(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に開示された遠心圧縮機では、高速回転による遠心力の影響によって羽根車の全部または一部が破断あるいは脱落する不具合が発生する場合に、潤滑油を収容するタンクが保護される。
しかしながら、羽根車の全部または一部が破断あるいは脱落してロータ軸の軸線方向に直交する径方向に飛散する場合、破断あるいは脱落した羽根車の全部または一部(以下、破断部材という。)が外側に位置する案内筒を破損させて外部に飛散する可能性がある。また、破断部材が案内筒と衝突することによって遠心圧縮機の一部に隙間(口開き)が生じ、その隙間から破断部材が外部に飛散する可能性がある。
【0006】
案内筒の径方向の外側にはスクロール部が配置されるが、吐出口からスクロール部に圧縮空気を導くディフューザ部に破断部材が衝突すると、ディフューザ部近傍がロータ軸の軸線方向に拡大するように変形する。この変形が大きい場合、ディフューザ部近傍に配置されるスクロール部の内周側にき裂が生じる。スクロール部の内周側のき裂がスクロール部の外周側まで伝播すると、遠心圧縮機の外周の一部に隙間(口開き)が生じ、その隙間から破断部材が外部に飛散する可能性がある。
【0007】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、羽根車の全部または一部が破断あるいは脱落してロータ軸の軸線方向に直交する径方向に飛散する場合に、破断部材が外部に飛散する不具合を抑制することが可能な遠心圧縮機およびそれを備えた過給機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を採用する。
本発明の一態様に係る遠心圧縮機は、ロータ軸に取り付けられるとともに取込口から流入する流体を圧縮して吐出口から吐出する羽根車と、該羽根車を収容するとともに前記ロータ軸の軸線方向に延在する案内筒と、該案内筒よりも前記軸線方向に直交する径方向の外周側に配置されるとともに前記吐出口から吐出された圧縮流体が流入する渦形室を形成するスクロール部と、前記スクロール部に設けられるとともに前記軸線回りに延在するき裂伝播防止部とを備え、前記スクロール部は、前記径方向の内周側に配置される内側スクロールケーシングと、前記径方向の外周側に配置される外側スクロールケーシングとを有し、前記内側スクロールケーシングと前記外側スクロールケーシングとが一体に形成されており、前記き裂伝播防止部は、前記内側スクロールケーシングに設けられる。
【0009】
本発明の一態様に係る遠心圧縮機によれば、羽根車の全部または一部が破断あるいは脱落してロータ軸の軸線方向に直交する径方向に飛散する場合、吐出口からスクロール部に圧縮流体を導く部分(例えば、ディフューザ部)に破断部材が衝突すると、その部分の近傍がロータ軸の軸線方向に拡大するように変形する。スクロール部の径方向の内周側における軸線方向の端部は、その変形に伴ってスクロール部が有する内側スクロールケーシングが変形する。この変形が大きい場合、内側スクロールケーシングにき裂が生じる。
【0010】
本発明の一態様に係る遠心圧縮機によれば、内側スクロールケーシングに軸線回りに延在するき裂伝播防止部が設けられている。そのため、内側スクロールケーシングに生じたき裂が内側スクロールケーシングと一体に形成される外側スクロールケーシングまで伝播することが抑制または防止される。そのため、遠心圧縮機の外周に配置される外側スクロールケーシングの一部に隙間(口開き)が生じ、その隙間から破断部材が外部に飛散することが抑制または防止される。
【0011】
本発明の一態様に係る遠心圧縮機においては、前記き裂伝播防止部が、前記内側スクロールケーシングの前記軸線方向の端部に設けられていてもよい。
このようにすることで、ディフューザ部に支持される内側スクロールケーシングの端部において、内側スクロールケーシングに生じたき裂が外側スクロールケーシングに伝播することを抑制または防止することができる。
【0012】
本発明の一態様に係る遠心圧縮機においては、前記き裂伝播防止部が、前記内側スクロールケーシングの前記径方向の内周側に設けられていてもよい。
このようにすることで、内側スクロールケーシングの径方向の内周側に生じたき裂が外側スクロールケーシングに伝播することを抑制または防止することができる。
【0013】
本発明の
参考例に係る遠心圧縮機においては、前記き裂伝播防止部が、前記軸線回りの全周に渡って延在する溝部であってもよい。
このようにすることで、き裂伝播防止部にスクロール部の径方向の内周側に生じたき裂が伝播する場合に、き裂が溝部に沿って軸線回りに伝播するようにき裂の伝播方向を変更することができる。これにより、スクロール部の径方向の内周側に生じたき裂が、スクロール部の径方向の外周側に伝播することが抑制または防止される。
【0014】
本発明の一態様に係る遠心圧縮機においては、前記き裂伝播防止部が、前記軸線回りに延在する突起部であってもよい。
このようにすることで、き裂伝播防止部にスクロール部の径方向の内周側に生じたき裂が伝播する場合に、き裂伝播防止部の突起部の厚みによって、き裂伝播防止部を乗り越えて径方向の外周側にき裂が伝播することが抑制または防止される。
【0015】
本発明に係る過給機は、上記のいずれかに記載の遠心圧縮機と、内燃機関から排出された排気ガスにより前記軸線回りに回転するとともに前記ロータ軸に連結されるタービンと、を備える。
本発明に係る過給機によれば、羽根車の重心位置近傍の全部または一部が破断あるいは脱落してロータ軸の軸線方向に直交する径方向に飛散する場合に、羽根車の全部または一部が外部に飛散する不具合を抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、羽根車の全部または一部が破断あるいは脱落してロータ軸の軸線方向に直交する径方向に飛散する場合に、破断部材が外部に飛散する不具合を抑制することが可能な遠心圧縮機およびそれを備えた過給機を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態の過給機について図面を参照して説明する。
本実施形態の過給機100は、船舶に用いられる舶用ディーゼル機関(内燃機関)に供給する空気(気体)を大気圧以上に高めて、舶用ディーゼル機関の燃焼効率を高める装置である。
図1に示すように、本実施形態の過給機100は、遠心圧縮機10とタービン20とサイレンサ16とを備えている。遠心圧縮機10とタービン20とは、それぞれロータ軸30に連結されている。
【0019】
タービン20は、タービンハウジング21と、タービン翼22と、タービンディスク23と、タービンノズル24とを備えている。タービンハウジング21は、軸線X回りに配置される中空の筒状部材であり、その内部にタービン翼22と、タービンディスク23と、タービンノズル24とを収容している。タービンハウジング21には、
図1の右方に示す矢印に沿って舶用ディーゼル機関から排出される排気ガスが流入する。
【0020】
タービンハウジング21に導かれた排気ガスは、タービンノズル24を通過する際に静圧膨張し、タービン翼22に導かれる。タービン翼22は、ロータ軸30に固定された略円板状のタービンディスク23の外周面に軸線回りに一定間隔で取り付けられている。タービンディスク23には、静圧膨張した排気ガスがタービン翼22を通過することによって軸線X回りの回転力が与えられる。この回転力は、ロータ軸30を回転させる動力となり、ロータ軸30に連結された羽根車11を軸線X回りに回転させる。
【0021】
遠心圧縮機10は、過給機100の外部から流入する空気を圧縮し、舶用ディーゼル機関を構成するシリンダライナ(図示略)の内部と連通する掃気トランク(図示略)に圧縮した空気(以下、圧縮空気(圧縮流体)という。)を供給する装置である。
遠心圧縮機10は、羽根車11と、空気案内筒12と、ディフューザ部13と、第1コンテインメントリング14(環状部材)と、第2コンテインメントリング15(円筒状部材)と、サイレンサ16と、スクロール部17とを備えている。
【0022】
図2に示すように、羽根車11は、軸線Xに沿って延びるロータ軸30に取り付けられており、ロータ軸30が軸線X回りに回転するのに伴って、軸線X回りに回転する。羽根車11は、軸線X回りに回転することにより、取込口11aから流入する空気を圧縮して吐出口11bへ吐出する。
【0023】
図2に示すように、羽根車11は、ロータ軸30に取り付けられるハブ11cと、ハブ11cの外周面上に取り付けられるブレード11dと、流路11eとを備える。羽根車11には、ハブ11cの外周面と空気案内筒12の内周面により空間が形成されており、この空間が複数枚のブレード11dにより複数の空間が形成されている。そして、羽根車11は、軸線X方向に沿って取込口11aから流入する空気に径方向の遠心力を与えて軸線X方向に直交した方向(羽根車11の半径方向)に吐出させ、吐出口11bから吐出された圧縮空気をディフューザ部13に流入させる。
【0024】
空気案内筒12は、羽根車11を収容するとともにロータ軸30の軸線X方向に沿って延在する。空気案内筒12は、羽根車11とともに、軸線Xに沿って取込口11aから流入する空気を、軸線Xに直交する径方向に案内して吐出口11bへ導く流路11eを形成する。
【0025】
ディフューザ部13は、吐出口11bから吐出された圧縮空気(圧縮流体)を渦形室17cへ導く部材である。ディフューザ部13は、ディフューザ翼13aとディフューザディスク13bとを有する。
ディフューザ翼13aは、羽根車11の吐出口11bの下流側に配置される翼形の部材であり、吐出口11bから渦形室17cに圧縮空気を導く流路を形成する。
図2に示すように、ディフューザ部13が配置される軸線X方向の位置は、羽根車11の重心位置P1となっている。
【0026】
ディフューザ翼13aは、ロータ軸30と同軸に配置される円環形状のディフューザディスク13bの円周方向に沿って複数箇所に設けられている。ディフューザ翼13aは、羽根車11の全周に設けられる圧縮空気の吐出口11bを囲むように設けられている。
図2に示すように、ディフューザディスク13bは、締結ボルト44により内側スクロールケーシング17aの内周側端部17eに連結されている。
【0027】
ディフューザ部13は、羽根車11の吐出口11bから吐出された圧縮空気の流速を減速させることにより、圧縮空気に付与された運動エネルギー(動圧)を圧力エネルギー(静圧)に変換する。ディフューザ部13を通過する際に流速が減速された圧縮空気は、ディフューザ部13と連通した渦形室17cに流入する。渦形室17cに流入した作動流体は、吐出配管(図示略)へと吐出される。
【0028】
第1コンテインメントリング14は、軸線X回りに羽根車11を取り囲むように、空気案内筒12の吐出口11b側と内側スクロールケーシング17aとの連結位置に取り付けられる環状部材である。
図1に示すように、第1コンテインメントリング14は、ロータ軸30と同軸に配置されている。
図2に示すように、第1コンテインメントリング14は、締結ボルト41によって空気案内筒12に連結されている。
【0029】
第2コンテインメントリング15は、空気案内筒12よりも径方向の外周側かつスクロール部17よりも径方向の内周側に配置される円筒状部材である。
図1に示すように、第2コンテインメントリング15は、ロータ軸30と同軸に配置されている。
図2に示すように、第2コンテインメントリング15は、締結ボルト42によって空気案内筒12に連結されている。
【0030】
第1コンテインメントリング14と第2コンテインメントリング15は、圧延により製造された金属部材からなる。この金属部材として、例えば、鉄を主成分とし、炭素を微量(約0.2%)含有するFe−C系合金である鉄鋼材料が用いられる。鉄鋼材料であれば種々の材料を用いることが可能であるが、SS400と呼ばれる一般構造用圧延鋼材(JIS G 3101;ASTM A283)を用いるのが好ましい。
【0031】
圧延による金属材は、圧延工程に適した組成からなり、大きな塑性変形の後に破壊に至る延性を保有する。一方、鋳造による金属材は、鋳造工程に適した組成からなり、破壊に至る伸びが圧延による金属材よりも小さい。このように、圧延による金属材は、破壊に至る伸びが鋳造による金属材よりも大きい。すなわち、圧延による金属材の延性が高い。したがって、圧延による金属材は、鋳造による金属材よりも衝撃に対する破壊強度が高い特性を有する。
【0032】
サイレンサ16は、遠心圧縮機10内で発生する騒音のレベルを低下させる装置である。
図1に示すように、サイレンサ16は、軸線Xに直交する方向から流入する空気を、空気案内筒12の吸入口に導く流路を形成する。この流路の周囲には消音材16aが配置されている。この消音材16aによって、遠心圧縮機10内で発生する騒音の一部が吸収され、騒音のレベルが低下する。
【0033】
スクロール部17は、吐出口11bから吐出された圧縮空気が流入するとともに、圧縮空気に付与された運動エネルギー(動圧)を圧力エネルギー(静圧)に変換する装置である。スクロール部17は、空気案内筒12よりも軸線X方向に直交する径方向の外周側に配置されている。
【0034】
図1,
図2に示すように、スクロール部17は、内側スクロールケーシング17aと、外側スクロールケーシング17bと、外周側端部17d(端部)と、内周側端部17e(端部)と連結部17f(端部)を備える。スクロール部17を構成する各部は、金属部材により一体に形成されている。
内側スクロールケーシング17aと外側スクロールケーシング17bとにより圧縮空気が流入する渦形室17cが形成される。
図2に示すように、スクロール部17は、締結ボルト43により空気案内筒12に連結されている。
【0035】
スクロール部17の径方向の内周側における軸線X方向の端部は、内側スクロールケーシング17aの外周側端部17dと内周側端部17eとこれらを連結する連結部17fである。内周側端部17eには軸線方向に延びる貫通穴が形成されている。この貫通穴に対応する位置のディフューザディスク13bには、内周面に雌ねじが形成された締結穴が形成されている。
図2に示すように、貫通穴と締結穴には締結ボルト44が締結されている。このようにして、外周側端部17dと外周側端部17eは、ディフューザ部13のディフューザディスク13bに支持される。
【0036】
外周側端部17dと内周側端部17eとは、それぞれロータ軸30の軸線X回りに延在する環状の部材である。外周側端部17dと外周側端部17eとは、連結部17fによって連結されている。
ロータ軸30の軸線X回りに延在する円環状の連結部17fのディフューザディスク13bに対向する面には、軸線X回りに延在するき裂伝播防止溝17hが設けられている。
図2に示すように、き裂伝播防止溝17hは、スクロール部17の径方向の内周側に設けられている。
き裂伝播防止溝17hは、例えば、スクロール部17を鋳造する鋳型に軸線Xを中心とした円環状の突起を形成しておき、その鋳型を用いることにより形成される。そのため、き裂伝播防止溝17hは、比較的容易に形成することができるという利点がある。
【0037】
き裂伝播防止溝17hは、き裂伝播方向(
図2に矢印Aで示す方向)に沿って内側スクロールケーシング17a内でき裂が伝播することを抑制または防止する溝である。
き裂伝播防止溝17hは、ロータ軸30の軸線X回りの全周に渡って無端状に設けるのが好ましいが、軸線X回りの一部にき裂伝播防止溝17hを設けないようにしてもよい。例えば、軸線X回りに、き裂伝播防止溝17hを設ける箇所と設けない箇所とを交互に設ける間欠状にしてもよい。
【0038】
き裂伝播防止溝17hは、連結部17fのディフューザディスク13bに対向する面のいずれの箇所に設けてもよいが、き裂伝播方向の下流側である外周側端部17dの近傍に設けるのが好ましい。外周側端部17dの近傍にき裂伝播防止溝17hを設けることにより、外周側端部17dの近傍に発生するき裂が内側スクロールケーシング17a内で伝播することを抑制または防止することができる。
【0039】
前述した空気案内筒12とスクロール部17は、複雑な形状を形成するために鋳造により製造された金属部材からなる。この金属部材として、例えば、鉄を主成分とし、炭素を2%以上含有するFe−C系合金である鋳鉄が用いられる。鋳鉄であればねずみ鋳鉄など種々の材料を用いることが可能であるが、基地組織中の黒煙が球状化しているダクタイル鋳鉄(FCD:Ferrum Casting Ductile)を用いるのが好ましい。
【0040】
鋳造による金属材は、鋳込み形成により複雑な形状を形成しやすい反面、脆性特性を有する。そのため、空気案内筒12とスクロール部17は、破断部材の衝突によりき裂が生じると、そのき裂が部材全体に伝播する可能性がある。
前述したき裂伝播防止溝17hは、内側スクロールケーシング17a内で生じたき裂が外側スクロールケーシング17bまで伝播することを抑制または防止するものである。き裂伝播防止溝17hが形成される部分の内側スクロールケーシング17aは、その部分の周囲よりも板厚が薄くなっている。そのため、き裂伝播防止溝17hに到達したき裂は、
図2に矢印Aで示す方向に伝播せずに、き裂伝播防止溝17hが延びる方向に伝播する。
【0041】
次に、本実施形態の過給機100が奏する作用および効果について説明する。
本実施形態の過給機100が備える圧縮機は、遠心圧縮機である。そのため、羽根車11は、取込口11a側よりも吐出口11b側の方が羽根の外径が大きくなっている。したがって、羽根車11の重心位置は吐出口11b側の位置P1となる。そして、空気案内筒12の吐出口11b側とスクロール部17との連結位置は、軸線Xにおいて羽根車11の重心位置となる。
重心位置において、羽根車の全部または一部が破断あるいは脱落した際は、その破断あるいは脱落した部分は重量が大きく、軸線X方向に直交する径方向に飛散するときの衝撃力は大きいものとなる。
【0042】
本実施形態の遠心圧縮機10によれば、羽根車11の全部または一部が破断あるいは脱落してロータ軸30の軸線X方向に直交する径方向に飛散する場合、吐出口11bからスクロール部17に圧縮空気を導くディフューザ部に破断部材が衝突すると、ディフューザ部13近傍がロータ軸30の軸線X方向に拡大するように変形する。スクロール部17の径方向の内周側における軸線X方向の端部(外周側端部17d,内周側端部17e)がディフューザ部13に支持されている。そのため、ディフューザ部13の変形に伴ってスクロール部17が有する内側スクロールケーシング17aが変形する。この変形が大きい場合、ディフューザ部13近傍に配置される内側スクロールケーシング17a(特に、締結ボルト44が締結される貫通穴の近傍)にき裂が生じる。
【0043】
本実施形態の遠心圧縮機10によれば、内側スクロールケーシング17aに軸線X回りに延在するき裂伝播防止溝17hが設けられている。き裂伝播防止溝17hが形成される部分の内側スクロールケーシング17aは、その部分の周囲よりも板厚が薄くなっている。そのため、内側スクロールケーシング17aに生じたき裂が内側スクロールケーシング17aと一体に形成される外側スクロールケーシング17bに伝播せず、き裂伝播防止溝17hに沿って軸線回りに伝播するようにき裂の伝播方向が変更される。これにより、内側スクロールケーシング17aに生じたき裂が、外側スクロールケーシング17bに伝播することが抑制または防止される。
そのため、遠心圧縮機10の外周に配置される外側スクロールケーシング17bの一部に隙間(口開き)が生じ、その隙間から破断部材が外部に飛散することが抑制または防止される。
【0044】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態の過給機について図面を参照して説明する。
第2実施形態は第1実施形態の変形例であり、以下で特に説明する場合を除き、第1実施形態と同様であるものとし、説明を省略する。
第1実施形態の過給機は、遠心圧縮機のスクロール部17の連結部17fがき裂伝播防止溝17hを備える。それに対して第2実施形態の過給機は、遠心圧縮機のスクロール部17の連結部17fがき裂伝播防止突起17iを備える。
【0045】
図3に示すように、ロータ軸30の軸線X回りに延在する円環状の連結部17fの取入口11a側の面には、軸線X回りに延在するき裂伝播防止突起17iが設けられている。
図3に示すように、き裂伝播防止突起17iは、スクロール部17の径方向の内周側に設けられている。
【0046】
き裂伝播防止突起17iは、き裂伝播方向(
図3のスクロール部17外周面の矢印方向)に沿って内側スクロールケーシング17a内で伝播することを抑制または防止する溝である。
き裂伝播防止突起17iは、ロータ軸30の軸線X回りの全周に渡って無端状に設けるのが好ましいが、軸線X回りの一部にき裂伝播防止突起17iを設けないようにしてもよい。例えば、軸線X回りに、き裂伝播防止突起17iを設ける箇所と設けない箇所とを交互に設ける間欠状にしてもよい。
き裂伝播防止突起17iは、連結部17fの取入口11a側の面のいずれの箇所に設けてもよいが、外周側端部17eの近傍に設ける方が製造が容易である。また、外周側端部17eの近傍にき裂伝播防止突起17iを設けることにより、外周側端部17eの剛性を高めて外周側端部17eでき裂が発生しにくいようにすることができる。
【0047】
本実施形態の遠心圧縮機によれば、スクロール部17の径方向の内周側にき裂伝播防止突起17iが設けられている。そのため、き裂伝播防止突起17iにスクロール部17の径方向の内周側に生じたき裂が伝播する場合に、き裂伝播防止突起17iの厚みによって、き裂伝播防止突起17iを乗り越えて径方向の外周側にき裂が伝播することが抑制または防止される。
そのため、遠心圧縮機10の外周に配置されるスクロール部17の径方向の外周側の一部に隙間(口開き)が生じ、その隙間から破断部材が外部に飛散することが抑制または防止される。
【0048】
〔第3実施形態〕
以下、本発明の第3実施形態の過給機について図面を参照して説明する。
第3実施形態は第1実施形態の変形例であり、以下で特に説明する場合を除き、第1実施形態と同様であるものとし、説明を省略する。
第1実施形態の過給機は、遠心圧縮機のスクロール部17の連結部17fがき裂伝播防止溝17hを備える。それに対して第3実施形態の過給機は、遠心圧縮機のスクロール部17の内側スクロールケーシング17aがき裂伝播防止突起17jを備える。
【0049】
図4に示すように、スクロール部17の径方向の内周側に配置される内側スクロールケーシング17aの外周面(渦形室17cを形成する内周面と対向する面)には、軸線X回りに延在するき裂伝播防止突起17jが設けられている。
図4に示すように、き裂伝播防止突起17jは、スクロール部17の径方向の内周側に設けられている。
【0050】
き裂伝播防止突起17jは、き裂伝播方向(
図4のスクロール部17外周面の矢印方向)に沿って内側スクロールケーシング17a内で伝播することを抑制または防止する溝である。
き裂伝播防止突起17jは、ロータ軸30の軸線X回りの全周に渡って無端状に設けるのが好ましいが、軸線X回りの一部にき裂伝播防止突起17jを設けないようにしてもよい。例えば、軸線X回りに、き裂伝播防止突起17jを設ける箇所と設けない箇所とを交互に設ける間欠状にしてもよい。
【0051】
き裂伝播防止突起17jは、内側スクロールケーシング17aの外周面のいずれの箇所に設けてもよいが、き裂伝播方向の下流側に設けるのが好ましい。き裂伝播方向の下流側にき裂伝播防止突起17jを設けることにより、内側スクロールケーシング17aの外周面におけるき裂伝播方向の上流側に発生するき裂が内側スクロールケーシング17aから外側スクロールケーシング17bに伝播することを抑制または防止することができる。
【0052】
本実施形態の遠心圧縮機によれば、スクロール部17の径方向の内周側に配置される内側スクロールケーシング17aの外周面にき裂伝播防止突起17jが設けられている。そのため、き裂伝播防止突起17jにスクロール部17の径方向の内周側に生じたき裂が伝播する場合に、き裂伝播防止突起17jの厚みによって、き裂伝播防止突起17jを乗り越えて径方向の外周側にき裂が伝播することが抑制または防止される。
そのため、遠心圧縮機10の外周に配置されるスクロール部17の径方向の外周側の一部に隙間(口開き)が生じ、その隙間から破断部材が外部に飛散することが抑制または防止される。
【0053】
〔他の実施形態〕
以上の説明においては、スクロール部17にき裂伝播防止溝17h(第1実施形態)、き裂伝播防止突起17i(第2実施形態)、き裂伝播防止突起17j(第3実施形態)のいずれか1つを設けるものとしたが、他の態様であってもよい。
例えば、スクロール部17に、き裂伝播防止溝17h、き裂伝播防止突起17i、き裂伝播防止突起17jの全てを設けるようにしてもよい。また例えば、これらのいずれか2つを設けるようにしてもよい。
【0054】
また、例えば、き裂伝播防止溝17hを設けた位置に溝に替えて突起を設けてもよい。また、き裂伝播防止突起17iを設けた位置に突起に替えて溝を設けてもよい。また、き裂伝播防止突起17jを設けた位置に突起に替えて溝を設けてもよい。スクロール部17の内周面にき裂伝播防止溝とき裂伝播防止突起のいずれを設けるかは、スクロール部17の材料と強度等を考慮して適宜に選択すればよい。
【0055】
以上の説明において、遠心圧縮機10が備える羽根車11が連結されるロータ軸30は、舶用ディーゼル機関から排出される排気ガスにより回転するタービン20によって軸線X回りに回転するものであったが、他の態様であってもよい。例えば、ロータ軸30は、ロータ軸30に連結されたモータ等の他の動力源によって回転するものであってもよい。
【0056】
以上の説明において、ディフューザ部13が配置される軸線X方向の位置P1は、羽根車11の重心位置と一致する位置であるものとした。以上の説明における、”一致する”とは、位置P1と重心位置とが厳密に一致することを意味するものではない。位置P1が、重心位置近傍に配置される場合であっても、位置P1が羽根車11の重心位置と一致しているものとする。