、正方形形状、略正方形形状、長方形形状、略長方形形状が包含される。代替的に、燃料改質室50の長手方向に垂直な面における断面形状は、
図13Bに示されるように円形状であってもよいし、その他の形状であってもよい。なお、燃料改質室50の高さH1は、燃料改質部30が取り付けられる燃焼室の壁部26の表面に垂直な方向における燃料改質室50の長さ(高さ)である。
【0095】
燃料改質室50の長さLは、例えば、300mm以上2000mm以下である。長さLが300mmより短いと、液体燃料の改質が十分に進行しないおそれがある。長さLが2000mmより大きいと、燃料改質室を流れる燃料の背圧が過度に高くなるおそれがある。
【0096】
(ジェットエンジンへの適用)
図14および
図15を参照して、実施形態の燃料供給システムをジェットエンジンに適用する例について説明する。
図14は、ジェットエンジンの構成の一例を模式的に示す概略断面図である。
【0097】
飛しょう体100は、ジェットエンジン200を備える。ジェットエンジン200は、例えば、ラムジェットエンジンあるいはスクラムジェットエンジンである。ジェットエンジン200は、インレット210から取り入れた空気と、燃料タンクから供給された燃料との混合気体を燃焼室内で燃焼させる。燃焼ガスは、ジェットエンジン200のノズル220から排出される。飛しょう体100は、燃焼ガスのノズル220からの排出によって、推力を得る。
【0098】
図15は、ジェットエンジン200に適用される燃料供給システム1’の構成例を示す概略ブロック図である。
【0099】
燃料供給システム1’は、燃料タンク10と、燃焼室20と、燃料噴射器24と、燃料改質部30と、第1配管60と、第2配管70とを備える。燃料供給システム1’は、任意付加的に、ポンプPと、流量調整弁62と、保炎器22と、電子制御ユニット90(ECU)と、第1センサ92と、第2センサ94とを備える。
【0100】
燃料タンク10は、高炭素数の炭化水素を主成分として含む液体燃料を貯留する。液体燃料は、ポンプPを駆動させることにより、第1配管60を介して燃料改質部30に供給される。
【0101】
燃料改質部30は、供給された液体燃料を燃焼室20からの熱で熱分解して気体の改質燃料を生成する。
【0102】
燃焼室20は、液体燃料と燃焼室の壁部との熱交換によって冷却される。また、液体燃料の熱分解は吸熱反応であるため、当該吸熱反応により燃料改質部30および燃焼室20は冷却される。
【0103】
気体の改質燃料は、第2配管70を介して燃料噴射器24に供給される。燃料噴射器24は、気体の改質燃料Gを、燃焼室20の内部に向けて噴射する。噴射された改質燃料Gは、インレットから取り込まれた空気(Air)と混合されて混合気体となる。混合気体は、燃焼室内で燃焼する。燃焼により形成される炎は、保炎器22で保炎される。保炎器22は、例えば、燃焼室の壁面に設けられた凹部である。燃焼により生成された燃焼ガスは、ノズルから排出される。
【0104】
第1センサ92は、燃料改質部30の燃料改質室内の状態量を測定するセンサである。測定される状態量は、例えば、温度、圧力、流速、流量等である。第2センサ94は、燃焼室20内の状態量を測定するセンサである。測定される状態量は、例えば、温度、圧力、流速等である。電子制御ユニット90は、燃料改質室の状態または燃焼室の状態に基づいて、換言すれば、第1センサ92からの情報または第2センサからの情報に基づいて、流量調整弁62の開度を調整する。また、電子制御ユニット90は、燃料改質室の状態または燃焼室の状態に基づいて、燃料噴射器24からの燃料噴射量を制御する。第1センサ92からの情報は、第1信号線92Aを介して電子制御ユニット90に伝達され、第2センサ94からの情報は、第2信号線94Aを介して電子制御ユニット90に伝達される。また、電子制御ユニット90は、第1制御線62Aを介して、流量調整弁62を制御し、第2制御線24Aを介して、燃料噴射器24を制御する。
【0105】
図16に、燃料供給システムの変形例を示す。
図16は、ジェットエンジン200に適用される燃料供給システム1’’の構成例を示す概略ブロック図である。
図16の例では、燃料改質部30とは別に設けられた燃料改質部30’においても液体燃料の改質が行われる。燃料改質部30’は、燃焼室の保炎器22の壁部に接して配置される。
図16の例では、高温となる保炎器22の壁部を燃料改質部30’によって冷却することが可能となる。なお、燃料改質部30’への液体燃料の供給は、第1配管60および60Aを介して行われ、燃料改質部30’から燃料噴射器24への改質燃料の供給は、第2配管70Bを介して行われる。
【0106】
実施形態に係る燃料供給システムをジェットエンジンに搭載した場合、改質燃料の使用により超音速燃焼を安定化させることが可能となる。また、燃料タンクには改質前の液体燃料が積載されるため、燃料の積載量を多くすることが可能となる。さらに、燃料供給システムによって効率的にジェットエンジンの燃焼室を冷却することが可能となる。また、燃焼室に接して燃料改質部を配置するものであるため、燃焼室とは別の加熱体を用いて燃料改質を行う場合と比較して、燃料供給システムをコンパクト化することが可能となる。
【0107】
本発明は上記各実施形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施形態は適宜変形又は変更され得ることは明らかである。また、各実施形態又は変形例で用いられる種々の技術は、技術的矛盾が生じない限り、他の実施形態又は変形例にも適用可能である。